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ウルトラマンエース8話「太陽の命 エースの命」

ファミリー劇場ウルトラマンA』放映開始記念・連動連載!)


「ウルトラマンA 再評価・全話評!」 〜全記事見出し一覧


(脚本・上原正三 監督・筧正典 特殊技術・佐川和夫)
(文・久保達也)
 メトロン星人Jr.、超獣ドラゴリー、怪獣ムルチの三方からの攻撃を受け、絶体絶命のエース。ムルチ出現時に吉村隊員は即座に「ムルチだっ!」と叫んでいるが(前話『怪獣対超獣対宇宙人』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060618/p1)でも吉村が即座に「メトロン星人だっ!」と叫んでいる・笑)、これはムルチが既知の存在として描かれているわけであり、前作『帰ってきたウルトラマン』から連続している世界であることを証明してくれる嬉しい配慮である。
 そのムルチははずみでドラゴリーに衝突、怒ったドラゴリーによってバラバラに引き裂かれてしまう。数々の怪獣対決を描いてきたウルトラシリーズであるがここまで残虐なシーンはなく、リアルタイムで視聴した際の記憶が強烈に印象に残っているが、超獣が文字通り怪獣を「超えた」存在であることをストレートに表現したものである。


 残ったメトロンとドラゴリーをエースは前話に続いて再度エースバリヤーで封じるが、大量のエネルギーを使用したために夕子が重傷を負ってしまう。たった一日しか効力がないエースバリヤーのために夕子を負傷させたことを北斗はわびるが、「いいの。私は使命を果たしただけ」と北斗を気遣う夕子が頼もしい。こういうときは概して男の方がだらしなく、女性の方が強いものだ。


 一方山中隊員はエースバリヤーによるカプセルの中で眠り続けるメトロン星人を竜隊長の命令を無視して攻撃、地球の危機を前にして仇討ちという個人的感情による行動に出てしまう。
 北斗と対立することが多い山中であるが、激情型の猪突猛進である点は北斗と共通するものである。似たものどうしが意外に合わないことが多いのは、相手の欠点が鏡のように自分のものであるとして受け止めざるを得ないからであろうか。
 北斗もまたメトロンを攻撃してしまい、山中に強引に連れていかれた今野を除いて隊長の命令違反を犯さなかったのは吉村だけである。TACの中で最も目立たない印象の吉村であるが、こうして見ると最も隊員としての資質があったりして(笑)。


 妖星ゴラン爆破のために宇宙間弾道弾マリア2号の発射を急ぐにはメトロンに眠っていてもらっていた方が都合がよかったと主張する竜隊長は命令違反を犯した隊員たちを叱責、「謹慎処分でも退職処分でも甘んじて受けます」と主張した山中を「バカモンっ!」と一喝する。
 普段は温和な印象である竜隊長だが、今回ばかりは自分たちの任務の重大性をわかっていない隊員たちの愚かさに我慢がならなかったようであり、結構クドクドと続く説教(笑)にも説得力が感じられる。NGとなった挿入歌『TACのワンダバ一週間』において、♪金曜日、隊長が怒鳴る、ワンダバダバダバダ(笑)と歌われている竜隊長ではあるが、個人的にはこんな上司であればついていきたいものである。


 野郎どもとは違って夕子は病床につきながらも北斗に対して「連れていって。任務を果たしたいの」とせがむ。これには思わず涙であり、山中たちに爪の垢を煎じて飲ませたいくらいだが(笑)、奮起した隊員たちがマリア2号を守るためにメトロンとドラゴリーに決死の攻撃を加える場面はなかなかの感動もの。


 メトロンをバーチカルギロチン(ナレーションではウルトラギロチン)で葬ったエースは一気にエネルギーを失い、ドラゴリーに散々痛めつけられ、カラータイマーの赤色点滅すら途絶えて地に伏すが、マリア2号によってゴランが爆破されたことによる日蝕状態が解けた瞬間の太陽エネルギーがエース頭頂のエネルギーホールに集中してタイマーも正常の青色に戻って復活し、一気に形勢が逆転。
 これをご都合主義と批判する人もいるんだろうが、なんたってサブタイトルは『太陽の命 エースの命』。エースがドラゴリーのドテっ腹に風穴を開け、エースブレード(剣!)で首を切断、とどめのメタリウム光線でドラゴリーを爆発四散させる場面を見たらそんな細かいことは何もかも全部吹っ飛ぶわ(笑)。
 そう、太陽の光は全ての命の源なのだ。全てが解決し、澄み切った青空の下でTAC隊員たちが深呼吸するラストはなんとも云えない開放感溢れるすがすがしさである。派手なイベント編ながらも各隊員の個性を活かした人間ドラマも充実し、佳作であると思う。



<こだわりコーナー>
*落涙しながら山中がメトロンを攻撃する場面にはマヤの生前の姿を映したフラッシュバックが入るが、そこに流れる音楽はなんと『帰ってきたウルトラマン』のオープニングタイトル。星のきらめきを音で表現したかのようなこの美しい曲をここで流すセンスには脱帽である。
 この演出を見ているといくら竜隊長が「愚かだ」と怒鳴ろうが、男としては確かに山中の気持ちがわからないこともないのだが……


*人気が高い初期超獣群の中では今ひとつマイナーな蛾超獣ドラゴリー。昆虫の複眼、緑色のボディ、歯や腹や横の小さい羽の模様は赤というサイケな色彩、ヒョロ長い(実は背も高い)短足シルエットなど、これはこれでウルトラ怪獣中でも類を見ないプロポーションで味があると思う。
*今回のウルトラタッチは空中タッチではなく、瀕死の状態なのにTACの病院から戦闘現場の荒野にまで望んで来た南夕子(ムチャな展開ではあるけれど)が、もう立つことすらかなわず地べたで匍匐(ほふく)前進しているところへ、北斗星児がスライディングするかたちでタッチ。前話同様、「ウルトラタッチ」の掛け声はなし。
*エースバリヤー。前話のナレーションによれば、ウルトラマンエースが高速で自転して、空気との摩擦を起こし、大気に亀裂を作り、その中に敵を送り込む技。浮遊する透明の球形カプセル状の中で敵は冬眠状態となる。効力は1日。
日蝕状態が解けて太陽の光が集中したことによるエースのエネルギーの復活。『ウルトラセブン』第25話『零下140度の対決』、第35話『月世界の戦慄』、第40話『セブン暗殺計画(後編)』、『帰ってきたウルトラマン』第18話『ウルトラセブン参上!』など、太陽や隕石落下の爆発の光を吸収し、ウルトラヒーローがエネルギーを補充、もしくは充填せんとしたシチュエーションは実は前例があることでもあるのだ。あながち唐突とも云えない。
 のちに『ザ★ウルトラマン』(79年)第14話『悪魔の星が来た!!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090803/p1)、第39話『ねらわれた巨大戦闘艦ウルトリア』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100124/p1)でも踏襲されている。
*燃える大惑星、赤い妖星ゴランの地球激突は、もちろん東宝特撮映画『妖星ゴラス』(62年)へのオマージュ……などということは幼少時には知る由(よし)もなかった(笑)。


*視聴率19.9%


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2006年号』(05年12月30日発行)『ウルトラマンA』再評価・全話評大特集より抜粋)


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