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ウルトラマンエース36話「この超獣10,000ホーン?」 〜長坂秀佳脚本第3弾!

ファミリー劇場ウルトラマンA』放映・連動連載!)


ファミリー劇場『ウルトラ情報局』ウルトラマンA編 〜2・脚本家・長坂秀佳出演!
「ウルトラマンA 再評価・全話評!」 〜全記事見出し一覧


(脚本・長坂秀佳 監督・筧正典 特殊技術・川北紘一


(文・久保達也)
(#36〜43評は、一昨年05年12月〜昨06年1月執筆)
 市街地や工業地帯など、騒音が集中する地域で超獣の目撃証言が相次ぐ。
 ある夜、超獣出現の通報を受けた防衛組織TAC(タック)は北斗隊員と美川隊員を現地に急行させるが、そこに超獣の姿は見られなかった。
 そこの住人に超獣出現の気配を感じなかったか、大きな音を聞いたりまぶしい光を見なかったか、二人がたずねると住人は


 「ああ、毎晩見ているよ」


 と意外なことを口にする。


 そこに大きな音とまぶしい光の主が現れた。それは暴走族の操るオートバイであり、近隣住民の悩みの種となっていたのだ。彼らは二人を散々からかうと夜の闇に消えていった。
 基地に帰ると美川は


 「あたし、ああいう人たち、超獣以上に許せないわ!」


 と暴走族を批判するが、北斗はそれに対して


 「さびしいんだよ、あいつら」


 と意外にも彼らを擁護する。
 美川が


 「暴走族の味方をするの?」


 とたずねると(このときの美川隊員のカットは『ウルトラマンA(エース)』全話中最も彼女が美しく見える場面だ!)、北斗は「オレもああいうふうになりかけた時期があった」と口にする
 (ここで北斗が不良少年だったころの回想場面が挿入されていればもっと良かったのだが・笑)。



 騒音を好物とする超獣の出現や暴走族の登場など、序盤の展開は一見色モノ的路線を思わせるが、長坂秀佳(ながさか・しゅうけい)の脚本(正直氏がこれを書いていたことなんかすっかり忘れていた)であるだけに、決して色モノ的作品には終わっていない。
 高度経済成長期がかげりを見せた70年代前半、大気汚染や水質汚濁(同時期の『人造人間キカイダー』(72年)で氏は第16話『女ベニクラゲが三途の川へ招く』において、汚れた川で毒クラゲを生育させる女ベニクラゲと川の浄化に努める若い女性を絡ませた秀作を残している)などの公害が社会問題となっており、騒音は近年でも近隣トラブルの原因となっているくらいだから当時においても立派な公害であり、一応は文明批判的な側面を見せた作品でもある。


 ただ本作はそれだけにとどまらず、北斗が「さびしいんだよ、あいつら」と表現したように暴走族の揺れ動く内面の移り変わりを的確に表現しているのが秀逸であり、そこが暴走族を「社会のダニ」とばかりに地底怪獣バラゴンに食わせてしまった怪獣映画『ゴジラモスラキングギドラ 大怪獣総攻撃』(01年・東宝)みたいな並みの発想とは違う優れた部分なのである。


 「静かにして!」


 と注意した香代子と、こともあろうに


 「負けるもんか!」


 と叫んでしまったダン(さすがはウルトラ6番目の弟!・笑)を暴走族は容赦なく襲い、北斗がこれを助け、以後北斗は「おせっかいおじさん」として頻繁に彼らの前に現れることになる。


 「バイクに乗るなとは云わん。せめて音を小さくしてくれ」


 という北斗の頼みに、一応


 「わかりました」


 と表面的に謝った直後に再び香代子を襲ってみたりする彼らの行動や、女性メンバーのまち子を中心に北斗と敵対するのをやめようとする意見が出る中、リーダーの俊平だけが


 「どうせおれたちは嫌われ者だ!」


 と開き直って再度暴走行為に出るあたりなどはなかなかリアルに描けているのではなかろうか。


 そんな内面を見透かし、騒音超獣サウンドギラーを追い払った手柄を彼らに与えて子供たちの人気者に仕立てあげるなど親身になって彼らに接する北斗に暴走族も次第に心を開いていく
 (爆音を好んでサウンドギラーが彼らの周囲に頻繁に現れると描かれていることにより、任務を離れて何やってんだ? なんて批判も回避できている)。


 やがて彼らは騒音を発する工場に隣接した幼稚園を守るため、サウンドギラーをひきつけるために北斗とともにバイクで疾走する!
 オートバイアクションの強調は『仮面ライダー』(71年)のみならず、実写30分ものドラマ『ワイルド7(セブン)』(72年)の放映開始も影響を与えているかと思われる(?)。
 北斗がバイクから転げ落ち、サウンドギラーによって全身火だるま(!)になるなんて命がけの描写もあるくらいだ。


 サウンドギラーの指先から発する連射ミサイル攻撃をエースが側転の連続でかわし、メタリウム光線で発砲スチロール製のカポックを木っ端微塵(これぞカタルシス!)にするに至るまで派手なアクション描写が目立ち、もちろんこれはこれで魅力的であるが、このドラマの根底に流れているのはきわめて人間的な優しいまなざしである。
 ラストシーンは体を張って幼稚園児を守った暴走族が子供たちの人気者となって一緒に遊ぶものとなっている。


 「荒れる少年たち」を思うにつけ、今回の北斗のような親身になってくれる大人の存在を必要としている少年たちは現在でも多いのではないか。今から三十数年も前に既に解答が描かれているのである。
 映画『ウルトラマンコスモスVSウルトラマンジャスティス THE FINAL BATTLE(ファイナル・バトル)』(03年・松竹)みたく、暴走族を「二千年後に宇宙に災いをもたらす地球生物(爆)」などととらえていては何も解決はしないのだ。
 そうした感覚の部分では『A』の方がよほど優っていたと筆者は考えるのである。



<こだわりコーナー>
*騒音のエネルギーを吸収するという超獣の属性が判明する前から、超獣にサウンドギラーという名前がついている。……児童はともかく幼児にはサウンド(音)という英単語はわからないので大丈夫(笑)。


*今回エースとサウンドギラーのバトルシーンに流れる主題歌はナゼかカバーバージョンである。オリジナルよりもややアップテンポの曲で、放映当時は東宝レコードや朝日ソノラマなどの発売する盤に収録された、コール・ゼールが歌唱するものである
 この曲は80年代にアポロン音楽工業(ザ・ピーナッツ沢田研二など、大手芸能プロ・渡辺プロダクションに所属するアーティストの音楽テープを発売していた)が発売したウルトラシリーズ関連の音楽テープに必ず収録され、91年7月21日にビクターが発売したCD『ウルトラ・コンピレーションI』(ASIN:B000064X0P)にも収録されたことから耳にした記憶のある人も結構多いのではなかろうか。


 (後日付記:コール・ゼールではなくヴォーカル・ショップが歌唱したという記述も散見されますが、ヴォーカル・ショップも数多くの主題歌カバー版を歌っていますので、彼らの声とは全然違うことが確認できますよ。ちなみに前述のCDのライナーノーツによれば、このカバー版の原盤製作はゼール音楽出版というところだそうで、コール・ゼールなるグループはそこの看板だったのかと)


内山まもる小学館『小学二年生』72年1月号に描いた本作のコミカライズ作品では暴走族は全く登場しない。代わりに冒頭でサウンドギラーが航空機を襲い、搭乗していた父親を亡くした少年を中心にした内容となっている。のちに『ウルトラマン80(エイティ)』(80年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971121/p1)第7話『東京サイレント作戦』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100613/p1)で描かれたように、TACは東京から全ての音を消す作戦に出る。だが少年が急病となって救急車で運ばれ、そのサイレンの音を聞きつけてサウンドギラーが再度出現するという、オリジナリティあふれる内容である。


*第34話『海の虹に超獣が踊る』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061223/p1)に続いて山中は北斗に


 「たるんどる! ブッたるんどるぞおまえは!」


 と怒鳴るが、この名セリフって長坂先生が考案したんですね(笑)。それにしても山中によれば今回登場する暴走族は高校生だそうだが、どうひいき目に見ても20代前半にしか見えません(笑)。


*エース登場の際、俊平は「ウルトラマンエースは、本当にいたのか」とつぶやく。そりゃねえだろっ!(笑)


*暴走族の姉ちゃんの方の役者・佐伯美奈子は、『A』の因縁の裏番組の特撮時代劇『変身忍者 嵐』(72年)で第38話からレギュラー出演したツユハ役の方。


*視聴率19.0%


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2007年号』(06年12月30日発行)『ウルトラマンA』再評価・全話評大特集より抜粋)



(編註:なんと暴走族・俊平を演じた役者さん・小沢直平氏は、本作から8年後の『ウルトラマン80』#44「激ファイト! 80VS(たい)ウルトラセブン」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110226/p1)でもまたまた暴走族の青年役で出演されたという情報もある!?(名義は清家栄一))


[関連記事]

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  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061120/p1

ウルトラマンエース#34「海の虹に超獣が踊る」 〜長坂秀佳脚本第2弾!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061223/p1

ウルトラマンエース#36「この超獣10,000ホーン?」 〜長坂秀佳脚本第3弾!

  (当該記事)


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  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070114/p1