『侍戦隊シンケンジャー』 〜序盤賛否合評
『侍戦隊シンケンジャー』 〜前半賛否合評2
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『スーパー戦隊』映画評 〜見出し詳細一覧
映画『侍戦隊シンケンジャーVSゴーオンジャー 銀幕BANG!!』(10年)公開記念!
『侍戦隊シンケンジャー』(09年)完結!
『天装戦隊ゴセイジャー』(10年)放映開始記念!
……とカコつけて(汗)、
・『侍戦隊シンケンジャー』 〜前半賛否合評1
・『侍戦隊シンケンジャー』 〜前半賛否合評2 #15〜19評
・『仮面ライダーディケイド』#24〜25「シンケンジャーの世界」前後編評
・『侍戦隊シンケンジャー』 〜後半賛否合評
を4週連続、毎週日曜UP予定!(……日曜深夜の月曜日付かも・汗)
侍戦隊シンケンジャー 〜前半評1
(文・J.SATAKE)
(09年7月執筆)
侍戦隊、夏の陣!
物語は中盤戦に入った。虎、舵木(かじき)、兜(かぶと)と新たな折神(おりがみ)で力をつける侍戦隊(さむらいせんたい)。
三途の川を往来し、志葉家当主の丈瑠(たける)ことシンケンレッドと刃(やいば)を交えることに執念を燃やすライバル・腑破十臓――ふわじゅうぞう。『仮面ライダー555(ファイズ)』(03・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20031102/p1)のレギュラー、怪人スネークオルフェノク・海堂 直也役の飄々とした印象から一転、髭をたくわえやさぐれた剣豪を唐橋 充(からはしみつる)氏が演じる!――や、
数々の敵の怪人アヤカシとの闘いで心技体を試され、結束を高めてきた五人の侍。
彼らを待ち受けていたのは、
六人目の侍!!
(まあイレギュラーなシンケンブラウン! はその気持ちだけいただくことにして……。第十四幕『異国侍』参照)
そして、異世界からの乱入者(仮面ライダー!)だった!!
屋台(!!)の寿司職人である梅盛源太(うめもりげんた)。
彼こそ「光」が司る電子モヂカラでシンケンゴールドに変身する六人目の侍!
幼なじみであった丈瑠にもらった秘伝ディスクを手掛かりに、変身アイテム・スシチェンジャーや武器・サカナマルを作り出し、侍戦隊に参加してきたのだ。
しかしこれ程のものを独学で作ってしまうというのは、正直かなりのこじつけ、苦しい!
(後々彼の「モヂカラでプログラムを組む」という新しい発想が新アイテムを生み出す重要な鍵となるのだが)
源太の意気込みに反して、きちんと訓練を受けていない者をシンケンジャーに加えることはできない、と爺こと彦馬(ひこま)はつっぱねる。
そして友を闘いに巻き込むことの重大さを知っている丈瑠も、申し出を断るのだった。
人に頼ることを、弱くなったと考える丈瑠。しかし一人ではできないことを成し遂げるため、信頼する者に任せることや協力することもあるのだ。
子供のころ、丈瑠が殿様になったら家来にしてくれるという約束(侍の使命の重さも知らず、笑い遊ぶ二人の姿が微笑(ほほえ)ましい……)を忘れず、一人剣の訓練を続けてきた源太。
その熱い思いを丈瑠にぶつける!!
源太「どんどん巻き込んでくれよ!」
そんな彼の心意気に打たれたシンケンピンク茉子(まこ)たち四人の説得によって、丈瑠も六人目のシンケンジャーを認めることとなったのだ。
スシディスクを折り畳み、スシチェンジャーにセットすると、
「一貫献上!」
その色や形から握り寿司に見えるというのは、シンケンレッドの大型剣・烈火大斬刀(れっかだいざんとう)以上の衝撃!?
日本独特の食文化である「寿司」を取り入れるとは……。回転寿司の普及で子供たちにもウケが良いという読みがあったのか……?
そしてモヂカラを「書く=筆」から「打つ=ケータイのキー」に「変換」させた電子モヂカラも、現代の潮流からすれば当然なのかもしれない。
シンケンゴールドの使うサカナマルは居合い抜きの刀だ。
魚の秋刀魚(さんま)の漢字からバンダイのデザイナーもとい(笑)源太が発想したとおぼしき魚型の短剣で、襲い来る敵戦闘員・ナナシ連中をバッタバッタと斬りまくる!
その目にも止まらぬ素早いアクションを残像で表す見事な映像!
源太とともに新登場した折神が、烏賊(いか)と海老(えび)。
これまでは敵役が多かった海棲生物だが、なかなかの活躍を見せる!
烏賊折神は墨を吐いて敵の姿を捉えたり、冷凍攻撃など特徴を上手く利用! 巨大ロボ・シンケンオーに侍武装すれば、槍となって連続突きを繰り出す!
これまでの折神と比べ、かなりの大きさの海老折神は単体で巨大ロボ・ダイカイオーに侍変形!
内蔵のディスクを回転させ、東西南北四つの顔と武器を使い分ける!!
「ヘイ! お待ち!!」
「キタ、キタ、キタ!!」
源太と同じく威勢の良い声とともに敵に立ち向かう。さらに烏賊折神と合体してイカダイカイオーとなり、シンケンオーにも劣らないパワーを見せつける!
勝利を収めた勝ちどきも、源太の音頭で一本締め! 威勢良く派手に決めるのが彼の信条だ!
これまでの作品の雰囲気からすれば、寿司屋の源太は随分ブッ飛んだキャラと設定だが、それすらも取り込んで世界を広げようという意欲は評価したい。
丈瑠を「タケちゃん」と呼び、べらんめえ口調の源太の加入で侍戦隊に新しい風が吹いた。
少々堅い印象の『シンケンジャー』が、これで子供たちにもっと浸透してくれれば良いのだが……。
(編:分割掲載・再来週UP予定の『仮面ライダーディケイド』#24〜25「シンケンジャーの世界」前後編評につづく!・汗)
侍戦隊シンケンジャー 〜前半評2
(文・いちせたか)
(09年6月執筆)
『ウルトラマン』と『仮面ライダー』の両シリーズがそれぞれのやり方で過去から現在へと繋がる歴史を総括しようとする中、あくまで我が道を行くスーパー戦隊シリーズ
(『戦隊』のそうした挑戦的な姿勢はある意味もうちょっと評価されていいと以前から考えているのだが)。
その33作目となる『侍戦隊シンケンジャー』(09年)は、侍をモチーフに昨今ブームの「漢字」を取り込んだ和風のテイストでまとめられた作品だ。
戦隊シリーズで『和』のイメージを取入れたのはもちろん今回が初めてではなく、既に2度、第18作『忍者戦隊カクレンジャー』(94年)と第26作『忍風(にんぷう)戦隊ハリケンジャー』(02年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20021112/p1)で試みられている。
これらはいずれも忍者をモチーフとしているが、時代劇のようなノリは後になるほどエスカレートしているのが面白い。
ただ『カクレンジャー』にしろ『ハリケンジャー』にしろ、忍者をモチーフにしつつも主人公の私服や職業、あるいは敵のデザインなどにはあくまで現代性や外国から見た「ジャパニーズ・ニンジャ」スタイルが強く押し出されていて、それはそれで功を奏した部分も多々あるものの、一方で本来の和のテイストが幾分失われていた側面も否定できない
(『パワーレンジャー』シリーズ(93年〜・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080518/p1)との兼ね合いもあるし、それが悪いわけではないが)。
その意味では『シンケンジャー』は、現代性も当然盛り込みつつ、なお正面から和風のモチーフに挑戦した初めての作品と言えそうな気もするのだ。
今回の設定でまず注目されたのはシンケンレッド=志葉丈瑠(しば・たける)が殿様の十八代目の子孫=現当主であり残りの4人は家臣の子孫である点だろう。
過去の戦隊でも各メンバーの肩書や出自に明確に差をつけたのは、レッドことゲキがプリンスでピンクことメイがプリンセス、他の男3人をナイトとした第16作『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(92年)、ホワイトこと鶴姫が主家の子孫で男4人がそれに仕える忍者の子孫だった『カクレンジャー』、もともと所属部隊でレッドとそれ以外に階級差があった第19作『超力(ちょうりき)戦隊オーレンジャー』(95年)くらい。
強(し)いて加えれば、基本的に長男がリーダーを担う第14作『地球戦隊ファイブマン』(90年)・第23作『救急戦隊ゴーゴーファイブ』(99年)・第29作『魔法戦隊マジレンジャー』(05年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060313/p1)の兄弟戦隊 、
他のメンバーから見てレッドのみが異質な存在だった第15作『鳥人戦隊ジェットマン』(91年)や第24作『未来戦隊タイムレンジャー』(00年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20001102/p1)も近い例だろうか。
こうして見るとシンケンジャー自体は身分制度をもとにメンバー集めが行われてはいるが、使命・リーダーに対する四者四様の態度やリーダー自身のストイックさなどを見ると、前者のような作品よりもむしろ『ジェットマン』あたりに近い構造を持っているような気もする。
もっともメンバー集めに対するレッドの態度は正反対だが。
ただしこの設定がどう転がっていくかは一種の賭けでもある。
第一幕「伊達姿五侍(だてすがたごさむらい)」で意図的に丈瑠をクールに描いたことや、自分の夢を途中で棚上げしてきたというシンケンブルー=流ノ介やピンク=茉子(まこ)、そもそもそうした時代錯誤な話が気に入らずやる気のないグリーン=千明(ちあき)など、それぞれの言い分にも一理あるとはいえ、個人的には非常に感情移入しづらい部分もあった。
そんな中で唯一の救いは正統後継者の姉が病弱なため代わりに来たというイエロー=ことはの存在で、実際冷淡に聞こえた丈瑠の言葉の意味をいち早く理解した彼女の決意と、それを彼女の強さと認める丈瑠の姿はパイロット編のクライマックスとして上手く機能していたと思う。
丈瑠があまり多くを語らず真意が掴みにくい分、周りの4人と爺である彦馬(ひこま)の描写に時間が割かれ、それはそれで面白い出だしとなっていたように思う
(丈瑠の4人に対する距離感の描写が回によってまちまち、というツメの甘さはあるが)。
戦隊のサポーターである黒子にスポットが当たる話が2回もあるのも凄い
(第七幕「舵木一本釣(かじきいっぽんつり)」、第十六幕「黒子力(くろこのちから)」)。
『ハリケンジャー』でも黒子ならぬ黒子ロボットが登場したが、なんかああいうなんでもやる黒子が町を闊歩したり、陣中幕の後ろで変身前の5人を袴(はかま)に着替えさせてるのとか見ると、いい年のマニアとしては『うる星やつら(うるせいやつら)』(81年)の黒子とか、『タイムボカンシリーズ ヤットデタマン』(81年)の変身シーンとか思い出してしまった。
設定に身分差を盛り込んだ上に劇中の描写の仕方もあり、一部で批判もあったであろう開始当初の丈瑠のキャラにはそれでもあまり個人的に反感を持たなかったのは、筆者自身が戦隊でここしばらく続いた「直情型・猪突猛進型」のレッドにいささか食傷気味だったせいもある。
第30作『轟轟戦隊ボウケンジャー』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070108/p1)を除いて長い間そんなレッドばかりだったので、どちらかと言えば昔のレッド像に近い丈瑠のキャラがちょっと嬉しかったのだ。
ついでに言ってしまうと揃いのチームジャケットとエンディングのダンスという長年のパターンからの解放も、歓迎したい要素だ
(余談だが『ボウケンジャー』も近年では唯一エンディングで踊らなかった作品である)。
別にチームジャケットやダンスが悪いわけではないが毎年やらなくてもいいと思う。
とは言えそんなパターン脱却に喜びつつも不満を感じた部分もある。
殺陣(たて)に関しては侍戦隊としての剣技やモヂカラが十二分に生かされているかと言うとどちらもまだ中途半端だし、やっぱり烈火大斬刀大筒(れっかだいざんとう・おおづつ)モードで4人が左右に控えてるだけなのはどうかなあと思う。
あとオープニングのソロ紹介カットが無くなったのは寂しい。かつて『タイムレンジャー』のオープニングの「目と鼻のアップに役名なし」の演出も斬新すぎてどうかと思ったが、こういうところはベタにやってもいいと思う。
まあオープニングに関しては6人目も登場して変わる可能性もあるので期待したい。
さてその新戦士。今更言うのも気が引けるが実は筆者は戦隊における6人目の戦士というやつが基本的にあまり好きではない。
理由は簡単、どうもある時期以降の戦隊は1年の中でのイベント編の割合が多すぎて、ただでさえ多い5人のメンバーや初期設定の数々をルーティンな通常編の中で十分に描く、ということが満足に出来ていないように思えるからだ。
あと……やっぱ今回の「寿司」はなあ…和風ならなんでもいいってものでもないなあ、と。
武家の出ではないのに居合いを独学で身につけたというのはいい設定だし、職業が寿司屋でもかまわないのだけれど、変身アイテムのスシチェンジャーってのがどうも納得できなかったり。
戦隊のある種のなんでもありな世界感は昔も今も大好きなのだけれど、変身アイテムがカッコイイ、というような部分だけは守って欲しかったりする。
仮面ライダーは言うまでもないが、同じ日曜朝の仲間である東映&バンダイの『プリキュア』シリーズ(04年〜)でも、ここまでは外さない。
『セーラームーン』シリーズ(92年〜)、『おジャ魔女どれみ』シリーズ(99年〜)と、何年かに一度東映が発掘する鉱脈があるが、ドジな少女が主役というお約束は継承しつつ、やはり変身アイテムや必殺武器は子供の憧れとしてのラインは守っているように思う
(ホントはいくら時代とは言えなんでもかんでもケータイというのもちょっとひっかかるがまあそれは今回は置いておく)。
まあそれで「一貫献上!」やスシチェンジャーが子供に大人気なら別に余計なことを言う必要もないのだが、シンケンゴールドについてはまだまだこれから。もう少し観た上で判断したい。
作品は3分の1を消化し折り返し点に近づいている。
前述のように侍戦隊の魅力が十二分に描けているかというとまだまだ。
はたして今後それを魅力的に打ち出していけるのか、それとも過去のいくつかの作品のようにイベント編の多さに埋もれてしまうのか……?
そんなことにも目を向けつつこれからを観ていきたい。
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