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機動新世紀ガンダムX

『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』(15年) ~ニュータイプやレビル将軍も相対化! 安彦良和の枯淡の境地!
『機動戦士ガンダムNT』(18年) ~時が見え、死者と交流、隕石落下を防ぎ、保守的家族像を賞揚の果てに消失したニュータイプ論を改めて辻褄合わせ!
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『機動新世紀ガンダムX』小評

(文・摩而ケ谷行久)
(1996年8月執筆)


 つまらなくはないが、なんか薄く感じる。ニュータイプという言葉をそのまま使ってしまったりして芸がないわりに書き込まれて行かないし、戦争の象徴であり憎悪の対象たるガンダムなど設定としてあるだけで本編で生きていない。他にも突き詰めれば面白くなりそうな所が結構あって実にもったいないぞ。まあいろんな要素が相殺しあってるのだと思うのだが、何より作り手がどうしたいのか見えて来ないのだ。


(1996年12月執筆)
 夏頃、ジャミル艦長(編:元ニュータイプパイロット。初作『ガンダム』の主人公アムロや好敵手シャアの成れの果てに相当)の「15年前には誰もが人の革新を信じていた」発言に不安を感じていたら某AM誌の高松信司監督インタビューによると本当にメタフィクションの意図だったそうで。自分は『ガンダム』の影響を受けているから新しくオリジナルなものは作れない、なんて『ガンダム』の器を借りてグチる前にまず作ろうとしてくださいよ。「憑き物落とし」に作品を使う気持ちは分かりますけど、それはやっぱり「狭い」のでは。


(了)
(初出・オールジャンル同人誌『きみこそ勇者 第30号』(96年12月24日発行)〜『假面特攻隊ターンAガンダム特集号』(99年8月発行)所収)


『機動新世紀ガンダムX』2クール終盤感想

(文・T.SATO)
(1996年11月執筆・後日加筆)


 「パッケージはマイナーでも、中味はメジャーで行きたい」とのアニメ誌でのプロデューサー氏の発言。いやぁ世の中における『ガンダム』およびアニメの位置付けをよく判っていらっしゃる(笑)。
 『機動新世紀ガンダムX』(96年)。本来あるべき初作『機動戦士ガンダム』(79年)の正当なる続編がここにある!? 地球と宇宙植民者との戦争で、核の冬状態(?)となり壊滅した地球の、復興がはじまった戦後15年が舞台。荒廃した荒野をランドシップで交易し、山賊まがいが跋扈して……。往年の富野アニメ『戦闘メカ ザブングル』(82年)のビジュアルも想起させる。
 そして、良くも悪くもナイーブな『新世紀エヴァンゲリオン』(95年)には絶対出てきそうにない、バイタリティあふれるガンダム乗り主人公少年。渋谷系ストリート系トッポい兄貴と地方ヤンキー系兄貴のガンダム乗り青年。主人公少年と彼らの異世代コミュニケーション・キャラシフト! さらに、ニュータイプ・テーマを扱いつつも、主人公少年がニュータイプではないという!
 第一印象として非常に見やすくて、その上でツボを押さえていることを指摘しておきたい。
 直前作『新機動戦記ガンダムW(ウイング)』(95年)にインパクトで若干劣るものの、個人的には#1からハマっている。
 最近(2クール終盤)では、新連邦VS小国編がスゴい。むろんドラマとしてスゴイのだが、90年代合体ロボアニメ『元気爆発ガンバルガー』(92年)、『熱血最強ゴウザウラー』(93年)、『勇者警察ジェイデッカー』(94年)などで良編を多数ものしてきた脚本の川崎ヒロユキ氏の政治観はミクロを描いているとはいえ、『W』のマクロの政治観の深みに劣らない。
 むろんアタマでっかちな観念的政治劇・宮廷陰謀劇に終わらせず、小国政治劇の中心にいるゲストの王子とレギュラー連との人間的交流をしっかり描く中で、王子の取り巻きのハト派タカ派の官僚(?)の描写を通じて、自身の多面的な政治観を、浮き足立たずイヤミなくウキボリにしていくところがまたウマい。
 ラストは主人公チームが肩入れして共闘してきた小国の敗戦で終了。憎まれ役のタカ派の老官僚も、彼は彼なりに国家と王子のことを考えていたのだ、という泣かせる展開で、物語としてもキッチリ片を付けてくれて大満足。というか、涙があふれて止まらない。
 あの結論は、旧時代・封建的(汗)なものであると批判する御仁もあるかもしれないが、劇中で描かれたあの国の歴史的・政治的発展段階(国情)としては、あの倫理が妥当であり最善の選択なのである。
 ここまでくると、NHK大河ドラマ『八代将軍 吉宗(よしむね)』(95年)で、人間ドラマと宮廷政治劇をエンターテイメントとして昇華してみせた脚本家・ジェームス三木に匹敵するゾ(マジで・笑)。


(了)
(初出・オールジャンル同人誌『きみこそ勇者 第30号』(96年12月24日発行)〜『假面特攻隊ターンAガンダム特集号』(99年8月発行)所収)


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