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西遊記♯11(最終回)「天竺」 〜全話評完結!

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(映画『西遊記』公開記念!〜短期集中連載!)
(文・田中雪麻呂)

♯11『天竺(てんじく)/〔天竺! 愛と勇気と感動の最終回!! 未来へ〕(最終回90分SP)』

(脚本)坂元裕二(演出)澤田鎌作


「コラコラコラッ……クソ天竺ッ!

 頑張った奴は報われなきゃいけねえんだ。頑張った奴が報われる世の中じゃなきゃいけねえんだ。
 神様だろうが、人間だろうが、妖怪だろうが、そんなことは関係ねえッ!
 天竺だろうが、何処だろうが、この世で一番偉いのは……頑張った奴だッ! 頑張った奴が一番偉いンだよッ!

 ……そんなお師匠さんに手え出すヤツは、たとえ神様仏様だろうとこのオレ様が許さねえッ!

 さァ来いッ! お師匠さんには指一本触れさせねえ……。」


 荒れ果てた土地に辿り着いたキャラバンだが、突然現れた屈強な僧兵団の一隊が三弟子を縛(いまし)め、三蔵を何処かに連れ去る。
 僧兵のリーダー・赤雲(せきうん/山下真司)は三蔵に、妖怪である悟空ら三弟子は霊山にある大雷音寺(だいらいおんじ)には入ることができないので、今後の道程の露払い役は自分たち天竺よりの使者が担う、と申し出る。


 三蔵は弟子たちを慮(おもんばか)り、入山を辞退するが、師匠思いの三弟子は師父の身を赤雲に託し、自分たちは潔(いさぎよ)く身を引く。戸惑う三蔵だが、弟子たちそれぞれの殊勝な決意を聞き、納得して入山を果たす。


 大雷音寺の僧正・李玉(りぎょく/篠井英介)以下高僧たちは、寺内以外の人間は全て愚かで野蛮であるという、偏った考えの鼻持ちならぬ連中であった。
 李玉は歩いて旅をしてきた三蔵を、暇人(ひまじん)の極みと蔑(さげす)むも、経典を与えることは約束する。
 しかし念願の経典は、三蔵の命と引き換えに供(きょう)されるものであった。つまり99日の酷烈なる修行の後に命を捨てることで、三蔵の魂が経典に転生(高僧たちはこれを“天性{てんせい}の儀式”と呼称)するということなのだ。


 三蔵は修行所に赴く際、老子にこの件を口止めするが、三カ月後に彼は凛凛に思わず喋ってしまい、悟空ら三弟子が再び天竺に集結する。
 悟空は大雷音寺に潜入し、牢獄の痩せこけた三蔵を発見する。逃げるよう説得する悟空だが、三蔵は冥加(みょうが)を得ることに心が一杯で、その申し出を拒絶する。
 「お師匠さん、生きてよ。人の一番大事な使命は生きることだよ。……お師匠さんッ出て来てくれよォ!」。
 涙ながらに訴える悟空に、三蔵の頑なな心は溶け出し、同時に牢の格子が次々に抜け落ちた。そう、まるで以前三蔵が岩牢に閉じ込められている悟空を助け出したように……。


 脱出を試みるキャラバンだが、腹の虫の治まらぬ悟空だけは大雷音寺本堂に舞い戻り、李玉らに宣戦布告する。
 しかし如何に悟空といえど、数十人の屈強な僧兵に総掛かりにされた上、悟空の頭を締め付ける緊固児(きんこじ)の呪文まで唱えられ、満身創痍の状態に。


 その時、三蔵の錫杖(しゃくじょう)の音が響き渡る。現れた三蔵、八戒、悟浄が李玉の濁った目をまっすぐ見据える。その刹那、キャラバン四人の身体から物凄い“闘気”が迸(ほとばし)り、その場の全ての僧兵の目を眩まし、足元を掬った。キャラバンはその隙に大雷音寺を脱出する。
 麓(ふもと)の廃墟まで逃れてきた一行は、瓶(ビン)の水を美味(うま)そうに飲む初老の男(堺正章)にからかわれる。
 キャラバンを追ってきた老子はその男を見て慌てて平伏する。男は釈迦如来(しゃかにょらい)であった。


 如来は三蔵らに、山と積まれた経典を渡し、言葉を掛ける。


「あなたたちを天竺に向かわせたのは、経文それ自体には何も書かれてはいないことを知って欲しかったからです。天竺までの苦難の旅、そしてその間に見聞した多くの出来事、それらが即ち経文の意味なのです。」。


 そして如来は悟空に歩み寄り、事もなげに頭の緊固児を外すと去って行った。
 大願を成就させ、キャラバンは解散した。
 それから数年後、悟空が住まう花果山に三蔵、八戒、悟浄、凛凛が突然揃って現れる。驚く悟空に、三蔵は新たな旅の出立を申し付ける。釈迦如来がなにものかに攫(さら)われたため、経文の字が全て消えてしまったのだという。
 新たな旅の目的は、釈迦如来の救出である。心が逸る悟空の頭に三蔵が何かを装着した。それは緊固児であった。



 本話を見終わり最も気になったのは、コメディリリーフ役の老子の扱いだった。
 老子の別名は太上老君(たいじょうろうくん)。♯5では悟空もその名を口にしている。


 原作では悟空が天上界で大暴れをしたとき、神器の“金鋼琢(こんごうたく)”で彼を治め、次いで仙丹を焼く窯“八卦炉(はっけろ)”に押し込んで21年間ほど焼き続け、灰にしようとした文武両道に秀でた神様として描かれている。
 神様、と書いたが、老子は仏教の聖人ではない。道教(どうきょう)という異宗派の三神のうちの一人である。道教とは、現実的な幸福や不老長生を求める、中国土着の宗教である。


 それに対し、本作の劇中の老子は、大雷音寺では客分クラスでの扱いだが、李玉よりは格下に描かれている。
 僧正とはいうものの、所詮李玉は人間である。この、超能力を有し、天上界に居を構え、パシリとはいえ菩薩如来と言葉を交わせる老子が、人間より下という位置付けがまず分からない。


 このドラマは中国でも放送されたそうだが、そういう宗教的なところを上手くクリアしたのか心配である。
 おかしい、と言えば釈迦如来の位置付けも判然としない。何故、悪しき思想の李玉が大雷音寺を私するのを放置しているのか、それとも全ては仏の思し召しなのか、かつて如来に会っている筈の悟空は何故一見してそれと気付かなかったのか、そして大の大人のお釈迦様が何故ラストで攫われて(笑)しまうのか等など謎は尽きない。


 ひとつのヒントとして、フジテレビ出版から出ているノベライズ本『西遊記(著/橋口いくよ・06年3月発行・フジテレビ出版・[asin:4594051413])』がある。
 映像作品とこの書籍ではかなりの相違点がある。


 まず、堺正章が演じた初老の男は、小説では李玉の上位である“大僧正”になっており、「頑張った奴は報われなきゃいけねえ」の悟空の演説(?)に感銘して、李玉ら高僧たちに「お前たちも旅に出ろ!」と厳命し、悟空に大雷音寺の山門を(誰でも自由に行き来できるように)壊すよう申し付ける。


 小説版での釈迦如来は子供(あまりに人物描写がアバウトなので、幾つ位なのか推測不能だが)であり、(天竺に到達したので)三弟子が捨てた各々の得物を拾い集めてきたりして彼らに助力する。
 ノベライズ本の性格からして、脚本の第一稿が多くその材料となることを鑑(かんが)みると、堺が出演可能ということで、急遽前記の二つの役を一つに合わせたのではないだろうか。それならば立ち位置が希薄なのも、ラストに攫われてしまうのも一応納得がいく。


 さて、その堺氏は言うまでもなく、78年に製作された同名ドラマで主役の孫悟空を演じ、当時の『西遊記』ブームの火付け役となったひとりである。今回のこの出演は、現在の作り手の氏に対するリスペクトであると思われる。
 堺氏の顔が映った途端に、78年版『西遊記』([asin:B00009XLL7])のテーマ・ソング「モンキーマジック(唄/ゴダイゴ)」がかかり、また、そのナンバーにのって堺氏自ら往時を彷彿とさせる如意棒さばきを披露したり、悟空(香取慎吾)の緊固児を外すシーンでは「コレ、痛いンだよね〜。」と同病相憐(あいあわ)れむ様な台詞を発するなど、お父サン世代に大サービス。筆者も思わず笑ってしまった。


 さて、とっちらかった(笑)本作の最終回だったが、原作のラス前もかなり波乱に富んでいる。
 大雷音寺に着いたものの、一行は案内役の尊者から賄賂(わいろ)を要求されたり(しかもそれを如来が黙認している)、またその賄賂を出さなかったために白紙の経典を渡されたり、一行の苦難の回数が(冥加を得られる規定に)足りぬため長安(ちょうあん)への帰途の途中に経典を水浸しにされたりと散々である。原作なのに(笑)。


 そういうある種露悪的で爽快でない原作のラスト故か、日本の実写『西遊記』で、天竺到達でメデタシメデタシで完結したものは(ザ・ドリフターズの子供向け大ヒット人形劇の『飛べ! 孫悟空{'77〜79}』なんかも含め)皆無である。
 ('94年版『西遊記』最終回については、西遊記#3「夢の国」評にて)
 そこへいくと、前述の中国・中央電子台製作の同名ドラマ([asin:B000JR0OWI])の最終回(第一部)は特殊メイクで釈迦如来をイメージ通りに設(しつら)えたり、尊者の賄賂要求のくだりなどもホントに原作に忠実に映像化しており、色んなイミで頭が下がる(笑)。


 本話のもうひとつの目玉が、大山の大半を覆いつくすようにびっしりと建造された大雷音寺寺院のCGである。
 スタッフもその出来に自信満々で「寺院のCGは圧巻! 悟空が筋斗雲でそれを空から見下ろす、というカットは斬新な視点なので乞御期待です!{週刊ザテレビジョン'063/17号より}」と鈴木吉弘プロデューサーも語っている。
 “五万匹の大妖怪軍隊”“滅法国大王宮”そして本話の“天竺大雷音寺の大寺院”とシリーズ終盤に及んでCG美術のオン・パレードである。勿論(もちろん)美麗で労作であるし感心もするのだが、ドラマ部分や人物との合成カットにおいてはいまひとつ乖離していて、物語の流れに溶け込むまでには至っていないようだ。難しいものである。


【その他のゲスト】
田口主将 吉田メタル 松原征二 高橋賢一 高山春夫 山口年男 松原誠 田中嘉昭 鮫島満 博冴羽一 シンスケ 森田雄飛 宮沢天 志村文壽 小野寺光祥 森山大祐 五頭智広 木津俊昭 宮本量弘 堀内隆宏 杉山光範 佐藤達也 福篤徹 井上如春 横山治朗 石鳶弘忠 荒川浩道 五月女義信 細井賢雄 西山龍典 片岡法亮 木下栄海 渋谷快 阿井坂信諒


SP番組『春休み突入スペシャル!! 西遊記ウッキー祭り! 悟空も悟浄も八戒も三蔵も! みんなで一緒にGO! WEST!('063/27放送・90分)』

(構成)大井洋一(演出)加藤裕将


 八戒と彼の息子・八恵(はっけい/深澤嵐)が狂言廻しとなって、全11話の冒険旅行を振り返る総集編番組。そしてスポット的に、それぞれ孫悟空の衣装を付けた香取慎吾とチビカツが台湾で珍道中を繰り広げる様子が挿入される。


 八戒は八恵と大邸宅で優雅に暮らしている。悟浄は金魚姫(須藤理彩)の故郷・竜宮に根を下ろし、地元の高等学校の教師をしている。八戒は悟浄から手紙を受け取ったのを動機づけに、息子にまた天竺への冒険話を語り始める。
 しかし八恵はそれよりも、父が決して見せようとしない「秘密の巻」なる巻物が見たくてしょうがない。
 あらゆる手を尽くして父をまいた八恵は、遂にその「秘密の巻」を広げて見る。そこに書かれていたものとは[西遊記 映画化決定]という文字であった!


 この後、翌年('07)年頭の各新聞での『映画西遊記』の一面カラー広告、同時期の主要都市での(複数の映画スポットCMつきの)TVシリーズ再放送、コンビニのファミリーマートと提携した5月上旬からの同映画フェア、全国主要都市の東宝劇場で行われた同映画スタンプラリー、6月上旬からやはり主要都市で行われた再放送(このときは、6/6発売の同映画イメージ・ソング『旅人/〈唄〉高杉さと美』のプロモーションのためか、エンディングのMONKEY MAJIKの主題歌の音声を『旅人』に差し替えた上、『旅人』の曲紹介をテロップで付記して放送!)と、全国展開のPR活動も行き届いている。
 改めてビッグ・プロジェクトであると痛感させられる。


(了)
(特撮同人誌『仮面特攻隊2008年号』(07年12月29日発行)『西遊記』2006年版・全話評より先行掲載)


西遊記』(2006年版)全話評・一覧!

西遊記 〜2006年版・全話評! 序文 〜商業性や78・94年版とも比較レビュー!

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西遊記#1「火の国」/〔天竺へ!! 悟空と仲間たちの旅が始まる!!〕(初回90分SP) 〜登場人物紹介・ナビ番組

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西遊記#2「温泉の国」/〔温泉の国 美人姉妹と豚の恋!?〕

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西遊記#3「夢の国」/〔再会、母よ! 夢かなう寺の怪〕 〜今シリーズ最高傑作! 94年版や79年版の同系話など

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西遊記#4「砂の国」/〔激辛!! 砂の国の腕ずもう大会〕

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西遊記#5「子供の国」/〔子供の国 悟空がパパになる!?〕

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西遊記#6「森の国」/〔武勇伝!! 新しい仲間〕

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西遊記#7『幽霊の国』/〔幽霊の国 熟女になった悟空!?〕 〜本家中国84年TV版も!

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西遊記#8「時の国」/〔タイムスリップ!! 過去への旅〕 〜タイムスリップ! 94年版と比較

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西遊記#9「花の国」/〔最強妖怪の罠〕

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西遊記#10「滅法国(めっぽうこく)」/〔妖怪の国 凛凛の意外な正体!!〕

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西遊記#11(最終回)「天竺」 〜全話評完結!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20070902/p1(当該記事)



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