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シン・ウルトラマン徹底解析 ~賛否渦巻くワケも解題。映像・アクション・ミスリードな原点回帰・高次元・ゾーフィ・政治劇・構造主義・フェミ!

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『シン・ウルトラマン』徹底解析 ~賛否渦巻くワケも解題。映像・アクション・ミスリードな原点回帰・高次元・ゾーフィ・政治劇・構造主義・フェミ!

(文・T.SATO)
(2022年5月29日脱稿・6月18日後半部分を加筆)


 巨大怪獣や巨大宇宙人と戦う正義の巨大ヒーローというフォーマットを構築した、本邦初の特撮巨大変身ヒーローである初代『ウルトラマン』(66年)。そのリブート映画『シン・ウルトラマン』(22年)が劇場公開された。


 原典の初代『ウルトラマン』にて各話の冒頭に配されていたメインタイトルのロゴ映像――フィルムの逆回転状で多彩な「絵の具」を垂らしたような、いわゆるマーブル模様の映像が次第に前番組『ウルトラQ』(66年)のメインタイトルになっていく……と思ったら、画面下中央から破裂していくように『ウルトラマン』のタイトルロゴが出現――にも準じて、ナゼかまず『シン・ゴジラ』のタイトルロゴが出現して、画面下中央から破裂していくように『シン・ウルトラマン』のタイトルが出現している。


 つづいて、『ウルトラQ』の栄えある#1にも登場した古代怪獣ゴメスが、#4に登場した巨大植物マンモスフラワーが、#5と#14に登場した冷凍怪獣ペギラが、#12に登場した巨大怪鳥ラルゲユウスが、#24に登場した貝獣ゴーガならぬカイゲルが、#18に登場した四足歩行怪獣のパゴスといった、ゴーガを除けば同作全28話における人気怪獣たちが、それぞれに巨大不明生物1号・2号・3号~6号とナンバリングされた字幕付きの短いショットで連続登場を果たしていく。


 原典である初代『ウルトラマン』においても、前番組『ウルトラQ』の巨大怪獣や宇宙人が再登場を果たすことで、同一世界での出来事であり、『Q』は前日談でもあったのだ! ということが示されて、往時の子供たちを喜ばせてもいた。
 それに準じて、本作『シン・ウルトラマン』でも同様に、同作の近過去にはやはり『ウルトラQ』での出来事に類似した事件が起きていた。場合によっては、『シン・ゴジラ』がさらなる前史であっても不思議ではないのかも!? といったことも示唆されているのだ。


――などと云いつつ、『シン・ゴジラ』との連続性をも感じられている方々には申し訳がないけど、中堅イケメン俳優・竹野内豊(たけのうち・ゆたか)ひとりが同作につづいて出演していようが、筆者は同作との連続性や同一世界観である可能性は、その空気感があまりにも異なるために感じてはいなかった。同作から計2名くらい、たとえば小太りメガネの松尾諭(まつお・さとる)演じる「泉ちゃん」(笑)まで、政府の面々として登場していれば、そう感じられたかもしれないけど――


 そして、これら一連の場面に流されているのは、原典『ウルトラQ』のオープニング楽曲でもある――今ではテレビ東京・土曜夜9時から放映されている人気TV番組『出現! アド街(まち)ック天国』(95年~)の1コーナー「気にスポ(気になるスポット)」のBGMとして一般層には知られている――。
 もちろん、ソレらはマニア転がしでもある。しかし、この程度であれば、原典のウルトラシリーズにくわしくない御仁が観ても疎外感を抱いてしまうような内輪ウケ的なモノではない。そして、この導入部によって本作は巨大怪獣とのファースト・コンタクトものではなく、怪獣があまた存在することが当然になっている世界観でもあることも、一般観客たちに周知してもいるのだ。


 この過程で原典『ウルトラマン』における怪獣攻撃隊であった「科学特捜隊」の略称「科特隊」ならぬ「禍特対」(禍威獣 特設 対策室)&「防災庁」が設立されていて、すでに怪獣パゴスとの戦いにも投入されて戦果も上げていたことが説明される。子供向け番組的なカラフルな隊員服こそまとってはいないものの、本作の世界観においてはすでに巨大怪獣専門のチームが設立済であることも描かれているのだ。


 『シン・ゴジラ』においても、冒頭では平和な庶民の日常などは描かずに、ワリと早々に東京湾内での海底トンネル崩壊などで巨大怪獣出現の予兆を描いていた。本作でもメインタイトル後の映像ではあっても、実質的には「本編開始前の部分」を意味する「アヴァンタイトル」的な『ウルトラQ』に相当する前史を駆け足で描いた末に、本編に入るや早々に四足歩行の巨大怪獣が山間部に出現してしまう!


 そして、自衛隊や禍特対との少々の攻防を描いた末に、同作におけるウルトラマンが大気圏外から超高速で赤い光の姿で怪獣の手前に落下! 噴煙の中から全身が白銀なる巨人として初登場!
 原典#3の対ネロンガ戦でも使用された軽快かつ緊迫感もある戦闘BGMまで流れ出し、原典同様に怪獣の電撃を大胸筋で受け止めて戦闘も開始することで、早くも同作のキモを提示する。そして、その両腕を十字型に組んで右手の側部から多数の青白い粒子を放つ必殺のスペシウム光線が、カナリの遠距離からパノラマ画面を横切って怪獣を爆発四散させるのだ!


樋口真嗣カントク作品なのか!? 庵野秀明カントク作品なのか!?


 今や40年近くも前になってしまったものの、怪獣映画『ゴジラ』初作(54年)の方ではなく1984年版の『ゴジラ』(84年)――昭和末期の作品だけど平成ゴジラシリーズの実質的な第1作目でもある――では下っ端の特撮現場スタッフ、その後はアニメの作画や絵コンテマンでも活躍し、怪獣映画の平成『ガメラ』シリーズ(95~99年)の特撮監督で名を上げて、21世紀以降はジャンル系映画『終戦のローレライ』(05年)や『日本沈没』(06年)に実写映画版『進撃の巨人 ATTACK ON TITAN(アタック・オン・タイタン)』前後編(15年)などの本編監督業を務めてきたものの、毀誉褒貶かまびすしい樋口真嗣(ひぐち・しんじ)が、本作『シン・ウルトラマン』の「監督」(現場監督)を務めている。


 しかし、映画のメインタイトルに『シン・~』を冠していることから、巨大ロボットアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』(95年)シリーズの完結編映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』(21年)や怪獣映画『シン・ゴジラ』(16年)との共通性、前述2作のカントクを務めた御仁が本作の「企画・脚本」などを務めていることもあり、今や1960年前後生まれのオタク第1世代のトップランナーでもある庵野秀明(あんの・ひであき)カントク作品としても観られてしまうことも必定ではある。


 氏がカントクよりも上位の権限を持っているプロデューサー(製作)職として、事務や実務や対外折衝というよりかは、本作のトータルでのビジュアルイメージ・編集・選曲なども差配していた以上は、同作を「樋口真嗣カントク作品」として捉えるべきだという意見にも一理はあるとは思うものの、筆者個人も氏が実質的な「総監督」を務めている「庵野秀明カントク作品」だとして捉えても支障がないどころか、むしろ正鵠を射ているようにも思うのだ。


 そして、樋口カントクも含めた彼らが作るのであれば、非日常的な巨大オブジェでもある巨大ヒーローや巨大怪獣たちが、チャチくはない特撮&CG映像によって動いてみせる『ウルトラマン』作品を観てみたい!
 その怪獣や超人の巨大感・実在感を十全に強調したかたちでの、センスもあるスタイリッシュな下から見上げたカメラアングルによるド迫力な特撮映像を観てみたい!
 超人と怪獣が一進一退の攻防をして時に大ピンチに陥った果てに、逆転勝利をおさめてみせるような、カタルシス・爽快感にも満ちあふれたカッコいい戦闘シーンを観てみたい!
 いや、それらが観られるハズなのだ! といったところが、一般層・マニア層の双方が本作に対して、たとえ明瞭に言語化はできてはいなくても無意識に求めていたものでもあるだろう。


ネロンガガボラ戦は上々! ウルトラマンのテカテカ感をドー見る!?


 本作序盤においても、ひなびた(田舎じみた)山間部の遠方に、上空をめがけて垂直に伸びている細長くて青白いイナズマが出現!
 真の意味でのリアリズム、もしくはハードSF的なリアリズムで考えたらばオカシなことだけど、児童レベルでの擬似科学性が感じられる設定の存在として、初代『ウルトラマン』#3にも登場した、電気を食しており透明化することも可能な四足歩行の「透明怪獣」が出現したのだ。
――超メジャー級の怪獣ではなかったものの、近年でも『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル』(07年)#3や『ウルトラマンR/B(ルーブ)』(18年)#16に『ウルトラマンZ(ゼット)』(20年)#2などにも、同族の別個体という設定で再登場を果たしてきた人気怪獣でもある――


●幾軒かの日本家屋を手前に半透明化した姿で山間部の街を横断していく姿!
●広大な敷地面積を有している、細長い「鉄骨」や「電線」が幾重にも組み合わさることで遠近感も強調されており、ある意味では美的(!)ですらある巨大な「変電所」で、その姿を現わした怪獣ネロンガの巨大感!


 そのネロンガが通電が止まったことで怒って、広大な「変電所」をブッ壊していくシーンも、リアルな映像に仕上がっており、破壊のカタルシスにも満ちあふれていた。


 本作に登場するウルトラマンの対戦怪獣としては2体目となる、やはり初代『ウルトラマン』#9が初出でもある原子力の基となるウラニウムを食する四足歩行であるウラン怪獣ガボラも、原典同様にその顔面の周囲に開閉する巨大な花ビラのようなエリマキを装着しており、本作における怪獣ネロンガ同様に山間部に出現する。
――ガボラもまた超メジャー級の怪獣ではなかったものの、本作同様に初代『ウルトラマン』のリメイクが目指されていた、日本資本でハリウッドの弱小下請会社に作らせたビデオ販売作品『ウルトラマンパワード』(93年)などにも、奇しくも本作のガボラを手掛けた前田真宏(まえだ・まひろ)によってリファインされたデザインで再登場を果たしたことがある人気怪獣であった――


 この怪獣ガボラもまたハードSF的なリアリズムではなく、原典でのソレとも異なり、この閉じたエリマキ部分がリアルな生物とも程遠い硬質なドリルと化して超高速回転をしだすことで(!)、地底を高速で潜行することができるという、イイ意味でのチャイルディッシュな描写が与えられてはいる。
 いかに虚構の存在だとはいえ、電動ドリルを想起させる器官などは生物学的にも決してリアルな在り方ではなく、現行の動物の延長線上にはない存在だとして描かれているのだ。
 しかし、上空から見下ろした山間部の細長い谷間のような部分を埋め尽くしている段々畑の光景が、怪獣の地中での進路に沿って次々と盛り上がっては崩れていくサマを、ディテールも細かなリアルな3D-CG映像で描いてみせることで、「存在」そのモノではなく「周辺状況」の方から映像的なリアリティーを醸し出す手法が採られてもいる。


 肝心のウルトラマンの方は、初戦の対ネロンガ戦では全身がツヤ消しの銀色であり――従来のウルトラマンでは赤いラインが引かれていた箇所はやや暗めの銀色というのか鉛色――、ある意味ではそれが従来の「着ぐるみ」のスーツの質感とも似通っていたおかげで、重厚感や実在感などもけっこうあって、ホントウにリアルな映像ではあった。
 しかし、この第2戦の対ガボラ戦では、従来のウルトラマンとも同様に赤いラインが出現しはしたものの、赤ラインとの対比としての強調か、地の銀色の部分がツヤツヤ・テカテカとしてきだした。


 飛んで、本作の対ガボラのパートにつづいて配された、第3のパートである対ザラブ星人――とザラブ星人が化けた偽ウルトラマン――との夜景の高層ビル街における巨大バトルに至ると、たとえ意図的なのだとしても、街中の街灯・照明・ネオン群に照らされた反射だとの解釈ができても、この銀色部分の金属的なテカテカがカナリ目立つようにもなってしまう。


チャチだと見るか許容範囲だと見るかで、作品評価の高低も規定される!?


 いや、筆者個人は庵野よりも10歳ほども年下ではあるものの(汗)、1970年代の特撮変身ヒーローブームで産湯をつかって、劇中に登場する巨大超人が飛行シーンになると突如として作り物・別物感がまるだしのミニチュアの「飛び人形」となってしまったり、ヒーローの必殺光線を浴びて巨大怪獣が爆発四散するシーンになると突如として怪獣も爆発用の小型の「作りモノ」になってしまう特撮シーンを、散々に観てきたロートル世代ではある。
 子供心に少々の幻滅を感じつつも、それでもヒロイズムに対する高揚感などから、コレらの作品群を夢中になって観賞してきた世代ではあるので、そのへんの映像的な質感の不整合もソレはソレとして認識しつつも、割り切って観賞ができてしまうタイプではあるのだ。


 しかし、このテの日本のジャンル作品に対する、そのテの不整合やチャチさに対する耐性がない一般層や、SF洋画ファンなどが本作を観賞した場合に、この一点については本作の「弱点」たりうるのではなかろうか?
 本作は絶賛評が多かった『シン・ゴジラ』とは異なり、賛否両論が渦巻いてもいる。その一端は、ウルトラマンの銀色部分のテカテカ表現を発端として少々サメてしまった御仁たちが、本作のドラマ的・活劇的なベクトルにノレなくなってしまったがゆえに、ソコをドラマ面での弱さだと見立てた否定評だったのではなかろうか?――ドラマ面も十全ではなかったやもしれないけど、それよりかは間とかテンポの演出や映像面での有無を云わさずにノセていくことで醸されていく説得力の面での少々の欠如だ――


 今の時代の技術であれば、この程度のツヤツヤ感を抑えることは容易であったようにも思うので、半ばは確信犯としての提示であった可能性はある。そして、このあたりの映像的な質感の不整合を、あえてCGではなく日本のミニチュア特撮的な手ざわりをも再現しようとした意図的なモノだったとする見方もある。
 たしかにそういった一面もあったのだろうし、そしてソレが成功していた映像表現もあっただろう。しかし、このことはまた、非常にビミョーなあわいにある映像表現になってしまったとも思われてきてしまうのだ。


 個人差はあるだろうし、子供時代に「着ぐるみ」ではなく「飛び人形」に置き換わったことがわかっても、ソコを過剰には気にしなかったという意見も多々聞くので、それは原典作品である初代『ウルトラマン』をはじめとする昭和のウルトラシリーズの致命的な弱点であったとはしない。
 しかし、「飛び人形」の造形がいかにもユルくて、リアルな人間体型からもカケ離れていたり、人形の表面塗装の処理なども粗かったりすると、筆者などは子供心にソコだけはサメてしまったものだった。


 筆者と同じように思っていた子供たちもまた相応にはいたのであろう。1960~70年代の昭和のウルトラマンシリーズを観ていた世代が作り手側となった1990年代中盤以降の平成ウルトラマンシリーズになると、ウルトラマンが大空を飛んでいく飛行表現においてはミニチュアの「飛び人形」が廃されるようにもなっていく――ただし、CG表現によるウルトラマンの飛行シーンが代わりに実験的になされるようにもなっており、しかして当時のCG技術においては、コレがまた「飛び人形」に負けじ劣らずで違和感があるものにもなっていたのだけど(笑)――。


 CG表現によるウルトラマンの飛行姿は徐々に進歩はしていったものの違和感を根絶することはできなかった。そして、結局は2010年代以降になるや、アナログな「飛び人形」の復活などは論外であるにしても、グリーンバックで撮影した息使いや背スジをピンと伸ばした「力感」もドコかで残った「着ぐるみ」での両手両脚を伸ばした飛行ポーズをとったウルトラマンの姿を、デジタル合成による実にスピーディーな飛行シーンとして多用することが常道ともなっていく。そして、それはかつてのチャチさや違和感を抹消することにほぼ成功したモノとなっていったのだ!


微動だにしない人形による超人の飛行姿も再現した映像をドー見るべき!?


 その伝で、本作においては原典である初代『ウルトラマン』における、シリーズ序盤で登場して子供心にも幻滅させられていた出来の悪い方の「飛び人形」ではなく(汗)、シリーズ中盤に登場したリアルで人間体型にも酷似していた出来の良い方の「飛び人形」を、良くも悪くも見事に3D-CG映像にて再現も果たしている。
 なおかつ、原典でも流用フィルムとして幾度も使用されていた、屋外でのオープン撮影による自然光で撮影された垂直上方への初代ウルトラマンの飛行帰還シーンが見事に再現もされていて、マニアとしてはソコも懐かしくもなったものだ。


 しかし、良くも悪くもこの「飛び人形」は「着ぐるみ」ではないので微動だにすることはない(笑)。先走って、本作のラストにもふれるけれども、我らが3次元の宇宙空間からフィルムのネガとポジが逆転したような映像で表現された4次元以上の高次元空間へと飛ばされて、別の並行宇宙にも通じているというブラックホール状の爆縮体へと引きずりこまれそうになっている映像でも、キリキリ舞いとなっている「飛び人形」状態のウルトラマンは微動だにせずポースを一切崩さない。
 このある意味では不自然なまでの直立不動の飛行状態をもってして、神秘の未知なる宇宙超人であることの証左としつつも、製作ウラ事情まで鑑みれば、CG予算の削減をココで図っていたとも取れはする。
 そして、かぎられた予算の枠内にて、ドコのシーンにカネ&時間をかけてドコのシーンは粗くしても許されるであろうからとサラッと流して省エネとしてしまうのか? といったスレたマニアとしての観点から見れば、これらのシーンでウルトラマンの飛行ポーズを直立不動の姿としたことも、総合的には正しい取捨選択であったとすら思うのだ。


 なのだけど……。いやもちろん、海で溺れて慌ててもいるような域に至ったウルトラマンなどは観たくないけど、ここで最初は「飛び人形」姿でも、途中から左手を肩の上に組んで右拳は進行方向に突き出して、右脚も立てヒザなどにポージングを変えてみせることで、さらなる高速飛行を試みようとしているような「意志力」なども感じられる表現が導入されても、ミニチュア特撮の味が壊された! などといった批判も出ないだろうに。


 対ガボラ戦でのウルトラマンもまたその登場時には、やはり微動だにしない、しかも両脚は下方に顔面は上空を向いたまま(笑)での飛行ポーズで垂直降下のかたちで着地体制へと入ってくる(ウ~ム・汗)。
 そこでロートル世代やウルトラシリーズのマニアであれば、原典の最終回などでも観たことがあるようなウルトラマンの「飛び人形」が大車輪のように高速で前転なり後転をすることで赤い球体バリアを出現させた映像イメージとその際の不可思議な音階の効果音も流用した末に、その高速回転がそのままキック(!)となって、怪獣ガボラを遠方へとハジき飛ばしてしまった姿も見せていたことで、ラストにおけるウルトラマンの飛行姿の伏線ともなっていて(?)、違和感を消すことまでには行かないまでも、ウスめることには辛うじて成功していたともいえるだろう。


ウルトラマンの顔面・体色の変化、カラータイマーの省略をドー見るか!?


 さて、本作に登場する巨大超人でもある、白銀の身体に赤いラインが入ったウルトラマンのビジュアルは、静止画像ではあったものの、2019年12月における製作発表時にすでにお披露目が果たされている。その後に公開された本作の予告編でも、尺数は短かったとはいえ、


●あたり一面の噴煙の中から、姿を現わすウルトラマンの立ち居姿!
●山間部の平原において、両腕を十字に組んで右手の側部から多数の粒子を放ってみせる必殺ワザでもある、スペシウム光線を発射している勇姿!


などはすでに先行お披露目されてもいた。


 実際にはコレらは予告編限定のプチ・フェイク映像であって、ワリと序盤でウルトラマンの初陣として描かれたコレらの本編での映像では、ウルトラマンの身体にはおなじみの赤いラインが入ってはいなかった(汗)。
 特撮オタクであればご存じの通り、初代ウルトラマンは実は各クールごとに着ぐるみが新調されていった。本作予告編では、主に原典#30~最終回に登場してその後のウルトラシリーズでも使用されつづける硬質素材かつ横広がりの柔和なおクチの表現であった初代ウルトラマンのいわゆる「Cタイプ」の顔面であった。しかし、実際の映画での初陣は特撮オタクくすぐりで、第1クール(#1~13)に登場した軟質でシワシワの顔面マスクであった「Aタイプ」を模したものでもあったのだ!――一般層は気付けないネタだが、内容理解に支障が出るモノでもないのでOKだ――


――これまた腐れ特撮オタクとしてのウンチクを披露させてもらうと、この「Aタイプ」の顔面もまた、映画『ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟』(06年)や映画『大決戦! 超ウルトラ8兄弟』(08年)でも再現されていたモノなので、本作での再現が初だというワケでもない――


 ウルトラマンのルックス上のアイデンティティーのひとつだったともいえる、胸の中央にある地球上での3分間の活動限界を警戒音とともに赤く点滅することで示すことになる「カラータイマー」が廃されていたことも話題を呼んでいた。
 初代ウルトラマンの元々のデザインにはカラータイマーが存在しなかったことは世間一般的にはともかく、特撮マニア諸氏には本放映から10数年後の80年代からワリと広く知られている。
 それは初代ウルトラマンのデザイナーでもある現代美術家成田亨(なりた・とおる)自身が、1982年に刊行されたマニア向け書籍『ファンタスティックコレクションスペシャル 不滅のヒーロー ウルトラマン白書』(朝日ソノラマ・82年12月31日発行)――日本初の青少年特撮マニア向けムックであった『ファンタスティックコレクション№2 空想特撮映像のすばらしき世界 ウルトラマン』(78年1月25日発行)と同『№10 空想特撮映像のすばらしき世界 ウルトラマンPART2』(78年12月1日発行)の合本増補版の増補ページ――でも明かしたことで、特撮マニアの人口に膾炙していき、連綿と歳若い特撮オタクたちにも継承されてきたからだ。


 当然のことながら、対外的・営業マン的トークとしては、この処置は「成田亨リスペクト」ゆえだともされている。しかし、これを額面通りの原理主義教条主義的に受け取ってしまうのはいかがであろうか?
 1960年前後生まれの世代を俗に「オタク第1世代」と呼称する――同世代の中でもイケてる系の人種を指したかたちで「新人類」世代とも呼称されてきた――。このオタク第1世代の特撮オタクたちは、1960年代後半に放映された自身の幼少期や小学生時代に遭遇した『ウルトラQ』・初代『ウルトラマン』(共に66年)・『ウルトラセブン』(67年)の通称「第1期ウルトラシリーズ」のみを神格化した。そして、1970年代前半に再開された『帰ってきたウルトラマン』(71年)・『ウルトラマンエース』(72年)・『ウルトラマンタロウ』(73年)・『ウルトラマンレオ』(74年)といった、彼らが中高生時代に放映されていた「第2期ウルトラシリーズ」の作品群のことは酷評してきたのだ。


 しかし、庵野自身は『帰マン』を最もスキだと公言している。今となっては古い話だけれども、まだ第1期ウルトラシリーズ至上主義の風潮が強かった1999年に開催された新宿ロフトプラスワンでの平成ウルトラ3部作賛美のイベントに乱入して、空気を壊すかたちで「『ウルトラマンタロウ』は面白いので、みなさん観てください!」(!)と云い残して去っていったという椿事(笑)が、月刊模型誌ホビージャパン』99年9月号でも、イベント主催者でもあった特撮ライター・ヤマダマサミによる連載「リング・リンクス」などで小さな写真付きで紹介されてもいたものだ。
 『シン・エヴァンゲリオン』における「マイナス宇宙」の語句は『ウルトラマンエース』#13~14から、「オーバーラッピング」や「フォー・イン・ワン」といったエヴァンゲリオン8号機が9~12号機と合身した際の掛け声もまた『ウルトラマンタロウ』#25においてウルトラ6兄弟がウルトラ6重合体を果たした際の掛け声に由来しているのだ。


 そんな庵野形式主義的・教条主義的・頑迷固陋な原点至上主義者であるハズもない。また、特撮マニアの側においても後出しジャンケンで「実はあのカラータイマーが余計だと思っていた」などと得意げに語ったり、幼少期に自身もインパクトを感じていたクセに「(ウルトラ兄弟の義父である)「ウルトラの父」やウルトラマンタロウの両側頭部から生えている巨大なツノも余計だと思っていた」などと糾弾をはじめる「長いモノには巻かれろ」的な、その場のムラ世間的な同調圧力にすぐに屈服する自己保身的な輩もまた、近代的合理人とは云いがたい意志の弱い輩だ(笑)。


 映画館でも公開と同時に頒布されていた書籍『シン・ウルトラマン デザインワークス』の「手記」において庵野は、



「数多のウルトラマンとの差別化としてそのカラータイマーをなくしました。個人的には、カラータイマーという発想は、制作的な制約を逆手に取った素晴らしい設定とカラーフィルムを最大限に活かした描写であり、機電で光る眼と並んでエポックメイキングだと思います。(中略)続編ではカラータイマー付きのウルトラマンが出るプロットにしています」



とまで語ってもいるのだ!


 個人的にもウルトラマン自身の赤いラインが湾曲線を描いたものでもある以上は、その胸の中央に円形のカラータイマーが付いていても不整合なところはないと思う――むろん、デザイナーの成田自身に不満があったとしてもだ!――。


 どころか、エネルギーの消耗を示しているカラータイマーによる赤い点滅の代わりに、ウルトラマンの赤いライン自体が緑色へと変貌してしまうのだ! これを気ムズカしそうな芸術家気質であった成田は許すであろうか?(笑) 筆者個人はもちろん許すし、今どきソコまで成田に前近代的・封建的な忠誠心(汗)を示すような特撮オタクも極少ではあろうけど。
――成田自身も自著『特撮と怪獣―わが造形美術』(フィルムアート社・95年12月1日発行)で、マニアが神格化してきたゴジラなどの初期東宝特撮怪獣にはデザイン上の「構造」がないと批判! その見解の是非はともかく、この歯に衣着せぬ精神性こそ見習うべきではなかろうか?――


M87・カイゲルでも原点志向と見せかける! それ自体がミスリード!?


 しかし、エンディング主題歌のタイトルは『M78』ならぬ『M八七(エムはちじゅうなな)』であった。『ウルトラQ』出自の「貝」型怪獣で別名も「貝獣」であったゴーガの名前はカイゲルとされていた。
 これもまた、特撮マニア、あるいはウルトラシリーズのマニアであればピンと来ただろう。


 本作の劇中においては、ウルトラマンの故郷である銀河名や星雲名などは明示されなかった。原典である初代『ウルトラマン』#1においては、その故郷は「M78星雲」であるとウルトラマン自身が合体相手となるハヤタ隊員に明言していた。しかし、実は企画当初は「M87星雲」として設定されており、台本印刷時に誤植されたモノが流通することになってしまったという逸話も、往時のマニア向け書籍で知られて以来、マニア間では流通してきた話でもある。
 カイゲルもまた、原典『ウルトラQ』#24のNG脚本のさらなる元となった、スタッフ内部向けの「サンプルストーリー」上で記述されていたゴーガに相当する「貝獣」の名前に由来があるそうだ――などと云いつつ、不肖ながら、ゴーガの前身の名前がカイゲルであったという逸話は寡聞にして初耳だったけど(汗)――。


 それらをダメ押しとして、主題歌までもが『M八七』だとしたことで、本作は作品外での情報でも今までのウルトラシリーズとは似て非なる別世界にして、真の意味での原点志向の一面をも併せ持った作品であることを念押ししてくるのだ。


 そういう意味では形式主義的な「原点回帰」ではなく、「原点よりもひとつ前」だともいえる「マイナス1への回帰」といったコンセプトを掲げている作品なのだろうかと思いきや……。
 『ウルトラQ』怪獣やネロンガガボラザラブ星人はともかく、のちに登場するメフィラス星人のデザインは原点への回帰だとも云いがたい大きなアレンジである。原典でも最終回に登場して初代ウルトラマンを倒した最強怪獣であった宇宙恐竜ゼットンに至っては、「ゼットォォォ~~ン」なる低音の咆哮やつづく電子音的な効果音や、そのシルエットはたしかにゼットンではあったものの、もう怪獣ですらなくて超巨大メカであった。
 これらのことから、公開前の「原点回帰」的な売り方からして「ミスリード演出」も兼ねていたことがわかろうともいうものだ(笑)。


ウルトラマンを神秘として描くだけでなく、ヒーロー性もしっかり付与!


 ウルトラマン自体は「ヒーロー性」よりも「宇宙の未知なる進んだ知性の神秘」といった感じが強調されてはいたものの、むろん「ヒーロー性」自体が放棄されていたワケでもない。原典では両腕を十字型に組むだけであった必殺のスペシウム光線が、本作では初披露時は顔面手前に右手を構えてしばらく充電の体を示して、水平に拡げた左手を大きく振るって右腕にクロスさせるという前段のワンクッションが挟まれることで、日本の特撮変身ヒーローや合体ロボットアニメではおなじみの歌舞伎的な見得(みえ)を切ったようなプチ・盛り上がりを該当シーンに付与することもできているのだ。
 ウルトラマンに変身する前の人間・地球人でもある神永青年が右手でペンライト型の変身アイテム・ベーターカプセルを斜め上へと真っ直ぐにかざすのみならず、対ガボラ戦にて森林の中で初変身を果たした際などにはワザとらしいくらいにカメラ手前方向に近しい真ヨコ方向へと真っ直ぐにベーターカプセルを突き出していたサマもまた、ナチュラルさとは真逆な方向性での様式美的なカッコよさが感じられるシーンにも仕上がっていた。
――なとと云いつつ、先に右手を構えてから左手をクロスさせるサマもまた、初代ウルトラマンのリメイクであったウルトラマンパワードにおけるメガ・スペシウム光線と同じ発射ポーズであったりして……。本作の樋口監督とデザイナーの前田真宏は同作にも怪獣デザインや、樋口に至っては渡米しての特撮ミニチュア造形などで関わっていたりもしたけれど――


 対ネロンガ戦では、これまた原典でのソレを踏襲して、怪獣ネロンガが頭部のツノから放った電撃光線を、その胸に受けてもビクともせずに悠然とネロンガに迫るように歩を進めていくウルトラマンの強さ・頑丈さをも描いていた姿もまたカッコいい!
 対ガボラ戦でも、怪獣ガボラが口から放った白い光線を、X字型に両腕を交差させて防いでみせる姿もまたカッコいい!――両腕クロスで敵の光線を防いでみせる姿は、ドチラかというと初代ウルトラマンではなく、『ウルトラマン80(エイティ)』(80年)#1などでエイティが披露したウルトラクロスガード(ウルトラVバリヤー)の方を連想するけど――
 怪獣ガボラの2本もあるシッポをツカんで、初代ウルトラマンも披露していたプロレスにおけるジャイアント・スイングのように、自身がその場でコマのように何回もグルグルと回転して振り回した末に、巨体のガボラを遠くへと投げ飛ばすサマもまた「豪快」さから来る「快感」の一言だ!


 対ザラブ星人戦でも、原典を踏襲して夜景の摩天楼での戦闘を挿入歌『進め! ウルトラマン』のアレンジBGM、空中戦も原典#2でのバルタン星人との空中戦BGMとともに披露! ザラブに突き落とされて地面に激突するかと思いきや、すんでのところで体勢を持ち直して、大通りに沿った超低空飛行から、即座にザラブの真下に仰向けの並行飛行姿で出現!
 すでに両腕を十字に組んでおり、発射されたスペシウム光線の圧力で高空へと押されていったザラブめがけて、左右水平に伸ばした両腕を胸中央に折り返して、即座に右手から投擲するかたちで放たれる八つ裂き光輪によって左右真っ二つ!――光線が質量ゼロではなく物理的な圧もあるあたりは80年代以降の少年漫画ノリだけど、今はこの方がイイだろう!――


 対ゼットン戦でも、八つ裂き光輪を通常よりも巨大化させて自身の身体の大きさほどにして放ったり! さらには、10枚近くに分身させた八つ裂き光輪が十文字列に飛んでいってゼットンに直撃させたり!
 このへんも、悪く云えばヒーローものにおけるご都合主義、良く云えば常人をはるかに凌駕した能力を持った超越存在に対するカッコよさや憧憬の感慨といった、このジャンルの本質をも描けていたのであった。
――腐れオタクとして云わせてもらうと、近年でも『ウルトラマンオーブ』(16年)が同様にデタラメに巨大化させた光輪を放っている(笑)。「分裂する八つ裂き光輪」も、原典#25にて大人気怪獣レッドキング2代目に放った例があり(2枚だけだが)、ウルトラマンエースの必殺ワザ・ウルトラギロチンなどでは光輪が3枚以上に分身したことの踏襲だ――


巨大ヒーロー&怪獣が存立できるための、SF的なエクスキューズ設定!


 とはいえ、巨大ヒーローや巨大怪獣のルックスはともかく、それらを劇中において、一応のリアルもしくはSF風味でソレっぽく存在させるにあたっては、やはり今どきの作品でもある以上は、その存立根拠は無言で完全スルーする……というワケにもいかないものであろう。


 本作では『ウルトラQ』に出自を持つ巨大怪獣の中ではパゴスが、そして初代『ウルトラマン』に出自を持つネロンガガボラは、3種がともに首から下がアタッチメントのようにも似ていることが禍特対の隊員によって指摘されている。
 本作に対するマニア諸氏による批評・感想でも散々に復習されている通りで、コレもまた80年代~90年前後だかにマニア向け書籍(出典失念)で明かされた、東宝特撮怪獣映画『フランケンシュタイン対地底怪獣(バラゴン)』(65年・日米合作)――巨人化したフランケンシュタイン(!)が怪獣と戦う名作です!――に登場した四足歩行の怪獣バラゴンが、東宝特撮監督でもある円谷プロダクション円谷英二つぶらや・えいじ)社長の鶴の一声で借り出されて、『ウルトラQ』のバゴスや初代『ウルトラマン』のネロンガ・マグラー・ガボラへと改造を重ねた末に、最終的にはゴジラ映画『怪獣総進撃』(68年)で元のバラゴンに改造され直して再登場した故事にちなんでいる。
――第3次怪獣ブーム期に公開された、初代『ウルトラマン』の総集編映画『ウルトラマン 怪獣大決戦』(79年)合わせで発売の書籍『別冊てれびくん⑥ 映画ウルトラマン』(小学館・79年8月15日発行・7月15日実売)に掲載された初代『マン』放映リストの「シナリオ題名」欄の「パゴス反撃指令」で、ガボラ回が当初はパゴス再登場回であったこと、『別冊てれびくん② ウルトラセブン』(小学館・78年11月15日発行・10月15日実売)でも、パゴスはレッドキングらとともにセブンが使役するカプセル怪獣の候補だったと明かされたことで、70年代末期の怪獣博士タイプの子供たちはソレに対して興奮を覚えてもいた(笑)――


 そして、本作に登場したパゴス・ネロンガガボラは太古のむかしに地球に放置された「生物兵器」であったとメフィラス星人に語らせることで、地球の生物とはあまりに隔絶した生態を持っていることについても、SF的な理由付けはできていたのだ――「生物兵器」と云われてしまうと、『ウルトラマンエース』に登場する怪獣一般の名称であった「超獣」をもマニアは想起するけど、「超獣」をそう別称しだしたのは同作放映当時ではなく、平日5分番組『ウルトラ怪獣大百科』(88年)からであった――。


 そも巨大怪獣自体、立体の体積が3乗(タテ長×ヨコ長×高さの掛け算)で求められて、「重さ」も同じく「3乗」で幾何級数的に増大する以上は、体長50メートルもの陸棲動物はその自重的にも存在しにくいし、逆に数万トンもの体重もまた数百メートルもある「戦艦」並みに重たすぎることは、往年のベストセラー『空想科学読本』(宝島社・96年~。99年~メディアファクトリー)なり、それ以前からでも筆者も含めたスレたマニアのウンチク与太話でネタ的に議題にされてきたところでもある。
 本作ではソコに反発するのではなく、ツッコミされる前にセルフつっこみ・エクスキューズ的に語ってしまって、しかもソレをもストーリーや基本設定の妙味にすらしようという感じのクレバーな作劇ともなっている。


 ウルトラマンと地球人との合体による一体化、地球人がウルトラマンへと変身できるそのメカニズム、および「質量保存の法則」を無視(笑)して巨大化もできてしまうことについての、その基礎原理の解明!
 そのへんは21世紀のジャンル作品でのお約束となった、我々が住んでいる3次元世界・物質世界での物理法則を超えて、この3次元世界をメタ(形而上)的な背後(天上世界?)から成立せしめている世界として、4次元・5次元以上の別次元・高次元世界(余剰次元世界)が存在しているのだとも仮定する。
 そして、そちらの世界での原理によって超越的なパワーを発揮できる巨大ヒーローや巨大怪獣が存在できているとするのだ。あるいは、ウルトラマンに至っては、その本体は3次元世界にではなく別次元(高次元)に存在しており、それが変身アイテム・ベーターカプセルによる起動点火によって、スペシウム133(イチサンサン)なる自然界では存在しえない原子番号を持った架空の重たい元素によって構成された肉体を兼ね備えた存在として、現世に召喚されているのだともしたのだ。
――自然界に存在する一番軽い元素は、原子番号(=原子核の中の素粒子である陽子(ようし)の「個数」)が1番である水素。一番重たい元素は92番であるウラニウム。ただし、まれに自然界でもウラン鉱脈が天然原子炉化して、94番であるプルトニウムが生成されるそうである――


 ちなみに、原典の#2においても、スペシウム光線は火星に存在する架空の鉱石・スペシウムとも同じエネルギーであり、ウルトラシリーズの名悪役である両手の巨大なハサミが印象的なバルタン星人は、このスぺシウム鉱石が苦手であるために、火星ではなく地球への移住(侵略)を決めたのであった。133の方もバルタン星人2代目が登場した原典の#16で科学特捜隊が開発した、原理的にはスペシウム光線と同じだとする長身細身の光線銃・マルス133(イチサンサン)に由来させてもいるのだろう。


 などと云いつつ、怪獣映画の神さまのイタズラか、昨年度の深夜アニメ『ゴジラ S.P〈シンギュラポイント〉』(21年)でも、この3次元世界のみならず高次元や時間の次元にまでまたがって存在するメタ・マテリアル(メタ物質)によって、怪獣たちもその巨体の維持ができていたり、神出鬼没であったり、弾道に対して未来予知まがいな防御行動を取ることについてのSF的な理屈付けまで行なっている。フル3D-CGアニメ映画『GODZILLAゴジラ) 怪獣惑星』(17年)シリーズ3部作の最終作『GODZILLA 星を喰う者』(18年)でも、金色三つ首竜ことキングギドラが原典での宇宙超怪獣から高次元怪獣へとアレンジされている。同じような趣向の作品もまたすでにあったりはするのだ。


 ……ではあるのだけど、眼で見てもわかる重厚長大な金属の輝きを持った古典SF的な科学ではなく、マイクロチップブラックボックスナノテクノロジーなSF科学なので、実際には今風のSF感度があるオタにしかこの機微は伝わらず、一般層なりオタでも圧倒的なボリュームゾーンであろうライト層にはこのへんの機微はまったく伝わっていないのではなかろうか?――いやまぁ、ソコが不明瞭でも鑑賞には支障がないけど!――


 そこに加えて、このメフィラス星人もまた、地球人がウルトラマンへと巨大化変身できるペンライト型の変身アイテム・ベーターカプセルの超技術とも同じモノだとして、畳で2畳ほどの大きさはあるもののメタリックな平たいベーターボックスなるアイテムを地球人……というよりかは、日本人(!)に提供しようとしてくる。
 その理由もまた振るっている。ウルトラマンが地球人の青年とも一体化が可能であったことやヒロインの巨人化が可能であったことで、地球人一般は全員が「巨人兵士」になりうる素質があるのだともしたのだ(爆)。
 そして、その事実がこの宇宙のみならずマルチバース(多元宇宙)の全域(!)、つまりはあまたの並行宇宙の知性体たちにも知られてしまったので、地球人類はねらわれてもしまうのだから、抑止力としてもベーターボックスを保有していることがメリットになるのだと。


 しかし、その代わりに自分ことメフィラス星人のことを「上位概念」として人類に崇めてほしいと。けれども、自分は「鼓腹撃壌(こふく・げきじょう)の世作り」が理想なのだとのたまうのだ(笑)。
――古代中国の老荘思想における理想の政治形態のこと。満腹で腹太鼓を打って足で地面をたたいて拍子を取って踊りながら「王さま、何する者ぞ!」などと歌っているのに、そのヨコにいた威圧感のないニコニコとしているお爺さんが実は善政を布いている王さまであって(爆)、庶民は王さまの顔も知らずに好き勝手に趣味や文化活動の中で生きていくことが可能な世こそが理想の世だ……といったことを指している言葉でもある――


 メフィラスの提案を字義通りに受け取った日本人は悪い意味での善良、諸国に対して優位に立てるという打算があったとしてもヘタくそな外交だったと云うべきで、このテの提案にはウラがあるのに決まっている(笑)。


 怪しげなメフィラス星人の提案ではあっても、地球人の自発的な選択(=宇宙人との条約締結)に対しては干渉してはならない。けれど、メフィラスによる人類科学の強制的な発展をもたらすオーバーテクノロジーの技術給与を、人類の自然で自生的な進化をネジ曲げることだと惜しんで、星間文明での取り決めやウルトラマン自身の故郷であるM78星雲「光の国」ならぬ「光の星」の掟に背いてでも、ベーターボックスを強奪するために白昼の工業地帯でメフィラス星人vsウルトラマンとの一騎打ち!
 しかし、ウルトラ兄弟の長男・ゾフィーならぬゾーフィなるウルトラマン型の姿をした、その体色はシブめの金色で身体のラインは黒色をした存在が、前から監視をしていたかのように中空に静かにポツンといる!
 その存在に気付いて脅威をおぼえたのか、メフィラス星人ウルトラマンに停戦を呼び掛けて、ベーターボックスとともに地球を去っていく……。


ラスボス怪獣を操るのがゼットン星人ではなくゾフィーならぬゾーフィ!


 そう。本作では宇宙恐竜もとい天体制圧用最終兵器ゼットンを操る存在として、ゼットン星人ならぬ「宇宙人ゾーフィ」を設定したのだ!(爆)


 『「少年マガジン」「ぼくら」オリジナル復刻版 ウルトラマン画報』(講談社・15年11月28日発行)、同書に対するアマゾン・ユーザーレビュワー氏などの見解を整理すると、「宇宙人ゾーフィ」は怪獣図解の第一人者・大伴昌司(おおとも・しょうじ)が作成した「唯一のTBSと円谷プロの公式怪獣設定」が初出である――この資料は後年の『ウルトラマン大鑑』(朝日ソノラマ・87年12月1日発行)にも再録――。
 この資料を基にしたらしき、『週刊朝日』67年4月7日号「ただいま120匹 怪獣大行進」特集の怪獣リスト最終行が、商業誌での初露出だ――同書はゾフィーが登場した初代『ウルトラマン』最終回の約10日前に発売!――。講談社の今は亡き月刊少年漫画誌『ぼくら』67年8月号などではイラスト付きで登場した。10年ほども重版を重ねていたロングセラー書籍で、ウルトラセブンイカルス星人が組み合った写真の表紙がとても印象的であった『怪獣ウルトラ図鑑』(秋田書店・68年5月30日発行)でも、ゼットンの項目には黒幕がゾーフィだと記載されて、子供たちを「?」とさせてきたネタなのだ。


 家庭用ビデオは80年代中盤に普及。写真資料も豊富となった70年代学年誌とも異なり、60年代当時は映像による再確認が困難ではあったが、我々特撮オタクも崇拝してきた大伴が事の犯人(爆)であったようだ!?
 後続世代のマニアたちにも、1981~82年ごろに今は亡きマイナーアニメ雑誌アニメック』か『OUT(アウト)』か『ファンロード』であったかのお遊びコーナーにて、爆笑必至的な筆致にてコレら往年の誤認記事が紹介されたことでも、再発見がなされたこともあったネタでもある。
 むろん、インターネット全盛となった21世紀以降においては、これらの記事のスキャン画像がネタ的にもあまた流通することで、今の年若いウルトラマンオタクたちにも知られている事実なのだ。


 ゾフィーゼットンを操っていたという誤情報をネタではなくガチで逆用、特撮マニアや『ウルトラ』で育った世代には驚きを、一般層にも劇中内最強ヒーローの同族をラスボスとすることでの強敵感をも出したのだ。


 ちなみに、このゾーフィはトサカ~鼻に当たるラインが黒くなっている。スレたマニア諸氏であればご存じの通り、ホントに近年の2010年代中盤になってから判明した新事実なのだが、初代『マン』最終回に登場したゾフィーのトサカが実は黒だったと判明したことに由来する処置である――単なる逆光で黒く見えていただけかと思いきや、飛び人形のトサカも黒く塗られていたキャプチャー画像でトドメを刺された――。しかし、成田亨のデザイン画ではゾフィーのトサカは黒くなかったそうだけど(笑)。


 ウルトラマンの方は人間と合体して以降、体色に赤い模様が混ざったとも解釈ができることから、ゾーフィに最初から色付きの模様があることはSF設定的には不整合ではある。しかし、色付きの模様がなく全身が金色一色だと、往年の世代諸氏にとってはゾフィーもどきのキャラだとはやや認識しづらくなるので、リアリズムよりも映像演出的な都合論の方を優先して、そのへんは不整合でもご愛敬といったことでイイだろう。
 2色が「白と金」または「青と黒」に見えるかの「錯視効果」問題もあって、ゾーフィの模様も濃紺に見えたり濃緑に見えたりと諸説紛々である――筆者にはエネルギー切れを意味する緑に近いと見えていた(笑)――。


 ところで、TV本編ではサブタイトルや各話のゲスト怪獣表記でも「ゾフィ」と表記されていたのに、現在では末尾に長音を付与した「ゾフィー」の表記に統一されている。「ゾフィー」の表記はおそらく70年代初頭の小学館学年誌や幼児誌が初出だろう。当時の子供たちが恒常的に眼にしていたのは小学館の雑誌なので、70年代世代の筆者なども幼児の時分に「ゾフィー」が正解だと思い込んでおり、70年代末の第3次怪獣ブーム期の再放送でのサブタイや書籍などでの「ゾフィ」表記に改めて驚いたくらいに、往時においてもすでに「ゾフィー」の表記も定着していたのだ――公式化されたのは、総集編映画『ウルトラマンZOFFY(ゾフィー) ウルトラの戦士VS大怪獣軍団』(84年)からであろうか?――。



 過去に似た前例があるからといって、その作品の本質を突いたことになるワケでもないことは重々承知はしている。
 しかし、腐れウルトラシリーズオタクであれば、汚濁に満ち満ちた地球人類を滅ぼそうとするという敵設定に、以下をも連想したことであろう。


●映画『ウルトラマンコスモスVS(ブイエスウルトラマンジャスティス THE FINAL BATTLE』(03年)に登場した、不可視な存在・宇宙正義デラシオンに仕えていたゲストヒーロー・ウルトラマンジャスティスや、巨大円盤状の惑星破壊メカ兵器・ギガエンドラ
●『ウルトラマンガイア』(98年)に登場する、同作における2人目の青いウルトラマンこと人類を滅ぼそうとしていたウルトラマンアグル
●『ウルトラマンダイナ』(97年)最終章3部作に登場した、人類を危険視してその宇宙進出を拒んでいた暗黒惑星グランスフィア
●『ウルトラマン80』(80年)#10に登場した、人類存続を裁定する銀河共和同盟の惑星調査員であった若き美女・アルマ
●『ウルトラセブン』(67年)#37「盗まれたウルトラアイ」に登場した、惑星間弾道弾で地球を破壊しようとしたマゼラン星人の美女・マヤ


 守るべき地球人類自体を相対化したエピソードであるために、ウルトラシリーズの中ではあくまでもイレギュラーなエピソードではある。
 しかし、さまざまな見解はあろうけど、人類を滅ぼすに値するとダメ押し的に判断するに至った描写が、街の暴走族やチンピラの存在であったとも見えかねない描写であったりして(汗)、『コスVSジャス』や『ガイア』は、個人的にはやや説得力や品位には欠けて見えていた。
――『80』などは低予算を逆手に取って、ゲストヒロインとレギュラーヒロインによる三角関係ラブコメとしている。長じてから観るとソレが実に面白いのだが、子供のころはソコが逆に腑に落ちなかった(笑)――


 ウルトラシリーズに限定しなければ、日本においては第1世代SF作家・平井和正が手掛けた大人気「70年代・人類ダメSF(小説)」こと、半人半獣の狼男が愛憎込みで人類を糾弾してみせるウルフガイシリーズ。アメリカにおいても、目的は人類根絶でこそなかったものの、未熟で攻撃的な人類に対して警鐘を与えに来た宇宙人を描いていた古典SF映画『地球の静止する日』(51年)などといった前例となる作品もあったのだ。


 本作においては、人類自身の愚行によってではなく、人類が宇宙人たちによって巨人兵器として転用されてしまう係争地になることと、「人類が光の星と同じ運命をたどる可能性」から、「人類の廃棄」が決定されたのだとも「ゾーフィ」が語ることで「俗っぽさ」は消えている。人智を超えた天上世界での有無を云わさぬ決定事項といった感じとなっていたことで、良くも悪くも『コスVSジャス』や『ガイア』にあったクサみや弱点は最初から回避ができて、SF性や強敵性の方だけを前面化できている。
――「人類が光の星と同じ運命をたどる」の件は、ウルトラ一族も26万年前には地球人と同じ姿をした生物であったという設定の踏襲だろう――


 ゾーフィだけでなくウルトラマン自身もまた人間に対して、「禍特対のメンバーに危害が及べば、自分が人類を滅ぼす」とも恫喝まがいな発言まですることでは、ウルトラマンもまたゾーフィとは別の次元で広義では危険な存在にも成りうるのだとして、相対的に描いてもいるあたりに関してだけで云えば、ヒーローものではなくSFものの文法でもある。
 とは云ったものの、半世紀にもおよぶウルトラシリーズの長い歴史においては、日本人が中国を再侵略、もとい地球人が宇宙を侵略する機運があれば、初代ウルトラマン自身が地球人を滅ぼす! と明言していた作品もあった。1982年に映画製作会社・ATG(日本アート・シアター・ギルド)にて製作が予定されるも頓挫した映画企画『元祖ウルトラマン 怪獣聖書』がそれである――『佐々木守シナリオ傑作集 ウルトラマン怪獣墓場』(大和書房・84年11月1日発行)に脚本が収録――。


 本作ではウルトラマンの本名も判明する。ゾーフィが呼んだその名は「リピア」であった――字幕版によれば、正確には「リピアー」だそうだ――。すでにネット上にて好事家たちが解き明かしている通り、それは地を這うような多数の葉っぱの上に慎ましい小さな花を多数咲かせる南米産のヒメイワダレソウ(姫岩垂草)の学名に由来する可能性が高いようだ。しかも、日本の植物にとっては「侵略的外来種」でもあるあたりで、それをもねらった名称であったならば絶妙にハマったネーミングでもあった。


――「侵略的外来種」と聞くと特撮オタは、人間を怪人化させつつも時に人類を進化させてもきた、異界の悪意なき「ヘルヘイムの森」の侵蝕を描いていた『仮面ライダー鎧武(ガイム)』(13年)なども想起する――


『シン・ウルトラマン』賛否両論の内実! 4種に分類! その法則性!


 本作『シン・ウルトラマン』はご存じの通り、賛否両論の作品となっている。筆者が観測してきた範疇では、『ウルトラマン』シリーズにくわしかったりスキでスキでたまらない御仁だけがホメていて、そうではない人間たちが酷評をしているといった感はない。交通整理をしてみせると、以下の通りのようだ。


①:『ウルトラマン』シリーズもスキでくわしくて、『シン・ウルトラマン』も絶賛している御仁
②:『ウルトラマン』シリーズもスキでくわしいけど、『シン・ウルトラマン』をイマイチだったと批判している御仁
③:『ウルトラマン』シリーズに愛着はなく無知でもあるけど、『シン・ウルトラマン』を絶賛している御仁
④:『ウルトラマン』シリーズに愛着はなく無知でもあるけど、『シン・ウルトラマン』をイマイチだったと批判している御仁


 要は『ウルトラマン』シリーズをスキなヒトの中にも賛否があり、『ウルトラマン』シリーズにくわしくないヒトの中にも賛否があるのだということになるのだ。


 それでは、筆者個人はドーなのか? といえば、実は「①」ではなくやや「②」寄りの人間ではあったりはする(汗)。もちろんそうであっても、単なる日記や備忘録ではなくヒトさまにも読ませるモノでもある以上は、「オトナの態度」を採って、自身の見解とは異なる読者をも最低限はサービス・楽しませるための「話芸」として、ウルトラシリーズやジャンル作品についてのウンチクを披露するような手法が、マニアに成り立ての思春期のオタでもなければごくごくフツーの態度ではあるだろう。
――たとえ正論であっても、イイ歳こいてオブラートに包まずにストレートに罵倒やイヤミを糾弾調でブツけてしまう、古今東西の哲学・宗教がその重要性を説いてきた「礼節」を欠いた輩こそが、自身は誠心誠意な革命的・反体制的な正義のつもりであっても、近代後期以降のこの社会に熟議による民主主義ではなく不和・憎悪・闘争のタネを撒き散らしてもいる、近代化したハズの社会がいつまで経っても平和にならないことの根源なのであって、それらの積み重ねが差別や逆差別・分断・排他主義・内戦・戦争にすら行き着くのだとも思っているくらいだ(笑)――


 もちろん、嗜好品である以上は本作を絶賛する方々を否定する気も毛頭ナイ。それもまた、ヤボ以外の何ものでもないのだ。


 一方で、リアル・シミュレーション的で乾いて理屈っぽくもあった『シン・ゴジラ』にはノレなかった、もしくはその作劇理論が怪獣映画のファンタジックでユルい方向性やプリミティブな獣性とは相反するモノであったとしてノレなかった層には、「意外と『シン・ウルトラマン』は面白かった、『シン・ゴジラ』よりも面白かった」といった意見も観察されており、その観点に立てばその感慨もまたもっともかな、とは思うのだ。


 その上で云うのだけれども、強いて「①」~「④」の中だけで何らかの法則性を見いだせるとすれば、本作をイマイチだと思ってしまった人間たちは、映画やTVドラマなどにおける、


●「ドラマ」的な首尾一貫性
●「作劇理論」のようなモノ
●「間」とか「テンポ」といった、脚本ではなく演出側でコントロールされる「時間」や「密度」感
●セリフではなく映像で、状況・地理・位置・人物像などを説明・補強していくような「点描説明」感覚


といったモノサシを強めに持ってしまった人種たちなのではなかろうか? そういったモノが今一歩のところで本作には足りていない、ソレらが存在していたとしても観客側にイマイチ突き刺さってはこない。かようなシーンがいくつか散見されたことが、本作がその高いテンションを最後まで維持がしきれなかったといった感触につながっていたのではなかろうか?


放射能の減衰、自衛隊・米軍出撃の前段を、映像でもわからせるべきだ!


 筆者が個人的にまず惜しいと思ったのは、第2戦目である対ガボラ戦であった。怪獣ガボラは「放射能」を発していて危険であるために、禍特対の隊員たちも大掛かりな白い「防護服」を着用することになる。
 それはイイ。しかしダメ押しで、「ガイガーカウンター」(放射線測定器)なども持ち込んで、「ギーギー、ガーガー」といった不穏な局間ノイズのような音声を、これらのシーンに鳴り響かせるべきではなかったか?


 エッ? ベタでアリガチだって? まぁ、それはそうかもしれない。しかし、本作の最終決戦でも画面の下に「デジタル数字」表記のストップ・ウォッチ調の時間経過を示す字幕を付けることによって、タイムリミット・サスペンス性をも少しでも加味するようなベタな演出なども採られていたではないか!? それと同じようなことなのだ!


 ウルトラマンガボラと戦闘を開始すると、周囲の放射能レベルも下がりだして、ドーいう原理であるのかは不明なれども、ウルトラマンがその超越的な能力で周囲の人間には悪影響がおよばないように自身が「放射能」を吸収、もしくは中和・無害化している可能性なども説明されていた。
 しかし、「放射能」などといったモノは眼には見えない存在なのである(笑)。だから、これを静まっていくガイガーカウンターの不穏な音声なり電飾メーター映像などでも代替させて、ダメ押しで禍特対の面々も防護服のヘルメットを取ってみせて、そこで顔出しして「安全になったのだ」「ウルトラマンを人間の味方だと認識したのだ」といったことを、もっと絵でもわからせるような表現であった方がよかったのではあるまいか?


 「現代日本の風刺」といった側面をも併せ持っていた『シン・ゴジラ』ほどではないものの、本作においてもその前半や中盤では、リアル・シミュレーション風味であったり、政治ネタを少々混ぜてはいる。
 序盤で『ウルトラQ』の怪獣たちが数体も登場して、本作の世界観は巨大怪獣の存在が常態化した世界観であるとも説明はされてきた。しかし、超現実的なスーパーメカなどを保有した地球防衛軍などが登場しない作品でもある以上は、


●人間サイズの敵怪人の登場に対して、ナゼに警察や機動隊は出動しないのか? ナゼに敵怪人を仮面ライダースーパー戦隊だけが迎撃しているのか?(笑)
スーパー戦隊の敵怪人が巨大化したのに、自衛隊が出撃したり戦隊巨大ロボを援護して共闘したりはしないのか?(笑)


などといった、一般層こそ脳内に微量に思い浮かべてしまいそうな小さな疑問を、本作はジャンル作品における様式美的なお約束だとして済ませてはしまわないのだ。


 まずはウルトラマンが大活躍する前に自衛隊が出動したり、次に二等辺三角形型の米軍機・B2ステルス爆撃機が出撃して『シン・ゴジラ』でも披露したMOP2(モップ・ツー)こと地中貫通爆弾を投下したり、米海軍施設もある横須賀に出現した偽ウルトラマンに対して対艦ミサイルで攻撃してみせるサマを描くことも正しいとは思うのだ。
――もちろん、自衛隊もMOP2もこのテの作品のお約束で、巨大怪獣に敵わずに敗退する「前座」を務めることが宿命なのだとしても、こういった前段・段取りの有無でも「前座」が登場しているその場面の盛り上がり方がまたカナリの程度で変わってきてもしまうのだ――


 しかし、ホンの数秒のワンショットでもイイので、そこへと至った前段がほしいのだ。イキナリ空を飛んでいるB2ではなく米軍基地の滑走路から離陸する瞬間や、戦車や高射砲やミサイルランチャーが自走してきて着陣する瞬間、搭乗者や指揮官の顔の点描などがほしいのだ。イキナリそこにいて、すぐに攻撃を開始してしまうのでは腰の据わりが少々悪いのだ。
 たとえ数秒程度の点描ではあっても小出しに準備を進めているサマなども見せていくことで、観客側のナットク感や気持ちを盛り上げていくような演出。そういったモノのひたすらな積み重ねの連続が作品自体にも張り・テンションを、ひいては観客の作品に対する興味関心をも持続していくことにもつながっていくのではなかろうか?
 これらは従来のウルトラシリーズや合体ロボットアニメでいえば、地球防衛軍などのスーパーメカが格納庫から発進していく一連のシークエンスや、TV時代劇の主人公たちが悪を懲らしめるための前段として出陣・行進していくシークエンスなどにも相当するものでもあるのだから。


政治劇も存在したハズなのに、鮮烈には浮かび上がってこないワケとは!?


 透明怪獣ネロンガの出現場所が「官房長官の選挙区」だというセリフは、それ単体としては面白い。「巨大怪獣に対してのみ核攻撃を可能だ」とする条約に批准していて、核攻撃の可能性も言及されはする。しかし、日本も含めた現今の各国政府は実際にそういった局面になると及び腰で(汗)、自身の手を汚したくはないがためにか互いに核攻撃の担当をなすりつけ合っているようにも取れるセリフもまた、それ単体としては面白いのだ。
 そして、日本国による核保有に持っていきたいという一部政治家の意向が推測的にでも語られることで、逆説的に本作においては日本はまだ核兵器保有していないこともわかろうともいうものだ。


 巨大怪獣やウルトラマンをめぐって、米国(アメリカ)や大陸(中国)の動向が議題に上がったり、米国宛ての報告書が必要になっている(汗)という点描もまた、それ単独では魅惑的なネタである。
 このような点描は『シン・ゴジラ』にも存在しており、同作の本題でこそなかったものの、「尖閣諸島」ならぬ「対馬沖」に隣国の艦船が出現したとの報が入ったりもすることで、作品にポリティカル(政治的)なキナくささを味付けすることもできていたのだ。
 あるいは、左派の皆さまにとっては認めがたいことではあろうけど、東京都心に残置することになった危険な「ゴジラの死骸」とも共生して公益にも供しようといった示唆までがなされることで、コレはたとえ危険性があったとしてもそれをも承知で「原発」とも共生しようというメタファー(汗)だとも捉えることも可能なような可能ではないような……、といったクリティカル・ポイント(臨界点)に爪先立ちで立つことで、ヤバめの緊張感までをも醸すことすらできていたのだ。


 本作『シン・ウルトラマン』もまたセリフだけで見れば、同趣向のモノがあったハズなのだ。しかし、本作においてはコレらのセリフがビビッドには立ち上がってこないのだ。気の抜けたコーラのようにもなっている。
 ナゼであろうか? 脚本の庵野はともかく、監督の樋口はこのへんの政治ネタに感度がなかったのであろうか? それとも、むしろ庵野の政治観には同意していなくて、ソレらをウスめる手に出たのであろうか?(笑)


 ただし、これら政治方面ネタの助走台がやや弱くなってしまったことで、ザラブ星人が日本政府と友好条約を締結したり、しかしてその内容を各国諜報機関や日本の公安(爆)までもがスッパ抜いたのか、あるいはザラブ星人が自身でリークしていたのか、その内容が実は日本にとっては不平等条約であったとなるあたりがまた、ネタとしては面白いもののメリハリを持って立ち上がってはこないのだ。


 西島秀俊が演じる禍特対の班長 → 壮年の室長 → 防災大臣 → 日本国総理 → アメリカ(笑) といった5層のタテ構造などもあったハズなのに、各々が上や下とやりとりをしたり、それぞれの御仁もまた板挟みにあって苦渋の表情を浮かべている……などといった点描などもナイために、そのタテ構造がまた作品の行間には浮上してこないのであった。そこをもう少しだけ盤石に描いておけば、ザラブ星人出現の際に「禍特対」をさしおいて傍流の「外星人対策本部」に主幹が移されていた、といったストーリー展開の意外性・驚きなどももっと醸せていたであろうに……。


 ザラブの策略であった、ヒロインのパソコンから対ガボラ戦での神永青年がウルトラマンに変身した瞬間のさまざまなアングルからのカメラ映像が全世界へとバラ巻かれてウルトラマンの正体がバレたことで、警視庁・警察・公安・各国諜報機関・米軍の特殊部隊が禍特対の監視や拉致の準備をはじめたりするあたりもまた、具体的な一連ではなくても点描すらもがナイために深刻感もさして生じてこないので、腑には落ちてこないのだ。
 いわゆる60年代後半の第1期ウルトラシリーズで、佐々木守脚本による異色作やアンチテーゼ編を主に手掛けてきた実相寺昭雄(じっそうじ・あきお)カントクが得意としていた奇抜な「実相寺アングル」も、禍特対のオフィスでの会話シーンなどではなく、ザラブ星人メフィラス星人と日本政府の高官たちが交渉するシーンでこそ多用した方が、それらのシーンの意味合いも映像的な異化作用で屹立してきたのではなかろうか?


 だけれども、日本政府はウルトラマンの正体把握問題では国連やG9諸国やらに謝罪するといった情けなさ、メフィラス星人との条約締結でも他国に人工衛星からでも超技術給与の条文をさらしてしまってもイイですよ~といった塩梅で、埋め立て海浜近くに設置されたテントを前にして、天井もない白昼下で調印することになるあたり、やはり米国の半属国でしかないような我らが敗戦国・日本のしょうもなさといったモノは……(笑)。


「政府の男」とメフィラス星人もよかったが、もっと先に行けたハズだ!?


 しかして、本作後半にて登場した『シン・ゴジラ』出自で竹野内豊が演じる「政府の男」が、日本の核保有ザラブ星人メフィラス星人との条約締結の一連のすべてとはいわず、相応には関わっていたのやもしれない……。けれども、それは日本の外交的な自立、外交的なフリーハンド、他国との拮抗、欧米や中露とは異なる外交、いわば権力の善用のためであって、プーチン大統領のように隣国へと攻め込む(爆)ためのモノだったとは思われない。人格的にも悪人であったり増長してオカシくなてしまったといった輩でもなく、彼は極めて理知的でもあったからだ。
 だから、我が日本国ごときよりもはるかに横暴であろう世界各国が核ミサイルの発射ボタン(汗)をチラつかせてウルトラマンの情報開示を要求していることを明かして理解&同情を乞うてきたり、ウルトラマンの情報を奪取するために米軍の特殊部隊などが禍特対メンバーの拉致(爆)をもくろんでいると知れば、彼らの保護にも尽力していたりもする。よって、彼は個人の人権を無視するほどの強引さまではないのだ。


 しかし、このあたりの描写の印象が総じて弱いがために、本作にもいくつかあったタテ糸や背骨のひとつとも成りえたハズの政治ネタも弱くなってしまっている。


 原典における「精神性」「魂」「倫理」の問題に「悪魔のささやき」として関わってきたメフィラス星人とはやや趣向が異なるも、本作におけるザラブ星人同様に「実利」的な不平等条約を締結しようとしてくる外国のメタファーとして生グサい方向性にアレンジされて、その人間態を演じた山本耕史(やまもと・こうじ)演じるメフィラス星人も実によかった。
――原典にてメフィラス星人がウルラマンことハヤタ隊員に「貴様は宇宙人なのか!? 人間なのか!?」と発して「両方さ」と返されたセリフは、特撮評論においては第1期ウルトラシリーズのメインライター・金城哲夫の沖縄と本土をつなぐ作家性の現われだとして、90年代以降の特撮評論では捉えられてきた。その成果にも乗るかたちで、神永青年に投げかけるヒロインのセリフとして本作では復活を遂げている。そして、ウルトラマンこと神永も「両方だ。あえて狭間にいるからこそ、見えるものがある」と返すのだ。もちろん、狭間から見えた光景もまたひとつの角度に過ぎなくて、それが事の事実・真実であるとは云い切れないとも思うものの――


 「私の好きな言葉です」「私の苦手な言葉です」といったお約束の定型句も多用して、漫画・アニメ・劇画的に記号化されたキャラ付けをされているあたりは、第1期ウルトラシリーズどころか昭和ウルトラや00年前後までの平成ウルトラシリーズとも異なるテイストのものではある。
 特撮ジャンルでいうならば、平成仮面ライダーシリーズの『仮面ライダーカブト』(06年)や『仮面ライダー電王』(07年)における半分はカッコいいけど半分は笑ってしまう定型句的な名乗りから始まって、ウルトラシリーズでも『ウルトラマンオーブ』(16年)以降に敵味方のキャラ双方の味付けに大々的に導入されていくこととなった、特に若い特撮オタクたちから「円谷のやべーやつ」と称されているライバルキャラのポジションに配されたジャグラスジャグラー・伏井出ケイSF作家センセイ・愛染マコト社長・女子高生ツルちゃん(笑)などに付された、いわゆる「ネタキャラ」的な個性付けにも分類ができるのだとの整理はできるだろう。


 けれど、それまでの地球人やザラブ星人との政治談義といった政治ネタが助走台としても有効に機能していれば、これらの「ネタ性」と「政治性」はもっと盛り上がったのではなかろうか?


 さすれば、『シン・ゴジラ』ほどではなくても、政治方面からの語り甲斐もある作品に成りえたやもしれないのだ。庵野の目論見の一方はソコにもあったのやもしれないし、庵野の思想性・政治性の是非はまた別として、そこで辛めのスパイスをピリリと利かせることで端々のエッジも粒立ってきたやもしれない。そうすれば、『シン・ゴジ』は肯定するけど『シン・ウル』にはノレなかったと云っているような層をも総ざらえでゲットできたやもしれないのに、実作品はそうはなれなかった恨みも残るのだ。


変身アイテム・ベーターカプセルの方は作品のタテ糸とすることに成功!


 タテ糸といえば、本作においては、人類がウルトラマンとも合体化したり、ウルトラマンに変身できる道具・ベーターカプセルもそうであった。
 このアイテムをめぐった争奪戦を対ザラブ星人戦の一方の幹とすることで、まずはスポットを当てている。メフィラス星人がヒロインを巨大化させた方法も、ウルトラマンのベーターカプセルとも同じ原理を持ったメフィラス星人由来のベーターボックスによるものだったとしたのだ。
 なおかつ、メフィラス星人が巨大化変身する際にはやはり彼専用の独自の変身アイテムを使用して、ウルトラマンの巨大化変身時とも同じ効果音まで響きだすことで、メフィラス星人もまたウルトラマンともイコールではなくとも似た趣向のテクノロジーを活用した存在だとして描くのだ。
――敵味方が濃淡はあれども同根のテクノロジーに由来する存在だとしたのは、原作マンガ版『仮面ライダー』初作や、『クウガ』と『響鬼』を除いた平成仮面ライダーシリーズ、「アベンジャーズ」シリーズの映画『アイアンマン』初作や『超人ハルク』初作(共に08年)などとも同趣向だ。メフィラス星人の変身巨大化アイテムが、ウルトラマンのベーターカプセルとはあまりに形状が異なっていたあたりだけは少々残念だったけど――


 あげくの果てに天体制圧用兵器・ゼットンを倒してみせる切り札となるのもまた、やはりウルトラマンの変身アイテム・ベーターカプセル! 最後にウルトラマンと神永を分離させるのに用いられたゾーフィのアイテムもまた彼専用のベーターカプセル! だったとしたことで、執拗なまでに一応の作品のタテ糸として、ベーターカプセルそれ自体に意味を持たせており、「ベーターシステム」なる総称まで与えてみせていたのであった。


 ちなみに、原典と『デザインワークス』掲載の初期デザイン画では、「ベーター」ならぬ「ベータ」名義で、差別化としてのズラしが入ったこともわかる(笑)。このベータカプセルも放映当時~70年代末期までの書籍ではフラッシュビームとして記述されており、当時の子供たちもそう認識していた。しかし、原典#1では初代マンが明らかにベータカプセルだと呼称している(汗)。ここに整合性を取るためか、70年代末期の書籍からは変身アイテム名自体はベータカプセルで、そこから放たれる閃光がフラッシュビームなのだという記述が登場。以降はこれで定着していく。


――のちのちオタクになりそうな怪獣博士タイプ・科学少年タイプであれば、『空想科学読本』ではなくても小学校中学年以降になると気にしてしまうであろう「質量保存の法則」を無視した巨大化(特にナマ身の人間であるヒロインの巨大化・笑)。それは物質の基礎である原子も含めて巨大化したのか? 原子の大きさはそのままにその数量が増えたのか? 長さの3乗で質量が増大するので、その骨格も維持ができないヨ! などとサメてしまって、ジャンル作品からも卒業されてしまいかねないところを、そこをも先回り! ベーターボックスでの巨大化によって、彼女の身体が人間の体細胞とは異なる未知の物質となって、キズひとつ付けて採取することもできない硬度を持っているとのSF的な説明を与えることで、未来の特撮オタクとなりうるガキどものゲットも万全なのだった(笑)――


思い出補正の宇宙恐竜ゼットン。その現代的なラスボス表現&攻略方法!


 人間サイズで森林に出現したゾーフィがその手から放った球状メカは高空へと浮上していく。そして、衛星軌道上で拡張・展開していき、超巨大兵器・ゼットンと化していく。正直、ここのCG映像クオリティーは少々弱かったとは思うのだ。しかしまぁ、この宇宙空間に浮遊している存在が、原典における宇宙恐竜ゼットン型をした「生体」ならぬ「メカ」的な存在である以上は、あのCG映像でもまだ許容はできるのではなかろうか?


 ウルトラマンとほぼ同じ身長であった原典におけるゼットンそのままの姿で再登場してほしかったという方々もいるやもしれない。しかし、アレらは我々が幼児や子供の時分に見た衝撃ありきのモノなのである。
 「思い出補正」で美化されつづけてきたモノでもあったのだから、原典のゼットンをそのままに本作に再登場させたとしても、今のオトナになってしまった観客たちにラスボス級の超強敵だとして認知させることは実はムズカしかったことだろうとも思うのだ。


 そうなると、やはり超巨大物体だとして、容積比的にも撃破のしようがない巨悪として描写してみせる手法が、とりあえずの最適解ではなかろうか? あとは、超巨大ゼットンのCG映像に質感・実在感・重厚感などを高めていくことで、絵的な説得力も出していくといった方法しかなかったとも思うのだ。その点においては大成功はしていなかったモノの(笑)。
――『デザインワークス』の「手記」で庵野自身も、公開数ヵ月前にもなってチェック作業に参画してリテイク指示を開始しており、「正直、アニメーションから直したい様な自分としてはかなり厳しいクオリティーのまま公開されてしまうカットもあると思います。残念ですが、これらはもう自分ではどうしようもなかったですね」とも語っている(汗)――


 原典の最終回では、初代ウルトラマンゼットンに敗北してしまう。その代わりに地球人が新兵器を発射してゼットンを撃破してみせることで、取って付けたようではあったものの、人類がウルトラマンに依存しないで独力で戦ってみせることの重要性を科学特捜隊の隊長の言葉で語らせることで一応の「テーマもどき」として作品を完結させていた――このテーマ自体は後続のウルトラシリーズでこそ継承されて発展もしていった――。


 本作ではソコはキチンとブローアップ。メフィラス星人のベーターボックス供与と同等の行為になってしまう可能性もあるので、作劇&テーマ的にはキビしいところもあるのだけど、ウルトラマンこと神永がベーターシステムの原理のすべては明かさずに、その一部を地球人における部分的な「数式」のかたちでヒントとして提示して、それを人類が解くかたちでウルトラマンに超巨大ゼットンを打倒するための戦法を考案させている。


 ここも理念的・作劇的には決して間違ってはいないのだ。しかし、禍特対の非粒子物理学者である滝青年が、VR(仮想現実)ヘッドギアを装着して世界中の科学者と協議を重ねてベーターシステムの原理とゼットン攻略法を練ってみせるあたりがまた、やはり絵面としては弱いだろう。
 ココこそベタでも、今はむかしの質の低いポリゴン風のCG表現による仮想の円形講義堂などで、世界中の科学者のアバター(デフォルメ分身)キャラなり、今時のPCであれば最初から画面の上隅に内蔵済のカメラに映したご当人たちの顔などが林立している中で、彼らが喧々諤々の大激論を重ねているサマなどもビジュアルとして見せるべきではなかったか!?


 そういった、脚本を超えたダメ押しとしての短いワンカットが総じて本作にはほしかったモノなのだ――そのワリには、脚本指定か本編美術班のお遊びか、名作深夜アニメ『魔法少女まどか☆マギカ』(11年)に登場した白い小動物型マスコットキャラ・キュゥべえのシルエットが描かれたマグカップは登場している。キュゥべえの正体が少女の精神エネルギーを搾取して、エントロピーの法則による物理的必然で到来してしまう熱的死(=宇宙の終焉)をも回避させてきた高次元生命であったこと、ラストで主人公少女がキュゥべえよりもはるかに高次元な存在へと上昇していったこととも掛けていることは、ガチオタ的にはよくわかる(笑)――。


 そこで出された結論が、ウルトラマンへと変身直後にベーターカプセルに2度目の起動点火をさせること。これによって、6次元世界を通じて「プランク・ブレーン」に1ミリ秒だけ「穴」が生じて、その1ミリ秒以内に殴り飛ばすことで、ゼットンを別の並行宇宙なり次元の狭間へと飛ばしてしまうという作戦でもあった!


プランク・ブレーン、ブレーンワールド、並行宇宙、マルチバースとは!?


 「プランク・ブレーン」。「プランク」とは時間や空間の一応の最小単位とされている「プランク長」や「プランク時間」からの引用でもあろうか? 「ブレーン」の方は宇宙論素粒子論などにも興味のある方々であればご承知の通り、実在する科学用語・物理学の用語でもある。
 この「ブレーン」とは「膜」の意味だ。この「3次元宇宙」を仮に「点」、その過去~未来への時間変化(歴史)を「線」に見立てることで、宇宙や分岐並行宇宙それ自体を「世界線」だと表現するけど、ここでは「3次元宇宙」を仮に「面」または「板状の膜」だとして捉える。
 そして、高次元空間には多数の「膜」、すなわち多数の「宇宙」が並行して存在しており、コレらをまとめて「ブレーン・ワールド」だと呼称する学説のことなのだ――要は並行宇宙・多元宇宙の云い換えですネ――。


 この世間的には聞き慣れない言葉をあえて使用してみせることで、作品世界をちょっとだけ高尚に見せようという、実に小賢しい手法が「プランク・ブレーン」という言葉使いでもあったのだ(笑)。


 しかし、やはりココも少々の引っかかりを覚えてしまうのだ。たとえばアメコミヒーロー大集合洋画『アベンジャーズ/エンドゲーム』(19年)では、人々を復活させるためにヒーローたちが過去のあまたの時点に戻って、今では失われてしまった6つの宝玉を集めて願いを叶えようとする。
 拝借した宝玉を、拝借した直後の時間軸の同一の場所に返しておけば歴史の分岐は起きないけど、この処置ができなかったり、過去の現地でトラブルを起こしてしまえば、そこから分岐して並行宇宙が誕生してしまう危険性を、ワザとらしくても劇中キャラが別のキャラへと説明するかたちにして、しかも大空に飛行機雲を描いて、その根元から分岐した飛行機雲が並行して伸びてくるサマなども描いて念押ししてみせることで、SFリテラシー(読解能力)などはナイであろう圧倒的大多数の庶民観客たちにも眼で見てわかるかたちで了解させることができていたのだ。


 あるいはウルトラシリーズでも、「マルチバース」の語句が初登場した映画『ウルトラマンゼロ THE MOVIE 超決戦!ベリアル銀河帝国』(10年)においては、ウルトラマンゼロが宇宙の果てを突破して宇宙の外へと出たならば、そこは「泡」状で表現された多数の宇宙が浮遊している高次元世界でもあったのだ! といったかたちで、「マルチバース」を眼で見てもわかるかたちで説明することができていたのだ。
 本作と同時期に公開されている「アベンジャーズ」シリーズの映画『ドクター・ストレンジマルチバース・オブ・マッドネス』(22年)でも、キャラクターが突き飛ばされるや「膜」や「壁」を突き破っていくような表現で隣の並行宇宙へ、そのまた隣の並行宇宙へ、そのまた隣の隣の並行宇宙へと、あくまでも「横」方向へと移動していくサマが、実に通俗的な眼で見てもわかる表現で描かれてもいた――上・下・斜め方向で並行宇宙を越境していく映像表現は混乱を招くためにかあまりなかった(笑)――。


 そういった意味では、これらの語句はムダに観客をモヤモヤとさせてしまっているところもあったのではなかろうか? やはり、パソコンの画面なりプロジェクターに映したEXCELやパワーポイントの資料でもイイので(笑)、複数のタテ棒線として表現された「膜」から隣の「膜」なり、そのまた隣の「膜」なりへとゼットンをハジき飛ばしてみせるような、そして「膜」と「膜」との間のスキ間が5次元や6次元以上の高次元空間なのですヨ~、といった作戦図案なども見せてほしかったモノなのだ。


 ただし、あとになって思うに、メフィラス星人もまたプランク・ブレーンにベーターボックスを収納しているとも云っていた。ウルトラマンこと神永はそのベーターボックスを強奪するために、ボックスの初回被験者として一度は巨人化させられたヒロインの体臭(汗)をよすがに、変身アイテム・ベーターカプセルを焚いて現世から姿を消してみせていた……ということは、ウルトラマン自身も並行宇宙はともかくプランク・ブレーンまでは転移することが可能だという意味でもあるのだ。
 このプランク・ブレーンとはもちろん「3次元世界」以外の「別次元世界」ではあるけど、「並行宇宙」というワケでもなく、我らが「3次元世界」に近接した「超空間」ならぬ「亜空間」(不完全空間)のようなモノではなかろうか? すると、プランク・ブレーンとは、あまたの並行宇宙の中のひとつとしての大宇宙のことではなく、棚・ロッカー・押し入れ(笑)のような用途にしか満たすことができない「プランク長」(極小)の閉鎖空間のようなモノなのであろうか?
 そして、そのプランク・ブレーン自体にさらに「穴」を開けることで、いわゆる我々が想定するパラレルワールド=並行宇宙にも通じる「ゲート」「門」にも成りうるのだ……といったような整理となるのであろうか?


 ……延々と書いてきたところで改めてググってみたところ、NASA帰りのお姉ちゃんYouTuberの動画によればソレは「造語」だとの記述があった。一方で、別人による「博士学位論文」などもヒットした。それによると「プランク・ブレーン」は「造語」ではなく正式な「学術用語」であった。正の張力を持ったブレーンを「プランク・ブレーン」(UVブレーン)、負の張力を持ったブレーンを「TeVブレーン」(IRブレーン)とも呼んで、前者から後者へ進むにつれてエネルギー(質量)のレッド・シフト(赤方偏移)が起きるのだそうな……(理解不能・汗)。


 ウルトラマンがその巨人としての身体(本体?)をプランク・ブレーンから召喚していたり、メフィラス星人もまたソレとも同様なのかもしれないともなると、ウルトラマンメフィラス星人もまた「3次元生命」ではなく「高次元生命」であった可能性が浮上してきてしまう。
 そうなると、『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』(17年)における、原典での「反物質」組成では今の時代にいくらナンでも……と、その惑星上の全知性体が進化の果てに精神生命体へと融合、あまたの並行宇宙を一瞥できるほどの「高次元存在」へと改変されたかたちで登場した、かの神田沙也加が演じた宇宙の美女・テレサなども想起されてきてしまう。


 しかし、そこまでの高次元な存在になってしまうと、並行宇宙を越境することすら容易な超越存在になってしまって、天体制圧用最終兵器・ゼットンを苦もなく並行宇宙へと排除することも可能になってしまうことで、本作終盤におけるゼットンにまつわる展開とも矛盾が生じてしまうのだ。
 よって、やはり本作におけるウルトラマンもまた、並行宇宙を越境可能なほどの高位な高次元存在、万能の存在などではないのだろう。


 本作においても、ウルトラマンこと神永が、ウルトラマン自身のことを「万能の神ではない。君たちと同じ、命を持つ生命体だ」とも述べている。そう、ウルトラマン自身はもちろん人間とは異なる「神近き者」ではあったとしても、この天地や宇宙や並行宇宙それ自体を創造した「造物主」「唯一絶対神」などではなかったのだ。
 こうした「ウルトラマン観」もまた、腐れウルトラオタクであれば、『ウルトラマンメビウス』#3にてウルトラマンを「限りある命」を持った存在だとして復習し直したことや、映画『ウルトラマンメビウスウルトラ兄弟』(共に06年)でも初代ウルトラマンが自分たちのことを指して「ウルトラマンも神ではない。救えなかった命もある」などと語っていたことをも思い出すであろう。人間と神との中間にある者としてのウルトラマンなのであり、あまたのヒーローもの作品における超人たちなのだ。


――などと云いつつ、本作公開の2ヵ月ちょい前に完結した、並行宇宙(並行世界)を題材としていた『機界戦隊ゼンカイジャー』(21年)終盤においては、並行宇宙全体を創造した神さま(!)が出現して、タイクツを持て余しているというその神さまとも対決していたけど(笑)――


ウルトラマンとの会話でゾーフィがゾフィーに!? 並行宇宙の別人か!?


 並行宇宙へと通じる穴に吸い込まれそうになった、あるいは吸い込まれてしまったウルトラマンがふと気付くと、マーブル模様と化した、またまた別の異空間の中を、力尽きたか仰向けの状態で漂っていた……。
 ウルトラマンの念波を頼りに駆けつけてきたというゾーフィがそこに到着して、ウルトラマンとの会話もはじまる。


 原典の最終回にもあった、とても神秘的で印象的なシーンの再現でもある。昭和のウルトラシリーズは1960年代後半~90年代初頭においては特に関東圏ではほぼエンドレスで再放送がなされていたために、この時代に子供時代を過ごした世代においては、初代『ウルトラマン』最終回の内容などはほぼ共通体験となっており、基礎教養ともなっていた。
 80年代中盤には、コミカルなヘビィメタルバンド・聖飢魔Ⅱ(せいきまつ)のボーカル・デーモン小暮(でーもん・こぐれ)がTVのバラエティ番組などで、原典の最終回における「ウルトラマンゾフィーの会話」をひとりでエコー(音の反響)までをも再現しての披露をしており、大ウケを取っていたことを世代人であれば憶えていることであろう(笑)。 


 しかし本作では、このシーンになるや否や、「ゾーフィ」ではなく「ゾフィー」として呼ばれてもいるのだ(汗)。ベテラン声優・山寺宏一が演じているゾーフィ自身も今までの堅物ブリとはやや異なっているようであって、随分と物わかりのよい軟化した態度でしゃべってもいる。


 コレはドーいうことなのであろうか? アフレコ時の初歩的なミスなのであろうか? しかし、そんな初歩的なミスを犯すのであろうか? ウルトラマン自身も結局は逃げ切れずに、ゼットンともまた別の並行宇宙との狭間にある異空間へと飛ばされてしまったと解釈するならば、ここに登場したゾーフィは先の「ゾーフィ」ともまた別人である並行宇宙から駆けつけてきた「ゾフィー」なのではなかろうか?(汗)


 ……などという、完成フィルムだけでは正解の出しようがない不毛な議論をマニア間で惹起させるために、作り手たちはあえてこのような描写を挿入しており、それを見て彼らはほくそ笑んでいるのではなかろうか? それとも、筆者がひとりで勝手に解釈を暴走させて、彼らの手のひらの上で踊っているだけなのであろうか?(笑)


 すると、神永が目覚めた先で禍特対のメンバーが温かく迎えてくれたラストの世界もまた、本作『シン・ウルトラマン』世界とほぼ同様の事件が起きはしたものの、また別の並行宇宙なのではなかろうか?(汗)


 本作における「声ノ出演」のクレジットは、高橋一生山寺宏一津田健次郎の3名が配されていた。ザラブ星人の声は明らかにあの特徴的なダミ声が印象的な津田健次郎である。よって、ウルトラマンの声は今ではメジャーな俳優・高橋一生が演じていたことになる。氏は00年前後~10年前後のウルトラシリーズへのゲスト出演はもちろん、年長の特撮オタク的には、氏が子役時代に演じた『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(92年)終盤に登場して敵の巨大ロボットも操縦していた、名優・曽我町子が演じた魔女バンドーラの息子・カイのことをも思い出すであろう。


――余談だけれども、マルチバース設定が導入された2010年代以降のTVのウルトラシリーズでは、どの宇宙にも地球が存在してはいるものの、昭和ウルトラの故郷であるM78星雲・光の国はひとつの宇宙にしか存在していない。並行世界においてはM78星雲出自のウルトラ一族は存在しないモノとして扱われている。深読みすれば、これら別世界のM78星雲のウルトラ族たちは20数万年前に彼らの恒星が爆発した際、人工太陽・プラズマスパークを建造できずに絶滅してしまったのであろう(涙)――


ウルトラマンが人間を好いた理由を『野生の思考』に求めることの是非!


 ここで、ゾーフィは原典の最終回でも発していた「ウルトラマン、そんなに人間が好きになったのか」といった有名な言葉を放っている。
 厳密には往時の子供たちは、この言葉にではなく、そのあとにつづく「私は命をふたつ(!)持ってきた。そのひとつをハヤタにやろう!」と云ったセリフの神秘性の方に打たれていた(笑)。先のセリフの方に反応するようになったのは、中高生以上になってからの再観賞ではあっただろう。


 「ここが人間ドラマ的にはキモになるべきだったのであり、このセリフがこの映画の中では説得力には欠けている。ここに係り結び的に集約するように、人間の善性をもっと描いておくべきだったのだ」という批判もまた一応の正論ではあるだろう。
 もちろん、人間の善性それ自体は描かれてはいた。原典の初代ウルトラマンが地球人と合体したのは、#1にて宇宙怪獣ベムラーを追跡中に科特隊の戦闘機と激突してハヤタ隊員を死なせてしまったからだったが、本作ではソレだけでは弱いと思ってか、『帰ってきたウルトラマン』(71年)以降のウルトラシリーズに頻出して、昨今の異世界転生モノでも定番となっている(笑)、他者の生命を救おうとする自己犠牲に感じ入って、ウルトラマンが地球人の青年との合体を遂げるサマを描いていたからだ。


 好意的に解釈してみせれば、ウルトラマンに憑依された神永が人間世界の知見を得ようとして、図書館にて名著『野生の思考』(62年)を高速で読破していたことにも、その一因を求めることはできるだろう。
 多少は哲学・現代思想などにも関心があられる方々であればご存じの通り、1960年代いっぱいまでは隆盛を極めていた「マルクス主義」や「実存主義」を古びさせて一掃していった「構造主義」という哲学がある。『野生の思考』はこの構造主義を一挙に普及させた名著でもあったのだ。


 同書は科学的な「知識」や近代市民社会を構築するための「社会契約」面では欠如した未開人たちにも、彼らなりの哲学や思考の「枠組み」「構造」といった「知恵」は存在していることを解き明かして、単線的な社会進化ではなく文化多元主義的なアプローチをも可能とした論考でもあった。
 日本においても、(学者間ではともかく)多少なりとも知的なモノに関心を持っている層に対しては、「80年代ポストモダン」と称された80年代前中盤の文化ブームの時期に、後続のフランス現代思想であった「ポスト構造主義」や「記号論」などとも併せて紹介されており、ロングセラー書籍『別冊宝島44 現代思想入門』(84年12月1日発行・00年に宝島社文庫化)などでも流布された。不肖のロートルな筆者なども原著などにはもちろん当たってはいないものの、80年代末期に『別冊宝島』で即席のお勉強(笑)などはしたモノであった。この界隈ではワリと有名な著作なので、庵野もまた押さえていた名著だったのであろう。
――ただし、90年代中盤以降はアメリカ仕込みの分類、リベラリズム自由主義)・リバタリアニズム自由至上主義)・コミュニタリアリズム(共同体主義)などといった概念の方がよほど実地に現実社会を説明できるツールだとして人気を集めたことで、これらポストモダン哲学も今では単なる言語遊戯だったとして不人気にはなっているものの(汗)――


 一方で、本作のウルトラマンはゾーフィに向かって「わからないのが人間だ」などとも語ってみせている。それはもちろん、人間たちのことが微塵たりとも理解すらもができない! なぞといった意味では毛頭なくて、矛盾や不条理に群れ社会の中においては必然的に生じてしまう政治劇、恣意的な偶発性・懊悩・悲喜劇なども含めて、トータルでの人間賛歌、そういった群れ社会の中にも人間たちの感情的な多彩さ・繊細さ・ダイナミックさといったモノをも看て取ったという意味なのだとの解釈もしたいのだ。


 実は原典では「そんなに地球人のことが好きになったのか」と云っていたところの「地球人」を、本作では「人間」という語句に置き換えている。腐れウルトラオタクであれば、気付いたことであろう。あえてSF的な「地球人」という語句を避けて、執拗に「人間」という語句を用いていた『ウルトラマンメビウス』という作品もあったことに……。


 同作では、高度な進化の果てにやや達観したメンタルを持ったウルトラ一族とは異なり、劣情をも含めた微細で多彩な感情を持った「人間」からも改めて学んで、自身の心を豊かにして人間力を高めるのだ。一見は愚かしい子供や青年や人間たちの試行錯誤や懊悩に対して理解を深めること、小さな悪や少々の未熟さ程度であれば包摂することで、人間としての器を大きくして、事態の解決にも動いていくことができるようにもなるのだ……。といった趣旨のことを、#1の冒頭にて「ウルトラの父」から諭(さと)されて若きウルトラマンことメビウスが地球へ派遣されるのだ。
 他のジャンル系作品においても、40次元(!)の高みから数km四方の巨大立方体とともに仮初に人間の姿を採って出現した高次元生命体が、よりにもよって日本に出現したことで世界先進各国の疑心暗鬼を招いた末に、交渉相手であったひとりの青年外交官に執着していくSF深夜アニメ『正解するカド』(17年)との相似性なども想起する……。


 しかし、それらのことどもはともかく、主要登場人物や名もなき庶民たちの通俗的でわかりやすいベタな善性描写などまで2時間程度の映画の中に入れてしまうと、半年・1年のTVシリーズであればともかく、ややクドくて煩雑になったり鼻について浮いてしまったのではなかろうか?
 ここの不備についても、本作の全編が『シン・ゴジラ』的な畳み掛けるような「密度感」や「スピード感」にも満たされていれば、ソレにダマされてノセられてしまったかたちで、このセリフが浮いた感じにはならなかったのだ……といった仮説などを、筆者個人は立てていたりもするのだ。


 その意味では、「鳥の目/虫の目」などといった分類項で、昭和ウルトラのアンチテーゼ編にあった後者の欠如をもってして、本作を批判する論法には賛同できない。それらの作品のドラマ性・テーマ性の高さを認めて、筆者も個人的に執着している上でなお、やはりアレらはシリーズの王道が確固として盤石に確立された上でのシリーズ後半における番外エピソードとして光るのだとも主張したい。もっと云うならば、アンチテーゼ編がシリーズの#1や最終回に配されてしまっては光ることもできないのだ。


 なとと云いつつ、庵野が子供や名もなき庶民・大衆のことをスキではない可能性も残る。氏が手掛けた映画『シン・エヴァンゲリオン劇場版』における「第3村」はともかく、原典『新世紀エヴァンゲリオン』における「第3新東京市」や『シン・ゴジラ』には庶民がほぼ登場しなかった。かといって、ガチのオタクである庵野がエリート志向だとも思われない。氏はエリート・大衆の双方にも入れてもらえないアンタッチャブルな最底辺層として我々オタクを捉えて、大衆不信の念を抱いているのではなかろうか? だとすれば、筆者は庵野の心持ちには共感・同意もするのだ(笑)。



 本作では命をふたつは持ってこなかったゾーフィに合わせて、ウルトラマンの精神・魂自体は死んでしまって、その白銀の巨人としての肉体だけを神永に託したと取れるかたちで、この映画の物語を終わらせてもいた。


 森林の中で青白くなって横たわっている神永の死体(!?)を見つめている、神永の姿を採ったウルトラマンが本作では数回、描写されていた――神永が死した瞬間を幻視しているだけ?――。ということは、厳密な意味ではウルトラマンは神永とは融合していないのであろうか?


 往年のウルトラセブンことモロボシ・ダン隊員は、『ウルトラセブン』#17の回想シーンにて、登山中の仲間を救うために自らの命綱を切った地球人の勇敢な青年・薩摩次郎の姿をセブンが模した姿(=逆変身)であったことが明かされていた。この事例などにも準拠して、神永の肉体・着衣の原子配列構造などに彼の記憶までをもコピーしていたとするならば、たとえコピーだとはいえウルトラマンと彼はその精神・魂までをも含めて融合したのだと称してもイイのだとは好意的には解釈できる。
――『正解するカド』では、高次元生命体が人間のコピー生成を試みても、その人格・魂の完全再現まではできなかったとされていたけど(笑)――


ヒロインの扱いはセクハラ!? ヒーローやバトル自体が反ポリコレ的か!?


 長澤まさみが演じた本作のヒロインが、ネット論壇ではPC(ポリティカル・コレクトネス。政治的正しさ)に反するとして論争化している。


●ベーターボックスによって東京駅は丸ノ内近辺に巨人化して出現したヒロインを、下から見上げるようなカメラアングル
ウルトラマンこと神永がベーターボックスを探すために、ボックスの初回被験者であったヒロインの体臭を嗅いでみせるシーン
●ヒロインが自身や同僚女性のお尻を叩いて気合いを入れる描写


 それらが古クサい感性・価値観に基づいたセクハラ的な描写であったり、ステレオタイプで記号的な人物描写だとして、批判もされているのだ。


 筆者個人は鈍感(?)なことに、本作を鑑賞していてもそのようなことは微塵たりとも感じていなかった(汗)。むろん「自身の感性こそが絶対だ」などとは思い上がってはいないので、心の底からそのように思われた方々にはその気持ちやロジック自体は尊重したいとは思うのだ。


 しかし一方で、無意識に新たな「最先端」だと思わせている「ムラ世間」的な「空気」「同調圧力」に屈服・日和(ひよ)ってしまって、後出しでそのような言説を紡いでいる輩もまた相応数はいるのではなかろうか?


 過度にセクシュアルでハラスメントな描写であればともかく、フェティッシュ程度の描写にネタではなくガチでケチをつけてもイイとなると、世間に出回っている青年マンガ誌の表紙における水着女性や映像ソフトなどの扱いもドーなってしまうのであろうか? 不特定多数の一般層に見せる映画として、登場人物同士の「関係性」をも描いた作品であった場合に、それらは問題視されるのであろうか?(多分、彼らに明瞭な理論はない)


 ここ10年ほどの「仮面ライダーシリーズ」や「スーパー戦隊シリーズ」における坂本浩一カントク担当回においては、もちろん子供向け番組での範疇内ではあるけれども、女性キャラをややフェティッシュにも撮影している。アレらはクローズドな規模でしかなかったので、今までは彼らの批判的な目線には入っていなかっただけなのであろうか?(汗)
――かと云って、寝た子を起こして、彼らが自身の言説との整合性を取るために、改めてそれらの弾圧に走らせてしまってもマズいけど(笑)――


 筆者は個人的には本作のヒロインに対する演出・ディレクションに、むしろ逆にイロ気やフェティッシュさの欠如を感じていた。『デザインワークス』での「手記」によれば、庵野自身も同様であったようで、これらのシーンが伏線としては昇華していかなかったために、終盤での神永とヒロインとのライトなキスシーンもカットした旨を語っていた。


 もちろん、本作だけにかぎった話ではないだろうが、ヒロインに対する目線が「男性中心主義」だとの批判は一考には値する。しかし、それを云い出してしまうと、そもそも敵キャラを設定してソレを撃滅するという構図自体が好戦的な「男性中心主義」だとの批判も成立してしまって、このテの活劇作品全般を全否定しなければ、スジも通らなくなってくるのだ。


 人間は「理性的」で「礼節」を兼ね備えた高邁なる存在になるように努力をすべきだとは思う。しかし一方で、動物でもある以上は「捕食/被捕食」といった肉食動物的な「攻撃性」や「マウント性」、生物でもある以上は理性や合理を超えた「リビドー(衝動・性的衝動・生への衝動)」といった非合理的なモノをも兼ね備えていることも認めざるをえないのだ。
 つまるところ、セックス&バイオレンスといったモノから、全員とはいわず大多数の人間は濃淡はあっても完全なる解脱をすることなど出来はしない。後天的な悪しき「男性中心主義」の権力的な文化・風潮によって人間が「攻撃性」や「マウント性」や「階級社会」に染まるのではない。むしろ、先天的に内在していたソレらの爆薬が時にトリガーによって引火してしまうだけであって、引きガネを根本原因であると思うのは愚かなのだ。


 そうした宿痾から人間は逃れられない以上、ガチの殺しあいや戦争ではなくスポーツ・フィクション・ゲームなどで「攻撃性」や「マウント性」を一時的・疑似的に発散させる手法にも大いに理を認めるべきだし、それらはヒトの非合理性をも先回りして網を張っている人間社会の智慧であるとさえ思うのだ。そして、このようなロジックでなければ、特撮ジャンルや娯楽活劇作品全般を擁護することも叶わないであろうとすら思うのだ。
――現実の軍隊に近しいミリタリックな意匠を兼ね備えた作品だけはダメだとして生贄に差し出して、それ以外の作品であれば擁護するといったロジックもまた、絶対平和主義的な論法には最終的には敗北することが必定なのであって、ジャンル自体の根源的な擁護にはならないであろう――


改めて、『シン・ウルトラマン』と「特撮ジャンル」とは何だったのか!?


 いろいろと記してきたが、筆者は個人的には『シン・ゴジラ』を神懸かった大傑作だったとして捉えている。そして、映像作品とは偶然の要素にも左右されるので、『シン・ウルトラマン』が『シン・ゴジラ』の域に達するのはムズカしいとも思っていたし、実際にもダメではないけど映画の中後盤においては神懸かったグルーブ感・流れ・勢いといったモノには少々欠如してしまったようにも感じてはいた。


 その伝で、本作公開の2ヵ月前に封切された、公開時点での最新ウルトラ戦士であるウルトラマントリガー、ライバルヒーロー・ダークトリガー、前作のウルトラ戦士であるウルトラマンゼットが共闘して、新旧の敵とも激闘を繰り広げた映画『ウルトラマントリガー エピソードZ』(22年)や、ウルトラ一族が宇宙狭しと大活躍するネット配信作品『ウルトラギャラクシーファイト』シリーズ(19年~)の方が、映画としても物語としてもまとまりがイイとも思っているし、作品の中後盤においてもテンションがダウンしてしまうような演出的な弱さもなく、その意味で『シン・ウルトラマン』よりも私的には評価をしていたりもするのだ(笑)。


 しかし、それもまた特化したマニアックな観方なのだと云うべきなのであろう。やはり、映画マニアならぬ一般層は演出の精度やまとまりなどではなく、相応にカネをかけたパノラミックな特撮CG映像に、メジャーな役者さんも配置したことで、相乗効果で増幅されていくゴージャスな大作風味の作品に対して、没入したり満腹感を覚えるのだともいえるのだ。
 そこを満たしてくれそうだと予感させて、実際にも大勢の観客に対してそれを満たすことに成功したのであれば、それはまさに映像体験・特撮体験なのである。個人的には細部に今一歩感はあったものの、映像体験に焦点を当てるのであれば、本作はやはり成功していたのだとはいえるのだ。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2022年5月号』(22年5月29日発行)~『仮面特攻隊2022年号』(22年8月13日発行)所収『シン・ウルトラマン』賛否合評9より抜粋)


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スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム ~新旧3大スパイダーマンvs再生怪人軍団! 全員集合映画を通過後の共演映画の作り方とは!?

『スパイダーマン:ホームカミング』 ~クイズ研究会(?)に所属する文化系スパイダーマンの弱者友人たち(汗)
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 2022年5月4日(水)からアメコミヒーロー集団・アベンジャーズの一員である洋画『ドクター・ストレンジ』の第2作こと『ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス』が公開中記念! とカコつけて……。『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(22年)評をアップ!


スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』 ~新旧3大スパイダーマンvs再生怪人軍団! 全員集合映画を通過後の共演映画の作り方とは!?

(文・T.SATO)
(2022年1月15日脱稿)


 マーベル社のアメコミ古典ヒーロー『スパイダーマン』(62年)が、「単体ヒーロー」映画としてではなく、「複数の主役級ヒーロー」が同時に並存して遂にチームを結成した「アベンジャーズ」世界の中で活躍する、天下のアイアンマン社長が提供したハイテクスーツを着用したスパイダーマン主役映画としては、シリーズ第3作目となる本作『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(21年・22年日本公開)。


 事前には伏せられていたけど、フタを開けたらばナンとビックリ! ふたりの先輩スパイダーマンが途中から助っ人参戦して、合計3人ものスパイダーマンが再生怪人軍団(笑)を相手に共闘して大活躍!


 やっていることは、帰ってきたウルトラマンの大ピンチに初代ウルトラマンウルトラセブンが! 仮面ライダーV3(ブイスリー)の大ピンチに仮面ライダー1号と仮面ライダー2号が! 助っ人に参上してくる、日本でも50年前からある作劇とも変わらない。現役ヒーローの大ピンチにウルトラ兄弟や先輩ライダーたちが集合するのと変わらない。
 1970年代の東映変身ヒーローものの各クール(3ヶ月)の変わり目や、90~00年代の新旧2大スーパー戦隊共演ビデオ販売作品などで、再生怪人軍団が大挙登場していたのとも変わらないのだ――もちろんコレは悪口・批判なぞではない。古今東西で万古不易の盛り上がる王道作劇だというべきだ――。


先輩スパイダーマン2名が参戦! 再生怪人軍団も登場!


 事前に作品の外側にて、もう20年近くも前に公開された世界観を異にする大ヒット映画『スパイダーマン2』(04年)に登場した、背中にメカ製のタコ型8本脚を生やした同作の定番悪役ことドクター・オクトパスなどが並行世界を越境して客演することは明かされていた。フタを開けてみれば、同作の古典悪役たちが大挙出演!


●『スパイダーマン』第1作目(02年)に登場した、コレまた定番悪役・緑仮面ことグリーンゴブリン!
●『スパイダーマン3』(07年)に登場した、脱獄犯が屋外の素粒子実験場に落ちたところで砂人間と化してしまったサンドマン
●仕切り直して物語をゼロからスタートした『アメイジングスパイダーマン』(12年)からは、会社のパワハラ上司に急かされて自身の身体で薬物の人体実験をしたことでトカゲ人間として凶暴化してしまったリザード
●『アメイジングスパイダーマン2』(14年)からは、遺伝子操作された大量の電気ウナギに噛まれて電気人間と化してしまったエレクトロ!


 つまり、21世紀以降の『スパイダーマン』映画全作から悪役が登場したのだ! しかも、コレらの悪役を演じてきた役者さんたちによる再演でもある!――2名ほどは声のみの出演で、過去映像をCG加工して劇中に登場させているとのことだそうだが、云われても素人眼にはもう全然わからない(笑)――


 「タコ」だの「砂」だの「トカゲ」だの「電気」だのといった、全敵キャラの名前が今風の造語や語尾変化形などではなくって、ヒネリのないそのまんまの普通名詞なただの「英単語」じゃねーか!? などというツッコミはしたいけど、コレは彼らの初出がアメコミヒーローのまだ草創期であった古式ゆかしい60年代前半だからであるだろう。
 日本で云えば『仮面ライダー』初作(71年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140407/p1)の第1クールである通称「旧1号ライダー編」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140501/p1)に登場した「クモ男」や「コウモリ男」や「ハチ女」といった動物や昆虫そのまんまの名前の末尾に「男」や「女」を付与して、敵怪人の名前にしていたことと比定ができる。


ハリウッド映画の簡明さ! 悪者たちの出自にも焦点!


 そして、彼ら歴代悪役の後日談だともいえる物語までもが描かれていく……。と、こう書くと、一見(いちげん)さんお断りな敷居の高い作品に思われてしまうのやもしれない。
 しかし、良くも悪くもお高くとまったアート系芸術映画なぞとは程遠い、人種や貧富・学歴の格差などにも左右をされずに全世界の老若男女・ヤンキーDQN(ドキュン)・万人向けに手広く売っていこうとするハリウッド映画のイイ意味での「おバカ」な作り!
 ムダに無意味な難解さはカケラもなくって、仮にTV放映されてリビングにて隣室の炊事の喧噪も聞きながら、途中から視聴を開始したとしても、その内容の理解ができてしまうような判りやすさには満ちている(笑)。美男美女やプレーンな顔面であれば正義側の主要人物であり、ゴッツい顔や身体のオジサンキャラであればコレはもう悪役だと、ビジュアルだけでもその人間関係や人物相関図がわかるのだ。過不足のない説明セリフで彼らの過去もわかってくるのである。


 彼ら悪役はすでに各作のラストでスパイダーマンにヤラれて死んでいるハズでは? といった疑問は浮かぶ。そこはまぁお祭り映画としては無視してもイイのだ。しかし、それでは観客も作り手も少々腰の座りが悪くなるからなのか、点描程度ではあるけれどもエクスキューズは付けているのも実にていねいだ。
 彼ら自身も曖昧な記憶に基づく発言から、ドーも彼らは「死の直前の時点」から作品世界(並行宇宙)を越境して、アベンジャーズも活躍している本作『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の世界へと強制的に召喚されてきたようなのだ――いや、ウルトラマン一族が宇宙狭しとあまたの並行宇宙も越境して大活躍するネット配信作品『ウルトラギャラクシーファイト 大いなる陰謀』(20年)における、過去の特定時点の悪役キャラクターだけを分岐させた「並行同位体」のような存在である可能性も残るけど――。


 すると、彼らを元いた並行世界へ戻すとなると、彼らは平常心に戻っていて悪事もしていないというのに、戻した瞬間には無残な最期(さいご)を迎えることとなってしまう……。といった道義的な問題を議題に掲げることで、すぐには元の世界へと返してはイケナイとするリクツもつけるのだ。
 むろん、それだけでもスパイダーマンとのバトルが発生しない平和な作品で終わってしまう(笑)。よって、一部のキャラには順繰りにやっぱり狂気がよみがえってきて悪事を開始する!


3人のスパイダーマン! ワケありな悪党には救済も!


 はてさて、アベンジャーズ版『スパイダーマン』シリーズに連続出演してきたスパイダーマン君の親友でもある、若いころのオタキング岡田斗司夫(おかだ・としお)やタレントの伊集院光(いじゅういん・ひかる)などを想起させる、コンピューターオタクでもあるデブの東洋人の少年クンはその血筋が魔法使い(!)であったとして(爆)、本作ではアメコミヒーロー集団・アベンジャーズの一員でもある天才外科医の成れの果てことドクター・ストレンジ譲りの魔法で、スパイダーマンの「中の人」ことピーター・パーカー少年を召喚!
 すると、『アメイジングスパイダーマン』(12年・14年)のスパイダーマンが! 間違ったとばかりに、ふたたび召喚してみせたならば『スパイダーマン』(02・04・07年)のスパイダーマンが出現してしまう!――超ご都合主義なのだが、むろん作り手たちもソレをわかっていて、このシーン自体が笑えるギャグとしても演出されている(笑)――


 そして、このふたりは事情を承知して、彼らの基本設定や肉親との悲しい別離などの出自もおさらい・補完しつつ、3人のスパイダーマンが夜の高層ビルを舞台に縦横無尽に駆け回って、再生怪人軍団とのバトルを展開するのだ!


 ……とはいうものの、個々の悪役たちには同情すべき事情があることも描いてきた。よって、作劇的にも彼らを単純には成敗できなくなってしまう。そこで、女児向けアニメ『美少女戦士セーラームーン』シリーズ(92年~・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041105/p1)や『プリキュア』シリーズ(04年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201227/p1)パターン! 彼らの心の救済を図る方向へと物語は転じていくのだ!


 とはいっても、湿っぽくはならない。あくまでも、激しくスピーディーなバトルの最中に問答をするというパターンで、バトルとドラマの両立もできている(笑)。


バトルとドラマの分離を防ぎ、バトルにドラマを織込む!


 ちなみに、日本の変身ヒーローものにおいて、バトル中でも敵キャラとの会話を交わすようになったのは90年代中後盤の東映変身ヒーローものであったと思われる。もちろん「週刊少年ジャンプ」の格闘マンガや不良マンガなどでは70年代から始まっていたともいえるだろう。
 古い話で恐縮だが、先日逝去された水島新司センセイの大ヒット高校野球マンガ『トカベン』(72~81年)などもTVアニメ版(76~79年)オリジナルの尺増しストーリーだったのだろうが、ピッチャーが入魂の一球を投げようとするや、そこでピッチャーやバッターの回想シーンが入って人間ドラマがはじまり、30分ドラマのエンドでようやく投球したり、キャッチャーミットで捕球をしたりしていた――審判に「ボーク!(反則)」だと判定されそうだ(笑)――。
 名作劇画原作(70~76年)でそれを忠実に映像化した名作TV時代劇『子連れ狼』(73・74・76年)などでも、会話を交えながら刀も交えたり、剣戟中に突如として回想シーンのかたちで、その人物の過去や幼少期が長々と描かれて、しばらくしてもう一刀だけするとまた回想シーンに戻るといったかたちで(笑)、各キャラの肉付けや行動原理が補強されたりもしていた。まさにお客さんを飽きさせないために、人間ドラマの最中でも作品の緊張感を持続させることができるように、アクションの中にこそ人間ドラマを織り込んでしまうという、バトルとドラマを一体化させるための手法!


 こういった手法の源流・始原はドコにあるのであろうか? ドコかの剣豪小説あたりが元祖なのであろうか? 純文学メインの文芸批評とは異なり、大衆娯楽活劇の系譜的な作劇術についての研究は実に乏しい。……教えて、エラいヒト!


「時間跳躍」や「並行宇宙」の概念が一般化した現代!


 そういう意味では、実は本作『ノー・ウェイ・ホーム』はアクション押しのようでありながらも、全編が同時にエモーショナルな作風にもなっていて、ギャグ演出やいわゆるネタキャラ演出も多用はされてはいるものの、次第に泣かせにかかってもくるのだ。


 「並行宇宙や分岐宇宙の概念なぞ、この小学校ではボクしか知らないんだろうナ……」なぞと孤独感(笑)を感じていた時代からでも幾星霜。その数十年後の2020年前後の今となってみれば、「並行宇宙」なりタイムリープによる「分岐並行宇宙」の誕生もしくは「歴史の上書き」といった概念は、筆者なぞよりも年下の世代であればヤンキーDQNや体育会系などであっても知っているような(失礼)、実にアリふれた陳腐な小道具ともなっている。
 ヤンキーDQN漫画なのに、このへんを骨格にも据えている『東京リベンジャーズ』実写映画版(21年)なども一般若者層やデート客層にも大ヒットをしてしまうのが現代日本なのである(笑)。


――誰がどう見ても片岡千恵蔵でしかない七変化の『名探偵 多羅尾伴内(たらお・ばんない)』シリーズ(46~60年)や『トラック野郎』シリーズなど(75~79年)のラフな作りの映画を楽しんで観るような、ハイソな丸の内東映ならぬ浅草東映系の労働者・庶民・大衆などは、今となっては残念なことに消滅もしくは変質してしまったということでもある(汗)――


 アベンジャーズ・シリーズのアメコミ洋画でも、世界各国で超ヒットを記録した『アベンジャーズ/エンドゲーム』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190617/p1)においては、強敵に勝つために過去へとタイムリープしたものの、お約束で誤ってよけいな歴史改変が発生してしまったところで「分岐並行宇宙」も誕生してしまって、強敵は倒したものの別の並行宇宙から当の強敵が再襲来(爆)してくるような大バトルが描かれてもいた。
 そして、同作で新たにいくつか誕生した「分岐並行宇宙」のひとつを舞台とした、さらなる巨悪の出現に対しては正義の味方を助けてみせた敵キャラ(笑)を主人公に据えたネット配信シリーズなどまで製作されている。


 「並行宇宙」の存在が劇中で自明とされたことで、実はアベンジャーズスパイダーマン第2作こと前作『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(19年)でも、メインゲストキャラは並行宇宙の地球こと「アース833」から「アース616」に来た超人ヒーローだと称してもいた。そーいう意味ではシリーズという単位で見れば、「並行宇宙」ネタにも伏線は張られてきてはいたのだ。


「並行宇宙」初出は60年前! 新旧ヒーロー共演が目的!


 ちなみに、このアメコミにおける「並行宇宙」の概念もググってみると、後発のマーベル社ではなくスーパーマンバットマンワンダーウーマンなどを先行して産み出したDC社の方が先なのだそうだが、ナンと60年も前の1961年9月(爆)が初出だそうである!
 いわく、1940年前後に誕生したアメコミ古典ヒーローたちをその約20年後の1960年前後に仕切り直しをしてゼロから物語をリメイクした数年後にはもう、やはり原典のヒーローたちとも夢の共演をさせたくなって(笑)、現行作の世界を「アース1」、原典の世界を「アース2」だとしたそうだ――もちろんその後も、10年20年おきに何度もアメコミヒーロー個々の物語はゼロから刷新して再スタートを切っているので、ますます「並行宇宙」は増えていく――。


 ……なるほど! 結局は旧ヒーローもなかったことにはしたくないのが人情だから、そうなるとそれまでの旧作世界とはゼロから刷新していたハズの新作の「世界観」とも矛盾を発生させずに、新旧ヒーロー世界を双方ともに傷つけずに肯定ができる手法は「並行宇宙」を越境したのだとする概念の導入が一番ではあるのだろう!


 そんなのはテキトーでもイイだろ! すべてを同一世界にしちゃえよ! 『ウルトラマンタロウ』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1)よりも以前に『ウルトラマンレオ』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)や『ウルトラマン80(エイティ)』(80年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971121/p1)が地球に来ていたことになってしまった映画『ウルトラマン物語(ストーリー)』(84年)みたいな不整合がある作品でもイイよ! なぞという意見にも一理はある。


 しかし、仮にもリベラルな民主主義者を名乗るのであれば、今でも100人が100人そう思うような浅草東映系の庶民・大衆だというのであればともかく、マニアならぬ一般ピープルやチビっ子までも大多数がソレを矛盾・破綻だとして違和感を抱いてしまっていた厳然たる現状があった以上はその意見にも従って、作品世界の整合性の確保にも最低限は努めて、「並行宇宙(多元宇宙)を守るために戦うのだ!」などといったお題目にて埼玉県寄居のアリゾナ州採石場・笑)で善悪がド突き合いをしているだけなのに、「コレはスケールが大きい物語なのだ!」などと我々を錯覚させてくれる手法の方がクレバーなのである(笑)。


 その伝で、映画『ウルトラマンティガウルトラマンダイナ&ウルトラマンガイア 超時空の大決戦』(99年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19981206/p1)では、『ティガ』&『ダイナ』世界と『ガイア』世界とは別世界なので、さらにここに『ガイア』がTV放映されている第3の並行世界を導入することで、ティガ・ダイナ・ガイアを共演させていたけれど、それが可能であるならば並行宇宙の概念をもっと拡張して、当時においてはいつまで経っても復活が叶わなかった昭和のウルトラ兄弟たちとも、「SF」的な妙味さえもが付与・両立ができた夢の共演が可能だっただろ! などとフラストレーションを溜めていたことなども思い出す……(遠い目)。


 ちなみに、出版社は異なるために、上記のDC社のそれとは異なるものの、マーベル社においても並行宇宙には各々にナンバリングが施されているそうである。スパイダーマンもチームの一員であるアベンジャーズが活躍するアメコミ洋画の並行宇宙は「アース199999」、東映特撮版スパイダーマンが存在する並行宇宙は「アース51778」なのだとか――実にテキトーなナンバリング。後者は明らかに東映版が放映された1978年のアナグラム(笑)――。


 ところで、先の前作『ファー・フロム・ホーム』では、劇中世界のことを「アース199999」ではなく「アース616」だとも云っていた。その理由は……(以下略)。



 映画『スパイダーマン3』(07年)に登場した悪の黒いスパイダーマンことヴェノムは再登場こそしなかったものの、本作の直前に最新作が公開されたばかりで、スパイダーマンがいない世界で「正義の主人公」(笑)として活躍している方の『ヴェノム』(18年)は、同作第2弾であるヴェノム2号ことカーネイジと戦った映画『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』(21年)のラストで、アベンジャーズがいる本作の並行宇宙に転移したことが点描されていたので、本作でも一応は登場する! しかし、出オチ・キャラクターとなっており、ストーリーには一切カラまないことで笑いを取っていた。


――劇中にちょっとだけ登場したサングラスの弁護士も、アベンジャーズが活躍する映画シリーズとも同一世界を舞台としたネット配信ドラマで、マーベル社の盲目の弁護士が変身する、初出は64年のアメコミ古典ヒーロー『デアデビル』(15~18年)の変身前の「中の人」だったそうだ。本家・アメリカでも、このデアデビル役の役者さんがお忍びで鑑賞したところ、映画館でも反応がなかったとのことだそうで(笑)、よって我々が気付けなくても問題はナシなのだが、一般観客に疎外感を抱かせずにストーリーの理解にも支障が生じない程度のものであれば、この程度の点描のお遊びに目クジラを立てる必要はないどころか、むしろこのテの小ネタを積極的に導入していくことは賞揚してもイイくらいでもあるだろう――


クモ男とヴェノム。ベトナム戦争前と80年代出自の相違!


 しかしまぁ、ベトナム戦争(65~75年)が始まる前の古き良き牧歌的な1962年のアメリカが出自である『スパイダーマン』各作は、主人公少年が調子に乗って増長したりすると回りまわって肉親に悲劇が起きてしまったりして、良くも悪くも「因果応報」の「道徳説話」的で「ヒトとして正しくあれ」「人に隠れて善行せよ(=見せびらかすようであれば自己顕示欲の発露でしかないのだから)」「大いなる力には大いなる責任が伴なう」「私情で復讐するなかれ」などとやや説教クサかったりキリストの「山上の垂訓」ぽかったりもするけれど、それがまた筆者のようなロートルオタクにとっては心地がよい。
 対するに、この欲望肯定&享楽的なヴェノムはアメコミでの初出は、さらに時代が20年以上も降った高度大衆消費社会が真っ盛りで私的快楽至上主義の風潮も進んでいた1984年だそうであり、日本で云うならば欲望肯定・私的快楽肯定な脚本家・井上敏樹などが主に描いてきた90年代以降のチョイ悪なヒーロー像にも比定ができるだろう。


 ヴェノムにも善悪の観念がないワケではないけれど、少々の悪事などはOK! 他人にメーワクはかけないのだし、悪人なのだからガブッと丸飲みして食べちゃっても大丈夫だよネ! みたいな。それはそれで爽快だったり悪徳の快楽があったりもするけれど。
――とはいえ、スプラッタ映画的な残酷描写なぞではなく、顔面だけがデタラメに巨大化して大口を開けて噛み噛みもせずに瞬時に飲み込んだ! といった物理的にはアリエない非現実的な描写によってマンガ的な笑えるギャグにはなっている。『ウルトラマンZ(ゼット)』(20年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200723/p1)に登場したお喋りもする顔が付いた黒い杖型の武器・ベリアロクの顔面がデタラメに巨大化して敵をパックンチョする描写もまた、ヴェノムが元ネタなのだろう――


 ヴェノムも元の並行宇宙へと帰っていったものの、その身体の極少量の黒いタール状の一部をポトリと落としていって、それが蠢(うごめ)いているところでエンドとなっていた……。といったところで、アベンジャーズ世界でもヴェノムの残骸がデビルスプリンター(笑)となって、誰かさんなりスパイダーマンなりに憑依(ひょうい)をして、黒いスパイダーマンなり新たなるヴェノムが登場する余地も残して、マニア観客の後続シリーズへの興味関心をも喚起しているのだ。


ゲストヒーロー・ドクターストレンジの絡ませ方&宣伝!


 以上はエンディングテロップ途中の間奏であるミドルクレジットで描かれたシーンである。ポストクレジットではアベンジャーズシリーズの恒例で、同シリーズの後続作の特製予告編も流される。本作の並行宇宙・混乱事件を魔法の呪文の失敗で引き起こしてしまった真犯人(?)こと、数ヵ月後に公開されるドクター・ストレンジ主演映画(16年・日本公開17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170504/p1)の第2弾『ドクター・ストレンジ/(イン・ザ・)マルチバース・オブ・マッドネス』(22年)。
 「マッドネス」は「狂気」の意味だから「狂った並行宇宙(多元宇宙)」といった意味で(笑)、本作での事件がきっとあとを引くのだろう。やはり並行宇宙のもうひとりの大槻ケンヂ博士も登場するのだとか……(それは映画『仮面ライダー平成ジェネレーションズFINAL ビルド&エグゼイド withレジェンドライダー』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20171229/p1)・笑)。


 前作のラストでその正体が世界中にバレてしまったスパイダーマン少年。世界中の人々からその記憶を消すための呪文の失敗が、ナゼに並行宇宙の混乱となるのか? 記憶を消しても物理的な新聞や映像の記録は消えないのでは? なとといった疑問はあって当然なのだけど、このテの作品に対してはある程度まではともかく過剰にリアリズムを求めるのはヤボだろう。
 観客の疑問がゼロにはならないにせよ、それがあまり浮上はしてこないように、そこはテンポを早くしてサクサクとストーリーを進めてしまう、ゴマカし演出を意図的にもするべきだ。そして、呪文に失敗してくれたからこそ、新旧スパイダーマン3人の夢の共演が観られたワケなので、むしろドクター・ストレンジには感謝しよう(笑)。


――ホントは数ヵ月後に公開予定の『ドクター・ストレンジ』第2作の方が先に公開されて、本作『スパイダーマン』の方があとで公開される予定であったので、並行宇宙が混乱したのは初めてなのか2度目なのかの部分については、脚本をブロックのパーツ的に差し替えた! ……などといったブッチャケたウラ話も製作公式が明らかにしていたりもするけれど。まぁ、結局はフィクション・作りものですからネ(汗)。しかしそれでも、最初からこう作られていたかのように感じさせることこそが、作劇・創作といったモノの真髄なのである!――


 本作のラストは「記憶消し」魔法が成功することで、意表外にも寂寥感あふれるラストにもなっていた――映画の神さまのイタズラか、奇しくも公開同月に放映された、アンデルセン童話『人魚姫』(1837年)をモチーフのひとつにしていた女児向けアニメ『トロピカル~ジュ! プリキュア』(21年)最終回とも同じネタなのであった――


日本特撮もカテゴリや周年括りでのヒーロー共演作品を!


 本作の内容や在り方は日本の特撮ヒーローものにとってもいろいろと示唆的である。特に個人的に思うのは、すでに究極の大ネタである看板を張れる主役ヒーローたちが「オールスター全員集合」を果たしてしまったシリーズ世界で、それ以上のスケールのイベントはもうできない作品世界を舞台に、それでもイベント性の高い作品を製作しつづけるにはドーすればイイのか!? といったことである。


 それすなわち、シリーズ・イン・シリーズ。もしくは、ヒーロー集団の中でのグループ分け・カテゴリー分けである。本作であれば、それは作品世界を異にする先輩スパイダーマンふたりとの共演イベントであったのだ。


 コレは日本でいえば、新旧2大スーパー戦隊共演作品が陳腐化してきたところで、恐竜をモチーフとした3大戦隊こと『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(92年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120220/p1)・『爆竜戦隊アバレンジャー』(03年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110613/p1)・『獣電戦隊キョウリュウジャー』(13年)を共演させることで、特撮マニアや子供たちをワクワクとさせた映画『獣電戦隊キョウリュウジャーVS(たい)ゴーバスターズ 恐竜大決戦!さらば永遠の友よ』(14年)などに対応するだろう。


 その伝で、TV本編では先輩2大忍者レッドを客演させたのにも関わらず、忍者をモチーフとした3大戦隊こと『忍者戦隊カクレンジャー』(94年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120109/p1)・『忍風(にんぷう)戦隊ハリケンジャー』(02年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20021110/p1)・『手裏剣戦隊ニンニンジャー』(15年)を共演させなかった映画『手裏剣戦隊ニンニンジャーVSトッキュウジャー THE MOVIE 忍者・イン・ワンダーランド』(16年)のことを残念に思ったマニア諸氏は多かったことだろう。


 東映は2010年代前半の春には、仮面ライダースーパー戦隊が共闘する映画で大ヒットを飛ばしてきた。しかし、東映の白倉プロデューサーも老いたりか? 電車モチーフの『烈車戦隊トッキュウジャー』(14年)が放映された折りには、同じく電車モチーフの『仮面ライダー電王』(07年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080217/p1)との共闘映画を構想はしたものの、「それを義務的な仕事」だと感じて実現させなかったそうだ――この発言自体も後付けのハッタリ臭を感じさせなくもないので、真に受けるべきかは留保するけど(笑)――。


 そして、挑戦的だったとは云えても、悪い意味でマニアックでニッチなネタの映画『スーパーヒーロー大戦GP(グランプリ) 仮面ライダー3号』(15年)や映画『仮面ライダー1号』(16年)などに走って失速し、春恒例のヒーロー全員集合映画のワク自体を消滅させてしまったのだ。


 しかし、当時の歳若い特撮マニア諸氏や子供たちの多数が鑑賞する前からコーフンするような大ネタは、我々ロートルオタクだけが喜びそうな昭和の幻に終わった企画『仮面ライダー3号』の実現なぞではなくって(笑)、まさに『トッキュウジャー』&『電王』が同じモチーフゆえの接点を契機にブツかって、「似て同なるモノ」&「似て非なるモノ」が化学反応を起こすような作品ではなかったか?


 それは「義務的な仕事」なぞではないだろう。少なくとも2010年代~今のお客さんの大多数がどのような企画であれば面白そうだと感じてくれるのか!? そして会社の売上的にも貢献するのはどのような企画なのか!? 企画を発想する際に主要なモノサシとすべきはソレだろう!


 クルマ&警察がモチーフであった『仮面ライダードライブ』(14年)が放映されていた折りには、警察ライダーでもあるドライブが、往年の『ロボット刑事』(73年)や『機動刑事ジバン』(89年)に『特警ウインスペクター』(90年)~『特捜エクシードラフト』(92年)や仮面ライダーG3(ジースリー)(『仮面ライダーアギト』・01年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20011108/p1)に仮面ライダーアクセル(『仮面ライダーW(ダブル)』・09年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100809/p1)などの東映製作の刑事・警察ヒーローとも共闘する夏休み映画を、ドコぞの一介の特撮マニアが2015年のエイプリル・フールとしてコラージュポスターのかたちで流布させて、筆者も含むマニア連中を狂喜乱舞もさせていた――つまり、ダマされてしまった(笑)――。


 オールスター全員集合映画を通過したあとでも、人々が関心をそそられるようなお祭り映画とは、あまりに大勢にすぎて描き分けのしようもないので全員がお団子状態になってしまうようなオールスター全員集合作品なぞではない。このような共通項などでくくって、ある程度の人数に絞り込んだゲストヒーローたちを徹底的に描き込んで、そのキャラを粒立たせてみせたような企画だったと思うのだ!


 あるいは、作品の外側での都合から来るカテゴリー分け。5周年・10周年・15周年・20周年……といった節目ごとのアニバーサリー・イヤーの先輩ヒーロー複数組を同時にメインゲストとして現役ヒーローとも共演させるような映画なども毎年、各作ごとに該当記念作を1作ずつズラすかたちで製作していけば(笑)、常に目先の変化・新鮮味を出せることにもなるのだ。そして、そのような作品をこそ観せてほしいモノではないか!?


――円谷プロの方も、毎夏恒例の催事イベント『ウルトラマン フェスティバル』(89年~)などではアトラク・アクションチーム側の文芸陣や上層部が主導権を握っているのか、むかしからアトラクショーやその宣伝ポスターなどでは、その時点でのキリのよいアニバーサリーOBウルトラマンたちがフィーチャーされているようで、よくぞわかっていらっしゃる! と感心しきりなのだけど、肝心の本社の方のおエライさんたちにはそーいうセンスが乏しいようであり(汗)――


 すでにオールスター全員集合映画を通過してしまったあとの、その同種企画には初の全員集合作品ほどのサプライズがなくなってしまうことが運命・必定でもある後続シリーズにおけるイベント映画の在り方。ドーいうヒーローたちの組み合わせ・ブレンド・配合の企画であれば、観客たちを「またか?」などとは思わせずに喜ばすことができるのか? その答えは本作『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』における新旧スパイダーマン3人の夢の共演企画にこそあったといえるだろう!


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2022年1月号』(22年1月16日発行)所収『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』評より抜粋)


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 2022年5月4日(水)からアメコミヒーロー集団・アベンジャーズの一員である洋画『ドクター・ストレンジ』の第2作こと『ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス』が公開中記念! とカコつけて……。『ブラック・ウィドウ』・『ホークアイ』・『エターナルズ』・『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』・『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』・『ザ・スーサイド・スクワッド“極”悪党、集結』・『マトリックス レザレクションズ』(いずれも21年)と『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(22年)評をアップ!


『ブラック・ウィドウ』・『ホークアイ』・『エターナルズ』・『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』・『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』・『ザ・スーサイド・スクワッド“極”悪党、集結』・『マトリックス レザレクションズ』 ~各作が独立でも同一世界で連続性アリ! 平行宇宙越境のヒーロー大集合でも集客! 日本特撮も見習うべきだ!



『ブラック・ウィドウ』・『ホークアイ』・『エターナルズ』・『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』・『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』・『ザ・スーサイド・スクワッド“極”悪党、集結』 ~同一世界や平行宇宙を舞台とするアメコミ洋画の爛熟!

(文・ビオラン亭ガメラ
(2022年1月15日脱稿)

『ブラック・ウィドウ』


 アベンジャーズの一員、超人ではなくロシアの女スパイ出自で生身の人間、ブラック・ウィドウことナターシャが主演の映画。コロナの影響でずいぶん延期になりましたが、無事に公開できました。パチパチ……(拍手)。本当はアベンジャーズ配信ドラマ『ファルコン&ウィンター・ソルジャー』(21年3月)より前に公開したかったよね~(汗)。


 今回は、ついに自身の出自である少女スパイ養成機関・レッドルームに切り込む! ナターシャの主演となると、舞台はそこになるかぁ。OP、めっちゃクールなんだよね。でも、全然そういう映画じゃないんで。町中をバイクで突っ走ったりする、いつものやつよ(笑)。


 幼い時にスパイ活動のため、一時的に偽家族として暮らしていたが再会する。子供の頃は可愛かったエレーナ嬢が生意気な感じになっちゃって。おでこの手術ライン消してるのが(笑)。
血がつながってるとか関係ないんだよ! 良い父ちゃん母ちゃんじゃんかよ(泣)。終盤がもう爽快で、爽快で! 二転三転する展開が激アツですよ!! 母ちゃーん! って感じです。


 レッドルームの女の子たちのアクションも素晴らしい。正気に戻って、とまどう子たちに「できるだけ遠くへ。自分で決めるの……」が泣ける。……ポストクレジットでは、アベンジャーズの一員・ホークアイに対する暗殺依頼が舞い込んで、観客の気を引かせて終わり!(笑)
映画のポスター ブラック・ウィドウ 壁画壁アート部屋の装飾壁画壁ポスター家の装飾 12x18inch(30x45cm) Unframe-style


ホークアイ


 アベンジャーズの一員、超人ではなく弓矢で戦う生身の人間・ホークアイのネット配信ドラマシリーズなんてどう考えても地味だよなぁ……と思いきや、最高! もう少女ケイト・ビジョップが可愛くてなぁ……容姿だけではなくて、ホークアイを慕う姿は子供っぽくもあり、若さゆえのまっすぐな正義感も本当に美しい。ええ娘やなぁ(涙)。この作品の女子はみんな可愛いんだよなぁ。


 話はかなりシンプルで分かりやすいです。見返すのが楽しい! あいつ、あの対決の時、利き手でやってないのね。手加減してたのか。やるな(ニヤリ)。


 オリジナルドラマシリーズは面白いんですけど、配信だからなのか二次創作っぽくて、映画に比べるとちょっと敷居が高い気がします。アベンジャーズ映画の悪役を主人公にした配信ドラマ『ロキ』(21年)の最後に出てきたやつとか「?」でしたわ。原作読んでないから分からないのかな。YouTuberの解説動画みたいなの観ても分からんのよね。「皆さんご存知、○○ですよね?」。いやいや知らんし!(笑)
 あと、どの作品も全体的に暗めな感じで、イマいちスカッとしないというか(今後の『アベンジャーズ』シリーズ・フェーズ4は暗い感じ?)。


 本作は結末自体はそんなにハッピーではないんですが、ホークアイの変わらない実直さであったり、あのキャラの再会(!)、ラストの大ピンチからの逆転であったり、全体からあふれるクリスマス感であったり、見どころいっぱいで、觀れば、きっと楽しい気分になりますよ。指パッチン以降描写も丁寧でいいよなぁ…… あと最終話はエンドロール最後まで観てね。
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『エターナルズ』


 アベンジャーズの悪役(?)であるロキを主人公とした配信ドラマ『ロキ』(21年)の時点で、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190617/p1)での指パッチンによる全宇宙の生命半分消滅はもはや過去のものとなっており、ヒーローどころか天地創造の神さまに仕える7000年前から潜伏していたスーパー戦隊みたいなのが新たに登場!?


 いやいやそんなに風呂敷広げちゃって大丈夫なのか? 宇宙の生命体半分を消滅させる力を持った悪の超人サノス(サノス自身の力ではなかったけど)を倒したと思いきや、それをも圧倒する宇宙創造の神のような存在がいました……ってなると、今後さらにその神を超える存在ガーって、ならない? フリーザ打倒後の『ドラゴンボール』みたく収拾つかなくならない? 大丈夫?


 まぁ、それはさておき、副主人公のイカリスがなぁ……いや、神様の企みの真実を知ってショックを受けたのは分かるが、まずは仲間に連絡しろよ! 全員で話し合ってから行動しろよ! 一緒にやってきた仲間なんだからさぁ! LINE(ライン)とか交換してないのか? それが腹立ってしゃーなかったですわ。『サイボーグ009(ゼロゼロナイン)』みたいにそれぞれ超能力を駆使して人間を助けるぞ!(色々な意味で) 力に差がありすぎな気もするが。洗脳できるやつ、ヤバない?(笑)


 あと、エターナルズの一員を演じる美人女優アンジェリーナ・ジョリーの無双を観たかったのに、病気で暴走とかなんなん? 最後の方で活躍したからまぁいいけどさ。
 人類の東西数千年の歴史を股にかけた広大すぎるストーリーに、普通のヒーローものを期待すると肩透かし喰らいますけど、こういうのもたまにはいいかなと。でも、その割には地味ぃ~(笑)!
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『ザ・スーサイド・スクワッド“極”悪党、集結』


 『スーパーマン』や『バットマン』などのDC社作品に登場する悪党たちがチーム主役として活躍する映画シリーズ。前の映画『スーサイド・スクワッド』(16年)がいまいち跳ねなかったため、マーベル社のアベンジャーズのバカ映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(14・17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170513/p1)のジェームズ・ガン監督を呼んでシリーズを立て直しというところですか(ウィキで調べたら色々監督変わってて大変だったみたいです)。


 てか、方向転換しすぎだべ(笑)。もう好き勝手やってる感じで、ブラックジョーク・グロ描写がすごいです。おふざけに隠してドス黒い社会派ネタぶっこんでくるジェームズ・ガン節よ。この人の映画、悪いヤツが本当に悪いんだよ。相変わらず抜群のセンスで、グロにしても社会派にしても、そのクセ強を前面には出さずに、ちゃんとエンタメとして完結させてしまう技量には頭が下がります。最後は怪獣出てくるしな。
ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結(吹替版)


『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』


 黒いスパイダーマンこと『スパイダーマン』の名悪役・ヴェノムが単独主演で一応正義(笑)として活躍する映画第2弾。「ソニーの映画はCGみが強い」という印象があるんですが、本作もそれに当たりますね。ほとんどCGじゃね? カーネイジ(大虐殺)というほどの虐殺なかったような。刑務所内がほとんどで、なかった? まぁ、あんまりはっきり見せないようにしてただけで大虐殺していたのかもですが。


 ヴェノムに寄生された主人公・エディ役のトム・ハーディは脚本にも参加してるということで、どんだけお気に入りなんだと(笑)。気弱で優しい感じがぴったり。元恋人アンにまた振られてバイクで無鉄砲に突っ走る。それをヴェノムがフォローして慰めるって、お前完全に人間だろ! 恒例の肝心な時にヴェノムが寄生していない展開、ホント好こ。


 ヴェノム、可愛すぎる。駄々っ子みたいだし、ご飯作ってくれるし、強いだけじゃなくめっちゃ賢いし、食用の鶏に情が湧く始末(笑)。カーネイジと対峙したら「アンとか別に好きじゃねーし」って、こじらせ男子かよ! なんで人食い寄生獣がこんなにも可愛いんだ。こんなの黒い皮被った「ちいかわ(小さい可愛い)」ですやん(笑)!


 元カノなのにアンが今回もまためっちゃ協力してくれる! ヴェノムのことすら理解しきってるのがまた(男は単純だからね・泣)。エディって仲間に本当、恵まれてるよなぁ。ありがちな「あんたのせいで皆が不幸になる! 街から出ていって!」とか、めんどくさい展開がないから爽快ですわ。ヴェノムが一時寄生したアンに謝ってるのがダブルミーニングになってて良いよね。アンの新しい恋人・ダンもいい人なんだよなぁ。なんとか3人で仲良くやれないか? ヴェノムが許さんか(笑)。


 ヴェノム2号ことカーネイジについて全然書いてないな(汗)。キャラとして良いし、十分同情できる過去もあるんですが、僕からすると、エディ周りの話が良すぎて、なんかホントおまけって感じなんですよ。演じるウディ・ハレルソン、大熱演ですね。恋人の能力がアレじゃなければ、もう少し上手く行っただろうにね。残念。


 2点ほど叩かれそうな点があり。


 まず「連続殺人鬼クレタスがカーネイジ化した原因がヴェノムにある」ということ。
 まぁ、ヴェノムの急な行動でエディが対応できなかったからしゃーない。しゃーないでは済まない事態になってしまいましたが(汗)。ヴェノム自身もああなるとは思ってなかっただろうし。ちなみにトビー・マグワイア主演の「スパイディ3」(映画『スパイダーマン3』(07年))でのヴェノム誕生も主人公青年・ピーターが原因だったけど、原作でもそういう展開なのかな? あっちも教会の鐘がどうしたこうしたあったもんね。


 次に「エディが真実を記事にしていなかったから、クレタスがよりヒネくれたのでは?」ということ。
 エディは「クレタスが親を殺したのは酷い虐待をされていたから」という事実を知りながら記事にしなかったため、クレタスはあたおか(頭おかしい)殺人者として刑を執行されることになった。僕もそこは「なんで?」と思ったのですが、最後の方でエディも子供の頃、虐待を受けていたことが分かる(この辺サラッとクレタスが語るだけなので、もうちょっと分かりやすく説明してほしかったが)。


 推測なんですが、エディはこれを記事にしちゃうと読者に


「社会が悪かったり、虐待を受けた子は親を殺しても仕方がないし、性格がネジ曲がって周囲の人間も殺しかねないが、それも致し方なし、それが正当な権利ですらある! と、一部の他責的な人間に取られかねない、危険なメッセージを送りかねない」


と思ったのでは? 自分も虐待や不運で苦しんだけれども、それが親や他人を殺してもいい理由にはならないと考えたと。優しいんだよね、自己顕示的なスクープ記者には向いてない(笑)。


 クレタスはエディと「友達になりたかった」みたいなことを言うけど、「一緒にすんなよ」でパックンチョ! ってことかな。クレスタも誰か話を聞いてくれる人がいたら止められたかもしれないですけどね……志を同じくした恋人はいたんですが。



 ポストクレジット、キター! 平行世界に転移! そこに繋がるんだー!


 日本ではこの映画の翌月公開、あまたの平行世界からやってきた『スパイダーマン』の多数の名悪役たちと戦うアベンジャーズ映画『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(21年・日本公開22年)にも登場するのか!? この映画の2時間28分尺に収まるのか? まぁ、客演はこの映画以降なのかもしれないけど。仲良くしなくてもいいけど、今のヴェノムがめっちゃ好きだから、どうか悪者にはならないでね。
ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ ブルーレイ&DVDセット [Blu-ray]


スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』


 ついに新旧スパイダーマン3人が映画の枠を超えて、平行世界から大集結! 集大成であり始まりの映画。尊い


 実現に至るまでは色々大変だったのでしょうね。大きなお金が動いているんだろうなぁ…… 最初の頃は映画『スパイダーマン』シリーズ(02・04・07年)のトビー・マグワイアたちが出演することは隠されていましたが、


「ドクター・オクトパスとか旧作のオリジナル俳優が出て、トビーらが出ないわけねえだろ!」


って思ってましたよ(笑)。


 そもそもアベンジャーズが活躍する「MCUマーベル・シネマティック・ユニバース)シリーズにスパイダーマンが出るのは(大人の都合で・笑)不可能」と言われていたくらいですし、トビースパイダーマンからもう20年経ってますし。


 普通にお祭り映画にしちゃって構わないのに、また凝りまくった映画になっています。しかし、ちゃんとトム・ホランド主演のアベンジャーズ世界のスパイダーマン映画です。トムホが置いてけぼりにはなっていないです。キャスト・スタッフのスパイダーマン愛がたまらない。……Netflixも入らんといかんのか~(泣)


 満を持して! ではなくて、割とあっさり3人が集結するのが良いよなぁ(笑)。


 「全てのピーター・パーカー(スパイダーマン)が呼び出せる? そしたら! ……あぁ! あの人、ピーター・パーカーじゃなくて山城拓也だったわ……orz」と映画館で一瞬思ってしまいました(笑)。アニメ映画『スパイダーバース2』も良いけど、やっぱり実写で出てほしいです!


 なんと言ってもアンドリュー・ガーフィールドだよねぇ。彼主演の映画『アメイジングスパイダーマン』シリーズ(12・14年)は完結してなかったし、本当に嬉しかったんだろうなぁ。3人で話すシーンで「アイラブユー」って思わずアドリブで言っちゃったそうなのが(泣)。一瞬、トビーらが「お、おう……」って感じになった後、すぐ笑顔で返すのがまた(泣)。
 トビー・マグワイアは20年前と全然変わってなくて(CGによる若返り技術がすごいらしいですが)、普通にそこにいる感じがまた最高です。


 今回、送り返すだけじゃなくて、ヴィランたちを治療するのが目的。悪者だし別の世界でのことだから関係ない。じゃなくて、ヴィランたちの話も聞いて、寄り添ってあげようよ!


 これぞ令和のヒーロー!(アメリカは元号関係ないけど・汗) この展開は非常に良かったですね。てか、あのマシン、『ドラえもん』の道具並みに便利すぐるわ(笑)。


 みんな思ってるだろうけど、ドクター・ストレンジ、おい! 最初にトムホが世間に自身の正体がバレてしまったことを相談したら、あっさりスパイダーマンの正体の記憶消し魔法やり始めたけど、あんな危険な魔法なら、はじめる前に説明しないと! 相手は子供なんだから。いきなり全記憶消ししようとしてたんだぞ(ギャグになってて面白いけども・笑)。


 まぁ、その辺は今回の映画の都合(記憶消し魔法が大失敗して、なぜか平行世界の扉も開いてしまうという発端・笑)ということで、カンバーバッチさん演じるドクター・ストレンジの出演は嬉しいし、スパイダーマンの世界で『ドクター・ストレンジ』(16年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170504/p1)のミラー次元(鏡の中の世界)での攻防まで観られて豪華でした。


 「スティーヴン(ドクター・ストレンジの本名)と呼べ!」は彼の思いを受け止めたからだよね。『アベンジャーズ/エンドゲーム』(19年)でもそうだったけど、ドクター・ストレンジ、人の覚悟を引き受けがち。


 あと、トムホスパイダーマンアストラル体(霊体)になった時に動けたのはスパイダーセンス(第六感・霊感)のおかげらしいけど、劇中で説明してちょ!


 最初に「集大成であり始まりの映画」と書きましたが、本作はトムホが本当のスパイダーマンになる話です。トムホ・スパイダーマンって、過去のスパイダーマンに比べるとかなり恵まれていました。
 スーツはアイアンマンのスターク・インダストリー社製だし、信頼できる仲間もいる。その辺は「現代的だな」と思いましたし、とはいえ、楽なわけではなく、苦労して色々背負って一人で戦う。それが現代のスパイダーマン(トムホ)スタイルでした。
 が、ここに来て、正体バレやらなんやらでリセットされます。ここに来て……アレやるんかい!
 通過儀礼になってますやん! あのセリフ、フラグだったんかい! くぅー! バカヤロー、まだ始まっちゃいねぇよ(泣)! 



PS ポストクレジット。おぉー! 忘れてたわー! ここで出てきたー! ……終わりかい! とんでもないもの、置いてくなし! 本編ではなく「おまけ」って感じの扱いがまた良かったです(笑)。
スパイダーマン ホームトリロジーパック (吹替版)

(了)


『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』・『マトリックス レザレクションズ』

(文・くらげ)
(2021年12月27日脱稿)

『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』

(2021年11月2日公開)


 『スパイダーマン』に登場する人気ヴィラン「ヴェノム」が主役のスピンオフ第2弾です。今作ではヴェノムに並ぶ人気ヴィラン「カーネイジ」との対決です。1作目の『ヴェノム』(2018)同様、スパイダーマンは抜きですが、ソニーが権利を獲得したのがヴェノムだけなのでしかたないですね。
 映画『ヴェノム』はマーベルとはユニバース=宇宙を別にする「ソニーズ・ユニバース・オブ・マーベル・キャラクター」のシリーズ1作目という扱いでした。この映画はその続編ですが、名称が「ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース」(SSU)に変更されてます。その理由はのちほど。


 ヴェノムもカーネイジもコミックでは絶大な人気を誇るキャラクターで、筋骨隆々でヨダレを垂らしまくるビジュアルのインパクトで自分も大好きですが、実写作品には恵まれてません。
 サム・ライミの『スパイダーマン3』(2007)では雑魚の一人みたいな扱いで世界中のファンをガッカリさせて、今度はヴェノムのスピンオフが作られると聞いて喜んだらスパイダーマンが出ないという。制作会社の都合に翻弄されヴェノムの迷走は続きます。


 前作でライフ財団が宇宙から持ち帰ったアメーバ状生命体(シンビオート)がフリーのジャーナリスト、エディ・ブロック(トム・ハーディ)の肉体に寄生して誕生したのがヴェノムですが、人喰いのバケモノではあっても悪党に容赦しないヴェノムは、アメリカでは意外にすんなりヒーローとして受け入れられたみたいで、映画『ヴェノム』のそこそこのヒットはスパイダーマン無しでもヴェノムの活躍が可能と証明しました。
 前作のエンドタイトルで出て来た死刑囚がクレタス・キャサディ(ウディ・ハレルソン)で、この男がカーネイジとなってヴェノムと対決するまでが2作目のメインストーリーです。カーネイジ初登場の93年頃はシリアルキラーヴィランになるって相当インパクトがあったんですが、今はそこまでの衝撃は感じないですね。世の中が悪くなったのか自分が汚れたのか(笑)。


 監督は1作目のルーベン・フライシャーから交替してアンディ・サーキスです。『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ(2001~2003)のゴラムですよ。ピーター・ジャクソン版の『キングコング』(2005)も演じてますね。いわば着ぐるみ役者が監督する側に出世したわけで、中島春雄ゴジラの監督するようなものでしょうか。
 よくある監督が降りてもめた末に「誰でもいいから監督しない?」とお鉢が回って来たパターンかと思ったんですが、考えてみればCGキャラクターに命を吹き込むのは専門分野だし、意外と正しい人選なのかもと思いました。


 カーネイジ=クレタスを演じるのが『ナチュラル・ボーン・キラーズ』(1994)のベテラン、ウディ・ハレルソンで、死刑囚役は得意分野ですね。1作目のラストに登場した時は原作寄りの罰ゲームみたいなパーマでしたが、今作は普通の髪型でした。
 クレタスが自分の死刑を取材しろとエディに絵手紙を送って来るんですが。この手紙がティム・バートン風のアニメになって動き出す場面にアンディ・サーキス監督の好みが現れてます。
 クレタスは手紙を読んで取材に来たエディの手に噛みついて血を飲み込みます。これでクレタスとシンビオートが融合し、カーネイジが誕生することになります。


 クレタスの死刑がまさに執行されようとする瞬間、目覚めたカーネイジがサンクエンティン刑務所を破壊し、受刑者たちを皆殺しにする場面はこの映画の一番の見せ場です。まさに「大虐殺=カーネイジ」です。
 クレタスが脱獄した目的はフランシス(ナオミ・ハリス)という恋人に逢いに行くことなんですが、彼女が何故か「シュリーク」という超能力者なんですよね。ちょっと設定に無理がないかと思いつつ、カーネイジとシュリークで力を合わせてヴェノムと戦うのかと思ったら、シュリークは「大きな声を出して何でも破壊する」超能力者なので、ヴェノムと同様に音に弱いカーネイジの邪魔にしかなりません。
 しまいにカーネイジに「うるさい! 黙れ!」と殴られてしまいます。何で出したか理解に苦しむキャラでした。


 ヴェノムもカーネイジも人間の脳が好物のバケモノですが、ヴェノムはエディと共生する条件として「悪人以外は食べない」と約束させられています。
 そう都合よく悪人とも出会わないので、飢餓感をチキンとチョコレートで誤魔化すストレスフルな毎日です。前作でエディの恋人だったアン・ウェイング(ミシェル・ウィリアムズ)は情緒も収入も不安定なエディに愛想をつかし、1作目で付き合ってた外科医ダン・ルイス(リード・スコット)と婚約してしまいます。
 あきらかに男として負けて自暴自棄のエディを慰めようと、ヴェノムがかいがいしく朝食を作ったりしますが事態は好転しません。遂にはエディとヴェノムの大げんかになります。肉体を共有してるので一人で暴れてるようにしか見えないんですが(笑)。


 ヴェノムは大げんかの末にエディの肉体から分離して家出してしまいます。分離したヴェノムは生命体に寄生しないと生きられないので、片っ端から人間に寄生して適合者を探します。LGBTのコスプレ集会に迷い込んだヴェノムは「俺は自由になりたいだけだ!」「エイリアンを差別するな!」と演説して拍手喝采を受けたりします(笑)。
 放浪の末にたどり着くのがチャイナタウンのチェンの酒屋で、この人は前作でヴェノムに強盗から助けてもらったので正体を知ってるんですね。まぁ結局はすったもんだの挙句元のさやに収まるんですが。


 ヴェノムが単独でも画面を持たせられるのは、エディ・ブロックとヴェノムの脳内会話がバディムービーになってるからですね。ひとりで漫才やってるような感じで。
 基本的に孤独なヒーローだから脳内会話に必然性があるわけで、例えば今やってる『仮面ライダーバイス』(2021)の脳内会話がうっとおしいのは、主人公以外の登場人物が多過ぎるからだと思うんですよね。
 余計な話ですが。クレタスとカーネイジの方もせっかくの殺人鬼コンビなら、龍之介とキャスターばりの鬼畜漫才を見せて欲しいところです。


 「なぁカーネイジ、俺たちもしかして罰が当たったのかな」「いいですかクレタス! 神は決して人間を罰しない! ただ玩弄するだけです!」……って、歴史上の英雄豪傑を召喚してバトルロイヤルする人気アニメ『Fate/stay night(フェイト・ステイナイト)』(2006)の前日談を描いた深夜アニメ『Fate/Zero』(2011)見てない人には分からないネタですね。余計な話が多くてすいません(笑)。


 ヴェノムとカーネイジの戦いは人間とシンビオートの2on2のチーム戦になるわけですが(シュリークはあんまり役に立たない)パワーと非情さはカーネイジの方が上でも、チームワークが乱れることでヴェノムが勝利するスキが生まれるあたりは上手いと思いました。
 ヴェノムたちに力を貸そうと元カノのアンも駆けつけますが、何故かエディの恋敵ダン・ルイスも火を使ってカーネイジの弱点を責める大活躍です。このダンが鼻持ちならない金持ちなら分かるんですが、妙にいいやつなんですよね。アンはエディより迷わずこっちと結婚すべきだと思うんですが、そうすると「アン・ルイス」になるんだろうか(汗)。


 カーネイジはクレタスから分離した隙にヴェノムに吸収されてしまいます。敗北を悟った殺人鬼クレタスの過去の独白はベテラン俳優ウディ・ハレルソンの演技の見せ場です。しかし、長そうな話を面倒くさがったヴェノムにみなまで言わず食われてしまいましたとさ(笑)。


【エンドタイトル後の後日談】

 カーネイジとの戦いを征し、海辺のリゾート地で過ごすエディとヴェノム。つまらないメロドラマを見ていた二人(?)を激しい地震とまばゆい光が襲います。


 実はこの地震こそ多元宇宙“マルチバース”の存在を示すもので、ヴェノムの宇宙(ソニーズ・ユニバース・オブ・マーベル・キャラクター)とスパイダーマンの宇宙(マーベル・シネマティック・ユニバース)が繋がってしまいます。


 テレビのニュース速報ではスパイダーマントム・ホランド)が映り、デイリービューグル編集長のJ・ジョナ・ジェイムソン(J・K・シモンズ)が息巻いています。アベンジャーズ版『スパイダーマン』第2作目である『スパイダーマン/ファー・フロム・ホーム』(2019)の最後のシーンに繋がったんですね。


 この展開こそ「ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース」への名称変更の理由だったわけです。マーベルとソニーの宇宙が企業の壁を越えて繋がり、スパイダーマンの次回作『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2022年1月7日公開)でも色々な宇宙へ繋がるらしいので、いよいよヴェノムとスパイダーマンの共演が実現しそうです。
 アメリカ映画に東映スパイダーマンと巨大ロボット・レオパルドンが登場する日も近いですよ。「キノコ狩りの男! スパイダーマン!」。
ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ (吹替版)


マトリックス レザレクションズ』

(2021年12月17日公開)


 1999年の『マトリックス』第1作は衝撃でした。
 我々の日常はコンピューターがプログラムした仮想世界で、本当の肉体はカプセルの中で夢を見ながらコンピュータの電源となっているという世界観。我々の世界は脳が見せる幻覚かも知れない、という哲学的なテーマを孕んでいたわけです。
 しかし、同じことを二度やっても驚かないし、今ごろになって作る意味があるのか? と思いつつ観に行ってきました。観る前はリメイクかとも思ってたんですが、本作『マトリックス レザレクションズ』は完全に旧『マトリックス』3部作の続編です。


 監督は旧3部作の監督だったウォシャウスキー兄弟の兄の方、ラリー・ウォシャウスキーですが、性転換して“ラナ”ウォシャウスキーになってます。ちなみに弟のアンディ・ウォシャウスキーも性転換してリリー・ウォシャウスキーになってるんですが、今回は兄、じゃなくて姉のラナ・ウォシャウスキーが単独で監督してますね。
 20年の間にえらいややこしいことになってます。この世は偽物という『マトリックス』の世界観は性同一性障害の実存的な不安から生まれたという見方もできますね。ウォシャウスキー兄弟は姉妹に性転換して少しは生きやすくなったんでしょうか。


 現代社会の生きづらさは性同一性障害にかぎらず誰もが感じているはずです。正体不明のウイルスで隔離させられて、メディアに「新しい生活様式」なんて強制される庶民は、まさしく仮想の世界に生かされてるわけで、『マトリックス』のテーマは20年前より身近で切実になったんじゃないでしょうか。
 1999年の『マトリックス』第1作の煽り文句は「なぜ気づかない」でしたが、2021年のレザレクションズの煽りは「アクションマシマシ!」だそうです(笑)。


 ダサすぎと思ったらキアヌ・リーヴス本人が言ってるんですね。日本に来るたびにラーメンを食べるキアヌが「ラーメン二郎」のマシマシにかけて日本のファンにサービスしてるわけです。
 たしかに物理法則を無視するアクションもまたマトリックスの魅力なので、20年の歳月を経た最新技術のアクションはさぞマシマシなんだろうと思ったんですが、そっちは思ったより大したことがなかったです。


 もっとも1999年版がそれだけ完成されてたってことでしょうが。カメラが被写体を回り込む「バレットタイム」はやるだろうと思ったんですが、結局一度も出てこなかったですね。何十台もカメラが必要で準備が大変なせいだと思うんですが、20年前にできたことをやらないのはちょっと残念でした。


 ネオ(キアヌ・リーヴス)とトリニティーキャリー=アン・モス)は第3作『マトリックス レボリューションズ』(2003)で一度死んでるんですが、『レザレクションズ』では何故かまだ生きていて再びマトリックスの世界に囚われています。
 モーフィアス(ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世)に導かれた青い髪のバッグス(ジェシカ・ヘンウィック)をはじめとする若い世代の覚醒者たちが、マトリックスと戦った伝説の二人をマトリックスの世界から目覚めさせるまでが今回の物語になります。
 モーフィアスはローレンス・フィッシュバーンに代わってDC社のアメコミヒーロー洋画『アクアマン』(2018)のブラックマンタ役、ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世が演じてます。


 ネオはマトリックス内では「デウス・マキナ」なるゲーム会社で活躍するゲームデザイナーになっていて、売れっ子だからお金もあって毎日ステーキとか食べてるんですが、これは1作目の裏切者サイファーがエージェントスミスにステーキを食べさせられてるエピソードのオマージュですね。
 味も匂いもある幻がネオにとっての日常になっています。ネオの中にあるマトリックスでの戦いの記憶も「自分が作ったゲームの内容」に改変されていて、消えない違和感を薬物で紛らわしているんですが、その薬物がかつてネオが服まなかった「青いカプセル」なんですね。洗面所にぶちまけられた無数の青いカプセルがネオが生きてきた偽物の日々を象徴します。
 会社の若手デザイナーは「ネオが作った『マトリックス』という3部作のゲームで遊んでいた世代の若者」になっていて、彼らもまたネオの戦ってきた日々をゲームの内容として知っているのがネオの現実感を混乱させます。


 「バレットタイム」は画期的でしたね、とかワーナーブラザーズが続編作れと言ってますよ、とか観客の現実感も混乱するメタフィクションな構造が面白いです。



 トリニティーもネオ同様に偽りの人生を与えられていて、彼女はマトリックスの中ではティファニーという名の平凡な主婦で、優しい夫と子供に恵まれて幸せな日々を過ごしています。
 最初から人生に違和感を持っていたネオは割とあっさり覚醒するんですが、トリニティーの方は優しい夫と可愛い子供に囲まれた生活に未練があって、なかなか覚醒しようとしません。
 トリニティーが覚醒しそうになると家族が駆けつけて「お母さん大変だ! 子供が事故に遭って病院に運ばれた!」とか言って現実に(じゃなくて非現実に)引き戻そうとします。


 これって不倫ドラマの女性の心理ですよね。平凡な家族に囲まれた幸福な生活が偽物で、家族を捨てて愛する男に走るのが「ホントウの自分」だという。女性になったラナ・ウォシャウスキー監督の価値観の反映なのかも知れません。


 ネオの宿敵といえば「エージェントスミス」ですが、彼も再登場します。旧3部作ではヒューゴ・ウィービングが演じてましたが、今作ではジョナサン・グロフという役者が演じていて、例の黒いスーツでなくラフなファッションです。マトリックスの束縛を離れて自由になったためにこの姿になったそうです。
 ネオにとっては敵か味方か曖昧な存在ですが、ネオとトリニティの窮地を駆けつけたスミスが助けてくれる、みたいな場面もあったりします。


 他にも支配に気付きながら現実世界にも戻らない「エグザイル(放浪者)」と呼ばれる勢力がいましたが、彼らも再登場します。完全にホームレス化していてヒゲぼうぼうのヒッピー姿で「20年前の映画はもっと面白かった!」とか「FacebookWikipediaもクソだ!」とか口汚くわめいていて、他人とは思えなかったです(笑)。


 今回新登場するのが「ボット」という人間の偽物で、ゲームで言うNPC(ノンプレイヤーキャラクター)ですね。
 マトリックスの信号で動く魂のない人間で、正体を表すと目が緑色に光るのが古典SF映画『光る眼』(1960)を思わせます。これがネオの上司や部下、トリニティーの家族を演じていたわけです。覚醒したトリニティーは正体を表したボット家族を容赦なく蹴り倒します。
 バイクを飛ばして仮想世界を疾走するネオとトリニティーをボットの集団が追って来ます。空からも降ってきます。道の両側にある高層マンションから2人のバイクを狙って投身自殺してるんですが、これは怖かったです。人間爆弾ですね。


 今回のラスボスはネオとトリニティーの共通の精神科医だったアナリスト(ニール・パトリック・ハリス)で、ラストは彼をタコ殴りにして管理者権限を取り上げたネオとトリニティーが、マトリックスの世界を改変すべく飛び去って行くところで終わります。


 20年ぶりの続編ということで不安でしたが、世界観を大きく壊すこともなく手堅くまとまってました。旧3部作ではマトリックスと現実世界を行き来するポータル(出入口)が電話ボックスや携帯電話でしたが、今回は「鏡」を使ってます。
 鏡の世界を通り抜けるとそこは日本で、富士山の見える新幹線の中で修学旅行生と戦うなんて珍場面もあります。みんなマスクしてましたね(笑)。


 正直アクション映画としての完成度は20年前の方が高いと思うんですが、ボットの特攻やミサイルの軌道を曲げるシーンなんかは迫力があったし、それなりに納得できる続編だったと思います。ラストは次回作があることを匂わせますが、さらに続編を作るのならば旧3部作のような尻つぼみにならないで欲しいものです。
マトリックス レザレクションズ ブルーレイ&DVDセット (2枚組) [Blu-ray]

(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2022年1月号』(22年1月16日発行)所収『アメコミ洋画』評より抜粋)


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#ブラック・ウィドウ #ホークアイ #エターナルズ #ヴェノム #スパイダーマン #ザ・スーサイド・スクワッド #マトリックス



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 映画『機界戦隊ゼンカイジャーVSキラメイジャーVSセンパイジャー』(22年)が公開記念! とカコつけて……。映画『スーパー戦隊MOVIEレンジャー2021』(21年)ワクで上映された『機界戦隊ゼンカイジャー THE MOVIE 赤い戦い! オール戦隊大集会!!』評をアップ!


映画『機界戦隊ゼンカイジャー THE MOVIE 赤い戦い! オール戦隊大集会!!』 ~来たるTV新番組への誘導もバッチリなシリーズ45作記念の快作映画!

東映系・2021年2月20日(土)公開)
(文・久保達也)
(2021年3月5日脱稿)


 前年2020年度の『スーパー戦隊MOVIE(ムービー)パーティー』内の2本立ての1本として上映された映画『魔進戦隊キラメイジャー エピソードZERO(ゼロ)』(20年・東映https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200322/p1)は、同年3月から放映が開始されるテレビシリーズ『魔進戦隊キラメイジャー』(20年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200712/p1)に先立って、たとえ後付けで製作されたのだとしても、前日譚(ぜんじつたん)というよりかは実質的な「第1話」といっても差し支えのない作品に仕上がっていた。
 これに対して、2021年3月7日(日)に放映開始となる『機界戦隊ゼンカイジャー』(21年)に先だって公開された本作は、公開初日舞台あいさつでのキャストたちによれば、テレビシリーズの「第7話ごろ」の話だということだ。


 おそらく当初は『赤い戦い! オール戦隊大集会!!』も、本来ならば前作の映画『エピソードZERO』を踏襲するかたちで実質的な「第1話」や「前日譚」として製作して、映画を観に来た子供たちを現行の『魔進戦隊キラメイジャー』で卒業させずに、次回作『機界戦隊ゼンカイジャー』へと誘導するつもりだったのかもしれない。
 だが、本作が公開された2021年2月20日(土)は実際にも第2回目の「緊急事態宣言発令」の真っ只中(まっただなか)になってしまったように、もしも本作を「第1話」的な作品として製作して万が一、公開が延期にでもなったりすれば、それこそテレビシリーズの『ゼンカイジャー』第1話とは少々の不整合や不自然さが発生してしまった可能性もあっただろう。


 加えて、第1話よりも前の前日譚として製作されたエピソードが、テレビシリーズの第1話よりもあとに映画で公開された場合に、小学生はともかく幼児であれば「回想シーン」や「前日譚」といった時系列をさかのぼった作劇を理解ができずに、今現在での出来事だとして混乱してしまうような子供たちも相応にはいることだろう。
 往年の『仮面ライダーストロンガー』(75年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201231/p1)第2話では、第1話では描かれなかった主人公青年・城茂(じょう・しげる)がどのような経緯で仮面ライダーストロンガーになったのか、といった過去の回想が描かれていた。しかし、当時まだ幼児や小学校低学年であった世代人には「第1話と第2話が間違って逆に放映されてしまったのだろうか?」と不審に思ったという声を複数名から聞いたことがあるのだ(笑)。
――幼児の時分ですでにマニア予備軍であった我々特撮オタク諸氏には、「回想」や「前日譚」を今現在の出来事だと誤認してしまうようなリテラシー(読解能力)の低い子供は少なかったかもしれない。しかし、それは決してホメ言葉ではない。フィクション・非現実に対するリテラシーの高い子供ほど、現実世界で生きていくことが苦手なタイプが多かったりもするものなので(汗)――


 加えて、本作『オール戦隊大集会!!』を「『ゼンカイジャー』第7話ごろ」の話としたのは、仮に公開が延期になったとしても、ゴールデンウィークあたりの時期の延期公開であればちょうどよくなるし、さらに初夏以降の公開になったとしても、今現在を舞台とした作品として観てもらっても支障がないだろうという保険的な高等計算なども働いていたのかもしれない(笑)。


 ところで、80年代中盤のスーパー戦隊シリーズはリーダーの戦隊レッドだけがドラマ性を持っていて、あとの戦隊メンバーはオマケといった感もあったものだ(汗)。90年代以降になるとさすがにそういうこともなくなってくる。シリーズの序盤では週替わりの各話で各メンバーにスポットを当てて、リーダーとなる主人公青年との対立・和解などが描かれて、5人のメンバーが次第にチームとしての結束力を固めていくさまを描くのが定番の流れとなってきたのだ。


 本作『オール戦隊大集会!!』の冒頭で描かれるバトルでは、ゼンカイジャーが「仲間」としてのチームワークの良さを存分に披露している。街の人々が「ゼンカイジャ~~!!」などと声援を送る描写で、彼らが地球ではすでに周知がなされたヒロイックな頼もしい存在となっていることも示されている。
 本作が「第7話ごろ」のエピソードだというのは、スーパー戦隊シリーズの時間軸としては、細かい設定説明や登場人物説明も不要となる、実に作劇的にも都合がよい時期を舞台とするためなのだろう(笑)。


 なので、本作『オール戦隊大集会!!』は前年度の『キラメイジャー エピソードZERO』のような物語の発端(ほったん)となる事件や細かな設定紹介などは描かれてはいない。
 『ゼンカイジャー』とはトータルでいったいどのような作品であるのか? 通常編はどのようなノリであるのか? その作風・雰囲気を観客に事前に周知・広報してテレビシリーズに誘致するための、いわば「お試し視聴」版としての趣が強いのだ。


アニバーサリー作品なのに、「原点回帰」「王道復古」ではなく、「明朗」でも思いっきりの「変化球」!


 さて、2021年は仮面ライダー50周年・ウルトラマン55周年ということで、特撮マニア界隈(かいわい)も一応は盛り上がっていることと思う。
 スーパー戦隊シリーズも『機界戦隊ゼンカイジャー』で第45作目となり、日本を代表する特撮ヒーローのメモリアルイヤーが、5年ごとの恒例行事だとはいえ見事に重なっているのだ。
――個人的には各シリーズのメモリアルイヤーはバラけていた方が、各シリーズごとに目立ててよかったのに…… とも思うのだけど、こればかりは時計の針を戻せない以上は致し方(いたしかた)がないところだ(笑)――



 機界戦隊ゼンカイジャーのリーダーであるゼンカイザーの頭部にそびえる金色の大きなアンテナは「スーパー戦隊シリーズ」のロゴの背景にデザインされたローマ数字で「5」を意味する「Ⅴ」がモチーフであり、その額(ひたい)には「45」の数字がモールドされており、まさに『ゼンカイジャー』がメモリアル作品であることを象徴するデザインとなっている。


 ただし、ゼンカイザーのデザインを最初に見て、「コレ、仮面ライダーやろ!」とツッコミを入れたのは決して筆者だけではないだろう(笑)。
 両眼が青であり体色は白を基調とした全身に赤のラインが走るデザインには、『仮面ライダードライブ』(14年)の2号ライダー・仮面ライダーマッハを彷彿とした人も多かったのではなかったか?
 まぁ、それ以前に今回のクライマックスで登場した、スーパー戦隊の記念すべき第1作『秘密戦隊ゴレンジャー』(75年)のリーダー・アカレンジャーのごとく、


「おまえ、赤じゃないのか!?」


などと唖然(あぜん)とした人の方が圧倒的に多かったことだろうが(笑)。


 だから、筆者のように昭和からいる古い特撮マニアや歳若くてもスーパー戦隊マニアの諸氏であれば、白地に赤のみならず青・黄・緑・ピンクのラインが添えられたデザインに、スーパー戦隊シリーズ第2作『ジャッカー電撃隊』(77年)のシリーズ後半で加入して新たなリーダーとなった白いヒーロー・ビッグワンを連想した人もいたかもしれない。
 だが、両目を中央でつなげたようなゴーグル部分、背中でマントを翻(ひるがえ)すデザインは、まぎれもなく『秘密戦隊ゴレンジャー』のアカレンジャーがモチーフなのだ! そして、往年の戦隊ヒーローを模していたのは彼だけではなかった!


・赤いヒーローであるゼンカイジュランは『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(92年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120220/p1)の合体巨大ロボ・大獣神(ダイジュウジン)がモチーフであり(!)、額の番号は『ジュウレンジャー』がスーパー戦隊第16作目であることを象徴する「16」
・黄色いヒーローであるゼンカイガオーンは『百獣戦隊ガオレンジャー』(01年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20011113/p1)の合体巨大ロボ・ガオキングがモチーフで(!)、額番号は『ガオレンジャー』が第25作であることを示す「25」
・ピンクのヒロインであるゼンカイマジーヌは『魔法戦隊マジレンジャー』(05年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110228/p1)の合体巨大ロボ・マジキングがモチーフ(!)で、額番号は『マジレンジャー』の第29作と同じ「29」
・青いヒーローであるゼンカイブルーンは『轟轟(ごうごう)戦隊ボウケンジャー』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070108/p1)の合体巨大ロボ・ダイボウケンをモチーフにした(!)、額番号は『ボウケンジャー』が第30作なのと同じで「30」


 5人全員が往年のレジェンド戦隊をモチーフとしたデザインなのは、「メモリアル作品」としてのスタッフの本気度がうかがえるというものだ!


 ただ、それにしても、ゼンカイザー以外の4人が歴代レジェンド戦隊をモチーフとするも、等身大の戦隊ヒーロー&ヒロインではあるのに皆が巨大ロボとしか云いようのないデザインであることには誰もが驚いたことだろう。
 だが、こんなにゴテゴテとした造形で戦闘員たちを相手に動けるのか!? と半信半疑の観客に対して、冒頭のバトル場面は「お試し視聴」としての役割を充分に果たせたのではなかったか?
 素材の軽量化や見た目は硬質そうでも実は軟質な素材といった技術的な進歩もあったのだろうが一見、動きにくそうなゴテゴテのスーツをもスピーディにアクロバティックに動かしてしまうほどの、スーツアクターアクトレスの身体能力の高さを存分に目にすることとなったのだから!


 とはいえ、『手裏剣(しゅりけん)戦隊ニンニンジャー』(15年)のオトモ忍(笑)として登場した忍者型巨大ロボのシノビマルやロデオマル、古いところでは『救急戦隊ゴーゴーファイブ』(99年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19991103/p1)の3号ロボ・ライナーボーイなど、メインとなる合体巨大ロボよりもひとまわりほど小さい巨大ロボが、ミニチュアセットのビルの屋上から飛び降りて、宙返りをしてから巨大化怪人にキックを見舞ってみせる! などといったカッコいい描写を、我々はここ20年強ほどでも何度も目にしてきたのだ。
 それらを思えば、着ぐるみの中で高下駄を履かせて、硬質な素材で実に動きにくそうにしていた初期スーパー戦隊シリーズの巨大ロボットたちとは異なり(笑)、ロボット型のスーツでもアクションには致命的な支障がないことはすでに実証済みなのであり、舞台が特撮スタジオのミニチュアセットから屋外のロケ現場に移っただけのことではあるまいか?


 既存のレオタードスーツ型のリーダーヒーローであるゼンカイザー以外のゼンカイジャーたちが一見は戦隊ヒーロー&ヒロインらしからぬ巨大ロボのようなデザインであることは、この姿に変身する前の彼ら自身もまた人間ではなく、キカイノイドなる機械生命体であったからだ…… って「メモリアル作品」なのに「王道」ではなくエラい「変化球」を投げてきたものである(笑)。


 とはいえ、実はこれとて前例がないワケではない。近年でも最終的には総勢12人(!)の戦隊ヒーローが登場した『宇宙戦隊キュウレンジャー』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180310/p1)では、オオカミ型の獣人・ガル=オオカミブルー、金色のロボット・バランス=テンビンゴールド、猛牛型ロボット・チャンプ=オウシブラック、女性型アンドロイド・ラプター283=ワシピンク、竜の頭をした宇宙人のショウ・ロンポー=リュウコマンダーなど、異形の宇宙人と地球人とが半々の混成スーパー戦隊だったからだ。
 また、その前作『動物戦隊ジュウオウジャー』(16年)でも、風切大和(かざきり・やまと)=ジュウオウイーグル以外のジュウオウジャーの4人のメンバーは異世界・ジューランドの出身であり、顔は動物だが人間のような衣装を着て二足歩行する獣人・ジューマンとして描かれていたのだ。ただそうはいっても、実際にはジューマンは人間態としての姿を採っていることが圧倒的に多かったのだが。


人間態がない着ぐるみ戦隊メンバーに想う、戦隊イケメン役者人気の40年史!


 『ゼンカイジャー』の戦隊メンバーであるキカイノイドたちは、変身前の姿もまたややスマートな機械人間たちであって、若手役者が演じるような人間態にはならないようであり、リーダーの五色田介人(ごしきだ・かいと)=ゼンカイザーのみが人間の姿であとは全員が着ぐるみスーツのキャラだというのには……
 ウ~ン、筆者のようなロートル(オールド)世代からすると、コレは正直かなりビミョーで危険な賭けをしているような気もしてくるのだ(汗)。


 いや、『キュウレンジャー』の宇宙人戦士たちや『キラメイジャー』の魔進、『炎神戦隊ゴーオンジャー』(08年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080824/p1)の炎神(エンジン)や『爆竜戦隊アバレンジャー』(03年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110613/p1)の爆竜、はたまた『特命戦隊ゴーバスターズ』(12年)の相棒ロボット・バディロイドなど、たとえ姿は人間ではない宇宙人や機械生命体ではあっても、声優・スーツアクター・CG担当者のコラボによる表情演技・仕草・ボディーランゲージ・口調などによって、見事に生命を吹きこまれた彼らによる「人間ドラマ」に、我々は時には涙するほどに感動させられてきたのだ。
 その実績からすれば、着ぐるみキャラのみでも彼らの関係性や心の変遷(へんせん)を描いてみせる群像劇は立派に成立するハズだと、この点では個人的にはまったく不安を抱いてはいない。


 ただ、スーパー戦隊シリーズば、『ゴジラ』シリーズや『ウルトラマン』シリーズといった古典タイトルと比べれば、70年代末期にはじまったマニア向け出版物のラッシュの時代においてはまったく顧みられることがなく、それらと比すれば一段も二段も低いものとしてマニア間では扱われてきたものだ。
 1980年に創刊された今は亡き朝日ソノラマ社の特撮情報誌『宇宙船』でも、初期の号では基本的にはスーパー戦隊作品はほぼ紹介や言及などもなされていなかった。
 しかし、往時なりに世代交代が進んで、『秘密戦隊ゴレンジャー』世代が成長して中高生や成人などの年齢に達してくる80年代中盤になると、彼らの一部がスーパー戦隊シリーズを卒業できずに鑑賞しつづけているという事態が、次第に可視化されるようになってきたのだ(笑)。


 『大(だい)戦隊ゴーグルファイブ』(82年)のゴーグルピンクこと変身前も可憐で弱そうな桃園ミキ(ももぞの・みき)や『科学戦隊ダイナマン』(83年)のダイナピンクこと立花レイ(たちばな・れい)が年長戦隊マニア間でも人気を集めて、同時期の『宇宙刑事シャイダー』(84年)に登場していた顔出しの女宇宙刑事アニー人気とも連動して、『宇宙船』誌でも表紙のモデルを務めたりカラーグラビアが掲載されたり、東映ヒロイン専門の大判の写真集なども発行がなされる。つまり、戦隊ヒロインにも執着している男性マニアがここで商業誌レベルで可視化もされたのだ。


 スーパー戦隊シリーズ超電子バイオマン』(84年)や『電撃戦隊チェンジマン』(85年)の時期になると、スーパー戦隊シリーズは「作品紹介」としても誌面を飾るようになってきた。


 そして、読者投稿欄の作品感想・イラスト投稿・文通希望欄などでも、今で云うイケメン役者の男優、戦隊ヒーローの変身前も顔出しで演じている当時のJAC(ジャック。ジャパンアクションクラブ)の若手ホープたちにも熱い声援を送っている女性ファンたちも、少なからず存在することが可視化されていくのだ――といっても、20歳以上の女性戦隊マニアはまだ存在していないような時代なので、基本的にはまだ中高生であって、今で云うオタク女子たちの元祖であった――。


 ただし、筆者も含む当時の男性戦隊マニア層は、自身たちが戦隊ピンクなどに秘かに傾倒しているのに、あくまでもファン活動とは「作品批評」をメインとするべきなのであって、役者に対するミーハー的な関心を邪道のものとして見る風潮も強かったのだけど(汗)。
 女性マニア層や子供たちのママ層の間での人気も含めた総合的なものとして、作品を評価するような流儀が一般化してくるのは、はるか後年の21世紀以降のことであった。


 こうした女性特撮ファン・女性東映ヒーローファンの存在は、主にスーパー戦隊シリーズを中心に途切れることはなかった。
 常に下の世代の女性ファンが補充されていき、そういった女性向けのイラストエッセイや短編バロディー漫画中心の同人誌なども隆盛を極めていくのだ。
――云っておくと、90年代のむかしから特撮批評・感想系同人誌のサークルの数は実は少なくて、女性向けの同人誌サークルの数の方が桁違いに多かったのだ(笑)――


 こうした水面下での主に女性オタク層による特撮変身ヒーロー人気やそれらを演じる役者さん人気は、絵を描けたり文が書けたりするというハードルを超えることができるようなマニア気質の人種であれば、当時のマニア雑誌の同人誌紹介欄での通信販売や文通希望欄などを通じて、サークル的な交流も生み出していった。
 00年前後になると、急速にインターネットが普及する。ネット上に新たに出現したファンの交流サイトや掲示板なども通じて、もちろん一般ピープル寄りではあるのだが、マニア・オタク的な感性も持っている女性層や主婦層たちが、特撮変身ヒーロー作品や役者さんたちに熱烈にハマっていたり、強く支持をしている様子なども今度はもっと大きく可視化されて、3大新聞や各種マスコミなどでも取り上げられて、ムーブメントとしても社会に認知されるようになっていく。


 それが『仮面ライダーアギト』(01年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20011108/p1)や『百獣戦隊ガオレンジャー』(00年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110613/p1)の前後に起きたイケメンヒーローブームなのであった。
 旧態依然の特撮マニア諸氏はこのブームを快くは思わなかったようだが(汗)、これによって特撮ブームは一気に加熱して、世間にもヒーロー俳優の存在を広く知らしめることとなっていく。以降は特撮ヒーロー出身の役者さんたちが番組終了後に一般のテレビドラマにも続々と主役級で出演できるようになって、往時とは比較にならないくらいに特撮ジャンルのステータスも上がっていったのだ。


 あのブームからでも2021年時点で、早くも20年が経ってしまったが……(遠い目)


 その当時と比べればやや沈静化はしているもの、たとえば東京ドーム・シアターG(ジー)ロッソで開催されているスーパー戦隊アトラクションショーでは、各作のシリーズも終盤に至った時期になると、テレビシリーズのキャストたちが出演する公演がもう30年近くも継続している。
――Gロッソの前代・スカイシアターよりも前の前身である後楽園ゆうえんち野外劇場に、『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(92年)で途中加入した緑色の6人目の戦士・ドラゴンレンジャーの変身前であるブライが登場したことがおそらく初出である――


 『百獣戦隊ガオレンジャー』(01年)以降はテレビシリーズ終了直後に全国各地を公演していくキャスト総出演の『ファイナルライブツアー』もはじまって、今も隆盛を極めている。
――放映終了後のイベント自体は、規模ははかるかに小さかったもののイベント会社に在籍しているらしい特撮マニア有志によって、これもまた『恐竜戦隊ジュウレンジャー』以降は、公民館の壇上などでのキャストによる着席トーク中心の『フェアウェル・パーティー(送別会)』の名義で、やはりマニア雑誌の文通・情報欄などで告知・募集をするかたちで開催がはじまって、その事後レポートが白黒ページの小さな小さなベタ記事で『宇宙船』誌などでも紹介されていたことがあった(特撮同人誌まで含めれば、大々的なレポート記事などはあった)――


 今でも作品自体や変身後のヒーローはもちろんのこと、それぞれの変身前である「推(お)し」の若手役者たちを実際に見てみたい、あるいは会ってみることを楽しみにしている年長マニア層は増えている。
 こうした感性が自分だけではないと知って勇気づけられたり、その気持ちが高じて5年10年15年と継続して参加しているようなアクティブな特撮マニアたちも大量に存在している。そこで同好の友人を見つけたり、サークル的な交流を長年にわたって継続しているような例も多々あるそうだ。
――同じオタクでも、我々のようなインドアな評論オタク・物書きオタクたちとはちょっと人種が違っているかもしれないが(笑)――


 少子化の時代とはいえメインターゲットとなる数百万人もの子供層と比較すれば、彼らの数は2桁ほども小さいので、変身前の若手役者の欠如自体は作品にとっては致命的な欠陥でもないのだろう。
 しかし、こうしたイベント興行や役者人気のことまで考慮すれば、大きなお友達の購買意欲やイベント参加意欲には少々の影響はありそうなので、女性マニア向けの書籍や映像ソフトなり映画やイベントなどの興行などには微量に影響を及ぼすのではなかろうか?


 もちろん、そういった周辺イベントへの考慮以上に、『キラメイジャー』で主人公・キラメイレッドこと熱田充瑠(あつた・じゅうる)を演じた小宮瑠央(こみや・りお)が、放映開始からほどなくして軽度で済んだとはいえコロナウィルスに感染したことなどから、撮影中断のリスクを考慮して顔が見えないことで代役を立てることが比較的には容易であるからという理由で、複数の着ぐるみキャラを戦隊メンバーに据えてみせた可能性も高いだろう。
――後日付記:本作を担当している東映白倉伸一郎プロデューサーによれば、戦隊メンバーが着ぐるみキャラとなったことはコロナ対策ではなかったとのことだそうだが…… ホントウだろうか?(笑)――


主人公の祖母を演じる榊原郁恵は、第3次怪獣ブーム期であった70年代末期の特撮変身ヒロインだ!?


 今回の劇場版には登場しなかったが、本作『ゼンカイジャー』のトピックのひとつは、主人公・介人の祖母役として、有名タレントである榊原郁恵(さかきばら・いくえ)がレギュラー出演を果たしたことだ。
 おそらく彼女のギャラは高いだろう。それによって、彼らがいくら安月給だとはいえ(爆)若手役者をキャスティングする予算さえも捻出できなくなってしまったのだろうか?(笑)
――むろん冗談であり、この手の特撮変身ヒーロー作品は玩具コンセプトが先にありきの番組なので、玩具売上には直接に結びつかない榊原郁恵のキャスティングがまずありきで、それゆえに戦隊メンバーの方を過去の戦隊巨大ロボもどきにせざるをえなかった……などといった処置もまたアリエないのであった――


 ちなみに、元祖『秘密戦隊ゴレンジャー』世代のご同輩であれば自明のことだろうが、榊原は同作の2年目が放映されていた1976年にCMや映画の端役(はやく)などで出演したあとに77年にアイドル歌手としてデビューした。
 我々的には狂乱の第3次怪獣ブーム真っ最中であった78年の熱い夏に『夏のお嬢さん』が大ヒットを飛ばしていた記憶とともにあるだろう。


 やはり当時の大人気アイドル・大場久美子とともにダブル主演を果たしたドラマ形式の30分枠バラエティ番組『マジカル7(セブン)大冒険』(78年・TBS)では、第3次怪獣ブームに便乗してウルトラマンジャック(『帰ってきたウルトラマン』)やウルトラマンタロウとも競演した経歴を持っているのだ(笑)。
 同枠の後番組でも大場久美子とダブル主演で『少女探偵スーパーW(ダブル)』(79年・TBS)にも連続出演を果たしており、同作では顔出しだが宇宙人だという設定で、赤半袖・赤ホットパンツ・赤ブーツ姿の健康的な変身ヒロインも演じていたので、そうした変身ヒーロー文脈の傍流としても彼女の存在を捉えることができるだろう。



 一応の危惧をイチャモン芸的に語ってみせたが、そうは云いながらも、本作を「お試し視聴」してみて、戦隊チームから人間の俳優が演じるキャラクターを主演のひとりだけにしたことによる、特撮変身ヒーローものとしての違和感や作劇面での弊害(へいがい)などは、実は個人的には皆無(かいむ)に近かったりもしたものだ(笑)。
 この大胆にすぎる試みが果たして吉と出るのか凶と出るのか、それは子供たちやマニア諸氏の反響次第なのだが、「メモリアル作品」であるだけに、作品それ自体のみならず、作品をめぐっての周辺状況や受け手の各層のさまざまなリアクションなども観察していきたいところだ。


スーパー戦隊シリーズ歴代の敵幹部たちが大挙復活のカタルシス! そして、その功罪とは!?


 さて、『ゼンカイジャー』のレギュラー悪はすべての「並行世界」を消し去ろうとしている「トジテンド王朝」なる軍団である。
 この作品では歴代レッドが全員集合する一応の大作風味の劇場版のゲスト敵怪人としてはまことにふさわしい、『ゴレンジャー』の敵組織・黒十字軍の首領であった黒十字総統の姿のごとく顔の周囲には大きな黒い十字型の突起がそびえており、その全身にはこれまでの悪の組織の幹部たちを象徴するパーツがゴテゴテと飾られている最強怪人・スーパー悪者(わるもの)ワルドが登場していた。
――これまた確信犯でのB級なネーミングで、80年代の戦隊マニアたちはそういうセンスをイヤがっていたものだが、今となってはそれもまたイイ意味でキッチュ通俗的)でチャイルディッシュなスーパー戦隊作品らしくて実にイイのだ!(笑)――


 このスーパー悪者ワルド怪人の呪術的なパワーによって、


・『海賊戦隊ゴーカイジャー』(11年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20111107/p1)でゴーカイジャーと「宇宙最大のお宝」の争奪戦を展開した宇宙海賊のバスコ・タ・ジョロキア
・『快盗戦隊ルパンレンジャーVS(ブイエス)警察戦隊パトレンジャー』(18年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190402/p1)の敵組織・ギャングラーの幹部怪人で、ルパンレンジャーの家族や友人たちを氷づけにした因縁の宿敵として描かれていたザミーゴ・デルマ!
・『手裏剣戦隊ニンニンジャー』(15年)の敵組織・牙鬼軍団の小姓(こしょう)で十六夜九衛門(いざよい・きゅうえもん)!
・『動物戦隊ジュウオウジャー』(16年)に登場した巨獣ハンター・バングレイ!


などなど、これまでの歴代シリーズにレギュラーやセミレギュラーとして登場してきた幹部クラスの敵怪人たちが次々と人間の世界に現れるのだ!


 クライマックスでは、


・『秘密戦隊ゴレンジャー』(75年)のゲスト怪人・野球仮面!
・『超電子バイオマン』(84年)のバイオハンター・シルバ!
・『轟轟戦隊ボウケンジャー』(06年)の敵幹部・闇のヤイバ!
・『天装戦隊ゴセイジャー』(10年)の敵幹部・ビッグフットの筋(きん)グゴン!
・『海賊戦隊ゴーカイジャー』(11年)の敵幹部・ダマラス!
・『烈車(れっしゃ)戦隊トッキュウジャー』(14年)の敵幹部・シュバルツ将軍!
・『手裏剣戦隊ニンニンジャー』(15年)の敵幹部・蛾眉雷蔵(がび・らいぞう)!
・『動物戦隊ジュウオウジャー』(16年)の敵幹部・クバル!
・『宇宙戦隊キュウレンジャー』(17年)の敵幹部・エリードロン!
・『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』(18年)の敵幹部デストラ・マッジョ


といった、着ぐるみがまだ残存していた分であろう、ここ10年ほどの歴代戦隊の敵幹部までもが姿を見せてくれるのだ!――野球仮面だけは幹部怪人ではないけれど、出オチ怪人としてはナイスなセレクトだ!(笑)――


 敵戦闘員に至っては、『電撃戦隊チェンジマン』(85年)以降のスーパー戦隊のすべてと云わず、ほとんどの作品の戦闘員が姿を見せてくれていた!(感激)


 野球仮面とシルバは、今から10年前のメモリアルイヤーに製作された映画『仮面ライダー×スーパー戦隊 スーパーヒーロー大戦』(12年・東映https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201115/p1)の際に新規に造形され直した着ぐるみのリサイクルだろうが、着ぐるみが残存しているのであれば、やはりこういった機会にこそ再登場してほしいではないか!?


 こういった趣向をマニアしか知らない内輪ウケだとツッコミされてしまうと、たしかにそのとおりではあるのだ。そして、それゆえの危険性もたしかにあるのだ。
 しかし、そうは云っても劇場にいる観客の中に占めるマニアの比率も20世紀の「東映まんがまつり」や「東映ヒーローフェア」のむかしに恥を忍んで観に行って、ファミリー層の観客の中では大きなお友達がひとりしかいなかった(爆)ような不遇の時代と比べれば桁違いには増えており、商業的にもまぁまぁ無視はできない比率に達していることだろう。


 怪獣博士やマニア予備軍気質のある子供たちも相応にはいるのだし、やはり彼らに歴代シリーズにも関心を持ってもらい、大きくなっても卒業せずに各種アイテムで散財してもらって、いずれはバンダイのプレミアム高額商品を購入してもらうためにも、こうした趣向は有効であるハズだ(笑)。
 もちろん子供であっても、数年前の作品であれば敵幹部や敵戦闘員のビジュアルは憶えているだろうし、子供なりに懐かしく思うものだろう。やはり歴代シリーズの名悪役たちが再登場してこその「メモリアル作品」でもあるのだ!


 個人的には役者が人間態を演じていたバスコとザミーゴが再登場した際が最も盛り上がった。
 特にバスコは相棒だった着ぐるみマスコットの宇宙猿サリーを先に登場させて、バスコの背後や足下をとらえたカットで、世代人やマニア層の観客の期待感を高めていく演出が実に効果的に発揮されており、筆者が女子ならばバスコが表情を見せた瞬間にスクリーンに向かって黄色い歓声を上げたいところだった(笑)。


 また、バスコとザミーゴは衣装がともに西部劇調で、ツバが広いテンガロンハットにポンチョスタイルでありながらその色は、敵に対しても妙にフレンドリーな表情と語り口を見せるバスコが赤、めっちゃ冷淡で無愛想なザミーゴが青と、似て非なるキャラクターの違いを対比的に見せていたのも実によかったものだ。


ゲスト敵怪人・スーパー悪者ワルドの必殺ワザの名称が声優の演技ともどもイカレまくっていた!(笑)


 ゼンカイジャーはスーパー悪者ワルドに苦戦を強(し)いられる。


 そのスーパー悪者ワルドが悪の必殺ワザとして放ったのが「イーヅカリバー!」


 ……って、このワザ名は、『ゴレンジャー』の2代目敵幹部・鉄人仮面テムジン将軍や4代目敵幹部・ゴールデン仮面大将軍、『バトルフィーバーJ(ジェイ)』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120130/p1)の敵首領・サタンエゴス、『電子戦隊デンジマン』(80年)のほとんど全話のゲスト敵怪人(爆)、『太陽戦隊サンバルカン』(81年)の敵首領・ヘルサターン総統をはじめ、『天装戦隊ゴセイジャー』(10年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20130121/p1)第1クールの敵首領である大王モンス・ドレイクに至るまで、数多くの「悪者」の声を演じてきた飯塚昭三(いいづか・しょうぞう)の名前からの引用だよな(笑)。


 そればかりか、「ソガニックビーム!」などと叫ぶや、年長マニア層には聞き覚えのある女性の高笑いとともに光線が発射されるという必殺ワザもあった!
 こちらも、『電子戦隊デンジマン』(80年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120205/p1)と『太陽戦隊サンバルカン』(81年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120206/p1)に連続して登場したヘドリアン女王や、『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(92年)の魔女バンドーラを演じた故・曽我町子(そが・まちこ)の名前からの引用だろう。というか、あの特徴的な高笑いの音声そのものが……(爆)


 スーパー悪者ワルドの声優を務めた関智一(せき・ともかず)は、本作では明らかに先述した飯塚氏の名調子を意識して演じている。悪者ワルドによる数々の敵首領の名前や敵組織名を織り込んだ言葉遊び的なセリフも脚本上にすべての記述がなかったのであれば、その一部は氏の当意即妙なアドリブであった可能性が高い(笑)。大の特撮好きであるどころか実に濃ゆい特撮オタクとしても知られる氏ならではの、歴代戦隊や先人の声優や悪役俳優たちに対するリスペクトたっぷりでユカイ極まりない演技もまた好印象であった。


ゼンカイザーが劇場版限定アイテムで反撃開始! 銃型変身アイテムを通じた特撮評論の今昔!


 ゼンカイザー=介人は幼いころに両親からもらった、赤い歯車型で歴代戦隊レッド多数が描かれている歯車状のアイテム・センタイギアを使って、スーパー悪者ワルドに対抗しようとする。
 その介人の両親の名前が「功(いさお)」と「美都子(みつこ)」!! ……って、これまた『ゴレンジャー』の主題歌『進め! ゴレンジャー』などを歌唱した、70年代のアニメ・特撮ソングの2大レジェンドである、ささきいさお堀江美都子(ほりえ・みつこ)の下の名前からパクっていた!(笑)


 ところで、そういう目線で見てみると、介人を演じる駒木根葵汰(こまぎね・きいた)の髪型や顔の輪郭(りんかく)、太い眉(まゆ)に目つきなどは、ロカビリー歌手から俳優へと転向しようとしていた1960年代後半当時の若き日のささきいさおに似ている気がしてくるのだ(笑)。
――当時の氏は、特撮時代劇『妖術武芸帳』(69年・東映 TBS)の主演をはじめ、『怪奇大作戦』(68年・円谷プロ TBS)第14話『オヤスミナサイ』、『恐怖劇場アンバランス』(73年 製作は69~70年・円谷プロ フジテレビ)最終回(第13話)『蜘蛛(くも)の女』などのジャンル作品にも「佐々木功(ささき・いさお)」の名義で出演して、俳優への転身を図っていた。
 もちろんその後、アニメ歌手に転向する直前には、スーパー戦隊作品の元祖だともいえるタツノコプロ製作の大人気アニメ『科学忍者隊ガッチャマン』(72年)のニヒルで喧嘩っ早い副リーダーこと「コンドルのジョー」の声優も務めており、同作での名演も忘れてはイケナイ!――



 介人は「大事なものだから……」とお財布(さいふ)に入れていたセンタイギアを取り出した!
――宙に浮いたお財布からセンタイギアが飛び出してくる映像では、同時に周囲に散らばっていくおカネがCG表現による5円玉&1円玉の小銭ばかりとなっており、カッコよさと同時にここでも観客の笑いを誘っている(笑)――


 そして、そのセンタイギアを攻撃用の銃と変身アイテムを兼ねているギアトリンガーの上部のフタの中に弾倉のように格納する!
――銃口の上部にも、介人の両親がつくった小鳥型のマスコットメカ・セッちゃんにも似た黄色いクチバシの赤い鳥の顔がデザインされているのにも要注目だ!――


 さらに、ギアトリンガーの右側面にある取っ手つきのハンドルをグルグルと回し出す!


 近年の特撮ヒーローの変身アイテムには必ずこういうアナログな可動部分がついている。リアルであるか否かSF的であるか否かといったら、それらとは相反するものではあるけれど、やはり子供でもあるいは大きなお友達でも可動部分があると動かして遊んでみたくなるものではないか!?(笑)
 こういった人情の機微を玩具業界では「プレイバリュー」という概念で総称するようにもなった。特撮マニア諸氏もその観点から変身アイテムの良否を評価するようになって久しいのだ。
――実は20世紀の特撮オタクたちは、こういった玩具的な要素をガチで「子供っぽい」だの「幼稚」だの「商業主義」だのとボロカスに罵倒して、全否定的に批判をしていたのだ(爆)――


歴代の戦隊レッドが全員集合! 全員が名乗りを上げるべきだったのか!? 「間」と「テンポ」の重要性!


 ハンドルをグルグルと回してエネルギーの充填が終わるや、第1作『秘密戦隊ゴレンジャー』~第44作『魔進戦隊キラメイジャー』に至るまでの歴代「45大レッド戦士」(!!)が、ギアトリンガーを通じてセンタイギアから飛び出してきて、ゼンカイジャーの眼前に大集結を果たした!!
――第42作『ルパンレンジャーVSパトレンジャー』はきちんとルパンレッドとパトレン1号が2大レッド扱いで登場してくれているので、44大戦隊でも総勢45人となっていたのだ!(感涙)――


 アカレンジャー~キラメイレッドに至る歴代レッドが次々に名乗りをキメて、そこに登場作品のタイトルロゴがデジタル合成でかぶっていく!
 先述したセッちゃんがナレーション形式でその作品名を早口で読みあげていく演出には、古い世代の特撮マニアや子供たちのみならず、一般層の親たちも自身がかつて視聴していた作品が一瞬脳裏(のうり)によみがえるほどに感無量だったことだろう!


 ……と思いきや、 歴代レッドの人数が多すぎるので、次第に4分割・16分割画面になっていく。そして、そのすべてを読みあげずに「以下略!」ってなんやねん!?(笑)


 前作の『キラメイジャー エピソードZERO』の尺は約30分だったが、本作『赤い戦い! オール戦隊大集会!!』はそれよりかは数分程度は短かかったようだ――後日付記:27分枠となっていた――。
 本作と同時上映であった『キラメイジャー THE MOVIE』が約40分、『リュウソウジャー 特別編』が約15分であり、トータルで約1時間20分程度の尺数は、小学生はともかく幼児が集中力を持続することができるギリギリの時間だろうから、ちょうどイイところだろう。


 もちろん、「メモリアル作品」の劇場版としての観点からすれば、45作品をかぞえるスーパー戦隊の壮大な歴史を占めている、シリーズ中後盤の作品群についてを「以下略」にしてしまったのは惜しい。
 こういう場面でこそ、子供たちを啓蒙(けいもう)できるのだし、今の若いパパ・ママ層にも彼らが子供時代に観ていればシリーズ中期のスーパー戦隊のレッドが画面で名乗りを上げれば、その場面では懐かしがってもらえる有効なシーンともなりうるからだ。


 とはいえ、映像作品というものは、仮に脚本がまったくの同一内容であったとしても、「間(ま)」とか「テンポ」といったものの扱い・演出で、その仕上がりは天と地ほどの差が出てしまうものなのだし、実はそこで傑作か駄作かといった相違も発生してしまうものなのだ。


 全スーパー戦隊を紹介することの効能など、スタッフの全員がわかっていたことでもあろうし、しかし全スーパー戦隊を紹介することで「間延び」して「ダレて」しまったことで、そこで観客や子供たちの集中力も途切れてしまって、作品の流れも寸断されてしまい、ラストバトルも盛り上がらないとなってしまっては元も子もないのである。
――往年のビデオ販売作品『百獣戦隊ガオレンジャーVS(たい)スーパー戦隊』(01年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20011102/p1)もトータルでは傑作ではあったものの、高額なビデオソフトを購入できる年長マニア向けの趣向であったとはいえ、中盤では往年の戦隊ヒロインたちの名場面を延々と流してしまったことで「間延び」してしまっていたものだ――


 歴代レッド個々人の連続名乗りを観たい方々は、『百獣戦隊ガオレンジャーVSスーパー戦隊』で口直しをしよう!(笑)――やはり同作における25人連続名乗りくらいが限界だろう(汗)―― しかしその上で、作品自体のテンポとも調整しつつ、4分割画面のままで次第に早口になっていき、各戦隊が戦隊名ヌキでのレンジャー名だけの1~2秒程度の照会になってもイイので(笑)、全スーパー戦隊を紹介してほしかったという気持ちもやはり残るのだ。


歴代レッドのバトル増量、先代&先々代レッドからのバトンタッチ希望も、スタッフ想定内の要望か!?


 いつもの採石場いっぱいに展開されるクライマックスバトルでは、


・ゼンカイジャーVSスーパー悪者ワルド
・45大レッド戦士VS悪者大軍団


双方のバトルが並行しているハズなのだが、実はコレもゼンカイジャーVSスーパー悪者ワルドの最終決戦ばかりが映し出されるのみであった。
 そして、ゼンカイジャーが勝利するや、同時に「45大レッド戦士」によって倒されたらしい悪者たちも瞬時に消滅するといった演出になっており(笑)、「45大レッド戦士」のまともなバトルアクションは全然描かれることはなかった(汗)。
――おそらく多少は撮影されたものの、尺やテンポの都合でカットされたのだとも思われる…… いや、本作もまた突貫工事での製作だっただろうし、敵味方も含めれば総勢100名前後はいるであろう撮影なので、スーツアクターやスーツの脱着を手伝う補助スタッフへのギャラやロケ地への人員&着ぐるみスーツを運搬する複数車両のバスやトラックなどのレンタル費用や弁当代などの総額を考えれば1日だけしか拘束できなかっただろうから(2日にわたれば諸経費も2倍になるのだし・汗)、まともなバトルアクションの撮影自体がなされていなかったりして(笑)――


 なので、『ゼンカイジャー』の「お試し視聴」としてならば申し分ない出来だと思う。しかし、『赤い戦い! オール戦隊大集会!!』と名づけられた「メモリアル作品」としてはやや充実感には欠けていたかもしれない。


 突貫製作のウラ事情をも忖度(そんたく・笑)ができてしまう大きなお友達としては、それらは45歩ほど(笑)は譲ってもよいだろう。
 しかし、同時上映作品のスーパー戦隊のメンバーになることが事前にわかっていたのだから、各作での主役を張っていたキラメイレッドとリュウソウレッドにはご本人たちに声をアテてもらって、一言や二言くらいはゼンカイザー=介人に先輩としてのアドバイスやバトンタッチを与えるようなシーンも観てみたかったとも思うのだ――それとも、そういうシーンも存在はしていたけど、これもまた尺の都合でカットされたのかもしれないなぁ(汗)――。


 本作も含めた3本立て映画『スーパー戦隊MOVIEレンジャー2021(ニイゼロニイイチ)』(21年)の短いプロローグとして配された、キラメイレッド・リュウソウレッド・ゼンカイザーの3大レッドによる観客へのごあいさつでは、テレビシリーズに先駆けてこの映画で最速デビューを果たすことになったゼンカイザーに対して、キラメイレッドとリュウソウレッドが「君だれ~?」などとたずねる描写があった。やはりコレと係り結びとなるような場面を、本作『ゼンカイジャー THE MOVIE』の中でも観てみたかったと思うのだ。
 リュウソウレッドやキラメイレッドのちょっとした「声の出演」だけでも、予算や契約やスケジュールなどに影響してくるのだろうから大変なこともあるのだろう。しかし、「顔出し出演」した場合のギャラと比べればはるかに少額ではあるのだし、そういうところでもう一押しだけがんばってほしかった気はする。


 とはいえ、『スーパー戦隊MOVIEレンジャー2021』のような「3本立て」映画の理想的なつくり方は、2000年代末~2010年代前半に新旧2大仮面ライダーが共演する「正月映画」として公開されていた『仮面ライダー×仮面ライダー MOVIE大戦(たいせん)』シリーズ(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101220/p1)のような3部構成だったのかもしれない。
 たとえば、『キラメイジャー』と『リュウソウジャー』各々(おのおの)の世界での物語を描いたあとに、『ゼンカイジャー』の世界に一時的に2大戦隊世界が融合してしまったり、2大戦隊のメンバーが『ゼンカイジャー』の世界に召喚されてくる、といったような作劇とするのだ。


 しかしこれもまた、アニメ作品であれば声優たちを遠方のロケ地ではなく都内の録音スタジオに集めたり、あるいはスケジュールの都合で全員集合ができなくても後日に「別録り」すれば済むだけなのだけど、他にも仕事を持っている場合もあるであろう3大戦隊のナマ身の役者さんたちを全員集合させるようなスケジュール調整は実に困難を極めることだろうし、そのために要するギャラも、低予算作品である東映変身ヒーローものではバカにはならないハズなのだ。


 ここまで述べてきたような我々アマチュアでも思いつくようなクレームは、プロのスタッフたちであればすでに想定していたことでもあるだろう。シナリオなり準備稿なり初期構想などではこれらの要素は満たされていた可能性も高いのだ。仮にそれらが満たされていなかったとしても、スタッフ間での会議や雑談などでも当然に議題にされていた可能性は高いだろう。
 しかし、理想としてはそうしたいと思っても、結局は形而下(けいじか)の雑事や些事(さじ)によって、モノづくりは限定されてしまうものなのだ。それが我らの住まう並行世界のひとつである「現実ワールド」(笑)でのキビしい現実なのである(爆)。


 だから、スタッフは限られた所与の条件下で最善を尽くすしかないのだ。「作品批評」の方でもそんなウラ事情に対してもスポットを当てたり忖度をしたりして、その上で作品を解題・批評もしていくべきなのである。


本作ではスーパー戦隊各作が独立した「並行世界」扱いでも、メタ的にはつながっている「歴史」だった!


 クライマックスバトルの直前、


・ゼンカイザーは『秘密戦隊ゴレンジャー』のアカレンジャー
・ゼンカイジュランは『恐竜戦隊ジュウレンジャー』のティラノレンジャー
・ゼンカイガオーンは『百獣戦隊ガオレンジャー』のガオレッド
・ゼンカイマジーヌは『魔法戦隊マジレンジャー』のマジレッド
・ゼンカイブルーンは『轟轟戦隊ボウケンジャー』のボウケンレッド


から、それぞれのスーパー戦隊のパワーを秘めているセンタイギアを授かった。


 そして、ラストシーンでアカレンジャーは変身前の海城剛(かいじょう・つよし)の姿に戻って(!)、ゼンカイジャーに激励のメッセージを贈るのだ!


 これらのシーンで観客が大きな感動に包まれてしまうのは、海城剛を演じた誠直也(まこと・なおや)が久々の客演を果たしてくれたからだけではない!
――氏登場の場面はおそらくロケ地での撮影ではなく、スタジオで撮影したものをデジタル合成したものだろうが、今の時代の技術だと素人目にはもう合成だとはわからないだろう!――


 ゼンカイジャー個々人が、各々のデザインの元ネタとなっている先輩戦隊レッドから、直々にセンタイギアを手渡しされるかたちでバトンタッチされたことで、世界を防衛する任務と正義の熱い魂が継承されたことを、観客たちもビジュアルのかたちでダイレクトに感じ取ってしまうからなのだ!


 ビデオ販売作品『超力(ちょうりき)戦隊オーレンジャー オーレVS(たい)カクレンジャー』(96年)以降、いくつかの例外はあったものの、それまでは各作が独立した世界観だとされてきたスーパー戦隊シリーズが同一世界での出来事であったとされるような大転換を迎えた。
 本作『ゼンカイジャー』ではそれをまた引っ繰り返しており、歴代スーパー戦隊シリーズ個々の作品はまたまた別世界であり、並行宇宙での出来事だとされてしまったのだ。


 しかし、そうは云ってもセンタイギアなる「メダル」のかたちで、あるいは「メダル」から召喚されたとはいえ、ニセモノではなく半ばは本人たちであるとしか云いようがない歴代戦隊レッドたちがお手軽に大量に登場してしまった以上は(笑)、もうこれは幼児が観ようが大きなお友達が観ようが、実質的には本作においても歴代スーパー戦隊シリーズは並行宇宙を越境してメタ的には「番号」(笑)でつながっている壮大な「歴史」なのだということを改めて実感させられる描写になっているのだ。
――80~90年代の戦隊マニアたちは、幼児誌でのカラーグラビア記事での歴代レッド集合写真などではともかく、いくつかの例外を除いて歴代スーパー戦隊が同一世界の出来事ではないとされていることに漠然とした不満を抱えていた(汗)。そんな過去を思い起こしてみると、かつて観たかったスーパー戦隊の在り方がとっくのとうに実現している今はまさに夢のようでもあるのだ!――



 テレビシリーズの『ゼンカイジャー』のメイン監督であり、この劇場版でもメガホンをとった中澤祥次郎(なかざわ・しょうじろう)監督は、意外にもマニア上がりではなかったようだが、10年前のスーパー戦隊シリーズ第35作の「メモリアル作品」として製作された戦隊マニア泣かせの名作『海賊戦隊ゴーカイジャー』のメイン監督でもあった。
 歴代スーパー戦隊シリーズを「一本線の歴史」だとしていた『ゴーカイジャー』とは異なる料理方法が要求されてしまう、歴代戦隊世界を「並行世界」だとして扱う『ゼンカイジャー』ではある。しかし、期待してその料理方法を注視していきたいところだ。

2021.3.5.


(了)
(初出・当該ブログ記事)


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 映画『機界戦隊ゼンカイジャーVSキラメイジャーVSセンパイジャー』(22年)が公開記念! とカコつけて……。映画『スーパー戦隊MOVIEレンジャー2021』(21年)ワクで上映された『魔進戦隊キラメイジャー THE MOVIE ビー・バップ・ドリーム』&『騎士竜戦隊リュウソウジャー 特別編 メモリー・オブ・ソウルメイツ』評をアップ!


『魔進戦隊キラメイジャー THE MOVIE ビー・バップ・ドリーム』&『騎士竜戦隊リュウソウジャー 特別編 メモリー・オブ・ソウルメイツ』 ~TV本編ともリンクさせた劇場版の作り方とは!?


映画『スーパー戦隊MOVIEレンジャー2021』

東映系・2021年2月20日(土)公開)
(文・久保達也)
(2021年3月5日脱稿)

*新型コロナ禍に翻弄された『スーパー戦隊MOVIEレンジャー2021』


 スーパー戦隊シリーズの放映終了間近の最新作と直近の前作の世界観とをクロスオーバーさせた夢の競演作品は、1996年の東映Vシネマ・ブランドのビデオ販売作品『超力(ちょうりき)戦隊オーレンジャー オーレVS(たい)カクレンジャー』(96年)ではじまった。
 2009年の『劇場版 炎神(エンジン)戦隊ゴーオンジャーVSゲキレンジャー』(09年)以降は、東映映画の「新春興行」としても昇格する。
 さらに、2010年の『侍戦隊シンケンジャーVSゴーオンジャー 銀幕BANG(バン)!!』(10年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110124/p1)からは、放映開始目前である次回作の新スーパー戦隊をもお披露目させる役割も兼ね備えてきた。
 そんな冬期恒例のスーパー戦隊シリーズの映画『スーパー戦隊 MOVIE(ムービー)レンジャー 2021(ニイゼロニイイチ)』が公開された。


 周知のとおり、2021年1月7日(木)に新型コロナウィルス感染拡大防止の政策として首都圏をはじめ関西や中部などの地域に2度目の「緊急事態宣言」が発令された。当初は2月上旬までの予定であったハズが3月7日(日)までに延長されたために――首都圏以外は2月末に解除されたが――、「またしても公開延期か!?」という不安がマニア諸氏の脳裏をよぎったことだろう。


 前年度の2020年2月8日(土)封切だった新春興行『スーパー戦隊MOVIEパーティー』(20年・東映)では、


・最新作とその前作であるスーパー戦隊の競演を描いた「スーパー戦隊VS(ブイエス)」作品のかたちを踏襲して、『騎士竜戦隊リュウソウジャー』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191102/p1)と『快盗戦隊ルパンレンジャーVS(ブイエス)警察戦隊パトレンジャー』(18年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190402/p1)をコラボレーションさせた映画『劇場版 騎士竜戦隊リュウソウジャーVS(ブイエス)ルパンレンジャーVS(ブイエス)パトレンジャー』(20年・東映https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220507/p1
・放映を直後に控えた新番組『魔進(マシン)戦隊キラメイジャー』(20年)の実質的な「第1話」として製作された映画『魔進戦隊キラメイジャー エピソードZERO(ゼロ)』(20年・東映https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200322/p1


 以上の2本立てであり、次回作の新スーパー戦隊をそれ単独の1本の映画としてお披露目させる手法が採られるまでになっていた。


 しかし、本年2021年度の『スーパー戦隊MOVIEレンジャー2021』では、新型コロナ禍による製作遅延の影響か、残念ながらこの時期の恒例であった「スーパー戦隊VS映画」の公開はなかった。
 その擬似的な代替処置なのだろうが、新旧2大スーパー戦隊それぞれの単独映画と次回作の新スーパー単独映画として、


・当初は半年前の2020年7月23日(木・祝)の公開だったハズが7ヶ月も延期されてしまった映画『魔進戦隊キラメイジャー THE MOVIE(ザ・ムービー) ビー・バップ・ドリーム』(21年・東映
・『騎士竜戦隊リュウソウジャー』の続編ではなく、第32話『憎悪(ぞうお)の雨が止(や)む時』~第33話『新たなる刺客(しかく)』の間に起きた出来事を描いた短編映画『騎士竜戦隊リュウソウジャー 特別編 メモリー・オブ・ソウルメイツ』(21年・東映
・2021年3月7日(日)に放映が開始されるスーパー戦隊第45作『機界戦隊ゼンカイジャー』(21年)の初披露となる映画『機界戦隊ゼンカイジャー THE MOVIE 赤い戦い! オール戦隊大集会!!』(21年・東映


の豪華3本立てとなっていたのだ。3本立てといった多数の作品を上映する形式に、年長オタク世代は東映の往年の子供向け興行で完全新作とテレビシリーズのアニメや特撮のブローアップ版を上映していた『東映まんがまつり』(63~89年)を彷彿(ほうふつ)とした人もいたことだろう。
――『東映まんがまつり』自体も2019年春には復活して、2020年春にも公開! のハズだったのだが、これまた新型コロナ禍の影響によって同年夏休み時期に延期されている――


 2020年度には新型コロナウイルスによる病死や重たい後遺症を背負ってしまったり、ワクチンによる重度の副反応や失業してしまった人々のことをも配慮すれば、やはり不要不急のプチ・ブルジョワ的なゼイタク品にすぎなかったのだともいえるエンタメ業界は(汗)、どうしてもこの影響を抜きにしては語れないものがある。
 今回の『スーパー戦隊MOVIEレンジャー2021』にもそういったことが色濃く表れていた。そのことも念頭に置きながら、各作品について語らせていただこう。


映画『魔進戦隊キラメイジャー THE MOVIE ビー・バップ・ドリーム』


 本来は2020年夏興行の作品であり、本作と同時上映の予定であった作品が、同年12月18日(金)まで公開が延期されることになった映画『劇場版 仮面ライダーゼロワン REAL×TIME(リアルタイム)』(20年・東映https://katoku99.hatenablog.com/entry/20211114/p1)である。
 同作は撮影自体が新型コロナ禍の影響で延期となったこともあり、『仮面ライダーゼロワン』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200517/p1)のテレビシリーズ終盤のストーリー展開の中で起きた出来事ではなく、その最終回(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200921/p1)から3ヶ月後に起きた事件を描いた続編・後日談へと内容が修正されることになった。
――そのことが功を奏して、おそらく当初に想定されていた内容よりも観客たちにより深い感動を与えることになったと思えば、「善悪はあざなえる縄のごとし」なのであって、この新型コロナ禍も全面的には悪いものでもなかったともいえるのだ――


 本作『魔進戦隊キラメイジャー THE MOVIE ビー・バップ・ドリーム』が公開延期の果てについに公開されたことに対して、『スーパー戦隊MOVIEレンジャー2021』のパンフレット(東映事業推進部・2021年2月20日発行)に掲載された山口恭平(やまぐち・きょうへい)監督やキャストたちへのインタビューによれば、以下のような経緯となっていたようだ。


・本来は2020年春に予定されていた撮影自体は延期になった
・4~5月当時に出されていた第1回「緊急事態宣言」が解除されて間もない6月~7月にかけて撮影されていた
・そのために、8月最終週に放映されたテレビシリーズ最終回の撮影後に改めて映画の撮影が再開されることになった『劇場版ゼロワン』とは異なり、公開延期による内容自体の変更は生じていない


 以上の発言を100パーセント、真に受けてしまうのはマニアの態度としてはいかがかとは思うものの、概略としてはこのとおりであったのだろう。


 つまり、本作は時系列的にはやはり「夏映画」なのである。よって、この時期のテレビシリーズとも連動していたために、エピソード25『可愛いあの巫女(かわいいあのみこ)』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220501/p1)にて鮮烈なデビューを飾った、敵組織・ヨドン軍の首領・ヨドン皇帝直属の女秘書官・ヨドンナは残念ながら登場していないのだ。


 ただ、すでに夏前に撮影が終了していた映画が、実に半年以上も公開を延期せざるをえなくなった理由の一端を、この劇場版限定で登場したゲスト敵キャラの設定に対して、マニア諸氏も直感的に求めてしまったのではなかろうか?


壇蜜が演じる劇場版ゲスト悪役・ミンジョはテレビ本編の悪役・ヌマ―ジョの妹だった!(ことが公開延期の一端か!?)


 2009年に遅咲きのグラビアアイドルタレントとしてデビューし、特撮マニアから見れば70~80年代自主映画上がりの鬼才・河崎実(かわさき・みのる)監督のバカ映画『地球防衛未亡人』(14年・トラヴィス)主演や、雨宮慶太監督&井上敏樹脚本コンビによる深夜特撮『衝撃ゴウライガン!!』(13年)出演をはじめ、多方面で活躍中のタレント・壇蜜(だん・みつ)が演じるヨドン軍の「悪夢のマエストロ」(笑)を自称する魔女・ミンジョ。


 このゲストキャラクターは、『キラメイジャー』エピソード21『釣れ、ときどき達人』~エピソード22『覚悟はいいか そこの魔女』に登場した「淀(よど)みの海」に棲(す)む魔女・ヌマージョの妹として設定されていたのだ!
――ちなみに、パンフ掲載のインタビューによれば、1980年生まれの壇蜜は世代的に、『電撃戦隊チェンジマン』(85年)や『仮面ライダーBLACK(ブラック)』(87年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20001015/p2)どころか『世界忍者戦ジライヤ』(88年・東映 テレビ朝日)まで観ていたそうだ(笑)――


 姉であるヌマージョが目から上の部分に紫色の仮面をつけて、顔の下半分はナマ身の白い肌の鼻と口が露出したような造形の小顔のマスクだったことを踏襲して、ミンジョの方も怪人態になると赤い仮面に黒い衣装になっている。杖(つえ)でもある死神が持つ大鎌(おおかま)のような武器を手にするも、シースルーの黒いレースの布地のようなマントに黒網タイツ、青い和装の靴を着用することで「妹らしさ」も演出している。
 この怪人態は壇蜜が演じる人間態がマスクを付けただけの趣(おもむき)になっているが、網タイツ姿の軽装で戦う女敵キャラなどは、それこそ先述した『ジライヤ』に登場した女忍者たちを彷彿とさせる。マニア的にはスーツアクトレスのどなたが演じていたのかも気になるところだ(笑)。


 ヌマージョが登場したエピソード21~22は、2020年8月30日(日)と9月6日(日)に放映された。
 周知のとおり、『キラメイジャー』は新型コロナの影響による撮影の中断で、序盤の第1クール終盤の時点で放映を5週にわたって休止していた。
 これが理由でヌマージョがまだ登場していないのに、その妹だと名乗ってみせるミンジョの方が先に登場してしまうのは矛盾となってしまうことから、公開も延期になったのだ……と推測したのだが、エピソード21~22は本来ならば7月26日(日)と8月2日(日)の放送だったのだ(汗)。
 つまり、「夏映画」が予定どおりに公開されてもミンジョの登場は7月23日(木・祝)だったりするので、筆者の直感的な推測とは異なり、コロナ禍による放映中断があろうがなかろうが、実はミンジョの方がヌマージョよりも先に登場していたのであった(爆)。


 これまでのスーパー戦隊シリーズの劇場版では、レギュラー悪の組織とは縁(えん)もゆかりもさしてないポっと出のゲスト悪役なども登場したものだ。それはそれでテレビシリーズ本編のストーリー展開には影響を与えないで済むという利点はある。だとしても、テレビシリーズの悪役キャラとも何らかの因縁があるゲスト敵キャラが登場した方がドラマチックではあるので、ミンジョの出自設定それ自体は好ましいものではあるのだ。


 ただまぁ、劇場版というものはテレビシリーズを観ている子供たちの全員が観に行くような性質の作品ではない。その割合は良くも悪くもかなり低いものにはなるだろう。
 しかしその逆に、劇場版を観に来た子供たちのほぼ100パーセントは、原典であるテレビシリーズを鑑賞しているであろうことは間違いがないことなのだ(笑)。
 その意味では、劇場版に先行して登場していたゲスト敵キャラが、あとからテレビシリーズにおいて回想シーンなどのかたちで言及されたとしても、未見の幼児たちにとっては未知の事象でもあるから、「そうなっていたのだ」ということの認知はできても、少々の違和感や疎外感は残ってしまったことだろう。
 しかし、テレビシリーズの方で先行登場していた敵キャラの妹が、のちに公開された劇場版の方に登場する分には、こういったリスクはほぼなくなるのだ。
 テレビシリーズでも以前に見掛けたことがあったあのキャラの血縁者だ! 2代目! 3代目! ジュニアだ! 再生! 改造だ!……といったかたちで(笑)、劇場に観に来ていた子供たちにもおおいにナットクがいくことでもあるだろうからだ。


 その伝で、テレビシリーズの方で姉のヌマージョが先行登場した上で、改めて劇場版の方にもその妹のミンジョが登場したという、その一点においてだけは、当初の半年後になってしまった公開タイミングもあながち悪かったワケではなかったのでもなかろうか?
 その意味では結果論ではあっても、本作もまた公開延期が功を奏して、新型コロナという天災を、転んでもタダでは起きないとばかりに天祐(てんゆう=天の助け)へと変えてみせたのではなかろうか?


 ヌマージョが初登場するエピソード21~22の放映は実際には8月最終週~9月第1週となった。その撮影も放映1~2ヵ月前の7~8月だとすれば、この劇場版の撮影時期である6~7月にはヌマージョ登場場面もまだ撮影ができていなかった可能性はある。
 つまり、テレビシリーズに放映中断が生じていても、この劇場版が予定どおりに「夏映画」として公開できた場合には、テレビシリーズにおけるヌマージョ登場の回想場面は挿入ができずに、説明セリフのみでの言及で終わってしまった可能性も高いのだ。
 先のインタビューでは、公開延期による内容の修正はなかったとのことであった。しかし、この劇場版では回想シーンとして挿入されたテレビシリーズでのヌマージョ登場場面については、一度は「夏映画」として完成したバージョンには実は間に合っておらず(笑)、あとから編集で改めて追加された可能性も高いのではなかろうか?


 けれど、仮にコロナ禍がなかった場合でも、たとえ劇場版の方でテレビシリーズのヌマージョ登場よりも数日だけ先行してミンジョを登場させること自体は、製作ウラ事情などがわかってはいない子供たちにとってはやや不親切なことではある。しかし、この日数程度の微差であればたしかに些事(さじ)ではあるのだ(笑)。
 テレビと夏映画で同時期にヌマージョ&ミンジョの姉妹を登場させることで、視聴者&観客にも鮮烈に印象づけるという戦略自体も間違ってはいないのだし、有効にも機能しただろうとは思うのだ。
 そうした試みが頓挫したこと自体が『キラメイジャー』という作品にとっては致命的な弱点になっている……などといった極端なことまでは思わないものの、やや不運なことではあっただろう。


*夢の中の世界! 「夏映画」にふさわしい「夏祭り」! キラメイブルー時雨も大活躍!(笑)


 本作では、先述した映画『キラメイジャー エピソードZERO』において描かれた、ヨドン軍による宝石の国・クリスタリアの侵攻の渦中に、本劇場版におけるキーアイテムである宝石・ドリームストーンを実はミンジョが持ち出していたという「もうひとつの真実」が語られている。
 加えて、テレビシリーズでもレギュラーの敵幹部を務めている鬼将軍・ガルザを陥(おとし)入れたことで、ガルザに代わってミンジョ自身がヨドン軍での君臨(くんりん)をたくらんでいるなどといった強敵悪党ぶりも見せつけてくれていた。
 もちろん後付けではあろうが、『エピソードZERO』も含めたテレビシリーズ前半で描かれてきた世界での出来事にも接点を持たせたキャラクターとしつつ、敵幹部クラスにも匹敵する潜在的な実力を兼ね備えた存在だとして描かれていたことについては、おおいに評価したいところだ。


 この劇場版ではミンジョが宝石・ドリームストーンに呪(のろ)いをかけたことで、ストーンが「夢の宝石」ならぬ「悪夢の宝石」と化して、熱田充瑠(あつた・じゅうる)=キラメイレッドと射水為朝(いみず・ためとも)=キラメイイエローのコンビが、加えてクリスタリア宝路(くりすたりあ・たかみち)=キラメイシルバーが、それぞれ睡眠中に夢の世界・ユメーリアに閉じこめられてしまうという事件が描かれている。
 そして、速見瀬奈(はやみ・せな)=キラメイグリーン、押切時雨(おしきり・しぐる)=キラメイブルー、大治小夜(おおはる・さよ)=キラメイピンクらが、充瑠らを取り戻そうと夢の世界に潜入して奮闘する展開になっている。


 ストーリーのほぼ全編に渡ってキラメイジャー各自を分断させるという手法は、もちろん最後に6人が「強者集結」して「逆転勝利」をおさめるスーパー戦隊ならではの「カタルシス」をもたらすための実に「王道」的な作劇だともいえるだろう。
 そしてこの手法は、個々のキャラの活躍を存分に描くことで各キャラの人物像をさらに掘り下げるためでもあり、それがクライマックスのバトルシーンでも、バトルとドラマを遊離させずに、バトル自体にも高いドラマ性をもたらすこととなっていたのだ。



 夢の世界への行き来が可能だという追加設定(笑)がなされたクリスタリアの王女さまで、キラメイジャーの後見人のひとりでもあるレギュラーキャラ・マブシーナ姫の協力で、キラメイジャーでもある瀬奈・時雨・小夜の3人は制限時間付きでのユメーリアへの潜入に成功する。
 しかし、ユーメリアの世界の中にあった白昼下(はくちゅうか)であることを映像処理的に強調した「夏祭り」の縁日(えんにち)の屋台が並んでいる神社の境内(けいだい)の場で、3人はミンジョから徹底攻撃を受けてしまう!


・瀬奈と小夜は浴衣(ゆかた)姿
・時雨は夏祭りの青いハッピ姿


 夢の世界の中での3人の出で立ちは、完全に「夏映画」を想定して製作されていたことの名残りなのだろう。山口監督によれば、撮影現場ではコロナによる公開延期の可能性を想定して「夏」を意識した場面はやめておこうという声は上がらなかったようだ。


 そういえば、キラメイジャーの後見人で地球防衛組織・CARAT(カラット)の代表・博多南無鈴(はかたみなみ・むりょう)も、「夏映画」でもないのに年中、アロハシャツ姿であった(笑)。


 それは冗談だが、「夏祭り」といっても夢の中の世界での「幻想性」「非日常性」を前面に押し出すということが、このシーンのコンセプトである。だから、公開時期がズレて「夏映画」ではなくなったとしても問題はなかろうという判断だったようで、それもまたもっともなことではあったのだ。
 だが、それと同時に「夏祭り」という素材自体をどうしてもハズせなかった、きわめて重要な描写があったことも大きかったのではあるまいか?


 それは大きめの「カキ氷器」の存在である(笑)。ミンジョの魔法によって、時雨が頭部の左右から「カキ氷器」でサンドイッチされて(!)、その頭上の頭髪に大量の「カキ氷」が降ってくる描写があるからだ(爆)。


――この一連の前後における、ミンジョの魔法でミクロ化されて金魚鉢(きんぎょばち)の中に閉じこめられてしまった小夜の主観で、鉢の外からのぞきこんでくるミンジョを、中央が膨らんで周囲が遠景に退いて映って見える魚眼レンズでとらえたカットや、小夜を金魚すくいのアミですくってビニール袋につめこんで「ホ~~ラよ!」っと放り投げるミンジョを演じる壇蜜の愉快犯に徹した演技も実によかった――


 その際に、回想としてエピソード3『マンリキ野郎! 御意見無用』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200712/p1)の映像が流用されていた!
 このエピソードは同話のゲスト敵怪人・マンリキ邪面によって大きな万力(まんりき)を頭部の左右からハメられてしまった時代劇俳優でもあるイケメンの時雨が、本当は痛くて痛くてタマらないのにもかかわらず、人前ではカッコ悪い部分を見せたくないがために必死でヤセ我慢をして、なぜだか不条理にもそのままの格好で時代劇映画の撮影が続行されていく(爆)といった珍エピソードでもあったのだ。


――ちなみに同話のサブタイトルも、東映の往年の人気映画シリーズ『トラック野郎 御意見無用』(75年・東映)のパロディである(笑)――


 『エピソードZERO』やエピソード1~2では、クールなイケメン役者として描かれたばかりの時雨が、エピソード3で早くもネタキャラと化したことには、近年のスーパー戦隊シリーズではいつものことだとはいえ(爆)、当然に賛否両論はあるだろう。
 21世紀以降のスーパー戦隊シリーズでも、時雨のようなクールなキャラがコミカルな面を見せるのは第3クール以降などの場合が多かったものだ。しかし、個人的には時雨が開幕早々にネタキャラ化したことには賛同する立場だ。


 前作『騎士竜戦隊リュウソウジャー』のバンバ=リュウソウブラックなどは終盤までコワモテのままで、それもまたひとつの個性ではありキャラの立て方でもある。
 しかし、やはり今時の「子供番組」として主人公たちの親しみやすさを強調することを、ストーリーや作劇的技巧などではなく登場人物の演技などでも表現するのであれば、『キラメイジャー』の明朗快活な作品カラーからしても、カッコいい系はもうひとり為朝がいるので、時雨のネタキャラ化もアリだったとは思うのだ。


 頭に「カキ氷器」をハメられてしまった時雨は「悪夢の再来!」だのとあわてふためく(笑)。
 我々視聴者・観客たちにとっても、時雨といえば即座に頭を巨大な万力に挟まれた姿(爆)が思い浮かぶほどに、あのエピソード3はカッコいいのにコミカルな時雨のキャラを確立した、90年代以降のスーパー戦隊シリーズらしさに満ちあふれた良編ではあった。
――70~80年代まではゲスト敵怪人はコミカルなことをやらかしても、戦隊メンバーたちはここまでオーバーアクションのコミカルな演技は披露しなかったものなので(笑)――


スーパー戦隊恒例の途中参加の「6番目の戦士」が「夏映画」で活躍することの困難!(笑)


「キラメイシルバーの登場は例年の追加戦士よりも早かったので、そこはラッキーでした。去年の『騎士竜戦隊リュウソウジャー』の映画も観たのですが、タイミング的な問題で、リュウソウゴールドのカナロは冒頭に出てきてナンパするだけだった(笑)。宝路は、他のメンバーと別行動が多かったとはいえ、最後は6人で変身して、みんなで一緒に戦っているので、そこは良かったなって」

(クリスタリア宝路役 庄司浩平(しょうじ・こうへい)インタビュー 『スーパー戦隊MOVIEレンジャー2021』パンフ掲載)



 早いといえば、『キラメイジャー』では「6番目の戦士」ことクリスタリア宝路=キラメイシルバーは、第1クール終盤のエピソード12『ワンダードリルの快男児』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220501/p1)で初登場していた。
 テレビシリーズの放映中断がなければ、同話は本来は2020年5月24日(日)、つまり同年7月23日に公開されたハズの「夏映画」の2ヶ月前の放映を予定していたのだ。
 氏の話にもあるように、『リュウソウジャー』の夏映画『騎士竜戦隊リュウソウジャー THE MOVIE タイムスリップ! 恐竜パニック!!』(2019年7月26日(金)公開・東映https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190818/p1)においては、「6番目の戦士」ことカナロはリュウソウゴールドにはいっさい変身せずに、ホントにナンパするだけであった(爆)。
 カナロが『リュウソウジャー』に初登場したのは第14話『黄金の騎士』だったが、同話が放映されたのは2019年6月23日(日)であり、「夏映画」公開の1ヶ月前のことだったのだ。


 「夏映画」は映画作品であるだけにテレビシリーズよりも時間をかけて撮影する。前準備として通常は複数体が新規に登場する着ぐるみゲストキャラのデザインや造形などでも各々で1ヶ月は要することだろう。イベント性の高い映画だけに見応えと相応の尺数を要した特撮シーンのカット数や合成シーンにかける後処理なども必然的に多くなることから、テレビシリーズ中盤から参加する「6番目の戦士」登場編の撮影どころかその脚本執筆よりも数ヵ月は先行して製作に着手していることが常でもあるのだ。
 そして、スレたマニア諸氏からすれば、「6番目の戦士」の「変身前の中の人」と「変身後のヒーロー」の前後がともにあとから撮影した「別撮り」であって編集で追加挿入していることまでわかってしまったりもするだろう(笑)。


 夏映画『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー en film(アン・フィルム)』(18年)などでも、途中参加の戦士であるルパンエックスおよびパトレンエックスでもあった高尾ノエルが登場早々に退場してしまったりなど(汗)、スタッフたちのギリギリのところでの苦渋の撮影や編集が偲ばれてしまう。
 「6番目の戦士」であったリュウソウゴールドなどもおそらく着ぐるみスーツの造形自体も間に合わないと見込まれたために、特に玩具会社・バンダイあたりにはお詫びを入れに詣(もう)でに行ったり(爆)、特定個人が独断で決定できるような事項でもない重大事なので、スタッフやプロデューサー連中も会議を重ねた末に、涙を飲んでやむをえず……といったところでの処置だったのではなかろうか? などといった憶測なども想起されてしまうのだ。


 とはいえ、このへんの反省もあってスケジュール調整もうまく行ったのか、この劇場版では「6番目の戦士」ことキラメイシルバーも活躍ができている!――実際にはテレビシリーズの5週分が放映休止となったために、初登場のエピソード12が放映されたのは2020年6月28日であり、カレンダー・ベースでいえば、実は前年度のリュウソウゴールドよりも遅くなってしまったのだけど(笑)――


 そのおかげで、今年度の「夏映画」では宝路=キラメイシルバーもふつうに活躍しており、冒頭からキラメイシルバーVSミンジョの対決も描けている。
 宝路の義理の妹であるマブシーナ姫の回想として、平和だったころのクリスタリア国で、父のオラディン王、母のマバユイネ妃(ひ)、母国を裏切る前の叔父(おじ)のガルザとともに宝路が楽しく過ごしている描写なども挿入することで、地球とクリスタリアをまたがっている宝路の特殊な出自を改めて「絵」として観客に示すこともできていたのであった。


*「レム睡眠」モチーフの怪人! 輪投げモチーフの巨大怪獣! 夜霧の巨大特撮バトル!


 この「夏映画」のゲストキャラとしては、ミンジョが従えているゲスト敵怪人こと闇獣・レムードンなる等身大の怪人が登場している――夢を見ている際の睡眠状態を意味する「レム睡眠」の「レム」から採ったネーミングなのだろう(笑)――。
 相手を眠らせるという能力から、ヒツジがモチーフとなっているのは当たり前にすぎるものの、腕やヒザ、胸や腹など身体の各所にヒツジの頭部、それもヒツジというよりかは猛牛を思わせる獰猛(どうもう)な紫色の顔が造形されているカオス的なデザインである。劇場版ならではのボリュームがある造形によって、最強怪人としての趣が濃厚に感じられるのは好感が持てるところだ。


 加えて、このレムードンのみならず、先述した縁日の場面にはゲスト巨大怪獣であるワナゲヒルドンを登場させている――輪投げ用の棒を頭部のモチーフとした邪面獣であった(笑)――。
 この巨大怪獣の登場によって、瀬奈の相棒・魔進マッハ、時雨の相棒・魔進ジェッタ、小夜の相棒・魔進ヘリコといった、同作おなじみのクルマやメカ型でも意志を持ったレギュラーの巨大メカ生命体たちが颯爽(さっそう)と駆けつけてくるカタルシスにあふれた場面も構築できている。
 実景との合成による特撮巨大バトルが用意されているのも、物語の中盤で子供たちを飽きさせないための配分としては実に妥当なところだろう。


 ラストでは、巨大化した敵怪人ことレムードンにミンジョ自身が巨大な「邪面」と化して合体したミンジョレムードンVS戦隊巨大ロボ複数体とのバトルも描かれる。
 海面を手前に夜の湾岸を再現した特撮ミニチュアセットには夜霧(!)まで発生させており、それを照明で照らすことでリアルさと幻想性を両立させた特撮場面となっていて、いつものテレビシリーズともまた異なる劇場版ならではの「スペシャル感」をも醸(かも)し出していた。
 新造ミニチュアなのだろう背の高い鉄骨コンビナート群の工業地帯で展開される特撮巨大バトルも実にすばらしかった!


*魔進ザビューンもテレビ本編でのヌマージョとの因縁を忘れずに言及してみせることの意義!


 そこにサメと特急列車の特性を兼ね備えた、魔進ザビューンも駆けつけてくる!


 この魔進ザビューンもまた、テレビシリーズを鑑賞してきた方々であればご存じのとおり、ミンジョの姉・ヌマージョが登場したエピソード21~22でデビューを飾った意志を持ったメカ生命体であるのだ。


 そして、ミンジョがあのヌマージョの妹だと知っていたザビューンは、


「オレにとって因縁の相手だ!」


などと叫んでみせている!


 ヌマージョ&ミンジョの姉妹とともに魔進ザビューンもまた、本来ならば前年2020年の夏にテレビシリーズと劇場版で同時期に活躍を描くことで、視聴者と観客にちょっとしたサプライズを与えるねらいもあったようだ。


 『キラメイジャー』テレビシリーズでは、レギュラーの正義側と悪側のキャラクターに人物相関図的な関係性を多数持たせることで、その対角線同士の関係性を順繰りで描いていくことだけでも、人間ドラマを発生させることができている。
 しかし、「夏映画」限定のゲスト敵キャラの点描程度の出自設定だとはいえ、テレビシリーズの一時放映中止や劇場版の公開延期のために、劇場版とテレビとで敵キャラの設定が同時連動! といったことが果たされなかったことは、スタッフたちにとってはやや不本意なことだったかもしれない。


 けれど、逆に云うならば、先にテレビシリーズでヌマージョがまだ登場する前なのに、魔進サビューンに「ヌマージョの妹だ!」などと云われても「?」となってしまったことだろう。
 よって、子供たちにも先にテレビシリーズでヌマージョに対する認知をさせた上で、公開が伸び伸びになっていたこの劇場版を観に来た観客の100パーセント近くが知っているであろうヌマージョの妹を登場させた方が「!」といったサプライズがあったことだろう。
 つまり、このミンジョが登場する劇場版がこの時期に公開されたこと自体もまた、映画の神さまの配剤ではなかったか? とコジツケすることもできるのだ――あくまでもコジツケ・文学的レトリックであって、ガチでそこにオカルト的な神意などを観ているワケではありませんヨ(笑)――。


発端は敵幹部ガルザ! 今後のガルザの「光落ち」の伏線でありつつも、その困難をも同時に描く!


 本稿の発表は公開からまだ間もない時期を予定しているために、あまりにネタバレな詳細に対する記述は控えておこう。
 などと云いつつ、最大のネタバレをさせてもらうが(笑)、圧巻なのは本作で描かれた事件自体がテレビシリーズではレギュラー敵幹部として登場しているガルザが睡眠中に見ていた「夢」が発端(ほったん)であったと明かされたことだ。


 マブシーナ姫によれば、人々を夢の世界へと誘(いざな)うという宝石・ドリームストーンを使うことで、かつてのオラディン王は時々、マバユイネ妃・マブシーナ姫・義兄の宝路・叔父のガルザたちに心地よい夢を見させてくれてもいたというのだ――麻薬による幻覚や現実逃避のようにも見えてしまう映像なので、やや引っかかるところもあるのだが(笑)――。
 つまり、ガルザは過去にこの夢の世界・ユメーリアに来たことが幾度もあったということにもなるのだ!


 クライマックス直前の場面では、いまだに夢の中の世界からの脱出ができていない充瑠と為朝が、いつもの「鬼将軍」としての鎧(よろい)を脱ぎ捨てて、その素顔をさらしていた本来のガルザに遭遇する。そしてその場所は、かつて兄のオラディン王が見せてくれた夢の中の舞台であった、美しい花々が咲き乱れる平穏な庭園だったのだ!


 夢には人々の願望が反映されているとはよく云われるところではある。もしもガルザが完全に「鬼将軍」に染まりきっていたのならば、オラディン王が見せてくれた「良き想い出」としての場所なぞは、夢にも出てこなかったことであろう。
 つまり、ガルザは心の奥底では平和だったころのクリスタリア国にまだ未練が残っているということを、未就学児童に対してもビジュアルだけで理解させることができる描写となっているのだ。


 その一方で、自分を出し抜こうとしたミンジョに対してブチ切れたガルザは、その首をつかんで高々と持ち上げて、「キラメイジャーを倒したら許してやる!」などと無慈悲で激昂気質である悪党ぶり全開の捨てゼリフを残して、この映画からは退場していくのであった……


 同一キャラに対して、その善悪の両面を描いてみせるあたりがまたタマらないのだ。
 ガルザの声を担当している中村悠一(なかむら・ゆういち)による、悪党ではあってもイケメンなボイスによる演技もまた、このガルザの善悪両面性を感じさせることに貢献していた。



 ともすれば、劇場版限定のゲスト敵キャラを強調するがあまりに、テレビシリーズのレギュラー悪がまともに登場しない場合も、かつてのスーパー戦隊シリーズの劇場版では見られたものだ。
 それはそれで、悪の組織が劇場版での出来事を引きずらなくてもよいので整合性を考慮する必要性が減るという製作側での利点や便宜(べんぎ)もあったのだろう(笑)。
 しかし、連続テレビドラマとしてはそれはやや不自然なことではあったし、何よりも物語的にはイマイチ面白くない趣向なのだ。
 だから、テレビシリーズと劇場版が相乗効果で盛り上がりを得られるように計算されて作劇されており、シリーズ終盤でのガルザの改心の可能性をも伏線として描写できていたという意味では、「夏映画」としては公開ができなかったとしても「秋映画」としては公開してほしかった気はするのだ。
――ただし、繰り返しになるけど、そのことが『キラメイジャー』という作品の致命的な弱点などにはなっていないことはくれぐれも念のために指摘しておきたい。小さな瑕瑾(かきん。宝玉に付いていた小さなキズ)という程度ではあったのだ――


 この劇場版ではメインゲスト悪役とスーパー戦隊の活躍を描いたのみならず、ある意味ではこの劇場版の本スジからは脱線もしているガルザの「光落ち」の可能性までもが描けていた。こういったシーンは脚本や準備稿にはあっても尺の都合で撮影されなかったり、撮影されても最終的にはカットされてしまいそうなシーンではあるのだ。
 しかし、これらのシーンはきっちりと残されていた。これは近年のスーパー戦隊の「夏映画」が約30分だったことに対して、今回は約40分と尺が長くなったことも大きかったのだとも思われる。
 これもまた、比較的に長尺の映画『劇場版 仮面ライダーゼロワン REAL×TIME』とは同時上映にはならなかったことによる、公開延期が招いた功の部分であったのかもしれない。



 最後になるが、実に中性的で神秘的なドリームストーンの声を演じたのはナンと! かの庵野秀明(あんの・ひであき)監督の代表作にして、完結編映画『シン・エヴァンゲリオン』(21年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220306/p1)の公開も押し迫っているSFロボットアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』シリーズ(95年~)の主人公少年・碇シンジ(いかり・しんじ)の声などで知られる、今ではベテランの緒方恵美(おがた・めぐみ)であった!
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映画『騎士竜戦隊リュウソウジャー 特別編 メモリー・オブ・ソウルメイツ』


 「騎士」と「恐竜」をモチーフとした『騎士竜戦隊リュウソウジャー』。「恐竜」をモチーフとしたスーパー戦隊であることから、歴代の恐竜モチーフ戦隊たちとも同様に、関係各位は「王道」「明朗」「戦闘活劇」をねらっていたことは明白ではあった。
 しかし、特撮ヒーロー作品初参加のメインライターによるシナリオは、実際には近年の特撮ヒーロー作品としてはやや人間ドラマ志向のマジメな作風となっており、これが災いしてか「王道」「明朗」「戦闘活劇」といった方向にはハジけきれずに、近年のスーパー戦隊作品としてはやや「変化球」でシメっぽい印象が残ってしまったことが残念ではあった。
――もちろん、我々年長世代の原体験作品でもある70年代の日本のヒーロー特撮の方が、同作よりもよほどダークであったりシメっぽかったりもするのだが、今時の子供向け特撮としては、もっと明るく躁的な作風の方が、子供たちにも年長マニアたちにも好まれるであろうし――。


 中でも最も惜しいと思ったのは、リュウソウジャーたちの姿にもよく似ている紫色の最強の鎧(よろい)であったガイソーグ(鎧装具)の扱いだ。
 このカッコいいダーク戦隊ヒーローといったルックスのガイソーグは、シリーズを通じて複数人の変身者を経由していくといった変化球の「悪の鎧」扱いであった。
 しかし、最終的には「光落ち」してリュウソウジャーの「7番目の戦士」の変身スーツとして颯爽とカッコよく大活躍して、作品自体の活劇色やヒーロー性をも高めてくれるハズだと、子供たちも年長マニア諸氏も皆がそのように思っていたことであろう(笑)。


 リュウソウジャーたちと同じく恐竜時代のリュウソウ族出身の好青年に見えたものの、実はガイソーグに心を支配された敵役としての正体を明かしたナダ青年。
 リュウソウジャーの助けによって鎧の呪縛(じゅばく)から解放されて、第32話ではようやく仲間となることができていた。
 関西弁の戦士にして、この手の新人養成番組としては珍しく、演じている役者さんにも一番ナチュラルな演技力があって、主役としてキャスティングされても不思議ではなかったような存在感もあった彼であれば、第33話以降にレギュラーである「7番目の戦士」こと紫色の戦士・ガイソーグなりリュウソウパープルなどと名乗って大活躍して、作品自体の血液温度もおおいに高めてくれるのかと思いきや……
 いきなりの「退場」(爆)となってしまったことには、意外性はあってもカタルシスには欠如した詐欺的な意外性でもあったのだ(笑)。


*『騎士竜戦隊リュウソウジャー』第32.5話でもある哀感あふれる短編作品の是非!


 今回の「特別編」はその第32話と第33話の間に起きていた出来事を描いた「第32.5話」でもある。
 『リュウソウジャー』の東映側のチーフプロデューサーだった丸山真哉(まるやま・しんや)が自ら脚本を執筆し(!)、同作のメイン監督ではなかったものの、実は『リュウソウジャー』の監督陣では最も多く登板していた坂本浩一監督がアクション監督も兼任した、わずか15分の短編である。


 おそらく本来であれば、この『スーパー戦隊MOVIE』は「冬映画」恒例の『スーパー戦隊VS映画』であるところの映画『魔進戦隊キラメイジャーVSリュウソウジャー』(21年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220507/p1)をメインディッシュに据えたいところだっただろう。
 しかし、このコロナ禍でそれが叶わなかったための代替処置として、


・本作『騎士竜戦隊リュウソウジャー』の短編映画
・前述してきた公開延期に見舞われてきた『魔進戦隊キラメイジャー』の単独映画の初披露
・後述するスーパー戦隊次回作『機界戦隊ゼンカイジャー』の短編映画


 以上の3本立てで、看板的には前年度と同様の3大スーパー戦隊を登場させることで、例年の「冬映画」にも劣らない「お祭り感」や「メジャー感」を醸そうといったところが趣旨だったのであろう。
 その意味ではこの短編映画『騎士竜戦隊リュウソウジャー 特別編』もまた、『魔進戦隊キラメイジャーVSリュウソウジャー』の代替の一環として急遽、製作が決定したのであって、ロケ地も1カ所のみに限定されているので(!)、いかにも1~2日だけで撮影も完了(爆)させたような突貫工事で仕上げたのであろうことも偲ばれてしまうのだ(笑)。


 テレビ特撮『ウルトラマンタイガ』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210606/p1)においても、昭和のウルトラマンタロウの因縁(いんねん)の敵として設定されながらも、その出自や行動の動機については結局は語られなかった同作のレギュラー悪であるウルトラマントレギアを、動画無料配信サイト・YouTube(ユーチューブ)にて配信された短編作品『ウルトラギャラクシーファイト 大いなる陰謀(いんぼう)』(20年)では、後付けであってもようやく掘り下げていた。


 こういった発信媒体をまたいだキャラクターの個性や去就(きょしゅう)の補完はややマニアックにすぎる部分もあるかもしれないが、おそらく年長マニアのみならず子供たちでも喜びそうな趣向ではあるだろう。
 よって、テレビシリーズでは語られなかった秘史を描くような手法には筆者個人もおおいに賛同はするのだ。


 加えて、ナダ青年の早すぎる死亡にはスタッフ側にも未練はあっただろうから、東映側のプロデューサー直々の脚本と、先の『ウルトラギャラクシーファイト』も手掛けた坂本監督の意向もあってか、本作でもナダが「退場」する要因となった「隠された真実」が明かされている。


 リュウソウジャーの一員には選ばれずに長年の間、鬱積(うっせき)してきたナダの憎しみの感情は、関係各位の尽力で第32話でついに解消されることとなった。
 しかし、そのことでナダがガイソーグを装着変身する際に使用していた恐竜の横顔をモチーフにした小型変身アイテム・ガイソウルは、彼の憎しみを燃料としていたためにエネルギーも空っぽになっており、そのために超人ヒーローとしてのパワーをすでに発揮できない状態になっていたとしたのだ。
 劇中ではここまで明瞭にはセリフ化されてはいないものの、それがつづく第33話にてコウ=リュウソウレッドをナダが救出した際に致命傷を負ってしまった遠因となったのだとも明かされるのだ。


 そういった意味では、ヒーローたちにも何らかのダークサイドや哀しい過去・負い目などを与えて「哀愁」を漂わせるような手法は、実は往年の1970年代のヒーロー像にも近しいものがあったのだ。


 ゲスト悪役としては、『ウルトラマンZ(ゼット)』(20年)第8話『神秘の力』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210828/p1)でも変身怪人ピット星人姉妹の姉の人間態を務めた宮原華音(みやはら・かのん)が演じる、人間型のマイナソー(!)――『リュウソウジャー』における人間のマイナス感情が具現化したゲスト敵怪人――が登場している。
 彼女と変身前のリュウソウジャーとの壮絶なバトルも描かれているが、これもまた着ぐるみ敵怪人を新造する予算がなかったゆえの苦肉の策ではあったのだろう(笑)。
 敵組織・戦闘民族ドルイドンの幹部・ワイズルーとクレオンは登場している。しかし、そもそもリュウソウジャーに変身するのがコウ=リュウソウレッドだけでほかのメンバーが変身しないあたりは、「子供向け」映画としてはいかがなものだろうか?(汗)


 まぁ、『キラメイジャー THE MOVIE』や『キラメイジャーVSリュウソウジャー』の興行形態の変更で、突貫工事で用意せねばならなくなった企画なのだろうから、時間のない中で再度集結してくれて、低予算の中でも1本の作品として成立させていたキャストやスタッフ陣にはやはり感謝すべきではあるのだろう。


 明朗な作風で仕上げた巻頭作『キラメイジャー THE MOVIE』と巻末作『ゼンカイジャー THE MOVIE』の間をつなぐための箸休めとしての短編の役回りをも背負った本作なので、メインディッシュの作品ではない以上は、緩急をつける意味でもちょっとハズしてやや哀しげな作風とすることもアリだったとは思うのだ。
 あくまでも今時の子供向け番組のつくり方としては傍流ではあるのだろうが、シメった哀しげな余韻を残している本作もまた、子供たちへの情操教育としての効能もおおいにあるだろうから、完全に否定されるべきものではないことも確かなのだ。


*ナダ青年が7人目の戦士として、6人のキラメイジャーとも共闘する作品が観たかった!(笑)


 そこまで強調した上であえて云わせてもらうのだが、彼の未来にはたとえ「死」が待っていることが確定しているのだとしても、ナダ青年が再登場するのであれば、皆が観たかったのは、ゲスト敵怪人の横暴に遭遇して、彼が7人目のキラメイジャーへと変身し、6人の仲間たちとともに名乗りを上げたり、切った張ったの大活躍をする戦闘シーンだったのではなかろうか!?


 もちろん、ゲスト敵怪人を新造するのにも、スーツアクターを集めるのにも予算がかかったり、予算の確保ができてもスケジュールの調整で断念せざるとえないことがあるということも、スレたマニア的にはよくわかることなのだ(笑)。
 慈善事業ではない期限も決まったビジネスでもある以上は、「完成させられませんでした!」などではなく(汗)、つくり手には断腸の思いでも「断念」することを決断して、その枠の範疇の中で最善を尽くすことが必要である場合もあるのだ。そして、それは我々の人生や実社会での仕事においても同じことなのである(汗)。


 ラストは「みんなで卓球やろう!」というシーンで終わっている。つづく第33話の冒頭でリュウソウジャーの面々が卓球に興じる描写があったので、それにつなげているのは好ましい趣向ではある。熱心なファンの方々にとっては実に嬉しい趣向だろうし、このような処置程度であれば同作を未見の観客にも疎外感や内輪ウケ臭を抱かせるようなものでもないのだし、むしろ積極的にやっておくべきことでもあるだろう。
――ただし、この第33話の冒頭シーン自体は、劇的「イベント」ではなく単なる「日常」描写なので、多くのマニア諸氏もすでに忘れていたことであろうが(笑)――
騎士竜戦隊リュウソウジャー 特別編 メモリー・オブ・ソウルメイツ/機界戦隊ゼンカイジャー THE MOVIE 赤い戦い! オール戦隊大集会! ! [DVD]

2021.3.5.


(了)
(初出・当該ブログ記事)


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