假面特攻隊の一寸先は闇!読みにくいブログ(笑)

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ザ・ウルトラマン3話「草笛が夕日に流れる時…」 ~名作『子鹿物語』のアレンジのようでも変化球!

ファミリー劇場『ザ★ウルトラマン』放映開始記念「全話評」連動連載開始!)
『ザ・ウルトラマン』総論 ~総括・ザ☆ウルトラマンの時代
『ザ☆ウルトラマン』最終回 #50「ウルトラの星へ!! 完結編 平和への勝利」 ~40年目の『ザ☆ウル』総括!
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『ザ☆ウルトラマン』全話評 ~全記事見出し一覧

ザ・ウルトラマン』再評価・全話評! ~序文

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ザ・ウルトラマン』第1話「新しいヒーローの誕生!!」 ~今観ると傑作の1話だ!? 人物・設定紹介・怪獣バトルも絶妙!

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ザ・ウルトラマン』第2話「光るペンダントの秘密」 ~アニメならではの竜巻姿の怪獣!

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ザ・ウルトラマン』第3話「草笛が夕日に流れる時…」 ~名作児童文学『子鹿物語』のアレンジのようでも変化球!

分裂怪獣ワニゴドン登場

(作・星山博之 演出・四辻たかお 怪獣原案・鯨井実)
(視聴率:関東16.6% 中部13.4% 関西12.0%。
 以上、ビデオリサーチ。以下、ニールセン 関東15.6%)


(文・内山和正)
(1997年執筆)


 攻撃対象から離れたところから攻撃している自衛隊を責めて、自らバズーカ砲を手に取って接近戦で怪獣ワニゴドンを倒してみせたマルメ隊員だった。しかし、吹き飛んだ細胞の破片からわずか1日という短時間でワニゴドンが再生することが判明。責任を感じた彼はひとりで破片を捜しに行く。破片はワニゴドンには似ているが、キバやツノやトゲなどはない、あどけない愛玩動物のような可愛らしい小生物になっており、下校中のタカシ少年にひろわれて「ペロ」と名付けられて可愛がられていた……。
(以上、ストーリー)


 1~2話に続いて、科学警備隊のデブで3枚目でありながらも乱暴なところがあるマルメ隊員のキャラクターを押し出したストーリー。怪獣の死骸を調査しようとする科学警備隊の宇宙生物研究班・島田主任に、


 「俺のしたことに文句あるのか!?」


 と激昂して因縁をつけたりするなど、相変わらずの短気、非常識ぶりを発揮しながらも、今回は彼の善良なところも含めて描いている。


 ドラマのもうひとつの要素は少年の小動物への愛情である。小動物の正体は怪獣ではあったが……。


 しかし、この小動物が狂暴な巨大怪獣と化してしまうことを、視聴者の方では劇中でも説明されているので知っているのだ。よって、ストーリーは、マルメ隊員による少年への説得のドラマと化していく。いかにマルメ隊員でも子供が相手とあっては、強引に彼から小怪獣を引き離すというような横暴さはとれないとして描いているのだ。タカシ少年に警戒されたマルメ隊員は「動物が好きだ」というウソをついて接近した。急成長している旨を説明されてワニゴドンだと直感する! そう説明して回収しようとするが、タカシ少年は同意しない。そこで以下のようなセリフも発せさせて、彼のヒューマニティー・人間味も示されている。


マルメ「お兄ちゃんの友達も、むかし熊の子供をひろってペットにしてたんだ。だがその熊は大きくなったときに逃げ出し……。近所の人に大怪我をさせてしまったんだ!」


 しかし、昨晩は自宅に連れ帰り、翌朝から海岸の洞窟でペロを育てていたタカシ少年は、「ペロは人にケガなんかさせないよ!」と特に科学的な根拠もなく、ペロの「危険が感じられない可愛らしい印象」でそう切り返してくるのは、まぁそれはそうだろう。逆にそこですぐに割り切って、ペロを手渡してしまっては情のウスい子供だということにもなってしまって、視聴者に与える印象も悪くなってしまうのだし。


マルメ「動物が小さい時は、誰だってペットにしたがる。でもね、最後まで責任を持てないかぎり、そう簡単にペットになんかしちゃいけないんだ!」


 そう。野生の動物が人間と同じ情動や理性を持っているワケがない。愛さえあれば世界は救えるわけではないし、誠意や善意は人間にも通じないことがあるのだ。ましてや、成長して肉食動物としての本能が強くなってきたときには、人間の常識や道徳などは通用しないのだ。


 『子鹿物語』(アメリカ・1938年)という世界名作児童文学がある(『仔鹿物語』という邦題の場合もある)。第2次世界大戦の終結翌年の1946年に映画化もされており、日本でも1960~70年代にはTV放映もされている、こちらも名作だと誉れ高い洋画だ。
 自然豊かな田舎で暮らす気弱でやさしい少年が、偶然のなりゆきで母鹿を失った子鹿を飼いはじめた。しかし、家畜動物ではない野生動物の常で、次第に成長して農園の作物を食い荒らしはじめる。しかし、森に返しても戻ってきてしまう。生活を第一に考えるしかない、貧しくても謹(つつ)ましく生活している現実的な両親はこの鹿の殺害を考えるしかなくなる。何度かの悶着があった末に総合的に考えて、少年はこの鹿に自身で手をくださざるをえなくなるのだ。
 けれど、割り切れるものではなく悲嘆に暮れてしまう……。そして、そういった世の無常や、人々の善悪ではない錯綜するさまざまな利害・社会・公共が衝突する中での最大公約数的な決定や責任の取り方、それでも残る割り切れなさといったものも噛んで含めての、少年の大人への成長・達観・諦観を描いていくといったストーリーだ。近年の誰ひとりも傷つかずにハッピーエンドを迎えるような甘ったるい話が流行している昨今とは大違いなストーリーでもあった。


 さすがに、目の前でペロを強引に回収することは少年の心を傷つけると思ってだろう、優しいウソでマルメ隊員はペロの家を作ってあげようと材木店に連れていくかたちで、タカシ少年をその場から遠ざける。示し合わせていたのだろうか、入れ替わりに科学警備隊の隊員たちがその場に入ってくる。しかし……



 けれど、このエピソードが異彩を放つのは、「真実を知った少年が涙を浮かべながら、責任を取って狂暴化した怪獣の弱点を教える」といった、予想ができてしまう定番のストーリー展開ではなかったことだ。少年はペロが巨大化したワニゴドンを見ても、それがペロの成れの果てだとは思わなかったのだ!


マルメ「よく見るんだ! あれは君のペットのペロだ!!」
タカシ「違うよ! ペロは怪獣なんかじゃないよ!!」
マルメ「自分に都合のいいときだけ可愛がり、あとは知らないっていうんじゃ、君にペットを飼う資格なんかないぞ!!」


 マルメ隊員がタカシ少年に優しさを示しながらも、怪獣が破壊行為を行なっている厳しい「現実」も見るように求めて責任を問うているのだ。


 ここまでであれば、タカシ少年が目の前の巨大怪獣であるワニゴドンがペロの成れの果てだとウスウス気付いても、その現実を認めたくないばかりに否認をしてしまっているのだとも受け取れるだろう。しかし、この両者の話は噛み合ってはいなかったのだ。少年は最後の寸前まで目の前のワニゴドンがペロだとは気付いていなかったのだ!


 そして、この巨大怪獣に自分の「草笛」の音が通じるわけがないと、その証拠としての「草笛」を吹き出した! ペロの無罪を証明するために!


 しかし、反応を示してしまったワニゴドン!


 ショックを受けてしまうタカシ少年!


 海水を怖がることでワニゴドンの弱点は海水であることがすでに判明していた。しかも、マルメ隊員にこの弱点を大声で聞かされていたウルトラマンは、ペロとは別にこの直前に出現していたワニゴドン2体をすでに海へ落として溺死させていたのだ!


 ウルトラマンはペロが巨大化したワニゴドンも、少年の草笛で隙を見せたところで、その事情も知らないので、なんと海へと投げ飛ばす!


 そして、必殺のプラニウム光線を放って爆砕したのだ!!


 なんという意地悪なストーリー展開!


 「やっぱりペロだったんだ……」と号泣しながら悲嘆にくれてしまうタカシ少年。名声優・小原乃梨子(おばら・のりこ)の名演がまた泣かせるのだ。


 夕日に向かってタカシ少年は草笛を鎮魂歌であるかのように奏(かな)で出す。


 マルメ隊員としても掛けてあげる言葉がない。その言葉が少年の想いと噛み合っているわけではないのだが、「君は責任を果たしたんだ……」という慰めの言葉を、少年の思いとはウラハラに、その行為の一片にはあったであろう社会的な正当性を語ってあげるくらいしかないのだ。アンチテーゼ編的なニガ味も残る結末であった……



 作品の基本フォーマットを固めるべきシリーズ序盤の第3話では、まだこういったアンチテーゼ編的な風味を出すストーリーを提示するのは早すぎるように思うところもある。そのことをさておけば、この少年から見ればウルトラマンが悪役・非情な存在に見えかねない複合的な視点の作劇は良だ。


 その泣かせるストーリー自体には問題がないとは思うものの、個人的には少々ギクシャクした感を残すのは、ストーリーの構成に気に掛かるところがあるからだろう。


 この手の子供番組に対して野暮(やぼ)な指摘だろうが、いくら「愛に時間は関係ない」とはいっても、わずか一昼夜では、少年とペロとの間にここまでの信頼関係は育たず、少年の吹く「草笛」の音も覚えられない可能性も想起されてくるからだ。


 マルメ隊員がウソをついてペロから引き離そうとしていたことを知った少年が「お兄ちゃん、警備隊の人だったんだね!」と責めるところも、「最初から科学警備隊の制服を着てたじゃないか?」とちょっと興ざめしてしまうところもある。シナリオでは私服捜査のつもりだったのだが、アニメ制作段階で誤って制服姿になってしまったのだろうか? 科学警備隊の設立から日が浅くて、少年が科学警備隊の制服の形を知らなかったのだろうか?



 ワニゴドンは「四つ足形態の絵」と「二足歩行の絵」が既存の書籍では存在しているが、実際には二足歩行であった。また、体色は緑に赤い斑点が入っているものがポピュラーであるが、実際には黒っぽい灰色で(少しは緑も混ざっているかもしれないが)、なかなか渋くて、UP(アップ)になると顔も怖かった。


※:製作No.5『海に流れた草笛』


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊98年号』(97年12月28日発行)『ザ☆ウルトラマン』特集・合評③より分載抜粋)



編集者付記:


 スレたマニア諸氏であれば、おそらくご存じのとおりで、「草笛」と「少年」と「怪獣」のモチーフは、怪獣映画の神様のイタズラか、人間の想像力のバリエーションなどしょせんはたかが知れたものなのか、実は先行のジャンル作品にも存在している。70年代初頭の第2次怪獣ブームの旗頭であった『スペクトルマン』(71年・ピープロ・フジテレビ・ASIN:B000OPOB4CASIN:B00005Y0Y5)#40「草笛を吹く怪獣!!」~#41「ガス怪獣 暁に死す!!」(ガス怪獣メタノドン・溶岩怪獣マグマザウルス登場)の前後編(脚本・伊藤恒久 監督・樋口弘美 特撮監督 矢島信男)がそれだ。こちらも名作であった。もちろん、王道娯楽活劇編としての名作ではなく、泣かせる話としての名作編の意味なのだが。


 ちなみに、本作『ザ☆ウル』#3を担当された脚本家・星山博之(ほしやま・ひろゆき)は、同年1979年には並行して『機動戦士ガンダム』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990801/p1)のメインライターも務めている、漫画家・手塚治虫(てづか・おさむ)大先生のアニメ製作会社虫プロ出身の大ベテランでもあった。TVアニメ『ムーミン』(69年)で脚本家デビューを果たして、1970〜90年代の膨大なTVアニメ(主に合体ロボットアニメや、『ゲゲゲの鬼太郎』第3シリーズ(85年)、80〜90年代の赤塚不二夫・漫画のリメイクTVアニメ)で活躍されてきた御仁だ。


 家庭用ホームビデオも1979年当時はまださほどに普及しておらず、日本の週休2日制も未(いま)だしだった1971年当時の土曜夜7時に放映されていた『スペクトルマン』の当該話数を、虫プロの「文芸担当」職でご多忙だった星山センセイが視聴していた可能性は低いと思う。しかし、仮に同話を視聴されていて、それが脳裏に残っておりインスパイアされたものとしての話作りだったのだとしても、そこに何らかのアレンジ、あるいは逆に洗練・純化があるのであれば、編集者個人はそれはそれで構わないのではないかとも考えている。


 とはいえ、おそらく両作ともに、脚本家の世代的にも『子鹿物語』から着想されたのだと憶測しているが。そもそも本話の題材自体が、脚本家ご当人のアイデアではなく、プロデューサーからの要望・注文であったりして……(笑)。


 『スペクトルマン』と『ザ☆ウル』の当該エピソードについての優劣は、マニア諸氏が個人の価値観で付ければよいだろう。ちなみに、編集者はどちらの作品も好きだし、要素要素の相違の分析はともかく、優劣はつけたくない。しかし、濃ゆい好事家・研究家の方々には、ぜひとも両作の比較鑑賞もおすすめしたいところだ。


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