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ウルトラマンマックス中盤評「ゼットンの娘」「恋するキングジョー」「第三番惑星の奇跡」「わたしはだあれ?」~「胡蝶の夢」

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『ウルトラマンマックス』評 〜全記事見出し一覧
[ウルトラ] ~全記事見出し一覧


ウルトラマンマックス』13話「ゼットンの娘」・14話「恋するキングジョー」・15話「第三番惑星の奇跡」・16話「わたしはだあれ?」~22話「胡蝶の夢

老兵は潔く去れ! そして、マニアに媚びるな!

(文・久保達也)


 『原点回帰』を掲げ、シンプルでスピーディーなストーリー展開と、過去の人気怪獣が大挙登場することをウリにしていた『ウルトラマンマックス』(05年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060311/p1)であるが、当初はたしかにその宣伝文句に偽りはなく、筆者を久々に夢中にさせてくれたものだった。


 「怪獣島の戦い」を21世紀に見事に甦らせたばかりでなく、怪力以外にはこれといった武器がなかった、どくろ怪獣レッドキングに口から吐く岩石ミサイルという必殺技を与え、その可憐さでは完全に初代を超えた電脳珍獣ピグモンが登場した第5話『出現、怪獣島!』~第6話『爆撃、5秒前!』の前後編。
――どくろ怪獣レッドキングは、初代『ウルトラマン』(66年)第8話『怪獣無法地帯』および第25話『怪彗星ツイフォン』、『ザ★ウルトラマン』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971117/p1)第27話『怪獣島(じま)浮上!!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20091102/p1)に登場。すべて複数の怪獣が登場する作品であるが、いずれにおいても最強の怪獣として描かれている。『ウルトラマン80(エイティ)』(80年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971121/p1)第46話『恐れていたレッドキングの復活宣言』には単独で登場していた。なお『マックス』第5~6話においては「装甲怪獣」という別名が付けられている――


 防衛組織・DASH(ダッシュ)基地に潜入し、次々と隊員たちの生体エネルギーを吸収する甲虫型宇宙怪獣バグダラスが、SF洋画『エイリアン』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20171104/p1)ばりの絶体絶命的サスペンスを見せてくれた第8話『DASH壊滅!?』。


 初代『ウルトラマン』第7話『バラージの青い石』にも登場した中近東の伝説の都市・バラージのように「東京砂漠」をつくりだし、マックスを大苦戦させた磁力怪獣アントラーが大暴れを披露する第11話『バラージの預言』などなど……
――私事で恐縮だが、筆者が『ウルトラマンダイナ』(97年・https://katoku99.hatenablog.com/archive/1997/12)放映時にこのサブタイトルで投稿して、円谷プロの江藤直行室長から感想の手紙を頂いたシナリオ(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971217/p1)は、アントラーが東京を砂漠にする話であったが、今回の映像化はまさにそのイメージにぴったり。まぁ内山田洋とクール・ファイブによる1976年の大ヒット歌謡曲『東京砂漠』とアントラーを掛けた、年配マニアであれば誰でも考え付くネタだとも思いますが(笑)。磁力怪獣アントラーは先の『ウルトラマン』第7話『バラージの青い石』に登場。05年12月3日にエクスプラスから『大怪獣シリーズ ウルトラマン』の一種としてリアル造形のソフビ人形が発売されている。なお以前の怪獣図鑑の類では別名を「蟻地獄怪獣」として表記しているものも多く、個人的にはこの方がしっくりと来るような感がある――


 まぁ90年代後半の平成ウルトラ三部作みたく、地球環境を汚す人類とその文明を滅ぼそうとする「70年代・人類ダメSF(小説)」的な宇宙工作員ケサムが登場する第7話『星の破壊者』には「あいも変わらず、今ではもう陳腐化(ちんぷか)してしまっている、90年代平成ウルトラ三部作でも散見したようなこのネタかぁ。新しく招聘(しょうへい)したスタッフたちは平成ウルトラ三部作を観ていないだろうからこのネタをやりたくなってしまうのだろうけど、円谷プロ側のプロデューサーが『そのネタはすでに幾度かやっているから……』と止めないのかなぁ」と嘆いたものだったが、そういったノリの作品は例外中の例外だと思っていた。今後も怪獣の大暴れとウルトラマンマックスとのバトルの魅力を前面に押し出した作風を続けていくものだとばかり思っていた。


――人型で巨大化もできる宇宙人・宇宙工作員ケサムも非常に地味なキャラクターだが、バンダイから『ウルトラ怪獣シリーズ2005』の一環として05年11月下旬にソフビが発売されている。だがこれも『ゴジラ FINAL WARS』(04年・東宝http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060304/p1)に死体しか登場しなかったにもかかわらずソフビが発売されたX(エックス)星人のように、いつまで経っても売れ残りそうな気がする(笑)。
 『ウルトラマンティガ』(96年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961201/p1)・『ウルトラマンダイナ』(97年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971215/p1)・『ウルトラマンガイア』(98年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19981206/p1)の平成ウルトラ三部作は、その一応のSF系のリアル寄りで連続ドラマ性もあるとされた世界観がまだまだ第1期ウルトラ至上主義者が多かった当時の特撮マニアたちからは絶大な支持を得た(筆者からするとさほどSFでもリアルでも連続ドラマ性があるでもなく、特撮マニアたちがかなり好意的に脳内補正をしているようにも見えたけど・汗)。しかし、平成ウルトラと比すれば明らかにチャイルディッシュでマイルドな大人気テレビアニメ『ポケットモンスター』(97年~)などと比較すれば子供や一般層に大きくアピールできていたとはとても思われない。事実、映画『ウルトラマンティガウルトラマンダイナ 光の星の戦士たち』(98年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971206/p1)の配給収入は4億5千万円だったが、同年公開の「ポケモン」映画第1作『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』(98年)の配給収入は10倍近い41億5千万円(21世紀以降の興行収入基準だと75億4千万円!)と圧倒的な大差がつけられていた(汗)――――


 だから宇宙恐竜ゼットンと宇宙ロボットキングジョーが前後編で再登場するという情報を得たときは、筆者は大いに狂喜したものだ。やはり『マックス』はやってくれる! と。


 だが、その期待は見事に裏切られてしまったのだった…… それが第13話『ゼットンの娘』と第14話『恋するキングジョー』であった。


ウルトラマンマックス』13話「ゼットンの娘」・14話「恋するキングジョー」

(脚本・上原正三 監督・八木毅 特技監督鈴木健二


 サブタイトルからして疑問符を付けざるを得ないセンスだと思ったが、残念ながらやはりそのタイトルに偽りのない出来映えの作品だったのだ。
――前者は『ウルトラマン』第39話(最終回)『さらばウルトラマン』で初代ウルトラマンを倒してしまい、後者は『ウルトラセブン』第14・15話『ウルトラ警備隊西へ』前後編に登場してウルトラセブンを大いに苦しめた、ともに「最強怪獣」である。なお今回のキングジョーの別名は「侵略ロボット」である。ところで『セブン』当時の案ではキングジョーは数えきれないほどの小さなメカが鳥の大群のように襲来し、何がなんだかわからないうちにロボットへの合体を遂げる設定だったらしい。当時の技術ではそれを映像で描くのが困難だったことから4機の宇宙船が合体するかたちに変更になったのである。だが現在ではCGで当初の案を再現することが可能なのだし往年のオリジナルのキングジョーとは別物でもあるのだから4機以上の機体の合体で視聴者を驚かせてくれてもよかっただろうし、そもそも町の発明家が考案したラジコンロボットにキングジョーを偽装させる展開がストーリーにまったく活かされていない――


 結論から書けばこの前後編においてはゼットンもキングジョーもほとんど「どうでもいい存在」「他の怪獣にも代替可能な存在」に過ぎなかった。『マックス』では巻頭の比較的早い段階で怪獣が登場するのがそれまでの通例であったのだが、時刻表示付きの早朝放送によると(笑)ゼットンが登場したのは7時50分、キングジョーが登場したのが7時49分と、あまりに遅いことがそれを実証しているのだ。


 それまで何が描かれているかといえば、大昔に変身怪人ゼットン星人によって「ゼットン・ナノ遺伝子」を植えつけられた人間の子孫である夏美(なつみ)という少女が、ゼットン星人に利用されDASH基地に潜入したり、キングジョーを操ってマックスと戦ったりするのだけれども、夏美を演じているのが『忍風(にんぷう)戦隊ハリケンジャー』(02年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20021112/p1)でハリケンブルー・野乃七海(のの・ななみ)を演じていた長澤奈央(ながさわ・なお)だったものだから、ゼットン星人に操られる際には我々特撮マニアたちへの出血大サービスとして忍者のコスプレをさせていたワケなのだ(爆)。


 コスプレ美少女が戦闘メカを操る! などというシチュエーションはマニア諸氏にとっては遂に05年度の流行語大賞にまで選ばれてしまった「萌え〜!」なんだろうけれども、『マックス』の現役視聴者である幼児たちは『ハリケンジャー』のころはまだ小さすぎたであろうから、「このオネエチャン、なんで忍者の格好してんの〜?」と親に疑問をぶつけるばかりであったろうし、そんなネエチャンよりも早くゼットンやキングジョーを出してほしいワケなのだ。


 放映が秋だというのに描かれるのはスイカや金魚などという夏の風物詩であり、第2期ウルトラシリーズみたいにもっと季節感を大事にしろ! と云いたくもなったものだ。
――第2期ウルトラシリーズではクリスマス・正月・節分・ひなまつりなどの四季折々の風物詩を活かした作品が多数製作されたものだ。作品の海外輸出を考慮するのなら、かつての無国籍なノリではなく、今の時代は逆にこうしたニッポンのローカルな風情を強調するのも有効な手段なのではなかろうか? もっとも今回のように「秋だというのに季節はずれの暑さが続いていた」などという云い訳のナレーションを加えることによって、真夏の風物詩を秋に見せつけるのもアリかもしれないのだが、第14話が放映された05年10月1日は奇(く)しくも実際に季節はずれの暑い日となり、各地で軒並み真夏日を記録した。『恋するキングジョー』の悪運は強かったのだ(笑)――


 おまけに舞台は東京の下町で、『三丁目の夕日』(74年~)――小学館の壮年向け漫画誌ビッグコミック オリジナル』で長期連載を続けている西岸良平の漫画作品。昭和30年代に生きる市井の人々を描いており、この05年秋には『ALWAYS(オールウェイズ) 三丁目の夕日』として東宝で映画化、大ヒットを記録した。関連記事:『ALWAYS 続・三丁目の夕日』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080316/p1)――ばりに「昔は良かった」と云わんばかりのオジサン的ノスタルジーぷんぷんであり、そんな庶民的な場所を舞台に美少女・夏美に対して隠密捜査をする主人公・カイト隊員にジェラシーを感じるミズキ女性隊員といった心理もフィーチャーされており、つまり宇宙から襲来した仮にも「最強」を誇るハズの怪獣の大活躍や都市破壊をそのエピソードの主眼として見せるような設定ではないのである。


 なにも女の子中心の話を敵視しているわけではない。たまにはこういうノリもよいだろう。だがなぜそこに登場するのがよりによってゼットンやキングジョーでなければならなかったのか? とてもではないが彼らが活かされるハズがないではないか!? 「必然性がない」などと堅苦しいことも云いたくない。だがこれだけ怪獣の活躍の場が限定され、彼らの存在が目立たなくなるのであれば、円谷プロの怪獣倉庫の一番手前に転がっているような怪獣を適当にひっぱり出してくれば済むのである。なぜ「最強怪獣」がコスプレ戦闘美少女の引き立て役にならねばならないのか!?


 この前後編の脚本を執筆したのは『ウルトラQ』(66年)以来、ウルトラシリーズに深く関わってきた大ベテラン・上原正三であるが、ワールドフォトプレス社の『フィギュア王』№92(05年・ISBN:4846525651)に氏のインタビューが掲載されている。それによれば氏が脚本を執筆した深夜特撮『ウルトラQ 〜dark fantasy〜』(04年)第17話『小町』を『マックス』のプロデューサーで今回の前後編の監督を務めた円谷プロ八木毅(やぎ・たけし)がエラく気に入っており、「『小町』をもう一度やってみたい」ということでこんな作風になってしまったらしい。そして上原自身が「まず長澤奈央ありきのエピソードですからね」などと暴露してしまっているのである(汗)。そんな「老いらくの恋」(爆)にカッコいいゼットンやキングジョーの大活躍を見たい子供たちがなぜ付き合わされねばならないのか?
 そりゃあ筆者だってさえないサラリーマンがラーメン屋のバイトの女の子――正体はアンドロイドであり、彼女も長澤奈央が演じた――とハッピーエンドを迎える『小町』は『〜dark fantasy〜』のベストエピソードだと思ったさ。でもあれは深夜枠だから許されたわけであり、土曜の朝に子供が観るような時間帯で再現するような話じゃないだろう。「まず長澤奈央ありき」ではなく「まずゼットンありき」「まずキングジョーありき」でなければならないのではないのか!? そうでなければゼットンやキングジョーを再登場させる意味などはまるでないのだ!


 そんな筆者の溜飲を下げさせるためか、小学館『てれびくん』05年1月号付録の『てれびくんスペシャルDVD スーパーバトルだ!! ウルトラマンマックス』では、ゼットンレッドキングがタッグを組んでマックスと激突している! ……ってなんでこういうのを目当てで『てれびくん』を買わねばならないのだ。本編で見せろ!(笑)
――この付録DVDは、これまでの名場面を編集してマックスの戦闘能力を紹介したあと、新撮のマックスVSゼットンレッドキングを収録。レッドキングに後ろからはがい絞めにされたマックスにゼットンがパンチの嵐を浴びせるが、そこから抜け出したマックスはレッドキングに回し蹴りの連続攻撃を見舞い、姿を消したゼットンを心の目で透視し、頭部のトサカ部分が分離してブーメランのように放てる必殺技・マクシウムソードでこれを倒す! ホンマに本編でやれや(笑)。他に「ダッシュ メカずかん」「たいいん&そうびずかん」などを収録しているが、ミズキ隊員や女性型アンドロイド隊員・エリーの写真がどちらも本編におけるコスプレ姿なのは、やはり筆者みたいな輩が購入するのを想定してのもの(笑)。あと傑作なのが二者択一の「ダッシュ チャレンジクイズ」。「もし怪獣が出たらきみならどうする?」の問いに「さっさと逃げる」と答えたら不正解(爆)。「みんなを助ける」と答えたあなたはDASHに入隊できますよ(笑)――


ウルトラマンマックス』15話「第三番惑星の奇跡」・16話「わたしはだあれ?」

(脚本・NAKA雅MURA 監督&特技監督三池崇史


 これに続いて放映されたのが早くから話題になっていた三池祟史(みいけ・たかし)監督作品である。第15話『第三番惑星の奇跡』は攻撃すればするほど強くなる変身怪獣ザラガスのような完全生命体イフが登場。演奏会での発表を楽しみにしていた少女の夢を守るため、ミズキ隊員が自らおとりとなって熱い戦いを繰り広げるが、それも空しく演奏会の会場どころか街全体が廃墟と化す。
――変身怪獣ザラガスは『ウルトラマン』第36話『射つな! アラシ』に登場した怪獣。攻撃すればするほど凶暴になったが、科学特捜隊の新兵器・QX(キューエックス)ガンとウルトラマンの必殺技・スペシウム光線のダブル攻撃に敗れた。でも攻撃すればするほど凶暴になるのなら、それってヘンじゃないか? 第1期ウルトラシリーズ作品にもあるこうした矛盾は、ナゼか第1期ウルトラシリーズ至上主義者たちにはまったく問題にされない。典型的なダブル・スタンダードだなぁ(汗)――


 マックスも敗れ、絶望に覆い尽くされる中、少女がイフに向かってフルートの音色を聴かせるや、イフは全身が楽器のような姿と化し、壮大なオーケストラとなって宇宙へと舞い上がるという、一見バトル編かと思いきや、戦いを否定した『ウルトラマンコスモス』(01年)のような美しいオチで終わる。



 続く第16話『わたしはだあれ?』はタイトルこそ『ウルトラセブン』(67年)第47話『あなたはだあれ?』をもじっていて一見マニア向けかと思いきや、宇宙化け猫タマ・ミケ・クロ――猫好きの筆者にはたまらん。シッポがカワイイんだこれが――があらゆる地球生物の記憶を消去して社会を大混乱に陥れる!
――『セブン』の『あなたはだあれ?』は、集団宇宙人フック星人が夜中に団地ごと住人と入れ替わって宇宙人居住区にするというアイデアが光る佳作。酔って夜中に帰宅したサラリーマンが妻や子供、近所の住人の誰からも自分のことを「知らない」と云われて困り果てるコミカルな描写や、ウルトラ警備隊が宇宙人居住区に潜入するサスペンスフルな展開が秀逸である。本当にこのころの上原先生はよかったなぁ(笑)――


 DASHの隊員たちはメカの操縦方法を忘れ、カイトはマックスへの変身の方法を忘れ、マックスは光線の発射ポーズを忘れる…… 地球の大ピンチを抱腹絶倒させる演出で描いているのは、『帰ってきたウルトラマン』(71年)第48話『地球頂きます!』同様の手法であり、マックスが擬人化したポーズを見せるのも『ウルトラマンタロウ』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1)を思わせる。
 そして、マックスがタマ・ミケ・クロ――いやぁ、鳴き声がカワイイんだこれが――の一斉攻撃を受けて苦しむ最中、一瞬だけだけどマックスの脳裏に、『ウルトラマンタロウ』第25話『燃えろ! ウルトラ6兄弟』に登場した超近代的な建築物が多数そびえるM78星雲・ウルトラの国の特撮セットを再現したかのような映像が浮かぶ! ハードなSF志向や第1期ウルトラへの原点回帰ではなく第2期ウルトラこそ再評価されるべきであり、ウルトラ兄弟やウルトラの国の設定こそが今の子供たちをもワクワクさせる復活させるべき要素なのだと主張してきた筆者にとって、あまりに嬉し過ぎるビジュアルも登場したのだ!
――ちなみに『帰マン』の『地球頂きます!』は、宇宙怪人ササヒラー(脚本家の小山内三江子の本名・笹平からの引用・笑)がなまけ怪獣ヤメタランスを使って地球人を無気力にしてしまうエピソード。泥棒を追いかけるのをやめてしまう警官、結婚式をやめてしまう新婚夫婦、怪獣攻撃をやめてしまう防衛組織・MAT(マット)などのコミカルな描写が、幼児のころはともかく小学生時分での視聴時は抵抗があったものの、高校生以上や大人になってからの再視聴だと実に楽しめる。これほど有効確実な侵略方法を筆者はほかに知らない(笑)。なお脚本の小山内美江子は、『ウルトラQ』では本放映時には怪獣が登場しないので内容が少々地味で難解だと判断されたのと次作である初代『ウルトラマン』の事前宣伝特番『ウルトラマン前夜祭 ウルトラマン誕生』との話数調整のために放映がオクラ入りとなった、再放送では放映されている第28話(後年では便宜上の最終回)『あけてくれ!』を執筆。のちに『3年B組金八先生』(79年〜・TBS)のメインライターやNHKの大河ドラマ徳川家康』(83年)や同じく西郷隆盛を主役とする大河ドラマ翔ぶが如く』(90年)の全話脚本などでも大活躍した御仁――


 ところで三池監督はいわゆる第2期ウルトラ世代ではない。それどころかむしろ初代『ウルトラマン』(66年)を6才で夢中になって観ていた第1期ウルトラ世代である――『朝日新聞』05年6月16日夕刊掲載の週1連載『三池祟史のシネコラム』参照――。脚本のNAKA雅MURAは68年生まれだから70年代前半と末期の第2期~第3期ウルトラの直撃世代だが、両者ともに彼らは我々のような特撮マニアやウルトラシリーズのマニアではないだろう。そんな彼らがつくった『わたしはだあれ?』が、初期東宝特撮映画・第1期ウルトラシリーズ至上主義者の第1世代特撮マニアたちがあれほど否定してきた、第2期ウルトラのコミカル編的な演出や『タロウ』に出てきたウルトラの国のイメージを特にイヤイヤな風情ではなくスンナリと映像化していることは極めて重要なポイントだ。
 要するに三池監督たちが『ウルトラマン』から得たものは、ハードでシリアスでリアル・シミュレーションな要素やSF性でもテーマ性でもなかったのである。氏曰(うじ・いわ)く「破壊の快感と正義の暴力に夢中になった。そして私はそのまま大人になった」なのである。まぁ『第三番惑星の奇跡』はともかく『わたしはだあれ?』は「破壊の快感と正義の暴力」を主眼とした作品とはいえないのだが(笑)、特撮マニアではない世間一般のウルトラマン世代のウルトラマン観とは適度なコミカル演出やウルトラの国の設定をも含んだものであることが図らずも明示されたといえるだろう。
 もう特撮評論同人界では80年代中盤から第2期ウルトラシリーズ再評価の研究が散々進んできた中で、いまだに第2期ウルトラの一部コミカルな要素やウルトラ兄弟やウルトラの国の設定を、ウルトラマンの擬人化や神秘性の喪失につながるからといった論理で全否定にする輩の浅はかさ。氏の発言と作品によって第1期ウルトラにも第2期ウルトラで批判されたようなコミカル演出や児童ドラマなどもあったのであり、第1期ウルトラも第2期ウルトラも微差はあっても本質的には同じことをやっており、絶対的な優劣・勝敗を付けるといった行為はナンセンスであるということが少しは露呈されたのではあるまいか?


 いずれにせよ完全生命体イフも、宇宙化け猫タマ・ミケ・クロ――いやぁ鈴の音がカワイイんだこれが・笑――もマックスを絶体絶命の危機に追いやる「最強怪獣」として描かれており、別のテーマや風情を語るための単なる道具・ダシ・手段としてしか描かれなかったゼットンとキングジョーの影は余計に薄くなってしまった。こうなると過去の栄光だけで食っている人とはいい加減におさらばし、外部からどんどんと新しい人材を入れた方が良いのではないかと考えざるを得ないのだ。



 これがターニングポイントとなって『マックス』は再び良い方向に向かうんじゃないかと思っていたのだが。ウ〜ン、なかなかそうは問屋が卸さないというか、『マックス』序盤の明朗なカラーはしょせんはテレビ局やスポンサー向けの営業的な言い訳や客寄せパンダ的なハッタリに過ぎなくて、「本当はオレたちがやりたいのはそんなことじゃないんだよねぇ」などという本音が透けて見えるような作品が最近はチラホラ目につくような気がするのだ。


 続く第17話『氷の美女』などはまさにそれ。南極の10万年前の氷層から思わずウットリの美女が発見されるのはよいのだけれども、その美女が実は10万年前に我らが人類を創造したエイリアンであり、「おまえたちは戦争ばっかりやってる失敗作だから、滅ぼしてまた新しい人類をつくる!」(大意)なんてまぁ、懲りもせずにマニア的には既視感あふれる「70年代・人類ダメSF」的な人類批判セリフばっかり吐いているものだから、怪獣エラーガがどれだけ迫力ある都市破壊を繰り広げようが気分は萎える一方であった。それにしてもいくら氷の美女が憎々しいセリフを吐こうが、着ぐるみ姿の宇宙人ではなく人間と変らない姿をしているのだから射殺するのはちょっとやり過ぎなんじゃないのか?――本作で女性ゲストが中心の話になると、ゼットン・キングジョー編の夏美しかり、第9話『龍の恋人』の少女の亡霊しかり、妙になんらかの過去を引きずった女性ばかりになっているのもまたパターン化しており、シリーズ構成・バランス面でも不満である――


ウルトラマンマックス』22話「胡蝶の夢

(脚本・小林雄次 監督・実相寺昭雄 特技監督菊地雄一


 そしてその究極なのが、第22話『胡蝶の夢(こちょうのゆめ)』である。
――この第22話は当初の放映予定では第23話『甦れ青春』が組まれており、実相寺昭雄(じっそうじ・あきお)監督担当の2本『胡蝶の夢』と『狙われない街』は第23・24話として連続で放映される予定になっていた。しかし、マニア受けの難解な実相寺作品が二週連続では視聴者が逃げてしまうのでは? なんて判断が働いたためか、『胡蝶の夢』を繰り上げて放映することになったようだ。だったら最初からマニア受けの話なんかやめとけよ(笑)――


 『マックス』の公式ホームページを見ると、「実相寺監督はやっぱりすごい! 光、影、鏡。昔から変わらない監督らしいアイテムと映像を十分堪能しました」という鹿児島県在住39才の意見も寄せられているから、アンチテーゼ編や異色作志向の実相寺昭雄監督の登板をいまだにありがたく思っている古典的な特撮マニアはやはり多いのだろうけど、当の子供たちから観たらせっかく早起きしたのにまたベッドに戻りたくなるような作品だったんじゃないのか?(汗)


 今回ゲスト主役となったのは、なんとテレビ番組『ウルトラマンマックス』の脚本家である。筆者が上原正三氏のことを「どうかしている……」と思うキッカケとなった『ウルトラマンティガ』(96年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961201/p1)第49話『ウルトラの星』の悪夢をまさに思い起こさんばかりの設定であるが、この脚本家がネタにつまり、自分がカイト隊員として行動する夢を毎晩見てしまう。


 その夢には粘土で怪獣をつくっている不気味な女が決まって登場する。現実に戻った脚本家はそれを元にシナリオを書き、気分転換に訪れたバーには夢とそっくりの女が現れて……とまぁ紀元前の古代中国の古典『胡蝶の夢』のように「夢」と「現実」の世界が奇妙に交錯する話であって、画面も終始暗く、とても就学前の幼児には馴染めない作風である。ましてや不気味な女がカイトに対して放つ「おまえたちはあらかじめ用意された筋書きを演じる駒にすぎない」(大意)というメタフィクションなセリフは、年長マニア向けにはともかく子供たちに対しては無神経に過ぎやしないか? 世の中には「大きくなったらウルトラマンになりたい」なんて願う子供が未だに少なからず存在しているのだぞ。
――『ティガ』の『ウルトラの星』も初代『ウルトラマン』放映開始前年である1965年の円谷プロを舞台にした番外編作品。この中で『ウルトラマン』は円谷プロ製作の架空の物語として扱われていた。特撮監督の円谷英二と本物のウルトラマンが遭遇して『ウルトラマン』という作品の着想を得るさまが描かれているとはいえ、いずれにしても『ウルトラマン』第1話『ウルトラ作戦第一号』に登場した宇宙怪獣ベムラーから最終回に登場した宇宙恐竜ゼットンに至るまでの戦いが「フィクション」として描かれていることに変わりはなく、サンタクロースやウルトラマンの実在を信じているような幼児の夢を壊しかねないものであり、筆者個人は肯定できない――


 それでもいつものようなカッコいい怪獣が大暴れし、カイト隊員が華麗に変身を遂げて大バトルを演じ、カタルシスを与えてくれるのであればまだよい。だが登場した怪獣は不気味な女がこねていた粘土がそのまんま大きくなっただけの代物であった。「魔(ま)デウス」なんてシャレた名前が付けられているが、怪獣のかたちすら成しておらず、本当に粘土の固まりがデカくなっただけで、名前負けもよいところだ。
 そして今回はなんとカイト隊員が変身しない。いや、マックスはちゃんと登場するのである。だが変身するのはカイトではなくて脚本家なのである! 『ウルトラマンティガ』最終回(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961207/p1)や映画『ウルトラマンティガウルトラマンダイナ』ラストみたく「人は誰でもウルトラマンになれる」ってか?


 そりゃねぇ、筆者だって脚本家を演じる名優・石橋蓮司(いしばし・れんじ)がマックススパークを掲げて変身する場面には大喜びしましたよ――05年11月公開の劇場作品『仮面ライダー THE FIRST』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060316/p1)にも政治家の役で出演したが、ホントによく出てくれた!――。でも子供たちからすれば「なんでこんなオッサンが変身するんや!」と失望の嵐でしょうよ。『仮面ライダークウガ』(00年・https://katoku99.hatenablog.com/archive/2000/11)の最終回(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20001111/p1)に肝心のクウガがまったく登場せず、全国の子供たちが大泣きしたのとまったく同じ現象が今回も起きてしまったんじゃないのかなぁ?


 結局マックスVS魔デウスの戦闘シーンもやはり簡略化されているし、定番のBGMをほとんど使用せずに監督のお気に入りの流用曲を流すなど、昔からの実相寺監督のパターン破り演出がそれはそれでパターン化されていて予想の範疇ではあるし悪い意味で目立ってしまっていた。脚本家の自室に常に流れていたパチンコ屋のチンジャラチンジャラという効果音は本エピソードの不条理感をいや増すための音響演出であるのはスレた年長のマニア的にはもちろんわかるのだが、そんなハイブロウな演出は就学前の幼児にはとてもではないが理解ができないどころか困惑して受け入れられるハズがありませんぜ。


――『ウルトラセブン』幻の第12話『遊星より愛をこめて』の解禁を願って活動を続けているサークル「12話会」が03年12月29日に発行した同人誌『1/49計画Ⅱ 決定版スペル星人大全集』に掲載された「視聴者モニター報告書」によれば、この第12話でも簡略化されたウルトラセブンVS吸血宇宙人スペル星人の戦闘シーンにはいくつか批判の声があがっていた。当時東京都世田谷区在住の25才主婦の意見は「ウルトラセブンとスペリオ星人(原文のまま)との争いをシャッター式に何度もカットした場面にしたが、あまり意味はないと思う。むしろ公園の静けさ、平和さをうたったあとだけにスピーディではげしい戦いがあった方が効果が大きかったと思う」というものであった。
 まぁ他にも当時東京都中野区在住の39才主婦の意見として「宇宙人が善良なる地球人をだまして血液を奪い採る行為が、なぜ愛をこめてなのか(?)と不思議に思った」という作品のテーマに対する懐疑的な意見や、「今回の撮影は変わっていたが、ぎらぎら光が入ったり画面が止まったり見にくかった。アンヌ隊員(菱見百合子)の大写しの顔が、今回は汚く写っていた」と撮影技法に不満を述べた当時東京都武蔵野市在住の40才主婦の意見もあった。また実相寺演出とは特に関連はないが、「大人ばかりの出演より今日のように少年を出演させることで、子供たちの関心を寄せるのに充分効果があると思います」とする当時奈良県大和高田市在住の32才主婦の主張など、我々特撮マニアたちが感じてきた感慨とはまるで異なる意見が掲載されているが、女性たちの意見はみなそれぞれそれなりに的を射ているように思える。
 そういや『マックス』にもあまり子役は出ないねぇ。もちろん子役さえ出せば傑作ができるとか、子供たちに即座に受けるというものでもないし、我々みたいな幼少時からマニア予備軍だったヒネくれた子供たち(爆)や子供番組卒業期の年長の子供たちに演技がクサい幼い子役中心のエピソードを見せることは気恥しさや反発も惹起しかねないものなのだが、ふつうの平均的で健全な幼児層の視線もゲットするには子役も適度に登場させた方がよいのではなかろうか?――



 果たしてこんな寄り道をしているヒマがあるのか? 残念ながら『マックス』は06年3月いっぱいで放映終了が決まっているため、たった3クールしか放映期間がないのである。90年代後半の平成ウルトラ三部作や前作『ウルトラマンネクサス』(04年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041108/p1)で円谷プロが「本当にやりたいこと」は散々やり尽くし、それは残念ながら平成ライダー作品(https://katoku99.hatenablog.com/archive/category/%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%80%E3%83%BC)のようには世間にアピールすることはできなかったのだから、今回ばかりはちと我慢して異色作やアンチテーゼ編はいっさい除外した明朗なエンターテイメントのエピソードだけに徹するべきではなかったか?


 というのは、この枠の前々作である実写ドラマ版『美少女戦士セーラームーン』(03年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041105/p1)や前作『ネクサス』に続き、『マックス』までもが視聴率的に失敗したら、中部日本放送製作・TBS系列の土曜朝7時半の子供番組の枠が消滅するという恐れがいよいよ具体化しそうな気配が出てきたのである。『マックス』直前の枠で早朝5時45分から7時30分にTBS他系列局の一部で放送されている『みのもんたのサタデーずばッと』(02年)が05年10月から静岡でもネットされるようになったのだが、これが06年4月からは全国ネットに拡大、それとともに時間枠も延長して8時までの放送になるのではないか? 筆者はそんな予測をしているのである。『マックス』の現状を見ているとどうしてもそんな悲観的な見方になってしまうのだ。



 原稿執筆の時期的に視聴することは不可能なのだが、第24話『狙われない街』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060318/p1)も実相寺監督作品である。幻覚宇宙人メトロン星人が登場した『ウルトラセブン』第8話『狙われた街』の正規な続編であるらしい――先述の『フィギュア王』中のインタビューにおいて、実相寺監督は「タイトルは前回が『狙われた街』だったから今回は『狙われない街』にしようと思って(笑)」と語っていたが、ホントにそのまんまになってしまった――。
 舞台となるのは北川町。たばこの代わりに携帯電話の電波が人を狂わせるアイテムとして登場するのはともかくとして、各誌に紹介されているメトロン星人とカイト隊員がちゃぶ台をはさんでにらみ合う写真が悪い意味で気になってならない。畳の部屋で正座しているメトロン星人の良さは子供のころではなく中高生以上になってからわかるような類いのものではないのか? ここまでオリジナルと同じなら、やはりマックス対メトロン星人の戦いもまた簡略化されてしまうのか? そんな年長マニア受けの作品は子供たちにとっては面白くはないのでは?


 筆者にとって最も印象的なメトロン星人といえば、幼少のころに買ってもらった朝日ソノラマ社のソノシート(簡易アナログ・レコード)『もーれつ怪獣大会』(69年)のブックレットのイラストにおける、キングジョーや宇宙竜ナースとともに宇宙空間でウルトラセブンに戦いを挑む姿である。カッコいいロボット怪獣を2匹も従えてセブンを襲うメトロン星人に強敵宇宙人としての魅力を感じてしまったのだ。『ウルトラマンA(エース)』(72年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070430/p1)第7話『怪獣対超獣対宇宙人』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060618/p1)~第8話『太陽の命 エースの命』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060624/p1)前後編に餓超獣ドラゴリーや巨大魚怪獣ムルチ二代目とともに登場し大暴れを披露してくれた幻覚宇宙人メトロン星人Jr.(ジュニア)はまさしくこれの再現であり、幼かった筆者はこの上もなく喜んだものであった。もしテレビの映像本編が初見ではなく『もーれつ怪獣大会』のイラストが畳に正座するメトロン星人でそれが初見であったなら、幼稚園に入る前だった筆者は「変な宇宙人……」とは認識しても、「カッコいい宇宙人!」とは断じて思わなかったハズである(笑)。
――『もーれつ怪獣大会』は69年にソノシートと17cmLPレコードの2種類が発売された。収録内容はA面が『ウルトラセブンの歌』と『怪獣大図鑑』(朝日ソノラマ・66年11月5日発行・ASIN:B07H52C1VX)添付ソノシートの再録ドラマ『死闘! ガメラ対バルゴン』、B面が『セブン』放映当時に朝日ソノラマから発売されたソノシートの再録である『恐怖の怪獣狩り!』であった。だが筆者がドラマ以上に興味を示したのがブックレットに描かれたウルトラセブン対怪獣軍団の迫力あるイラストの数々であった。筆者の初のウルトラ体験は映像作品ではなく、こうした作品の二次的使用物だったのである。なおこの当時はモデルの小川ローザが出演する丸善石油(まるぜんせきゆ。現・コスモ石油)のCM(車の風圧で小川ローザのミニスカートがめくれ上がるというセクシーCMの元祖!)のキャッチフレーズ「Oh! モーレツ」が世間を席巻し、「モーレツ」が流行語となっていた。赤塚不二夫の漫画原作のテレビアニメ『もーれつア太郎』(69年)が放映されたのもこのころである。なお、宇宙竜ナースとは『ウルトラセブン』第11話『魔の山へ飛べ』に登場した着ぐるみではなく操演型の怪獣。通常は東洋や西洋の伝説上の竜の姿をした黄金色のメカ怪獣だが、とぐろを巻いて空飛ぶ円盤に変形することもできる。今ならCGで変形するところだが「ガシャン、ガシャン」との金属音を鳴らして操演で変形するアナクロ(時代錯誤)さも捨てがたいところではある――


 過去の怪獣を再登場させるにしても、昭和の歴代ウルトラシリーズとは異なる世界を舞台としているのだから、以前とまったく同じ趣向で登場させる必要はないハズだ。第2話『怪獣を飼う女』に登場した放電竜エレキングしかり、レッドキングアントラーも、第21話『地底からの挑戦』に登場した古代怪獣ゴモラもオリジナルのイメージは一応尊重しつつ、適度に設定のアレンジが加えられたことによって新たな魅力を増していたのだから、単なるリメイクのようなかたちで引っ張り出すだけではあまりに芸がないではないか? その意味では再登場怪獣編は新人の若いスタッフの方がよほどうまく素材を料理しているように思われる。


 だからまぁ、上原正三先生にしても、実相寺昭雄先生にしても、やはり彼らの登板を待ち望む特撮マニアの声に引っ張り出されてきたのだから支持する人々が多いのはわかっているのだけれども、現実として若い者たちにハッキリとした力の差を見せつけられているように思うので、筆者としては「もうお疲れになったでしょう。そろそろゆっくりした方が……」といたわりの言葉をかけたくなってしまうのである。


――古代怪獣ゴモラは初代『ウルトラマン』第26~27話『怪獣殿下』前後編に登場。このときはジョンスン島から大阪万博(70年)に生きた化石として展示するために日本に空輸されてきたが、今回はその設定をアレンジし、フリドリア共和国から過激な環境保護団体によって運ばれてきたという設定。複数の個体が等身大で登場し(!)、その中の1匹が実験で巨大化・凶暴化されるというワクワクする設定で描かれていた……と筆者個人は思ったが、この話もゴモラの描写については賛否両論のようである・笑――



 そんなわけで過去の人気怪獣を若いスタッフたちが結構うまく料理してくれているのだから、当初の最大のウリでもあったのだし、もっと人気怪獣再登場編は多くてもよいように思える。マニア人気の高い太田愛脚本にしては珍しくギャグ編となった第20話『怪獣漂流』は眠ったままで空中を浮遊する亜空間怪獣クラウドスが地上に落下するのを阻止しようとする防衛組織・DASHの隊員たちの珍騒動を描いていたが、このネタであれば『ウルトラマン』第34話『空の贈り物』に登場したメガトン怪獣スカイドンを再登場させても良いように思える――スカイドンは宇宙から東京に落下してきたやたらと体重が重くて寝てばかりいる怪獣。なんとかして宇宙へ追い出そうとする科学特捜隊の珍作戦の数々がコミカルに描かれ、実相寺作品の中ではわりと気楽に観ることができる一編である――。
 第25話『遥かなる友人』に登場する巨大異星人ゴドレイ星人も、ハサミの形状などの外見がどう考えても『ウルトラセブン』第4話『マックス号応答せよ』に登場した反重力宇宙人ゴドラ星人のアレンジであり、ゴドラ星人の再登場じゃナゼだめなのか? という素朴な疑問や小さな不満をつい抱いてしまうのだが。


 まぁそれを云いだしたら、第19話『扉より来たる者』にゲスト出演した森次晃嗣(もりつぐ・こうじ)は、やはりムリを承知でモロボシ・ダンとして登場させてウルトラセブンに変身させ、M78星雲のレッド族の先輩・後輩としてマックスと共闘するのをぜひ観たかったのであるが……「妄想ウルトラセブン」に終わってしまったのであった(笑)。これはマニアだけでなくむしろ子供と一緒に観ている一般のお父さんはみんなそう願ったんじゃないのかね、やっぱり。
――「妄想ウルトラセブン」は『ウルトラマン80(エイティ)』第44話『激ファイト! 80VS(たい)ウルトラセブン』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110226/p1)に登場。暴走族にはねられた少年の怨念が大事にしていたウルトラセブンの人形(当時ポピーから発売されていた『キングザウルスシリーズ』のもの)に乗り移り、巨大化して暴走族に復讐を果たそうとする作品に登場した――
 

 そんなお父さんたちには、第23話『甦れ青春』に『ウルトラマン』のイデ隊員役だった二瓶正也(にへい・まさなり)がゲスト出演したことは大きな喜びであったことだろうと思う。自身もそうであったが、冷静に考えるとリアルな人物像では決してないのだが、ああしたギャグメーカーは幼な心にはやはり大いに親しみを感じ、印象に残るものなのである。第2期ウルトラシリーズの『ウルトラマンタロウ』の防衛組織・ZAT(ザット)の隊員たちがお笑いを演じることが多かったのもそうした計算によるものであり、第1期ウルトラシリーズ至上主義者たちがZATを評していわくの「不必要なドタバタ」では決してなかったのである。


 その意味では第18話『アカルイセカイ』は希望の星であるように思える。まるで東宝の喜劇映画『ニッポン無責任時代』(62年)に登場した名コメディアン・植木等(うえき・ひとし)演じる無責任男のごとく、やたらとテンション高い喜劇的な高笑いを繰り返してDASHをおちょくりつつ地球に降伏を迫るシャマー星人は、巨大化してもビル街でこともあろうに放屁(ほうひ)をかましたり、弱点である暗い場所ではミクロ化してしまって悲鳴をあげながらかけずり回ったりとスーパー戦隊シリーズ的なギャグ怪人キャラの趣にも満ちあふれていた。


 いつからかは定かではないが、静岡ではスーパー戦隊シリーズが『マックス』の裏番組である土曜朝7時30分から放映され、同僚のバツイチ子持ちの女性の話ではこの地域の子供を持つ家庭では絶大な人気を誇る枠として定着しているようである。他の地域ではいざ知らず、『マックス』の今の路線ではその牙城を崩すことはかなり難しいのではないかと思われる――彼女は会社のパソコンで『魔法戦隊マジレンジャー』(05年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060313/p1)の挿入歌である『天空界のやすらぎ』とか『呪文降臨〜マジカル・フォース』を鳴らしながら仕事をしていたりする。筆者とほぼ同世代であるが、少女時代は変身ヒーロー作品はまったく観たことがなかったらしく、5才の息子と観ているうちにすっかりハマってしまったらしい。ちなみに彼女はすごく「できる」人間であり、筆者のようなダメサラリーマン的なオタクではないので念のため――。



 だから『マックス』も、ひいては『ウルトラ』も、イイ意味でもっと子供に媚びてもよいのではないか? 第22話でネタにつまった『ウルトラマンマックス』の脚本家に対し、プロデューサーらしき人物はこのようにアドバイスしていた。


 「単純でいいんじゃないか? 理屈なんかあとでついてくるんだから」


 なんや、わかっとるんやないか!(笑)


2005.12.5


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2006年号』(05年12月30日発行)『ウルトラマンマックス』中盤特集・合評③より抜粋)


『假面特攻隊2006年号』「ウルトラマンマックス」中盤特集・関連記事の縮小コピー収録一覧
朝日新聞 2005年10月13日(木) 文化欄・ドラマ ゆるい特撮漂うぬくもり「ウルトラマンマックス」 評者・大泉実成 ノンフィクション作家 〜ゆるいミニチュア、ミニカー丸出し、全然怖くない怪獣で息子(超臆病)も見られる、ロボットのオペレーター姉さんに萌え系くのいち、作りがユルいため非現実な萌えキャラもなじむ。脱力保障〜大枠記事
朝日新聞 2005年6月30日(木) 変身!懐かしの姿に ウルトラマン仮面ライダー新作は原点回帰で(小原篤
朝日新聞 2005年9月24日(土) ラテ欄「TVフェイス」「自慢は「ウルトラ通り」出身」 俳優 宍戸開 〜DASH隊長インタビュー
朝日新聞 2005年10月10日(土) 社会欄「青鉛筆」 〜川崎市長選イメージキャラにウルトラマンキッズ
朝日新聞 2005年11月12日(土) ラテ欄読者投稿「大人も楽しめる」 〜森次浩司ゲスト回・親世代しか判らない随所の演出が懐かしい・43歳会社員女性
朝日新聞 2005年10月6日、11月17日、24日 全て(木) 三池崇史のシネコラム「特撮に悪戦苦闘」「46億年の恋」「「秘密の穴」を抜けて」


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