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ウルトラマンダイナ 〜創作脚本2「東京砂漠」


『ウルトラマンダイナ』評 〜全記事見出し一覧
『ウルトラマンダイナ』最終章三部作 〜賛否合評
『ウルトラマンダイナ』総論 〜ダイナの赤い輝きに
『平成ウルトラ』シリーズ評 〜全記事見出し一覧
[ウルトラ] 〜全記事見出し一覧


(文・久保達也)
(1997年12月執筆)

ウルトラマンダイナ』創作脚本2「東京砂漠」

蟻地獄怪獣アントラー
バラージ王女チャータム 登場


1 空(朝)

 どんよりとした曇り空。今にも泣き出しそう……


(M・ミュージック)「東京砂漠」(シーン3まで)
 (作詞/吉田旺 作曲/内山田洋 歌/前川清
 「(イントロより)
  空がないてる 煤(すす)け汚されて
  人はやさしさを どこに棄(す)ててきたの」

2 川崎・工場地帯(朝)

 どす黒い煙をモクモクと吐き続ける工場の煙突。

3 その付近の通学路(朝)

 下を向き、トボトボと歩いている一人の男子中学生。


 周囲から何かはやしたて、彼にケリを入れる悪童達。

4 東京・丸の内(朝)

 東京駅玄関口から続々と吐き出される大勢の人々。一様に無表情。


 それぞれの職場が所在するビルに次々と吸い込まれていく。


(M)「東京砂漠」
 「ビルの谷間の 川は流れない
  人の波だけが 黒く流れて行く」


コギャルの笑い声「キャハハハハハ……」

5 新宿・スタジオアルタ前(夕)

 何がおかしいのか、ひたすら笑い続ける三人の女子高生。

6 新宿・歌舞伎町(夜)

 傍若無人に振る舞う大勢の若者達。


 対立抗争を繰り広げる二組の少年グループ。派手な殴り合い。


 物陰からその様子を恐る恐る見つめる一匹の野良猫。

7 ゲームセンター

 クレーンゲームに興じる私服姿のアスカとマイ。


マイ「(大はしゃぎ)ほらほら、そこそこ、もう少しもう少し、ガンバレガンバレ!!」


 アスカ、マイのお目当てのヌイグルミをあと一息のところでGETし損ねる。


マイ「(失望)もう〜、ヘタクソッ!!(アスカの背中を思いきり叩く)」


アスカ「(顔を苦痛に歪めて)痛えなあ〜、
  オマエがギャーギャーうるせえから手元が狂っちまうんだよっ!!」


マイ「何よ、人のせいにしないでよ!!」


アスカ「そんなに欲しけりゃ自分でやりゃいいだろ!!」


 二人の対立、序々にヒートアップ……

8 新宿・中央公園(夜)

 ホームレス、一人ベンチでホテルの残り物の豪華なディナー。


 そんな至福のひとときを打ち破る、突然の強い地震


 慌てたホームレス、手から白身魚のムニエルを落っことす。


 それを拾おうと地面に顔を近付けると、地底から響き渡る金属音の様なうなり声。二度、三度、それは次第に地上に近付いてくる。


 ホームレス、ディナーもそっちのけで一目散にその場を走り去る。


 突如濛々と巻き上がる土煙。その中から現れる一対の巨大なノコギリ。辺りに響き渡る猛烈な金属音の様なうなり声!


 数組のカップル、悲鳴をあげて逃げ去る。


 ノコギリと金属音の持ち主、遂に地上に正体を見せる。


 それはカブト虫の様な頭にクワガタ虫の様なノコギリアゴを生やした、蟻地獄怪獣アントラーだ!!


 奴の周囲の地面、中心から外側に向かって陥没を始める。


 金切り声を発したアントラー、口の突起部分から猛烈な土煙を吐き出す。


 辺り一面、砂地獄……

9 新宿・副都心(夜)

 アントラーが吐き出した土煙を浴び、次第に砂に埋もれていく高層ビルの群れ……

10 新宿駅周辺(夜)

 走る山手線、中央線、埼京線の電車、アントラーの吐いた土煙にアッと云う間に押し流され、砂の海に呑み込まれる。

11 ゲームセンター

 外から聞こえる群集の悲鳴。


 ケンカを続けていたアスカとマイ、ただならぬ気配を感じ、外へ飛び出す。

12 新宿X丁目(夜)

 必死の形相で逃げていく群集。


 ゲームセンターから出てくるアスカとマイ。


 耳をつんざく金属音!!


アスカ「何なんだ、今のは……」


マイ「(驚いて)アスカ、大変!!(金属音がした方を指す)」


アスカ「(マイの指した方を見て)ん?」


 轟音と共に降ってくる猛烈な土煙、二人の上に覆い被さる。


 土煙の中でもがき苦しむアスカとマイ。


アスカ「(絶叫)うわあああ〜〜っ!!!」


 アスカの顔のアップ、ストップモーション


 それに被さる、アントラーの金属音の様なうなり声!!

13 スーパーGUTS(ガッツ)・作戦室

リョウ「アスカ、アスカ、返事をして! アスカッ!!」


コウダ「この非常事態にどこで遊び歩いてんだアイツらあっ!!」


ヒビキ(隊長)「仕方が無い。一刻も猶予は出来ん。俺達だけで行こう。直ちに出動!!」


コウダ・リョウ・ナカジマ・カリヤ「了解(ラジャー)!!」


 ヒビキ、コウダ、リョウ、ナカジマ、カリヤ、外へ飛び出していく。

14 スーパーGUTS本部・全景(夜)

 発進するガッツイーグル(戦闘機)。


(M)「Take off スーパーGUTS」インストゥルメンタル(シーン28まで)

15 空(夜)

 飛行するガッツイーグル。

16 新宿一帯(夜)

 一面の砂漠。その中でうごめくアントラー


 アントラー、飛来したガッツイーグルに向かって金切り声をあげ、巨大なノコギリアゴの間から虹色の電磁波光線を発射する。

17 ガッツイーグル機内

 操縦席の計器が一斉に狂い出す。


カリヤ「隊長、操縦不能です!!」


ヒビキ「なにっ!!」

18 空(夜)

 フラフラと降下していくガッツイーグル。

19 砂漠(夜)

 勝ち誇った様子のアントラー。勝利のおたけびをあげ、更に電磁波光線を吐き続ける。

20 ガッツイーグル機内

ナカジマ「あの虹色の光線に機体が吸い寄せられてるんだ!!」


ヒビキ「よおし、イチかバチか三機に分離してみよう。
  α号にカリヤ、β号にコウダ・ナカジマ、γ号にオレとリョウ(女性隊員)だ。直ちに配置につけ!!」


カリヤ・コウダ・ナカジマ・リョウ「了解!!」

21 空(夜)

 電磁波光線ギリギリの位置で三機に分離するガッツイーグル。


 それぞれ別方向に急上昇!

22 砂漠(夜)

 くやしそうに地団太を踏むアントラー

23 γ号機内

ヒビキ「(大きく溜息)フゥー、危ないところだった。
  よおし、三方から一斉攻撃だ! 虹色の光線につかまるなっ!!」

24 空(夜)

 α号、β号、γ号、アントラーに向かって一斉ビーム攻撃!

25 砂漠(夜)

 アントラー、集中攻撃を浴び、大爆発を起こしてひっくり返り、手足をバタバタさせる。

26 γ号機内

リョウ「(指を鳴らして)ヤッタ〜!!」

27 空(夜)

 アントラーに向かって急降下するα号。

28 α号機内

カリヤ「とどめだあっ!!」

29 砂漠(夜)

 アントラー、ひっくり返ったままノコギリアゴの間からα号に向かって電磁波光線を浴びせる!

30 空(夜)

 電磁波光線に捉えられ、落下していくα号。

31 β号機内

コウダ「(絶叫)カリヤ〜ッ!!!」

32 α号機内

カリヤ「(絶叫)わあああ〜〜っ!!!」

33 砂漠(夜)

 砂塵を巻き上げながら不時着するα号。


 アントラー、むっくりと起き上がり、砂を掻き分けて地底に潜っていく。姿を消してしまうアントラー

34 α号機内

 気絶しているカリヤ。

35 カリヤの幻想

 砂漠をさまようカリヤ。


 彼方(かなた)から聞こえてくる女声スキャット。(由紀さおり「夜明けのスキャット」風)


 女性らしき人影がカリヤに向かって歩いてくる。


 クレオパトラ風の衣装を身に付けた絶世の美女……不思議に光る青い石を手にしている。


 美女、カリヤに見向きもせず、青い石を持ったまま、通り過ぎる。


 「その石をくれ!!」とばかりに絶叫するカリヤ。


 美女、彼方に消え去る。


 突如アントラーの金切り声!


 振り向いたカリヤに向かって猛烈な土煙を浴びせるアントラー


 土煙の中でもがき苦しむカリヤ。


カリヤ「(絶叫)わあああ〜〜っ!!!」

36 メディカルセンター

 ベッドから飛び起きるカリヤ。


 周囲にヒビキ、コウダ、リョウ、ナカジマ。


リョウ「随分うなされていた様ね。悪い夢でも見てたの?」


 しばらく沈黙するカリヤ。やがてハッとして口を開く。


カリヤ「隊長、あの怪獣を倒せるのは、バラージの青い石だけです!!」


ヒビキ「!?……バラージ……青い石……(記憶を探る)」


ナカジマ「(笑って)カリヤ、オマエまだ寝ぼけてんのか?」


カリヤ「……今から50年前、中近東の砂漠の町・バラージにも奴は現れ、かつてシルクロードの交易地として栄えた町は衰退してしまったんだ……」

37 中近東・バラージ(初代『ウルトラマン』(66年)第7話「バラージの青い石」の映像を流用)


 古城を破壊するアントラー


 空の彼方から現れる初代ウルトラマン


 アントラーウルトラマン


 ウルトラマンアントラーに向かってスペシウム光線を発射!


 だが全く通用せず、猛然とウルトラマンに襲いかかるアントラー


カリヤの声「バラージが崩壊する寸前、神殿に奉られていた石像そっくりの光の巨人が現れ、あの怪獣に立ち向かった。
  だが彼も奴にはかなわなかった……」


 カリヤの幻想に登場した絶世の美女、神殿の中に走り、奉られていた石像の手から青い石を授かる。


 神殿から飛び出した美女、科学特捜隊・ムラマツキャップに青い石を託す。


カリヤの声「バラージの神殿には五千年前に怪獣を封じ込めたとされる青い石が奉られていた。そして……」


 ムラマツキャップ、アントラーに向かって青い石を放り投げる!


 大爆発を起こすアントラー


 仁王立ちになるウルトラマン


 美女とバラージの民衆、ウルトラマンに祈りを捧げる。


 「シュワッ」と一声、大空の彼方に飛び去るウルトラマン……

38 メディカルセンター

コウダ「カリヤ、お前どうしてそれを?」


カリヤ「TPCのライブラリーセンターに保存された、科学特捜隊の事件ファイルを調べたことがあるんです。
  今度の怪獣はバラージを襲った奴にそっくりだ」


ナカジマ「かがく〜、とくそうたい?」


ヒビキ「かつて我々と同じ様に、この星の平和を守る為に戦った勇敢な者達が居た。
  彼等の活躍により、あの怪獣は青い石の力で封じ込められた筈だ。一体何が奴の長い眠りを覚ましてしまったんだ……」


 ドアの開閉音。一同、一斉にその方を振り向く。


 クレオパトラ風の衣装をまとった一人の老女が立っている。


 老女、一同に向かって微笑みかける。


 唖然とする一同。


ヒビキ「(怪訝)あ、あなたは……?」


老女「私の名はチャータム。中近東の町・バラージでひっそりと暮らしている者です」


ヒビキ「チャ、チャータム!?」


 あまりの衝撃に声も出ないカリヤ。


チャータム「その節は本当にお世話になりました」


 一同に対し、深々と頭を下げるチャータム。


ヒビキ「いやいや、バラージを救ったのは我々では無い」


チャータム「判っています。でもこの国の人々に助けられたことに変わりはありません。
  今度は私が御恩返しをしなければなりません」


ヒビキ「チャータムさん、あの怪獣がナゼ目覚めてしまったのか、あなたはご存じありませんか?」


チャータム「数日前、バラージ近郊で某国が地下核実験を行いましたね」


ヒビキ「バラージ近郊で?……じゃあ、あそこが……しかしあの付近には、人々は誰も……」


チャータム「住んでいるのは私と側近の者だけですから……バラージは地図にもありませんし……
  (寂しそうに)やはり皆バラージのことなどとうに忘れてしまったのですね。
  アントラーでさえバラージには目もくれず、何処へと去ってしまった……」


リョウ「地球上の全ての国が軍備を棄てた筈なのに、X国だけが密かに兵器を隠し持ってた。
  文明によって目覚めた怪獣が、今度は文明を滅ぼそうとしている。皮肉な話だわ……」


コウダ「ならば文明を使って奴を倒すまでだ!!
  チャータムさん、あなたの町に迷惑をかけた責任は、必ず俺達が取ります!!」


 警報ブザーが鳴る。


スピーカー「緊急警報! 銀座にアントラーが現れました! スーパーGUTSは直ちに出動して下さいっ!!」


ヒビキ「よおし、コウダ・ナカジマ・リョウ、出動だっ!!!」


コウダ・ナカジマ・リョウ「了解!!!」


 飛び出していくヒビキ、コウダ、ナカジマ、リョウ。


カリヤ「(飛び出していく一同に)みんなっ!!」


ヒビキ「(廊下からカリヤを振り向き)オマエはチャータムさんの話し相手をしてやれ!!」


 ドアが閉まる。


カリヤ「チャータムさん、昔アントラーを封じ込めた、あの青い石は……」


チャータム「あれは、もうありません」


カリヤ「光の巨人でも倒せなかったアントラーを、我々の力で撃退することが出来るでしょうか?」


チャータム「信じるのです、ノアの神を」


カリヤ「ノアの神?」


チャータム「半世紀前、バラージがアントラーに襲われた時、この国の人々は私達の為に勇敢に戦って下さった。だからノアの神はあの青い石に力をお与えになったのです。
  その後もこの国の人々は、怪獣達に対して決して逃げることは無かった。ノアの一族はその度にこの国を守る為に光臨した筈です。そして今も……」


カリヤ「……ダイナ!?」


 大きくうなずくチャータム。


カリヤ「こうしちゃいられない!」


 ベッドから飛び起きるカリヤ。


カリヤ「チャータムさん……」


チャータム「(うなずいて)行きなさい」


 チャータムに敬礼し、飛び出していくカリヤ。


 カリヤを見送り、天に向かって祈りを捧げるチャータム。

39 銀座(昼)

 時計台を突き崩して地上に出現するアントラー、大混乱の地上めがけて猛烈な土煙を吐く。


 ビルも車も人も一気に砂に飲み込まれ、一面の砂漠と化す大都会。


 彼方から飛来するガッツイーグル。


 アントラー、例によって電磁波光線を発射!

40 ガッツイーグル機内

ヒビキ「フン、やはりそうくると思ったぜ。ナカジマ、電磁波防御バリヤーだ!!」


ナカジマ「了解!!」

41 空(昼)

 ガッツイーグルの機体に張り巡らされる電磁波防御バリヤー。


 電磁波光線をものともせず、アントラーに急接近、強力なビームを見舞うガッツイーグル。

42 砂漠(昼)

 腹に命中、大爆発を起こすアントラー、悲鳴の様な金切り声をあげ、大地にひっくり返る。

43 ガッツイーグル機内

 歓喜する一同。


ヒビキ「よおし、今度はあのノコギリをヘシ折ってやれ!」

44 砂漠(昼)

 ひっくり返ったアントラーに急接近するガッツイーグル。


 突然むっくりと起き上がり、ノコギリアゴでガッツイーグルを挟みつけるアントラー


 「ギシギシギシ……」と歯ぎしりの様な音をたてるノコギリアゴ

45 ガッツイーグル機内

コウダ「隊長、ダメです。ビクとも動きません!!」


ヒビキ「分離出来んかっ!!」


ナカジマ「ダメです。分離不可能!!」

46 砂漠(昼)

 ガッツイーグルを挟みつけたまま、カブト虫の様な頭をグルグルと回転させるアントラー

47 ガッツイーグル機内(画面回転)

一同「(悲鳴)わあああ〜〜っ!!!」

48 砂漠(昼)

 アントラー、地上からレーザー砲を背中に受ける。爆発!


 アントラーが仰け反ったすきにハサミが開き、ガッツイーグル脱出に成功!

49 ガッツイーグル機内

コウダ「(大きく溜息)助かったのか」


リョウ「(地上を指し)あ、アレは!!」

50 砂漠(昼)

 地上を駆ける特殊四輪駆動車・ボッパー。

51 ボッパー車内

 運転席にカリヤの勇姿!

52 砂漠(昼)

 アントラーに正面からバウンティ砲を発射するボッパー。


 ノコギリアゴでボッパーを襲おうと、低く身構えるアントラー


 ボッパー、ノコギリアゴアントラーの股の間を潜り抜ける。


 振り返り、必死でボッパーを追いかけるアントラー


 いつの間か現れ、その様子を見守っているチャータム。


 チャータム、天に祈りを捧げ、目を閉じる。

53 異空間

 気絶しているアスカ、何かからの呼びかけに目を開ける。


チャータムの声「私の声が聞こえますか」


アスカ「だ、誰だアンタ?」


チャータムの声「私の名はチャータム。テレパシーで貴方(あなた)に呼びかけています」


アスカ「チャータムだかメンソレータムだか知らないけど、オレに何の用?」


チャータムの声「地上の世界が大変なことになっているのです」


アスカ「(ハッとして)そうだった!!」


チャータムの声「今こそノアの神のお力が必要なのです」


アスカ「ノアの神? いや、オレはそんなもんじゃ……」


チャータムの声「いいえ。貴方はノアの一族である筈。その証である品をお持ちの筈です。
  さあ、今こそノアの力をお与え下さい!!」


 アスカ、ポケットからリーフラッシャー(変身道具)を取り出し、まじまじと見つめる。


アスカ「……これが……ノアの力……」


 アスカ、リーフラッシャーを高く掲げる。


 眩い光が彼を包み、ウルトラマンダイナ(フラッシュタイプ)登場!


 ダイナ、ミラクルタイプにチェンジ、ドリルの様に高速回転して地上に飛び出す!

54 砂漠(昼)

 大地を突き破り、飛び出してくるダイナ。


 アントラーに追い着かれ、掴み上げられるボッパー。


 ダイナ、アントラーの腹に鉄拳を見舞い、ボッパーを奪い取る。


 地上にゆっくりと降ろされるボッパー。

55 ボッパー車内

カリヤ「(歓喜)ダイナ!!」

56 砂漠(昼)

 金切り声をあげ、ダイナに突進するアントラー


 ノコギリアゴでダイナを挟みこみ、怪力で押さえつけるアントラー。「ギシギシギシ……」


 ダイナ、身体を縮小させ、ノコギリアゴからスルリと抜ける。


 「エ〜、なんでそうなるの?」という仕草を見せるアントラー


 ダイナ、ストロングタイプにチェンジ、両手でノコギリアゴを外側に大きく開いてヘシ折ろうとする。


 アントラー、ノコギリアゴの間からダイナの顔面に電磁波光線を浴びせる。


 アントラーの身体に吸い付けられるダイナ。


 アントラー、今度は目から無重力光線を浴びせ、ダイナを空に浮かび上がらせる。

57 空(昼)

 空中でもがき苦しむダイナ。


 飛来するガッツイーグル。

58 ガッツイーグル機内

ヒビキ「コウダ、奴の目を狙え!!」


コウダ「了解!!」

59 空(昼)

 アントラーの目をめがけ、強力なビームを見舞うガッツイーグル。

60 砂漠(昼)

 命中、爆発!


 無重力光線から解き放たれ、地上に落下するダイナ。


 アントラー、ガッツイーグルに向け、猛烈な土煙を浴びせる!

61 空(昼)

 砂塗れになり、下降を始めるガッツイーグル。

62 ガッツイーグル機内

 前方の視界が閉じてしまう操縦席。


ヒビキ「やむを得ん。不時着する!!」

63 砂漠(昼)

 地上に不時着するガッツイーグル。


 それを襲おうと接近するアントラー


 ダイナ、ガッツイーグルの上に覆い被さる。


 アントラー、ダイナの背中にノコギリアゴを突き刺す! もがき苦しむダイナ!

64 ガッツイーグル機内

 ダイナの苦しむ声が聞こえてくる……


ナカジマ「ダイナは、オレ達の為に……」


リョウ「アタシ達のことはいいの! (絶叫)戦ってダイナ!!」

65 砂漠(昼)

 背中にノコギリアゴが突き刺さり、全く動けないダイナ。


 カラータイマーが点滅!


 とどめを刺そうと更に深く突き刺そうとするアントラー


 アントラーの背後からバウンティ砲を発射するボッパー。


 だが今度はナゼか通用しない!

66 ボッパー車内

カリヤ「(怒り)野郎う〜〜っ!!!」

67 砂漠(夕)

 天に向かって祈りを続けるチャータム。


 空の彼方から一つの赤い球体がゆっくりと降りてくる。


 チャータム、それに向かって更に祈りを続ける。


 やがて地上に落下、大爆発を起こす赤い球体。


 中から現れたのは……


チャータム「ノアの神!!」

68 ボッパー車内

カリヤ「(衝撃)あ、あれはっ!!!」

69 砂漠(夕)

 仁王立ちの初代ウルトラマン!!!


 アントラーのノコギリアゴを怪力で持ち上げ、ダイナを救うウルトラマン


 ダイナ立ち上がり、ウルトラマンと互いの勇姿を見つめ合う。


 ウルトラマンアントラーに向け、うずまき状のアタック光線を発射!


 金縛りになるアントラー


 ダイナ、アントラーに向け、ソルジェント光線を発射!


 アントラー、大爆発を起こし、木っ端微塵に吹っ飛ぶ!


 ウルトラマンの足元に駆け寄るチャータム。


チャータム「(ウルトラマンを見上げ)ノアの神……」


 チャータムひざまずき、ウルトラマンに祈りを捧げる。


チャータム「ノアの神、アントラーによってこの国は滅亡寸前になってしまいました。
  どうか私に半世紀前の御恩返しをさせて下さい」


 ウルトラマン大きくうなずき、カラータイマーからチャータムの王冠に光る青い石に向けて、一条の光線を発射する。


 チャータムの王冠が光り輝く!


 チャータム、天に向かって大きく手を広げる。


 奇跡が起こる! 一帯の砂が次第に消滅、元通りの大都会が現れる。

70 新宿(夕)

 空高くそびえ立つ高層ビルの群れ。


 何事も無かったかの様に走行する山手線、中央線、埼京線の電車。

71 銀座(夕)

 次々に意識を回復した人々、銀座のド真中にそびえ立つウルトラマンの姿を見上げ、驚嘆の声をあげる。だが一組の老夫婦は……


妻「(ウルトラマンを指し)お父さん、見て。ウルトラマンよ」


夫「(ウルトラマンを見上げ、感慨に耽る)久しぶりだなあ。何年ぶりだろう……
  お〜い、元気でやっとるかあ〜。俺達も元気だぞ〜っ(ウルトラマンに手を振る)」


 大きくうなずき、群集に右手を振るウルトラマン。左手にはチャータムの姿……


コウダ「ウルトラマン……」


ヒビキ「その昔、科学特捜隊と共に地球の平和を守った、M78星雲の光の戦士だ……」


 ダイナ、ウルトラマンとガッチリと握手を交わし、空の彼方に飛び去る。


 チャータム、ウルトラマンの手の上からダイナを見送り、地上のスーパーGUTSに呼びかける。


チャータム「私はバラージに帰ります」


ヒビキ「チャータムさん、あなたのおかげでこの街は元通りになった。本当にありがとう!!」


チャータム「いいえ、ノアの神の力です。貴方達がこの街の為に必死で戦ったからこそ、ノアの神が力をお与えになったのです(カリヤを見つめる)」


 大きくうなずくカリヤ。


 走ってくるアスカ、チャータムを見上げる。


チャータム「貴方達が居れば、二度とこの街が砂漠になることも無いでしょう。
  貴方達のそばには、いつもノアの末裔(まつえい)がいらっしゃるのですから……(アスカを見つめる)」


アスカ「(自分を指す)エッ、オレが!?(当惑)」


 チャータム、ニッコリと微笑み、一同に手を振る。


 ウルトラマン、チャータムを手に「シュワッ」と彼方に飛び去る。


 ウルトラマンとチャータムを見送るスーパーGUTS。

72 空(夕)

 チャータムをバラージへと送るウルトラマン


(M)「東京砂漠」
 (有名なラストのサビの歌詞が流れる……)

73 銀座(夕)

 一件落着。安堵の表情のスーパーGUTS。


ナカジマ「しかしチャータムさん、変なこと言ってたなあ。
  オレ達のそばに、いつもノアの末裔が居るって。誰のことだろう?」


コウダ「チャータムさんその時、アスカのこと見てたよなあ?」


カリヤ「(衝撃)アスカが、ノアの末裔!?」


 一同、アスカを取り囲んでジロジロと見つめる。


アスカ「(困惑)な、何なんだよっ!!」


 しばし沈黙の時が流れる。


リョウ「(呆れて)バッカみたい!
  アスカがノアの末裔だったら、大事件の最中にトンズラする訳ないでしょっ!!」


ヒビキ「ちげえねえ。(豪快)アッハッハ……」


 一同、爆笑の渦に包まれる。


アスカ「ちぇっ、失礼するぜ、全く……」


 ふてくされた表情のアスカ。

74 新宿X丁目(夕)

 アスカにねだっていたヌイグルミを手に、うつ伏せに倒れていたマイ、気がついてゆっくりと起き上がる。


マイ「(周囲を見回し)あれ、アスカは? (叫ぶ)アスカァ〜!!」


アスカの声「マイ、オレは無事だ」


マイ「(ウイット(通信機)に向けて)アスカ、今どこに居るの?」


アスカの声「オレは今銀座だ」


マイ「銀座? 何でそんなとこに居るのよ〜!!
  アタシを見捨ててそんなとこまで逃げてっちゃったのっ!! もう〜アスカのバカァ〜〜!!!」


 ヌイグルミの頭を何度も殴りつけるマイ。

75 銀座・博品館前(夕)

 ウルトラ兄弟姿のサンドイッチマン達と戯れるスーパーGUTSの面々……



(終)


(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2000年号』(99年12月26日発行)「ウルトラマンダイナ」評より抜粋)


『假面特攻隊2000年号』「ウルトラマンダイナ」創作脚本関係記事の縮小コピー収録一覧
週刊新潮 1999年10月21日号 結婚 ミスコンの女王を見染めた「故石ノ森章太郎」の長男 〜1頁記事。97年1月に死去した石ノ森。その長男・小野寺丈(33・『ダイナ』のナカジマ隊員)が同年7月に出会ったタレントの白石さおり(29)と1年3ヶ月の交際を経て、99年10月30日に東京プリンスホテルでゴールイン予定(小野寺のプロポーズは出会いから2週間後・笑)。両者にインタビュー。


[執筆者・付記]:

 『ウルトラマンダイナ』(97年)の世界観が、初代『ウルトラマン』(66年)とつながっていないことはもちろん知っていますが、あえて確信犯でこの回だけ番外編として初代『ウルトラマン』につながっていることにしてみました。
 あとはカリヤ隊員を少しでも目立たせようと……。
 歌謡曲「東京砂漠」(76年・ASIN:B000UVJHQCASIN:B000EOTI2S)をイメージ歌曲に使用したのは、単に筆者が60〜70年代歌謡曲マニアでもあるからです(笑)。



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