ウルトラマンレオ1974 〜『ウルトラマンレオ』私論
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(ファミ劇で「ザ★ウルトラマンのすべて」(ゲスト・伊武雅刀!……とHP等で告知されてましたが、実際には声優・柴田秀勝氏でしたがイイ内容でした……)が、5/3(日)10:30、深夜5:30、5/5(火)20:00で放映終了!)
特番『ウルトラマンレオのすべて』 ゲスト・真夏竜
(文・久保達也)
(08年12月執筆)
ナビゲーター 鈴木繭菓(すずき まゆか)(俳優 『ウルトラマンコスモス』森本綾乃(もりもと あやの)隊員役)
ゲスト 真夏竜(まなつ りゅう)(俳優 『ウルトラマンレオ』主人公・おゝとりゲン役)
CS放送のファミリー劇場において、08年5月より『ウルトラマンレオ』(74年)の放送がスタートすることを記念して製作された特別番組である。
司会は『ウルトラマンコスモス』(01年)でTEAM EYES(チーム・アイズ)のモリモト・アヤノ隊員を演じていた鈴木繭菓(すずき・まゆか)。
彼女が動いている姿を見るのは個人的には『コスモス』の本放送以来だから6年ぶりのことである。こんな娘だったっけ? 思わず元「モーニング娘。」の安倍(あべ)なつみかと思ってしまった(笑)。
まずは真夏竜が主人公のおおとりゲンを演じることになったキッカケから話は始まった。
真夏は横浜にかつて存在したホテル内にあったクラブ・シェルルームの専属シンガーを務めていた。
彼の女性ファンのひとりが真船禎(まふね・ていorただし)監督――『レオ』第1話『セブンが死ぬ時! 東京は沈没する!』、第2話『大沈没! 日本列島最後の日』のほか、『帰ってきたウルトラマン』(71年)、『ウルトラマンA(エース)』(72年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070430/p1)、『ウルトラマンタロウ』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1)でも脚本・監督を務めた。ほかにも代表作としてTVドラマ版『日本沈没』(74年・TBS)、『新宿警察』(75年・フジテレビ)、『ザ・ハングマン』(80年・朝日放送)などが挙げられる――と知り合いであり、ある日一緒に来店したという。
真夏が彼らのテーブルにつき、「今は歌っているんですけど、本当は役者やりたいんです」と云ったところ、真船監督は「頑張りなさいね」などと励ましの言葉をかけたらしい。
それから3年ほどまったく音沙汰がなかったのだが、ある日突然監督から「明日TBSに来てくれ」と電話があったという。
真夏の実家は埼玉県にあったが、普段は東京を活動の拠点にしていたため、ほとんど留守がちであったにもかかわらず、この日はたまたま在宅していたらしい!
実はそれがオーディションだったわけだが、20人くらいの人間が集まった部屋に通され、わずか5分程度の面接をしたあと、「決まったよ」と云われたのだという。
あとで聞いた話では、当初のオーディションで3千人も集めたものの、選考の結果「該当者なし」となったため、真夏に白刃の矢が立ったということだったらしい。
『ウルトラマンレオ1974』(金田益美・編 ジェネオン エンタテインメント 08年9月26日発売・ASIN:B001BKLCVO)に付属していたDVD『ウルトラマンレオ TIME−SLIP FILE ―映像&音声コレクション―』において、モロボシ・ダン隊長役の森次晃嗣(もりつぐ・こうじ)が
「ヒーローっていうのは誰でもなれないのよ。選ばれた者なのよヒーローって」
と語っていたが、この事実はまさにそれを裏づけるものである。「人は誰でもウルトラマンになれる」わけではないのである!
真夏は高校生のころ、『ウルトラセブン』(67年)を観たことがあるらしく、森次晃嗣と初対面の際は、「わぁ〜、ダンじゃん、モロボシ・ダンじゃ〜ん」と感激したらしい(笑)。
(ジャンル作品を児童以外がたしなむ風潮がなかった昭和42〜3年当時の高校生が『ウルトラセブン』をマジマジと観ていたとはもちろん考えにくい。勤め人ではなくクラブで歌手のような水商売を若くしてやっていたような御仁だから、高校生にもなれば休日の夜には繁華街で悪い遊びを覚えていたころではないかとも思う(笑)。だからリップサービスも入っているのだろうが、ただ『セブン』は当時の人気番組、在宅時に時折なら視聴していたとしても決して不思議ではないだろう)
が、やはりダンから特訓を受けるシーンの撮影は相当大変だったようで、第6話『男だ! 燃えろ!』で特訓に使用した、先を尖らせた丸太は本物であり、ジープに追いかけられる特訓ではバンパーがふくらはぎに当たってしまったらしい。
それでも監督(この回は東条昭平)は「もっと近づけ〜っ!」と叫んでいたとか(笑)。
それでも撮影中にはケガは一度もなかったようで、真夏は「少林寺拳法をやっていたおかげ」と自負していたが(ケイブンシャの子供向け文庫サイズ百科『ウルトラマン大百科』(78年・ISBN:476691564X)の『うらばなし』だと「トランポリンの特訓中、着地に失敗して鼻をけがしたこともある」とあるが・笑)、実際オーディションでは「アクションできる? アクションできるの?」とばかり聞かれたようで、これが決め手となったのではないか、と語っていた。
「演技できるの?」とはまったく聞かれなかったとか(笑・とはいえ、真夏氏は演技力もあったと思うが)。
特撮の現場にはよく足を運んだそうであり、細かく、長い時間をかけてていねいに作業をするスタッフの真剣な目に感動し、「本編もきちっと芝居しないと」とおおいに刺激を受けたとのこと。
真夏は最も印象的な怪獣として、第50話『恐怖の円盤生物シリーズ! レオの命よ! キングの奇跡!』に登場した円盤生物・星人ブニョを「蟹江敬三(かにえ・けいぞう)さんの演技が見事」との理由で、第10話『かなしみのさすらい怪獣』に登場したさすらい怪獣ロンも「ストーリーの中で、やわらかいおおとりゲンを出すことができた」という理由で挙げていた。
第4クール『恐怖の円盤生物シリーズ!』は、「急にホームドラマになった」ために非常に難しかったと語っていたが、地球の平和よりも「身近な人をきちっと守ろうよ」と、作品のテーマが変化したことを感じたようである。
ダンとゲンの師弟関係から、ゲンとトオルを主軸にした物語となった点についても、「ダンの特訓を受けて成長したゲンが、今度はトオルをきちっとした大人に育てる」という、新しい使命を帯びたのだと、認識したとのこと。
共演した美山咲子役の春川ますみは「とっても優しかった」そうである。
最近のことらしいが、仕事で神戸に行った際、三十四・五歳くらいのファンに握手を求められ、涙を流して感激した様子だったので、話を聞いたところ、小学生のころにひどくいじめられ、自殺まで考えていたが、『レオ』を観て空手を始め、彼は現在大阪で道場を開いているらしい。
過酷な境遇で戦い続けたレオの姿は、やはり観る者に生きる力を与えてくれるのだ。実に感動的な話であった。
真夏は今の時代がオイルショックの当時と似ていると語る。「さあ、この日本、どこ行くんだろう?」という感じがするらしい。
だからこそ、筆者は今『レオ』を鑑賞するには絶好の時期だという気がしている。
「これからも、おおとりゲンの精神にのっとって、この真夏竜、役者として頑張っていきます!」
という、力強い氏の挨拶(あいさつ)で番組は幕となった。