(ファミリー劇場『ザ★ウルトラマン』放映「全話評」連動連載!)
#29『悪魔のUFO(ユーフォー)大襲来』
侵略星人ジャダン登場
(作・若槻文三 演出・又乃道弘 絵コンテ・白土武 怪獣原案・鯨井実)
(サブタイトル表記の他、双頭怪獣ジャゴン登場)
(視聴率:関東9.6% 中部13.7% 関西10.1%)
(文・内山和正)
(1997年執筆)
ジャダンのUFO群が襲来。
撃墜されたUFOに近づく地球防衛軍兵士たちだが、中には誰もおらず引き上げることに。
煙状になった二人のジャダンはそれを追い兵士に乗り移り、地球防衛軍・極東ゾーン基地に入りこんだ。
コンピューターを破壊すると、再び煙となって逃亡し、追いかけたヒカリ隊員の前に怪獣ジャゴンに変身した姿を見せた。
ヒカリもウルトラマンに変身するが、敵はそれを待っていた。
(以上、ストーリー)
地球へ迫る120機以上のUFO群に「宇宙パトロール隊」が攻撃を加え、彼らが敗れたあと「宇宙防衛戦闘隊」が出撃、さらに地球では「ジェット戦闘機隊」が迎撃し、我らが地球防衛軍・極東ゾーンの「科学警備隊」の戦闘機も発進する。
この数段構えの防衛描写が、26話「地球最大の危機!!」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20091025/p1)ラストでのアキヤマ前キャップ(隊長)の地球防衛軍怪獣作戦担当に栄転での転勤や、前回の28話「新キャップが来た!!」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20091108/p1)でゴンドウ新キャップの口にした
「怪獣との戦いは命がけだ」
を説得づける防衛軍の武装強化を感じさせる。
対するジャダンの、煙になり、二人が合体して怪獣にもなるという能力も驚異で、前半は侵略者ものとして楽しませもする。
怪獣ジャゴン登場後、それまでの行動はウルトラマンをおびきだすためだったと判る。
怪獣ジャゴンが西(大阪)、ジャダンUFO母艦が東の都市(東京)を破壊し、ウルトラマンにその映像を見せて心を揺さぶり、ウルトラマンに二カ所をテレポート(瞬間移動)し続けるようにせしめ、エネルギーを急消費させて倒そうとする……
という作戦で、本放送時は面白かったように記憶するが、今考えるとウルトラマンがその気にならなければ効果がないもので確実性は薄いかもしれない。
またウルトラマンの活動時間は四分間にすぎず(特撮のウルトラマンの三分間よりは長いとはいえ)、何度もテレポーテーションしている暇はないだろう。
ジャダンがウルトラマンを倒すのは、そのこと自体が目的で愉快犯的に見えたのだが、倒したら(実際には倒したわけではないが)地球征服のためにウルトラマンが邪魔だったのだと判明。
個人的には却(かえ)って卑小に感じた。
ウルトラの戦士・エレクとロトのふたりが救援に現れて、ウルトラマンが三人になった途端怯えて逃げ出すのもなさけない。
濃紺色で双頭の翼竜型であり前足が巨大なカギ爪状になっているジャゴンはこの番組の怪獣の中では個人的には魅力的な怪獣の一体であるだけに、直接倒されず母艦に逃げ帰って収容されたあと母艦ごと破壊されるという終わり方だったのが個人的には残念
(サブタイトルの登場怪獣表示が怪獣ジャゴンでなく星人ジャダンなのはそのせいだろうか?)。
怪獣らしいウルトラマンとの激戦の末の最期(さいご)を遂げさせてやりたかった。
この回の冒頭でエレクとロトは、ウルトラの星・U40(ユーフォーティ)の大賢者から、我らがウルトラマンジョーニアスの胸中央にもあるカラータイマーにあたる五芒星(★)型の“スターシンボル”をもらい、それを胸に装着して宇宙のどこへでも飛行して行くことが可能になった。
ラストは彼らウルトラマンたちの活躍で終わるが、前半が防衛軍ものであり、後半も「ウルトラマンがいないと何もできないのか!?」と隊員たちにハッパをかけるゴンドウ新キャップの姿があるだけに、ウルトラマンたちだけで終わられては多少余韻に欠けるようにも思う。
◎ウルトラマンがテレポーテーション(瞬間移動)の超能力を発揮すると、エネルギーを急激に消耗するという設定は、初代『ウルトラマン』(66年)16話「科特隊宇宙へ」バルタン星人二代目登場編が初出であり、ファンの間ではそれなりに有名な設定。
当時は前年の78年から始まる第三次怪獣ブームの真っ最中でもあり、マニア向け書籍・子供向け書籍双方でもこの設定は紹介され続けており、また放映当時の79年夏季興行の再編集映画『ウルトラマン 怪獣大決戦』でもこの16話がその一編として公開されたばかりであったから、それを見越しての本話の設定でもあったのだろう。
◎エネルギーを消耗した我らがウルトラマンジョーニアスは、14話「悪魔の星が来た!!」(作・梓沢四郎 演出・安濃高志 絵コンテ・八尋旭 http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090803/p1)ラスト同様、エネルギー源たる太陽光線が無尽蔵の宇宙でエネルギーを補充する。
(過去のシリーズでは、『ウルトラセブン』(67年)25話「零下140度の対決」、35話「月世界の戦慄」、40話「セブン暗殺計画 後編)」、『帰ってきたウルトラマン』18話「ウルトラセブン参上!」、『ウルトラマンエース』(72年)8話「太陽の命 エースの命」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060624/p1)に、太陽や光エネルギーを吸収してウルトラ戦士が体力を回復した前例がある)
……そこに出現した太陽表面のふたつの黒点が、実はウルトラの戦士・エレクとロトであったという描写もカッコいい。
◎ジャダン星人いわく西の都市は大阪。広大な大阪城とその内堀をバックにパノラミックなバトルが繰り広げられる。今回は都市破壊・船舶破壊の連発が凄い。特撮の場合、予算的にもセットの準備的にも連続TVシリーズの通常編の1本としては不可能な作りの描写だろう。
27話「怪獣島(じま)浮上!!」((作・若槻文三 演出・辻勝之 絵コンテ・坂田透 http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20091102/p1)とは異なり、複数のウルトラ戦士の合体光線ではなく、パンチやキックの連発により円盤を粉砕していくのも豪快。
※:製作No.30『悪魔のUFO大襲来』(放映分と同じサブタイトル)