(ファミリー劇場『ウルトラマンエイティ』放映開始記念「全話評」連動連載!)
『ウルトラマン80』 再評価・全話評! ~序文
『ウルトラマン80』#13「必殺! フォーメーション・ヤマト」 〜UGM編開始
『ウルトラマン80』#14「テレポーテーション! パリから来た男」 〜急降下のテーマ&イトウチーフ初登場!
『ザ☆ウルトラマン』#12「怪獣とピグだけの不思議な会話」 〜怪獣レクイエム・泣かせる超名編!
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『ウルトラマン80』第15話「悪魔博士の実験室」 ~怪獣レクイエム! 怪獣墓場! 広報班セラ登場!
実験怪獣ミュー登場
(作・阿井文瓶 監督・広瀬襄 特撮監督・高野宏一 放映日・80年7月9日)
(視聴率:関東11.6% 中部14.0% 関西17.2%)
(文・内山和正)
(1999年執筆)
UGM広報班の太った容姿が印象的なセラが初登場する。
彼や21話「永遠に輝け!! 宇宙Gメン85」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100919/p1)から登場する気象班の小坂ユリ子が設定されたことにより、『ウルトラマン80(エイティ)』(80年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971121/p1)はほかのウルトラシリーズとは異なる魅力を備えたと思う。
今回、大型宇宙母艦スペースマミーは六カ月の宇宙巡航から帰ったとの設定になっている。二隻あるとは思えないから、13話「必殺! フォーメーション・ヤマト」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100725/p1)で登場してから、少なくとも半年は過ぎているということになる?
UGM基地の外観セットが、当時の基地の玩具に合わせて「U・G・M」のアルファベット型の三棟に変更されて上方から撮った映像に変わったのも、本話からなので、時は流れたと考えていいのかもしれない。
本放送当時は放送日時に合わせてドラマ内の時間も進んでいると判断していたため、1980年12月10日放映の36話「がんばれ! クワガタ越冬隊」(脚本・石堂淑朗)(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110101/p1)で、ウルトラマン80が昨年も存在していて蜃気楼に騙されたという会話がUGM内でなされたときに、単なる矛盾と思ったものだ。しかし、36話は矢的が教師をしていたのとは別の年。すでに教え子たちを進級させ教壇をはなれた矢的の物語なのだと、そういうふうに納得するのが(僕のようにこだわりを捨てられない人は)良い方法なのかもしれない。
前作『ザ・ウルトラマン』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100430/p1)の挿入歌であり、12話「怪獣とピグだけの不思議な会話」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090719/p1)でとても印象的な使い方をされた楽曲「怪獣レクイエム」が、城野エミ(じょうの・えみ)隊員の亡くなった母がエミが子供のころに歌ってくれた歌という設定で登場。以後、哀れな怪獣が登場する際の定番BGMとなる。
また、城野隊員の父親は生物学の博士であることがわかる。(ウルトラシリーズ第1作『ウルトラQ』(66年)主人公・万条目淳(まんじょうめ・じゅん)を演じて以来、シリーズにたびたび高官役で登場してきた佐原健二が演じる)
その助手である中川が、セラが宇宙で捕獲した人間の赤ん坊サイズのおとなしい小動物のような宇宙生物ミューを、自分の研究の実践のために巨大化させてしまうというのが、今回のストーリーだ。(中川を演じたのは、『プロレスの星アステカイザー』(76年・円谷プロ)のサタンデモンでもおなじみ、悪役役者の山本昌平(やまもと・しょうへい)。ジャンルファンには後年の『電撃戦隊チェンジマン』(85年・東映)のレギュラー敵幹部・ギルーク司令官役があまりにも有名で印象的だ)
弱っているミューを救いたいと思うセラの心情。それに同情する城野エミ隊員。
小さくても未知の宇宙生物を安易に持ち込むのは危険だ! と厳しく指摘をしてみせる、前回初登場したイトウチーフ(副隊長)。
双方を対照的なリアクションで対比することで彼らのキャラも描きつつ、オオヤマキャップは中を取ってエミ隊員の父で宇宙生物の権威である城野博士に預けることを提案する。
城野博士も中川博士(助手)も知っていたという宇宙生物の種類は「ミュー」という種族であり、巨大化しない安全な生物であったと判明する。
寒がっているミューを火炎バーナーで温めようとして、逆に怖がらせてしまうセラの養育センスのなさ。エミ隊員の母性や子守唄にはなつくミューを描いて、話はエミ隊員とミューとの交流に移っていく。ここには、UGM編のヒロインであるエミを立てようという作劇意図も看て取れる。
宇宙生物を巨大化させ、人間のペットのように意のままに動かそうとする中川博士。しかし、その研究は宇宙生物が凶暴化してしまう問題を解決していないと城野博士に責められる。中川博士はその忠告を聞かずに、夜間に秘かに薬品と電流で実験を行い、人間大に巨大化してしまったミューは施設を脱走する。
一度はエミ隊員たちによって保護されるものの、さらに中川博士は違法に実験を重ねて、ミューは怪獣サイズに巨大化した!
夜の住宅街で暴れ出すミュー!
手前に人間を配置して巨大感と恐怖感を表現した合成シーン(スクリーンプロセス・フロントプロジェクション)が多数散りばめられた怪獣映画的な作りが、ミューという怪獣が元々はかわいいだけに事態の深刻さを示している(おそらく人間大のときと同じぬいぐるみなのだろうが、人間大のときのスキップを踏んだりするかわいらしい演技と違って、演出のせいで恐ろしく見えるのだ)。
UGM戦闘機での怪獣攻撃命令をためらってしまう矢的とエミ。
ついに撃つことができなかったエミ。
80に必殺光線発射をためらわせ、子守唄を涙ながらに歌うことでミューをおとなしくさせるエミ……と戦闘中にも人間ドラマを継続させている。
80はミューを縮小化して宇宙へと運び去った。
ラストは、アニメ『宇宙戦艦ヤマト』(74・78年TVアニメ。77・78・80年に劇場アニメ化・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20101207/p1)の作品テーマだとされて、70年代末期〜80年代初頭のマニア向けジャンル作品の風潮を規定していた、当時としては物珍しくて気恥ずかしくも高尚に思えた“愛”という言葉を、オオヤマキャップ(隊長)に高らかに語らせてシメとする。
“愛”の崇高さを語りつつ、矢的とエミの肩をたたいたオオヤマキャップのポーズを「もう一度、写真撮影のために再現してくれ」と頼んでくる広報班のセラ。照れつつも「やらせポーズ」を取ってくれるキャップと隊員たち……という、「正攻法」を少し外して「引いて」から「明るく笑って終わる」あたりは、70年代の「マジメ一辺倒」のノリではなく80年代に猖獗(しょうけつ)を極めていく「照れ」や「茶化し」といった、それらのまだまだ度合いが過ぎてはいない、罪のない小さな萌芽といった感じもある……
◎本話ではイトウチーフは「未知の宇宙生物にはどんな危険性があるのかわからない」と主張して、ミューを捨てるように言ったり、凶暴化したミューに対して攻撃命令を下したりと「憎まれ役」を務めている。
◎今回の高野宏一による特撮演出は、UGM戦闘機の機体をカメラの手前に固定して、主観映像に近いかたちで怪獣に徐々に接近させていく、格好いい特撮映像が数カットほど観られるのもポイントだ。
◎冒頭、スペースマミーに搭乗しているセラが、宇宙空間で初代『ウルトラマン』(66年)や円谷特撮『ジャンボーグA(エース)』(73年)や『ザ☆ウルトラマン』(79年)などにも登場してきた「怪獣墓場」を目撃して、その光景の写真を撮影するというワクワクさせられるサービスシーンがある。当時のポピーから発売されていた子供向けの怪獣ソフビ人形・キングザウルスシリーズはリアルな造形ではなかったので、新造のミニチュアだろうか? それともソフビの改造だろうか? 『帰ってきたウルトラマン』(71年・)の怪獣グドンとサドラ、初代『ウルトラマン』の怪獣ゴルドンと思われる個体を視認できるが、他にも数体の怪獣を確認できる。
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