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仮面ライダー龍騎 〜前半合評2 小林靖子VS井上敏樹!


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仮面ライダー龍騎 〜前半評⑤ 小林靖子VS井上敏樹

(文・T.SATO)
(02年1月執筆)
 仮面ライダー龍騎の顔は、仮面ライダーがさらに仮面をかぶったスタイル。マニアさまがたは抵抗を抱かれるでしょうが、結局は慣れだと思う。多分、今時の大方の視聴者なら、そしてマニアも数話で慣れちゃうゾ(笑)。
 カードを使ったギミックでオモチャっぽさも高めるようだが、今やバンダイもマニアあがりのスタッフが牛耳る時代。一方で東映がオモチャとは別に作風でアダルト志向に走っても現在ではあまり文句を付けることもないようだ。それが良いのか悪いのかはわからない。多分、一長一短だろう。


 01年11月時点での情報スジによれば、メインライターはおなじみ小林靖子さんと聞いている。
 たしか東映メタルヒーロー『特捜ロボ ジャンパーソン』(93年)の敵幹部・ジョージ真壁(まかべ)のそっくりサンが出る話がデビューで1本担当、翌年の『ブルースワット』(94年)では数本執筆。『重甲ビーファイター』(95年)は飛んで最終回の番外前後編のみを執筆(『集結!! 3大英雄(ヒーロー)』……ジャンパーソン&ブルースワットビーファイター共演編で、3作品の正義キャラ&敵キャラすべてに見せ場を与えた攻防戦・シーソーゲーム一本槍の大ケッサク!)。


 そのあとの大車輪の活躍はご存じの通り。『星獣戦隊ギンガマン』(98年)、『未来戦隊タイムレンジャー』(00年)のメインライターでキッチリカッチリした作劇を今度はいかんなく1年間にわたって展開。
 筆者の視聴・未視聴に関わらず、女史の関わったジャンル作品は、アニメ『星方天使エンジェルリンクス』(99年)、ロボアニメ『GEAR戦士(ギアファイター)電童』(00年)、東映アニメフェアの映画『デジモンテイマーズ』(01年)、あとWOWOW(ワウワウ)放映の1クールもの美少女アニメあぃまぃみぃ!ストロベリー・エッグ』(01年)等。


 直前ワクの『戦隊』との差別化で、『仮面ライダークウガ』(00年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090907/p1)以来のアダルティーかつオシャレ路線・イイ男・イケメン路線は堅持するだろうし、それが今ある程度ウケているのが現実なのだから、リアリスト・現実主義者として2002年1月の時点では、新作『仮面ライダー龍騎』(02年)の方向性と小林靖子のシリアスドラマ志向を肯定するにやぶさかではない。
 無論、だからといって『戦隊』的、端的には『百獣戦隊ガオレンジャー』(01年)的なチャイルディッシュ・コミカル路線を否定する気も毛頭ないのだが(笑)。



(02年6月執筆)
 今度は仮面ライダー同士で殺しあう! ……なんてことは営業的ウリ文句で、怪人ならぬ人間がヘンシンして戦う以上、多分ライダーがライダーを直接殺すことはないだろう……(後日付記:02年6月初頭での感慨。予想は同月中にハズれた・汗)。


 #1、2から面白いとの声が周囲でけっこう多いので驚いた。個人的には#1、2にはあまりノれなかった。
 いや基本設定の呈示(鏡の中の世界・ミラーワールドからモンスターが現れヒトを喰う)とか、仮面ライダーに変身するとミラーワールドに潜入できるとか、ミラーワールドは現実の左右反転世界(生物のみ存在せず)でバトルフィールドだとか、そこは判りやすくかつ面白い。


 作風・ビジュアル・キャラ自体も前2作の『仮面ライダークウガ』(00年)、『仮面ライダーアギト』(01年)路線のアダルト・おしゃれ路線であることも、前作がその路線で成功して視聴率調査の結果に現れるほどF1・F2の女性層にまで客層を若干拡げたのだから、それを継続するのはまちがっていない。
 直前30分前ワクの『戦隊』シリーズとの差別化でも悪くない(……余談だが我々年長の男性オタク族は視聴率調査に現れないほど少数派だってことをマニア諸氏は理解されたし・笑)。


 ただ、お話自体はメリハリさや劇的さに欠け、キャラもイマイチ立ってないような感を覚えた。
 『アギト』#1が無難な展開でありつつも、仮面ライダーの登場とバトルBGMと必殺ワザ・ライダーキック直前のタメの構え(&足許の地面にアギトマークが光り浮かぶ)が猛烈にカッコよく、それだけで全てが許せるほどの盛り上がりは私的に抱かせたのとは正反対だ
 (まぁ普遍性ある感慨とは云えないかもしれないが……。ちなみにアギトのキック前のタメは、それなりのリアルっぽさと古典的様式美を、超自然的設定を媒介に両立させた好例だとも思う)。


 90年代中盤のデビュー以来、そしてメインライターに昇格してから、アニメも含めて常に複数掛け持ち・売れっ子ライターとなった近年でも、コンスタントに緻密かつドラマチックでマニアックな高品質の作品を、でも基本的にはカッコいい熱い男のバトルのカタルシスとしてモノしてきた小林靖子女史。
 本作でも、きっとやってくれるだろうと信じていたが、#1、2に関しては個人的には小林さんらしさが出ていないような気がした。
 『星獣戦隊ギンガマン』(98年)#1、『未来戦隊タイムレンジャー』#1(00年)での充実度、過不足ない基本設定・メインキャラの呈起とフェイントまじえてのドラマ的興趣と盛り上がりに比すべくもない気がしたのだ。
 どこか焦点が定まらず未整理で淡々としたノリで……。ただコレは『戦隊』と比較すれば、『龍騎』が明確な様式美志向ではなく一応のリアル寄り・深夜ドラマ的アダルティー作風であるために、あえてこうしたのか、あるいは筆に迷いが生じたゆえなのかもしれないが。


 ただし『龍騎』という作品全体について、大きな心配をしたワケではない。小林女史のことだから、じょじょに盛り上げていって手堅く仕上げてくれるだろうと予想していた。
 ……余談だが、90年代中盤まで活躍していた往年のベテランライター陣のドロくささに比して小林センセは現代的でスマートだと思っていたけれど、完全に世代交代なった今日、クールでドライな井上敏樹や宮下隼一センセに比較すれば相対的には小林センセはパッションで浪花節(なにわぶし)なヒトだなと今は思う(笑)。


 案の定、#1よりは#2、#2よりは#3という感じで私的にはじょじょに好印象をもたらしはじめた
 (3人目のライダーこと仮面ライダーシザースの正体がニセ刑事とは(笑)。……後日に商業誌などを読むと悪徳刑事って記述もあるネ。ドーとでも取れらぁ・笑)。


 しかし……。#7からはじまる4話連続の井上敏樹脚本編がそれまでの霞みを一掃し、いきなしホームランをかっとばす!
 コレはやはり我々がマニアだから、よけい脚本家の名義で文脈や作家性を拡大して認識してしまう悪癖でもあろうが、イキナシそこは前作『アギト』的、『超光戦士シャンゼリオン』(96年)的、敏樹ワールドと化していた(笑)。


 少々ワルで不遜なダンディズムとセクシュアリティ。アニメ的(敏樹的?)お約束反復ギャグとボケ。……水と油の二要素の両立が敏樹の特質だ。
 もう一方の主人公・コウモリをモチーフにした濃紺色の仮面ライダーナイトこと秋山蓮(あきやま・れん)のダーティーかつ不遜な魅力は、敏樹の筆致によってこそ冴え渡る。
 白倉伸一郎PD(プロデューサー)の思惑(おもわく)は、城戸真司(きど・しんじ)こと仮面ライダー龍騎&秋山蓮こと仮面ライダーナイトを小林女史が掘り下げ、井上氏が世界観を拡げるというものだそうだが、蓮の不遜な立ち居振る舞いの描写は井上敏樹こそが適任ではあるまいか!?


 そして出てくるモチーフはバッファローだというワリにはスマートな緑色のロボコップもどきなガンによる銃撃をもっぱらとする4人目の仮面ライダーゾルダ。その正体はよりにもよってヤリ手の悪徳青年弁護士!(笑)
 豪邸に住まい美食家でキザでスマートにスーツで決め、欲望肯定・苦労否定の享楽人であることを念入りにもセリフまで用いて宣言・語らせてしまう(!)という生粋の井上敏樹キャラで、もう両手をたたいて大拍手! 出た! 待ってました!って感じで、私的には笑いをこらえずにはいられません。
 もちろん半分以上は(ほとんどは?)、井上敏樹ご本人のポリシー・ホンネでもありましょう。


 弁護士につきしたがう浅野忠信(役者)似の金髪、アゴヒゲ面、怖やさしそうなオトコ気ありそな寡黙な召使(?)ゴロちゃんもサイコーです。彼も選ばれて仮面ライダーになってほしいナ♥


 悪徳弁護士・北岡秀一はさっそく、我らが主人公・真司くんの弱小マスコミの職場の桃井令子(演:久遠さやか)さん――余談だが彼女こそ番組の真のヒロインだ!――にカマかけてるし……。
 『シャンゼリオン』での悪のライバルと正義側ヒロインとの、苦みキザ系イイ男&仕事できるプライド系イイ女同士の、条理を超えて眼と眼だけで反発魅かれあい、善悪超越した無意識な値踏みの計りあいの果ての、一瞬の弛緩に生じる恋情〜いつか通ずる背徳愛とか濃厚キスとか(笑)〜、敏樹が今後もたくさん執筆するならありうる展開ではあるだろう!?
 ……欲望肯定、モラルもウスいイヤなヤツと見せかけ、最後にチラリとイイとこや弱みを見せるあたりも敏樹節が全開です!


 なお、最後にチラリとイイとこ見せるあたりは、大衆受け・俗受けを意識して一応、物語的結構・ウェルメイドに納めてみせただけで、前作『アギト』での主人公・翔一クンの「みんなの居場所をまもるために……」のセリフ同様、井上敏樹がホンキで云ってるモノだとは思われないけどネ〜。


 ちなみに翔一クンのセリフだが、あんなのは『アギト』のテーマじゃない!(笑) とりあえず直前作『クウガ』のスタイルやキャッチフレーズ「みんなの笑顔をまもるために」を踏襲してみせるエクスキューズでしょ。
 敏樹は居場所にこだわるような精神的に弱いヤツじゃないし、居場所探しをするほどイマ・ココじゃないヨソをロマンチックに求めるヤツでもなく、ドコででもフンって感じで超然としているヤツだろう。
 井上敏樹は親父の名脚本家・伊上勝(いがみ・まさる)を超えようと意識している……という記述もドコかで目にしたが、ナイナイそれはナイ。最初から親父と別ものか、自分の方が上と思ってるくらいのヤツだろう(笑)。
 それはそれでそーいう文学青年的ナヨっちいメンタルの持ち主じゃない土壌から出現する物書きもいるのだし(銀座のママ上がりとか山田詠美とか・笑)、またいてもイイのだということを一部マニアは了解されたい。


 敏樹本人は昂ぶりというのではなしに自分に自信を持っていて、オタク的・文学青年的劣等感とは無縁で、その方面では自我がゆるがない御仁だろうと、なんとなく筆者は作品から受ける感慨で分析している。
 センシティブなところ(我々オタクにも分析しやすい・笑)から敏樹の作品は立ち上がらないが、それ以外の感情から敏樹の作品は醸される。


 『超光戦士シャンゼリオン』放映当時(96年)の東映ホームページで(今でも残ってるかな?)、白倉PDと敏樹の対談が掲載されていて、敏樹が長身で(安直に云えないけどその方面での劣等感は抱かないだろうから人格形成の一端は成しているでしょう)、東映社内だかでコピー機の操作を教えてあげたら当然のごとく礼も云わず頭も下げず横柄といわずとも態度デカく傲然とコピーしてたという話題がたしかあり(記憶違いだったらゴメン)、さもありなんという感じで思わず吹き出してしまいました(笑)。


 こーいうヒトが世のため人のため自分を犠牲にして何かやったり、気遣い・心配りを周囲にするヒトだとは思われないし、ハタから見てるならともかくいっしょに仕事したくないし、そもダサくて弱そで背筋に芯通ってなくて腰ヒケぎみに話しかけるヤツなら氏の気性からして本能的にカルく見て口も聞いてくれないだろうナ、と予想するけども……(笑)。
 まぁそれでも積極的にヒトをイジメるとか悪事をするとかゆーのでないかぎり、イイんじゃないすか敏樹みたいなヒトもいて。そーいうヒトがいてはイケナイといわんばかりの世の中も息苦しいですョ。


 ……この類いの言動を行う人間や劇中キャラが、世間の風潮を世知辛くしスサませるという意見も判るけど、そーいう影響力もやはり上限あって一定以上の影響力までは行使できると思われないし……。
 一方でワルっぽいヤツが流通しつつも、他方で『アギト』の翔一クンや『ウルトラマンコスモス』(01年)の主人公・ムサシ隊員に演歌歌手・氷川きよし(笑)みたいな人畜無害さわやか安全癒し系みたいな連中も連綿と途切れないワケで……。
 ストイック志向も社会に責任を持たない思春期の少年少女が云ってる分にはまだ美しいけど、歳を経て社会の中心に居座るジジイ世代になると抑圧的な存在にもなりそうで、手放しで常に善とは云いかねる(ガミガミ親父も世には必要だけどもネ)。


 ちなみに、筆者個人もヒトによってはリアリティがないと云われようと、実は古典的キマジメ誠実ストイックヒーローが一番スキではあるけれど(註1)、一部特撮マニアにありがち、それ以外の軽佻浮薄ヒーローへの生理的・感情的反発というのはゼロではないにしろ、その感情に無自覚・無条件でベタベタに淫するのも、焚書坑儒スターリニズム毛沢東的でイヤだなぁ。
 なぜにそこまで神経質・感情的に反発するのかは、逆に作品論ならぬ観客論、視聴者側たるマニアの性格類型・心理・精神分析にまで至りそうで、新たな特撮評論のホットで魅惑的な鉱脈となりそうだ(笑)。


 (註1:近年では『ビーファイター』の主人公・ブルービート・甲斐拓也(演:土屋大輔)があるイミ無個性とも云えるが(笑)、正統派善人アニキでスキ。宿敵ブラックビートが自身の悪のクローンだったことに衝撃を受けてフヌケになり戦線離脱するナイーブさも、リアリズムで考えれば大局戦力比を自覚する立場の者が取る行動としてヘンだしある種エゴだし、それを批判するヒトの価値観もよりストイック(笑)で、自分もガキ時分そーいうこと過剰に気にするタイプだったので了解可能だけど、非リアル作品の文芸としては今現在のワタシ的にはこーいうのがスキ。――やはり、実写やアニメの媒体差で、生活・現実リアル臭or主観的心情・観念・倫理臭いずれかへの比重の偏差の度合い、役の性別や年齢・職業とかでも判断基準は変わるかナ。『美少女戦士セーラームーン』(92年)こと月野うさぎ14歳女子中学生なら、戦線離脱しても非難は浴びず共感・同情を呼びそうだ・笑)


 なおこれら敏樹脚本回で、我らが主人公・真司くんも『シャンゼリオン』の主人公・涼村暁(すずむら・あきら)クンと化す(笑)。マヌケだが憎めない尻軽な小僧主人公としてシッカリ確立(筆者は真司がバイクならぬスクーターに乗ってるのは性格付け的にも大スキだけどもなァ・笑)。


 ……その『シャンゼリオン』の涼村暁クン。かつてのセリフまわしは真司にゆずり(笑)、「イライラするんだよ……(怒)」の凶悪・凶暴演技のムショ入り〜脱獄ライダー・仮面ライダー王蛇(おうじゃ)として登場しようとは……。


 仮面ライダーゾルダ登場編のあとの小林靖子メインライター復帰編では、ナイトこと秋山蓮の一時的記憶喪失と復活で、蓮の植物人間状態の恋人の存在と、ティーンヒロイン・神崎優衣(かんざき・ゆい)の兄にして、ライダーバトルを準備した神崎士郎の秘密の一端に迫る。


 それ自体は作品世界の骨組みとして必要なことだろうが、ダーティーさが魅力の蓮が弱くなってしまいかねず不安をいだく。
 そのあと、蓮や悪徳弁護士以上に悪党な(笑)、ゲーム野郎ライダーに脱獄ライダーが登場。ライダーも全13人登場ということで1年放映なら月に平均1人登場の計算だが、すでに6月初頭で7人が雄姿を見せた。最近では、敵ライダーにトドメを刺す(殺す)ことができない蓮ことライダーナイトの図とその苦悩・屈辱の描写も登場。


 ドラマとしてはまちがっていないものの、やはり蓮がますます弱く見えかねず、構成面ではもっとシリーズ後半にまわしてほしかった……。でももう放映開始5カ月目だし、他に描かれるべきドラマや13人登場後の展開も想定しているのならこのペースでもよいのかもしれず……。


 カードを変身後の身体のデッキにセットすることで武器が出現する設定。そしてモンスター(ライダー龍騎なら龍。ライダーナイトならコウモリ)と契約をカードで結び、他のモンスターをやっつけることで契約モンスターがそのモンスターの魂を喰うという設定。
 それ自体はアタマのカタいマニアにはともかく、オモチャっぽさと近年子供間で流行する諸要素の組み合わせで筆者的には、今時の子供へのアイ・キャッチとしてとてもイイと思っている。
 ……と云いつつ、実際の作品では、やはり筆者が成人だからであろうか、私的にはあまりワクワク感を抱けない(笑)。



(02年7月執筆)
 以上は6月初頭の感想。書いたそばから悪党ゲーム野郎の兄ちゃん、やはりサイをモチーフにしたワリには銀色スマートな仮面ライダーガイが、より悪党の脱獄ライダー・仮面ライダー王蛇に、さらにウルトラマンアグルことイイもんライダー・仮面ライダーライアも殺(や)られちゃって、筆者はアワ喰ってしまいましたとサ(汗)。


 エッ、ホビー誌やTV情報誌読んでれば、コブラやサイやエイの契約モンスターが合体するから誰が生きのびて誰が死ぬか判るって?
 だから、イイ歳こいたオイラみたいなマニア連中でも、半分くらいは残業100時間サラリーマンとかで本屋に寄るヒマないから最新情報も知らないという輩だっていると思うョ。少なくとも筆者の昼休みや帰宅途中に寄れる本屋数店にオタク向けムックはおいてないのョ。
 それに情報も大切だけど情報だけがすべてじゃないし、自分の頭蓋で発酵させて学問するのでなく、明治以来の欧米から仕入れて国内に紹介するだけの、情報落差を利用した流通業やってたって、作品の真の内実はつかめやしない(笑)。


 そーいうワケで(ドーいうワケだか知らんが)、ヒーロー経験役者がウルトラマンアグル・シャンゼリオンとふたりもつづけて登場したなら、シャンゼと同じ96年組で、カプコン東宝の『七星闘神(しちせいとうしん)ガイファード』の兄ちゃんもルックスがトッポいから番組に合うだろうし、ぜひとも出演してほしい(笑)。
 ウルトラマンアグルもとい仮面ライダーライアこと手塚海之(てづか・みゆき)の親友の役者が、ウルトラマンガイアこと高山我夢(たかやま・がむ)じゃなかったのがかえすがえすも残念……ってベタですな。後者は全然ホンキで云ってないので安心して下さい。


 ナイトこと蓮の弱体化は当然、スタッフも自覚していたワケで、早々にそのあとの展開――イイもんライダーライアこと手塚が、蓮の弱みや過去をすべて見透かしさらに追い込む作劇をして、それを蓮のアイデンティティ・クライシス問題にまで突き詰め、自分が自分でなくなるくらいなら逆にそこから捨鉢な一発逆転の起死回生を狙う動機を確保させ飛躍させる作劇で善処を試みた。
 このへんは大成功してるとは云わないけど、やはりウマいしよく考えているなぁ。フツーに考えると、一度メンタルな面を見せて弱ってしまったダーティーヒーローを小手先の方針で絵的に表面的に強く見せて、そのドラマや動機にまでは気が回りそうもないものを。我々、評論マニアの間でもこーいう場合の対処策・改善策・ドラマ的法則ってあんまり考えられたことがなかったハズ(笑)。


P.S.なお今夏公開の『劇場版』は、来春のTV版最終回のあとの真の最終回なのだそうだが(爆笑)、TVはナマものだからあまり『劇場版』にとらわれることなく、その場の面白さを優先し、結果的に『劇場版』はパラレルワールドになってしまいましたな展開になっても筆者は許すぞ(笑)。


(了)
(初出・オールジャンル同人誌『DEATH−VOLT』号数失念〜『仮面特攻隊2003年準備号』(02年8月11日発行)〜『仮面特攻隊2003年号』(02年12月29日発行)所収『仮面ライダー龍騎』前半合評⑤より抜粋)


仮面ライダー龍騎 〜前半評⑥ 13人の仮面ライダー ―宇宙刑事誕生20周年記念ライダー?―

(文・伏屋千晶)
 “2本ツノ”から“4本ツノ“に進化した『仮面ライダークウガ』(2000)に続いて、MAXパワー時に“6本ツノ”になる『仮面ライダーアギト』(2001)と来たら、その次の[新世紀仮面ライダー第3号]は、当然“8本ツノ”になるだろうと思いきや、意外にも“ツノ無し”とは!
 その上、ライダーマスクの最大のセールス・ポイントであった“大きな複眼”はスリット状のフェイスカバーに覆われ、西洋甲冑[「竜騎兵」(dragoon)=近世ヨーロッパの装甲騎兵]モチーフのメタリックなスーツに上半身を鎧われて(しかも、全身真ッ赤っか!)……
 と、一見しただけで「営業面重視」と分かる“玩具っぽい”ルックスになり果ててしまいました。


 ――にも拘らず、主人公を「仮面ライダー」と呼称するセリフが一度たりともドラマ本篇内で使用されなかった『クウガ』『アギト』とは情況が一変し、本作『仮面ライダー龍騎』(2002)では「仮面ライダー」の呼称を無闇矢鱈(むやみやたら)に連発する“ライダーの大安売り”状態になりました。


 この件に関してホビー誌「フィギュア王」No.51 (ワールドフォトプレス・02年1月刊・ISBN:4846523535)に掲載された白倉伸一郎P(プロデューサー)のコメントによれば、仮面ライダー龍騎仮面ライダーナイトのコスチューム・デザインが余りにも従来の仮面ライダーのイメージから逸脱しているために、“せめて番組内で「仮面ライダー」と呼ばないと、視聴者に「仮面ライダー」として認識して貰えないだろう”と懸念されたから――という、皮肉な事情があったようです。



 ナルホド、仄聞するところ、東映としては、メタルヒーロー・シリーズの原点『宇宙刑事ギャバン』(1982)放映20周年を記念して“4人目の宇宙刑事”の企画を進行していたところ、『クウガ』『アギト』に続く“三匹目のドジョウ”を狙うテレビ朝日側からの強い要請を受けて、途中から無理やり〔新世紀仮面ライダー・シリーズ 第3弾〕に変更した経緯があった(宇宙刑事20周年記念番組は、来年度に改めて企画しても構わないワケだし)が故に、『龍騎』は「仮面ライダー」と呼ぶには少なからず違和感があるデザイン&世界観になってしまっているんですね。
 (でも、どちらかと云えば『ビーファイター龍騎』です。ナイトなんか、モロに「バットマン」だし……)



 尚、『龍騎』の起源が「宇宙刑事」であったという説に関して、東映のシリーズ物の伝統である“三部作の法則”(即ち、クウガ・アギト・龍騎の三部作)を楯(たて)にして、異を唱える方も居らっしゃるかも知れませんが、当初の予定では、『燃えろ!! ロボコン』(1999)『クウガ』『アギト』で[石森プロ三部作]は終わっていた筈でした。


 ビートル・シリーズ三部作後の『テツワン探偵ロボタック』(1998)が業績不振に終り、遂にメタルヒーロー・シリーズのネタに行き詰まった東映は、『人造人間ハカイダー』(1995)の興行的失敗&内容に対する見解の不一致により暫く疎遠になっていた石森プロとの関係を修復し(石森プロ側も、石ノ森章太郎氏が逝去された後は態度が軟化していた)、旧NET[現・テレビ朝日]系列で放映された石ノ森章太郎原作の特撮キャラクター番組〔『がんばれ!! ロボコン』(1974)/『人造人間キカイダー』(1972)/『イナズマン』(1973)等〕のリメイクで、〔宇宙刑事誕生20周年〕を迎える今年までの3年間を繋ごう――と、企んでいたのだとか。


 考えてみれば、『キカイダーOO(ダブルオー)』ほど2000(='00)年度に製作するのに相応しい作品タイトルはなく、また、“違って生まれたミュータント”(『イナズマン』挿入歌「五郎の歌」の一節/作詞・石ノ森章太郎)の血脈である超能力者達の宿命が描かれた『アギト』には、原作版『イナズマン』に似たイメージが感じられます。
 (確かに、アギトバーニングフォームからアギトシャイニングフォームへのパワーアップ過程は、サナギマンからイナズマンへの変態のシチュエーションに似ています)


 しかし、毎日放送・TBS系列での仮面ライダー復活が頓挫すると、テレビ朝日は抜け目なく『仮面ライダークウガ』の企画・製作に着手し、現在に至った次第。
 やはり、TBSは『仮面ライダーBLACK RX』(1988)の苦い経験がトラウマになっていて、“仮面ライダー復活”に対して二の足を踏んだのでしょう。
 ――と申しますのは、『RX』打ち切りの真因は、東映バンダイの癒着体質(?)がTBSの心証を著しく害したが故だったからだとか(?)。特撮&アニメ・ファンにはお馴染みの「商品戦略(玩具プロモ)優先」の番組製作スタイルは、民放局別視聴率ランキングで万年ブービーに位置するテレビ朝日では通用しても、日本テレビ&フジテレビと熾烈なトップ争いを続けているTBSでは、特定のスポンサーに与するばかりで視聴率を稼げなくなった番組が存続することなど、許される筈もなかったのです。



 ――と、まぁ、『龍騎』の成立過程には色々あったワケですが、ここで私が注目したいのは、過剰に饒舌なコメントの数々が逐一嫌味(いやみ)だった高寺成紀(たかてら・しげのり)Pとは対照的に、肩肘を張らない白倉伸一郎Pの飄々としたスタンスの“清々しさ”です。


 つまるところ、大ヒットした旧作品のネーム・バリューに便乗してヒットしただけなのに、やれ“ボクなりのウルトラマン”だの、やれ“従来にない、全く新しいライダー像”だのと、殊更(ことさら)に自身のオリジナリティーを主張し、手放しの自画自賛をして得意になっている近年の若手クリエイター達(特に、平成ウルトラ&クウガのマニア出身の関係者! ――あんた達ねぇ、所詮は他人のフンドシで相撲をとっているだけなんですから)とは違って、玩具プロモーション優先のスポンサー主導の下にある製作態勢をシニカルに容認した上で、『龍騎』の「非ライダー性」を素直に認めた白倉Pのサバけたコメントは、実に素敵じゃないですか!
 (たぶん、白倉Pが『RX』を好む理由も、旧ライダー作品のイメージから脱した“発想の自由さ”に求められるのでしょうね)


 例えば、“ライダーに武器は不要”という理由で、守旧派のファン層からは特に評判が悪い『RX』の必殺剣〔リボルケイン〕の設定も、別にリボルケインを商品化して販売することが目的だったのではなく、RX役の岡元次郎氏が最も得意分野とする「剣殺陣」の抜群のセンスを最大限に引き出して、アクションの活性化(前作『仮面ライダーBLACK』(1987)との差別化も含めて/『RX』の企画段階では、BLACKがパワーアップするのではなく、全く別人がRXになる筈でした)を図ろう――という、金田治アクション監督の発案に由来するもので、極めて“前向きな”意趣による産物だったのだとか。



 因(ちな)みに、白倉氏は、『アギト』の企画立案に関して、最初から「クウガの続編」にすると上層部で決定済みだったので“それならば……”という旨をホビー誌「フィギュア王」No.51 で公表されています。
 これで、『アギト』初期に於ける「記憶喪失のヒーロー」×「正体不明の敵」という謎だらけの曖昧な設定が、[アギト&アンノウン]を[クウガグロンギ]の後継者であると視聴者に誤認させる為の、極めて“確信犯的な”ミス・ディレクションだったんだー! と、ハッキリした訳ですね(?)。


 そして、放映開始当初は「クウガ・パート2」のフリをして大人しくしていたのとは裏腹に、シリーズ後半では一転して“目を見張る”独自の展開を見せた『アギト』に引き続き、新番組『龍騎』の担当Pも白倉氏に決定したのは、当然といえば当然の事ですが、これでは、昨01年度の[高寺P → 白倉Pの交替劇]の異常さが益々際立ってしまいます。


 とにかく、自分自身のポリシーに拘らない“鷹揚な”白倉Pだけに、「前作『アギト』以上に、多数の仮面ライダーを登場させて欲しい」というバンダイ側からの要請にも全く拘泥なく即応し、「そんじゃ、“敵”も仮面ライダーにしちゃいましょう」てな軽〜いノリで、今年は[13人の仮面ライダー]が登場する事態に――って、最初聴いた時は、誰もが“ホンマかいな?”と耳を疑いましたよねー。
 (更に驚いたことには、小林靖子氏による最初の企画書では、[50人の仮面ライダー]の登場(毎回、主人公が違う)が予定されていたそうです)


 でも、ホントだったから、参っちゃう! スゴいぞ、白倉P! RXより“ヘン”でイカすぜ、龍騎! 放映当時は「異端のライダー」と称されていたRXも、龍騎と並べて見ると、極めて“まともな”ライダーに見えちゃうゾ。もー、ここまで来たら、なんでもアリだ! ヒーローのバリエーション同士がシノギを削る『機動武闘伝Gガンダム』(1994)的な新生仮面ライダー・ワールドを、徹底的に貫き通しちゃおう!


 ――つまり、旧作のブランド人気に対する依存を自覚した上で、タイトル&キャラクターのコンセプトだけを借りて、情況に応じて伝統のフォーマットを崩してゆく、この白倉Pの潔く実利主義に徹した[柔軟な姿勢]にこそ、“逆”の意味で、今後の特撮ヒーロー番組の活路が内在しているのではないか、と愚考しているワケでして……



 しかし、よくよく考えてみれば、「ライダー同士の闘争」というシチュエーションは、昨年、『アギト』の木野さん(アナザーアギト)絡みのエピソード群で一度極めていますし、当初は画期的に思えた「13人の仮面ライダー」の設定も、モチーフとなる動物のライン・ナップ〔龍(仮面ライダー龍騎=「竜騎兵」に由来する)、蝙蝠(コウモリ)(仮面ライダーナイト“knight”=「騎士」)、カニ仮面ライダーシザース“sissors”=「はさみ」)、野牛(仮面ライダーゾルダ“soldat”=ドイツ語の「兵士」)、エイ(仮面ライダーライア“raya”=スペイン語の「エイ」)、サイ(仮面ライダーガイ“guy”=「男」)、ヘビ(仮面ライダー王蛇=ニシキヘビ科ボアの別称)〕には統一性が欠けていて、年間を通してのシリーズ展開に対して、余りにも“済し崩し”的なスタッフの姿勢が鼻につきます。
 (それにしても、今後は“仮面ライダー○号”のアカウントが、ややこしくなるナ〜。そもそも、龍騎は何号になるの? G4は?? 木野さんは??? ウーン、わからん!!)


 おまけに、各ライダーの出自・登場のシチュエーションには演出・脚本の“冴え”が全く感じられず、“無気力な作劇”&“単調なシリーズ構成”といったルーズな欠点を如実に露呈しており、拙(つたな)くとも1回ごとに明確な「起承転結」のメリハリがあった“30分1話完結”の堅実な作劇スタイルに長年馴れ親しんできた者としては、サッパリ面白くねーや。
 加えて、変身前を演じる俳優のイメージが、女性視聴者層に媚びた“高等遊民”気どりの「ヤサ男」ばかりに偏向してきているのは、もう致命的です。(唯一、“ゴローちゃん”の存在が、物凄く気にかかっている私)


 故に、今後の『龍騎』の展開に対する興味の最大の焦点は、ひとえに「ライダー同士が共存できない」理由を、十分に説得力のあるロジックを以て描き切る事ができるかどうか? に懸かっています。
 でも、第2クール放映中の現時点に於いて、既に、番組スタート時の基本設定が陳腐化している様子ですから
 [主人公3人〔城戸真司・秋山蓮(あきやま・れん)・神崎優衣(かんざき・ゆい)〕の間の緊張感が薄くなったし(この3人のネーミングの由来って、碇“シンジ”・綾波“レイ”・碇“ユイ”かしら?……オイオイ、また『新世紀エヴァンゲリオン』(1995)が元ネタかい!?)、ORE(オレ)ジャーナルのメンバーも単なるコメディー・リリーフ(緊張した場面に滑稽な場面をはさんで、視聴者の気分を和らげる手法)に成り下がった]、
 昨年みたく『劇場版』公開を機に一躍フル・スロットルで奮起して(開き直って?)躍動的な連続活劇にハジけてくれたら、スッゴく嬉しいんだけどなぁ。


 また、凝った画面処理をしている割にはイマイチ効果を上げていない「ミラーワールド」の設定も、『宇宙刑事』シリーズの「マクー空間」「幻夢界」「不思議界」の衣鉢を継ぐ[異次元空間]であると説明されれば“ああ、そーゆーコトでしたか”と納得できる程度のモノでしかなく、本篇ドラマ部分とは無関係な便宜上の“バトル・ステージ”としてしか描写されていないのは、極めて拙いのではないでしょうか。
 この様に、「日常世界」と「戦闘空間」とが遊離してしまった結果、ドラマ全体を通しての一貫性を欠いた物語のプロットが破綻を来たし始めているのです。


 兎(と)にも角(かく)にも、多数のハデハデ・キャラが闊歩する『機動武闘伝Gガンダム』モドキの“ライダー同士のバトル・ロワイアル”&『遊☆戯☆王』(1998)モドキの“召喚クリチャー・バトル”が繰り広げられる世界観と、相変わらず“女性的な”感性がウェットに過ぎる小林靖子氏脚本とのミス・マッチぶりは度し難い。


 「少子化」が深刻化する当節、特撮ヒーロー番組も「女性視聴者層」をゲットしなくては存続できない――という通念が一般化してしまったので、微温的な作風の小林氏が珍重されるのも致し方のない事とは云え、主人公2人の対照的な性格(硬×軟、陽×陰、剛×柔)のコントラストをベースにした人物造形&作劇法や、毎度お馴染みとなった“戦いを止める為に戦う”(苦笑)という陳腐なお題目を“盲目的に”唱え続けるだけの「ハト派のヒーロー像」には、もういい加減ウンザリ。
 やっぱり、[子供向け要素(派手なバトル)]と[女性向け要素(やおい)]とは、所詮“水と油”でした。


 『アギト』を終えた後は暫く休養&充電する予定だった井上敏樹氏が、序盤の#7〜#10[仮面ライダーゾルダ=北岡秀一登場篇]で早くも復帰した背景には、間違いなく、作風の合わぬ小林氏に対する白倉Pの不信感の兆しが窺えます(?)。
 更に#18〜#19に於ける[仮面ライダー王蛇=浅倉威(あさくら・たけし)]のキャラクター設定を巡る意見の齟齬(凶悪犯・浅倉威が“本当はイイ奴”的なイメージで描かれた小林氏の初稿脚本に対し、白倉Pから強硬なダメ出しがあって、ご存じの通りの“根っからのワル”に変更されました)により、白倉Pと小林氏との間のミゾは深まった様子で(?)、なんと(!)『劇場版 仮面ライダー龍騎 EPISODE FINAL』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20021104/p1)の脚本は、メインライターの小林氏を差し置いて、井上氏にオファーされました。



 一方、田崎竜太監督のヒッチコック趣味の発露が災いして、ヒーロー活劇には不似合いな本格派スリラー・タッチの演出が消化不良を起こして、作り手側の独善に陥っていた『アギト』初期と同じ轍(てつ)を踏んでしまっているのも明白で、な〜んか、全体的にチグハグなんですよねー。
 (『龍騎』#1に於ける龍騎=城戸真司とナイト=秋山蓮とが“初めて”擦れ違うカットは、『アギト』#1でのアギト=津上翔一と仮面ライダーギルス=葦原涼(あしはら・りょう)とが初めて擦れ違うカットと、演出が全く同じやんか!)


 とりあえず、ドラマの最大のキー・ポイントである(?)「ミラーワールド」の設定の見直しを早急に図るべきでしょう。その際には、「鏡面世界」の設定を極めて有効に使いきった『映画ドラえもん のび太と鉄人兵団』(1986・ASIN:B00005YUXO)の秀逸なプロットを、是非とも見習って貰いたいものです。
 (単に抽象的な“象徴”に過ぎないにしても、せめて、円谷プロの特撮巨大ヒーロー『ミラーマン』(1971)みたく、見せ方を工夫して“鏡”をもっと効果的に使って貰いたいものです)



 唯ひとつ、(個人的に)昨年より進歩したと思える要素は、今年のレギュラーの登場人物の中に「警察」関係者が一人も居ないことです。
 それどころか、#1冒頭のOREジャーナル登場カットではイキナリ「警察の内部の腐敗と堕落」問題が取り沙汰され、それに続くシーンでは警察に対して批判的な記事を書いた桃井令子に対するコワモテ刑事の高圧的な態度が克明に描写されており、警察(=官憲)に対する揶揄に満ちたセリフがちりばめられていたのには、結構、驚かされました。
 トドメは、大久保編集長の“オレ達は警察じゃないんだ”というセリフで、殊更に「警察」と手を切ったことが強調され、『アギト』の成功により“『クウガ』の呪縛”から脱却して自由な設定が許されるようになった背景が窺えます。
 もっとも、『アギト』に於いても、終盤に至っては“常人”として市井に生きる翔一や涼達の描写が主体となり、しかも、氷川と小沢澄子が更迭されて「公」の立場では身動きがとれなくなって「官憲当局」とは絶縁状態になっていましたから、『龍騎』のキャラ設定が「警察」と疎遠になったのも自然な“なりゆき”と言えます。
 それ故、3番目の仮面ライダーシザースが「刑事」として登場したのには、少なからず違和感を禁じ得なかったのですが、案の定、実は“ニセ刑事”で、2話限りの悪役に過ぎませんでした。(……と、ホッとしていたら、ナント、『はぐれ刑事・純情派』(2002)で、翔一クン(賀集利樹)が刑事になっちまっただよー)



 この3年間、グロンギ=〔遊戯〕、アンノウン=〔暗殺〕、ミラーモンスター=〔捕食〕と各々に目的は異なるものの、「敵」のイメージが[シリアル・キラー(連続殺人者)]に統一されている点が“時代”を感じさせますが、今年02年は、怪人の行動原理が“人喰い”即ち“食欲”という極めてプリミティブな本能レベルの次元にまで単純化されたが故に、著しく“劇的な”要素を欠いてストーリーがサッパリ膨らまなくなったのは、チョット困ったものです。
 もっとも、敵側のドラマを一切排除することで、変身前のイケメン俳優達が演じる“やおい”的な馴れ合い芝居に過大なウェイトを置いて、女性視聴者層の支持を維持して視聴率の安定を図ろう、と計算された脚本構成上の“戦略”だから仕方が無い……のですが、それにしたって、余りにも単調に過ぎるのではないでしょうか?


 ――鳴呼、「富士山大爆発・東京フライパン作戦」(『仮面ライダーアマゾン』1974)や「四国空母化計画」(『仮面ライダーBLACK RX』)みたいな“恐るべき”作戦計画の数々が、毎週々々、性懲りもなく逐一立案・遂行され、敵味方入り乱れて丁丁発止(ちょうちょうはっし) の攻防が繰り広げられていたアノ頃が懐かしいなぁ。



 アクション演出の面では、メカ絡みのカットのみならず、格闘戦の場面に於いてもCG合成が多用されているのが、ちょっと不満です。
 最大の“見せ場”となるべき[契約モンスターとの連携攻撃による必殺技]の描写も、単に“見た目の派手さ”だけが取柄の、平面的で面白味に欠ける類型的なCGアニメで処理されており(近頃の子供って、こういうチープなゲーム画面みたいな映像がスキなの?)、何かと云うとCG技術に依存するばかりで、演出・擬闘共に、本来の努力を怠っているスタッフ側の安易な姿勢が窺えて、スーツ・アクター諸氏のゴマかしの効かない「肉体の表現力」と、理屈抜きの「骨肉の躍動」を重んじる私としては閉口です。
 折角、メインに昇格した宮崎剛(みやざき・たけし)アクション監督の新たな才能の開花を期待していたのに……。
 (CG合成による特撮を、闇雲(やみくも)に歓迎するファンが多いのも事実ですが)



 こうした過剰なCGの小細工による煩わしさに加え、音楽制作会社が日本コロンビアからエイベックス(avex trax)に移った所為(せい)で“ツボをハズしまくり”の主題歌(『Alive A life』・ASIN:B00005Y72L)&BGM(ASIN:B00005Y72L)も酷く耳障りで、どうにもこうにも“違和感だらけ”の『龍騎』を筆者は未だに素直に楽しむことが出来ない始末。
 (日本コロムビアの昨年度販売実績に於いて、〔アギト〕関連のCD&テープは、同社のトップ歌手〔氷川きよし〕に次ぐ“売れ筋”商品でした。それだけに、同社にとって『龍騎』の音楽版権を他社に奪われたのは大打撃に違いない――と、思わず余計な心配をしてしまいます。それにしても、今更、特撮ジャンルにノコノコ割り込んでくるとは、若者向けの音楽市場を席巻して一見華々しく見えるエイベックスも、実は内情が苦しいのかしら? (編:もっと前向きな商売・事業の拡張じゃね?・笑))



 昨01年、念願の仮面ライダー役を演じて一皮も二皮も剥けた高岩成二(たかいわ・せいじ)氏も、“おバカ”で“戦闘に不慣れ”な城戸真司の軟弱なキャラクターに縛られて、彼が本領とするスタイリッシュなアクションを一切封じられてしまっています。
 (これを“キャラ重視のリアリズム”と賞賛する人もいるけど、ヘタすると『シャンゼリオン』みたく、“中途半端なおとぼけヒーロー”の二の舞になっちゃうゾ)
 できれば、軽忽(けいこつ)な若者が変身すると別人格の“無敵の超人”になる、という前作の“割り切った”シチュエーションを継承して貰いたかったものですが、せめて、必殺キックを放つ際に「ストロンガー電キ(気)ック!」の地口(洒落)に倣って「ライダー龍騎ック!」と威勢よく叫んでくれたら、嬉しいンだけどナー。
 (余談ながら、〔龍騎〕って、相撲力士の醜名(しこな) みたい。いつか、オタク趣味の力士が名乗っちゃうかも?)


 でもホントは、後楽園ゆうえんち・タイムレンジャーショーの夏公演『炎の共演! 仮面ライダークウガ登場』(2000)で、TVのクウガ(富永研司氏)よりもカッコよくてスマートなクウガを鮮かに演じて、目いっぱい溜飲を下げてくれた大藤直樹氏(テレビでは『地球戦隊ファイブマン』(1990)〜『超力戦隊オーレンジャー』(1995)のブラック戦士のスーツアクター。近年は『百獣戦隊ガオレンジャー』(2001)の6人目の戦士ガオシルバー)に「新ライダー」役をやって貰いたかったゾ。



 また、仮面ライダーのトレードマークであるマシン(単車)の描写が、サイバリアン(『宇宙刑事ギャバン』)やモトシャリアン(『宇宙刑事シャリバン』1983)みたく“異空間へ突入する”ルーチンなカットだけに限られてしまったのも困ったもので、演出過剰気味の“曲芸的な”要素が多少鼻に付いた『クウガ』のオートバイ・スタントが、今となっては懐かしく感じられます。
 思えば、[クウガ×ゴ・バダー・バ]のバイク戦は、同年夏に公開された『M:i−2』(2000)のクライマックス(善玉×悪玉の一騎打ちのバイク戦)に触発された金田治監督の提案に基いて、日本トライアル界の第一人者・成田兄弟のテクニックにより、実現したシークエンスでした。


 ――ウ〜ン。無理とは知りつつも、ジョン・ウー監督に「劇場版・仮面ライダー」を撮って貰いたいゾ! “小林旭を特別出演させる”という条件を付ければ、破格の低ギャラでも承諾してくれるのでは?
 (日活無国籍アクション映画全盛時代(1960年代前半)の小林旭氏こそが、貧しく荒んだ境遇にあった思春期のJ・ウー氏を最も魅了した“ヒーロー”であり、後に映画界を志す眼を開かせる原点となったのだ。それ故、“憧れのコバヤシ・アキラ”と組んで映画を作ることが、長年の同監督の夢なのである。――そう言えば、秋山蓮(ナイト)役の松田悟志氏は、その精悍なマスクとハスキー・ヴォイスが、若き日の小林旭氏の雰囲気によく似ている)



 ところで、5月以降、新ライダー登場のペースが急に早くなったのは、夏休みの「劇場版」公開に向けて、それ迄に出来るだけ多くのライダーの員数を増やしておく算段でしょうか?
 ワル系ライダーのガイ&王蛇(ライダー同士の殺し合いの進行を促進するために投入された王蛇=浅倉威は、まるで『バトル・ロワイアル』(2000)に於ける“桐山和雄”ですね)の登場によって、ゾルダ=北岡秀一が「辣腕(悪徳?)弁護士」であるという井上敏樹氏が適当に作り上げた設定が、俄かにドラマの要素として有効に活きてきたのは、正に“瓢箪からコマ”です。
 それにしても、ライダー同士が出遭うキッカケが“犯罪容疑者つながり”とは、世も末やなー。龍騎=城戸真司も冤罪で一度パクられてるし、ナイト=秋山蓮だって与太者めいた性格からして一度や二度は臭いメシを食わされた経験があるのは明白で、こうなると、『龍騎』の“アンチ警察路線”もチョット行き過ぎやで〜――と思案する、今日この頃です。
 (ところで、本来「龍騎」になる筈だった“榊原耕一”なる人物に関しては、今後も一切言及されないのでしょうか?)



 ナンのカンの言って、番組放映開始から6月末まで(#1〜#23)の間に、『龍騎』の視聴率が10%を下回ったケースが8回もあったとの事で、1年間を通じて10%を割った事が3回しかなかった『アギト』に比べて、視聴率は相対的に落ちて来ているのですが、玩具セールスは昨年同時期の実績を上回っているそうで、一応、『龍騎』は上層部から「成功作」の太鼓判を押されて一安心。
 (但し、浅倉威の嗜虐的な性癖によるバイオレンス描写に対して、視聴者からのクレームが殺到しており、シリーズ後半に向けての改善課題となっているそうです)


 そして、昨年と同様に劇場版公開に引き続いて、秋の番組改編期にゴールデンタイム枠で60分の「スペシャル版」(8番目の仮面ライダー登場篇)の放映が決定!
 さてさて、劇場版&SPを転機にブレイクした昨年の『アギト』みたく、今年もまた『龍騎』は目眩めくクライマックス篇へと突入するのでしょうか? 期待してまっせ!!



 ところで、既にご存じの通り、劇場版『EPISODE FINAL』は、その題名が示す通り、TVシリーズの最終回の後のエピソード=“真の完結篇”を描くもので(シリーズ半ばのこの時点で、敢えて物語の結末を暴露してしまうという奇策に打って出た白倉Pの真意は如何に……?)、神崎士郎がライダー同士の戦いに決着をつける切り札として投入した [仮面ライダーファム](浅倉威と北岡秀一に恨みをもつ復讐の女戦士) & [仮面ライダー龍牙(リュウガ)](真司の“分身”とも言うべき謎の戦士) の登場によって、6人の仮面ライダー龍騎・ナイト・ゾルダ・王蛇・ファム・龍牙)の壮絶な最終決戦が繰り広げられます。


 果たして、ファムの復讐は遂げられるのか? 互角の戦闘能力を持つ龍騎×龍牙の決着は? 神崎士郎&優衣の歪んだ兄妹愛の行く末は? 秋山蓮は小川恵里を救えるのか? 死期が迫った北岡秀一の下した決断とは?


 ――そして、最後に生き残った2人の仮面ライダーが雌雄を決しようとしたその時、衝撃の結末が……??? ウ〜ン、早く観たいよー!


2002/7/7


 [P.S.――オオッ! 目下、最強最悪の7番目の仮面ライダー〔王蛇〕を演じているスーツアクターの“王者”=〔岡元次郎〕アニキが、昨年の〔G4〕に引き続いて、今年も劇場用オリジナル仮面ライダー〔龍牙〕を演じるのだ! コイツはスゴイぜ!!]


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2003年準備号』(02年8月11日発行)〜『仮面特攻隊2003年号』(02年12月29日発行)所収『仮面ライダー龍騎』前半合評⑥より抜粋)


『假面特攻隊2003年号』「仮面ライダー龍騎」関係記事の縮小コピー収録一覧
加藤夏希サイン(natsuki ロビーナちゃん自筆イラスト)
 姉を殺した浅倉威(王蛇)と、その浅倉を弁護した北岡秀一(ゾルダ)に対する復讐に燃える“12番目”の仮面ライダー「ファム」(femme?=女性)に変身する美少女「霧島美穂」を演じる加藤夏希氏は、コアなアニメ・オタクなので、サインには必ず得意のイラストを描き添えてくれますが、“ロビーナちゃん”(『燃えろ!!ロボコン』)バージョンの自画像は、その髪形といい、両の瞳といい、ほとんど“綾波レイ”ですね。(やっぱ、『エヴァ』マニアか?)
 尚、残念ながら、彼女自身が変身後のコスチュームを身に着けるシーンは当然一切無く、BFテントウ(『ビーファイターカブト』)を演じたJACの橋本恵子氏がファムのアクション全般を担当し、怨敵・王蛇、ゾルダ、そして“13番目”=最後の仮面ライダー「龍牙」と死闘を展開する模様。激闘の果て、最後に生き残ったのは誰か?
 ――ゆめゆめ、見逃すことなかれ!

(伏屋千晶)


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『仮面ライダー龍騎』 〜全記事見出し一覧
『仮面ライダー』シリーズ評 〜全記事見出し一覧