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特撮意見③ 日本特撮の再興は成ったか?

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(文・T.SATO)
 『仮面ライダー555ファイズ)』(03年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080120/p1)。ライダーに変身するイイ男が最初はひとりだけで、F1・F2の女性層が離れないかが心配。


 むろんメイン視聴者は子供だろうが、役者人気で特撮が世間に流通する在り方もあってイイ。
 特撮冬の時代(70年代後半〜80年代を一般に指す)やアニメに押された時代を通過して、ウス汚れてしまった筆者は今の状況も認めたい。ムサい成人男性オタク(視聴率調査でもカテゴリー化されないほど極少の絶滅寸前種
族)が騒ぐだけではムーブメントにはならないし。


 平成『ライダー』やら、SFセンス&CGの遍在化による、怪獣・特撮を前面に出さないSF邦画にホラー邦画の途切れない発表。
 四半世紀前から夢想され続けてきた日本特撮の再生や市民権は、マニアの予想と違うかたちで既に実現したともいえる。


 でもそれは、マニアが真に面白いと思う作品を作れば、日本特撮の再興は成る、労働者独裁のロシア革命ならぬマニア独裁の特撮革命(笑)を素朴に信じられた時代の理論に従って製作された、平成『ウルトラ』&平成『ガメラ』の文脈の延長線ではない。
 間接的にはともかく直接的には、新世紀に入ってからのイケメン特撮ブームからの文脈が濃厚である。Jホラーに至っては、特撮ものとは別個の文脈から自力で隆盛してきたものですらある。


 大方の特撮マニアは認めたくはないのだろうが、マニア&サブカル誌&評論家ウケに留まり、10%も10億も超えられない平成『ウルトラ』&平成『ガメラ』の視聴率&配給収入からもそれは自明だし、受容の規模も知れようというものだ。
 絵も展開も良質だが、知的SF至上主義ではなく、旬の役者とバイオレンスも加味して、高揚とメジャー感を獲得したからこそ、白組によるSF邦画『リターナー』(02年)もデートムービーとして成立したワケで……。


 怪獣・変身もので天下を取りたいのが、我らの性(さが)かもしれないが(笑)。


 以上は、一般層における受容を考慮した議論。他方で、子供層での受容を考察する絶好のテキストは、やはり『戦隊』。
 マニア層では、ヌルさで不評の『百獣戦隊ガオレンジャー』(01年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20011102/p1)。例年よりも視聴率は高く、10%越えも達成し、玩具も大ヒットしている。
 この事実を見るに、やはり過半の子供は、人間ドラマよりも映像的なハデさやキャラ立ち、各種アイテムに心奪われるものだと判る(今年の『爆竜戦隊アバレンジャー』(03年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20031112/p1)もヒットするゾ〜後日付記:『ガオレン』的な大ヒットはしませんでした〜汗)。
 ここにも、よくあるマニアと子供で見たいものの不一致の好例があるともいえる。真逆の例としても、当時のマニアの大絶賛を勝ち得た、リアル&ハード志向の東映メタルヒーロー超人機メタルダー』(87年)の視聴率的失敗などがあったよネ。


 子供時代に、ヒーローもののラフな展開に傷付いたという意見も、本誌投稿欄などで拝見すると、衷心から共感・同情もする。
 しかし、繊細ナイーブ君や既にマニア予備軍だった我々の子供時代の感性・感慨を、フツーに育ったラフでガサツな子供たち(笑)がヒーローものにいだく感想とイコールのものだとして一般化するのも危険だろう。


 ジャンルのエポックメイキング作品『仮面ライダー』初作(71年)や『マジンガーZ』(72年)なども、今見るとドラマ的にはラフで見るに耐えない回が多いが――『仮面ライダーX』(74年)以降や『グレートマジンガー』(74年)以降、『ウルトラ』も第2期シリーズの方が、大方のマニア間での世評とは異なり人間ドラマ性は実は高い――、それでもこれらの作品に幼い我々が魅かれたのは、やはり決してテーマ性やドラマ性などではなく、ヒーロー性の高揚ゆえだったのだろう。


 『仮面ライダー』&『戦隊』の2大シリーズを立上げた東映の平山亨(ひらやま・とおる)プロデューサーも、その師匠、先頃物故されたマキノ一族の松田定次(まつだ・さだつぐ)監督のポリシー、丸の内東映向けならぬ浅草東映労働者大衆向け、どう変装しようとも御大・片岡千恵蔵にしか見えない(笑)*1、名探偵『多羅尾伴内(たらおばんない)』(46〜60年)シリーズ*2の七変化的に、偽ライダーの出で立ちを、マフラー・手袋・ブーツなどの色違いで、視聴者にもバレバレにしていた、と某所で語っている。
 たしかに、偽ライダーの出で立ちや、それに気づかない劇中人物たち……というラフさがあっても、それを視聴して若干違和感をいだこうが、それで幻滅して子供たちが番組視聴を一斉に止めてしまったという事実はない(子供番組卒業期のコならばイザ知らず)。


 また、たとえチープな作りであっても、人間ドラマが一切ないのに、ヒーローと怪獣がバトルさえしていれば、『ウルトラファイト』(70年)でも魅かれてしまうような心性が、子供にはたしかにあるともいえる。



 6人目の戦隊ヒーロー登場!/2号&3号ロボ登場!……的な素朴なワクワク感を軽視(時に危険視)するかぎり、平成『ウルトラ』シリーズは東映ヒーロー作品の後塵を拝し続けるであろう。


 ある意味で言説化しやすくて語りやすいテーマ主義。
 しかしてテーマ以前の、言語化しにくい、ケバケバ原色キッチュ(通俗)な奇想のビジュアルや展開。
 我々が最初にジャンル作品に魅かれた理由も、実は後者だったハズだ。


 シリアスでリアル寄りと評される『ウルトラセブン』(67年)においても、ライトブルーの隊員服などでジャンル内においては相対的にはリアルともいえるウルトラ警備隊が、『シルバー仮面』(71年)のジミな津山研究所のように、さらにリアルだともいえる黒の革ジャン姿であったなら……、おそらくは子供たちのあこがれの対象にはなれず、今日につづく人気もまたないであろう(笑)。
 つまりは、そういうことなのだ。子供番組を見続ける言い訳・正当化に、テーマやドラマにSF性を主張したのは後知恵だったのだ。


 また、マニアは『ウルトラマンティガ』(96年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961201/p1)、『ウルトラマンガイア』(98年)に喜んでいるが、実際の児童間での主流は『ポケットモンスター』(97年)、『遊☆戯☆王』(98年)という大局の現実を見ていない議論は、絶対にゆがんでいる。


 怪獣図鑑学年誌での、怪獣パノラマやウルトラ兄弟の力比べに、宇宙警備隊の組織図に対して、かつての子供たちがいだいた興奮。
 今の幼児ならぬ児童の、『ポケモン』や『遊戯王』などの多数のキャラクター登場ものへの接し方&興奮の仕方は、これらと似たようなものではなかったか? 『水滸伝』的108人の強者集結のカタルシスは、メリケンのアメコミヒーローものなどでも隆盛なのだし。


 平成『ライダー』も、児童はともかく幼児にそのドラマが理解できているとはとても思えないのだが、次は誰が変身するのか? 誰と誰が戦うのか? というところで、関心を持続するのだろう。
 そういえば筆者も幼少時、『レインボーマン』(72年)を、そのテーマや社会派ドラマは一切理解せず(偽札によるインフレ作戦なんて小学生ならまだしも、幼児に理解できるか!?)、次にどのヒーローに変身して特殊技能を見せてくれるのか? という興味で観ていたものだ(笑)。


 テーマ的議論を延々する前に、我々はそーいう原初的喜びに立ち返るべきだ。
 幼児期で特撮ジャンルを卒業させないためには、児童が喜ぶマンダラ的世界観設定や多数の変身キャラ(ヒーローやモンスター)を配置する作品を用意する――児童期で卒業させずに思春期にも接続させたいならば、テーマやリアルのフリも有効だが(笑)――。


 児童期の特撮ファンが歯抜け状態なのは、マニアの底辺拡大・後進育成には大ピンチだ。
 テーマ的挑戦を必ずしも否定はしない。マニア受けを完全否定するワケでもない。主婦ウケ・女性ウケのイケメン特撮ブームも否定はしない。
 が、それらを、子供が喜ぶ要素や華あるガジェット(小道具)を自覚的に多数まぶして、玩具業界とも共存共栄を果たした上で、老獪にやるのがオトナの態度というもの。
 基本は、①子供ウケ、②そのほぼ同数を見込める母層たる主婦ウケおよび派生して女性ウケ、③そして最後に特殊少数のマニア受け(笑)。その優先順位を誤るとおかしなことになる。
 マニアの議論ももっと成熟すべきだろう。

(了)
(初出・特撮雑誌『宇宙船』Vol.107・2003年7月号・読者投稿)


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  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060415/p1



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*1:平山Pの疑問に対して、松田定次監督は客層を意識して意図的にそうしていたという。また、『ロック画報22 特集 映画×ロック』(05年12月発行/ブルース・インターアクションズISBN:4860201523)P28の記事によると、松田定次監督にかぎらず70年代までの東映の上層部は、ハッキリと公言してブルーカラー向けをねらって映画を作っていたこともわかる。

*2:終戦直後の10年弱、GHQによって時代劇映画の製作が禁止された折、名時代劇俳優・片岡千恵蔵が主演した現代劇映画シリーズ。