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ウルトラマンダイナ1話「新たなる光」〜18話「闇を呼ぶ少女たち」 〜序盤合評2 是々非々!

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ウルトラマンダイナ 〜序盤評②

(文・仙田 冷)
(1997年11月執筆)

#1「新たなる光(前編)」

(脚本・長谷川圭一 監督・小中和哉 特技監督・大岡新一)

#2「新たなる光(後編)」

(脚本・長谷川圭一 監督・小中和哉 特技監督・大岡新一)
 実は、こう言っちゃ何だが、これといった印象がない。だから結局、前後編をひとからげにしてしまった。
 確かに、前作『ウルトラマンティガ』(96年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080913/p1)の防衛隊GUTS(ガッツ)の主力戦闘機ガッツウイングが訓練機に格下げとなった編隊とか、総監が始めティガとダイナを間違えるとか、前作との連続性をにおわせる要素がちりばめてあるのは、ウルトラシリーズでは珍しいし(多分『ウルトラQ』と初代『ウルトラマン』(共に66年)以来かも)、個人的に好きなネタでもある。


 しかし、良くも悪くもオーソドックスなプロローグすぎて、売りになるようなインパクトがなくて、かえって不安になる。
 謎の敵・宇宙球体スフィアにしても、CG丸出しでちゃちっぽくて何だかなーだし、怪獣・合成獣ダランビアや超合成獣オダランビアにしても岩丸出しで、ちょっと地味すぎる。
 宇宙怪獣ベムラー(初代『マン』1話)や凶暴怪獣アーストロン(『帰ってきたウルトラマン』(71年)1話)だってもう少し派手だった。


 この異様な地味さは恐らく、主人公アスカのキャラを際立たせることに気を取られ過ぎた結果だったのではないかと思う。
 だとすれば、その意図は成功だったと言える。向こう見ずで無鉄砲でお調子者。「あっち」のアスカは他人に「あんたバカァ?」と突っ込んでいたが、こっちのアスカは逆に自分が突っ込まれること請け合い。
 私のアスカに対する第一印象は、平成版立花ナオキ(『ジャンボーグA(エース)』(73年・円谷プロ)主人公)だった。ある友人は北斗星児(ほくと・せいじ。『ウルトラマンA(エース)』(72年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070430/p1)主人公)と言ってたが、それも決して間違ってない。
 もっとも、彼がナオキや北斗をも凌ぐバカであることは、後のエピソードで証明されることになるが、こんな暗い時代の子供番組の主人公というのは、或いはこのくらいバカな方が良いのかも知れない。今の世の中には、悪い意味での利口が多くて疲れるからねぇ……。


 それにしても、やっぱり地味すぎる。第1話の印象が弱いというのは、TVシリーズとしてはちょっとまずいんでないか?


#3「目覚めよアスカ」

(脚本・吉田伸 監督・石井てるよし 特技監督・佐川和夫)
 状況としては『帰ってきたウルトラマン』の2話「タッコング大逆襲」(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20230409/p1)そっくりである。それに『ジャンボーグA』12話「大阪に死す! ジャンボーグA」も入ってるかも知れない。
 この辺はスレたマニア連中が各批評系同人誌で語っているので、詳しくは書かない。


 しかし『帰ってきたウルトラマン』主人公・郷秀樹や立花ナオキに比べると、アスカの方が状況はシビアだったのではないかと思う。
 郷は防衛組織・MAT(マット)を辞めても、坂田家という逃げ場があった。少なくとも郷には、そういう意識があったと思う。
 一方ナオキの場合、ジャンボーグAのパイロットが彼であることを防衛組織・PAT(パット)は知らないわけだから、少なくとも12話における2代目隊長・岸隊長(初代・立花隊長は1話で殉職)の死の責任を直接問われることはない(本人の意識はどうあれ)。
 で、アスカだが、彼にはそんな逃げ場もないし、彼の行動が元でヒビキ隊長が負傷したことは皆知っているのだから責任逃れもできない。


 したがってアスカは、己の慢心が引き起こした結果を直視しなければならない。いざとなったら変身すれば良いという甘えが生んだ、洒落にならないこの事態を、いやおうなしに収拾しなければならないのだ。
 アスカもそのことは分かっていたに違いない。だから、腕の震えを押さえつつ操縦桿を握り、再生怪獣グロッシーナへの再攻撃に挑んだのだろう。かつてナオキがそうしたように。


 背水の陣とも言える状況からの立ち直り。キャラクターの成長ドラマとして、これ以上のシチュエーションはあるまい。
 確実にアスカは、一回り大きくなった。相変わらずバカではあるが、それはそれで良いではないか。成長することと、妥協や利口さを覚えることとは、断じてイコールではないのだから。

#4「決戦! 地中都市」

(脚本・右田昌万 監督・石井てるよし 特技監督・佐川和夫)
 やっとその境地に至ったかというのが正直な印象だった。
 ここで地底開発を否定してしまうのは、実に簡単なことだ。しかしそうなっていたらこの回は、安直なエコテーマの話に堕し、どうしようもない駄作になっていたところだ。


 自然への配慮は大事なことだが、だからと言って、開発そのものを全面否定してしまっては、そこで進歩は止まってしまう。環境問題がクローズアップされたならされたで、環境と折り合いをつける道を探るのが筋というものだ。
 ましてや今回の場合、地底開発の動機は、単なる金儲けではない。子供の頃からの夢の実現、なのだ。それを全部捨てろなどと言うのは、あまりにも無体な話である。未来に夢を持てなくなった人間なんて、みじめなもんだ。


 単なる文明否定ではなく、文明と自然が共存し得る道を模索することを選んだこの回、もしかすると『ティガ』の傑作、28話「うたかたの…」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961204/p1)よりも、テーマ面では頭ひとつ上に出たかも知れない。

#5「ウイニングショット」

(脚本・古怒田健志 監督・原田昌樹 特技監督・北浦嗣巳)
 妙に『ウルトラマンレオ』(74年)的なテイストの回である。防御能力が異様に発達している変異昆虫シルドロンの設定は、『レオ』の怪獣に近いものを感じさせた。
 これでヒビキ隊長がアスカに、フォークボールの特訓でもした日にゃあ……(おいおい)。
 実のところ、そんなに特筆事項があるわけではない。でも、何だか捨てがたいのである、この回は。
 予定調和と言ってしまうと身も蓋もないが、変に重い話ばかりでも疲れるし、時にはこういう話も良いと思う。『ウルトラフォーク』というボケもけっこう好きだし(ベタベタなボケも、つぼにはまると意外に笑えるものです)。

#6「地上最大の怪獣」

(脚本・武上純希 監督・原田昌樹 特技監督・北浦嗣巳)
 菌糸怪獣フォーガスが凄い。全世界に張り巡らされたコンピュータネットワークを乗っ取り、それを武器として人類を抹殺する作戦。
 それを実行するのが、それこそネットワークを連想させる菌糸の集まりであるキノコの怪物というのがイケてる。
 防衛チーム・スーパーGUTSのメカも乗っ取られ、その上位組織・地球平和連合TPCの武装さえ敵に回るという四面楚歌のサスペンス。オチがあっけない気もするが、上々のアクション編に仕上がっていると思う。


 コンピューターやネットをモチーフにした『電磁戦隊メガレンジャー』(97年)でこそこういう話があるべきだ……と思ったら、脚本が『メガ』のメインライターである武上純希(たけがみ・じゅんき)氏だった。実は、予算の都合で跳ねられた、『メガレンジャー』のNG脚本だったりしたら、ちょっと笑えるかも。
 それにしても最近の武上氏、コンピュータネタが多くないか? TVアニメ『ゲゲゲの鬼太郎』第4シリーズ(96年)じゃ、妖怪・子泣きじじいがインターネットにアクセスしてるし。

#7「箱の中のともだち」

(脚本・川上英幸 監督・村石宏實 特技監督・村石宏實&満留浩昌)
 詰め込み過ぎて消化不良な感じ。
 「かつて怪獣に両親を殺された少女が、今また可愛い小動物を装った凶悪怪獣に利用され、裏切られる」話と「かつて怪獣に家族を皆殺しにされた宇宙人が、復讐のためにその怪獣を追って地球に来る」話。
 それぞれ単独でも1話分のストーリーが作れそうなネタを、多少無理して1本に詰め込んだという印象だ(TVアニメ『吸血姫美夕(ヴァンパイアみゆ)』(97年)の第1話よりはまとまってるけど)。


 この回の場合はサブタイトルからしても、少女に焦点を絞った方が良かったのではないか。
 孤独なまま悲しみに沈む少女、その心につけこみ利用する凶悪怪獣ギャビッシュ、何とか真実に気付かせようと奔走するアスカ、遂に訪れる残酷な裏切りの時、怒り爆発のダイナ・ストロンタイプのジャイアントスウィング必殺技・ガルネイトボンバー(バルカンスウィング?)でギャビッシュを地獄へ送るダイナ、そして……という感じでまとめれば、けっこう超燃えの話になったかも知れない。

#8「遥かなるバオーン」

(脚本・太田愛 監督&特技監督・村石宏實)
 太田 愛さんって、ファンタスティックでほのぼのとした中にさり気なく悲しみを潜ませた話が得意な人だとは、『ティガ』の頃から思っていたが、その手腕は『ダイナ』でも健在なようで何よりだ。


 まず催眠怪獣バオーンがいい。確かにこいつは、最強かも知れない。どんな敵でも、こいつのいびき一発で爆睡してしまうのだから、戦いになどなりようがない。
 それから呑気な村人たちがいい。巨大怪獣の襲来だというのに、ちっとも慌てた様子もなく、スーパーGUTSの隊員たちに炊き出しする余裕すら見せる。バオーンの去り際には「また来いよぉ」などと手を振っていたりする。


 そして、そんな人々が住む村に落ちたのが、バオーンにとっての幸運だった。それは同時に、人間にとっても幸運だった。
 街中に落ちたらどうなっていたか。両者のコンタクトは、最悪の結果を迎えていたに違いない。時間に追いまくられ、分秒刻みの生活を送る者たちにとって、いびき一発で人を爆睡させてしまう怪獣など、たとえ破壊活動をしなくても邪魔な存在なのだ。


 単純にあの村をユートピア視する気はないが、ほんのちょっと眠るゆとりすらないのがネオフロンティアの時代だとするなら(現代だってあまり変わらんけど)、やはりちょっと悲しい。

#9「二千匹の襲撃」

(脚本・長谷川圭一 監督・石井てるよし 特技監督・佐川和夫)
 予告を見た時に、ちょっと期待し過ぎた。二千匹もの等身大の怪獣が街を襲うという、ハッタリのきいたプロットは凄いのだが、それを映像化しきれていない感じなのだ。
 類似のネタなら、バラノイア月面基地を埋めつくすバーロ兵(『超力(ちょうりき)戦隊オーレンジャー』(95年)の戦闘員)とか、団地の広場にひしめきあうクネクネ(『電磁戦隊メガレンジャー』の戦闘員)の圧倒的な大群のビデオ合成やデジタル合成の方が、絵的な説得力はあった。
 さらに、一般人のパニック描写がほとんど描かれていないのも致命的だ。
 『ウルトラQ』20話「海底原人ラゴン」(脚本・山浦弘靖&大伴昌司&野長瀬三摩地 監督・野長瀬三摩地 特技監督・的場徹)や『ウルトラマンレオ』16話「真夜中に消えた女」アトラー星人編(脚本・若槻文三 監督・外山徹 特撮監督・大木淳)のように(共にスリラー演出は超絶品!)、外を徘徊する等身大怪獣ギアクーダの群れに怯えながら息をひそめる周辺住民とか、ギアクーダの襲撃を受けて命からがら逃亡するドライバーとかも見たかったんだが……。
 いくらプロットが面白くても、絵にできないんじゃどうしようもないという、いい見本になっちまった回というところか。

#10「禁断の地上絵」

(脚本・右田昌万 監督・石井てるよし 特技監督・佐川和夫)
 これも前回同様、評価に困った話だ。現代に蘇った超古代人・念力種族ゼネキンタール人が、地上絵に偽装した怪獣を復活させ、再度世界制覇を企むというプロットは悪くないのだが、今回は台詞が堅すぎて、何か変なのだ。
 カリヤ隊員のアキヅキ博士に対する
 「逃げるんですか、地上絵から!」
 には、危うく笑ってしまうところだった。脈絡としてはわかるのだが、やっぱり何か変な感じだ。


 この回には、さらに困った問題もある。超古代文明が絡む話であるにもかかわらず、新世紀ウルトラシリーズ(と私は勝手に呼んでいる)では重要なファクターであるはずの先史文明との関わりが、まったく描かれていないのだ。
 そりゃまあ、妄想をたくましくして、ゼネキンタール人とウルトラマンティガや『ティガ』のキリエル人(びと)に3000万年前の超古代文明を滅ぼしたとされる超古代植物ギジェラ(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961206/p1)などとの関係をあれこれ想像するのは、見る側の勝手である。
 しかしこの回の脚本は、仮にも『ティガ』のメインライターであるはずの(違ったっけ?)右田昌万(みぎた・まさかず)氏なのだ。ちょっとぐらい何か言及があってもいいのではないか? もしかすると、シナリオ段階ではあったのが、カットされたのかも知れないけど。

#11「幻の遊星」

(脚本・川上英幸 監督&特技監督・原田昌樹)
 TVアニメ『宇宙戦艦ヤマトⅢ』(80年)で、似たようなネタがあったな……というのはちょっとこっちに置いといて。
 今回の敵は、主を失った殺戮兵器メラニー遊星である。
 故郷の星は滅び、戦争はすでに終わったというのに、プログラムに従って殺戮を続けるバーサーカー(殺戮機械)惑星。美しい自然の幻の裏に隠された荒涼たる実景は、どこの誰とも分からぬ者の隠微にして陰湿な悪意を感じさせる。


 そんな中で、迷子珍獣ハネジローの存在は貴重である。悪意の闇の中を飛ぶ唯一つの光……というのはいくら何でもオーバーか。
 でも考えてみれば、アスカがハネジローを助けたことによって、最終的にスーパーGUTSはこの恐るべき悪意の罠を噛み破る鍵を得たのだ(まさに「これが勝利の鍵だ!」(『勇者王ガオガイガー』(97年)予告編)ってやつっすか?)。


 ネオフロンティアというバックボーンを考えると、この回のメラニー遊星とアスカとは、人類が進む可能性のある二つの道をそれぞれ象徴しているように思える。
 どんな理屈をつけたところで、開拓と侵略は紙一重の差しかない。
 自分たちの一方的な都合だけで事を進め、妨げになるものは排除することしか考えないならば、近づく他者をすべて殲滅するメラニー遊星と変わらない。
 他者との共存を考えることができるかどうかが、開拓者と侵略者を分ける条件なのではないか……そう思えてならない。

#12「怪盗ヒマラ」

(脚本・太田愛 監督&特技監督・原田昌樹)
(視聴率:関東6.9% 中部6.4% 関西7.9%)
 とにかく不思議な話だった。狐につままれ、狸に化かされ、気がつけば幻、霞の迷路(メイズ・イン・ザ・ヘイズ)……
 『虚空の迷宮』(TVアニメ『MAZE(メイズ)☆爆熱時空』(97年)主題歌:歌:聖飢魔Ⅱ(せいきまつ))歌ってる場合じゃなかった。いや、でも真面目な話、本当に迷宮に放り込まれたような気分だった。


 最初の印象は、メルヘン版「蒸発都市」(『ウルトラセブン』(67年)34話)。


 アスカたちが偽りの空を打ち破り、スーパーGUTSが駆けつけるあたりまでは、一応現実の話として認識できた。
 だが、戦闘シーンのあたりからだんだん分からなくなってくる。いったいここはどこなんだ? 魔空空間(『宇宙刑事ギャバン』82年)か? 幻夢界(『宇宙刑事シャリバン』83年)か? それとも不思議時空(『宇宙刑事シャイダー』84年)か?
 突然だが、ダイナが怪盗宇宙人ヒマラとの戦いで、彼のコレクションである狸(たぬき)の置物を盾(たて)にしたのは、理に適った戦法である。ああいう丸っこいものなら、パンチなどの物理的な攻撃を受け流せるし、やはり敵に与える精神的なダメージは大きいだろう。
 話自体は面白いのだが、やはり狐につままれ、狸に化かされたような印象は拭えない。9話や10話とは別の意味で、評価に困る回である。

#13「怪獣工場」

(脚本・川上英幸 監督&特技監督・北浦嗣巳)
(視聴率:関東7.7% 中部9.1% 関西8.0%)
 始めはあまり期待してなかった。今さら狼少年ものとは、いくら何でも古臭すぎる。
 だが、実際に作品を見て……絶句した。


 とにかく、敵も味方もバカばっか。『ファイヤーマン』(73年・円谷プロ)21話の侵略宇宙人デコンとボコンを思わせるおバカ系インベーダー・ミジー星人(計画的が聞いて呆れる)を向こうに回して、アスカのバカにも磨きがかかり(勝手にマンガを借り出したことで子供に脅され、やむなく出動なんて、いくら北斗やナオキがバカでも、そこまではやってねえぞ)、ナカジマまでがかつてのイデ隊員みたいな真似をしてヒビキに怒鳴られ、その他いろいろあって、ついには三面ロボ頭獣ガラオンの笑気ガスで笑わされるダイナ。
 お願いだから誰か止めて。


 ここまでバカを徹底されると、もはやプロットの古臭さなどどうでも良くなってくる。きっと好き嫌いが割れる回だろうけど、私は好きです、この回。
 ところで……あると思います? ミジー星人のリターンマッチ。

(了)
(初出・特撮同人誌『假面特攻隊98年号』(97年12月28日発行)「ウルトラマンダイナ」序盤合評③より抜粋)


(以下、1998年7月執筆)

#14「月に眠る覇王」

(脚本・古怒田健志 監督&特技監督・北浦嗣巳)
(視聴率:関東6.0% 中部5.4% 関西6.0%)
 どうも『ダイナ』には、大筋では面白いのに、どこか抜けてる話が多い。この回もその一つだった。
 月にある遺跡のシーンは凄い。覇王の墓所に相応しい迫力の画面である。
 ただここで引っ掛かったのは、カリヤたちが宇宙服のヘルメットをつけていなかったことだ。そこに空気があるとは、誰も言ってないはずだが。


 確かに、SF考証が正しければ面白いというものではない。現に、アニメ誌『アニメージュ』誌上で『ダイナ』のSF考証のいい加減さを批判した堺三保(さかい・みつやす)氏が最近SF考証を担当した作品(TVアニメ『星方武侠(せいほうぶきょう)アウトロースター』とか美少女アニメアキハバラ電脳組』(共に98年)とか)が面白いかというと、正直言って疑問が残る。
 しかし、月に空気がないことぐらい、今時子供だって知っている、SF考証以前の一般常識なのだから、配慮が欲しいところだった
 (「この遺跡には空気がある」という説明台詞程度でも良かったのだ。まあ尺の都合でカットされたのだろうけど)。


 調査隊員たちにとりついて地球に来たヌアザ星人の霊の扱いも中途半端だ。非友好的な侵入の仕方をした割には、いつの間にか馴染んでしまっているし、どうも説明不足が目立つ。
 剣をイシリスの胸に刺して封印するために来たという程度の事なら、下手に星人を出すよりも、例えばカリヤが粘土板か何か持ち帰り、それに刻まれていた文字を解読して封印の方法を知るという形の方がサスペンスフルだったのではないかという気がする。

#15「優しい標的」

(脚本・長谷川圭一 監督&特技監督・村石宏實)
(視聴率:関東6.5% 中部4.7% 関西7.2%)
 クレア星雲人シオン役の宍戸勝(ししど・まさる。『超力戦隊オーレンジャー』の主役オーレッドでおなじみ)がいい味出している。虫も殺さぬ好青年顔の彼を、目的のためには手段を選ばぬ冷徹な破壊工作員にキャスティングしたのは正解だったと言えるだろう。
 だからこそ、マイ隊員に対する事実上の背信行為、それに対するリョウの怒りも、一層強く印象づけられたのだし、さらには地球人とクレア星雲人とのメンタリティの違いすら感じさせる一助となったのだ
 (彼らには恐らく、地球で言うところの「優しさ」という概念はない)。


 それだけに逆に、地球の基準に基づいてシオンを裏切り者と決めつけるというところに、多少の引っ掛かりを感じたのも事実。感情としては十分理解できるのだが、はなっから価値基準の違う相手に「女心を踏み躙った」などと文句を言ってみても始まらない。
 宇宙に進出していけば、メンタリティが全然違う宇宙人と遭遇する可能性も高くなるだろうに、今からこれでは先が思いやられる。
 シオンのように侵略目的でやっているなら返り討ちにされても当然だが、悪意はないのに結果的に裏切ったようなことになってしまった場合にまでいきり立っていては、対立の種が増えるだけである。
 この点の引っ掛かりさえなければ、個人的にはけっこう好きな話だったのだが。

#16「激闘! 怪獣島」

(脚本・川上英幸 監督&特技監督・村石宏實)
(視聴率:関東7.5% 中部7.1% 関西8.0%)
 待ってました、平成版「怪獣無法地帯」(初代『ウルトラマン』8話)!


 とゆーか、強力な怪獣を作るための実験場というプロットは、むしろ『スペクトルマン』(71年)の27話「大決戦!! 七大怪獣」に近いが、実は正直言って、ちょっと物足りなかったりする。
 どうせやるなら、使える着ぐるみをあと3、4体動員しての時間無制限一本勝負、ルール無用の頂上決戦をやらかして欲しかった。東映メタルヒーロー重甲ビーファイター』(95年)30話「13怪人大武道会」(脚本・浅香晶)みたいに。


 怪獣を作るといえば、ハイパークローン怪獣ネオザルスを始めとする怪獣軍団が、TPCの科学者によって作られたものであるというのは興味深い。過去にも合成怪獣レオゴン(『帰ってきたウルトラマン』34話)などの例はあるが、『ティガ』以降人間が怪獣を作り出すケースが増えているようだ
 (後の回じゃ、一介の演劇作家が錬金術で怪獣を作ったなどというとんでもないケースもあるし。参照:『ウルトラマンダイナ』#37「怪獣戯曲」・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971209/p1)。


 『ウルトラマン80(エイティ)』(80年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971121/p1)で「怪獣は人間の心の闇が作り出すものだ」というテーゼが提示された事で、そういう設定の怪獣を出しやすくなったのは事実だろう
 (特に『80』44話に登場した妄想ウルトラセブンは、まぎれもなく『ティガ』44話のイーヴィルティガと同類の「闇の力によって生まれたウルトラマン」だ。単に素体となったものが、人形か石像かというだけの違いにすぎない)。


 しかし、ヒーローと同じ陣営に、理由はどうあれ怪獣を作り出し、騒ぎを起こす者がいるというのは、ウルトラシリーズでは『ティガ』以来顕著になってきた傾向だ。
 TPCは最高の科学力と設備を持つ集団であるという事で、そういう役回りを振りやすいのは確かだが、お上すら信じるに値しなくなった時代の反映という事も大きいのかも知れない。

#17「幽霊宇宙船」

(脚本・右田昌万 監督・石井てるよし 特技監督・佐川和夫)
(視聴率:関東5.6% 中部6.3% 関西8.7%)
 ウルトラの定番「見よ! ウルトラ冬の怪奇シリーズ」(命名/仙田)第一弾。
 通過した地域の人々の魂を奪っていく不気味な宇宙船(幽霊船)というプロットは、いかにも宇宙時代の怪談という感じでいいと思う。


 ただ今回は、演出的に「?」と思ってしまう部分があった。
 一つが、ニュースを見て外に出た青年が幽霊船怪獣ゾンバイユの犠牲となったシーンの入れ方である。
 こういうシーンは入れる箇所が適切だと、異形の者に破壊される日常という感じが出て効果的なのだが、今回はタイミングが悪く、浮いてしまった印象がある。
 最初このシーンを見た時、この青年が何かストーリーに絡んでくるのかと思ったら、ゾンバイユに魂を吸われただけだったので、拍子抜けしてしまった。
 二つ目は、宇宙船内でのリョウ(の魂)の描写である。何か変にしおらしすぎる。アスカにグーパンチをかます女傑と同一人物とは思えない。「魂だけになったことで本質が現れたのだ」という解釈に基づいているとしたら、そう解釈した人の女性観は、1世紀くらい遅れている。


 この話自体は面白くないわけではない。それだけに、もう少し細かいところに気を使ってくれれば良かったのにと思うのだ。

#18「闇を呼ぶ少女たち」

(脚本・長谷川圭一 監督・石井てるよし 特技監督・佐川和夫)
(視聴率:関東6.6% 中部5.5% 関西7.5%)
 「見よ! ウルトラ冬の怪奇シリーズ」第二弾の今回は、かの怪奇漫画の名作『エコエコアザラク』(75年)を思わせる黒魔術の話である。
 実際本編は、それに相応しい怪奇ムードが漂い、魔に魅入られた少女たちの狂気すら匂わせていた。
 戦闘シーンにおいても特に前半は、神と悪魔のハルマゲドンと言っても良い雰囲気があった。うまくすれば、シリーズ屈指の名編となっていたに違いなかった。


 だが、オチがすべてをぶち壊した。九仞(きゅうじん)の功を一簣(いっき)に欠くとはまさにこのこと。
 少女たちの改心自体は問題ない。番組の性質やメインターゲットである子供を考慮すれば、これ以外の落とし方は有り得ない。
 ただそのプロセスに、余りに説得力が無さ過ぎた。悪魔に頼るところまで追い込まれた者が、あんな説教臭い台詞ごときで改心するとは思えない。
 これが何らかの行動を伴うものであれば(例えば、翻意する様子のない3人の少女に業を煮やした4人目の少女が、自ら単身魔法陣に飛び込み、それを見た他の3人もその決意に……とか)、この話の印象も変わっていたろうに。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊99年号』(98年12月29日発行)「ウルトラマンダイナ」後半合評①より抜粋)


[関連記事] 〜ウルトラシリーズ第1話!

ウルトラマンエース#1「輝け! ウルトラ五兄弟」

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060514/p1

ウルトラマンダイナ#1「新たなる光(前編)」

  (当該記事)

ウルトラマンネクサス#1「Episode.01夜襲 ―ナイトレイド―」

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041108/p1

ウルトラギャラクシー大怪獣バトル#1「怪獣無法惑星」 〜第1シリーズ序盤合評

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080427/p1