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ウルトラマンエース12話「サボテン地獄の赤い花」


「ウルトラマンA 再評価・全話評!」 〜全記事見出し一覧


ファミリー劇場ウルトラマンA』放映開始記念・連動連載!)
(脚本・上原正三 監督・平野一夫 特殊技術・佐川和夫)
(文・久保達也)
 イベント編や異色作が続いたあとだけに比較的凡作と見られがちなこの回だが、視聴率を稼ぐための重要なカギを幾つも備えており、筆者的には随所に工夫を感じ、なかなか見応えの多い作品であるとの印象を強く持っている。
 第9話あたりから冒頭でいきなり超獣が出現して大暴れをする描写から始まることが多いが、今回は遂にエースとの格闘までもが冒頭で演じられることになる。
 ドラマ重視の人からすれば、ヒーローバトルはあくまで作品のクライマックスとして描かれるべきだとの考えが強いであろう。


 しかしながら当時(72年)は『仮面ライダー』をはじめ、『超人バロム・1』・『変身忍者 嵐』(関東では『A』の裏番組であった)・『快傑ライオン丸』・『ミラーマン』などが並行して放映されていたヒーロー番組乱立の時代、まさに「変身ブーム」の最中であり、これに加えて夏以降は『人造人間キカイダー』『トリプルファイター』などが控えていた。そんな過当競争の中で生き残りを計ろうとすれば、より派手でより過激な演出で視聴者の注目を集めようとするのは至極当然の成り行きである。
 マニアにはシリアス・ハードな作風で人気の強い『シルバー仮面』でさえ第11話でジャイアント編(当初等身大のヒーローが活躍していたが、人気の低迷で巨大ヒーロー路線に転換した)に突入して以降、後期の作品では冒頭シーンやオープニングのタイトルバックが宇宙人の大暴れやシルバー仮面のバトルであったりすることがほとんどであり、『仮面ライダー』でさえAパート・Bパートで各1回ずつの変身であることがほとんどであったにもかかわらず劇中でシルバー仮面が都合3回登場する回もあったほどなのだ。


 ウルトラマンエースの必殺技といえば誰もがメタリウム光線をあげるだろうが、実は1クールを振り返ると極めて初期の回にしか使用されておらず、ブロッケンに使用したウルトラギロチン、メトロン星人Jr.に使用したバーチカルギロチン、ザイゴンに使用したウルトラナイフ、今回サボテンダーに使用したサーキュラーギロチンなど切断技が多数を占める。子供の目を惹きつけるにはやはりインパクトの強い、見た目派手な演出が必要なわけであり、冒頭いきなりのヒーローバトルは子供を30分間画面釘づけにするには最も効果的なのである。
 初代『ウルトラマン』放映当時は純然たる特撮ヒーロー作品としては『マグマ大使』『悪魔くん』(共に66年)くらいしか存在していなかったわけであり、そんな時代の状況の違いを無視して作品を同列に語るべきではないと思う。いや、『ジャイアントロボ』『怪獣王子』(共に67年)など同種の作品が既に終了して競合する作品がなくなったにもかかわらず、『ウルトラセブン』は中盤以降、エメリウム光線やワイドショット以外の様々なバリエーションの光線技を披露していたではないか。
 『シルバー仮面』にしてもそうだが、たとえ作品がリアル・ハード路線であろうともそうした子供を惹きつける要素を盛り込むことは可能であるハズだ。平成ウルトラ作品は作風自体はともかく、そうした点に今ひとつ工夫が足りなかったのではないだろうか……


 さて今回は「特別出演」として桜木健一近藤正臣がゲストに登場している。
 北斗星児を演じる高峰圭二と古くからの芝居仲間で同じ事務所に所属していたことから応援ゲストとして実現した点が大きいが、二人はヒット作となった『柔道一直線』(69年)でそれぞれ主役・ライバルを演じていたことから当時は相応の人気を集めており、特に桜木は当時同じTBSで月曜19時30分に放映していた『刑事くん』に主演中であり、今回の役柄がその『刑事くん』の主人公を模した刑事であったことから番組を見ていた視聴者は大いに喜んだと思われる。
 イケメンを主役に据えることで人気を博してきた近年の特撮ヒーロー作品ではあるが最近は一般ピープルの間では話題にのぼることが少なくなっているように思えるので、ここらで一発大物ゲストを出して話題を独占するのも一考ではないか?
 『マツケンサンバ』で人気が再燃している松平健が最近の自身の人気について「子供たちには仮面ライダーみたいな変身するキャラクターと同じに見えるのではないか」などと某所で分析していたが、個人的にはライダーや戦隊のピンチを救いに松平演じる全身金ピカのヒーローが現れる、なんて見てみたいものであるが(ふざけているのではありません。筆者は極めて真面目です・笑)。


 そして今回はサボテンの露天商を父(演じる故・高品格(たかしな・かく)は名バイプレイヤー(脇役)であったが(特撮ファンには東映の『ロボット刑事』(73年)のレギュラー・芝大造刑事役でおなじみ)、今回のねじりはちまきに腹巻きのスタイルはそのコミカルな演技もあいまって、赤塚不二夫ギャグマンガ天才バカボン』のバカボンパパそっくりだ・笑)に持つ少年・三郎がゲスト主役。
 昆虫を食べてしまう不思議なサボテンを大事にするあまりに大変な事態を招いてしまうが、『帰ってきたウルトラマン』第24話『戦慄! マンション怪獣誕生』でも宇宙怪獣の破片を子供が自宅に持ち帰ったことから起こった一大事を描いており、当時は比較的よく見られたネタであることから子供番組に子供が登場することを嫌がる(笑)人には批判の声もあろう。
 だが『ウルトラセブン』第16話『闇に光る目』もいじめられっ子の少年が「強い子にしてあげる」とそそのかされた揚げ句に岩石宇宙人アンノンを巨大化させてしまう話を描いている。所詮は子供番組なのだから、大人の世界を描くばかりではなく、こうした子供の身近で起きる出来事を扱う話がもっとあってよいハズだ。
 いずれもゲストの少年は未知の存在をまるでペットを飼育するかのように扱っているが、これぞまさに「ポケモン」感覚。
 ましてや近年の若い世代は自分の半径何メートル以上の世界には関心を持たない者が多い(だから社会派テーマのドラマなんか当たるハズがない!)のだから、あまりに遠い世界の話よりも、こうした身辺雑記的な話の方が案外ウケるのではないだろうか。



<こだわりコーナー>
*三郎の自宅の壁には当時駄菓子屋で5円で発売されていた怪獣ブロマイドとともに蒸気機関車の写真が何枚か飾られている。当時は鉄道の電化の波に飲まれて蒸気機関車が姿を消していたころであり、別れを惜しんで鉄道マニアがこぞって沿線で写真撮影するなど、ちょっとしたブームでもあった。
 その後75年に日本の鉄道から蒸気機関車は一旦完全に姿を消してしまったが、近年では復活を望む根強い声によって季節限定で走らせている路線もある。特に静岡県大井川鉄道では年中乗ることができる。


*三郎の父が晩酌をしながらテレビで見ている漫才は実際の演目の流用(演者不明)であるが、この中に「きちがい」というセリフが2回も出てくる。80年に巻き起こった漫才ブームの最中には毒舌中心の過激なネタが流行したものだがさすがに放送禁止用語を連発するほどではなく、いかに72年当時の放送コードが緩かったかが伺える。
*三郎が育てていたサボテンは夜になると凶暴化。小学校で飼育していたニワトリや人間を襲うが、襲われた人間は「いまどきの若者」風のカップル。『帰ってきたウルトラマン』第7話『怪獣レインボー作戦』や第12話『怪獣シュガロンの復讐』以来、円谷作品の「いまどきの若者」批判は描かれており、近年に至るまで定番と化している。
*ちなみにニワトリとともにサボテンに食われてしまう用務員を演じているのは、東宝作品を中心に戦前から活躍されている名バイプレイヤー(脇役)、痩身でギョロ目と怪演が印象的な故・大村千吉。『ウルトラQ』第1話『ゴメスを倒せ!』や『ウルトラマン』第29話『地底への挑戦』、『ウルトラセブン』第2話『緑の恐怖』や第41話『水中からの挑戦』、『怪奇大作戦』欠番第24話『狂鬼人間』、『帰ってきたウルトラマン』第24話『戦慄! マンション怪獣誕生』以降、こちらも定番である(笑)。『ウルトラマンA』第40話『パンダを返して!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070204/p1)にも出演している。


*そのサボテンをTACガンで始末しようとする山中隊員に対し、北斗は「過去にも宇宙昆虫がレーザーで巨大化した例がある」と主張して止めさせるが、これは『帰ってきたウルトラマン』第26話『怪奇! 殺人昆虫事件』の一件(昆虫怪獣ノコギリン)のことであり、両作品がひとつの世界であることを感じさせる嬉しい配慮だ。
 もっとも脚本が共に上原正三であることを考えれば書きたがるのも当然か(笑)。身近な昆虫やサボテンが実は……やはり氏はこうしたネタがお気に入りのようである。
 結局TACはサボテンを宇宙空間で戦闘機タックスペースのスペースミサイルにて撃破。サボテンは強力なエネルギーを与えられ、サボテンダーとなって地球に舞い戻ってくる。素直にTACガンで始末した方が被害が少なかったのでは?(笑)


*それに対抗して、梶研究員はサボテンの弱点から水分を蒸発させる薬物を含有するロケット弾を開発。あくまで理詰めの敵殲滅作戦が展開され続ける。
*超獣サボテンダーのネーミングが安直だとツッコミを入れる人も多いだろうが、第1期ウルトラにだって、『ウルトラQ』の怪獣モングラー、『ウルトラマン』の怪獣酋長ジェロニモン東宝怪獣映画でも、カマキラスやらクモンガやらモスラやらの安直なネーミングがあったのだ。
*エースがサボテンダーに放つ新必殺技は、手先で宙に文字(もんじ)を切ってX字型の光芒を浮かばせてから放つサーキュラーギロチン! 本放映時、このシーンに技の名前の字幕が入ったことを記憶する御仁もいるが真偽はいかに。『ウルトラマンタロウレーザーディスクのライナーノーツなどによると、第2期ウルトラシリーズは本放映時(およびごく初期の再放送の一部)において、怪獣の初登場シーンなどで怪獣名などのテロップがスーパーインポーズされていたという(テロップ用の字幕と挿入タイミングを記した資料が一部残存しているのだ)。
*今回も精巧なミニチュア美術とその数がスゴいです。
*巻頭の超獣サボテンダーのパーツパーツのアップは、第1話『輝け! ウルトラ五兄弟』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060514/p1)の超獣ベロクロンのパーツパーツのアップ演出と同じ技法。共に特撮監督は佐川和夫。同様の技法は、本作で特撮班の助監督を務めていた川北紘一がのちに平成『ゴジラ』シリーズで特撮監督を務めた際にも見られた。


*『ウルトラ』は第1期まで、あるいは前作『帰ってきたウルトラマン』まで、もしくは本作『A』初期数話まで、などともっともらしき言説が飽かず流通しているが、そんなものは俗説。
 『A』は1クール終盤に至っても、あるいはそれ以前の『ウルトラ』シリーズの第1クールと比較しても、明朗快活スカッとした娯楽編が最も連発され続けているシリーズだ。
 逆に『帰ってきた』の第1クールは真摯な内容だが、そこが人間ドラマ的に過ぎて、映像の色彩設計面でも暗く、子供向け活劇・変身ヒーロー作品としては、重過ぎるかもしれない(時代が下り、世の中が垢抜けていくほど、子供にとっては重過ぎるのではないのかとの観も強くなる。もちろんそれでも子供番組としての節度は保たれているが)。


桜木健一近藤正臣の友情出演ばかりに注目が行きがちだが、とにかく本話は、高品格演じる露天商の親父と三郎少年の陽気でチャキチャキな江戸っ子の下町親子の描写が絶品だ。


*視聴率14.5%


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2006年号』(05年12月30日発行)『ウルトラマンA』再評価・全話評大特集より抜粋)



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