(ファミリー劇場『ウルトラマンエイティ』放映記念(2010年10月から毎週土曜より放映!)「全話評」連動連載!)
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『ウルトラマン80』第23話「SOS!! 宇宙アメーバの大侵略」 ~SFホラーなサスペンス性&ヒューマンな人間ドラマ性の両立!
アメーバ怪獣アメーザ 宇宙アメーバ登場
(作・山浦弘靖 監督・外山徹 特撮監督・高野宏一 放映日・80年9月3日)
(視聴率:関東9.0% 中部14.5% 関西14.7%)
(文・内山和正)
(1999年執筆)
T28星雲アメーザ星から帰還中にSOS信号を発信した地球防衛軍の宇宙探査船スペース7号。その救出にUGMの宇宙戦艦スペースマミーは宇宙へと向かった。しかし、スペース7号の内部は黄緑色をしたスライム状の宇宙アメーバに覆われていた。乗務員も殺されて、無人のまま地球へ降下しようとしていた。
地球に墜落したり地球上空で撃破すると、宇宙アメーバが地上に落下して大繁殖して人類が絶滅してしまう恐れがある。だれかがスペース7号に直接搭乗して進路を変えねばならない。しかし、その者はアメーバに殺されてしまう可能性が高い。
自分がその犠牲になろうとして、
「給料分の働きはせにゃあな」
と云いつつ、右胸のポケットから出したお守りを母に届けてくれと頼むイトウチーフ(副隊長)。
「一人っ子のチーフとはちがい兄弟がたくさんいる自分がやります!」
と志願するハラダ隊員。
その彼をミゾオチへのパンチで気絶させ、
「自分には哀しむ家族や身内もいないから……」
とハラダの代わりにスペース7号に乗り込もうとする主人公・矢的猛(やまと・たけし)隊員。
UGM隊員たちのヒューマンな側面が描かれていく……
矢的が搭乗して操縦するスペース7号。
UGM隊員たちはスペース7号の進路を変えた矢的に、むろん脱出を促(うなが)してみせる。そして、地上から打ち上げられた撃墜用の大型ミサイル・R1(アールワン)でスペース7号を撃破しようとする――「R1」は、『ウルトラセブン』(67年)26話「超兵器R1号」に登場した星間ミサイル・R1(アール・いち)号の名称からの引用! 後継機体か?――。
しかし、宇宙での船外活動用のヘルメットも、操縦室内に潜入していた宇宙アメーバによって溶かされて、小さな穴が空いて脱出不能になってしまう!
そんな緊急事態に応じてスペース7号撃墜を中止して、急迫するR1ミサイルを遠隔操作で自爆させようとUGM司令室では決定する。しかし、宇宙空間の小隕石が外壁に衝突していた影響でR1の自爆装置が故障していて、自爆不可能となってしまう!
皮肉ではなく云うのだが、ドラマづくりに都合がよい、意地の悪い作劇による異変が次々に相次いで、矢的を追いつめていく。
都合がよいといってもサスペンス描写的には実に盛り上がっている。傍から見たら、もしかして異常に見えるかもしれないほどに、地上のオオヤマキャップ(隊長)は矢的救命のために力を尽くし、決してあきらめたりはしない。
そんな懸命なオオヤマの姿にも、地球のために死んでいくのはかまわないが、他の隊員たちのように哀しんでくれる家族がないままに宇宙で孤独に死んでいくことに寂しさを感じてしまう矢的の心情も、胸にせまってくる。
幸いにして前方にスペース7号が着陸できるほどの巨大な球形の小惑星が通過することを、UGM司令室は確認する。ここに強制着陸させたあとでスペースマミーも同時に着陸して、矢的を同時に救出できると判断された。
矢的らが安堵したのも束の間、またも危機が訪れる。
スペース7号のエンジンルームに巣くっていた宇宙アメーバが、コクピット背後のドアにまでついに押し寄せてきて、猛烈な圧力でガンガンと打ち破らんとしだしたのだ!
矢的は座席シートでドアを押さえつけるも、アメーバはドアの隙間から微量に侵入してきてしまう。消火器状の冷却ガス(?)で滅殺するも、矢的の体力にも限界が迫る!
通信でUGM隊員たちに別れの言葉を告げる矢的。
それに対して、オオヤマが「あきらめるな!」「自分には家族がいないと云ったそうだな。我々UGM隊員たちこそが家族じゃないか!?」と熱く力説するシーンも人間ドラマとしては実に感動的だ。
しかし、ついに宇宙アメーバはドアを破って大侵入!
退いた矢的の背中にも大量のアメーバが飛び掛ってきた!
その体勢のときにスペース7号は小惑星に不時着して大爆発!!
その刹那、同じ体勢のままで背中に緑色の巨大怪獣アメーザにのしかかられたウルトラマン80(エイティ)が姿を現した!
このあたりの変身前後での共通描写は飛躍しているともいえるだろう。子供向け特撮ヒーロー怪獣ものとして観れば、逆にむしろつながりがよいともいえるかもしれないが。
それまで人間ドラマ主導であったためか、怪獣バトルの尺はいつもより短い。しかし、山や谷などの起伏が激しい小惑星の暗い大地で、緑色の照明を時に当てつつ、ウルトラマン80はアメーザと迫力あるバトルを披露! ついにこれを倒したのだった。
無事に地球に戻って、UGM司令室での矢的・イトウ・ハラダの
「昼メシを貸しにしていた」
「覚えていない……」
といった、明るく俗っぽいやりとりで、本話は締めとなっている。
本話は人間描写や人間ドラマ的には優れている。しかし、ギミック的にはいくつか欠点もある。
スペース7号を地球近辺で撃破できない理由は合理的である。しかし、汚染されたスペース7号にあえて搭乗せずとも、ロープや錨(いかり)などの装備でスペースマミーがスペース7号を牽引(けんいん)して遠方に曳航(えいこう)できないものなのか? そういった疑問も、幼児はともかく小学校の中高学年以上の年長視聴者であれば浮かんできてしまうことだろう。曳航できないならば、牽引装備がたまたま整備中で保持していなかったからだ……といった言い訳などもしてほしかったところだ(あったのだけど、尺数の都合でカットされたのだろうか?)。
また、矢的はウルトラマン80に変身してしまえば死なずに何とかなるはずだ。あるいは、ふつうの人間ならば死んでしまう状況に陥(おちい)っても死ぬことはなさそうにも思える。しかし、そのワリには自身の生死に悩んでいだりと、そのあたりの欠陥が気になってしまうのだ。
この真空状態である宇宙空間の危機的状況で生き残ってしまっては、不審がられて正体がバレてしまい地球に残留することもできなくなってしまう。つまり、地球人としての矢的は死んでしまうことになり、皆とも別れなければならなくなってしまう……といったような描き方の苦悩であった方がよかったのではあるまいか?(ちょっと煩雑になるし、本話の主眼であったサスペンス描写や切迫感にも欠けてしまったかもしれないが)
実際にも本話のラストでは、おそらく呼吸可能な空気などはないだろうと思われる暗い星空の小惑星上で、ヘルメットがない状態の宇宙服姿の矢的を、スペースマミーで駆けつけてきたイトウとハラダが救出してみせるといった微妙なオチとなっている。空気漏れを防ぐために、応急処置のテープを貼ったヘルメットを着用していたなどといった、それはそれでご都合主義ではあるものの何らかの「逃げ」がほしかったところだ。
当時の特撮ヒーローものではアリガチなややズサンなSF科学描写といったところだろう。しかし、当時の日本のSFもののテレビアニメでも最低限のSF科学性はすでに達成できていた時代だ。ハリウッドから舶来してきたSF洋画『未知との遭遇』や『スター・ウォーズ』(共に77年・日本公開78年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200105/p1)を当時の子供たちもすでに鑑賞していた時代だ。それにもかかわらず、宇宙空間を舞台にした話であるのに、当時の小学生の科学知識のレベルでも賛否を呼びそうな描写にとどまっているところもある。
『ウルトラマン80(エイティ)』(80年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971121/p1)の脚本と同時に並行して、名作テレビアニメ『銀河鉄道999(スリーナイン)』(78年)や、『機動戦士ガンダム』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990801/p1)の富野喜幸(とみの・よしゆき)監督によるリアルロボットアニメ第2弾『伝説巨神(でんせつきょじん)イデオン』(80年)のメインライターも手懸けていた山浦弘靖氏にしてこうであったのだ。
テレビドラマや映画などは集団作業であるゆえに脚本家個人の責任とはいえないかもしれない。その脚本にOKを出したプロデューサーや、脚本にはあったかもしれないイメージを映像化できなかった撮影現場など、本作のSF科学的な面での少々の不備の原因にはいろいろな要素や責任者が考えられる……
しかし、上記に挙げてきた欠点以外の要素については、傑作といってよいと思うのだ。
◎宇宙アメーバは、70年代に児童間で大ヒットしていた「スライム」という玩具を大量に使用したものだろう。
◎それほど気になるものでもないとは思うが、19話「はぐれ星爆破命令」(脚本・若槻文三)(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100905/p1)でも、スペースマミーの搭乗員に選ばれなかった矢的が出発直前に陰からハラダ隊員に当て身を喰らわし気絶させて代わりに搭乗するシーンがあった。本話での同様シーンとネタかかぶってしまっており、ついついそのこととの類似も連想してしまうのは腐れマニアの性(さが)か?(笑)
◎スペース7号は円谷プロ製作の宇宙ものテレビ特撮『スターウルフ』(78年)の主役メカ・バッカスⅢ世号の改造だったそうだ。