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西遊記#2「温泉の国」


「西遊記」全話評! 〜全記事見出し一覧


(映画『西遊記』公開記念!〜短期集中連載!)
(文・田中雪麻呂)

♯2『温泉の国/〔温泉の国 美人姉妹と豚の恋!?〕』

 (脚本)坂元裕二(演出)澤田鎌作


 「妖泉大王! おめぇが醜いって言った奴(八戒)は弱虫で泣き虫だけどな、踏みつけられたってボロボロになったって、何度でも何度でも立ち上がるンだ。そいつはこの世で一番綺麗な心を持ってんだ。
 人を力一杯好きになれるっていう強くて綺麗な心を持ってるんだよ。そいつを嗤(わら)うヤツはたとえ神様仏様が許したってこのオレ様が許さねえ。さァ答えろ! 天国に行きてえか、地獄に行きてえか!」



 湯の香に誘われて、キャラバンは山の麓の温泉宿に到達する。その宿は春麗(しゅんれい/酒井若菜)、冬麗(とうれい/三浦理恵子)、夏麗(かれい/金子さやか)という美人三姉妹が経営していた。
 彼女らの、この宿に婿入りしてくれる殿方を探しているという甘言に乗り、煩悩多き三弟子は気もそぞろ。特に八戒は醜い妖怪の自分を怖がらない次女の春麗にメロメロに。


 しかしそれは、この湯の国を支配する妖泉大王(ようせんだいおう/及川光博)の罠だった。大王の魔力によって石化した三姉妹の母親(吉沢京子)と春麗の許婚(いいなずけ)の若者を元に戻すために、彼女らはキャラバンを計略に掛け、大王に差し出す。
 妖泉大王は不老長生のため、三蔵の身体を高温の温泉で茹(ゆ)であげ、それを喰らわんとするが、悟空が小水を同所に放ったため、辛くも事無きを得る。


 しかし八戒だけは、春麗の好意が嘘だったどころか実は大の豚ギライだったということを知り、寝床から起き上がれないほどに強く落ち込む。
 一方春麗も、ピュアな八戒を酷く傷つけたという自責の念に駆られ、ひとりで大王の館に直訴に赴く。彼女は最早(もはや)命を捨てても良い心積もりなのだ。


 未だ立ち直れぬ八戒に悟空の檄が飛ぶ。「お前、あの子が好きなンだろ? 自分に嘘つくんじゃねエ! 男だったら好きな女がついた嘘も全部まとめて守ってやれよ!」
 八戒は悟空の叱咤激励に背中を押され、三面六臂の大活躍。キャラバンを阻む高温水蒸気のトラップを自が身で防ぎ、妖泉大王との(大王の石化妖術を防ぐための)暗闇の中での決戦も、その抜群の嗅覚を生かしてのナイス・サジェスチョンで、見事キャラバンを勝利へと導く。


 春麗との切なくも爽やかな別れを経た八戒は、精一杯の作り笑顔で三蔵らに向き直る。


 「ボクはやっぱり花より団子ですッ!」。


 ドラマ開始早々、何の脈絡もなく悟空が「温泉でも浸かってのんびりしてえなぁ〜。」と叫び、目を泳がせると、山の麓に棚引く湯煙を発見する、というあまりと言えばあまりな展開に思わずメゲそうになる筆者(笑)。
 ホント、話の序盤くらいはちゃんとやって欲しいです。
 因(ちなみ)に、原作にも第72話に濯垢泉(たくこうせん)という温泉場が登場し、そこに巣喰う7人の蜘蛛(くも)の妖精が三蔵を攫(さら)うというエピソードがある。
 クライマックスで、大王の石化光線を防ぐべく目隠しをして戦う“盲剣法(めしいけんぽう)”が本作の殺陣の目玉だが、既に30年も前の78年版の同名ドラマで悟空役の堺正章が数段高いレベルでそれも複数(♯3、17)こなしているためあまり新味はなかった。



 ミッチー(及川)がノリノリで演じたという妖泉大王だが、大王の美学や哲学の描写が希薄で、かなり大ざっぱなキャラという印象になってしまった。
 たとえば、凄い潔癖症であるのに(八戒らが散々入浴した)温泉の湯で三蔵を茹(ゆ)でて喰うことは厭(いと)わなかったり、三姉妹の計略がキャラバンに露見したあとも(彼女らを放置すれば三蔵主従に大王一派の不利益な情報がもたらされるのに)彼女らに何の枷(かせ)も与えなかったりなどは脚本の弱点となるのではないか。
 ただ、心が折れてしまった八戒を慮(おもんばか)るものの言葉が見つからず苦慮し、目茶苦茶に筋斗雲を走らせることしかできなかったり、大王と春麗の前で敢えて八戒の綺麗な心を無骨に讃(たた)えるといった悟空の行動は、美しい劇伴とも相俟(あいま)ってひとつのヒーロー像の王道を確かに行っていたと思う。


【その他のゲスト】
菅原卓磨老子の配下)


(了)
(特撮同人誌『仮面特攻隊2008年号』(07年12月30日発行予定)『西遊記』2006年版・全話評より抜粋)


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