假面特攻隊の一寸先は闇!読みにくいブログ(笑)

★★★特撮・アニメ・時代劇・サブカル思想をフォロー!(予定・汗)★★★ ~身辺雑記・小ネタ・ニュース速報の類いはありません

女子高生の無駄づかい・ちおちゃんの通学路 ~カースト「中の下」の非・美少女が主役となれる時代!

『ヲタクに恋は難しい』 ~こんなのオタじゃない!? リア充オタの出現。オタの変質と解体(笑)
『女子ーズ』『アキバレンジャー』『アフターV』『エアーズロック』 ~戦隊パロディでも公私葛藤描写が光る!
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[アニメ] ~全記事見出し一覧


 2020年1月24日(金)深夜から実写ドラマ版『女子高生の無駄づかい』が放映中記念! とカコつけて……。
 深夜アニメ版『女子高生の無駄づかい』(19年)と同じく深夜アニメ『ちおちゃんの通学路』(18年)評をアップ!


『女子高生の無駄づかい』『ちおちゃんの通学路』 ~カースト「中の下」の非・美少女が主役となれる時代!


『女子高生の無駄づかい』

(文・T.SATO)
(2019年8月2日脱稿)


 昨2018年夏の『ちおちゃんの通学路』に続いて、美少女が主人公ではない女子高生アニメが登場!


 平均身長よりやや低めでズン胴・短足な(汗)女子力が低いガラっぱちで少年チックな元気女子(声・赤崎千夏)。お目々もパッチリしておらず、表情もニコやかに作らず、マユ毛も細かく剃って整えず、そもそも化粧っ気がナイどころか愛嬌もデリカシーもない。
 ヤンキーやギャルではないし粗暴の域にも達してないけど、往年のアムロ少年や水野亜美碇シンジくんや綾波レイ長門有希のごとく、虚弱・気弱・繊細ナイーブな内面ゆえの対人躊躇から来る劣等感などは感じられず、退屈な日常をそれなりに謳歌している。
 トドメはイスに座っても脚を閉じずにガニ股にしている姿だ(爆)。彼女は善人だとは思うけど、異性の対象には思えないし、筆者もペンライトをふって応援したくなるようなスター性は感じない(笑)。


 彼女は高校に入ったらカレ氏がほしいとのたまうも、そのために女性誌を読んで服飾や化粧を学ぶでもなく、クラスの2軍・3軍として、下手のヨコ好きで漫画家志望の赤髪のBL好きオタク女子(声・戸松遥)、微生物や細菌を培養(!)している黒髪ロングの無表情な理系女子(声・豊崎愛生)といった小学校以来の友人とつるんで、部活も入らずストリートに繰り出して異性をゲットするでもなく、学校と自宅を行き来するだけの日々を送っている姿が描かれる。
 同じオタでも漫画オタであれば受容されても、可愛いモノしか観たくないような美少女アニメ専門の萌えオタは本作を観ないのではなかろうか?(汗)


 この3人を中心に、可愛い扱いされることをキラって反発するも心体ともに弱いので安全に回収されてしまう低身長のロリ美少女や、身体の各所に包帯・絆創膏・湿布を貼って弱い自分を鎧っている金髪ツインテの(ひとり)ボッチ少女などに、主人公少女がちょっかいをかけることで始まる騒動を愉快につづっていく。


 この3人には新人ではなく汚れ芝居もできる人材だからか中堅を配置。
 総監督にも『狼と香辛料』(08年)『ヨスガノソラ』(10年)『まおゆう魔王勇者』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200123/p1)『citrus(シトラス)』(18年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191208/p1)などの良作を手掛けてきた高橋丈夫


 予算もあるのか高品質作画で、観返してみると繊細複雑な心情も表現するデリケートな小芝居もたくさんしているけど、このテの胸キュン要素が皆無なギャグ作品は『はじめてのギャル』『僕の彼女がマジメ過ぎるしょびっちな件』(共に17年)同様、誇張芝居で笑いが取れてしかもそこがキモなので、美麗な作画や小芝居がナイ記号的な表現でも大丈夫に思えて、まさに優秀なアニメスタッフの才能の無駄づかいといった感もなくはない。


 個人的には序盤は面白かったので#1切りはしなかったけど、それ以降は並みの作品とも思っており、切ってもイイのだけれども、切り捨てるには惜しい良さもあり(笑)。
女子高生の無駄づかい B2タペストリー


(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.75(19年8月10日発行))


ちおちゃんの通学路

(文・T.SATO)
(2018年8月1日脱稿)


 ウワッ! なんだこのマユ毛・マツ毛・瞳もキラキラしていない地味な女子高生たちのキャラデザは!?
 スクールカーストの序列は、最下位の(ひとり)ボッチならぬ、「中」の「下」だと自らの分をわきまえている女子高生たちが主人公を務める作品だ。


 大昔の80年代中盤までだったら、その程度であればフツーの「中」だけど、80年代末期のイケてるイケてない系のカーストが拡大した時代以降だと、「下」寄りのイケてない系としてレッテル貼りされ、過剰にダメ意識・劣等感まで持たされて……(以下、ルサンチマンが続くので略・笑)。


 異性との輝かしい出逢いもなく――そもそも魅力的な異性として見てもらえず――、劇的な出来事や、引いては人間的な成長もなく、地味な学校生活を送り、自宅では深夜までムダにゲームなどに明け暮れる主人公のメガネ少女。まるで我が似姿を見るようで胸がイタい(笑)。


 先行作で例えると『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190606/p1)のボッチでチビの女子高生主人公がメガネをかけて身長も伸ばし、多少はコミュ力や愛嬌や友人も増やしたらこうなる! という感じか?


 劇中で起きている事件は、遅刻しそうなので通学路を通らず、塀の上や屋根の上を近道していくファンタジーなノリと、遅刻しそうなので路地を通ったら暴走族のバイクを倒しちゃって咄嗟のアドリブ&ハッタリで切り抜けるみたいなナンセンスなノリ。
 だけど、その過程で挟まれる、ゲームの世界ではともかく3次元では「中の下」を自覚する、イイ意味で自虐的な自己認識。


 それでは達観してるのかと思えば、さにあらず。
 現世に未練はやはりあり、ドングリの背比べで「中の下」の女子高生同士でドチラがよりマシ? よりリア充? かで競って、優越感・マウンティング合戦の口論をはじめたり、カースト上位の女子高生に話し掛けられると、舞い上がって光栄に思ってそれを友人に誇ったり。
 ちっとも解脱(げだつ)できていない俗物たちじゃねーか!?(笑)


 もちろん作品はそこに糾弾の目は向けず、生暖かくそれすらも笑いのオブラートで包んでいくワケだけど。
 いやマジな話、オタの生き方の理想ではなく現実的なゴールは、適度な自虐&達観 ⇒ やはり煩悩 ⇒ ハッとそれを自覚して反省 ⇒ 適度な自虐&達観 ⇒ やはり煩悩 ⇒ ハッとそれを自覚して反省 ⇒ 適度な自虐&達観 ⇒ やはり煩悩 ⇒ (略) の無限ループかとも思われて……(自説を一般化するなってか?・汗)。


 やっぱりスゴロクのアガリ的にエラぶったり、オタクの草創期を描いたマンガ『アオイホノヲ』に登場するオタキング岡田斗司夫(おかだ・としお)のごとく、「俺ってスゴいだろ」擬音がかぶるようなオーラ(笑)を出す輩はダメですよ。
 我々は常に自らを低うしてピエロ・河原乞食にならなければ……。


 ただ#1~2は神懸かった出来に思えたけど、#3がイマイチに思えたので、継続視聴の決断にはまだ猶予がほしい(笑)。
ちおちゃんの通学路 B2タペストリー A ティザービジュアル 728×515mm


(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.72(18年8月11日発行))


ちおちゃんの通学路

(金曜22時 TOKYO MX他)


(文・久保達也)
(2018年9月6日脱稿)


 目立つことが嫌いなのに一応軟式テニス部に所属し、ルックス的にも結構カワイイんじゃね? と思える、オレンジ色ショートボブヘアのメガネっ娘(こ)女子高生・ちおちゃん独特の思考回路がもたらす、トホホな日常が描かれる。かの『サザエさん』(69年~)や『ドラえもん』(79年~)のように、ギャグアニメとしては定番の30分枠で数話を放映する形式だ。


 ある朝、クラスのカースト上位で陸上部に所属する人気者で、青髪ショートヘアの早川さんが、登校中のちおちゃんに向かって元気よく、


「おはよう~!」


と手を振ってきた。


 これがちおちゃんに大パニックをもたらしてしまう。自分は早川さんにどう反応すればいいのか?


 クラスのカースト上位者が、ちおちゃんみたいにカーストが「中の下」(笑)の人間にあえて笑顔を向けてくるのは、何かウラが、悪意が、魂胆(こんたん)があるに違いない。
 学校をはじめとする集団生活で周囲からやさしさを向けられたことがなく、それを期待しては散々裏切られてきた者としては、そんな思考回路に陥(おちい)ってしまうのは自然の道理なのだ!


 もしかしたら、早川さんは自分ではなく、自分の背後にいる友達に手を振っているのではないのか? でも本当に後ろに誰かいるのか? 確かめたいけど今振り返ったら早川さんに不審がられてしまう。
 そうだ、ゴミ捨て場に誤って転倒したふりをしたら、早川さんが駆け寄れば自分に好意があるのが証明されるし、後ろに誰かいるのかも確認できて一石二鳥だ! と、ちおちゃんは足をヨロヨロさせ、頭からおもいっきりゴミ捨て場に特攻する!
 ちおちゃん、キミは大正解だ!(爆)


 捨て身の行為で早川さんが間違いなく自分に手を振ってくれていたことをちおちゃんはやっと確信したが、苦難はこれだけでは終わらない。
 早川さんとふたりで学校に向かいながらも、いったいどんな話題をすればいいのか困ったちおちゃんは、とりあえず部活について話そうとするが、「部活」と口にしたものの、それにつづく言葉が出てこない(笑)。


 すると今度は早川さんに向かって「おはよう~!」と手を振る友達が出現! このまま早川さんと歩いていたら、間違いなく自分の存在は空気になってしまう。
 ちおちゃんはとっさにコンビニに駆けこみ、トイレにこもって早川さんたちが立ち去るのを待つ。ちおちゃんは早川さんたちと緊張しながら歩くよりも、コンビニのトイレの方がずっと居心地が良いことをあらためて思い知ることとなるのだ……


 ちおちゃんみたいな人種としては、わずか十数分の登校時間でさえ、70年代後半から80年代前半にかけてテレビ朝日の『水曜スペシャル』枠で放送された『川口浩探検隊』シリーズ並みの、サバイバルの連続なのではあるまいか? 学校での居心地の悪さ・居場所の無さ以前に、そこに至るまでに極度の緊張が連続することに耐えられず、不登校に陥る若者たちも少なからず存在するのだろう。
 そうした観点からすれば、本作が一応の学園ものでありながら、学園そのものではなく、通学路をメインの舞台としているのは実に的確だとさえ思えるのだ。


 だが、やっとトイレから出てきたちおちゃんがゲーム雑誌を立ち読みしていたら、とうに去ったと思っていた早川さんが外から手を振っている!
 早川さんは友達を先に行かせてちおちゃんを待ってくれていたのであり、ちおちゃんがトイレでねばっていたのも「お腹が弱いから」(爆)と解釈していたのだ!


 世間には圧倒的に少数だろうが、我々みたいな人種に対してすらも、早川さんみたいに親切に接してくれる奇特な人も存在するのだろう。それすらもいつものマイナス思考で疑ってかかり、関係性を悪化させるのは努めて避けるべきだ。
 ちおちゃんが早川さんに罪悪感と謝罪の念を心の声でつぶやきながら、学校へと走るクライマックスには感動すらおぼえるほどだ!


 ちおちゃんが早川さんに最大の感謝を示しながら、「ずっと云えなかったけど、おはよう~!」と叫ぶや、周囲にいた冴えない感じの男子高校生たちがいっせいにちおちゃんを振り返り、「オレに云ったのか?」と頭を悩ませる係り結び的なオチがまた絶妙であり、ちおちゃんと同様の悩みをかかえる若い視聴者に対して、決して君だけではない! というエールとして届いたのではあるまいか?


 本作はちおちゃんの自虐的なモノローグを中心に進行するが、『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』(13年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20151102/p1)の主人公・黒木智子(くろき・ともこ)=もこっちが、実際にはカースト最下位なのにそれを自覚できずに、あくまで世をスネたシニカルでやさぐれた「怨(うら)み節(ぶし)」全開(爆)なのとは異なり、「中の下」を自覚するちおちゃんは、まさに平成仮面ライダーシリーズのキャラクターたちみたいに、エキセントリックな口調で絶叫することもあり、どことなくポジティブな印象も感じられ、もこっちとはうまく差別化ができていると云えるだろう。


 早川さんをめぐる「リアル」な話とカップリングされたのは、明け方の4時30分までゲームをしたために寝坊して遅刻しそうになったちおちゃんが、学校までの近道が工事中で使えないことから電柱をよじ登り、連なる民家の屋根を渡って登校するこれまた「リアル」な話、なワケねぇよ!(笑)
 寝ている猫に気をつかったり、なぜか2階でハミガキをするオヤジが吐き出した汚物をメガネに浴びたり、なんてそれなりの苦労もあったが、先述した早川さんと登校する回に比べ、ちおちゃんが明らかに楽しそうなのがまた妙に「リアル」だ。
 「中の下」のちおちゃんにとって、下界を見下ろすのは実に気分がいいのだろう。私事で恐縮だが、筆者も高い場所が大好きだ(笑)。


 風船が高い木にひっかかって泣いている男児の母の頼みを、「ブランドもののスーツが汚れる」「成功報酬がない」と断ったサラリーマン=地域社会の悪党を、屋根の上から「ライダーキック!」(笑)をかまして退治するちおちゃんは、やはり愛すべきいいコなのだ。


(了)
(初出・オールジャンル同人誌『DEATH-VOLT』VOL.81(18年12月29日発行))


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#アニメ感想 #女子高生の無駄づかい #ちおちゃん #ちおちゃんの通学路 #非モテ #モテ非モテ



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非公認戦隊アキバレンジャー・乾杯戦士アフターV・エアーズロック・女子ーズ ~戦隊パロディでも公私葛藤描写が光る!

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 2020年2月7日(金)から実写映画版『ヲタクに恋は難しい』が公開記念! とカコつけて……。実写映画版『ヲタクに恋は難しい』を手掛けた鬼才・福田雄一カントクが手掛けたスーパー戦隊パロディ映画『女子ーズ』(14年)評ほか、スーパー戦隊パロディーの深夜特撮や深夜ドラマ評をアップ!


非公認戦隊アキバレンジャー』『乾杯戦士アフターV(ファイブ)』『GAINAX Presents エアーズロック(感覚戦士ゴカンファイブ)』『女子ーズ』 ~戦隊パロディでも公私葛藤描写が光る!



非公認戦隊アキバレンジャー』 ~パロディだけど、次第に熱血ガチ化!

(BS朝日・TOKYO MX 2012年4~6月)

非公認戦隊アキバレンジャー』前半合評1

(文・T.SATO)
(2012年6月脱稿)


 個人的にはパロディ作品の類いは安易にホメたくないところもあるのだけど……。


 今や四半世紀も前の、お笑いグループ・とんねるずのバラエティ番組『とんねるずのみなさんのおかげです』(86年)ワク内での元祖『仮面ライダー』(71年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140407/p1)のパロディにした作品『仮面ノリダー』(88年)なども、最初の数本だけはオマージュ的な愛もあるパロディであった。しかし、すぐにノリダー役の石橋貴明が敵怪人を毎週ポカスカと殴っている“イジメ”ノリの低劣なものへと堕(だ)してしまって……。


 それでも、あの時代の若者や子供たちにウケてしまったあたりで、作り手よりも受け手の側の品性の問題も大いにあるのだけど……。庶民・大衆・多数派とはそーいう小さなイジメもオッケーな品性下劣なヤツらなのだと諦観しよう(汗)。そして、そんな品性下劣な彼らに対しては適度にATフィールド・バリアを張っておこう。
 けれどそれだけだと、「協調性皆無」の「社会不適応」だとして、若者間でも会社でも「人事査定」をされてしまう。実に道義的な理不尽がまかり通ってしまう世知辛(せちがら)い世の中ではある(涙)。なので、必要悪の処世術として、表面的には少し擬態して面従腹背、俗人どもとも多少は合わせたフリをしておくのがよいであろう!(笑)


 そんなワケで、そーいった類いの低劣なパロディー作品であったのならば、ホメたくはないワケだ。


 しかし、本家のスーパー戦隊シリーズも90年代以降、作り手も世代交代して、すでに大幅に軟化して、子供番組としての仁義・節度は守りつつも、大きなお友だち向けのネタや『戦隊』セルフパロディ的な要素を散りばめるようになってひさしい。


 どころか、80年代以降の高度大衆消費社会では、80年前後にTVで大隆盛を迎えたお笑いブームの影響か、一般大衆もある意味でマンガ・アニメ・お笑い芸人・関西人的なキャラを作ってたりふるまったり、口調や動作をマネしてしゃべるようなこともあるワケで。
 ついでに、ハズしたときでも、あるいは意図的にハズしたあとの「寒い空気」を、少し遅れて「笑い」に転化するようなネジくれた笑いなども、90年代以降には定着してひさしい。役者側・演出側・脚本側・視聴者側でも、オオゲサでコミカルな動作やカメラアングルで笑いを取ったり、パロディ作品を演じてみせて消費もしてみせるような土壌はできている。


 というワケで、悔しいけれども(笑)本作は面白い。というか、出来もイイ。あまり云いたくないけれども、残念なことに個人的にはリアルでハード志向の本家の現役公認戦隊『特命戦隊ゴーバスターズ』(12年)よりも面白いかもしれない(同作をスキな方々には、ゴメンなさい・汗)。


 まぁ、パロディ作品やコミカル作品のキモは、イタくてハズいことをテレずにやる役者をいかに確保するかでもあるけれど……。この戦隊レッド役の役者をゲットできたことが、成功の要因でもあるか? ドコぞの無名の小劇団の役者かお笑いタレントの卵かと思いきや……。


 エッ、


●『ウルトラマンメビウス』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070506/p1
●『獣拳戦隊ゲキレンジャー』(07年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080817/p1
●『仮面ライダーキバ』(08年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080225/p1
●『ウルトラマンギンガ』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200819/p1
●『烈車戦隊トッキュウジャー』(14年)


 彼らたちの変身前の主人公の中の人、アイドル集団・D-BOYS(ディー・ボーイズ)出身なの!?


 エッ、32歳!? 29歳独身設定よりも歳上なのかヨ!(笑)


 そしてアクション。JAC(正確にはJAE)ではなくAACスタントなのは、低予算番組なのでJACよりもAACの方が安く済むからだと見るのだけど、ワイヤーアクションならばやっぱりJACよりAACの方が上だよナ!(汗) スタントも、アキバレッドの中身はウルトラマンメビウスの変身後の中のヒトじゃんかヨ!? 我々イタいオタクがふるまいそうな動きも再現していて笑える笑える。


 本作を観た人間の誰もが云うと思うけど、


●ブルーの180度前後開脚座り、開脚回転しての名乗りポーズのすばらしさ!
●イエローの媚びたブリっ子名乗り……というか個人名乗り時の空気を読まないムダに長いしゃべり!(笑)


 後者がレッドに無視されブッタ切られて、最後のスーパー戦隊集団名の名乗りに流れこむあたり、毎回のお約束でも「待ってました!」的に笑わせてくれる。


 アンバランスにデカくてシャープで細長い複数のメカ装甲をまとった、いかにもオタ向けなアニメ絵の制服美少女の劇中アニメ――その名も『にじよめ学園 ズキューーン葵(あおい)』(「にじよめ」とは「2次元の嫁」の俗語です・笑)――や、その萌えフィギュアを振りかざして変身するあたりもそーとー恥ずくて痛々しい(笑)。


 本家・スーパー戦隊のキャラクターのコスプレやパロディ元となる映像やBGMも引用しまくり!


 コレはアリなのだろうか? 近年では過去作のBGMなどは、全曲フルで流そうともワンフレーズで長そうとも同じ金額で、日本音楽著作権協会JASRACジャスラック)他にカナリ高額な金銭を支払わなければならない、新曲を作った方が安くつく(爆)……という話を聞いていたけれど。
 コレが可能だというのであれば、本家のスーパー戦隊ウルトラマン仮面ライダーなど各社の先輩ヒーローが共演する作品でも、旧作の映像やBGMをもっとバンバン引用してくれよ(笑)。


 まぁ、かつて『仮面ライダーキバ』のシリーズ前半で、主人公のお父ちゃんの時代を描くのに毎回、1986年の歌謡曲が流れまくっていたという前例もあるけれど。しかしアレについては、東映の武部直美プロデューサー女史が単にJASRACへの支払のことを知らなかっただけじゃないかとニラんでいるのだが(笑)。


 当初は魔空空間ならぬ妄想世界の中だけで変身、敵怪人ともバトルしていたけれども、シリーズ中盤からはナンと! 現実世界にも進出してバトルを開始!


 当然、今どきの作品だから、当初からのシリーズ構成なのだろうけど、シリーズ前半のパロディ満載のおバカな牧歌的ノリだけでも充分に面白かったので、そーいうシリアス展開な要素は個人的にはもう要らない気もしていたのだけど……。


(了)


非公認戦隊アキバレンジャー』前半合評2

(文・久保達也)
(2012年6月脱稿)


 「よい子は観ちゃダメ!」がキャッチフレーズだが、そうかなぁ? まぁ、AV出身の穂花(ほのか)演じる悪の女幹部・マルシーナが多少お色気過剰である程度かと思うくらいなのだが。


 最近は深夜枠のバラエティ番組でさえいわゆる「お色気」路線が控えられているのだとか。そんなワケで、「公認」戦隊の悪の女幹部の露出度も低くなる一方なのである(爆)。



 さて、個人的には登場する敵怪人が「公認」みたいにカッコイイ奴が多いと思える!


●第4話『禁じられた妄想は青い背徳の痛み』に登場した、虚無僧(こむそう)モチーフである「門前仲町ハシビロコウ」!――周囲にCGで描かれたカラスが飛ぶのが芸コマ!
●第5話『イタイタ☆イエローママ』に登場した、金髪にグラサンまでモールドされたホストがモチーフである「歌舞伎町メスグロヒョウモンチョウ」!――それに合わせて戦闘員も同じ格好――
●第6話『はばたけ大御所! 妄想撮影所の痛い罠』に登場した劇場怪人「下北沢ホヤ」!――こちらの戦闘員は黒子姿(笑)――


●虚無僧怪人が門前仲町
●ホスト怪人が歌舞伎町
●劇場怪人が下北沢


 いかにもな出身地(笑)がそのまんまネーミングされているのもいいセンスだ。「非公認」のままでいいから、今後発行される「スーパー戦隊」怪人図鑑にもちゃんと載せてほしいよなぁ(笑)。


 第5話などは「公認」でも何度か描かれた「親上京」パターン。アキバイエローことゆめりあ(本名 山田優子・笑)の母を演じたのは、デビュー間もない時期にスーパー戦隊シリーズでは『地球戦隊ファイブマン』(90年)で5兄弟戦隊をサポートするレギュラーの等身大ロボット・アーサーG6(ジーシックス)の声も演じたことがあるベテラン声優・松本梨香(まつもと・りか)だった! そして、ゆめりあに代わって、


「重妄想!」(変身時の掛け声!)


 なんと、アキバイエローに変身してしまうのだ!(笑)


 イイ感じに熟女化して適度に母性豊かなオバサンと化しており、ふたむかし前なら故・曽我町子(そが・まちこ)が演じてもピッタリなキャラだった、ってこちらもおもわず、ありし日の曽我町子のことを妄想してしまった。


 通常はゆめりあが変身するアキバイエローと、今回のゆめりあの母が変身したアキバイエローとの、スーツアクトレスによる演じ分けも見事だ。妙にセクシーな名乗りに始まり、むかしはスーパー戦隊シリーズ『バトルフィーバーJ』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120130/p1)の戦隊ピンク・ミスアメリカのコスプレをやっていたという設定(笑)であった母が変身したイエローは、ミスアメリカのごとく両手の指をパチパチ鳴らしながら「ワン・ツー・スリー」などと軽快なステップをキメる。


 それでいて「再生怪人は弱い」点をキッチリおさえているのはさすがである(笑)。


 第6話は歴代「公認」戦隊ではレッドのスーツアクターを長年務めてきた新堀和男(にいぼり・かずお)が! ついでに、『鳥人戦隊ジェットマン』(91年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110905/p1)のレッドホークも登場!


 レッドホークの翼を借り、飛行する劇場怪人をアキバレッドが空中で追跡する特撮合成場面なども、「非公認」とはいえ、実に見事な出来映(ば)えであった!


 ところで、「東映妄想撮影所」(笑)でマルシーナと劇場怪人がアキバレンジャーの罠にハマった場面の学校の教室は、絶賛放映中の『仮面ライダーフォーゼ』(11年)の天ノ川学園の教室なども想起されてしまう。もっとも、作風というか番組のノーテンキなノリ自体が、『フォーゼ』も『アキバレンジャー』とたいして変わらないのだが(笑)。


 そんなワケで、特撮マニア限定といったノリでもなく、普遍的なコミカル劇としても面白いし、往年の大人気アニメ『聖闘士星矢(セイント・セイヤ)』の次世代続編『聖闘士星矢Ω(オメガ)』(12年)を放映しているテレビ朝日の日曜早朝6時30分の枠で、子供向けに放映しても通用しそうな路線ではある。


 いや、逆に今の時代はむしろ深夜だからこそ、こうした軽薄なノリがふさわしいのかもしれない。シリアスな作品を放映しても、ハードなコア層はともかく周辺層やライト層は眠くなるだけであろうから(笑)。今となっては、「公認」のハードでシリアスな『特命戦隊ゴーバスターズ』の方が、むしろむかしの深夜番組っぽいノリであるかも?(爆)


 歴代「公認」戦隊のトリビアネタは、実は歯抜け的にまったく観たことがない「戦隊」作品が世代的にけっこうある筆者(汗)にはわからなかったりもするのだが、逆もまた真なりで、それならば深夜の特撮コメディ『ウルトラゾーン』(11年)の昭和ウルトラネタが理解できない、特撮マニアの視聴者もけっこういたのだろうと改めて思ったりはする。しかし、それでツマラなくなるとか、疎外感を抱かせるようなものでもなく、とにかく主人公たちが痛々しい奇矯な言動を振りまくオタクを見て、それを笑ってみせている、といったことさえわかれば、それだけで充分に笑えるのだ。


 つまり、ストーリーの理解に支障を来たすことはない範疇での節度があるかたちに留めたトリビアネタなのだ。しかし、第4話でスーパー戦隊シリーズ超電子バイオマン』(84年)第10話『さよならイエロー』での初代イエローフォー降板について触れられた際は正直いいのか? と思ってしまった。そういったマニア側の反応をもねらったものなのだが、むかしであれば東映側の年長プロデューサーがダメ出しするところを、世代交代もあってか明け透けにしてネタにもしてしまうことにOKを出してしまうあたりは、時代の空気や風潮の違い・変遷を実感してしまうあたりは、当時の事情も知っている古参特撮マニアであろう(笑)。


 第6話のラストでは「妄想」の世界ではない、「現実」の世界にまで悪の女幹部・マルシーナが出現、今後は「現実」世界の秋葉原が戦場となる展開のようであり、やはり期待せずにはいられない!
非公認戦隊アキバレンジャー 150ピースミニパズル 痛さは強さ! 150-399


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2012年初夏号』(12年6月24日発行)~『假面特攻隊2013年号』(12年12月29日発行)所収『非公認戦隊アキバレンジャー』合評より抜粋)


非公認戦隊アキバレンジャー』後半合評1

(文・久保達也)
(2012年7月脱稿)


♪ひ~とりひとりは~~ 小さいけれど~~
 ひ・と・つ・に なれ~ば ごらん 無敵だぁ~~


などと、バトルの最中にアキバレッドとアキバイエローがスーパー戦隊シリーズ『バトルフィーバーJ』(79年)の主題歌を歌い出す、なんてことはこの番組では序の口である(笑)。


 第8話では、本来なら怪人のモチーフには全然ふさわしくない珍獣・アルパカの怪人=「月島アルパカ」(笑)が弱すぎるからと、岩場で猛特訓をはじめるアキバレンジャー


 その際、彼らの背景の岩山の上に、「『電撃戦隊チェンジマン』(85年)第1話での地球守備隊・伊吹長官の特訓はこんなもんじゃなかった!」とばかりに、演じた藤巻潤(ふじまき・じゅん)の横顔が大きく合成されたり(爆笑)と、こちらが心配になるくらい、歴代「公認」のキャラ・名場面が毎回静止画・動画を問わず、バンバン登場!


 その白媚(はくび)が『鳥人戦隊ジェットマン』(91年)のレッドホーク、『特捜戦隊デカレンジャー』(04年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041112/p1)のデカレッド、『轟轟(ごうごう)戦隊ボウケンジャー』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070108/p1)のボウケンレッドから「大それた力(笑)」を借り、アキバレンジャーが放つ必殺技・ダイソレタキャノン(笑)である!


 低予算であるハズの深夜枠でできるのなら、「公認」の方でこそ、先輩ヒーロー客演をやったら本来のターゲットである幼児はもちろんのこと、マニアたちも大喜びに違いないのだけど。


 子供間での人気は知らないが、どうやらマニア人気はイマイチのような『特命戦隊ゴーバスターズ』でこそ、適宜に先輩戦隊客演や先輩戦隊の活躍に言及する! といったことをやって、作品世界のスケール感やワクワク感を上げるかたちで作品の温度を上げるべきだろう。前作『海賊戦隊ゴーカイジャー』(11年)で散々にやったばかりだからなどと気をまわしてゼロにすべきではない。『ゴーカイジャー』と同じことをしろとは云わないが、適度にそういったネタも挟んで、もっとエンタメ性を高めてくれ!(笑)


 しかし、『鳥人戦隊ジェットマン』や『未来戦隊タイムレンジャー』(00年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20001102/p1)といった、どちらかといえば若干(じゃっかん)ハード&アダルト寄りな作品は、かつては特撮マニア間での人気は非常に高くなって、その直後に放映されるチャイルディッシュな作風に回帰した『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(92年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120220/p1)や『百獣戦隊ガオレンジャー』(00年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20011113/p1)などは、子供間での非常に高い人気とは裏腹にマニア間では酷評に見舞われるのが常であった(汗)。


 けれど、広義では『ジェットマン』や『タイムレンジャー』のようなシリアス路線であるハズの『ゴーバスターズ』が不人気となり、むしろ「非公認」であるハズの『アキバレンジャー』の方がマニアの注目を集めてしまうとは…… ずいぶんと時代も変わってしまったものですねえ。個人的には実に喜ばしいことですが(笑)。


 ただ、この番組のキモと云えるのは、たとえば第10話でアキバレンジャーの長すぎる「名乗り」に対し、悪もののカッコよくてメカっぽいダークヒーロー型の新幹部、もとい、専務取締役(笑)・デリューナイトが、


「黙って聞いてやったが」


などと、いつの間にか名乗っているヒーローの正面にはいなくなっていて(カメラアングルのマジック!)、真横の壁にさもウザったそうにもたれて嘆いてみたりと、一度でも「公認」戦隊を観たことがある者なら、


「名乗りのあいだに、なんで悪の組織は攻撃せえへんのや~!」(爆)


とツッコミをいれずにはいられないような、「公認」の基本的なフォーマットを茶化してギャグへと転化してしまっていることであろう。


 合理的に考えれば、たしかに名乗りの最中に敵が攻撃を仕掛けてこないことはおかしいのだ(笑)。


 しかし、勧善懲悪の道徳説話的な色彩を持ったこの手の特撮変身ヒーローものは、悪の軍団の跳梁(ちょうりょう)に割って入ってきて防いでみせて、そこで「型にはまった名乗り」を高らかに上げてみせることで、正義のヒーローの頼もしさと卑劣な悪党が一瞬は気圧(けお)される一連のサマがまた、最後の最後に正義の味方が悪を倒して爽快感をもたらす「娯楽活劇作品」の本質・エッセンスを凝縮・シンボライズした、見事な様式美ではあったのだ!


●『仮面ライダー』(71年)に登場した、悪の組織・ショッカーの大幹部、死神博士を彷彿(ほうふつ)とさせるような、ドクターZ(ゼット)が新たに登場!
●『超電子バイオマン』(84年)に登場した、バイオ粒子を持つ者を抹殺するダークヒーローであるバイオハンター・シルバを彷彿とさせる、萌え死に、もとい、モエシニスキー粒子(笑)を持つ者を抹殺するデリューナイトが登場!
●そして、『イナズマン』(73年)の敵組織・新人類帝国が、続編『イナズマンF(フラッシュ)』(74年)でデスパー軍団に模様替えしたように、デリュージョン帝国の建国によって、戦闘員もとい平社員(笑)がスーツからナチスみたいな軍服に衣替え。
●さらに、『キカイダー01(ゼロワン)』(73年)の主人公・イチローのように、トランペットを背負った、いまどき珍しいくらいにムダに爽(さわ)やかな(笑)イケメンにいちゃんが――『獣拳戦隊ゲキレンジャー』(07年)のゲキブルーに似ていると戦隊カフェの女性店員が指摘するが皆に無視される(笑)――、新・アキバレッドとして参戦する!――つーか、歴代の「公認」レッドではこんなに爽やかな奴はいなかったっちゅーの!(笑)――


 本作後期は、真の黒幕である原作者・八手三郎(はって・さぶろう)(笑)の陰謀により、次々に路線変更・テコ入れが行われ、さらには強引に番組を1クールで打ち切りにしようとしていることにアキバレンジャーたちが気づき、悪の女幹部・マルシーナとともに、それを止めるための戦いを繰り広げるという、前代未聞の展開となった。


 本作序盤のおバカなノリで充分に満足し、最後までそのままでやってくれた方がいいや、なんて思っていた筆者ではあった。だが、中盤からの怒涛の新展開、新キャラ続々登場には、不覚にもおおいに魅力を感じずにはいられなくなってしまったのだ! やっぱりこういう劇的・ドラマチックな、次はドーなる!? という興味・関心を維持しつづける「ストーリー展開の妙」でも魅せるような作品が観たかったんだよなぁ……と思ってしまったのが正直なところなのだ。


 そして、デリューナイトが搭乗した巨大メカ・ブーメランタイタンと、なんとアキバレッドが運転する痛車(いたしゃ)が巨大ロボット化したマシンイタッシャーとが、ハイクオリティなCGと実景映像との合成でラストバトル! ビジュアル的には同じ都市破壊でも、個人的には正直云って、円谷プロお家芸であるミニチュア特撮をすでに超えた! と感じてしまうほどの完成度の高さであった!


 最終決戦を最終回1本前で終わらせた本作は、最終回ではメタ的な「反省会」(笑)が行われたが、パロディ作品であるとはいえ、あまりに完成度が高い作りになっているので、反省しなければならない点などひとつもないではないか!?


 バンダイからSHフィギュアーツどころか、変身アイテム・モエモエズキューン(笑)までもが、12年夏にかけて順次発売されるところを見ると、第2シーズンが放映されることがすでに決定しているのでは?


 で、13年の年明けには恒例のお祭り映画であるスーパー戦隊VS映画『特命戦隊ゴーバスターズVSゴーカイジャー』あたりに、アキバレンジャーが端役で乱入するのもアリかもと。どうせ愉快なお祭り映画なのだし、アキバレンジャーたち自身が子供ウケしそうなコミカルなキャラなのだから、子供が疎外感を抱くような内輪ノリにもならないだろうし、その上でのマニア受けねらいであるのであれば、一石二鳥で大歓迎! こーいうイイ意味での悪ノリな展開が、筆者だけの「妄想」に終わらないことを祈るばかりである(笑)。


(了)


非公認戦隊アキバレンジャー』後半合評2

(文・T.SATO)
(2012年7月脱稿)


 ビデオで再確認せず、記憶だけで書くけど、アキバレッドの名乗り時の、


●「『(光戦隊)マスクマン』(87年)なら姿(すがた)長官押し!」と叫んで座禅を一瞬組んだり、
●「兄弟戦隊なら『(地球戦隊)ファイブマン』(90年)押し!」
●「上京回ならバルパンサー押し!」――『太陽戦隊サンバルカン』(81年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120206/p1)でのバルパンサー(イエロー)を演じる小林朝夫の実父にして高名な作曲家・小林亜星出演回のこと――
●「司令官なら嵐山(あらしやま)長官押し!」――『太陽戦隊サンバルカン』で名優・岸田森(きしだ・しん)が演じた司令官――


……などのウンチク。細かいこだわりのネタセリフのオカシさと楽しさ。


 元ネタが判っていればなお楽しく、判っていなくても何となく半笑い的に楽しいし、スーパー戦隊マニア間での最大公約数的な見解ではそーなっているらしい!? とも思わせるような妙味の小ネタの面白さ!――もちろんアキバレッド個人の好みの問題やもしれないので、ウルさ型でそれぞれ一家言があるハズの特撮マニア諸氏もまた、アキバレッドの兄ちゃんの一個人の見解の軍門に降る必要はナイのだけれども(笑)――


 各話のエンディング主題歌の、長~いイントロ部分にかかる、


「毎年、戦隊巨大ロボの玩具を真っ先に買ってるけど、旧友が3人のパパになってて、自分の子供のために私と同じ戦隊ロボの玩具を買ってたのを見てヘコんだ……」だの、「自室で鏡の前で戦隊アクションのマネをしてたら、母親に心配された……」だのの独白。


 劇中における「2次元」・「2.5次元」・「非モテ」などの21世紀以降のオタク用語の羅列。


 アキバイエローが甘ったるいアニメ声でしゃべる、ムダに長い、名乗りになっていない(笑)、登場名乗り時の、


「二次創作ってのはー、アニメとか見ててフワーッ…って妄想が溢れちゃった時にィ~」
「ワタシの場合、同人は描くより読むことのほうが多くてェ~」
「ワレは腐りきった人間界をもっと腐らせるために、右手には…」


 イチイチ笑わせてくれるオタクくすぐりの数々。


 イエローが腐女子(ふじょし)、男性キャラ同士のBL(ボーイズ・ラブ)ネタを好む女性オタだという設定も、10年前だとアリエナイ設定ではある。00年代後半以降、やはり顔が見えないネット時代の効用で、今までは眼につきにくかったBL好き女子の言動が可視化されてきて、ナンとはなしにBLの内実が少なくともオタク間では理解されていき、男性オタク界隈でもしょせんは奇人変人同士なのだから(失礼)、BL好きなオタク女子のような生態もアリなのだろう! と、なし崩し的に地殻変動が起きて好意的に流通しだして、深夜の美少女アニメでもそのハーレムのひとりにBL好き女子や百合女子が混ざるようになったあたりで、(筆者自身の認識も含めて)時代は変わったのであった(笑)。


――その当初においては、BL好き女子の実態を商業書籍化した女子ライターに対して当のBL好き女子たちが、「隠れキリシタンのごとき私たちを白日の下にさらすだなんて!」とモーレツなバッシングも受けていたものだけど、それも世代交代とともに当のBL好き女子たちの方がライトにたしなむようにもなっていく(笑)――


 自分で自分たちオタクのことを、「腐」だの「イタい」だのと客観視して自称する、主にネット界隈で若いオタ間でのここ10年ほどの風潮も、1990年代以前だと考えらない現象である。むかしは、


「オタクもフツーの人間であり、オタ趣味以外のことにも関心がある~」


とムリして強弁してたり、


「ウチらオタクは差別されてる~、迫害されてる~~」


といった被害者意識の行き過ぎた反転で、差別されてきた「女性」たちこそがPC、ポリティカル・コレクトネス、「政治的に正しい」! 差別されてきた「黒人」たちによる「ブラック・イズ・ビューティフル」ならぬ「オタク・イズ・ビューティフル」といった90年代のオタキング岡田斗司夫(おかだ・としお)的な「オタク・エリート」言説が一部オタ間では全盛であったものだ。


 いや、世間や庶民・大衆の偏見こそが主因であっても、我々オタクの方でも改善すべきイタい欠点もあるんじゃね? などと少しでも疑念を呈そうものならば、「オタクの裏切り者!」「敵に少しでも利する者は“獅子身中の虫”である!」ばりに批判されたことを思うと……。隔世の感である(笑)。


 やや脱線させってもらったけど、ただそのへんのギャグ描写も、役者陣の演技ではじめて血肉が通ってきて笑える作品へと仕上がるワケである。そのことを思うと、本作はやはりキャスティングにも恵まれた作品だったとは思うのだ。


●黙っていれば程々にイイ男……でギリギリ通るやもしれないのに、「ヘン顔」や「キモ顔」をカメラのドUPで披露してくれるアキバレッド役のお兄ちゃん!(笑)


●クールだけれども格闘パンチ系の制服女子高生でもあるアキバブルーの凛としたお姉ちゃん。どうせルックス重視のモデル上がりで――オープニング映像の冒頭でも、腰に手を当てた斜め姿をカメラ正面に向けてモデル立ちをしているし(笑)――演技経験もナイんだろ……と思っていたのだが……。凛とした適度な低音で、だけれどもコブシも効いていて、変身後のアフレコなんかでもヒーロー名の名乗りや戦闘時の「ハッ!」とかの掛け声とかも絶妙に決まっている!(笑)


●アキバイエローのお姉ちゃんは毎週毎週、そのコスプレ衣裳を変えていて、そのエピソードで終始その姿で登場するばかりか、コスプレに合わせて「ボク」「ワレ」「せっしゃ」とキャラ&口調も変えていて、変身後も意味なくその口調でしゃべりつづけているノリノリのテッテイぶり。


 終盤で明かされるイエローの正体は、黒髪メガネのジミで冴えない、変身後とはちがい胸がツルペタのお茶くみOLで、給湯室でBL漫画を描いているという姿もハマりすぎ! まぁ、コスプレとBL漫画描きを両立している女オタクはそーはいないと思われるので(?)、女オタクの複数の類型を集約させた造形ではあるけれど。


 で、天下のネット上のフリー百科事典・Wikipediaを後学のために見てみると……。エッ、まだミドルティーンで、実はブルー役の娘よりも2歳も年下の少女だったのかよ!? それであのOL役のハマりよう! あまりのショックに、たった四杯で夜も眠れず……。


 それよりも、もとい、それと同じくらいに衝撃だったのが、アキバレンジャーの後見人役であるハイミスっぽい白衣の博士キャラ風のその名も葉加瀬(はかせ)お姉さん(笑)。その正体は26歳にしてようやく主役の座をつかんだ声優さんであった!
 ってーのは劇中でのことで、とはいえ随分と役者ご本人の薄幸そうなルックスのイメージにハマりすぎな設定だよナ。……と思いきや。エッ、彼女ってまだ22歳だったの!? それであのややクタビれた26歳の役なの!? 失礼ながら違和感ないよ(爆)。


 エッ、筆者も観ていた(汗)2012年春季深夜の美少女アニメさんかれあ』で、その正体は死体(爆)でもある幸ウスそうな深窓の令嬢女子高生・散華礼弥(さんか・れあ)役を演じていた内田真礼(うちだ・あまや)だったの!? ウ~ム。


――後日付記:この内田真礼が2010年代を代表するキャピキャピした大人気・実力派アイドル声優のひとりになろうとは、当時は夢にも思わなんだ(汗)。ダイドーブレンドの缶コーヒーのCM(18年)でも、ヒーロー第4課の2代目女性隊員として顔出しで出演!――


 筆者的にはしょせんはパロディ作品ではあるから許容範囲ではあるけれども、マニアならば知っている実在する東映の塚田プロデューサー(笑)にワザワザ公認してもらうために、「妄想世界」から「現実世界」へと危険な敵怪人を連れてきてしまうような極私的な要望を通すためのインモラル(不道徳)な展開の部分については個人的には少々ひっかかっり、そこについてだけは数は少ないけれども本作の欠点ではあったと指摘はしておきたい。


 個人的には最終展開における、「現実」と「妄想」の「二元論」的な対比だけに留まらずに、あの作品世界の「現実」それ自体もまた『非公認戦隊アキバレンジャー』というTV番組の「世界」であった! という「三層構造」などは、何もそこまでやらなくても……とも感じてはいる。


 でも、終盤でそーいうヒネリがなかったらなかったで、最終展開くらいは何かでヒネって盛り上げろよ! と筆者自身がケチを付けていそうでもある。まぁパロディ作品ごときに対して悔しいけれども、正直なところはハマって観ておりました(笑)。

(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2013年準備号』(12年8月10日発行)~『假面特攻隊2013年号』(12年12月29日発行)所収『非公認戦隊アキバレンジャー』合評より抜粋)


2014年上期ジャンル作品評 ~リスペクトドラマの華、開く?!

(文・J.SATAKE)
(2014年7月脱稿)


 2014年前半に放送・公開された作品で筆者が気になったものを紹介してゆこう。


●巨大ヒーローの雄「ウルトラマン」シリーズ
●単独ヒーローの雄「仮面ライダー」シリーズ――近年この単独は微妙になっているが――
●そして集団ヒーローの雄「スーパー戦隊」シリーズ


 今期はこのスーパー戦隊をモチーフにした作品が次々登場した。

『女子ーズ』 ~一般層にも開かれた戦隊パロディ! 「公私葛藤」描写も光る!

東宝系 2014年6月7日公開)


 深夜ドラマ『勇者ヨシヒコと魔王の城』(11)『コドモ警察』(12)『天魔さんがゆく』(13)など、ゆるゆるのコメディ作品で注目を集める福田雄一監督がスーパー戦隊を撮ったら……それが本作。


 名前に色が入っている、という理由――そして単なる個人的なお好み!で――、司令官・チャールズに選ばれた5人の女性たち。スーパー戦隊名も「女子(ジョシ)ーズ」とビミョーなセンスの彼を疑いつつも、地球の平和を守るため怪人と戦う……


 はずが、仕事・バイト・演劇・恋愛、そしてまつ毛を長く濃く見せるまつエク! を優先し集まらない5人!!


 だってそれは「女子」だから。


 怪人軍団も集まりが悪い女子ーズのために、ごていねいにも待ってあげる律儀なやつら! そして5人がスクラムを組んで放つ必殺技・女子トルネードの前に敗れ去るのだ!


 これだけ聞くとバラエティのコントと変わらないようだが。女子ーズのコスチュームは熱血テイスト満載の漫画家・島本和彦氏によるもので、顔出しのヘルメット以外はデザイン・素材ともに本物のスーパー戦隊にひけを取らないように見えた――『電子戦隊デンジマン』(80・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120205/p1)を参考にしたという――。
 怪人・戦闘員もいい加減な造りではないところはポイント高し!――映画『ガメラ3 邪神(イリス)覚醒』(99)や映画『ULTRAMAN』(04・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060305/p1)で造型を担当した楠健吾氏がデザイン・造型した――


 カラフルな戦隊スーツ服に身を包む5人もいま注目のメンバーだ。


●生真面目な女子レッド・赤木直子は、多くのドラマ・CM・キャスターとしても活躍して人気の桐谷美玲(きりたに・みれい)嬢。
●ツッコミ担当のイエロー・黄川田ゆりは、NHK朝ドラ『ごちそうさん』(13)に出演した高畑充希(たかはた・みつき)嬢。――後日付記:NHK朝ドラ『とと姉ちゃん』(16)では主演!――
●天然演劇少女のグリーン・緑山かのこも、朝ドラ『あまちゃん』(13)であまちゃんの母を演じる小泉今日子の少女時代を演じて人気急上昇、ジブリアニメ『思い出のマーニー』(14)では主演声優も務める有村架純(ありむら・かすみ)嬢。――後日付記:彼女もNHK朝ドラ『ひよっこ』(17)で主演!――
●沈着冷静なブルー・青田美佳は、ドラマ・映画で韓国でも活躍する藤井美菜嬢。
●生粋のお嬢様で男をみる目がないネイビー・紺野すみれは、多くのドラマ・CMに出演、モデル活動もしている山本美月(やまもと・みつき)嬢。


 およそ戦いには向きそうにないスレンダーで筋肉もなさそうな5人が、もう本家でもあまり使わないだだっ広い採石場を舞台に、皆が揃うまで戦闘開始を待ってもらうよう怪人と交渉し――いまそれを広げますか? というガールズトークもはさみつつ――、


●縦に裂けて衝撃吸収するエリンギモルグ!
●ヌルヌルのジュンサイドルド!
●ウンコくっさいカメムシゲルゲ!


 などの安っぽい敵怪人たちと必死にバトルアクションに挑む姿はなかなか観られるものではないだろう!


 脇を固めるのは福田監督作品常連陣だ。女子ーズに選ばれた理由をしつこく聞くメンバーに、激しくアタフタし(笑)、静かにブチ切れる司令官チャールズ! そのゴニョゴニョしたアドリブ感が絶妙な佐藤二朗氏が楽しい! そして突き出た腹と独特のイントネーションが特徴の皆川猿時氏、シリアスからコメディまでこなすきたろう氏と安田顕氏らのゆる~い熱演があればこそ、観客を笑わせることができる!


 スーパー戦隊コメディにニヤニヤしつつ、頭をもたげてくるのはヒーローとプライベートの両立問題!


 今まで集まりの悪いメンバーをその都度なんとか説得してきた生真面目で責任感が強い赤木だが、表の仕事での目標・美術館建設のプレゼンとカチあってしまう。この仕事を取れなければ会社に大きな損害を与えてしまう。文化振興という目的も果たせない。
 それは世界の平和に尽くすという大きな「公」ではないかもしれない。しかし、個人的な安逸・怠惰な快楽だけを求める「私」でもない。「公」と「私」の両者の中間にある「社会」の一角で使命を果たそうとする民間の「私企業」とはいえ、小さな「公」ではあるだろう。
 大きな「公」を選択した場合に、小さな「公」を致命的に傷つけてしまうこともあるかもしれない。これは悩みどころだ。板挟みの葛藤の末に、ついに彼女は戦隊ヒーローとしての出動を拒否してしまう!


 この出来事により4人と溝が深まってしまい、それを忘れるために改めて仕事に没頭するも、ひとりで突っ走ってしまい、こちらもうまくいかなくなる……。


 チャールズが「ヒーローは無償の行為でしょ」と主張しても、時給制を迫る青田と黄川田! ミーイズムを極める現代、ヒーローもお金がなくては生きてゆけない? ……スーパー戦隊がファンタジックな存在であり、平成仮面ライダーが大人の社会に組みする前の若者であるのは、こうした金銭的・生活的な足かせに捕らわれないためでもあるのだろう。


 しかし無償の行為=ボランティアと捉えると、身近な問題ともいえないだろうか?


●誰かのために無償で骨を折ること(=無私の公)
●仕事で給金を得て社会に貢献すること(=有私の公)
●そして個人の夢、楽しみなどの自己実現もある(=無公の私)――。


 これらのそれぞれが大切で、1つだけでは人の生活や社会や経済も成り立たない。この3つは単純な優劣ではなく、グー・チョキ・パー的なトライアングルの関係になっているのが現実というものだ。


 悩んで当然! ひとりでこれらすべてを解決できないからこそチームで問題に当たるのが肝要。誰かが他の大切な外せない用で参戦できなければ、そこを埋めるべく仲間が助ける。おぉ! これぞ「協働」ともいえる集団ヒーロー・スーパー戦隊の存在意義ではないか! コメディと侮るなかれ、意外に深いところを突いてくる!


 そして最強の怪人・メタルゴードン現る! 会社の仕事も同僚と協力して適材適所で進めるものであり、スーパー戦隊も自分がいない間、他の4人が戦ってくれていたことを知った赤木は――他の4人も一見エゴイストのようでも、なんだかんだと文句を言いながらもフォローをし合っていたモラリストなのがニクい!――、仕事を任せてもらえずにクサっていた会社の同僚を信じて戦場に向かう!


 ……しかし今度はスーパー戦隊の4人が来ない! 果たしてレッドは皆の信頼を取り戻し、5人で戦うことができるのか?! クライマックスに向かって5人の絆が結束する! ……はずもなく、4人に対するゆるゆるの説得シーンが続く!!


 赤木、ずいぶん長い間サボっちゃったのね(笑)。想像以上の長尺なグズグズの連続! このノリは正直観る人を選ぶなぁ~としみじみ……。


 すったもんだのあとに始まる、最後の名乗りシーン! 必殺技・女子トルネード!!


 そしてラストバトルを盛り上げる、本家でも外せない巨大ロボット戦なのだが、ここもズラしてきた!


 女子ーズロボのあのスタイルと〇o〇〇ロケットで見事にオチをつけてくれたのだ。


 スーパー戦隊のビジュアルと魂をトレースしつつも、コメディに仕上げた本作。好みがハッキリ分かれる作りだが、5人のメンバーが気になる方、戦隊シリーズが好きな方はご鑑賞あれ。
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 「普通の人」がスーパー戦隊に入隊するのが本作なら、スーパー戦隊を仕事にする「職業戦隊」の物語がこちら。

『乾杯戦士アフターV(ファイブ)』 ~戦闘後の飲み会だけを描く戦隊パロディ

(独立各局 2014年4~6月)


 悪の組織撲滅のため警察・自衛隊に次いで組織された「黄金戦士トレジャーⅤ(ファイブ)」。彼らにより悪は減ったが、そうなると活躍の場も減り、打ち上げの飲み会をする姿ばかりが目立つように……。いつしかついた名前は「乾杯戦士アフターV(ファイブ)」! これは彼らの飲み姿のみを追った物語なのだ。


 正義のヒーローにあこがれ入隊したリーダー・レッド役が、『仮面ライダーディケイド』(09・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090308/p1)で仮面ライダークウガの小野寺ユウスケを演じた村井良大(むらい りょうた)氏なので、それなりに戦隊イズムも表現してくれるかも……と期待したのだが、彼らの舞台は居酒屋とカラオケ店のみ。そこで展開するのはサラリーマンの悲哀と変わらない。


●戦闘場面をツイッターに挙げる者!
●トレジャーロボ内で飲み食い、喫煙する者!
●引退したはずの上司ラメゴールドが参戦し、飲み会にも現れ大迷惑!
●五十肩のイエローが異動し、新人女性イエローを巡っての男どもの醜い争いと、同じ女子なのにちやほやしてくれないことに不機嫌になるピンク!
●急転直下おめでた退職で出戻りさせられるおやじイエロー!
●メンバーは5人もいらないとリストラ勧告!


 などなど……。


 酒が入っているので愚痴っぽくなり、ついには店内で武器を振り回しロボを呼び出す?!


 なんとか問題が収束し、その場の状況をカラオケの選曲でまとめるラストが定番だ。


 社会人になって飲み会につきあうようになると、あ~~わかるわ~~というあのグダグダな雰囲気の再現度はなかなかのものではある。


 ヒーローの醜態をさらして笑わせるのもバラエティコントのひとつだろう。5人のスーツもジャージ生地のようだし、マスクはフルフェイスだがパーティグッズみたいな柔らかい作りに見える。筆者からすれば、そもそも任務以外の打ち上げでも原色のバトルスーツを着て素顔を晒している時点で「スーパー戦隊のリアル」から逸脱しているので、そちらの描写には期待せず、いわゆる「戦隊あるある」レベルと見た方がよい。


 一方の悪の組織も弱体化のため、総帥自らが5人行きつけの居酒屋で料理人としてアルバイトするほど逼迫していた! いつもの戦隊メンバーなら注文してくるであろうと先走りで作ったメニューを同じバイトの戦闘員のまかないにしてしまい、店長に怒られる不遇の総帥を演じるは斉木しげる氏だ。
 戦闘員を派遣で補う! 怪人を作れないため戦闘にも自ら参戦! 悪の組織を率いながらも、戦闘員の実家の事情にまで気を配る――そもそもそんな奴が悪を目指すこと自体が矛盾している!――という生真面目さが漂う総帥は、敵情視察といいつつカラオケ店でもすったもんだしている5人を陰から助けたりもするのだ!


 そして訪れる戦隊解散の時。自転車操業である悪の組織の内情を知ってしまった5人と店長の取った行動とは?!


 これが普通のサラリーマン物語ならば人情に傾いてもよいのだが、あくまでヒーローを扱う物語であるならば――たとえ笑わせるのが主目的のコメディであっても――あのラストは筆者にはいただけない。単なる保身となれ合いにしかならないのではないのか!? たとえ給金をもらう身であっても、己の信念を戦いにぶつけなくては倒された者たちはどうなるのか?


 パロディ&コメディに目くじらをたてるのは無粋だとも思うのだが、戦いには信念がなければ……と感じた次第。
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(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2015年準備号』(14年8月15日発行)~『假面特攻隊2015年号』(14年12月28日発行)所収『2014年上期・ジャンル作品』評より抜粋)


『GAINAX Presents エアーズロック』 ~リアルというよりナチュラルな演出に風情があるも、そもスーパー戦隊パロディか?(笑)

(独立各局 2012年4~7月)

『GAINAX Presents エアーズロック』前半評

(文・久保達也)
(2012年6月脱稿)


 シューティングバー・エアーのマスターである元・戦隊レッドと、新しくオーディションで選ばれ、バイトで勤める新・ピンクの女子高生がかわす、なんとも絶妙な、実に味わいのある「間(ま)」が感じられる会話のやりとりが楽しく、パロディ作品としては合格点である。


 吉本興業所属であり、相当のオタらしい松本人志(まつもと・ひとし)が、月1回土曜深夜にNHKで放送されている『松本人志のコントMHK』などで、やたらとやっているヒーロー作品をネタにしたコントに比べれば、よほど笑えるものがある。


 ただ、第5話『山から来た女』の時点で、いまだ悪の組織も変身もバトルも合体ロボットも何ひとつ出てきておらず、ゴカンファイブのメンバーの過去・現在のトホホぶりが面白おかしく語られるのみであり、最終回までこれが続くのかと心配してしまう(笑)。まぁ、『非公認戦隊アキバレンジャー』も第6話まで妄想の世界で戦っていたのが、第7話以降は現実の世界が舞台に変わるのだから、これが杞憂(きゆう)に終わってくれることを願いたい。


 なにせ、アニメ製作会社ガイナックスといえば、80年代前半に「DAICON FILM」(ダイコン・フィルム)として、アニメや特撮の自主映画を製作していた集団が母体なのである。あの『新世紀エヴァンゲリオン』(95年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220306/p1)の監督・庵野秀明(あんの・ひであき)がウルトラマン役で主演、オタキング岡田斗司夫(おかだ・としお)が脚本を担当した自主映画『帰ってきたウルトラマン マットアロー1号発進命令』(83年・01年にガイナックスからDVDが発売)や、『電子戦隊デンジマン』~『大戦隊ゴーグルファイブ』(82年)をパロディにして自主映画『愛國戰隊大日本(あいこくせんたい・だいにっぽん)』(82年)といった作品群が、ガイナックスの原点なのである。


 今回の『ゴカンファイブ』のオープニング映像などは、まさにその当時の『愛國戰隊大日本』を彷彿(ほうふつ)とさせる手づくり感覚あふれるものであり、原点回帰、つーか狙ってやっているのであろうが(笑)、やはり肝心の本編の方にこそ、それを望んでしまうのである。


 せっかくのガイナックスの製作なのに、ただのコントではもったいない(笑)。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2012年初夏号』(12年6月24日発行)~『假面特攻隊2013年号』(12年12月29日発行)所収『エアーズロック』合評より抜粋)


エアーズロック』後半合評1 ~感覚戦士ゴカンファイブ、遂に勢ぞろい!

(文・久保達也)
(2012年7月脱稿)


 こちらの方は『非公認戦隊アキバレンジャー』(12年)とは異なり、結局ずっとコントが続いた(笑)。しかし、第11~13話の『吉祥寺決戦』三部作で、ようやく本来の変身ヒーロー作品のような話が描かれた。


 しかし、登場する怪人のモチーフはなんとウ○コであり(笑)、それも人々の排泄物(はいせつぶつ)をエネルギーとしており、


ゴカンレッド「このス○○ロ野郎!」


なんて、あまりに強烈なセリフまである始末である(笑)。


 まぁ、所詮(しょせん)はパロディ作品なのだから、過度な期待をかけたり、作品論をマジに語ることはヤボである、ってことは充分に承知しているつもりである。現在の放送コードではギリギリの線かと思えるネタも、深夜枠なのだから、これくらいのクダラナイことは許されるべきではないのか? と個人的には考える。ただ「非公認」ではあっても、東映では絶対にこのネタは扱えないな(笑)。


 だが、『GAINAX Presents』なる看板を掲(かか)げている以上、そうしたノリでもかまわないから、せめてビジュアル的にはそれにふさわしいものを観せてほしかったように思えてならないものがあるのだ。


 地球上のすべての汚物(おぶつ・苦笑)を結集させ、巨大化しようとしたウ○コ怪人はゴカンファイブの巨大ロボットに踏みつぶされ、あっけなく最期(さいご)をとげる。しかし、やっぱり巨大ロボ戦くらいは描いてほしかった。地球上のすべての汚物が結集する場面は観たいとは思わないけど(爆)。


 天下のGAINAXが、こんなもんをつくってしまいました、という意味では視聴者の記憶に残る番組となったことは確かである(笑)。が、「それをやっちゃぁおしまいよ」的なネタで締めてしまった以上、第2シーズンの製作はちょっとムリだろうなぁ。


(了)


エアーズロック』後半合評2 ~リアルというよりナチュラルな演出に風情があるも、そもスーパー戦隊パロディか?(笑)

(文・T.SATO)
(2012年7月脱稿)


 このリアルというよりナチュラルな脱力系の演出、オタク的にダサいというのではなく、サブカル的にプチダサい(プチおしゃれ?)、暑苦しさ皆無のボソボソとしゃべるノリ。


 筆者の乏しい映画鑑賞経験でも、近年の本邦・自主映画やその流れを汲むマイナーアート系邦画のノリを想起させるなぁ、と思いきや。この作品のメイン監督はまさにその系譜で(?)、『リンダ リンダ リンダ』(05年)のようなメジャー映画もやっていた山下敦弘カントクだったのでありますか!?(今さらな・汗)――『リンダ リンダ リンダ』は、オタク向けに翻訳すると、深夜アニメ『けいおん!』(09年)や同じく深夜アニメ『TARI TARI(タリ タリ)』(12年)の元祖みたいな、女子高生による音楽部活モノ作品です――


 強引に分類、GAINAX(ガイナックス)人脈で云うならば、庵野秀明(あんの・ひであき)・岡田斗司夫(おかだ・としお)的なアニメ演出的なノリではなく、山賀博之社長が監督した往年のアニメ映画『王立宇宙軍 オネアミスの翼』(87年)的なナチュラル演出なノリであって、氏のそーいう好みでのオーダーによる人選&作品だったというべきか? その文脈で見るならば、ホンキで「スーパー戦隊」パロディをやる気はそもそもなくて、「戦隊」は背景の題材にすぎなかった?


 とはいえ、それではあまりにあんまりな詐欺でもあるし、あの80年代初頭にそれまでの幾度かの再放送で酷使されてフィルムに傷がついた作品の再放送を家庭用ビデオで録画して後年に再生、解像度も色彩もボケボケになったような、スーパー戦隊オープニング主題歌パロディ映像に出てきた戦隊スーツや戦隊巨大ロボットもムダになってしまう。だからか、最終回だけ暑苦しい舞台調のセリフ廻しの着ぐるみ顔出しのウンコ怪人を登場させて、今まで登場しなかったゴカンファイブに戦隊巨大ロボも総結集!


 でもまぁ、本作のキモはやはり、超低予算作品だからかほとんどロケにも出ずに、シューティングバー・エアーのウス暗いカウンター席での元レッドと新ピンクが延々と展開するボソボソ駄弁りにあったとは思うのだ。演出的にヘアメイクでそーしているのだろうけど、ちょいイモ・ちょいかわのウェイトレスのバイトの黒髪ショートの女子高生もとい新ピンクは、本作には本当にマッチしている(笑)。


 本作オープニング映像でも再現された、1970年代後半~80年代初頭の若者文化の潮流でもあった長髪の若者像――60年前後生まれのいわゆる「オタク第1世代」、イケてる系の人種の方を名指す用語だと「新人類」世代にも相当――。


 その時代から数えても、もう30年が過ぎてしまった。かつての輝かしき(?)戦歴を思い出のサカナに、時々集まっては飲んでいる彼ら戦隊OBのクタビれた姿は……、我々オタク第2世代や第3世代の未来の姿でもあるのだろう――いやもうすでにそうなっている?(笑)


 ニコニコ動画の本作公式チャンネルで確認すると、アクセス数は極少なので、人気はなかったようだけど(汗)。小粒良品だとは思います!
エアーズロック 1 [DVD]

(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2013年準備号』(12年8月10日発行)~『假面特攻隊2013年号』(12年12月29日発行)所収『エアーズロック』合評より抜粋)


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 2020年2月7日(金)から実写映画版『ヲタクに恋は難しい』が公開記念! とカコつけて……。深夜アニメ版『ヲタクに恋は難しい』(18年)評をアップ!


ヲタクに恋は難しい』 ~こんなのオタじゃない!? リア充オタの出現。オタの変質と解体(笑)

(文・T.SATO)
(2018年4月27日脱稿)


 フジテレビ深夜のアニメ枠「ノイタミナ」18年春季作品。ヲタといってもキモオタではない隠れオタのOLが主人公。ドコか自信なさげな風などは一切なく、ダメンズなカレ氏も過去に何人かいたらしきリア充の女オタ。
 対するにお相手の男性は、周囲にオタであることを隠してナイっぽいオープンオタだが、コレまた変人ぽさはあってもキモオタではなく、長身スーツ姿のクールな眼鏡クンで「君ってセーフじゃん!」という感じ。


 コ、コレは詐欺だ(笑)。彼らリア充(リアル・現実世界で充実)なエリートオタなら、「恋は難しい」どころか「恋」も「異性のゲット」もカンタンじゃん(爆)。


 いやまぁ、いくら内面・人間性が大事だとはいっても、異性との交流に至る前段として下駄を履いていることも重要で、見た目からして他人に好かれやすいルックスやコミュ力があった方が、異性のゲットには近道に決まっている。


 物語・エンタメも、結局はこの法則に無意識に従って、異性とイイ仲になる主要人物は、たとえその人間性が決定打ではあろうとも、美男美女もしくは平均以上のルックスであることで、お互いにホレあったり付き合ったりしても不思議じゃないよネ? とドコかで想わせて、愛の勝利(笑)へと至った説得力を、観客の無意識の次元で補強する。


 #1は大企業(多分)へ転職して初出勤したその日に、中学時代の知己である先のメガネ青年に偶然廊下で再会し、彼の空気を読まない「夏コミ(=超巨大同人誌即売会コミックマーケット)、受かったか?」とのセリフに凍り付く彼女のサマが描かれる。
 云うまでもないけれども、オタが蔑視の対象ではなくなり、世間にも受け入れられた……などとゆー言説なぞは「虚妄」なのだとわからせる名シーンではある(笑)――もちろん30年前のM君事件時のオタク弾圧と比すれば、今の時代は100倍ラクだけど――。


 加えて、沢城みゆき嬢が演じる姐御肌な女上司もBL(ボーイズ・ラブ)好きな腐女子……つまり要約すればオタク女子であることが判明してしまう。


 ……とココまで来て思う。本作はこんな内容だったっけ?


 オタクの祭典・コミケコミックマーケット)の開催期間中の数日間、地下に停車する国際展示場駅エスカレーター壁から東京ビッグサイトに至る道中には、膨大なオタ向け作品の宣伝ポスターが数百数千枚と飾られる。本作の存在を近年のそれらで知った御仁は多いだろう。筆者もそのクチだ。


 オタと恋愛。オタとモテ/非モテ。このネタが大好物の筆者は、ネット上での非モテ論壇での暑苦しい議論(笑)やマンガ『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』(11年・13年に深夜アニメ化・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190606/p1)などを好んで読んできた。
 その一連としてマンガ『ブスに花束を。』や本作の原作マンガ版も、お絵描きオタ向けSNS「pixiv(ピクシブ)」中に商業出版社が出店して配信中であった無料電子書籍で読んだことはあった。


 正直に云わせてもらうと、本作の原作マンガ版は筆者にはイマイチな出来の印象で、序盤で早々に読書をリタイアしてしまった記憶がある(汗)。


 ちなみに、アニメ#1は終盤以外はオリジナル展開である。そう考えると、原作マンガ版の導入部と比すれば、この深夜アニメ版はまだマシだったような気がするにはする……(爆)。


 しかし。ウ~ム。筆者が作品タイトルから連想して、ぜひとも観てみたいと思っていた内容は、もっとオタであることの自分に劣等感で自意識をコジらせた深夜アニメ『ネト充のススメ』(17年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201213/p1)のような、非モテ男女たちの飢餓や渇き、イイ歳こいて思春期のシャイな少年少女のようにモジモジしながら、不器用な成人オタ男女が一歩前進、二歩後退するようなヒイてジラして盛り上げる作品であったのだが、ナイものねだりなのであろうけど、本作はそーいう類いの作品ではナイのであった……。


 だから、この作品はダメなのだ! と腐してみたいけど、それもまた芸がナイので、ココでヘリクツ芸をヒネり出す(笑)。
 ググってみると、筆者が抱いたような感想もネット上にはカナリあふれてはいた。しかし、原作マンガが結構な部数で売れており、支持者も少なからずいるのも事実なのだ。


 察するに、そこまで劣等感で自意識をコジらせてはおらず、コミュ力がナイわけでもないオタの周辺・外縁層、つまりは超々マニアックな求道者(ぐどうしゃ)ではナイけれども、マンガやゲームもたしなむヌルオタ(ヌルいオタ)やライトオタ(軽いオタ)にとっての「自己イメージ」や「理想の異性」とは、本作のように過剰な劣等感にはまったくまみれてはおらず、ギャルや仕事デキるプライド系のイイ女の域にまでは行かないけど、異性に対して気後れすることなくまぁまぁキラクに雑談もできたり、異性を呼び捨てにできてしまったり、どころかバンバンと背中を叩いてプチ・ビッチ的なボディータッチでの自己アピールもできてしまうようなライトな「女オタ」や、少々奇人変人でも暑苦しくはなくってルックスも人並み以上で連れて歩いても恥ずくない、共通ないしは隣接した趣味を持つ「野郎オタ」のカレ氏なのだろうと分析するのだ。


 そーなってしまうと、キモオタな筆者にとっては共感・感情移入はしづらい世界になってしまう。我々オタの内実や輪郭も随分と稀釈・拡散したものだ(汗)。


(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.71(18年5月4日発行))


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ゴブリンスレイヤー ~レイプに売春まで!? 周縁のまつろわぬ民は常に憐れで正義なのか!?

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『慎重勇者』『超人高校生』『本好きの下剋上』『のうきん』『けものみち』 ~2019秋アニメ・異世界転移モノの奇抜作が大漁!
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 2020年2月1日(土)から深夜アニメ『ゴブリンスレイヤー』(18年)の新作OVA『ゴブリンスレイヤー GOBLIN’S CROWN(ゴブリンズ・クラウン)』が劇場先行公開記念! とカコつけて……。
 深夜アニメ『ゴブリンスレイヤー』評をアップ!


ゴブリンスレイヤー』 ~レイプに売春まで!? 周縁のまつろわぬ民は常に憐れで正義なのか!?

(文・T.SATO)
(2018年12月26日脱稿)


 顔面までヨロイで覆った騎士さんもいるけど、手脚の素肌を隠した白のロングコートに白い大きな帽子をかぶり、青色の色彩アクセントで清潔感と崇高さも醸しつつ、金髪ロングに性格良さげで垂れぎみなお目々もパッチリ、両手で杖を抱えた美少女をキービジュアルに据えていることから、アリガチなナンちゃって感が満載の西欧中世ファンタジー風味の志が低いラノベ原作アニメかと思いきや。


 #1のAパートでは、元気なオボコい剣士の少年が、武闘家の少女・魔法使いの少女・治癒魔法で後方援護する先の金髪ロングの少女とともに、洞窟に潜むファンタジー世界お約束の二等兵、ヤラれ役の戦闘員キャラでもある緑褐色の低身長、低知能な小人(小鬼?)族・ゴブリン退治に勇ましくもおキラクに出掛けたら……。
 当初は鬼退治に善戦するも、次々出現するゴブリンで形勢逆転。殴打や棍棒フルボッコ、刀矢で斬られ刺され射られ、リアルな肉体性のある暴力や撲殺(!)が描かれて、あげく重傷で動けない武闘家少女にゴブリンたちがよってたかって陵辱してバックから……。上がる悲鳴!


 ヒエェ~~!! 公式・本家自体が二次創作エロ同人と化してるヨ(爆)。
 「ゴブリンって強くネ?」という謳い文句で深夜アニメ『灰と幻想のグリムガル』(16年)でもファンタジー世界に重たいリアリズムを導入する試みはすでにあったけど、同秋季2018年の深夜アニメ『転生したらスライムだった件』におけるコミカルに描かれて主人公との意思疎通も可能な可愛らしいゴブリン族の描写とはエラい違いだ。


 その洞窟に悠然と現れるゴブリン殺し専門のヨロイ騎士。毒塗り刃でもう助からず苦悶する魔法使いの少女にはせめてもの情けか躊躇なく介錯のトドメを刺し(!)、剣や盾や弓矢や体術でバッタバッタとゴブリンを嬲り殺していく!
 直前でゴブリンの蛮行が描かれたので、ヨロイ騎士のカナリ暴力的な戦い方に辟易(へきえき)すると同時に、喝采も送ってしまうような背徳感も味あわせるのが本作のミソ。


 しかし、悪徳でも結果的には正義を守っている一応のヒーローとして描かれるアメコミヒーロー洋画のデッドプールhttps://katoku99.hatenablog.com/entry/20160705/p1https://katoku99.hatenablog.com/entry/20180625/p1)やヴェノムなどとは異なり、生き残りのゴブリンの幼体たちまで惨殺!
 下宿先の大家さんが「あんたはタガが外れてる」と評したように、劇中内での一応の正義ではなくやや相対化、冷淡に突き放され視聴者の感情移入を阻むようにも作劇・造形されている。


 つづく#2のAパートでは、物悲しげな家族たちに見送られて、赤毛ショートの幼女が馬車に乗せられ去っていく光景が描かれる。次のカットは安宿のベッドで全裸にウスい掛け布団で物憂げに横たわる豊満に成長したサブヒロインたる少女の図。
 その後もお喋りな幼女のころとは異なり、ニコニコ笑顔でもひとりだと口を半開きに少々虚ろで放心ぎみ。そしてトロトロと喋る少女に、思わず彼女は両親に売られて売春婦に身を堕とし、それをゴブリン殺し専門のヨロイ騎士さんが身請(みう)けでもしたのか? なぞと憶測してしまったけれども。
 軽くググってみると、そのような出自設定はナイようで(?)、スレたマニアたちにはそーと思わせようとしたミスリード演出でもあったのか?


 洋の東西を問わず、娘を身売りするような貧しい時代がかつてあり、善し悪しは別に人類最古の商売としての売春もあって――レイプや性奴隷は商行為ではナイから別モノですよ~――、第1次世界大戦が舞台のヘミングウェイの小説『武器よさらば』(1929年・32年と52年に映画化)でも軍や義勇兵に売春婦が追随、中世末期の百年戦争が背景の深夜アニメ『純潔のマリア』(15年)でも傭兵たちに売春婦団が伴走していた。


 それでは忌まわしき戦時売春を全廃すれば万事解決なのかと思いきや、ナチドイツ陥落後の首都・ベルリンでは女性の過半が、独全土では数百万人もがソ連兵のレイプに遭う大惨事――満洲でもしかり――。
 小は子供間で絶えないイジメもそーだけど、法律がなくても身を律せる人間は極少数で、ほとんどは罰則があるから悪事をしないだけのヒトの皮をカブった悪魔であるから、権力者のみならず庶民・大衆・子供のことをも信じるナというのが筆者の結論だ(笑)。


 近年では世界的に売春の歴史が失念され、歯の浮くようなキレイ事が跋扈して、往時の日本にだけ慰安婦が奴隷のように存在したかに語られているけど、仮にアナタやワタシにとっては風俗産業が不要であっても、庶民・大衆の圧倒的大多数にとってはそーではナイのだから(爆)、人間一般の汚い性情をも踏まえて制度設計しておかないとイザというときに危険だとも思うゾ。その意味で公的には売春やギャンブルが禁止でも、ソープでは本番可能でパチンコ屋のヨコでも景品の換金が黙認されているのはダブル・スタンダードではあるけれど、オトナの知恵だとも思う――警察官も非番の日にはお世話になっていますから(笑)――。
 人間の全員とはいわず、人間一般には蕩尽(とうじん)的な欲望もある以上は、ヘタに禁酒法なぞを作ったら、高額でも飲みたい輩もいる以上、アル・カポネみたいなヤクザが大儲けする逆説も歴史が教えているワケだから、徹底弾圧でもなく積極的な賞揚でもない適量の発散は必要だ――その上で、ブローカーにダマされて連行された女性の救済、慰安所外での性的暴行への重罰も必須――。


 陽気でコミュ力がある売春婦たちが傭兵と行軍中でも大声でエロ話に興じていたのは『純潔のマリア』だけど、沖縄でも日本人より米軍人とHする方がお株が上がると豪語するギャルたちがいて、90年代カンボジアで選挙監視に各国のPKOが駐留したらすぐに売春宿ができ、高収の売女が地元の男を蔑み、旧東ドイツ地域の女性たちも華美を夢見て故郷と故郷の男たちを捨てて去っていく。
 他方で往年のTV時代劇『大奥』1983年版では、「目黒のサンマ」の逸話でおなじみ5代将軍・綱吉の母となる八百屋あがりのコケティッシュな天真爛漫少女とは対照的に、3代将軍・家光(演・沖雅也。~本役が遺作となった・汗)に見初められた性に無知な少女が床入りで恐怖にかられて逃げ出して江戸城内の井戸に身投げし自殺しちゃうけど、そんなウブな娘もいるだろう。
 そして、普段はイケメンやマッチョにナビいてカタギを見下す娼婦たちが、ソ連兵から身を呈して一般子女らを守った逸話は、作詞家・なかにし礼原作の満洲引き揚げ映画『赤い月』(04年)での光景であったか? 女性も実に多様で複雑な存在だ。


 そんなソ連兵ならぬゴブリンに、冒険者や辺境の村落の子女は陵辱され、心を病んだ少女が修道院に入ることもよくある話だと語られて、ヨロイ騎士の姉もそんなひとりであったという。ならば、復讐に燃えるのもムリはない――歴史的にも「周縁の民」は常に虐げられてきた「弱者」というワケではナイ。天高く馬肥ゆる秋になると農耕民の収穫や民生品に子女らを強奪しに来る存在でもあった――。


 しかし、相手がハエや蚊やゴキブリにペストや天然痘や化け物ならば殲滅に罪悪感もナイけれど、人間に近しくて種族内での親子・仲間間での情愛や知能もあるゴブリンを殲滅するとなると、途端に倫理的・ポリティカルコレクトネス(政治的に正しい)的な複雑性も帯びてくる――そこが作者のねらい目なのだろうけど――。
 と同時に、数百~数千年スパンでは融和の可能性があっても、数年~数十年スパンでは和解の余地などナイように見えるのならば、ゴブリン殲滅もやむなし、殺れ殺れ殺っちまえ! という暗い情念を、虚構世界で秘かに発散させる適量の毒物作品ではあり、筆者も結局は下賤の輩なので、その情念に身を浸(ひた)すのであった……(汗)。


(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.73(18年12月29日発行))


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 2020年1月17日(金)からアニメ映画『劇場版メイドインアビス 深き魂の黎明』が公開記念! とカコつけて…… その前日談たる深夜アニメ『メイドインアビス』(17年)評ほか、同季2017年夏アニメ全10本のレビューをアップ!


メイドインアビス』『はじめてのギャル』『ゲーマーズ!』『異世界食堂』『ナイツ&マジック』『アクションヒロイン チアフルーツ』『天使の3P!』『クリオネの灯り』『ようこそ実力至上主義の教室へ』『恋と嘘』 ~2017年夏アニメ評!

(文・T.SATO)
(2017年12月13日脱稿)

メイドインアビス


 「アビス」というから「深海」かと思いきや「地底」。
 高度な文明が崩壊してから数百~数千年後っぽい、西欧中世都市みたいな世界観。直径1キロ・深さ20キロの巨大タテ穴のフチに人々は住まい、タテ穴から古代のロスト・テクノロジーの遺物を発掘することで栄えている。
 だが、重力異常か呪いなのか、タテ穴の深層に潜りすぎると身体に不調が生じ、人外の存在に変化する可能性もあるという。


 昨今流行りのナンちゃってロー・ファンタジーではなく、本格ハイ・ファンタジーといった印象だが、キャラデザはデッサン骨格シッカリ系ではなく、5頭身かつ顔面もヨコにまるく広がり、お目々の位置も真ん中よりやや下、両眼も左右に離れており、華奢な胴体に末端肥大な手足が付いた、シンプルで幼児的な可愛らしいもの。
 おそらく万人ウケはするのだろうけど、個人的にはこーいうあまりに端正かつ「キレイ可愛い」でデオドラント(無菌)なキャラデザは、世の中の汚いモノや不条理を過剰に忌避(きひ)して見ないフリ、なかったことにするような気配を感じて、プチ抵抗を覚えないでもナイのだが――まぁ作品自体の罪ではナイです――。


 眼鏡の金髪ツインテで学者タイプの女のコ主人公と、見た目はヒトでも記憶喪失のロボット少年くんを主軸に、彼らの周囲の人々の群像劇と、アビスの何層もの階層を降って探検を繰り広げていく姿を描いていくけれど……。


 オタキング岡田斗司夫が本作をホメているのをドコかで読んだが、基本設定はともかく、先の筆者個人のバイアス(偏見)も影響してか、設定確認の段取りチックなストーリー展開に思えて、本作をスキな方々には申し訳ないけど、個人的には心を打たれないなぁ(汗)。
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はじめてのギャル


 オタの天敵である女子高生巨乳ギャルがヒロインである深夜アニメが登場。ヤンキー色漂う少年マンガ誌出自かと思いきや、オタ向けマンガ誌『少年エース』が出自だと!?


 とはいえ、彼女はルーズソックスを履いている……。今時そんな女子高生はいねーヨ!(笑) というワケで、リアルなギャルではなくマンガ的記号としてのギャルだともわかる。
 しかも#2以降、実は彼女は内心はウブだと明かされる。……コ、コレはギャップ萌え!(爆) まぁ公共心皆無の自己中(心)・私的快楽至上主義者の真性ギャルだと、視聴者も感情移入ができないからネ。順当なマンガ的アレンジではあるだろう。


 気弱だけど人並みにスケベな男子高校生主人公クンが、同級のムサい眼鏡・デブ・金髪の下層カースト仲間にそそのかされて、付き合えばヤラせてくれるかも……とのナンちゃって下心で告白したらOKで、付き合い始めたことから始まる珍騒動。
 ラブコメのお約束のご都合主義で、この冴えない男子クンに実は気があった、下級生の妹系チビロリ爆乳&ツンツンした黒髪ロング学級委員のふたりがモーションをかけてくる歌舞伎的様式美まで設けてある。
 ただし変化球も投げており、主人公男子クンにではなく、メインヒロインのギャル子ちゃんに懸想している別のギャル子ちゃんもひとり設定することで、同期夏季アニメの『恋と嘘』同様に「同性愛」も入れている。


 ロリ声の小倉唯演じるチビ爆乳は途中で染めて黒髪からピンク髪となり――今日びの高校生はブラック校則どころか、校則なんて守ってないってことだネ!(笑)――、少年に上目遣いでアピールしてくる。正直ちょっとドギマギ。
 自宅ではギャル風カツラ&トークでナマ配信するユーチューバーでもある黒髪ロングの学級委員は、大ヒット深夜アニメ『けいおん!』(09年)の追加メンバー「あずにゃんペロペロ」から幾星霜の竹達彩奈(たけだつ・あやな)嬢が好演。


 序盤のツカミはよかったと思う。傑作だ! なぞと主張する気もないけど、一応は観られる作品に仕上がっているとも思う――ヒト様に薦める気もないけれど(汗)――。


 しかし、我々オタを露骨に蔑(さげす)むギャル連中は、オタ向け作品では脇役か悪役かそもそも教室にはいないことになっていて(爆)、ギャルではなく巨乳キャラですらもがサブキャラ止まりのお色気要員でメインヒロインには昇格しなくなって久しい現在、本作が覇権を取ることなどアリエナイだろうけど、アニメ化される程度にはニッチなニーズもあるようで、日本のオタの未来も安心だ。
 いやまぁ女性の側でリードしてほしい、筆下ろししてほしいという願望の発露と取れば、日本のオタの未来がやはり不安だけど(笑)。


 女子高生が一律にミニスカ&ルーズソックスと化したのは今は昔の1993年。その10年後の2003年でも両者は健在だったのだが、00年代の終わりまでに「ミニスカは死なず、ただルーズソックスは消え去るのみ」で消滅し、ルーズソックス・ファンの筆者は残念で仕方がナイ(オイ)。
 『とある魔術の禁書目録(インデックス)』(08年)シリーズの制服女子高生ヒロイン・御坂美琴(みさか・みこと)ちゃんにだけは、コレからも末永くルーズソックスを履き続けてほしいものである(笑)。
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ゲーマーズ!


 学園一の金髪お嬢さま系ヒロインが実は重度のゲーマーで、ゲーム同好会を舞台に、クラスの隅っこで(ひとり)ボッチしているオボコいおチビ系のゲーマー少年を好きになってくれる! というラノベ原作の深夜アニメ。
 ……のハズなのだが、メインヒロインよりもサブヒロイン&サードヒロインの方が目立っている。オカシいぞ、この作品は(笑)。


 髪型&私服に無頓着で、シャイさを隠すバリアとするためかボサボサの黒髪ロングで目許を隠し、休み時間は自席で孤独にゲームに興じるサブヒロインのオタ系(ひとり)ボッチ少女。


 話しかけられると赤面・緊張しながら、


「あのあの」「ですです」「そのその」「えとえと」


と片言を反復してテンパっている姿が、筆者もとい弱者男子には、


「異性にテレてしまう自分と同じだ!」「こんなボクでも値踏みして見下してこない!」


と実に強烈な共感&安心感を与えてくれる……(オイ)。


 サードヒロインであるピンク髪のチビ少女も単なる賑やかしかと思いきや、中学時代は黒髪の地味子ちゃんで、意中のガリ勉くんが高校デビューしたのに合わせて、自分もイメチェンしたのだと途中で明かされる。
 け、健気な。ドーでもイイ記号的なキャラだなぁと思っていた筆者のお株も急上昇!(笑)


 その元ガリ勉くんで高校デビューの長身イケメン君も、ドーせ俺のルックスに惹かれたミーハーだろと内心サメてたものが、この事実を知って改めてチビ少女にドギマギ。


 ……アレ? 主人公を中心としたハーレムものじゃなかったの? と訝しみつつ……。


 まぁ野郎の高校デビューも、上背・顔面偏差値・内心のキョドりを隠せるボイスなどが揃わないと困難だけど、内向的なオタの気持ちをむかしの自分だと理解して、主人公らの恋模様を応援する長身イケメン君も実にイイ奴だ。


 もちろんラブコメである以上は、即座に彼らが結ばれるワケがない。彼らの異性への不慣れから来る誤解&不器用から、長身イケメン君がオタ系ボッチ少女の恋を応援する姿に、チビ少女は彼氏の浮気だと誤解する。


 主人公とチビ少女は意外と気が合い仲良くするけど、その姿に長身イケメン君は動揺する。


 主人公とボッチ少女は、ゲームの話題では肝胆(かんたん)相照(あいて)らす仲で、ゲームに「萌え」が必要か否かでは反目するも(笑)、そんな光景にすらお嬢さまヒロインは内心嫉妬する。


 かくて、三角関係どころか四角・五角関係に。


 なのだけど、原作ラノベの挿絵と比して単純化された絵柄が効を奏したか、イイ意味でリアリティの階梯も下がって、浮気(? ~恋人以外の異性との会話・笑)を目撃するや、キャラの色が線画を残して白くなり、砂と化して崩れ落ち、その上をお相手が踏んで歩くようなバカ演出が施されるので、あくまでも楽しいコメディ。


 自作ゲームの数々をネット上でハンドルネームで長年応援してくれた御仁の正体が主人公少年であることをボッチ少女だけが知って、今までと同様の平静な会話ができなくなる、シリーズ後半の彼女の言動にも萌え。


 終盤では、ファミレスでオナ中(同じ中学)のギャルと再会したチビ少女も、地味子の過去をチャラ男どもにバラされたあげくに、イケてないゲーム同好会所属もバカにされて、「オタサー(クル)の姫として舞い上がり、キモオタ部員どものオナペットにされてるハズ」だと罵倒されてしまう!
 けれども、そんな礼節・公共心皆無で人間に上下を露骨に付けて悦に入りチョイ悪・不良性感度を気取っている、全人類の7~8割の正体はたしかにコレだろうと個人的には思える(笑)品性下劣な輩に、彼女が屈せず同好会仲間を友に選ぶと啖呵を切るのもポイント高し。


 まぁ3次元でそこまでヤルと学校や会社で浮くし、協調性ナシだとマイナス人事評価される理不尽な倒錯がまかり通るのも現実社会の厳然たる事実なので、内心ではともかく対外的にはネコをカブってヤリ過ごす方をウス汚れた筆者個人は勧めるけど、フィクションとしてはたしかに胸がすく描写ではある。


 ガチさを求めるゲーム部には入部せず、ユルく楽しむゲーム同好会を設立するあたりも、オタの生き方のモデルのひとつとして、自戒・反省も込めるけど実に示唆的でもある。


 いかにも頼りない主人公少年は、特撮オタク的には『手裏剣戦隊ニンニンジャー』(15年)のハスキーな美少年ボイスの着ぐるみレギュラー敵幹部・九衛門や、同季に放映が開始された『ウルトラマンジード』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180213/p1)の同じく着ぐるみレギュラーの正義側キャラクター、ペガッサ星人幼年体・ペガ君も演じている潘めぐみ嬢が好演。


 よって、神(かみ)傑作にもなりうる作品のハズなのに、作者・スタッフ・視聴者の誰もが感じていることであろうし、劇中でもメタ的にセルフツッコミ・自己言及もされるけど、作劇上の配分ミスなのか、正体はポンコツの愛すべきお嬢さまヒロインの物語的比重がとても低い。そのために作品の重心が定まらず、非常に散漫な印象を与えているとも思う。
 それでもメインヒロインである金髪お嬢さま美少女のビジュアル&金元寿子(かねもと・ひさこ)嬢が演じる性格良さげ・シッカリ者っぽいハキハキボイスは華があり、登場するだけで求心力があって、かろうじて作品を空中分解から救っていると私見
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異世界食堂


 毎週土曜日にだけさまざまな異世界に接続されるという、日本の某・商店街の雑居ビルの地下1階にある洋食屋さん。そこに集ってくるいろいろな種族の異世界人たちにも、ダンディーなボイスの諏訪部順一が演じているコックのソリッドなヒゲ面の親父さんは分け隔てなくビーフシチューやメンチカツにエビフライなどの庶民的な定番ランチをふるまって、異世界人たちも舌鼓を打っている……といった深夜アニメである。
 異世界人とのコミュニケーションには、設定では魔族でも見た目は金髪ミニツインテールでメイド服姿の人間にしか見えない美少女キャラ・アレッタ嬢が、空腹の果ての無銭飲食の果てに雇われて給仕として働きだすというエピソードを序盤に配することで、作品に女っ気と華(はな)をも与えている。アレッタ嬢を演じるのはアイドル声優上坂すみれ(うえさか・すみれ)。
 そして、30分尺に前半Aパートと後半Bパートで2話を放映するというスタイル。


 私事で恐縮だが、職場の同僚の雑談などに耳をそばだてていると、ネット配信の深夜ドラマ『孤独のグルメ』(12年)や『深夜食堂』(09年)や『ワカコ酒』(15年。5分アニメ版より実写版の方が面白いと私見)にハマっているという声が聞こえてくることがある。
 筆者もザッピング視聴をしていて、それらの作品に遭遇すると、明らかに低予算でゲストの数も少なく、ロケにもほとんど外出しないのに、それでも「食」や「客」の人生に焦点を当てていって味わい深く仕上げた作風に、ついつい見入ってしまったりすることがある。


 本作も原作者のアイデアか編集者の要望かは知らねども、それらのオタク向け異世界ファンタジー版といったところだ。くれぐれも云っておくけど、先行作のマネだと罵倒したいのではナイ。先行作から着想を得たミックス・アレンジであろうとも、面白ければそれでイイし、ツマラなければそれまでのことである。


 とはいえ、悪くはないけど、本作とよく似通っている『深夜食堂』あたりに本作が圧倒的に勝っているかというと……(以下略)。
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ナイツ&マジック


 一応、異世界を舞台にした巨大ロボットアニメ。
 前世では冴えない眼鏡のプログラマーだったオタク青年が、事故で死亡して異世界に転生するや、ショタ受けしそうな銀髪セミロングでハスキーボイスの美少女っぽいローティーンの半ズボン美少年として成長し、そのオタクスキルで巨大ロボ乗りとして頭角を現していく。


 その設定だけを見れば、17年冬アニメの『幼女戦記』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190304/p1)と似ているともいえなくもない。
 しかし本作のファンの方々には申し訳ないけど、あちらが「判ってますよ、オタにとって都合のイイ世界ですよ、傍から見ればイタイですよ、ナンちゃって」感のある「高2病」的なモノだとしたら、こちらは「現実から逃避して別世界へ行きたい! 美少年に生まれ変わって自己愛を満たし、周囲からもチヤホヤされたい!」という願望に、自己懐疑もなく浸っている「真性中2病」作品といった印象だ。
 とはいえ、コレはスレたオッサンの斜(はす)に構えた印象で、本来のアニメの標的年齢層(ローティーン!? だったハズ・笑)を考えれば、コレでイイのだろう。
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『アクションヒロイン チアフルーツ


 「ローカルご当地アイドル」が地方で町興し(まちおこし)する深夜アニメというと、『サクラクエスト』(17年)や『普通の女子高生が【ろこどる】やってみた。』(14年)の2作を想起する。


 しかし、本作の「ローカルアイドル」は、いわゆる「ご当地ヒーロー」ならぬ「ご当地ヒロイン」! 全国各地で「ローカルヒロイン」が隆盛を極めているというウソっぱちの世界観で、地方の女子高生がオリジナルの「スーパー戦隊」――むろん顔出し(笑)――を結成して、悪の怪人と戦うのではなく、ヒーローショーを披露するといった内容であった(笑)。


 ホンモノの「スーパー戦隊」出身であり、『海賊戦隊ゴーカイジャー』(11年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20111107/p1)のゴーカイイエローをナマ身で演じてきたM・A・O(まお)ちゃんが、またまたあまたの2017年の深夜アニメ(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190924/p1)とも同様に主演声優を務めている!


 しかし、主人公なのにクールな性格の女子役なので、筆者には「赤」「青」「黄」などの色を苗字に持った、劇中では第1話よりも以前からヒーローショーのステージに立っていたというキャラたちの方が、アイドル性や華(はな)があって印象に残ってしまう。


 この「スーパー戦隊」でもある女のコたちの集団のなかには、「特オタ(特撮オタク)」も「鉄オタ(鉄道オタク)」も同時に並存している天文学的な確率については、そこは漫画アニメなのだからツッコミを入れるのはヤボであろう。とにかく、この作品世界においてはそうなっているということでイイのだ。


 本作の脚本は特撮・アニメ作品も幅広く手掛けている荒川稔久(あらかわ・なるひさ)。なので、特撮パロディも満載だ。同じく荒川が手掛けた特撮パロが満載のヒロイン戦隊ものラノベ原作の深夜アニメ『俺、ツインテールになります!』(14年)同様に、90歳を超えた大御所・渡辺宙明(わたなべ・ちゅうめい)センセイが別のチームの先輩「ご当地ヒロイン」のために楽曲を提供しており、そこにワザワザ1980年代風の特撮変身ヒーローもののオープニングを再現したイメージ映像などもカブせている――字幕テロップも21世紀の今日における微量にオシャレでセンスもある小さな書体とは異なり、当時の小さなTV画面ではともかく今見るとヤボなほどに巨大な書体が再現されてもいるのだ!――。


 とはいえ、そういった描写があるからといって、特オタである筆者も本作を認める! なぞといった気にはならない(笑)。


 さまざまな性格の女子高生たちが仲間を集めて、自分の得意分野でヒーローショーの興行に協力し、困難を乗り越えて勝利をつかんでいく……といった展開であったあたりで、全国各地でスクールアイドルが勃興中! という、やはりウソっぱちな世界観でも、実に楽しい物語を紡いで内容的にも人気面でも大成功していたアイドルアニメ『ラブライブ!』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20150615/p1)なども想起させてはくる。
 しかし、あちらが「バカ設定」であるにもかからず「ガチ熱血」「ガチギャグ」「ガチ萌え」で取り組んでいたのに比すると、ユル~く流して作っている印象なのである。


 それ自体がまた「ねらい」なのだろうけど、個人的にはそこが物足りないのだ。


 では、ドーすればイイのだろうか?


 「日常場面」では女のコたちの「萌え」を前面に押し出す。しかし、劇中劇でもある「ヒーローアトラクショー」における「正義の戦隊ヒロインズvs悪の軍団」の方では、シナリオなりアクション演出の温度を、本編とは多少遊離してでも高めてみせたり、さらにはテーマもどきの道徳説教(笑)などを絶叫させれてみれば、もっとメリハリが付いたのではなかろうか!? などとも愚考をしてしまうのだ。


 とはいえ、「作画」も「動き」も一級レベルではない並みの予算のアニメなので、そういった増強や演出もまた高望みであったり、「付け焼き刃」で「焼け石に水」といったオチになってしまったかもしれないけど(笑)。
アクションヒロイン チアフルーツ Vol.4【Blu-ray】


『天使の3P!(スリーピース)』


 サラサラ薄茶ヘアの繊細そうな不登校の男子高校生クンが、動画配信サイトにUPしていた自作ギター楽曲への反応をキッカケに、オフでヒト様に会ってみたら、それは児童養護施設に住まう儚(はかな)げな美少女小学生3人によるロックバンドであった! というお話。


 なのだけど、そーいったお話自体は言い訳で、批判ではなく云うけれど、肉体性も感じられるナマっぽい表情豊かで気まぐれな女のコを描こうというのではさらさらなく、アンニュイ・気怠げで覇気や刺激臭は巧妙に除去した、垂れ目の無気力・脱力・従順系で、アニメ記号的なキャラ付けの「わにゃ」とか「はむ」とかを口癖とする、ロリロリしたお嘆美系5頭身美少女キャラたちをフェティッシュに愛でるアニメ作品だ。


 こーいうのは専門・適任の方に語っていただくのがベストで、門外漢が出しゃばるべきではナイのは重々承知している。
 しかし、本作を愛する方々には非常に申し訳ないけれども、同じ原作者が手掛けたラノベ原作の深夜アニメ、「小学生は最高だぜ!」(笑)をキャッチコピーに美少女小学生たちのバスケットボール部を描いた『ロウきゅーぶ!』(11年)同様、この儚げロリに特化した絵柄自体に罪はナイのだが、この絵柄にフェティッシュな視線をそそぎ、「可愛いものが判ってしまう」我々オタが、ハァハァしている特殊性癖が背後に透けて見えてしまうのか(汗)、世間一般がそれを直感的にキモく思うのも、ある程度までは仕方がナイことではあるだろう。


 いやいや、ロリじゃない、フェティッシュだけじゃない、ドラマやテーマもある! と主張する御仁もいようけど、もっとスナオになろうよ。そこにフェティッシュな感情が微塵たりともナイとは云わせない。もちろん小声で好意を表明すればイイのであって、大声で絶叫してカミングアウトすべきだとも云わないけれども(笑)。
 オール・オア・ナッシングで踏み絵を迫っているワケではなく、天下の公道でヒケらかして大手を振って歩けというのでもない、ある種の最先端(?)でありつつも、少々背徳感もあるウラ通りの日陰に繁茂する隠花植物のポジションで本作をマッピングしてみせればイイのだろう。
天使の3P! ドラマCD


クリオネの灯り


 教室で(ひとり)ボッチの意志薄弱そうな女のコ。案の定、心ないクラスメートの男女どもからイジメの標的とされて、残酷な言葉を投げかけられている。


 その光景に心を痛めながらも、腕力・胆力・人格力がナイために、教室内では彼女を助けることができない、クラスメートの心ある男のコひとり&女のコひとり。
 そんな彼らが取った行動は、クラスメートたちに見られないように、バレないように、自身たちもイジメられっ子の仲間と見なされてターゲットにされないように(汗)、校外や校舎の屋上や下駄箱のウラで彼女と付き合い、昼食や行動を共にすることであった……。
 という非常に地味な題材の1クールの10分アニメ。


 本稿執筆のためにググってみたら、10年以上前の2004年にネット上で発表、注目も集めて舞台化もされ、2010年代に至って商業書籍化もされた小説が原作なのだそうだ。筆者はその存在を全然知らなんだけど。


 明らかに低予算で、それを逆手に取ったかキャラデザも作画崩壊が目立たないようにか描線もシンプルで、女のコのキャラでもカールして何本も突き出たマツ毛表現などはなく、太めのヨコ棒一線での表現だったりもする。


 イジメ自体は解決せず、難病ものにスリ替わることで悲劇として決着するあたりはドーかとは思うものの、まぁフィクションに実効性があるイジメの解決法を期待するのもナイものねだりなのだし、万全の解決ではなくマイナス100をマイナス50にするだけでも救いはあると見るならば、コレはコレでイジメに対する現実的な処方箋という気もしてくる。


 下手ウマな味わいがある作品だが、ヒト様には勧めにくい(汗)。
ドラマCD「クリオネの灯り-男子たちの放課後-」 通常版


ようこそ実力至上主義の教室へ


 ライトノベル原作の深夜アニメで、昨今流行りのスクールカーストものである。あまたの深夜アニメの主題歌も熱唱するZAQ(ザック)が作詞・作曲した主題歌のタイトルも、そのものズバリ「カースト・ルーム」だ。


●クラスの中心人物にはなれなさそうであるカッタるげな主人公の高校生男子クン
●黒髪ロングの他人とは交わらないクールな女子高生メインヒロイン
●愛想がよくて愛くるしい女子高生サブヒロイン


 鉄板(てっぱん)のアリガチなキャラクターシフトではある。


 #1冒頭では、入学式直後の教室にてクラスの中心人物になりそうな男女たちが主導して自己紹介がはじまる。
 対外的にも恥ずかしくはないモテ趣味や得意スポーツを披歴して如才なくアピールできる者たちに、主人公男子が引け目を感じたり居心地の悪さを感じるサマは、筆者も幼少時~今に至るまで何度も経験してきた心のキズである(笑)。
 同様のスクールカーストを描いていた(ひとり)ボッチもの深夜アニメの大傑作『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20150403/p1)の序盤、クラスでカースト上位層の横暴に制止の声を上げたいけど上げられない主人公男子のシーンのことを連想した諸兄も多いだろう。


 『やはり俺の~』はそんな酷薄なカースト社会で、一応の公平や正義を求めて主人公男子クンが知恵を絞ってウラ側からカラめ手で戦っていくサマと、三角関係のラブコメ風味を味あわせてくれる作品だったので、本作もその亜流なのであろうかと思いきや……。


 近未来的なハイテク学園都市を舞台に、まずは愛くるしいサブヒロインは#3で激しい本性(?)を人気のない場所で垣間見せる。
 その姿を目撃してしまった主人公男子クンを口止めするために、自身の巨乳に制服の上から手を触らせ指紋を付けることで、キツい目付きで「バラしたらレイプされたと騒ぐ」と脅すのだ!


 物語も舞台となる学年最下位の1年D組を超えて、A~C組の面子も交えた学園バトルロイヤルの様相を呈していく。
 主軸のD組についても、メインの3人の男女キャラだけではなく、ヤンキーDQN(ドキュン)生徒の成績不良やケンカ騒動、ガチンコ対面のコミュニケーションは苦手だけどネット上では大胆にふるまえるコスプレ少女の挿話などをシリーズ前半に配置する。シリーズ後半では夏休みの臨海学校クルーズや、学級委員クン・チャラ男・ギャル子らの生態や彼らの意外な一面なども、無人島でのクラス対抗サバイバルにおける権謀術数合戦と並行して描いていく。


 スクールカースト・バトルロイヤルもの全般に云えることだけど、偽悪的にそれらを肯定して、作品自体が現代の多様な価値観の象徴だとも作り手は往々にしてウソぶいている。しかし、実際にはバトルロイヤルにエゴイスティックにガンガンと参戦する陣営には主人公を配してはいない。たいていはバトルロイヤルをなんとか止めようとする、せめてブレーキはかけようとしている良心的な連中が主人公側の陣営として設定されるのだ(笑)。
 つまり、云われているほどアナーキー(無秩序)でも斬新でもなかったりするのだけど(批判ではなく)、基本的には本作もまたそのクチではあった。


 そして、バトルロイヤルにブレーキをかけるためにも、逆説的に実力・権謀術数が必要となってしまうというジレンマを描いたあたりは、本作の独自性・アドバンテージではあるのだろう。個人的には2017年夏アニメのナンバー1である。
ようこそ実力至上主義の教室へ 1 [レンタル落ち]


(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.70(17年12月30日発行))


恋と嘘

(2017年12月26日脱稿)


 昨今流行りのスマホ漫画原作の深夜アニメ。


 冴えないオトナしげな人畜無害でヒトの良さそうな男子高校生クン。いかにも性格良さげでシットリとしつつも、適度に元気はあって華もある黒髪ショートの美少女女子高生。ちょっと張り詰めた感じでヒトを拒絶するバリアを張っている風だけど、芯は弱そうな感じのピンク髪のツインテールの美少女女子高生。主人公少年クンがこのふたりの美少女女子高生のうちのドチラを選ぶべきかで揺れるラブコメ


 コレだけならアリガチなキャラクターシフトなのだけど、本作の秀逸なところは、今をさかのぼること40年以上も前の1975(昭和50)年に16歳以上の男女に対して、統一教会教祖の霊感・直感ではなく(笑)、科学的・遺伝情報的・人間心理(相性)的に、政府(厚生労働省)が結婚相手を決定し、しかもそれがけっこうウマくいっていて、各自が幸福な家庭生活を営めてもおり、少子化対策にも成功したオルタナティブ現代日本! という舞台設定であることだ――1975年時点ではDNA審査はまだムリだったハズだけど、それはさて置こう――。
 この大設定に伴ない、計算や打算ヌキでの主人公少年クンの小学校時代からの5年越しの初恋・片思いのお相手については、黒髪ショートのコに設定。政府が強制的に決めた結婚相手については、ピンクのツインテ嬢に割り振りする。


 ここで、自由恋愛・相思相愛こそが絶対正義で、親なり政府が決めたお見合いや結婚は当人同士の自主性を無視して強制された前近代的な問答無用の巨悪である! その象徴として、ピンクのツインテ嬢には悪役もしくは損な役回りに割り振る! というような安直な善悪二元論の作品であったならば、筆者個人は本作を陳腐でステロタイプな凡作であると認定したであろう。しかし、このピンクのツインテ嬢もまた実に魅力的でイイ娘に描かれているのである。
 成績はイイけれども、幼少時から病欠がちゆえ、クラスでも(ひとり)ボッチで頑なな感じ。威圧感などカケラもないヤサ男の主人公の男子高校生クンに対してさえ、異性が苦手で結婚や恋愛などまだ考えたくもないオボコい感じのピンクのツインテ嬢はツンツンとしており、異性と同席していると会話や場を保たせられないテレ隠しゆえに彼のことを邪険にするけど、その姿はちっとも怖くない(笑)。


 もちろんドラマチックな基本設定・舞台設定だけでも即座に傑作が仕上がるワケではない。
 #1は主人公男子クンと黒髪メインヒロインとの関係描写だけに焦点をあてている。先の作品世界の政府主導の結婚政策の説明はアバンタイトルで手短に済ませて、高校でのクラスの休み時間に、


「16歳になったので、もうすぐ政府通知が来るぞ!」


という期待と不安に胸を膨らます友人男子たちと軽口を叩きつつも気もそぞろで、自席に着席しつつもチラチラと黒髪メインヒロインの立ち居ふるまいをヨコ眼で追ってしまう主人公少年クンの姿が序盤で描かれる。
 この一連のシークエンスが非常にウマい! 高校生たちの結婚に対する期待&不安と、好ましい異性に対しては本能的に万人に起こりうる「あるある感」満載の主人公の挙動描写の並立に、まずはグッと感情移入をさせられる。


 その彼の視野に写る、友人の女子生徒たちと談笑し、笑うときには口に手をやり、時に髪をカキ上げて耳を出し、その仕草にもまたワザとらしさが感じられず、いかにも性格良さげで、こぼれ落ちんばかりの輝く笑顔を見せつける天使のような黒髪メインヒロイン!
 絵柄としては、淡泊なサッパリ風味で今風の少女マンガ的な文脈でありつつも、女子好みの痩身キャラではなく、もちろんおデブさんではないけれども、それなりの巨乳であるキャラクターデザインでもあることから、その「少女性」に微量に「母性的」な優しさ&包容力をも宿らせることができている。


 彼女にかぎらず本作のヒロインたちの大きなお目めも含めたキャラデザには、吸い込まれそうな可愛さ&抑えたイロケがあり(しかしエロではない)、とても魅力的に仕上がっているとは思うけど……。ガチなオタ向け作品における美少女キャラの萌え媚び描写とはやや文脈が異なるようには思うので、そっちの方面ではウケませんかネ?(汗)


「結婚はオトコの墓場だ! オレたちは政府通知を無視して一生、未婚でいよう!」(大意)


と男子数人が円陣を組んで、その中心に伸ばした片腕を交差させて、


「オーーッ!!!」


と勝ちどきをあげるや、作者はそこに黒髪ヒロインもナチュラルに混入させており、彼女もいっしょに、


「オーーッ!!」


と叫ばせる。


 エエ~~~ッ!? とばかりに驚愕している非モテ男子どもの反応をヨソに、余裕と可憐さを同時に兼ね備えた声質の花澤香菜(はなざわ・かな)嬢のボイスで、


「アレ、女子は混ざっちゃイケなかった?(……テヘッ)」


と笑顔でウソぶく黒髪メインヒロイン。


 劇中男子ども・視聴者・筆者も含めてみんなが悶絶!(爆) ……もちろん今後の展開へのテーマ的伏線も兼ねたキャラ付け・キャラ性表出描写でもあるけれど。


 #1のBパート~ラストでは、主人公少年がついに今世でのお別れとばかりに、夜の公園に黒髪メインヒロインを呼び出してみせる。
 待てども来ない。もう来ないのかと思いきや、黒髪メインヒロインがついにお出まし! そこで自分の長年の好意を告白する主人公少年クンに対して、黒髪メインヒロインも涙を流して「実は自分もそーだった」……とのたまう。


 ナンというオタク男子・弱者男子にとっての都合がいいファンタジー! こんな頼りなくて弱いオスに、引く手あまたで選びたい放題の優位なメスがホレるかよ!? アリエナイよ! リアルに考えたら「キモッ! ストーカー!!」と罵られて終わりだよ! ……と理性ではケナしつつも、感情面では釣られて落涙している全オレがいる(笑)。


 そのとき、主人公少年クンのスマホに彼の結婚相手が通知されてくる。そのお相手は当の黒髪メインヒロイン!
 喜びに打ち震える主人公少年クンだが、しばらくすると、その画像が崩れだし別人の名前がそこに浮かびあがる。眼の錯覚であったのかハッキングにあったのかは判然としない……。


 先に主体である主人公少年クンが、客体であるWヒロインのドチラを選ぶかで悩むかのようにも書いたけど、この作品はWヒロイン側にも主体性をカナリ持たせていて、友人となったヒロイン同士が彼への好意とはウラハラに互いに譲り合い、そのことでプチ幸福を味わうも同時に傷付いていく逆説なサマも描いていく。


 そこに主人公少年クンと終始つるんでいる美少年生徒クンも、実は主人公少年クンに対して純愛感情を抱いていたことが視聴者にだけは明かされて(同性愛!)、女性視聴者のBL(ボーイズ・ラブ)感情も満たしていく……。
 さらには万人に愛される明るい黒髪メインヒロインのことを実は過去には苦手に思っていたり、彼女の言動を媚び媚びとした演技やポーズなのでは? と疑っていたことがあったものの、彼女がガチであることを知って改心して黒髪メインヒロインの熱烈隠れ信者と化したアンニュイな銀髪ロング娘も登場させることで、百合方面の需要も喚起!?
 ゲストや第三者を介さずとも、彼ら彼女らの多角形や対角線の間の引力や斥力を描くだけで、物語も駆動されていくし、ワイドショー的な色恋への視聴者側のヤジ馬関心も惹起されていく。


 しかし、原作未完作品にアリガチな、あやふやなTVアニメ版の最終回の出来はともかく、そのラストで主人公少年クンにモノローグで結婚強制社会を「この狂った社会」と云わせたことだけは、個人的にはやや安っぽく思える。
 歴史的にも世界史的にも自由恋愛ではなく、国家といわず地域や旅商人やお節介婆ァなどが媒介して男女を結婚させていた形態の方が主流なのは学問的にも自明なのだから、全肯定はしないまでも本作の世界観を「狂った社会」と全否定的に形容するのは底が浅く思えるのだ。
 100か0かではなく、トータルでは自由恋愛や主人公少年&黒髪メインヒロインの相思相愛の方に分を認めるにしても、科学的な合理性をも兼ね備えて最大多数の最大幸福も実現してみせた結婚強制社会にも相応の理を主人公少年クン自身も認めた上での懊悩・逡巡……といった心理描写にしておかないと、せっかくの深みや多面性もウスれてしまうようには思うので。


 ……モテる男女は何度離婚しようが何度でも結婚ができ、非モテ男女は一生恋人すら作れない、この新自由主義的な社会の方が……(ルサンチマンが続くので、以下略・笑)。
Love And Lies Blu-Ray(恋と嘘 全12話)


(了)
(初出・オールジャンル同人誌『DEATH-VOLT』VOL.80(17年12月30日発行))


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  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20181208/p1

2018年秋アニメ評! 『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない』 ~ぼっちラブコメだけど、テレ隠しに乾いたSFテイストをブレンド

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190706/p1

2018年秋アニメ評! 『ゴブリンスレイヤー』 ~レイプに売春まで!? 周縁のまつろわぬ民は常に憐れで正義なのか!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200209/p1

2018年夏アニメ評! 『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』 ~声優がミュージカルも熱演するけど傑作か!? 賛否合評!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190728/p1

2018年春アニメ評! 『ヲタクに恋は難しい』 ~こんなのオタじゃない!? リア充オタの出現。オタの変質と解体(笑)

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200216/p1

2017~18年アニメ評! 『魔法使いの嫁』『色づく世界の明日から』 ~魔法使い少女にコミュ力弱者のボッチ風味を加味した良作!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201129/p1

2017~18年アニメ評! 『異世界食堂』『異世界居酒屋~古都アイテーリアの居酒屋のぶ~』『かくりよの宿飯』 ~西欧風異世界×現代日本の食 その接合は成功しているか!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20211205/p1


2017年秋アニメ評! 『結城友奈は勇者である-鷲尾須美の章-』 ~世評はともかく、コレ見よがしの段取りチックな鬱展開だと私見(汗)

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190926/p1

2017年夏秋アニメ評! 『はじめてのギャル』『僕の彼女がマジメ過ぎるしょびっちな件』 ~オタの敵・ギャルやビッチのオタ向け作品での料理方法!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201220/p1

2017年夏アニメ評! 『ようこそ実力至上主義の教室へ』1期・総括 ~コミュ力弱者がサバイブするための必要悪としての権謀術数とは!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220925/p1

2017年夏アニメ評! 『地獄少女 宵伽(よいのとぎ)』 ~SNSイジメの#1から、イジメ問題の理知的解決策を参照する

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191201/p1

2017年春アニメ評! 『冴えない彼女の育てかた♭(フラット)』 ~低劣な萌えアニメに見えて、オタの創作欲求の業を美少女たちに代入した生産型オタサークルを描く大傑作!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191117/p1

2017年春アニメ評! 『正解するカド KADO: The Right Answer』 ~40次元の超知性体が3次元に干渉する本格SFアニメ。高次元を材としたアニメが本作前後に4作も!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190929/p1

2017年春アニメ評! 『ID-0(アイ・ディー・ゼロ)』 ~谷口悟朗×黒田洋介×サンジゲン! 円盤売上爆死でも、宇宙SF・巨大ロボットアニメの良作だと私見

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190924/p1

2017年春アニメ評! 『ゼロから始める魔法の書』 ~ロリ娘・白虎獣人・黒幕悪役が、人間×魔女×獣人の三つ巴の異世界抗争を高踏禅問答で解決する傑作!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191128/p1

2017年冬アニメ評! 『幼女戦記』 ~異世界近代での旧独vs連合国! 新自由主義者魔法少女vs信仰を強制する造物主!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190304/p1

2017年冬アニメ評! 『BanG Dream!バンドリ!)』 ~「こんなのロックじゃない!」から30数年。和製「可愛いロック」の勝利!(笑)

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190915/p1

2016~18年アニメ評! 『怪獣娘ウルトラ怪獣擬人化計画~』1期&2期、映画『怪獣娘(黒)~ウルトラ怪獣擬人化計画~』評!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210919/p1

2016~18年アニメ評! 『チア男子!!』『アニマエール』『風が強く吹いている』 ~チア男女やマラソン部を描いたアニメの相似と相違!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190603/p1

2016~17年アニメ評! 『くまみこ』『ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?』『ネト充のススメ』 ~コミュ症女子を描いた3作品の成否は!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201213/p1


2016年夏アニメ評! 『ラブライブ!サンシャイン!!』 & 後日談映画『ラブライブ!サンシャイン!! Over the Rainbow』(19年) ~沼津活況報告 & 元祖に負けじの良作と私見

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200628/p1

2016年夏アニメ中間評! 『ももくり』『この美術部には問題がある!』『チア男子!!』『初恋モンスター』『Rewrite』『ReLIFE』『orange』

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160903/p1

2016年春アニメ評! 『迷家マヨイガ-』 ~現実世界からの脱走兵30人! 水島努×岡田麿里が組んでも不人気に終わった同作を絶賛擁護する!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190630/p1

2016年春アニメ評! 『マクロスΔ(デルタ)』&『劇場版マクロスΔ 激情のワルキューレ』(18年) ~昨今のアイドルアニメを真正面から内破すべきだった!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190504/p1


2015~16年アニメ評! 『それが声優!』『ガーリッシュ ナンバー』 ~新人女性声優たちを描くも、地味女子・ワガママ女子を主役に据えた2大美少女アニメ評!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220703/p1

2015~16年アニメ評! 『GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』1期&2期  ~ネトウヨ作品か!? 左右双方に喧嘩か!? 異世界・異文化との外交・民政!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20211010/p1


2015年秋アニメ評! 『ワンパンマン』 ~ヒーロー大集合世界における最強ヒーローの倦怠・無欲・メタ正義・人格力!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20190303/p1

2015年秋アニメ評! 『コンクリート・レボルティオ~超人幻想~』 往年の国産ヒーローのアレンジ存在たちが番組を越境して共闘するメタ・ヒーロー作品だけれども…

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20190302/p1

2015年秋アニメ評! 『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』 ~長井龍雪岡田麿里でも「あの花」「ここさけ」とは似ても似つかぬ少年ギャング集団の成り上がり作品!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191105/p1

2015年夏アニメ中間評! 『GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』『六花の勇者』『おくさまが生徒会長!』『干物妹!うまるちゃん』『実は私は』『下ネタという概念が存在しない退屈な世界

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20150901/p1

2015年春アニメ評! 『響け!ユーフォニアム』 ~良作だけれど手放しの傑作だとも云えない!?

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160504/p1

2015年冬アニメ評! 『SHIROBAKO』(後半第2クール) ~アニメ制作をめぐる大群像劇が感涙の着地!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160103/p1


2014年秋アニメ評! 『SHIROBAKO』(前半第1クール) ~アニメ制作の舞台裏を描く大傑作爆誕

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20151202/p1

2014年秋アニメ評! 『クロスアンジュ 天使と竜の輪舞(ロンド)』 ~ガンダムSEEDの福田監督が放つ逆「アナ雪」! 女囚部隊に没落した元・王女が主役のロボットアニメの悪趣味快作!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191222/p1

2014年秋アニメ評! 『ガンダム Gのレコンギスタ』 ~富野監督降臨。持続可能な中世的停滞を選択した遠未来。しかしその作劇的な出来栄えは?(富野信者は目を覚ませ・汗)

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191215/p1

2014年秋アニメ評! 『失われた未来を求めて』『天体(そら)のメソッド』 ~絶滅寸前! 最後の「泣きゲー」テイストの2大深夜アニメ! 良作なのに不人気(涙)

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220918/p1

2014年春アニメ評! 『ラブライブ!』(第2期)

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160401/p1


2013~14年3大アイドルアニメ評! 『ラブライブ!』『Wake Up,Girls!』『アイドルマスター

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20150615/p1

2013年秋アニメ評! 『WHITE ALBUM 2』 ~「冴えカノ」原作者が自ら手懸けた悲恋物語の埋もれた大傑作!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191115/p1

2013年秋アニメ評! 『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』 ~低劣な軍艦擬人化アニメに見えて、テーマ&萌えも両立した爽快活劇の傑作!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190922/p1

2013年秋アニメ評! 『サムライフラメンコ』 ~ご町内⇒単身⇒戦隊⇒新旧ヒーロー大集合へとインフレ! ヒーロー&正義とは何か? を問うメタ・ヒーロー作品!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20190301/p1

2013年夏アニメ評! 『げんしけん二代目』 ~非モテの虚構への耽溺! 非コミュのオタはいかに生くべきか!?

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160623/p1

2013年春アニメ評! 『這いよれ!ニャル子さんW(ダブル)』

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20150601/p1

2013年春アニメ評! 『惡の華』前日談「惡の蕾」ドラマCD ~深夜アニメ版の声優が演じるも、原作者が手掛けた前日談の逸品!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191006/p1

2013年冬アニメ評! 『まおゆう魔王勇者』『AMNESIA(アムネシア)』『ささみさん@がんばらない』 ~異世界を近代化する爆乳魔王に、近代自体も相対化してほしい(笑)

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200123/p1

2013年冬アニメ評! 『ラブライブ!』(第1期)

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160330/p1


2012年秋アニメ評! 『ガールズ&パンツァー』 ~爽快活劇に至るためのお膳立てとしての設定&ドラマとは!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190622/p1

2011年春アニメ評! 『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』 ~別離・喪失・齟齬・焦燥・後悔・煩悶の青春群像劇の傑作!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191103/p1

2011年冬アニメ評! 『魔法少女まどか☆マギカ』最終回「わたしの、最高の友達」 ~&『フリージング』『放浪息子』『フラクタル

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120527/p1

2010年秋アニメ評! 『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』 ~萌え対象かつオタの自画像! 二重構造化させた妹を通じたオタ社会の縮図!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20121015/p1


2008年秋アニメ評! 『鉄(くろがね)のラインバレル』 ~正義が大好きキャラ総登場ロボアニメ・最終回!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090322/p1

2008年春アニメ評! 『コードギアス 反逆のルルーシュR2』 ~総括 大英帝国占領下の日本独立!? 親米保守vs反米保守!?

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20081005/p1

2008年春アニメ評! 『マクロスF(フロンティア)』(08年)#1「クロース・エンカウンター」 ~先行放映版とも比較!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080930/p1

2008年春アニメ評! 『マクロスF(フロンティア)』最終回評! ~キワどい最終回を擁護!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20091122/p1

2008年冬アニメ評! 『墓場鬼太郎

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080615/p1


2007年秋アニメ評! 『機動戦士ガンダム00(ダブルオー)』 ~第1期・第2期・劇場版・総括!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100920/p1

2007年秋アニメ評! 『GR ジャイアントロボ』 ~現代風リメイク深夜アニメだが、オタク第1世代の東映特撮版への郷愁も喚起!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080323/p1

2007年春アニメ評! 『ゲゲゲの鬼太郎』2007年版

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070715/p1


2006年秋アニメ評! 『天保異聞 妖奇士(てんぽういぶん あやかしあやし)』 ~幕末目前の外れ者集団による妖怪退治! 頭デッカチな作りだがキライになれない…

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070317/p1

2006年夏アニメ評! 『N・H・Kにようこそ!』

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061119/p1


2005年秋アニメ評! 『BLOOD+(ブラッド・プラス)』

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20051025/p1

2005年春アニメ評! 『英国戀(こい)物語エマ』

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20051022/p1

2005年春アニメ評! 『創聖のアクエリオン』 ~序盤寸評

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20051021/p1


2004年秋アニメ評! 『機動戦士ガンダムSEED DESTINY(シード・デスティニー)』 ~完結! 肯定評!!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060324/p1

2004年春アニメ評! 『鉄人28号』『花右京メイド隊』『美鳥の日々(みどりのひび)』『恋風(こいかぜ)』『天上天下

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20040407/p1

2004年冬アニメ評! 『超変身コス∞プレイヤー』『ヒットをねらえ!』『LOVE♡LOVE?』『バーンアップ・スクランブル』『超重神グラヴィオン ツヴァイ』『みさきクロニクル ~ダイバージェンス・イヴ~』『光と水のダフネ』『MEZZO~メゾ~』『マリア様がみてる』『ふたりはプリキュア

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20040406/p1


2003年秋アニメ評! 『カレイドスター 新たなる翼』 ~女児向け・美少女アニメから真のアニメ評論を遠望! 作家性か?映画か?アニメか? 絵柄・スポ根・複数監督制!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20040408/p1

2003年春アニメ評! 『妄想科学シリーズ ワンダバスタイル』『成恵(なるえ)の世界』『宇宙のステルヴィア』『ASTRO BOY 鉄腕アトム

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20040403/p1