(ファミリー劇場『ウルトラマンエイティ』放映開始記念「全話評」連動連載開始!)
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『ウルトラマン80』第7話「東京サイレント作戦」 ~音を消せ! 救急車・電車は動かせ! 「怪獣娘」で活躍するノイズラーの原典!
騒音怪獣ノイズラー登場
(作・田口成光 監督・深沢清澄 特撮監督・高野宏一 放映日・80年5月14日)
(視聴率:関東14.2% 中部14.2% 関西14.9%)
『ウルトラマン80』第7話「東京サイレント作戦」 ~合評1
(文・内山和正)
(1999年執筆)
防衛組織・UGMがらみの話ではじまり、教師ドラマを並行させながら進み、予想どおり両者が結合する。一見、UGMの怪獣対策のほうが主なのだが、教師ドラマとしても印象深い。
生徒たちが自主的に行なっている、生徒のひとりの自宅でのバンド練習。それへの苦情を受けて、駆けつける校長と教頭。そこには陶酔してエレキギターを演奏している、本作の主人公である矢的猛(やまと・たけし)先生の姿が……。
このシーンの矢的のバカっぽい表情が愉快だ。近所のひとびとには事前に許可をとって練習を始めたという。しかし、それでも苦情をよこしてくる身勝手さ。とはいえ、その立場に立てば我慢もできなくなるのだろう。
その逆に、UGM側は「音」を止めつづけることが現代文明において、いかに困難であるかの現実に悩んでいる。救急車のサイレン許可の要請。新宿駅での群衆による電車を動かせとのクレーム。
いわば、「音を出したい」という意向、「音を消したい」という意向、双方向からの「音」の苦慮が描かれているのだ。そういった騒音問題の難しさをからめつつ、新しい練習場所を探している矢的の教師としての姿勢が印象に残る。
第2期ウルトラシリーズのサブライターから始まり、『ウルトラマンタロウ』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1)や『ウルトラマンレオ』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)ではメインライターを務めた田口成光(たぐち・しげみつ)氏が本話の脚本を担当している。本作にはゲスト参加の立場で、『ウルトラマン』で教師ものをやることには実は内心では反対だったとマニア向け書籍でも語っておられる。
しかし、「生徒とともにあろう」とする矢的の姿は、頭の硬い態度を示してしまった前回の第6話「星から来た少年」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100606/p1)での矢的像とは違い、むしろ本話でこそ理想の教師像を示しているようだ。
それでいて哀れなラストなど、本作『ウルトマン80』の特色でもある、矢的のコミカルなみっともなさ描写も忘れてはいない。
騒音怪獣ノイズラーはまたまた第2話「先生の秘密」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100507/p1)の羽根怪獣ギコギラー、第4話「大空より愛をこめて」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100523/p1)のだたっ子怪獣ザンドリアスにつづいて、翼竜タイプの怪獣となっている。
両足や両耳も両翼のようになっているあたりが格好いい独自色を出している。『80』怪獣のなかでもハードな外観の怪獣であるだけに、本話の後半ではお笑い描写に使われているのがマッチしておらず、本話の欠点に思えた。
『ウルトラマン80』第7話「東京サイレント作戦」 ~合評2
(文・黒鮫建武隊)
(1999年執筆)
第二期ウルトラの担い手の一人、田口成光氏が執筆した唯一のエピソード。音に反応するという怪獣ノイズラーの特性は、田口脚本回ではないが『ウルトラマンエース』(72年)36話「この超獣10,000ホーン?」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070109/p1)の騒音超獣サウンドギラーなど確かに第二期ウルトラ怪獣を彷彿とさせる。
猛が生徒たちと共にバンドを組み、彼らに欠ける集中力と持続力を養おうとする話だが、はっきり言ってそのドラマは付け足し。バンドの音に怪獣が引き付けられる展開が後半にあるおかげで、怪獣の話との分離現象は一応回避しているものの、学校側ドラマの印象は、他に類を見ないほど薄い。事件解決後の生徒たちの描写(バンドをやめて勉強熱心になった)も唐突で、猛自身が首をかしげるほど説得力が無かった。
田口氏は講談社発行「ウルトラマン大全集II」(87年・ISBN:4061784056)でのインタビューで「先生という設定だけはあまり感心しませんでしたね」と語っておられるが、その辺が作品に反映してしまったのだろうか。
ただ、この7話をはじめ『80』教師編後半では、
・悩める生徒
・その指導に尽力する猛
・生徒のマイナスの感情に引かれるように出現する怪獣
という6話「星から来た少年」までのパターンがあまり見られなくなる点にも、注目しておきたい。今回のノイズラーにしても、マイナスエネルギー云々(うんぬん)という『80』怪獣特有の陰性のイメージが、まるで感じられない。
そう、今回の話はバンドだの何だのよりも、怪獣ノイズラーの大暴れと、それに対抗するUGMの「東京エリア・サイレント作戦」こそ主たる見せ場なのだ。新幹線をノイズラーが襲う場面は、特撮も本編(新幹線車内のエキストラを多数使用したパニック描写)も共に力が入った出来映えで、オーソドックスな怪獣ものの楽しみが味わえる。
サイレント作戦進行中の模様は、銃器をかついだ多数の自衛隊の隊員たちやトラックが怪獣の周辺に配備されるなど細かい映像の積み重ねで見せ、臨場感があると共に、この作戦がいかに大規模なものか、スンナリと伝わってくる。堅実な演出のなせる技だ。
音を出さずに怪獣に接近する手段として、気球を選ぶあたりも気が利いている(気球に乗って射撃の任に当たるのがタジマ隊員というのも、「射撃の名手」という彼の設定に忠実だ)。
最後に「事件は解決したが、又、東京に騒音が戻ってきた」などという教訓めいた蛇足を付けなかった点も、評価したい。
怪獣の大暴れと、奴の特性の描写。その特性を利用した人間側の作戦。最後に怪獣が助けられることも含め、『ウルトラマンタロウ』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1)に近い雰囲気を持つエピソードといえるだろう。
この話自体は、比較的アラが目につくことと、何より学校側のドラマが中途半端なこともあり、傑作だ佳作だなどとは言い難いが、本作13話「必殺! フォーメーション・ヤマト」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100725/p1)以降のUGM編でこういう怪獣の特性描写と作戦中心のエピソードをもっと見たかった気がする。
(重箱のスミ)
・予告編で「超特急新幹線」というナレーションがあるが、「超特急」という表現は、この当時でも既に死語でした。
・猛が隊員服姿で変身した、初めての回。
・カラータイマーの音が苦手なのに、その音を発するエイティにくっついて行ってしまうノイズラーって一体?
後日編註
本話に登場した新幹線のミニチュアは、東映の名作大作映画『新幹線大爆破』(75年)に登場したミニチュアのレンタルだったそうだ。
本作『ウルトラマン80』#4に登場した「だだっ子怪獣ザンドリアス」に続いて、本話に登場した「騒音怪獣ノイズラー」も、ナンと! 2010年代初頭からスタートした、ウルトラ怪獣を美少女アニメ調に擬人化する『ウルトラ怪獣擬人化計画』で人気沸騰! そのWeb5分アニメ版シリーズである『怪獣娘(かいじゅうガールズ) ~ウルトラ怪獣擬人化計画~』(16・17年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210919/p1)にも登場を果たした。
2017年1月にレコード会社・ポニーキャニオン主導で着ぐるみを新造する「スペシャル企画 ザンドリアスをもう一度地球へ呼ぼう!」なる企画でのクラウドファンディングに続いて、ノイズラーについても2017年12月12日から「【ノイズラー・カムバック作戦】ノイズラーをもう一度地球に呼ぼう!クラウドファンディング企画」(『「怪獣娘」×「ウルトラマン80」クラウドファンディング企画 ノイズラー・カムバック作戦』)を実施! 目標の3倍強ものカンパが集まった。翌2018年3月24日に着ぐるみの完成披露会が実施されている。
ザンドリアスとノイズラーのキャラクターソング『Forgive me, kay?』も製作されて、そのPV(プロモーション・ビデオ)も自主映画の監督上がりで2010年代のウルトラシリーズの監督でもおなじみ田口清隆カントクによって撮影されており、YouTubeにもアップされている。このPVがノイズラー2代目の映像初登場となったそうだ。
ウルトラシリーズの本編には2017年以降、幾度目かの登場となったザンドリアスともども、Web配信シリーズ『ウルトラギャラクシーファイト 大いなる陰謀』(20年)#7にも初登場! 『ウルトラマンデッカー』(22年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20211021/p1)では毎回のオープニング主題歌の映像でも登場して、本編にも#14で登場を果たしている。
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#ウルトラマン80 #ウルトラマンエイティ #ノイズラー
『80』7話「東京サイレント作戦」43周年評! ~音を消せ!救急車・電車の音は出せ!(汗)
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