(脚本・田口成光 監督・筧正典 特殊技術・佐川和夫)
(文・久保達也)
防衛組織・TAC(タック)の宇宙ステーション№5(ナンバーファイブ)を撃破した宇宙船が地球に侵入。
攻撃に向かうTACだが、北斗は怪音波に襲われ、戦闘機タックアローが操縦不能になる。
宇宙船は撃破されたが、ダン少年が交通事故から救った星野アキラという少年と出会った北斗は再び同じ怪音波に襲われる……
超獣が宇宙船に乗ってやってくるというのも一瞬妙に思えるが、爆発四散したヤプールの破片が宇宙にまで飛び散ったと思えば納得ができ(第24話『見よ! 真夜中の大変身』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061015/p1)のナレーションでもそう明言している)、宇宙人がヤプールの残留思念に操られているのか、はたまたヤプール人そのものの残り少ない残党が宇宙船に搭乗して出現したのか、好意的に見れば「宇宙超獣」(筆者命名)という存在には壮大なスケールが感じられるというものだ。
宇宙船撃破のあと、山中隊員が「勝利を祝って」とパーティーの用意をさせ、普段はおとなしい印象の吉村隊員が第2話『大超獣を越えてゆけ!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060515/p1)同様いきなりギターを手に挿入歌『タックの歌』を歌い出す場面が微笑(ほほえ)ましいが、当時は『人造人間キカイダー』(72年)で毎回主役・ジローが登場シーンでギターを弾きながら現れ、『アイアンキング』(72年)では変身しない主役・国家警備機構の静弦太郎(しずか・げんたろう)が毎回ギターを弾きながら歌うシーンが用意されていた*1。それらの影響もあるだろうが、学生運動の時代が終わりを遂げていた当時、若者たちの間でフォークソングが絶大な支持を得ていたことも大きいのではないか。
吉村の演奏にのって隊員一同が『タックの歌』を歌い出すが、怪音波のことを信用されずに山中に操縦ミスと責められた北斗だけがひとり浮かぬ顔をしている。
めでたい席で自分の立場ゆえひとり輪に入れないときの疎外感といったら絶大なものであり(筆者も何度か経験がある)、大人になってから視聴するとなかなかリアルな描写である。
翌朝北斗は飛行訓練を受けることを自ら志願していたのだが、夜中にアキラ少年が発した怪音波に襲われたために体調を崩して寝坊してしまう。
通信機からの山中の怒鳴り声に起こされた北斗は真相を確かめようとアキラが寝ているダン少年の部屋を探ろうとするが、
「お〜い、もういい加減にしろオラ〜ッ!」(爆)
という山中の通信に本部へと急がねばならなくなったため、やむなくダン少年に手紙を書いて本部に向かう。
その手紙はアキラのことを監視し、怪しい点があったらTACに知らせろという内容であったが、その末尾は「ウルトラ6番目の弟へ」で締められ、ウルトラサインまで添えられていたのだ。
エース直筆の手紙だと思ったダンはすっかり有頂天になるが、なんという夢のある描写であろうか。
同じころ講談社から発売された『テレビマガジン』73年1月号(72年12月1日発売)では「『仮面ライダー』声の年賀状!」なる読者サービス企画が用意されたが、これは本誌に添付された応募券と代金分の切手を編集部に送付すると、73年元旦に主役・本郷猛役の藤岡弘の肉声を収録したフォノシート(レコード)が添付された年賀状が読者のもとに届くというものであった。
憧れのヒーローから自分のもとにメッセージが送られる。誰もが夢見るであろうがリアル志向の作品ではこんな描写があるはずもなく、だからこそマニア予備軍のマセガキはともかく子供たち一般の盛り上がりも欠けるのだといい加減に気付いてもらいたいものだが。
アキラが飛行訓練中の北斗を苦しめたというダンの通報はTACに信用されず、ダンは、いやウルトラ6番目の弟はウルトラの星に祈りを捧げる。
「どうか超獣人間の弱点をエースに教えて下さい」と。
ダンの祈りは通じ、アキラが変身した超獣人間コオクスに苦戦したエースはウルトラの星からコオクスの弱点がミサイルを発射する指先であることを告げられ、フラッシュハンドで腕を切断、メタリウム光線でとどめをさす。
第29話『ウルトラ6番目の弟』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061120/p1)に続いて今回もダンによって危機を救われたエース。
第2期ウルトラ作品はドラマと特撮が乖離しているどころかむしろ巧みに融合している作品が実は多いのである。もう一度皆さん御自身の目で判断して下さい。
<こだわりコーナー>
*ウルトラ怪獣の中でも独創的なデザインの超獣人間コオクス。
当時の怪獣・怪人にしては珍しく、第29話に登場した地底超獣ギタギタンガに続いて両肩が上方に突起していて、体表は溶岩が急速に冷えた際に空気が抜け出たような気泡の小さい穴だらけの褐色の岩石のようでボリュームがありながら、対照的に赤いシャープな突起や牙を持った顔と人間型の体型でカッコいい! もっと評価されてしかるべきウルトラ怪獣だ。
*星野アキラを演じた高橋仁は第3話『燃えろ! 超獣地獄』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060521/p1)においても一角超獣バキシムが変身した少年を演じているが、当時の変身ヒーロー作品にゲストで出演していた子役俳優の中では最も可愛らしい顔をしており、役柄とのギャップがたまらなく良い。
もっともこの直後に出演した『仮面ライダー』(71年)第88話『怪奇 血を呼ぶ黒猫の絵!』においては夜中に起きて黒猫の絵ばかり描く兄を案ずる弟という普通の少年の役柄を演じている。
前作『帰ってきたウルトラマン』(71年)第31話『悪魔と天使の間に……』(脚本・市川森一)でも宇宙怪人ゼラン星人が言葉の不自由な少年に化けていたが、大人の目を欺くには最も効果的な侵略の手段であり、「まさかこの子が……」というギャップが良いのである。
筆者が『ウルトラセブン』(67年)の中では最も好きな部類に属する第9話『アンドロイド0(ゼロ)指令』(脚本・上原正三)もまた、頭脳星人チブル星人がオモチャに偽装した本物の兵器で大人たちを攻撃しようとする話であった。
いやあ、そのころの上原正三先生は良かったなあ……(笑)。
*内山まもるが小学館の『小学二年生』で描いた今回のコミカライズ作品(72年12月号掲載)では、なんと冒頭で宇宙船に破壊された宇宙ステーションに勤務していた両親の遺児として香代子とダンが初登場する。しかも親を思い出して泣いていたダンに対して北斗がいきなり自分がエースであることを打ち明ける!
これらが実作品との大きな違いであるが、もうひとつ、香代子がかわいすぎる!(爆)
*北斗の飛行訓練をマンションの屋上から見ていたダンは思わず「ヘタクソな操縦だなあ」と漏らすが、このときは北斗はまだコオクスの怪音波に襲われてはいないのだ。ダンにまでヘタクソ呼ばわりされてしまう北斗の操縦技術って一体……
でも第1話では北斗の操縦技術を山中が「北斗新隊員もなかなかやるじゃないですか。見てください、あれを」とホメてたんだけどなあ。退化しちゃったのか?(笑)
*本話も第3話『燃えろ! 超獣地獄』同様、TAC基地を舞台に、ボリュームいっぱい長尺のヒーロー対怪獣バトルを展開する。さすがに富士山のホリゾント背景までは予算的にも時間的にも描かれていなかったが、TACの超近代的な施設群やパラボラアンテナ型のレーダーのミニチュアが目白押し!
特撮同人誌『夢倶楽部VOL.8 輝け!ウルトラマンエース』(94年12月25日発行)によれば、第11話『超獣は10人の女?』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060731/p1)にも出てきた東宝ゴジラ映画『怪獣総進撃』(68年)の月基地や、『怪獣島の決戦 ゴジラの息子』(67年)に登場した観測カプセルが、TAC基地のミニチュア群に混じっているとのこと。
*私事で恐縮だが、かなり以前に筆者は『A』ファンの年下の女性に書いた手紙を「ウルトラの妹へ」で締め、大いに喜ばれたものであった(もう二児の母ですが……)。
(編:そーいう素朴なコミュニケーションがキモがられずに男女マニア間で許されたってのは、もう15年以上前の牧歌的な時代のことですので、注意してください・笑)
*視聴率22.8%