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仮面ライダー555 〜後半合評2 ―完結直前! 『555』総括―


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仮面ライダー555 〜後半評⑤ ゴーゴー白倉ライダー

(文・伏屋千晶)

メタルライダー誕生

 『仮面ライダー555』(2003)のタイトル・ロゴを初めて見た時に“仮面ライダーゴーゴーファイブ”と誤読した若いファンが多かった(?)と聴きますが、私は“仮面ライダー・ゴーゴーゴー”(『仮面ライダーX』(1974)のタイトル候補の一つ「仮面ライダーGO5号」より)と読んでしまい、またしてもジェネレーション・ギャップを痛感させられてしまいました。



 5(ファイブ)の複数形で「ファイズ」という苦しいネーミングに加え、“メタルヒーローもどき”の中途半端なコスチューム・デザインからしても、『仮面ライダークウガ』(2000・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090907/p1)以来、4年目を迎えた仮面ライダー・シリーズがキャラクター設定の面で煮詰まってきているのは明白で、ブッちゃけた話、東映としては、石森プロに多額の版権料を支払わなければならない「仮面ライダー」に、ひとまず区切りをつけて、「東映プロパーのヒーロー番組」=八手三郎(やつで・さぶろう。プロデューサー集団の擬人名称)原作による〈メタルヒーロー・シリーズ〉への回帰を目論んでいたようです。
 が、平均10%以上の好視聴率を堅持し続ける「仮面ライダー」のタイトルに未練があったテレビ朝日から“内容はお任せするから、とにかく「仮面ライダー○○○」という題名にして欲しい”という強い要請を受けて、ライダー・シリーズの存続が決定した次第(?)。



 一方、バンダイとしては、過去3年間で仮面ライダーの旧シリーズのグッズ類は十分に売り尽くした――という認識があって、現役キャラのセールスだけならば“ライダーでも、メタルヒーローでも変わらない”という予測を立てていたので、どっちに転んでも構わなかったようです。


 むしろ、〈宇宙刑事誕生20周年〉を記念して3大宇宙刑事(『宇宙刑事ギャバン』『宇宙刑事シャリバン』『宇宙刑事シャイダー』1982〜84)関連グッズの販売も並行して画策していた同社にとっては、「4代目・宇宙刑事」の方が都合が良かった(?)かも知れません。



 ファイズ・ギアのコスチュームが、頭部(マスク)のデザイン次第では“ライダーにも、メタルヒーローにもなり得る”ような形態になっているのは、キャラクター・デザインの段階で、東映バンダイテレビ朝日の意見が統一されていなかった“証し”の一つです(?)。


* 泣くな初恋ライダー

 一見、生ヌルい青春ドラマの体裁を装っている本作ですが、その物語の骨子には、往年の名脚本家・伊上勝(いがみ・まさる)氏(故人)が得意とした〈忍者剣戟(けんげき)〉の精神が脈々と流れており
 [――即ち、3本のベルトを巡る駆け引きは「秘宝争奪」の黄金パターン、裏切り者〔木場勇治・海堂直也・長田結花〕は「抜け忍」、ラッキークローバーは“抜け忍狩り”を使命とする「闇の刺客」四人衆、天涯孤独にして経歴不肖(実はオルフェノク)の放浪者〔乾巧(いぬい・たくみ)〕は「悲しい過去を背負った渡世人ヒーロー」の典型である]、
 どんなにクールで現代的な心理ドラマを描こうとしても、父子相伝の「活劇志向」のアナクロな本質が無意識の内にジワジワと滲み出てしまう[井上敏樹]氏の“性(さが)”に、ひたすら好感を抱いてしまう私。



 でも、本当は、裏切り者=木場勇治(きば・ゆうじ)が、組織=スマートブレインが次々に送り出す怪人達(自分と“同族”のオルフェノク)と戦ってゆく――というパターンの方が、シンプルでスッキリすると思うんですけど。
 木場・海堂(かいどう)・結花(ゆか)を見ていると、どうしても往年のTVアニメ『妖怪人間ベム』(1968)を思い浮かべてしまいます。
 (ホース〔馬〕&クレイン〔鶴〕から[ジャイアント“馬”場+ジャンボ“鶴”田]の全日本プロレス師弟コンビを想起したのは……どうせ、私だけですよ)


 木場とは対照的に、正義のヒーロー・仮面ライダーカイザの立場にありながら“極端に性格が悪い”〔草加雅人(くさか・まさと)〕の粘着気質(ウソつき・偽善者・二重人格/ヒロイン園田真理のストーカーでもある)の強烈な描写は、“陰湿な”キャラクターを数多く輩出してきた井上氏の作品の中でも群を抜いており、もう今年度の“嫌な嫌な嫌な奴”大賞は草加雅人に決定です。
 されど、第23話で、どしゃぶりの雨の中で真理にコクってフラれちゃう惨めな姿には、「愛の迷路」「愛の必殺砲(バズーカ)」(『鳥人戦隊ジェットマン』#13、#14/1991)での〔結城凱(ゆうきがい/ブラックコンドル)〕のイメージがダブってしまい、思わず感情移入しかけてしまいました。
 私の大好きな結城凱も、リアル化すると草加雅人みたいな“変質者”になってしまうのか……ウウッ!


 木場勇治に象徴される「正義の怪人」に対する「悪のライダー」=〔草加仮面ライダーカイザ、北崎=仮面ライダーデルタ〕という従来の図式のネガ反転は、アンチ・ヒーローの総本山である井上氏の面目躍如であります。
 (因み(ちなみ)に、木場=「騎馬」で“馬”を意味し、乾(いぬい) は“イヌ科”のオオカミなんだって)


* 必殺! フォーメーション・シラク

 第1クールこそは「緩慢なストーリー進行」と「錯綜したプロット」の難解さゆえに視聴率が少々落ち込んでいた『555』ですが、スマートブレイン新社長〔村上峡児(むらかみ・きょうじ)〕、第2のライダー=カイザ〔草加雅人〕、ラッキークローバー〔J/琢磨逸郎/影山冴子〕の戦闘要員レギュラーの加入によってバトルが加熱し始めると、再び視聴率が上がり始めました。


 更に「劇場版」公開がその勢いに弾みを付け、人間とオルフェノクの間で揺れる〔澤田亜希〕に加えて、ラッキークローバー最後の一人にして最強最悪の〔北崎〕(北絛透、北岡秀一に次ぐ3人目の“北”)と共に第3のライダー=デルタ・ギアがベールを脱いで、ドラマチックな全ての要素が出揃い佳境に入った9月以降は、井上脚本の真骨頂である“グチャグチャな人間関係”が頂点を極め、コンスタントに10%台をマークするようになりました。
 (秋のスペシャルの製作中止は、テレビ朝日側の番組編成上の問題によるもので、別に『555』の視聴率が悪かったという訳ではなかった模様)


 〔北崎〕が初めて姿を見せた第28話は、『仮面ライダークウガ』でメインを務めた[石田秀範]監督が演出を担当していた所為(せい)で、北崎のイメージが〔ダグバ〕(『クウガ』の敵=グロンギ族の最強の戦士。笑いながら人を殺すイカレポンチ) に酷似している点が、些か(いささか)気になりますけど……。



 この時点で、「1回でも見損なうと、ワケがわからなくなる」という番組開始当初の本作が抱えていた短所は、逆に「展開が読めなくなるので、1回も見逃せない」という強力なモチベーションを視聴者に与えるに至りました。
 どうやら、この逆転現象こそが「連続ドラマ形式」のスタイルを積極的に導入した[白倉伸一郎]プロデューサーの真の“狙い”だったようです。ウーン、深慮遠謀!


 反面、次回への〈引き〉ばかりを重視する“行きあたりばったり”な脚本作りの姿勢が、シリーズ構成を流動的なものにしている観は否めません。
 つまり、人数が増え過ぎた準レギュラー・キャラクター陣のドラマ内でのポジショニングの収拾がつかなくなっており、些か(いささか)もどかしくも感じられます。まあ、この点に関しては、前々作『仮面ライダーアギト』(2001)以来の白倉ライダー3作品に共通した傾向であるのですが。


 それに比べて、現行シリーズの先駆となった『仮面ライダークウガ』に於いて“全エピソードに統一性がある完成度の高い”シリーズ構成を可能ならしめた[高寺成紀(たかてら・しげのり)]氏の頑固なまでの熱意には、まったく頭が下がります。
 でも、その一方で「TV番組は“生き物”である」という観点から、状況次第でバリアブルな展開を仕掛けてゆく、ビジネスライクな白倉氏流の番組作りの姿勢にも一理ある――と感じております。
 要は、面白ければ結果オーライなんですけどね。


* 昼メロじゃねぇ!

 俗に“テンポがいい”と申しますと、トントンと調子よく、“立板に水”の如く滑らかに物事が捗る(はかどる)態(さま)を指しますが、逆に“ゆっくり”と進行していても、その“ゆるゆる”具合が「気持ちイイ」という場合だってあります。
 その意味で、『555』のスローな展開は、私にとって、至って“テンポがいい”のです。


 ただ、屈折したキャラクター達が織りなす錯綜した人間関係の「綾(あや)」ばかりが強調されるようになってしまった最近のエピソードを見ていると、な〜んだか〈昼メロ〉(“お昼のメロドラマ"=平日の午後に連日放送されている有閑マダム(ヒマな主婦)向けの通俗的な恋愛ドラマ)を見ているような気分になっちゃうんですよねー。


 ベタベタの愛憎劇、毎回大騒ぎするワリにはさっぱり進まぬストーリー、些細な出来事に大袈裟に反応する登場人物達の心理描写、容易に核心に触れようとしない脚本、無意味なクセに姑息なまでに興味を煽る次回への引き、等々……ほらね、ほとんど〈昼メロ〉そのものでしょ?


 所詮、ニューロティック・ヒーロー活劇の行き着く先は「メロドラマ」でしかないのかしら? 20〜30代の女性層が視聴者の多数を占めている現状では、やむをえない現象なのかなー。



 お陰で、変身後のアクションは“30分単位で区切りをつける為に”便宜的に演じられるだけになってしまい、オートバジン、サイドバッシャー、ジェットスライガーなどの出番は激減。
 新怪人のキグルミも2〜3週間に1体で済むようになって、CG合成・造型などの特撮面でのコスト・ダウンにより、なんとまあ、目下の『555』の1本あたりの製作費は、実写版『美少女戦士セーラームーン』(2003・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041105/p1)より安くなっているんだって!?
 現在放映中の東映実写キャラクター番組3作品の中では最も高視聴率で、関連グッズも一番売れている『555』が、最少コストで済んでいるってワケで(?)、これまた、コスト・パフォーマンス=合理主義に徹した白倉マジックだ!!



 けれども、さすがにラッキークローバーとのズルズルした抗争も、そろそろ限界でしょう。なんでも、琢磨逸郎(たくま・いつろう)役の〔山崎潤〕氏はもとより、影山冴子役の〔和香(わか)〕氏を井上氏が余りにも気に入ってしまった為に、2人を殺せなくなっているのだそうですが、“お前ら、一体、何回戦えば気が済むんや!”とツッコミたくなります。
 (個人的に、同一の敵との対決は3回〔初戦→リベンジ→再リベンジ〕が限度ではないか、と思います)


 第40話で澤田が草加カイザに蹴り殺され、第43話で結花の正体が啓太郎にバレて、やっと、最終回に向けて物語がダイナミックに動き出す気配が見えてきました。第25話で姿を垣間見せた道士・嘉挧(かく)……もとい〔花形前社長〕が、どう主筋に絡んでくるのか楽しみです。
 (道士・嘉挧(『五星戦隊ダイレンジャー』の指導者/1993)モドキの花形前社長のコスチュームは、中康治(なか・こうじ)氏の自前)


* さすが! 田崎監督はウマかった!

 長年〔田崎竜太〕監督の演出手法に賛辞を捧げ続けてきた私ですが、その具体的な特徴・長所については述べることは余り無かったように思います。


 ――と申しますのも、私が“田崎監督が優れている”と考える根拠が、実は「ごく自然に撮る」という地味ィ〜なファクターに因る(よる)ものだったからです。
 その“自然さ”ゆえに“ツッコミどころ”が無かったんですヨ。


 「自然に撮る」とは「小細工をしない」という意味で、即ち、○○監督のように無意味に特殊なレンズやフィルターを多用したりしない、××監督のようにCGによるアニメ的な表現を安易に濫用しない、△△監督のように平気で他人の作風をマネしたりしない、□□監督のように笑えないギャグを連発して一人で悦に入ったりしない――というコト。
 つまり、非常に節度をわきまえた「正統派」なんですね、田崎監督は。


 そりゃ、時には、試行錯誤的に奇抜なカットを撮っちゃって、拍子抜けさせられたこともありましたが、大抵の場合は、二度と同じ過ちを繰り返していません。
 多分、その都度、自分自身で“アレは失敗したな〜”という自覚があったのでしょう。換言すれば、田崎監督の演出の長所とは「欠点が少ない」というコトになるのかも知れません。



 田崎監督の代表作と言えば、
 王道中の王道=『星獣戦隊ギンガマン』「第一章 伝説の刃」(1998)をはじめ、
 古典的な方法論に則った〈強敵出現編〉=『電磁戦隊メガレンジャー』#38「戦慄! ネジレジアの凶悪戦隊」(1997)、
 これぞ〈クリスマス決戦〉の白眉!=『激走戦隊カーレンジャー』(1996)#41〜43三部作、
 歴代スーパー戦隊に対するオマージュがギッシリ詰まった『パワーレンジャー ライトスピードレスキュー』#1(2000)、
 起承転結の場面構成が見事な『劇場版 仮面ライダーアギト PROJECT G4』(2001・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20011104/p1)
 活劇路線復活の狼煙(のろし) を上げた『仮面ライダーアギトスペシャル 新たなる変身』(2001
http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20011105/p1)etc.


 ――往年の香港製カンフー映画の惹句ではありませんが、田崎監督作品の魅力は、まさに“Don´t think,feel”=「考えるな、感じろ」としか言い表しようがないのです。
 『仮面ライダーアギト』(2001)第41話(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20011107/p1)に於いての〔津上翔一(アギト)&木野薫(アナザーアギト)の同時変身〕シーンで、変身ポーズのフィニッシュを決めた木野さんの正面から翔一クンの左前へドリーで回り込み、斜め横からのアングルで2人を1ショットに収めたカメラワークを一目見れば、「ああ、この監督は、ヒーロー物のツボを物凄〜く、よく心得ているヒトだなぁ!」と納得して貰える筈です。


 逆に、一般的には非常に評価の高い『555』第8話(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20031102/p1)のクライマックス、海堂直也が長田結花の為に弾くギターの音色をBGMにして[ファイズ×スカラベオルフェノク]と[ホース×オウルオルフェノク]の対決が並行して描写される一連のカットは“粉飾的な”演出&カメラワークが多いので、個人的には余り好きではありません。
 以前にも申しましたが、ヒーロー活劇は“芸術作品”ではない、という、私の基本的な考え方は変わりません。


 乾巧と木場勇治が、別々の場所で、各々の敵と相対する「一人一殺」のシチュエーションには、どこかTV時代劇“必殺シリーズ”(1972〜87・91)ぽいムードがあって、平均的な特撮ファンにウケたのも頷けますが、私としては、その後で「オートバジンがファイズに蹴飛ばされちゃう」場面の方がインパクトが強かった。せっかく、ファイズを助けに来て援護射撃したのに、可哀相なオートバジン……不憫なヤツ。



 寝耳に水ですが、田崎監督は来年2004年早々、某アニメ制作会社の実写部門の立ち上げに参加するべく、東映ヒーロー作品から離脱します。
 ま、事実上の“引き抜き”ですね。同氏が『パワーレンジャー』監修の為に渡米した際にも思ったことですが――
 一体、東映上層部はナニを考えとるねん! 最も有能な監督を手放すなんて、アホか? あんたらは! 終盤を迎えた『555』はともかくも、『セーラームーン』は、まだ始まったばかりなんだゾ!


 『555』最終回の演出と、劇場版(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20031105/p1)の〈ディレクターズ・カット版〉の再編集作業が、田崎監督の東映での仕事納めになる予定……
 お先、真っ暗やー。


 (最近は、ヒーロー活劇のノウハウを着々と吸収しつつある[田村直己]氏に期待を寄せると共に、石田秀範監督の悪いクセ〈=アートを意識した映像作り〉を模倣し始めた[鈴村展弘(すずむら・のぶひろ)]氏に対して危惧を抱いている私)


* 白倉P(プロデューサー)の限りなきチャレンジ魂

 「監督(註:小林義明)も好き脚本(註:江連卓(えづれ・たかし))も好きなのに番組がダメというのを『仮面ライダーBLACK RX』(1988・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090726/p1)で見てしまった。というか、そういう壊れ方もあるんだなと知ってしまった。(中略)『RX』は十人ライダーが出てきて、脚本家が変わり、なんか迷走してるのがバレバレじゃーんという感じがあって、もう番組としての体裁すら失っている状態で、いろんな事情があったとは思うけど、見ている側にそういうことを慮(おもんばか) らせちゃうってのはどうよ?――」



 以上は「超光戦士シャンゼリオンバイブル――ファンタスティックコレクション」(朝日ソノラマ刊/2002・ISBN:4257036648)に掲載された白倉伸一郎氏のインタビューのごく一部ですが、どうです? 物凄く“よく分かっている”方でしょ? 『RX』に対してこれほど愛情を込めて、これほど見事に欠陥を指摘した批評家なんて(プロ、アマ含めて)居なかったんじゃないでしょうか?


 以前、「白倉氏は『RX』が好きだ」という話を某所から聴いたことがあるのですが、それは“モスト・フェイバリット”ではなく“モスト・インタレスティング”という意味だったんだなぁ、と改めて感慨を深くした次第。しかも、同氏が東映に入社したキッカケは――



 「『RX』を見て、これはなんだ!と、こんなものは放送してはイカンと思って、俺が行ってもできることがあるかも知れない、と思ってしまったんですね。」



 ――というコトだったんだって!!!


 ウ〜ン。なんと、[白倉ライダー三部作](『アギト』『龍騎』『555』)は、『RX』=吉川(進)ライダーに対する〈幻滅〉からスタートしていたんですね。
 (因みに、『シャンゼリオン』の初期の段階で、白倉氏は吉川プロデューサーと大喧嘩して、それ以来、口をきいたことがないそうだ)


 白倉氏と張り合おうなんて気持ちは毛頭(もうとう)ありませんが(白倉氏のイチ押し=「サバじゃねぇ!」(『シャンゼリオン』#10)は正直言って、そんなにスキじゃないけど)、私の場合、『RX』に関しては、ブタになろうが、指名手配されちゃおうが、四輪車(ライドロン)に乗っちゃおうが、どんなに脚本がヘッポコで演出がベタであろうとも、RX=[岡元次郎]氏のスタイリッシュなライダー・アクションさえ見せて貰えれば、大満足でした(マジで)。


 ED(エンディング)テーマ「誰かが君を愛してる」のメロディーに乗って悠然と前進するRXのフル(全身)ショットのカッコよさ!(まだスマートだった頃の岡元氏の、抜群のスタイルの良さを御覧あれ)
 十人ライダーが唐突に登場したのも大歓迎でしたし、なにより、私は小林靖子氏より鷺山京子(さぎやま・きょうこ)サンの方が好きだ!……って、これ以上『RX』の方に話が行っちゃうと、戻ってこられなくなるので止めますが、要するに、『RX』は白倉ライダー作品に多大な影響を与えた、ってコトです。



 前号2003年号の拙稿「全スーパー戦隊アクション監督興亡史」の記事で、[長石多可男]氏が『シャンゼリオン』の企画のイニシアティブを執ったと書きましたが、「シャンゼリオンバイブル」での同氏に対するインタビュー記事により、間違いであることが判明しましたので、お詫びすると共に訂正させて頂きます。
 (スミマセン、居酒屋で聴いた噂話を真に受けた私がバカでした。ただ、ご本人の記憶違いという可能性もあるのではないか、と……)


 また、「シャンゼリオンバイブル」にはアクション監督として[金田治]氏のコメントしか載っていなかったので、何故、[山田一善(やまだ・かずよし)]氏のコメントが無いんだ? と、不審に思われた方もいらっしゃる(そんな奴、いないか?)と思います。


 山田氏は『アギト』最終回(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20011108/p1)をもってJAE(ジャパンアクションエンタープライズ)から独立し、現在はフリーとして活動中です。来年度(2004年)公開予定の実写版『忍者ハットリくん』『キューティーハニー』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041103/p1)のアクション監督を務める等、御多忙の様子(後日付記:映画『下妻物語』(2004)にも参画)。
 個人的に、[山岡淳二]氏に匹敵する才能の持ち主だと考えていたので、山田氏のJAE離脱は本当に残念でした。


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 さて、“今の状態に満足していてはイカン!”ということで、3年連続で務めた仮面ライダー・シリーズのチーフプロデューサーの地位を放擲(ほうてき)して、未知数の『セーラームーン』の実写化企画に挑戦中の白倉氏。
 そのチャレンジ精神旺盛な姿勢は真にお見事なのですが、同氏のチェックが薄くなったお陰で『555』の方は、悪い意味での“井上敏樹ワールド”(=ワンパターン)と化してしまい、「非人ヒーローの悲哀」「新人類(オルフェノク)対人類」という『アギト』の“焼き直し”クサいニュアンスが濃厚になってきているのが大いに気になります。
 が、今年度は、田崎監督が自らメガホンをとって完結編を締め括ってくれる予定なので、『アギト』『龍騎』最終話(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20021109/p1)のような“肩スカシ”は有り得ないと信じております。(まず大丈夫でしょう!?)


 果たして、オルフェノクの王の正体は? 九死に一生を得た子供の秘密とは? 花形前社長と村上峡児との確執の真の理由は? 3本のベルトの本来の用途は? そして、長田結花を殺されてブチ切れた木場勇治を新社長に迎えたスマートブレイン社は、いかなる行動に出るのか?



 ――第1期平山(亨 ひらやま・とおる)Pのライダー・シリーズに勝るとも劣らぬ一大ブームを巻き起こした白倉ライダー三部作の掉尾を飾る『555』完結編!
 ゆめゆめ見逃すことなかれ!


(了)



*次回作『仮面ライダー剣(ブレイド)』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041101)は、プロデューサー=日笠淳、脚本=今井詔二、監督=石田秀範という布陣でスタート。
 [トランプ・モチーフの4人組ライダー部隊]という“戦隊モドキ”の設定にイヤ〜な予感がしますが、来年度の4クール(1年)を全う(まっとう)すれば、仮面ライダー・シリーズは「5年間」連続して継続したことになり、第1期シリーズ(4年9ヶ月)を上回る大記録を樹立するのです!
 尚、新加入の今井詔二(いまい・しょうじ)氏とは、『はみだし刑事情熱系(はみだしけいじ・じょうねつけい。略称:はみデカ)』(1996〜2004)をはじめ、テレビ朝日系の月曜時代劇・木曜ミステリー・土曜ワイド劇場等、一般向けの娯楽ドラマに精通した中堅ライター。
 近作はTV時代劇『天罰屋くれない 闇の始末帖』(2003・東映)ですから、“兄者”(『忍風戦隊ハリケンジャー』(2002)のライバル戦隊ゴウライジャーのカブトライジャー霞一甲(かすみ・いっこう)こと白川裕二郎)ファンの方々はご存じなのでは?


 (残念ながら、《恐れていた高寺Pの復活宣言》は実現しませんでした。やっぱり[鈴木武幸(すずき・たけゆき)]Pの目の黒いうちはムリなのか?!)


(03年11月執筆)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2004年号』(03年12月29日発行)『仮面ライダー555』劇場版&後半合評⑬より抜粋)



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