Episode.36 マザー・ユニバース
(文・さかもと晄)
今日も今日とて、デカマシンのメンテナンスに勤しむスワンさん(演・石野真子)。
デカベースでは、彼女宛の“金のSPDシールのついた封筒”で盛り上がっています。
テツ(デカブレイク)によると、その金シールはとても特別な意味をもつらしいです。ジャスミン(デカイエロー)はウメコ(デカピンク)に言いました。
「金なら一枚、銀なら五枚」
……ウメコには通じなかったようです。しれっとしていました。ジャスミンの相手をしてあげて下さい。
封筒を開けてみたスワンさん。そこには〜〜“宇宙警察科学捜査研究所”より、“サイテック賞のメダル”をあげるから“ニューウェル星”へおいで〜〜と書いてありました。
一時とはいえ、デカベースを離れるのは寂しいようで、スワンさんは仲間に尻を押されて宇宙へと旅立ってゆくのでした。
表彰式と受賞パーティを兼ねた会場へ着いたスワンさん。
とっても偉いホルス星人ヌマ・O(オー)長官よりメダルを授与され、満更でもないようです。長官の「(宇宙警察)本部で科特研所長の椅子を用意している」とのありがたいお言葉に関しては、すぐに首を縦には振れませんが。
その頃、デカベースに残されたバン(デカレッド)たち5人は、あれやこれやとスワンさんを頼ろうと大騒ぎ。何でも彼女を頼るな、と意外に冷静なテツにたしなめられるのでした。加えて、堂に入った掃除のしぐさから、テツのマメ男くんぶりも確認できました。
そんなところへ、6人に出動要請が下されました。ポイント676に、怪重機デビルキャプチャー6(シックス)が出現したそうです。
早速、デカレンジャーロボ&デカバイクロボが現場へ向かいます。ところが、怪重機に搭乗者の姿は無く、肩透かしを食らったような二大ロボでした。
ところ変わり、パーティ会場でトート星人ブンター教官と再会したスワンさん。互いの元気な様子を確認しあうと、話題は元同僚のポッペン星人ハイマル(声・龍田直樹)の近況へと移ります。
ブンターによると、ハイマルは“サイテック賞のメダル”がもらえなかったから辞めた、とのことです。
「たったそれだけのことで……」
ハイマルの気持ちが理解(わか)らず、呆れるスワンさん。
そんなスネちゃまなハイマルは、密かにエージェント・アブレラと接触を持っていました。“コドモ”のハイマルを相手にするのは、“オトナ”のアブレラにとって苦痛と思われますが、ビジネスはビジネスです。
アブレラはハイマルをうまく持ち上げて、高く売れそうな怪重機を開発させているのでした。その甲斐あって、今ここに超強力なハイマル・リアクター(動力炉)搭載型怪重機フランケンザウルスが完成しました。
ハイマルはお披露目と試運転を兼ねて、ポイント190に怪重機を出現させます。
テツはスワンさんに気を配り、あえて地上の異変を知らせません。スワンさん不在のまま出動したデカマシンでしたが、整備不良のためか、ギクシャクしながら強制合体を試みます。
「ファンクラッシャーのおなかに、デビルキャプチャーのハサミ。ゴッドパウンダーのブースターに、テリブルテーラーの腕。そして、シノビシャドーの脚に、ミリオンミサイルの胸。なんだかごちゃまぜくん」
……どうやら、ジャスミンは怪重機オタクのようです。
デカバイクロボも参戦し、ライディングデカレンジャーロボから、再びぎこちない合体でスーパーデカレンジャーロボへ。
デカべースのドギー署長も、ニューウェル星のスワンさんに通信を送ります。
怪重機の特徴を知らされたスワンさんは、すかさずハイマルの影を察知しました。ハイマル・リアクターが爆発すれば、地球の半分が吹き飛ぶ、と的確な被害想定までしています。
ブンターに受賞のスピーチを押し付けたスワンさんは、慌てて帰還の途につきました。
地上では、変わらずデカ側の苦戦が続いています。
「少し私にも運転させてもらうぞ」
優勢ゆえか、いつもはクールなアブレラのはしゃぎようがおかしな感じです。
運転……。怪重機とは“ウォーカーマシン”(『戦闘メカ ザブングル』(S57)に登場した、自家用車感覚で操縦できるロボット群)みたいなメカニズムなのでしょうか。フランケンザウルスに限っては、鉄人28号の操縦システムに近いようですが。
悪の必殺技・フランケンハイパークラッシュを浴びて敗退したスーパーデカレンジャーロボに替わり、ついに切り札のデカウイングロボが戦場に投入されました。
一方では、デカマスター(ドギー署長)とデカブレイクがハイマルの隠れ家を合同捜索します。
地球へ戻り、SPライセンスの探知機能を使ってハイマルの居場所を探すスワンさん。
あっさり見つかったハイマルは、彼女への個人的感情よりも大きな、自分を認めなかった“世間”に対しての恨みごとや泣きごとを並べ立てました。その怨念が“世間”を見返すことで結実を見る、とも。
「見返す……そんなことのために」
ハイマルの気持ちがどうしても理解(わか)らず、更に呆れるスワンさん。
「真白き癒しのエトワール、デカスワン!」
デカスーツを着用(変身)したスワンさんと、アーナロイド群団(戦闘員)との闘いが開始されました! デカマスターとデカブレイクもかけつけ、今ここに愉快な三銃士が夢の共演です。
いよいよ劣勢と見たアブレラは、フランケンザウルスの自爆装置を作動させました。地球の半分壊滅のピンチに、どうでるスワンさん……。
「それだけのこと」「そんなこと」……フツーの人間にとっては文字通り「それだけのこと」であっても、ある種の人間には「そんなこと」で済まされない。
「驚異的な経済発展を遂げた今の世の中のシステムは、構造的に心の感度の高い人にはとても生きにくくできているのです。(中略)感受性の高い人の不快感が尊重されることはありません。相当熱烈にアピールしても、こだわりすぎだ、くだらないと軽蔑されておしまいです。それゆえ、感受性の豊かな人ほど、傷つき、世間を恨むようになります」
(『無神経な人に傷つけられない88の方法』岩月謙司・著/大和書房・刊 H14 ISBN:4479770526)
もちろん、“感受性の豊かさ”は歪んだ軽挙妄動へのエクスキューズ足り得ない。当然である。
これまでの人生において周囲から存在を肯定されてきた(そして、今後も確約されている)人間には、育まれなかった“負の感情”だから。
だが、他者からの肯定を自力でつかみ取るしかない人間の場合、その感情を自己表現(自己実現とはいささか異なる)する能力も豊かに備わっていることが多い。
ここがまた悲劇的、といえまいか。フツーの人間と違うヘンなヤツ、の一言でむげに切り捨てられてしまう。
劇中、ハイマルの取った行動は明らかに反社会的であり、法の裁きを受けるべきだ。
しかし、彼のメンタリティは誰にも裁けない。罪は罪、心は心である。
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