假面特攻隊の一寸先は闇!読みにくいブログ(笑)

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仮面ライダーキバ序盤評 ~時に戦隊を凌駕するポケモンサンデーの脅威!

『仮面ライダー』シリーズ評 〜全記事見出し一覧
『仮面ライダー電王』 〜後半評 複数時間線・連結切替え!

仮面ライダーキバ』序盤評1 ~キバっていこうぜ!!

(文・J.SATAKE)
 1986年。教会で厳(おごそ)かに執り行われる葬儀。
 だが花を手向ける人々の前で遺体が棺桶から蘇り、怪物・ファンガイアとなった! 女性が巨大な牙に襲われ、恐怖に逃げ惑う人々。


 すると怪物の前に現れる喪服の女性。


 「神は過ちを犯した……。あなたのような存在を……わたしが正してあげる!」


 そして果敢に怪物に挑んで行く! 


 平成ライダー第9作は、吸血鬼=バンパイアをメインモチーフに据えた『仮面ライダーキバ』。
 物語はバブル経済に向かう1986年に起こった事件をきっかけに、2008年の現在で再び始まる闘いの様子を交互に描いていく。


 22年の間を繋ぐのは、二組の親子。
 ファンガイアハンターとして指令を受け闘う麻生 ゆりと麻生 恵(あそう めぐみ)。
 バイオリン作りで著名な父、紅 音也(くれない おとや)とそれを越えようとする息子、仮面ライダーキバこと紅 渡(くれない わたる)。


 それぞれの時代で互いが出会い、展開していくドラマが中心だが、バイオリンに使うニスのために、魚の骨を周りの迷惑も構わず集め回ったり、「この世アレルギー」と称してマスクと眼鏡を外せないというエキセントリックな主人公・渡の設定や、軽妙な会話で物語が進みながらも、人が死ぬという凄惨なシーン(血が見えなければOKなのかしらん)もしっかり見せるのは、やはり脚本担当の井上 敏樹氏ならではだろうか。
 他にも渡の保護者と言い切る少女・野村 静香や、喫茶店「カフェ・マル・ダムール」のマスター・木戸 明など様々なキャラクターが絡んでいくようだ。


 アクションは女性のゆりや恵がかなり激しいシーンを演じている。高所からの飛び降りや噴水でびしょ濡れの格闘、バイクスタントなど……。冬場の生身でのその勇姿に敬意を表します! 


 もちろん仮面ライダーキバとファンガイアとのバトルも力が入っていて、カーキャリアを使ってのぶら下がりや回転しながらの格闘や、足を車輪に変化させたファンガイア怪人のスケート走行とキバの乗るバイクとの走行バトルなど見所は多々ある。


 キバのスーツはやはりダークヒーローを強く印象付ける。
 変身アイテムでもある、喋るメカ蝙蝠(コウモリ〜CGで表現)のキバットバットⅢ世(声・杉田 智和氏。ナレーターも兼任)が渡の手を噛むと血管が浮き出てウイルスを注入されたかのようになる(見ようによっては妖しい)シーンは、ちょっとドキリとする。
 黒を基本にしたスーツに蝙蝠を模した銀色の鎧(よろい)と鎖(くさり)が目を引きつける。


 必殺技はシンプルなキックだが、そのプロセスは凝っている。
 変身ベルトのバックルから飛び立ったキバットがキバよりセットされた笛を吹く(?)と、周りは闇に覆われ、キバが右足を垂直に上げると封印を解かれたように足の鎧が蝙蝠の翼の形となって開いた! 月を背にするように左足で高々とジャンプすると逆さまな体勢で超高空に停止するやハイスピードで急降下して右足でファンガイアを直撃!! 衝撃波で地面に浮かび上がるキバ(蝙蝠)のマーク!
 ケレン味溢れるアクションでカタルシスをアピール。
 四散するファンガイアから現れる光の玉。そこに姿を見せるのは、古城から四肢を生やした竜! 光の玉を喰らう竜……。


 謎が謎を呼ぶ展開が序盤は続きそうだが、今年もキャラクターのドラマとアクションをしっかり見届けたい。

(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2008年冬号』(08年2月10日発行)〜『仮面特攻隊2009年準備号』(08年8月15日発行)所収「仮面ライダーキバ」序盤合評①より抜粋)

仮面ライダーキバ』序盤評②

(文・T.SATO)
(08年2月24日書下ろし)


 「ウェイク、アップ!!」


 ……なーんていう、必殺ワザ・ライダーキック直前の決めゼリフを聞くと、


 ♪ ウェイク、アップ!  ザ・ヒ〜ロ〜  たいよ〜(太陽)よ!


 と、『仮面ライダーBLACK RX』(88年)主題歌イントロやサビを口ずさみたくなる、ミドル世代(今やオールド世代?)なんですが……(汗)。


 直前作『仮面ライダー電王』(07年)パイロット編(#1、2)に続き、田崎竜太カントクがパイロット編を担当。
 『電王』をのぞく全・平成ライダーシリーズに関わってきた井上敏樹が、『仮面ライダー555ファイズ)』(03年)以来のメインライター復帰。


 『光(ひかり)戦隊マスクマン』(87年)〜『爆竜戦隊アバレンジャー』(03年)までほぼ全作の「スーパー戦隊」作品、近年ではお得意の中国武術を活かした大ヒット作『西遊記』2006年版(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070721/p1)や、本編ドラマ部分でも壮絶なアクションを披露したあの『ゴジラ FINAL WARS』(04年・――特撮アクション&本編アクション見せまくり究極作登場! JAC的なるものの勝利!・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060304/p1――)でも絵コンテ含めてアクション監督を担当してきた竹田道弘が、『仮面ライダー龍騎(りゅうき)』(02年)以来の宮崎剛(みやざき・たけし)に代わって、ついに来た来た平成ライダー初登板!
 主役ライダー演じるスーツアクターは、『仮面ライダーアギト』(01年)以来(『仮面ライダー響鬼(ヒビキ)』(05年)をのぞく)の高岩成二(たかいわ・せいじ)が連続続投! で、アクション面での布陣は磐石!


 吸血鬼がモチーフの今年08年の仮面ライダー
 去年の『電王』が、ライダーのシンボルでもある顔の巨大な赤い両眼を、桃太郎と赤鬼モチーフから来た左右に割れた桃の意匠(笑)にしていたのを引き継ぎ(?)、今年のキバの黄色い両眼はコウモリが翼を拡げてるそのものズバリ! というアメコミヒーロー・バットマンのマークのようなベタなイメージ(だからダメだというのではなく)。
 ドラキュラ伯爵ゆずりにも往年のライダーRXみたいに首後ろには大きな襟っぽい意匠が立っていて、自身のパワーの拘束か封印か、金属のクサリをデザインアクセントにボディに巻いて、金クサくチャリチャリジャラジャラ云わせてて……。


 シリーズ最弱(笑)の『電王』主人公・野上良太郎(のがみ・りょうたろう)以上に弱そうな主人公・紅渡(くれない・わたる)クンは、本作『キバ』においては仮面ライダーに変身後、『電王』や『龍騎』のように戦闘のアマのまま・弱いままということはなく、『アギト』のように一転変貌して余裕綽々、しかしシャープかつ歯切れ良い身のこなしでやたらめっぽう強い!


 トドメは、『激走戦隊カーレンジャー』(96年)のカーレンジャーロボの必殺剣みたく、必殺キックの直前には、様式美的に周囲が月夜の闇になる! 満月を背にライダーキック!
 直後、教会のステンドグラスモチーフの敵怪人の魂を喰うために、近代的なビルの中階がダルマ落とし風に飛び出して、西洋風の古城に手足が生えたドラゴンに変型! 賛美歌風のBGMに乗って空を飛んでくる!


 ……なんでやねん! リアリティなんてドコ吹く風!(笑)
 いやまぁ文句じゃなくて、コレくらい奇抜なことをやった方が、幼児にとってはキャッチーだとも思うし、個人的にもゲラゲラ笑いながら観てるけど。


 まぁヒーローのデザインやコンセプトは毎度おなじみ玩具会社・バンダイ側の主導にしても、今回のヒーローの90年代以降の『戦隊』ノリな必殺ワザ描写は、アクション監督・特撮監督・玩具会社ほかの合議で検討の末に決めていったものではあろうけど(?)、そのへんのあるイミ、ドラマやテーマよりも、子供向け番組としてもっともキモでもあるキャッチーな要素を、単独個々でピックアップしていけば、悪いものではなくむしろ優れたものでさえあるワケで。あるハズなのだが……。


 欠点を指摘する前に、まだまだ迂回(笑)。
 本作が狙っている個々の要素自体は決して悪くはない。
 個人的な好みは別として、時流にマッチしたものでもあると思う。
 

 前作『電王』主人公の野上良太郎の女性ファン層へのウケ方をブローアップしたような、イケメンだけども、体格もゴツくない、丸顔童顔色白少年かわいい系、人畜無害さわやか安全癒し系。
 子供向けならぬマスコミ向けの番宣では謳われていた、主人公がいわゆるオトメン(乙女チックなイケメン・乙女チックな男子。……少女マンガ(07年・ISBN:4592184149)のタイトル由来の言葉だそうだが・笑)であるというのは、前作でツカんだ客層をヒカせずに引き継ぐためにも非常によいと思う。


 やはり『電王』の二番煎じ、もとい引き継いで、桃太郎(赤鬼)や浦島太郎(亀)や金太郎(熊)に元ネタが明かされてないけど明々白々、戦後の児童文学由来のキャラ(笑)が、仮面ライダーに憑依(ひょうい)することでバージョン違いになるがごとく、本作『キバ』でも狼男やフランケンシュタイン仮面ライダーに取り憑くことでバージョン違いになるそうで(?)、前作でそれがウケたのだから、それもけっこうなことだとは思う。


 ……けっこうな要素ばかりのハズなのだが、なぜに本編はこんな体たらくになってしまうのか!?(笑)


 まず、オトメン主人公がキャラを一応立てるためとはいえ、「この世アレルギー」(笑)とかの設定で、風邪マスクをして顔下半分を隠していたのは、即物的にはキャラたちの顔を覚えさせる役割も裏面では持つ#1としてはドーなのか?
 また、本作が吸血鬼モチーフゆえの意図的なものだろうが、ワザと画面も画調を若干クラめ・ダークにしているので、よけいにオトメン主人公のビジュアルなりルックスのかわいさが引き立ってこない。
 

 なんか、番組途中の仮面ライダーキバの変身ベルトのCMに出てくる、オトメン主人公を演じる瀬戸康史(せと・こうじ)クンの方が、相対的に明るい映像に、暗めの色調の上着を着ていないこともあいまってか、いわゆるオトメンらしさがよく出ていて、はじめてプリティーなコだな♥ と思えてしまいましたとサ(笑)。


 もちろん、画調を若干クラめにしているのは、パイロットたる#1、2を担当した敏腕・田崎カントクの演出方針なのだろう。
 どちらかというと、田崎カントク風というより、映像色彩的には良くも悪くも凝ってみせる(時にやりすぎてハナにつく)石田秀範カントク風な#1と#2の映像演出。
 本作が吸血鬼モチーフだから、シックな洋室やゴシックな教会で(カラフルなステンドグラスのイメージを映像の要所要所や、敵怪人の描写のアクセントに加えつつ)、だからこーしたというのも一方ではわかりはするのだが……。


 でも、やはりコレは両刃の剣(もろはのつるぎ)というべきだろう。
 ストーリー・アラスジが論理的には仮に同じでも、映像の明暗やアップやロングに演技力や発声などといった表層面(コレこそが基層面?)によっても、視聴者に伝わる印象なり話や設定への理解の明瞭度は――そしてそれは特に子供にとっては――、そーとーに変わってきて見えるもの。
 その点では本作はどうなのか? 何か若干クラめの映像のせいか、主要キャラたちが映像の背景の中に埋もれてしまって、立ち上がってきて見えないようにも思えるのだが……。


 あと、『電王』の正義側のイマジン怪人みたく、本作『キバ』でもベタでも早々に着ぐるみキャラの狼男とかフランケンシュタインとかを出して、コミカルな漫才大会でもやらせた方がよかったのではあるまいか?
 今のところは、あのドラゴンの古城の中の洋室にいる狼男(?)ほか数名は、役者が演じる人間キャラのみ。あんまり人間キャラが多いと、幼児には区別が付かないゾ。パターン認識しやすい着ぐるみ怪人キャラ主体にした方がなじみやすいのではないのかなぁ。従として人間体があってもイイけれど。
 まぁマニア的には、『仮面ライダー響鬼』の仲間の仮面ライダー轟鬼(トドロキ)のお師匠、ジブ〜い低音ボイスが超カッコよくて魅惑的な仮面ライダー斬鬼ザンキ)さんこと松田賢二氏が、平成ライダーに再登場してくれたのは筆者にとっても、とってもうれしいですけどね(笑)。

 
 さらに輪をかけて、現在の2008年と、過去たる1986年(22年前! 我らが86年という時代もそんなに前かよ!・汗)をパラレルに描いていく番組の基本構成!
 キャラや映像の判りにくさに加えて、よけいにワケワカメになってくる。
 ……まあ、もちろん筆者もマニアだから一応わかるといえばわかるけど、やはり明瞭さには欠けていて、キャラや事象が立ってこず、スミズミまでへの見通しは非常に悪くて曇ってる。


 なにか同じ吸血鬼テーマの08年1月スタートの深夜特撮『RHプラス』とかの方が、キャラは多くても無意味なわかりにくさは皆無で、オタク女子ウケしそうな男の友情と「構って」と「孤独」で(笑)。月刊「ジャンプスクエア」連載マンガで同じく1月スタートのTVアニメ『ロザリオとバンパイア』ほどにわかりやすくバカっぽくする必要もないけども。
 でも、コレらの作品群の方が、今となっては平成ライダーよりもよっぽど変身ヒーローものしてるよなあ(笑)。


 バカっぽく見られちゃう例えを出したので、大急ぎで言い訳ついでに付け加えれば86年は、85年のプラザ合意以降をバブル経済のはじまりとすれば、バブル期に入るやもしれないけど、当時も円高不況と云われていて、それでも日米貿易は不均衡で赤字だったアメリカの言いなりに中曽根内閣は輸入と内需拡大を叫び――FSX(次期支援戦闘機)を純国産で開発しようとしたらアメリカはなぜか日本の内需拡大を理由にヨコヤリ入れて中止させ、日米共同開発にさせられて先端技術も盗まれて(笑)――、87年秋にはブラックマンデーの株大暴落もあり……。
 88〜91年こそがのちに真にバブル経済と呼称されるようになる時期だと思うけど、たしかに86〜7年も沈鬱な気分はさほどになく、日本経済はそんなに弱くはないだろ的な楽天的な気分があったことを思えば、86年をバブル経済期に混ぜてもそんなに問題ナイと思う。


 子供向けヒーロー番組に、そこらへんでの厳密性を求める気はさらさらナイけれど(笑)。


 それよりも、単純に2008年と1986年の場面転換が、そのときだけ画面が上下にスライドさせているとはいえ、10人中8、9人のほとんどの視聴者が感じてるとは思うが(笑)、やはりわかりにくい。あるいは場面転回にノっていけない。
 もっと「1986年」という字幕をあんなに小さいものではなく、ベタでもデカデカと長らく画面に写すとかしてくれないと、ナットクかつ気分も転換して観ることができない。
 まだ作品世界を理解しきれていない、慣れていない時期の、あまたの映像作品の序盤なり前半部には、場面転換の前に、室内であれば室外やその建物の外壁を写すワンクッションが必要であるようなもので……。
 本作『キバ』でも、86年に舞台が変わるや、よく観ると一瞬モノクロになっているけど、気を付けなければ判らないくらいの尺数じゃあ。


 多少は要素要素や展開を凝ってみせたり、オモチャ箱ひっくり返し感覚を入れるのは、現今の子供向け作品には必須の要素だと思うけど、にしてもこの過去と現在のパラレル描写は、子供向け作品としてウリにはならないと思うし、むしろ煩雑すぎる要素ではなかろうか?
 まぁ86年と08年のパラレルを本作のウリにする以上、今さらこの大前提の設定を棄却するワケにもいかないが(笑)。
 せめて、初期編は現在08年のみを舞台として、数話を経た段階ではじめて86年の過去世界を描いた方がよかったのではあるまいか?
 あるいはせめて、86年の映像の画質・画調をもっと変えてみせるとか……。
 かといって、さらなる20年前の1966年のようにTVも家庭用写真もモノクロ映像の時代ならば(って筆者も生れる前の時代だけど)、セピア色の映像にしてもよいかもしれないけど、一応のイケイケでカラ元気でイッキイッキ(笑)な80年代〜狂躁バブル期をセピア色の映像にするワケにもいかなかろうけれど。
 
 
 実は筆者は、円谷プロの『ウルトラマンネクサス』(04年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060308/p1)や映画『ULTRAMAN』(04年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060305/p1)はベタに本格志向で映像もクラく作っているのに比して、平成ライダー東映スタッフはマニア向けならぬ大衆向け・子供向けにそこらへんのサジ加減も考慮して、今まで映像の画調はクラくしてこなかったのだろうと分析していたのだが……買いかぶりだったのか?(笑)
 まぁ、難解&ハード&シリアス志向の『ウルトラマンネクサス』あたりみたいなキッチリカッチリなストーリー展開・シリーズ構成・映像表現の作品群とは異なり、東映のことだから固執せずに融通無碍に描写して、最初は仮に失敗していた映像描写でも、ビシッと決まらずともきっとそれなりに、わかりやすいかたちに変容させるか視聴者に慣らすかするかたちで、そのうち軟着陸・ソフトランディングしてくれると信じよう!?


 ただ『電王』はあの作風――映像面でも明るくマイルド&着ぐるみキャラによる漫才大会――で、大きなお友だちのライトユーザー層を含めてそれなりにヒットさせたのだから、『キバ』も『電王』のマイルド&コメディ路線を、平成ライダー初作『仮面ライダークウガ』(00年)の次作『アギト』のときのように、ドラマ的内実はたとえ違っていたとしても表層面では引き継いで、客層をあまりに過剰に戸惑わせないようにした方がよかったのではないかともやはり思う。
 メインターゲットの子供たちにとっても、マイルド&コメディ路線の方がイイのでは? と思わずにはいられない(まぁ『クウガ』のときからそう思っているけれど)。


 そーは云いつつ、子供のための特撮を! とふだんは主張しつつも、どうしようもなく大きなお友だちで(笑)、一方ではシニカルで腹黒(はらぐろ)な筆者は、白倉伸一郎井上敏樹ラインの話せば判りあえそうなのにスレ違ってキズ付け合ってるような展開のための展開の(笑)、イケメンでポーカーフェイスでスカしつつ、内心では執着・自負心だらけで奇人変人エキセントリック・性格異常者なライダーたちによる「俺を好きにならないヤツは敵だ!」――笑っちゃうしカリカチュア・戯画化(ぎがか)されすぎてるけど誰にでもある、特に筆者が見るところ自分も含めて大抵の(全員ではない)ストイック志向・マジメ堅物人間にも濃度はともかく意外と潜在している要素――ばりな平成ライダー路線も大スキだったりもするけども。


 08年2月24日(日)現在で、本作『キバ』も#5まで放映。
 作品冒頭のバイオリンや画家やその画風の、作品内容とあまり関係が多分ない、幼児はスルーしているであろう、なくてもイイような……ということはあの程度ならばあっても構わない(笑)、ある意味ウザいウンチクとか、いかにも井上敏樹らしいけど。
 コチラ側の慣れもあるのか、#1&2の「こんなんで大丈夫なのかよ(汗)」的な、わかりにくくてジミな印象の出来だった『キバ』も、多少は観やすくこなれてきたように思う。


 08年世界の一応のヒロインたるファンガイアハンターの姉ちゃん・麻生恵(あそう・めぐみ)も、パイロット編ではクールなだけだったが、おきゃん(死語・笑)なキャラにビジュアルも発声を含めてわかりやすく立ってきた。
 特に伏線もなく、今回は狼男の人間(?)を演じるザンキさん(ガルルという名前だそうで)は、キバのピンチに古城から青い光の玉(剣?)となって到来してキバと合体、青色のフォーム・仮面ライダーキバ・ガルルフォームに!
 と思いきや、主人公・紅渡クンの父ちゃんが活躍する86年世界のシャバの空気(笑)の喫茶店でも、ザンキさんは大活躍!
 そして来た来た、井上敏樹キャラ! 『仮面ライダー555』の仮面ライダーカイザこと草加雅人(くさか・まさと)や、『仮面ライダーカブト』(06年)の仮面ライダーザビーこと矢車想(やぐるま・そう)の劣化コピー! もとい後継者のごとき(笑)、ポーカーフェイスでスカしつつも内心では自負心いっぱいキャラ、黒スーツ姿のイケメンくんことファンガイアハンター兼・賞金稼ぎの名護クンなる若造キャラがさっそう登場!


 名護クン「(犯罪者を捕まえて…)生まれ変わりなさい。新しい人生を送りなさい」


 マンガ・アニメ・劇画チックなお約束反復ギャグたる決めゼリフに、『カブト』の料理対決や『電王』のチャーハン対決がごときコーヒー対決とか、渡クンが名護クンに弟子入りするとか、渡クンが名護クンの命令で麻生恵を警護と称してストーカーといっしょにストーカーするとか(笑)、名護クンがキバを敵視する新ライダーに変身するらしいとか、渡クンの父・音也の“花”にはなれなかったジミ女の22年目の復讐(笑)とか――敏樹節が静かに出てきて、敏樹ファンにはうれしいかぎりだが(エッ、ヤですか? ただし敏樹は子供番組の脚本家としては異端であることも筆者はもちろん承知)――、キャラも展開も諸要素も立ってきて、パイロット編で不安に感じた不明瞭な要素も次第に減じていくと見た!


 ……本作『キバ』でホントウに不安だったことは、名目は東映の日笠プロデューサー担当作品でも実体は、第1クール目においては武部直美プロデューサーが実作業をしていたとおぼしき『仮面ライダー剣ブレイド)』(04年)第1クールの迷走(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041101)が再現されることだった。
 筆者が邪推するにその迷走は、いわゆる平成ライダー的な難解・ナゾ解き・仲間割れ・パターン破りを表層面だけ重視して、しかして意表外な展開も、それが主要キャラの強さやカッコよさ・頼もしさといったプラス方向には働かず、弱くなったり情けなくなったりキャラの魅力を減じてしまってはイミがない! ということにまで考えが及んでいなかったことが原因だったように思える。
 その浅知恵をいまだに自覚できていなかった場合に、本作『キバ』はまた迷走してしまうのではなかろうか? と思えてならなかったのだ。


 しかし今回は、奇しくも86年にスーパー戦隊シリーズ超新星フラッシュマン』で特撮脚本家デビューを果たした22年選手の今やベテランの良くも悪くもゴーイング・マイウェイの井上敏樹センセよりも、武部Pに主導権があるとはとても思えないし(?〜失礼)、その点では『剣』第1クールのようなほぼ衆目の一致する最悪の混迷もないのだろう。
 次悪の混迷はすでにあったような気もするが(笑)。


 ただまぁそれでもそれ以前の段階として、『電王』でゲットした新たな客層をゲットしつづけるのに、こんな作風でよいのとかの不安はあるし、裏番組に急迫されている08年現在に作るべき作品は、00年代前半の白倉・井上ラインの平成ライダーへの一部先祖帰りではなく、もっと明朗快活でマンガチックな方向でキャラが立っている着ぐるみ声優キャラで、それらを使役してかつ彼らとの友情で……というようなノリの方がイイんじゃないかナとも思うけど。それは次作以降の課題かな。


 とりあえず現時点では、お手並みを拝見、といったところで……。



追伸 あと、1話30分の前半Aパートの中で、従来ならば存在した変身後の仮面ライダーVS敵怪人のバトルがなくなっているのも、幼児向けのツカミが弱くなりそうでいかがなものかと思う。

(了)
(初出・弊ブログ記事〜『仮面特攻隊2009年準備号』(08年8月15日発行)所収「仮面ライダーキバ」序盤合評②より抜粋)

仮面ライダーキバ 〜序盤評③ ポケモンに喰われたライダー?

(文・森川由浩)
 思えば、本来平成ウルトラマンシリーズの後番組を予定しておきながら、放送局側の都合で旧来の毎日放送枠を獲得できなかったことが、結果的にテレビ朝日日曜朝8時枠への移動*1となり、以後満8年、今年は9年目への突入を目指した平成仮面ライダーシリーズ第9弾作品、それが『仮面ライダーキバ』(08)である。



 振り返れば、新規展開第一作目の『仮面ライダークウガ』(00)で、旧来の『仮面ライダー』の必須条件でもあった「改造人間」の要素を捨てて、時代に呼応した新たなる設定での変身ヒーローを描写、一作一作と個性を替えたのが長期間に渡るシリーズ化を実現したのだと思う。その変化の中、メインターゲットである児童層の年齢変化にも合わせ、上手い具合に作品のマイナーチェンジに成功したといえるだろう。
 それと並行して『仮面ライダーアギト』(01・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080106/p1)の映画版『仮面ライダーアギト・PROJECT G4』(01・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20011104/p1)以来ライダー&スーパー戦隊の新作劇場映画公開を実現、正に「帰ってきた東映スーパーヒーローフェア」でもあるこの興行を、夏の年中行事にまで高めたその持続性は目を見張るものがある。
 勿論(もちろん)その成功は、原点である『仮面ライダー』一作目(71)の新時代に合わせたリニューアル作品『仮面ライダー THE FIRST』(05・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060316/p1)、『仮面ライダー THE NEXT(ザ ネクスト)』(07)といった対象年齢を児童層・幼児層より更に上げた映画の誕生も実現、放映枠取得や低視聴率に苦しむ二十一世紀以降の「平成ウルトラマンシリーズ」とは実に対照的な活況である。


 だがこの平成ライダー、その本来の基盤でもあるテレビシリーズの視聴率に目を向ければ、その数字は近年下降気味の傾向を見せている。
 特に『仮面ライダー剣ブレイド)』(04)放映中の2004年10月より真裏の日曜朝8時台にテレビ東京系でスタートした『ポケモン☆サンデー』(04〜放映中)の登場は、それこそ平成仮面ライダーの好調に杭(くい)打つかのごとく、今や平成キャラクターテレビ番組の雄でもある放送局・テレビ東京がある意味「大博打(おおばくち)」として斬り込んだ番組である。
 本来ゲームから生まれたアニメキャラ・ポケットモンスターこと「ポケモン」がレギュラー枠のアニメシリーズ(97〜放映中)に加えて、少子化時代に健闘する児童向け情報番組の老舗『おはスタ』(97〜放送中*2)の要素を盛り込み、インフォメーションプログラムとしての特性も交えた新番組の登場は、テレ東子ども番組の両雄の合体による王道番組ゆえ、ヒットしないはずが無く、確実にこの『仮面ライダー』シリーズの視聴率に喰い込んで行き、一時期は平均で10%を越える視聴率を獲得したライダーの数字が、本当に低下していく現象を見せてきた。


 そこに追い討ちをかけるように、2006年10月より遂に30分の枠拡大&開始時間繰上げを見せた『ポケサン』は、2007年秋には遂に裏のスーパー戦隊シリーズ(午前七時半)を超える視聴率を獲得。
 まるで第2次怪獣ブームの始まりを告げる往年の特撮作品『宇宙猿人ゴリスペクトルマン)』(71)が直前のスポ根全盛期の象徴ともいえるアニメ『巨人の星』(68〜71)を追い抜いた現象を髣髴させる状況(要は後から始まった番組が長い間君臨した裏の人気番組を追い抜く視聴率を獲得した現象)に至り、今や戦隊シリーズの視聴率は5%台にすら届かなく、『ゲキレンジャー』第3クール目以降は3〜4%位にまで落ち込んでしまった。


 確かにテレビ東京系の民放は全国的に見て少ないかも知れないため、全国的に見て信憑性が無いとの声があるかも知れないが、視聴率は基本的に関東地区中心で見られるため、関東で低ければ何にもならないのであるから。
 00年代前半のイケメン特撮大ブーム時代とは異なり、00年代末期では今や苦境に立つ平成ライダー(と戦隊)という新たな現実、新たなる事態に入ってきていることを否が応でも認識させられる。


 変身ベルトを中心とした玩具やDVD・CDソフトの売上、映画の興行配収では高数字を獲得したが、テレビ番組である限り一番重視される、そして実際に鑑賞している子どもたちの数のカウントにもっとも近似していると思われる視聴率に関して見れば、『仮面ライダー電王』は平成仮面ライダー史上最低の数字である6.9%(関東地区平均値)までに落ち込んでしまった。
 メインターゲットはあくまで子どもであるはずだから、中長期的な子どもへの影響力や彼らへの販路を考えれば、競合してパイを喰い合っている『ポケサン』の興隆は非常にゆゆしき事態だと考えるべきだろう。



 周辺事情だけではなく、キャラクターにも目を向けると、変身する主人公・紅渡(くれない わたる)も前番組の『電王』の主人公・野上良太郎(のがみ りょうたろう)を引き継ぐような内向的で気弱な若者である。
 これは良太郎のキャラクターに母性本能を刺激され、ファンとして着く女性層が多かった事象にインスパイアされ、『電王』人気を引き継ごうとするのが顕著である。“男性が女性化した”と呼ばれるようになって久しいが。


 主人公に噛み付き、ベルトのバックルに装填されると仮面ライダーに変身させる能力を持つキバットのキャラクターだが、勿論『仮面ライダー電王』のイマジン(怪人)に見られる声優が演じる着ぐるみキャラクターの個性が作品人気を活性化、そのヒーローの主役俳優を上回る人気を獲得した現象を更に拡大すべく、今度はCGと小道具で描くキャラクターに声優が声を入れることにより誕生する非人間キャラクターの存在を売りにする。
 が、これも裏を返せばポケモンゴルバットズバット*3といったコウモリ型のモンスターを意識したキャラクターであるのは、児童層には当然の如く周知の事実であり、またライダースタッフも裏番組を意識しつつある現状を物語っている。


 前番組『仮面ライダー電王』のイマジンも、見た目はそうでなくとも、どこかしらポケモンに近い個性を持ったキャラクターに見えなくも無かったが、その成功はいよいよ「実写版ポケモン」的存在のキバットを産み、裏番組への対抗意識を更に表面に出してきたことが立証される。


 2008年度新番組の企画に入った頃(07年初夏)には、若干ではありながらも優位だったスーパーヒーロータイムの視聴率も、前半部の「戦隊」が遂に『ポケサン』に抜かれたこともあり、製作側の危機感も覗える。
 果たして、今年はその巻き返しに成功するのだろうか? 
 それとも、差を更に大きく広げられてしまうのだろうか?



 またストーリーも時代が「現在・2008年」と「過去・1986年」の両方で展開し、進行する形式が斬新だが、一歩間違えると物語の辻褄併せに終始するだけで終わる危険性も持ち合わせている。その過去の要素と時代を裏打ちするため、劇中に登場する喫茶店カフェ・マル・ダムール内で当時のヒット曲が流れるのが子どもの親世代に向けたサービスとして興味深い。
 さっそくおニャン子クラブ*4のメンバーだったうしろ指さされ組(高井麻巳子&ゆうゆ)や新田恵利(にった・えり)のナンバーが劇中を彩り、当時を知る世代の郷愁を誘っているが、実は小生当時はおニャン子を輩出した『夕やけニャンニャン』(85〜87)を見ず、裏番組の特撮やアニメ再放送を見ていた口だった。
 とはいえ、同時期に東映&フジテレビ製作による『スケバン刑事(デカ)』シリーズ(全三作・85〜87)にも、おニャン子メンバーが出演、主題歌・挿入歌を歌唱していたこともあり、全く知らないわけではなく、当時のヒット曲は普通に知っているから、世代人として純粋に楽しんでいる。



 始まったばかりの番組だが、今のところ裏番組対策や親子二世代作品を意識した作りが印象に残るといったところだ。
 果たして如何に10作目に繋ぐか、それとも今回で終了か、そのどちらかの鍵を握っている作品だけに、今後の展開を見守って行きたい。

(了)
(文中敬称略)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2008年冬号』(08年2月10日発行)〜『仮面特攻隊2009年準備号』(08年8月15日発行)所収「仮面ライダーキバ」序盤合評④より抜粋)


『假面特攻隊2009年準備号』「仮面ライダーキバ」関係記事の縮小コピー収録一覧
岐阜新聞 2008年2月2日(土) 吸血鬼がモチーフ メ〜テレ日曜朝「仮面ライダーキバ」 〜「牙」を意識したマスクや設定の説明。人間のエネルギーを吸収するバンパイア「ファンガイア」と人間の間に生まれた主人公を演じる瀬戸は、演技に定評がある若手俳優集団D−BOYSのひとり。主題歌は元「LUNA SEAルナシー)」のRYUICHI河村隆一)率いるTourbillion(トゥールビヨン)。RYUICHIは、子供の頃ライダーベルトを買ってもらったと発言。
・報知新聞 2008年1月16日(水) 「仮面ライダー」制作発表 楽器に大苦戦 瀬戸康史 〜15日、都内で制作発表。イケメン10人が勢ぞろい。瀬戸はギターも触ったことがない。瀬戸の父はライダー世代で喜んでくれた。


・各話視聴率:関東#26・中部#24・関西#24まで。各クール平均・全話平均視聴率



仮面ライダーキバ』平均視聴率:関東6.5%(#26まで)・中部8.8%(#24まで)・関西7.6%(#24まで)
 1クール目:関東7.1%・中部9.4%・関西7.8%
 2クール目:関東5.8%・中部8.1%・関西7.4%
 最高視聴率:関東7.7%(#8)・中部11.1%(#2)・関西8.9%(#6)
 最低視聴率:関東4.8%(#26)・中部7.3%(#22)・関西5.7%(#10)
 (平均視聴率EXCEL表計算:森川由浩)

※:比較対象としての前番組『電王』の各地区・各クール平均視聴率は、直下リンク先記事の末尾に掲載。

『仮面ライダー電王』 〜後半評 複数時間線・連結切替え!


[関連記事]

仮面ライダー龍騎』 〜前半合評2 小林靖子VS井上敏樹

 http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20021103/p1


[関連記事] 〜『仮面ライダーキバ』全記事一覧

仮面ライダーキバ』 〜序盤評 時に戦隊を凌駕するポケモンサンデーの脅威

  (当該記事)

『劇場版 仮面ライダー電王&キバ クライマックス刑事』

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080810/p1

『劇場版 仮面ライダーキバ 魔界城の王』 〜紅音也の真骨頂!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20081004/p1

*1:旧来のシリーズ製作局である毎日放送での放送枠が取得できなかった後、テレビ東京に向けて『仮面ライダーオーティス』なる新ライダーの企画を東映が提出した。しかし、『燃えろ!! ロボコン』(99)が予想以上にヒットしなかったので、その後枠に新作ライダーが入り込むことになった。
 一時は『ロボコン』の続編が検討されていただけに、もしかしたら今のライダーはテレビ東京に行っていたかも知れないということである。

*2:この作品の前身である『おはようスタジオ』(79〜86)終了後、11年の空白を経て同様のコンセプトで復活した番組で、以後11年も続く長寿番組。今やホビー・アイドル・アニメ・コミック・流行語などで平成の児童向け文化の最前線を行く番組。
 あの「おっは〜」の流行語はこの番組が発信元である。ジャニーズ・SMAP香取慎吾がこれを借用、西暦2000年度の流行語大賞を香取が受賞したが元ネタが明かされなかったので一部で物議を醸し、香取が『おはスタ』に生出演、司会で声優としても有名な山寺宏一から改めて使用許可を得たとか。

*3:ちなみにこのズバットのネーミングだが、本誌を読むような年季の入った特撮ファンには『快傑ズバット』(77)、子どもには『ポケモン』のキャラという回答が出るのが世代間による違いである。

*4:フジテレビの月曜〜金曜夕方5時台(1時間枠)でスタートした生放送バラエティ『夕やけニャンニャン』のメーンパーソナリティであるアイドルユニット。当時現役の女子高生で結成されているが、既に高校を卒業した河合その子国生さゆりもメンバーであった。
 今、「モーニング娘。」をプロデュースしているつんく♂も、元来おニャン子のファンで、そのオマージュとしてモー娘(もーむす)が誕生した。