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『ウルトラマンダイナ』#42「うたかたの空夢」合評1 ~つまみぐいダイナ
(文・彦坂彰俊)
以下、個人的なワガママでTVシリーズから選り抜き評
#42『うたかたの空夢』
川崎郷太(かわさき・きょうた)脚本・監督作という前評判もさることながら、それがゆえ放映直前まで邪推・憶測が乱れ飛んだであろう(?)今回。
なにせ前科が前科だしサブタイもあきらかにネラッているけど、相手は悪役という以上のポリシーなんて持ってなさそうな前作『ウルトラマンティガ』(96年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080913/p1)の悪質宇宙人レギュラン星人だし(笑)、地球平和連合TPC・スーパーGUTS(ガッツ)の新兵器として巨大ロボが出るらしいし(オォッ!!)。どーもヘヴィーテーマ編が「来る」雰囲気ではなく、でも痛快娯楽バトルアクション編ならそれはそれで快挙なのであって、とはいえテーマとバトルが両立しているなら拍手喝采モノだけど……と、いやがうえにも高まる緊迫感。
しかして結果は、川崎郷太のシュミを露骨に反映した悪ノリ巨編だった!
イキナリ虚を突かれたとゆーのが正直なところだ。いや、筋立てや戦闘描写そのものは意外にシリアスだし、メカ特撮の凝りようも凄まじいのだけど、むしろディテールがそれらをことごとくおちょくる方向に機能している点、かなりヒネクレた構造ではある。
前作『ティガ』の旧GUTS隊員ホリイの台詞「こんなこともあろうかと……」、
なぜか女性体型のマウンテンガリバー5号=MG5(エム・ジー・ファイブ)、
同じく『ティガ』の女性隊員レナ率いるキティー小隊、
艦首にドクロのレリーフをあしらった宇宙戦艦アートデッセイ曙号(あけぼのごう・笑)に、宇宙海賊キャプテン・ムナカタとシンジョウ以下6人の乗組員(爆笑)、
火星に落下する彗星のかけらを下から押し上げるダイナとMG5……
などなどツッコミどころはそれこそ枚挙にいとまがない(キミはいくつ元ネタを見つけられたかな?)。
ただ結局は劇中内実話ではなく「夢オチ」にせざるをえなかったあたり、『ウルトラ』という題材そのものの保守的な一面を象徴していて(気持ちはわかるが)、個人的にはかなり残念だ。ホラ話である分には一向かまわないけど、せめて「ふとしたことでまぎれこんだ平行宇宙での悪夢のよーな出来事・笑」ってな言い訳を(お約束でも)してほしかったぞ。
『ウルトラマンダイナ』#42「うたかたの空夢」合評2 ~二大異色作に見る自分にとっての『ウルトラマンダイナ』感想 その2
(文・JIN)
#42『うたかたの空夢』
「キャプテン・ムナカタ……」
「あの伝説の!」
もちろん、それまでの展開においてもかなりオーバーな演出が数多く存在していただけに、ひょっとしたらといった感じはあったのですが、この台詞を聞いた直後、自分はこの回における「夢オチ」を確信してしまいました。
とかく、「夢オチ」というと作劇方法の「邪道」という風に見られがちなわけですが、ハード路線にしろ娯楽路線にしろ、とにかく「中途半端は最悪の道」であると確信している自分としては、ここまで徹底してやってくれると逆にスッキリしてしまうといった感じです。
(実際、ヒーロー作品として私の好きなものの双璧は、アニメの場合はシリアスなリアルロボットアニメ『機動戦士Z(ゼータ)ガンダム』(85年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060325/p1)と陽性な合体ロボットアニメ『元気爆発ガンバルガー』(92年)、そして特撮の場合はシリアスな『イナズマンF(フラッシュ)』(74年)と陽性な『超神(ちょうじん)ビビューン』(76年)といったところとなっています。)
また、「開発主任のホリイです」に始まる巨大ロボット・MG5(エムジーファイブ)の登場説明プロセスもさりながら、あの前作『ウルトラマンティガ』(96年)の大型母艦アートデッセイ号が宇宙海賊キャプテンハーロックのアルカディア号仕様(元祖のTVアニメ版(78年)ではなく、アニメ映画『銀河鉄道999(スリーナイン)』(79年)や『我が青春のアルカディア』(82年)仕様)で登場するあたりから、この異様なまでのノリぶりに圧倒されてしまうばかりで、
「やれやれもっとやれ!」
という気分にまで高ぶってしまいました。
実際、防衛隊・旧GUTS(ガッツ)隊員大挙登場の関西ロケ前後編(35〜36話「滅びの微笑(前後編)」・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971208/p1)においては未登場だったレナも、名作『サンダーバード』(65年・日本放映66年)の系譜を継ぐ特撮人形劇『キャプテン・スカーレット』(67年・日本放映68年)のスペクトラム・エンジェル隊を思わせる、女性のみのガッツウィング部隊を率いていたりとするわけで、こうした状況の連続の中での「今度は誰なのおーっ!?」という山田まりや演じるマイの叫びは、正しく我々ファン一同の実感そのものといった感じで、38話「怪獣戯曲」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971209/p1)と同様に、こうしたマイの存在とキャラクターがこの『ダイナ』世界の大きな部分になっていることが実に上手く示されています。
そして、この回はBGMの使い方も実に上手く、MG5が発進する場面の主題歌や場面転換における「テイクオフ!! スーパーGUTS」のインスト使用もタイミング良く(インスト楽曲自体が『帰ってきたウルトラマン』(71年)の中CM転換直前のアイキャッチ曲の引用でもあるので)、特にMG5の再登場とともに『ダイナ』前期エンディング歌曲「君だけを守りたい」(ASIN:B000064CCA)がかかり出すセンスの良さも最高です。
つまり、この回は「夢オチ」でありつつも、「夢オチ」であることに引け目を感じることなく、むしろその特性を最大限に生かした回ではないかというわけで、その意味においては、あの押井守監督によるアニメ映画『うる星(せい)やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(84年)やTVアニメ『機動警察パトレイバー』(89年)における44話「CLATよ永遠に」やその続編OVA(オリジナルビデオアニメ)(90年)15話「星から来た女」にも匹敵するといった感じです。
もちろん、こうした「夢オチ」の作風が基本的には「反則」であることに変わりはありませんが、『うる星』や『パトレイバー』と同様、『ダイナ』という世界においても、こうした回くらいやってくれなければ嘘だという感じが自分にあるわけで、これも私個人にとっての『ダイナ』世界への理解と感想になっています。
(そこで、どうせやるなら、MG5と正面衝突したうえで、火星に「脳天逆落とし」の状態で墜落するダイナや、それと同じ「姿勢」の状態で目が覚めるアスカといったシンクロ場面も見たかったところで、贅沢を承知で敢えて触れてみました。)
『ウルトラマンダイナ』#42「うたかたの空夢」合評3 ~越境者・川崎郷太
(文・旗手 稔)
日本特撮史においては、本篇と特撮の両方の監督を兼任した人間が何人か存在する。
有名なところでは『大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス』(67年)の湯浅憲明(ゆあさ・のりあき)がいるだろう。
東映の特撮監督・佛田洋(ぶつだ・ひろし)も『忍者戦隊カクレンジャー』(94年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120109/p1)や『超力(ちょうりき)戦隊オーレンジャー』(95年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110926/p1)で本篇演出を経験している。
『ウルトラマンティガ』(96年)では神澤信一や村石宏實(むらいし・ひろちか)も本篇と特撮の両方をこなしているが、神澤に関して言えば、NTV(日本テレビ)の2本の平成『ウルトラセブン』スペシャル(94年)や『七星闘神(しちせいとうしん)ガイファード』(96年)等を見る限りではドラマの演出力についてはやや力足らずといった印象だ。
近年の劇場作品では『ウルトラマンゼアス2 超人大戦・光と影』(97年)や『ウルトラマンティガ&ウルトラマンダイナ 光の星の戦士たち』(98年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971206/p1)の小中和哉(こなか・かずや)がいる。
本篇と特撮の双方に跨(またが)って名前を記す彼らは、円谷英二(つぶらや・えいじ)の登場以来、日本特撮が自明のものとしている複数監督制に対する批評的存在でもある。
この系譜に川崎郷太(かわさき・きょうた)の名前も含まれている。
川崎の存在にもしも先に名前を挙げた他の監督たち以上の際立ったものがあるとすれば、それは自ら手掛けた脚本を自らの演出で映像化している点に求められるだろう。川崎の精力的な仕事ぶりによって完成した作品は個人芸術の色彩を濃く帯びるようになる。
シナリオまで手がける川崎に近い存在としては雨宮慶太(あめみや・けいた)が挙げられよう。先行するジャンル作品の記憶に満ちているという点でも両者の資質はいっけん近しいものだ。
雨宮の〈引用〉がしかし本篇の文脈とは直接に関係の無い単なるお遊びでしか無いのに対し――譬(たと)えば東映メタルヒーロー『特救指令ソルブレイン』(91年)のSRS基地や、平成『ゴジラ』シリーズ(89〜95年)のGフォース基地と同じ円筒形の近代的な建物(日本工学院八王子専門学校研究棟)が出てくる映画『人造人間ハカイダー』(95年)のラストに登場する人型戦車が、元祖ハカイダーの宿敵である正義のヒーロー『人造人間キカイダー』(72年)の左右非対称の赤青カラーリングでなければならない必然性はどこにも無い――、川崎の振る舞いは明らかに自覚的なものだ。
深刻なドラマのさなかに唐突に初代『ウルトラマン』(66年)の科学特捜隊のスーパーガンが出てくる第41話「ぼくたちの地球が見たい」の危ういバランス感覚は、続く第42話「うたかたの空夢」によってスペシウムネタの周到な前フリだったことが明らかにされる(火星のスペシウムは『ウルトラマン』第2話「侵略者を撃て」に出てきたものだ)。
サブタイトルでヒントは出しているとは言え、夢オチというこの上も無く卑劣な反則技が炸裂する「うたかたの空夢」の巨大ロボットは、未製作に終わった初代『ウルトラマン』の放映当時のオリジナル新作映画『ウルトラマン ジャイアント作戦』(後日付記:2005年にノベライズ版(講談社・ISBN:4063646556)が発行された)を連想させる。川崎はかつて『ジャイアント作戦』のコミカライズ(『ウルトラマン科特隊奮戦記――ジャイアント作戦』・93年・朝日ソノラマ・ISBN:4257902086)も担当していた筈だ。
川崎のそうしたオタク知識のひけらかしは一般観客を遠ざけるものとして本来排斥されるべきものかもしれない。だがディティールがエピソードを跨(また)いで主題的に響応するさまは、精緻な描写――合成表現による戦車の発砲やカタパルト内部の細かい描写を始め、それをいちいち拾い挙げていくだけでも十分な映像分析が成り立つ程の――を持ち味とする川崎演出を他方で強く特徴付けるものだ。
特撮雑誌『季刊 宇宙船』の連載での特撮ライター・小林晋一郎の指摘にもある通り、『ウルトラマンティガ』第39話「拝啓ウルトラマン様」の雨の日のパン屋でのパンの購入は、『帰ってきたウルトラマン』(71年)の第33話「怪獣使いと少年」からの〈引用〉だ。社会から疎外されるキリノ・マキオの姿に川崎はあの「怪獣使いと少年」の佐久間良(さくま・りょう)少年の境遇を重ねている。「拝啓ウルトラマン様」は「怪獣使いと少年」の後日談でもあるという分けだ。
(後日編註:引用ではなく偶然の一致であったと川崎監督はのちに発言。ホントかなぁ? 我々特撮マニア連中をケムに巻いているだけではないのかとも……・笑)
『ウルトラマンティガ』第6話「セカンド・コンタクト」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961201/p1)で初登場し、同作第15話「幻の疾走」でマユミの恋人を殺害した空中棲息生物クリッターの再登場により、第28話「うたかたの…」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961204/p1)でのマユミの訴えはより説得力を増すだろう。
第38話「蜃気楼の怪獣」はその「うたかたの…」で未解決のままに置いておかれた怪獣は何故出現するかという問いかけに対して作者が視聴者に与えたひとつの解答でもある。(以上、すべて川崎郷太監督作品)
「ぼくたちの地球が見たい」にはサブタイトルのバックに登場するいつものウルトラマンダイナの静止画映像が引いていくと既に本篇の一部だったというサプライズ(驚き)がある。本篇に跨るサブタイトルは川崎郷太という作家の作品に対する取り組み方を良く言い表している。それは川崎郷太の作品を今後語る上でのひとつの指針ともなるだろう。
「跨る」ということ。
かと言って、レギュラン星人が『ティガ』と『ダイナ』とに跨って登場する「うたかたの空夢」でジャンルを越えて『宇宙海賊キャプテンハーロック』(78年)やアニメ映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(88年)の露骨なパロディまで出してしまったのは、余りにも作者のシュミに走り過ぎとは思うのだが。
『ウルトラマンダイナ』#42「うたかたの空夢」合評4 ~川崎郷太について3500字以内で書きなさい(句読点を含む)
『ウルトラマンダイナ』(97年)42話「うたかたの空夢」、川崎郷太監督による爆笑大巨編である。同監督による前作『ウルトラマンティガ』(96年)で話題になった28話「うたかたの…」の別バージョンと考えても良いだろう。(いいのか?)
「うたかたの…」では「人がなぜ戦うのか?」をテーマに、「争いをやめるために戦う」ヤズミと、「理由はどうあれ、争いに加担するヤツは許さん!」マユミ(レナもそうだっけか?)を軸にドラマを構築していきましたが、今回は「戦いたくないのに戦地に駆り出される」マイがテーマになって(……いるかどうかは分かりませんが(笑))、話は進みます。(「デートの約束」というのは、例の主人公アスカ演じるつるの剛士(たけし)とマイ演じる山田まりやとのプライベートでのツーショット流出のことだね)
その話の破天荒ぶりは、氏が好きだという岡本喜八(おかもと・きはち)監督を彷彿させるような気がします。今回はマニア向けギャグ満載。その手のギャグが好きな方にはたまらない一本ですね。
新兵器「スペシウム砲」を火星に取りに行くマイ、アスカ。それを阻止すべく円盤総攻撃を仕掛けてくるレギュラン星人・ヅウォーカァ将軍。
「人類が力を持つと宇宙人に狙われる」とテーマ主義的なことを言っているけど、ヅウォーカァ将軍を見る限りあまり深い意味はないでしょう(笑)。
防衛隊GUTS(ガッツ)メカとレギュラン円盤群との総力戦には圧巻されますねぇ!
格納庫から次々と発進していくガッツメカの数々。シビレるなぁ…… 出動しない地底ドリル戦車・ガッツティグが後ろにあったりするのが、泣けます。(ただ、鉄筋剥き出しの格納庫は、ちょっと古い感じがしましたね)
何機も登場して編隊飛行するガッツイーグルγ(ガンマ)号やガッツウィング1号2号、地上基地からの砲撃など、川崎郷太監督が得意とするミリタリー色の強い演出が新鮮でカッコイイ。「うたかたの…」でも見られましたね。いままでのウルトラにはあまりなかった演出だと思います。
でも、あまりミリタリー色を前面に出すと「ヒーローもの」っぽくないなぁ、とも思いました。「自衛隊」と「スーパーガッツ」ってやっぱ違うものでしょ? もうちょっと違うアプローチの川崎演出も見てみたいと思います。
レギュラン星人の流星群による「石ぶつけ作戦」(風車を持ったレギュラン星人ソフト人形がいいね)に反対するマイを無視するアスカ、スーパーガッツの面々が良い! 山田まりやの態度はムカツクって、前々から思ってたんだよなぁ(笑)。ホリイのいつもと違うミョーな態度も笑える。危険があぶないね。
スペシウム砲を装備した巨大ロボ・マウンテンガリバー5号、略してMG5(笑)。(「マウンテンガリバー」は『ティガ』1話ラストでムナカタ副隊長がティガに命名しそうになった名前(笑)。MG5は『帰ってきたウルトラマン』(71年)の主演・団次郎が60年代にCM出演した資生堂の男性用化粧品のブランド・MG5ですね)
設計ミスにより、ちびすけマイしか乗れずムリヤリ乗せられる。(「アルチハンド」ってレナが『ティガ』5話「怪獣が出てきた日」のゾンビ怪獣シーリザー戦のときガッツウィング2号から使ったやつだっけ?)
イヤイヤだったマイ。だが、戦っているのは自分だけではなくレナ、キャプテン・ムナカタ(笑)らだって戦っている。そして彼らは生きるか死ぬかの瀬戸際の中でMG5に不慣れなマイをフォローしてくれているのだ。心動かされたマイはスペシウム砲片手に流星群をなぎ倒す。(当時の音源の流用なのだろうか? あのちょい高めの発射音、いつ聞いてもイイですねー)
スペシウム砲についてはマニアギャグと言ってしまえば、それで終わりだけどもっと深く考えれば初代『ウルトラマン』(66年)の世界と『ウルトラマンダイナ』(97年)の世界は一本につながっていると考えられますね(???)。誰か長谷川裕一先生の『すごい科学で守ります!』(98年・日本放送出版協会・ISBN:4140803649)のごとく、すべてのウルトラシリーズをつなげてみてはいかが?
キティ小隊のリーダー・レナ。女性だけのチームってかっこいいね。しかしトロそうな吉本多香美(演者)につとまるのだろうか? でもかわいいから許そう(汗)。
それにしてもダイゴは奥さんのレナばっか働かせて何もしてないのだろうか? もしかしてヒモですか?(笑)
キャプテン・ムナカタ、コケにされてますなぁ(笑)。艦首に大きなドクロ付きの大型母艦アートデッセイ(『宇宙海賊キャプテンハーロック』のアルカディア号と同じ!)に、たなびくマル「ム」マークがなんとも。
トランペット片手に親分呼ばわりされるムナカタはキャラクター的においしいのでまだ良いが、完璧に手下になってしまったシンジョウって……(笑)。
地球勢が全て撃墜され、巨大彗星に特攻を決意するムナカタら。
「男は負けるとわかっていても、戦わなければならない時がある」
僕らのようなスレたマニアにとっては、『ウルトラマンタロウ』(73年)26話「僕にも怪獣は退治できる!」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060917/p1#20060917f1)でのゲスト・江戸屋猫八師匠が演じた紙芝居屋のお父さんのセリフだけど、ここでは残念なことにその回の引用ではなく、普通に宇宙海賊キャプテンハーロックの名セリフの引用なのでしょう。よくあるセリフかもしれないけど、男としてグッとくる。
このあとダイナが登場。
ムナカタ「ウルトラマンダイナか……」(これは、『ティガ』5話シーリザー戦ラストのムナカタのぼやき「ウルトラマンティガか……」のパロディですな)
全身赤色のストロングタイプダイナですら止めることができない巨大彗星。
そんなときに傷ついたMG5が加勢にやってくる!
「恋人とデートができない」だとか「何も聞こえませーん!」とか不平不満を言っていたあのマイが火星の人々を助けるため、やってきたのだ!
「私にもできることを……」
あぁなんともけなげではないか。人として美しい姿ではないか。絶妙なタイミングでBGMにシリーズ前期ED(エンディング)歌曲「君だけを守りたい」がかかり感動も倍増!
そのときダイナの肉声を聞いたマイはダイナの正体に気付いた!?
ダイナの頭上に落石がゴーン。気絶するダイナ。
必死でダイナに呼びかけるマイ。その姿はやがて現実のアスカに重なっていく。
「目覚めよ、アスカ!!」(『ダイナ』3話のサブタイトルだね)
寝坊してロケットに乗り遅れたアスカとマイ。ヒビキ隊長、こんな隊員、クビにしろよ!(笑)
そ、今までのことは全部夢でした。チャンチャン。
おーい…… ここまで引っ張っておいて夢オチはないだろ? それとも「現実だったら、あの彗星はくい止められるはずもなく、マイの加勢はまったく意味がないことだ」とでも言いたいのでしょうか?
僕はあのオチは「逃げ」だと思います。川崎監督は照れがあると言いますか、やっぱりちょっと冷めてる印象を受けるなぁ…… ま、川崎監督に限ったことじゃないけれど、それが「大人」ってやつですかぁ?
この「うたかたの空夢」、全編ギャグにしてしまわないで、後半全滅するあたりからシリアスにしていったら、もっと良かったのではないだろうか?(あんまりシビアにしすぎてしまっても暗くなるので、あくまで程よく)
……ストロングタイプ・ダイナ、MG5全力で彗星をくい止めようとする。
「もうダメだ!」
そう思った瞬間、墜落したと思っていたキティ小隊、キャプテン・ムナカタら、スーパーガッツ全軍が最後の力を振り絞ってやってくる!
全員「負けてたまるかーっ!」(ここ、ポイント(笑))
全員の力が一つになり、彗星を撃破! ……ここで終わり。
または、怒ったヅウォーカア将軍がいよいよ姿を現し巨大化、火星に降り立つ。ダイナ、MG5とヅウォーカア将軍の最後の大決戦だ!
……って30分にまとまりませんでした。こりゃ前後編だね。何ならお祭り的なエピソードだったので、ウルトラ兄弟も出しちゃえ(笑)。多少の矛盾など気にしない、気にしない。
最近の特撮ものは伏線作りすぎですよ。あんまりそういうものにこだわりすぎるのもどうでしょうかね? もっとざっくばらんにやっても、バチは当たらないと思うぞ。
ムナカタらに無視されたり、レギュラン星人に袋叩きにされるアスカも面白いけど、MG5の加勢に燃えた僕としてはちょっと残念でした。(『ダイナ』1話「新たなる光(前編)」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971201/p1)で墜落したガッツイーグルα(アルファー)号に乗るってのがマニア泣かせ。チャリに乗る整備士(?)の方がいい味出してるね)
川崎郷太監督はすごくいいセンスを持った方なので、『ダイナ』の演出を2本だけ(なのかな?)しかやらないのは非常にサビシイ。できることなら川崎演出の戦隊やメタルヒーローも見てみたい。(それを言ったら、東映の渡辺勝也監督・田崎竜太監督・長石多可男監督あたりの『ウルトラマン』も見たいですが……)
ぜひ、また新作ウルトラでスカッとする脚本・演出をみせてほしいものです。
P・S 一部の監督たちは後期ED歌曲「ULTRA HIGH(ウルトラハイ)」(ASIN:B000064CCG)の「ハイ!」に画を合わせることに全力を注いでいるようだ(笑)。
『ウルトラマンダイナ』#42「うたかたの空夢」合評5 ~僕にもダイナの脚本は書ける
(文・いちふじ)
いきなりこのタイトルはマズいかもしれないが、しょうがないじゃない。こう言わせる話があったの、皆さんも心当たりがあるでしょう?
「夢オチ」はまずいよな。作り手の姿勢として、これはいけない。
ウルトラシリーズには、『ウルトラQ』(66年)第17話「1/8計画」とか、『ウルトラセブン』(67年)第43話「第四惑星の悪夢」とか夢オチの話はあった。しかし、これらは歪んだ未来社会を描いた話である。夢であったと明かしたことで「将来現実になるかもしれない恐ろしさ」の隠し味となっている。初代『ウルトラマン』(66年)第2話「侵略者を撃て」のバルタン星人の話がイデ隊員の夢オチならぬ寝ぼけたズッコケという、必要ない場面から始まっているのも、都心で核ミサイルやらラストでのミクロ化したバルタン族20億が乗っている宇宙船の大虐殺やらの陰滅さとのバランスと考えられる(当時はまだラフな時代だから、本当に何も考えていなかった可能性もあるけれど)。
が、『ウルトラマンダイナ』(97年)第42話「うたかたの空夢」が夢オチという形である理由については、「メチャクチャやって収拾をつけるには他にないから」ではないのかしら。「キャプテン・ムナカタ」が夢オチという形にしてまで訴えたかったことなのだろうか。
見落としがちなことであるが、前作『ウルトラマンティガ』(96年)以降の特徴として、監督と特撮監督の兼任が多いことがある。これは昭和ウルトラにはめったにないことである。
というわけで、川崎郷太は脚本・監督・特撮監督の全てを一人でやった第一号になったのだが、ここがポイントなのである。この三つを一人でやっていることにより「自分のやりたい映像を好きなように撮れる」という状況になったのだ。個性の強い実相寺昭雄監督でも、特撮はコンテを渡して終わりなのにである。
あいにくアニメ映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(88年)というのを見ていないので、どこがどうマネているのか分からなかった。しかし、MG5の発進シーンでずっと足元を映し、しかも静止しているかのように見えてしまっている図があった。これなどは普通なら映像表現に失敗した冗長な映像だとしてカットしただろう。脚本・監督・特撮監督すべて一人でやっていたからこその場面は、細かく挙げればキリがないだろう。
これらのごとき、本来許されざるストーリーと演出で1本丸ごと作ってしまえたのも、ひとえに一人で作らせた(から川崎の暴走を止められなかった)ためであろう。
しかし腑に落ちない事がある。冒頭タイトルで「僕にもダイナの脚本は書ける」と書いたが、もし我々特撮オタクが本当に「うたかたの空夢」に匹敵するイカレ話を作って円谷プロ文芸部(企画部)に見せたら、どのような仕打ちを受けていたか分からないだろう。
レギュラン星人に袋だたきにあっているアスカという、一瞬だったので前後のつながりがよく分からないシーンがあったが、円谷プロ所属(編:98年当時。後者はのちに退社)の江藤直行&右田昌万(みぎた・まさかず)にあんな目に遭うことは容易に想像できる。
「僕にもダイナの脚本は書ける」と、今でもそう思っている。ただし、書いても文芸部を納得させる自信はない。
なぜ、「うたかたの空夢」のような話で製作にかかれたのだろう。そんなに現場は切羽詰まっていたのだろうか。今の独特の映像センスを達成した川崎ならば何をしても許されるということだろうか。いずれにせよ、客観性を失ってしまったのはプロとしてはマズかった。川崎郷太と一部の人間は、次作『ウルトラマンガイア』(98年)で登板できなくても仕方がない。
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https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200404/p1
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#うたかたの空夢 #マウンテンガリバー5号 #ウルトラマンダイナ #ウルクロD #ウルトラマンクロニクルD
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