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《ちょっと一服》『ウルトラマンA』関連アイテム2
(ファミリー劇場『ウルトラマンA』放映・連動連載!)
(文・久保達也)
さてここでは『ウルトラマンA(エース)』(72年)の作品世界を構築するのに大いに貢献した、冬木透作曲のBGM(ビー・ジー・エム。バック・グラウンド・ミュージック)を収録した音楽アイテムについて紹介する。
79年4月21日にキングレコードから発売されたLPレコード『ウルトラオリジナルBGMシリーズ④ ウルトラマンA <冬木透の世界*3>』(定価1800円)がその最初である。
エースとミサイル超獣ベロクロンが組み合う写真をジャケットにあしらったこのLPには、25トラックに全49曲が収録され、代表的な曲はほぼ網羅された。
ただ『A』の主題歌レコードは放映当時東芝レコードから発売されていたため、テレビサイズ主題歌はキング原版のカバー・バージョンが収録されていた(筆者的には最悪のアレンジであった……)。なお『恐怖の大超獣』と題して収録されたドラム単音の曲は正確には『ミラーマン』(71年・円谷プロ)の本編未使用曲であり、平日帯番組『レッドマン』(72年・円谷プロ)でよく流用されていた曲である。これは『A』と『ミラーマン』の音楽の追加録音が当時同時に行われ、その際に両作品の音楽がテープに混在してしまったため、そのテープをマスターに使用して起きたケアレスミスであった。
また構成を担当したのは酒井敏夫名義の特撮評論家・竹内博であったが、彼が書いた作品解説は「途中で息切れしてしまった」「特撮を知らない本編スタッフが特撮に導入されたことでおかしくなった」「途中で月に帰るくらいなら、南夕子なんか出さずに最初から北斗ひとりで変身させればよかったのだ」などと悪口雑言の嵐(笑)。
『A』のファンだからこそこのLPを購入しているにもかかわらず、それに対してこのようなものを読ませるなどとは無神経きまわりないわけであるが、特撮関係の書籍やレコード解説の草分け的存在である氏らが70年代末期に巻き起こした第3次怪獣ブーム(もちろん彼らが多大なる功績を残したことは云うまでもない)の渦中においては、ウルトラといえば第1期作品群を指し、第2期作品に関してはまったく軽視されていたのである。
(編:ちなみに特撮同人ライター森川由浩氏の情報によれば、このシリーズの定価は基本的には1800円だが、『キャプテンウルトラ』『仮面の忍者 赤影』『ウルトラセブン②』のみ2000円とのこと)
日本コロムビアからは79年8月25日に『テレビ・オリジナルBGMコレクション 冬木透作品集』と題した2枚組のLPが発売されている(定価3600円)。
これは『ウルトラセブン』(67年)『帰ってきたウルトラマン』(71年)『ザ★ウルトラマン』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971117/p1)との混載盤であったが、各作品の代表的なBGMを冬木透の意向のもとに組曲風に編集し直して収録したものであった。なお95年8月19日には同社からCD化もされている(現在は廃盤)。
また同社からは81年11月25日に『特撮・オリジナルBGMコレクション④ ウルトラマンAの世界』として単独盤も発売されている(定価2000円)。
全10トラックに41曲が収録されたようであるが、残念ながら当時筆者は購入していないため(まだ中学生だったから小遣いが少なかったのだ……)、これについては詳細は定かではない。主題歌はレコードサイズを収録していたが、おそらく当時の権利関係を考えるとコロムビア版のカバー・バージョンが使用されたことかと思う。あとはジャケットがエース対マグマ超人マザロン人の写真であったことが明らかなのみである。
ちなみにこの『特撮・オリジナルBGMコレクション』の①②③(『ウルトラマン』『ウルトラセブン』『帰ってきたウルトラマン』)は、同社の『ANIMEX1200シリーズ』というアニメ・特撮の70年代末期〜80年代の草創期マニア向け音盤の再発シリーズから、05年3月23日に1200円の低価格でCDで復刻(asin:B0007MCHO8・asin:B0007MCHOI・asin:B0007MCHOS)されている。
オリジナル盤は⑧『ウルトラマン80(エイティ・80年)の世界』までリリースされていたのだが……
マニアが願っていた『ゴジラ』復活がいよいよ決定し(若い皆様は知らないでしょうが、『メカゴジラの逆襲』(75年・東宝)以降、『ゴジラ』(84年・東宝)まで長らくブランクの空いた『ゴジラ』シリーズの再開を求め、80年代初頭には学生・社会人年齢に達したマニア第1世代(60年前後生まれ)のお兄さんたちが大騒ぎしていたのです)、その余波と各種ビデオソフトの発売により、かつての特撮作品に再びスポットが当てられるようになった84年、キングレコードは79年に発売した『ウルトラオリジナルBGMシリーズ』を一部構成を変更し、『ULTRA Original BGM Collection』と題して再リリースを開始する(定価2200円)。
『A』はその筆頭(名目は「ULTRA Original BGM Collection・6」)として『帰ってきたウルトラマン』とともに同年7月21日に発売。
オリジナル盤ではカバー曲だったテレビサイズ主題歌を、今回は実作品に使用された東芝原版に差し替え、併せて挿入歌『タックの歌』のレコードサイズも追加収録。
また原版がステレオ録音であったにもかかわらず、オリジナル盤ではモノラルに直して収録(他曲とのバランスも考慮したのであろうが、レコードではモノラル録音にするとステレオより長時間の収録が可能だったこともあるだろう)されていた数曲のBGMが、今回は原版通りにステレオで収録された。なお初回特典として新番組宣伝ポスターの復刻版が付けられていた。
今回の再リリースでジャケットに使用されたのは第1期ウルトラ至上主義者で有名な開田裕治画伯の描きおろしイラストであったが、『A』のイラストでは大波が荒れ狂う海にそびえ立ち、バーチカルギロチンを発射するエースが描かれており、その背後の空はヒビ割れして赤い中から不気味な目がのぞいていて、作品世界にも忠実でシリーズ中最もかっこいいジャケットに仕上げられていた。
ちなみに今回の再リリースでは79年のオリジナル盤ではカップリングで片面のみ(LPレコードのA面・B面ずつ)の収録であった『ウルトラQ』『ウルトラマン』(共に66年)が単独盤で発売、『ウルトラマンタロウ』(73年)は全面的に構成を一新し、さらにモノラルからステレオでの収録に変更になったが、これもまた『ゴジラ』復活同様、80年代半ばの積極的なマニア活動の成果の賜物(たまもの)といえるであろう。
同人誌『空想特撮シリーズ音楽目録』を85年に発行した高橋和光氏(現・たるかす代表として商業媒体で活躍)はこの中で、黎明期(70年代末期〜80年代初頭)のBGMレコードに対し、「一編者の暴虐的独断による主観構成」と酷評している。
音楽アイテムの主流がレコードからCDへと移り変わった80年代後半、『ウルトラQ』(asin:B000064JTH)、『ウルトラセブン』(asin:B0000076FM)が87年に2枚組で(定価5800円)、『帰ってきたウルトラマン』が88年に1枚でキングレコードから『総音楽集』としてCDでリリースされた(定価3000円。『ウルトラマン』(asin:B000064JST)はテープの捜索に時間がかかったためか、91年に2枚組でようやくリリース。以上、全てが94年に値下げして再発)。
長時間収録が可能になったため、作品によっては全曲完全収録も夢ではなくなったのであるが、好みの曲をプログラム選曲で一発で聴けるようになったのも大きな魅力であった(LPでこれをやろうとして大事なレコードを何回傷付けたことか。年齢がバレる……)。
『A』関連CDは日本コロムビアから90年11月21日に発売された『円谷作品オリジナル原盤 ウルトラマンA/ウルトラマンレオ 音楽集 冬木透の音楽世界』と題した2枚組が最初である(定価5000円)。
全曲完全収録ではなかったものの、ボーナストラックとして『セブン』や『帰ってきた』に流用された冬木透作曲の一般ドラマのBGMが収録されていたため、資料的な価値は絶大であった。
また同社から92年6月21日に発売された15枚組CD『円谷プロダクション創立30周年記念盤 TSUBURAYA PRODUCTION HISTORY OF MUSIC』(定価38000円)には、先の2枚組CDに漏れた『タックの歌』の細工BGM(前奏や間奏を編集してメロオケとして劇中で使用された。演奏時間にさまざまなバリエーションがある)や、音楽テープが未発見の曲を作品のMEテープ(アフレコに使用する、音楽と効果音を収録したテープ)から収録していた(第25話『ピラミットは超獣の巣だ!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061021/p1)のオリオン星人ミチルが吹く笛や、第49話『空飛ぶクラゲ』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070409/p1)の村人たちの歌など)。
完全な単独盤はそれまでは刑事ドラマなどのBGM集を積極的にリリースしていたバップが95年3月1日に発売した『ウルトラマンA ミュージックファイル』(ASIN:B00005H0I1)である(定価2500円)。
劇中使用曲は大半が収録されたが、先のコロムビア盤に収録されていた細工BGMの類は一切収録されていないのが難点である。既にバップでは廃盤扱いであり、店頭在庫を残すのみとなっている。
そして現在のところの最新アイテムは、コロムビアミュージックエンタテインメントから06年8月23日に発売された『ウルトラサウンド殿堂シリーズ(5) ウルトラマンA』(asin:B000GFM89K)である(定価2100円)。
これまた全曲完全収録ではなく、代わりに主題歌レコードサイズと『TACの歌』が収録されていたりと、豊富にオムニバス歌曲集が出ているのにナゼ……と疑問だったりするのだが、初心者にとってはこれで十分でしょう
(その割には第11話『超獣は10人の女?』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060731/p1)に使用された「ハチのムサシは死んだのさ」のハミング・バージョンが収録されていたりと、ウ〜ン、中途半端な構成や・笑)。
『エース』BGM集の歴史・補足
(文・彦坂彰俊)
『ウルトラマンエース』(72年)の84年版BGM集の価格は、確かに2200円で間違いないようです。特撮雑誌『宇宙船』VOL.20(84年10月号・『シルバー仮面』特集。購読を始めた因縁の一冊・笑)を当たってみたところ、キングレコードの広告に明記されていました。
ちなみに同号のコロムビアレコードの広告を見ると、キング版より先に81年に発売されたウルトラシリーズのBGM集が、まだ絶版になっていなかったことも確認できます(こちらの価格は2000円)。しかしまぁ、較べてしまうとキング版のインパクトが圧倒的だったというのは、やはり「あの」開田裕治画伯のジャケットイラストの功績というべきなのでしょう。
しかも、ジャケ帯のアオリ文句
「幾万もの星々の思惟により選ばれし者、北斗星児、南 夕子。(改行)
汝ら二人“光”の道標となりて闇に巣食う悪魔の野望を断て!」
がまた奮ってたんだよねぇコレが(笑・多分、会川の筆)。
してみると、トクサツジャンルに「マニア向けのパッケージ」がもたらされたことの意義は、けっこう大きいのかもしれないな、と。
おぉっと!? 件のLPレコードが鈴木繭果(『ウルトラマンコスモス』(01年)アヤノ隊員)とツーショットだぁ!(byファミリー劇場『ウルトラ情報局』06年11月号・笑)
キング版の正式名称は『ウルトラオリジナルBGMコレクション・6 ウルトラマンA オリジナル・サウンドトラック』。型番は、K22G−7200(LPレコード)、K22H−4216(カセットテープ)。仕様はWジャケットですが、さらに2枚の中紙が綴じられているため、ライナーノートは計6ページ!
内容は、会川昇(当時は83年に高校生で脚本家デビューするも一発屋のフリー編集者。現・脚本家の會川昇(あいかわ・しょう))の作品解説に、特撮評論家の酒井敏夫の楽曲解説、全BGMリスト、なぜか光学合成の中野稔と音楽の冬木透の対談といった構成。
会川のスタンスは実のところ『エース』に対して否定的であったりするワケですが、その要因を企画理念と設定条件の狭間に生じた違和感に求めたあたり、なかなか説得力に富んでいて、当時かなり触発されたことが思い出されます(汗)。
もっとも、84年春の日本テレビの平日(月〜木)夕方6時からの再放送ですでに「エース・インパクト」(再評価)を体験していた身ですから(笑)。むしろ補完的に捉らえ直す機会を与えてもらったという意味での重要性を評価したいかな、と。
同年のキング版の『ウルトラオリジナルBGMコレクション』の作品解説は、すべて会川が担当した模様(?)。
宇宙船文庫『ウルトラマンA超獣事典』は、朝日ソノラマから86年3月1日初版発行(asin:4257763566)。企画・安井尚志、構成・会川昇。
いわゆる図鑑的性格の書籍であり、あくまでも作品紹介と資料価値の立場に徹しています。特に『ウルトラA』時代の企画書(「特撮超獣シリーズ ウルトラA 製作メモ」)全文が公開されたのは、本書が初めてではなかったかと記憶しているのですが(事実関係は曖昧・汗・*1)。
ただ、BGM集のライナーノートにおいて吐露された会川の拘泥を踏まえて見ると興味深いような気も(作品の価値判断を読者に委ねている――と取るのは深読みか、な?)。
『假面特攻隊2007年号』「ウルトラマンA全話評」『エースBGM集の歴史』関係記事の縮小コピー収録一覧
・「ウルトラ・オリジナルBGMシリーズ ウルトラマンエース」(84年)ジャケット
・「ウルトラ・オリジナルBGMシリーズ ウルトラマンエース」の発売日問合せ返答ハガキ・キングレコード(株)テレフォンセンター