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ウルトラマンメビウス・序盤10話!・総括1 〜怪獣


『ウルトラマンメビウス』評 〜全記事見出し一覧

「はじめは誰もヒーローじゃない!」

(『ウルトラマンメビウス』序盤評・短期集中連載!)
(文・久保達也)
 と銘打ってはみたものの、正直どう書いていいものやら大いに悩んでいる。とにかく『ウルトラマンメビウス』(06年)にはありとあらゆる雑多な魅力がふんだんに散りばめられているため、本当に収拾がつかないほどであり、果たしてこれを一体どうやって整理すればよいものやら……


 手はじめに書きやすいところからいってみるか。まず、筆者が特撮ヒーロー作品を視聴するうえで、最も重視してしまう登場怪獣についてであるが、第1話から第10話に登場した奴らをザッと並べてみるとこんな陣容である。


*第1話『運命の出逢い』
  宇宙斬鉄怪獣ディノゾール
*第2話『俺達の翼』
  地底怪獣グドン
*第3話『ひとつきりの命』
  火山怪鳥バードン
*第4話『傷だらけの絆』
  宇宙凶険怪獣ケルビム、マケット怪獣ミクラス
  (宇宙斬鉄怪獣ディノゾール(ホログラム映像))
*第5話『逆転のシュート』
  岩石怪獣サドラ、宇宙斬鉄怪獣ディノゾール
*第6話『深海の二人』
  古代怪獣ツインテール、高次元捕食体ボガール
*第7話『ファントンの落し物』
  健啖(けんたん)宇宙人ファントン星人、高次元捕食体ボガール
  (肥大糧食シーピン929)
*第8話『戦慄の捕食者』
  マケット怪獣ミクラス&リムエレキング
  高次元捕食体ボガール (岩石怪獣サドラ)
*第9話『復讐の鎧』
  地底怪獣グドン、古代怪獣ツインテール
  高次元捕食体ボガール&ボガールモンス、
  マケット怪獣ミクラス
*第10話『GUYS(ガイズ)の誇り』
  高次元捕食体ボガールモンス


 こうして見ると新怪獣であるディノゾールやケルビム、ファントン星人やボガールは全て宇宙怪獣であり、過去のウルトラシリーズからの再登場怪獣は全て地球怪獣(もっともミクラスは厳密には元々バッファロー星の出身だが)と明確に区別されていることが判明する。今後『メビウス』がどのような展開をたどるのかは今のところ不明だが、この公式が今後も当てはまるのであるとすれば、単純計算で約半数の作品に過去の人気怪獣が再登場することが期待できるわけである。


 過去の人気怪獣の再登場をかなりウリにしていた『ウルトラマンマックス』(05年)でもこれくらいの頻度で人気怪獣が再登場するのかと筆者は期待していたが、実際には全39話中12話分にとどまり、3分の1にも満たず、その意味では筆者の期待を大きく裏切った作品となってしまっていた。
 それに比べれば『メビウス』にはこの点においてだけでも合格点が与えられる。特にグドンツインテールは第9話で共に再々登場を果たし、ミクラスに至ってはこの時点で計3回も登場と、『ウルトラセブン』(67年)における登場回数(全49話中たった2回!)をも既に上回ってしまったのである!


 まだ10話の時点で同じ怪獣が繰り返し登場することから考えると、おそらくは『メビウス』も『マックス』同様か、それ以上に予算は低く抑えられているのではなかろうか? だがそれをうまく逆手にとり、『メビウス』は我々がかつて夢中になったグドンツインテールミクラスを複数回登場させることで、現在の子供たちの間にその認知度を高め、魅力を広めることに成功しているのである。これはかつての怪獣少年であったオジサンにとっては大いに喜ばしいことである!


 しかも単に往年の名怪獣を再登場させているだけではなく、独自の解釈で新たな魅力をも加えられているのだ。
 たとえばサドラは獲物を捕らえる際に腕が瞬間的に伸びる能力が備えられたが、これがサドラの全身がスプリング状の形態をしていることから、バネのように伸縮が可能であると発想されたのであれば、極めて目のつけどころがよいと云うほかはないのだ!
 またツインテールは『帰ってきたウルトラマン』(71年)登場時は地底から出現したが、今回海底に現れたのはかつて怪獣図鑑などで「肉はエビのような味がする」(笑)などと紹介されていたのを踏襲するものであり、海底をまさにエビのように優雅に泳ぐさまも含め、かつての怪獣少年にとってはこの上ない喜びであった!


 同じ怪獣の再利用が最大の成果を挙げたのが第9話である。なんと5体もの怪獣が登場! グドンツインテールが35年前の死闘を再び展開! そこに割って入ってくるボガールがグドンを、そしてツインテールをペロリとたいらげてしまう! そこに第8話で宇宙怪獣エレキングのみならず、透明怪獣ネロンガや吸電怪獣エレドータスら電気怪獣(&透明怪獣)のデータを与えられ、エレキミクラスへとパワーアップしたミクラスが電撃と透明化でボガールに立ち向かい、これをブッとばす! だがボガールはさらに醜悪なボガールモンスに変異を遂げ、その形相にはさすがのミクラスもたじたじ……
 これほどテンポよく連続で怪獣バトル・ロワイアルが展開されたのはウルトラシリーズはじまって以来のことである! 基本的には一話につき新怪獣が一体の登場、たまにサービスで二体、あっても三体くらいのスタイルであったのが、『メビウス』では第4話以降、常に複数の怪獣を登場させているのである!
 第6話以降はボガールがレギュラーとなっているから当然と云えば当然なのであるが、第4話ではミクラスのテスト用としてディノゾールのホログラムも登場、第5話ではサドラは4体も登場するなど(第8話で食された怪獣も、ボガールの口腔からハミ出たその手のハサミの形状からサドラで間違いないだろう)、まさにサービス精神満点であり、現代の子供たちに怪獣バトルの魅力を伝えるには十分に足るものとなっているのだ!


 そしてそんなバトルワールドにさらに乱入してきたのが青いウルトラマン=ハンターナイト・ツルギである! こいつは初登場からして鮮やかだった! 第5話の冒頭で、ボガールが変身した不気味な女性によって地球に再び呼び寄せられようとするディノゾールを、宇宙空間で必殺光線・ナイトシュートによって撃破! 終盤では再び現れたサドラによって苦戦するメビウスの助太刀に参上! 続く第6話では海底で遂にその正体を現したボガールを倒すために突如姿を見せるなど、まさに「疾風(はやて)のように現れて、疾風のように去っていく」(笑)謎の存在としての演出は冴えに冴え渡っていたのである!
 第1話で死んだかと思えた旧GUYSのセリザワ前隊長の身体を「いれもの」として拝借したツルギの変身パターンは、その鎧(よろい)に包まれた全身を象徴するかのような、ダイヤモンドのような宝石が粉々に砕かれたようなイメージの中で、次第に巨大化を遂げるといった、メビウスに優るとも劣らないチョ〜カッコよさであり、声を担当しているのがセリザワ役の石川真ではなく、難波圭一であるのもさらにカッコよさを助長している! 子供たちの絶大な人気を集めることはほぼ間違いないであろう。


 ライバル的な青いウルトラマンといえば、『ウルトラマンガイア』(98年)に登場したウルトラマンアグルが既に存在するが、こうしたヒロイズムの魅力にはいささか欠け、人類批判を繰り返していた変身前の藤宮博也の姿ばかりが思い浮かぶ(笑)。アグルも初期の時点でツルギのような演出で描かれていれば、随分と印象も違っていたかと思うんだけどねえ……
 もっとも第9話でツルギがセリザワの姿で明かしたボガールを狙う理由によれば、全宇宙の中でも極めて希少な、まったく争いをしない知性体が住む「奇跡の星アーブ」をボガールが全滅させ、M78星雲の科学者階級であるブルー族(かつて小学館の学習雑誌においては、ブルー族は「力仕事が得意な仲間」であると紹介されていたものだが・笑)だったことからその星をずっと観測し続けていた彼は、守ってやれなかったことを大いに悔やむ(死の星で「うお〜っ!」と苦悩する姿を描いた回想場面が絶品!)。その際に滅ぼされた知性体たちの怨念が彼に乗り移って鎧となり、ツルギとしての姿が誕生したのだという。
 様々な怪獣を捕食して体内に莫大なエネルギーが発生したことから、ボガールは下手に攻撃を加えれば関東一円を消滅させてしまう危険な存在と化してしまっていた。ミライはボガールへの攻撃を止めるよう、セリザワを説得するが、「あの星の知性体に比べれば、人間なんぞとるに足らない下等な生物だ」と、遂にここでメビウスとツルギの対立の構図が形成される……


 お〜っと、またも出たか人類批判! まあ、この回書いているのは長谷川圭一だし(爆)、何度も飽きもせずにこれを繰り返すのならともかく、第11話の予告編を観る限りではウルトラの母の「愛の奇跡」(?)により、本来の姿であるウルトラマンヒカリウルトラ兄弟の長男・ゾフィーを模した、胸のスターマークがたまらん!)へと戻ってメビウスと共闘するらしいから、これくらいは許容範囲ですよ。だからまあ、『ガイア』もせめて1クールの時点でこうしていればねえ……(以下略)


 まあとにかく先述したように毎回複数の怪獣が登場し、それにメビウスとツルギの二大ヒーローが入り乱れるさまは、まさに「仮面劇」の様相を呈しており、『キカイダー01(ゼロワン)』(73年)の初期作品を思わせる賑やかさである。新ヒーロー・ゼロワンに、前作『人造人間キカイダー』(72年)の主役・キカイダー、そして前作終盤から引き続いて登場するハカイダーにシルバー・ブルー・レッドを加えたハカイダー四人衆、さらにそれぞれが変身したブラックドラゴン・銀エビ・青ワニ・朱ムカデといった幽霊ロボットの登場、そしてハカイダー四人衆が合体してガッタイダーが誕生するなど、こうした「オモチャ箱ひっくり返し」路線を円谷プロがようやく選択したことについては素直に喜びたい(感涙にむせぶ……)。

2006.6.16.


(了)
(序盤総括2〜登場人物(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060702/p1)につづく)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2006年初夏号』(06年6月18日発行)『ウルトラマンメビウス』序盤10話評・合評④より分載抜粋)



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