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ウルトラマン80 30話「砂漠に消えた友人」 〜UGM編終了

ファミリー劇場ウルトラマンエイティ』放映記念「全話評」連動連載!)
『ウルトラマン80』 再評価・全話評! ~序文
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『ウルトラマン80』全話評 〜全記事見出し一覧


第30話『砂漠に消えた友人』

侵略怪獣ザタンシルバー 変身宇宙人ザタン星人登場

(作・若槻文三 監督・湯浅憲明 特撮監督・佐川和夫 放映日・80年10月22日)
(視聴率:関東8.9% 中部11.1% 関西11.3%)


(文・久保達也)
(2009年9月執筆)


 正体不明の敵による破壊活動が頻発するが、防衛組織・UGMが現場に到着するころには常に敵の姿は消え失せていた。
 内部にスパイがいると確信したUGMが怪しいとにらんだのは、毎朝タイムズのUGM担当記者・土山と青木カメラマン。だが土山はUGM広報班・セラの先輩であり、「太っちょ、せらっちょ」などと中学時代にいじめられていた彼をかばい、水泳やマラソンをコーチしてくれた恩人であった……


・古くは『ウルトラマン』(66年)第31話『来たのは誰だ』で南米支部から久々に帰国したゴトウ隊員を装い、防衛組織・科学特捜隊本部に潜入した吸血植物ケロニア
・『ウルトラマンレオ』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)第36話『飛べ! レオ兄弟 宇宙基地を救え!』で宇宙で行方不明になっていた宇宙操縦士・内田三郎に化け、防衛組織・MAC(マック)隊員の座まで得た変身怪人アトランタ星人
・『ウルトラマンメビウス』(06年)第24話『復活のヤプール』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061112/p1)で防衛組織・GUYS(ガイズ)のリュウ隊員を操り、ヒビノ・ミライ=ウルトラマンメビウスにとどめを刺そうとした異次元人ヤプール……


 などなど、スパイ戦・心理戦の様相を呈した定番ネタである。


 なので、ストーリーを細かく追うよりも、様々な工夫をこらした演出面を味わう方がよさそうだ。



 まず目を惹くのが、セラとUGM気象班・小坂ユリ子が土山と青木をUGM内の宇宙観測センターに案内する場面。モニター室の背景にゲートを通過する一同が、窓から見えているような感じで合成されているのだ。
 それだけならまだしも、人体を透視するカメラが仕掛けられているということで、合成映像の中央部にさらに青いスクリーン状のものが配置され、正体が変身宇宙人ザタン星人である土山と青木が通過する際はその部分に彼らの姿が映らず、セラと小坂が通過する際は姿が映るように見せており、あまりに手が凝(こ)んでいる!


 そして出動したUGMの戦闘機・シルバーガルが操縦不能に陥り(ここの特撮場面ではシルバーガルの機体の表面にたくさんの気泡のような損傷が発生するという芸コマな佐川和夫の特撮演出が!)、空中分解を招く仕掛けがあるのをコクピットで発見した主人公・矢的猛(やまと・たけし)隊員は、なんと変身アイテムのブライトスティックをUGM専用銃器・ライザーガンの銃口に装着して射撃!
 この演出、Bパートでも土山と青木に化けたザタン星人を保護していた電磁バリヤーを矢的が破る際にも再度試みられているのだ!


 第13話『必殺! フォーメーション・ヤマト』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100725/p1)でも、人間に化けたドクロ怪人ゴルゴン星人の変身を見破る際、やはり矢的がブライトスティックをUGM専用大型銃器、ダイナミック・ショットの銃口に装着してベーター線を発射している。
 こうした変身アイテムの武器への転用はウルトラシリーズでは前例がなく、その変身アイテムにも秘められているハズのウルトラ一族の超エネルギーを武器として転用していることになり、変身後のヒーローのみならず変身アイテム自体の万能性をも提示するものとして、視聴者である子供たちにも直感的に理解できるワクワクさせるものである。こういう要素こそもっと評価されるべきだし特筆大書すべきだろう!


 ちなみにはるか後年の『ウルトラマンメビウス』第22話『日々の未来』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061029/p1)でも、ミライ隊員が左上腕に浮かび上がる変身アイテムのメビウスブレスから人間大の高次元補食獣レッサーボガール数体を相手に武器として光弾を発射していた。オタク上がりの同作のメインライター・赤星政尚(あかほし・まさなお)氏(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070506/p1)はさすが、一応の子供が理解できるレベルでの知的なSF設定(変身アイテムであれば超エネルギーも内蔵されており、それを攻撃技として照射することも可能であるといった意味での合理性!)を活かして、そのようなドラマ至上主義やテーマ至上主義には回収されえないマニアなオタクや怪獣博士気質のある子供たちが驚いたり喜んだりする、ある意味ではルーティンな存在であるヒーローや怪獣怪人たちよりも魅惑的でサプライズ(驚き)があってカッコいいパターン破りのシーンを織り込んで、マニアや子供たちを長年に渡ってウルトラシリーズに知的・SF的・ジャンク知識収集欲的にも執着させる手練手管にも長けている!



 スパイ戦ということで、隊員たちが私服姿で隠密行動をとるのもお楽しみのひとつ。今回は土山と青木を矢的と城野エミ(じょうの・えみ)隊員が尾行する場面があるが、エミはピンクのブラウスに紺のジャケット姿、矢的は水色のシャツに黒のパンツ姿と派手さを抑えた格好である。
 そりゃまぁそうだろう。『ウルトラマンA(エース)』(72年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070430/p1)第21話『天女の幻を見た!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061009/p1)でも防衛組織・TAC(タック)隊員たちが天女アプラサが寄宿する私邸の周囲の張り込みで私服姿を披露していたが(ご本人たちの私服だったのではなかろうか?)、山中隊員なんかグラサンまでかけたモロ「やっちゃん」風であり、目立ってしゃあないどころかヘタすりゃ職務質問を受けてしまうような姿だったぞ(笑)。


 宇宙観測センターの透視映像から「骨格が1本もない!」ことが発覚し、ザタン星人であることが判明する土山と青木!
 土山から奪い取った銃でセラが土山を狙撃することで出現する侵略怪獣ザタンシルバー!
 前回29話『怪獣帝王の怒り』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101113/p1)では描かれなかった地球防衛軍戦闘機・エースフライヤーを、ザタンシルバーが口から吐き出す粘液で次々に撃墜する場面は圧巻であり、CGもいいけど操演による飛行もやはり捨てがたいなぁ……とあらためて思い知らされる。



 まだ試作の段階であるGZ爆弾を使用することを決断するUGMのオオヤマキャップ(隊長)。
 UGM戦闘機・シルバーガルの機体底部から投下される場面では、ザタンシルバーを俯瞰(ふかん)し、落下していくGZ爆弾を主観でとらえたカットが目を惹く。
 これは『ウルトラマンタロウ』(73年)第6話『宝石は怪獣の餌(えさ)だ!』(特撮監督・川北紘一)(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080511/p1)において、防衛組織・ZAT(ザット)の大型戦闘機・スカイホエールの機体底部のシャッターが開くと画面中央になめくじ怪獣ジレンマが現れ、それに目がけて複数のナパーム弾が投下されていくのを主観でとらえていた特撮シーンなどを彷彿とさせ、なんとも臨場感にあふれている。
 GZ爆弾は溶解爆弾なのであるが、ザタンシルバーは緑色の溶解液を頭からかぶるものの、それを金属状の鎧(よろい)に被われた装甲がはじいてしまう描写も絶妙である。



 そしてウルトラマンエイティ登場!
 今回も華麗なバック転を披露しているが、必殺技・サクシウム光線の連続発射も通用しないほど硬質なボディのザタンシルバーに、なんと今回飛び蹴りを十数回も連続で食らわしており、その猛攻でザタンシルバーの金属状の鎧が破壊され、内部のメカが露出する。


 ナレーションでは


 「ザタンシルバーは想像を絶する科学力でつくられた兵器怪獣だったのだ!」


 などと紹介されるのだが、実際には「歯車」が動いている実にアナクロ(時代錯誤)な兵器(笑)。


 ザタン星人も正体を現した際の一瞬しか画面に登場しないが、全身青くて両手(手袋・笑)のみ赤という配色であるものの、顔の造形は古代ギリシャ彫刻といった趣(おもむき)であり、やはりアナクロ感覚である。


 エイティが決め技に、ウルトラマンエースウルトラマンレオも披露していた胸中央のカラータイマーから一条の光線を発するタイマーショットを披露している希有(けう)な回でもある。



<こだわりコーナー>


*土山を演じたのは特撮巨大ロボットもの『スーパーロボット レッドバロン』(73年・宣弘社 日本テレビhttp://d.hatena.ne.jp/katoku99/20171119/p1)の主人公・紅健(くれない・けん)役で知られる槇健吾(まき・けんご)。ただし『レッドバロン』には岡田洋介の芸名で主演していた。
 ちなみに『ウルトラマンレオ』第48話『恐怖の円盤生物シリーズ! 大怪鳥円盤日本列島を襲う!』にも主人公・おおとりゲンの古くからの親友という設定であるカメラマン・和久宏の役でゲスト出演しているが、この際の芸名は「石 太郎」であり、何度も芸名を変更しているあたり、芸能界で苦労していた様子が忍ばれる……


*その『レオ』最終第4クール『恐怖の円盤生物シリーズ!』を通じて宿敵・ブラック指令を演じ、『80』第21話『永遠(とわ)に輝け!! 宇宙Gメン85』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100919/p1)ではL85星人ザッカル(着ぐるみ)を演じた大林丈史(おおばやし・たけし)が、ザタン星人の正体を明かすことになる宇宙観測センターの警備隊長役で出演! ウルトラシリーズでまともに素顔を披露したのは今回が初めてであり、貴重である。


*『80』第13話『必殺! フォーメーション・ヤマト』〜26話『タイムトンネルの影武者たち』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101023/p1)でエイティのスーツアクターを担当した福田浩が、今回警備隊員役でゲスト出演していたらしい。おそらくはザタン星人が化けた青木に狙撃され、派手にブッ倒れるふたりのうちのどちらかであろう。それとも透視映像に土山と青木の姿が映らなかったにもかかわらず、「変だな?」とつぶやいただけで侵入を阻止せず、被害を拡大させたマヌケな警備隊員の方か?


*矢的が土山を疑うきっかけとなったのは、操縦不能となったシルバーガルのコクピットに残された、「T」という花文字のイニシャルが入ったハンカチーフ…… なぜそんなわかりやすいものを置き忘れていくのかは、30分で疑惑ドラマを伏線配置と伏線回収込みで解決しなければならないジャンル作品の宿命なのだからツッコミしてはいけない(笑)。


*セラと土山が中学校のころを話している中で全校マラソンの話題になり、


 「暑かったなぁ。あのときも」


 土山が語っていたのを、セラは土山が去ったあと、


 「あれ? 寒中マラソンだったんだけどなぁ。先輩カン違いしてらぁ」


 といぶかる。しかしラストの回想場面で描かれた全校マラソンの様子は、青々とした稲一面の田んぼの中の道で走るふたりであり、どう見ても真夏。その前後はセラに泳ぎを教える土山と、セミが鳴く中で必死に木のぼりをするセラの姿が描かれており、やはり真夏の光景である。
 ひょっとしてカン違いしているのはセラの方ではないのか?(笑 〜撮影時期的に仕方がなかったのだろうが。だとしたら編集で先のセリフをカットするなり、撮影現場でセリフを夏・冬逆転させるなりの工夫がほしかったところだ)


*ザタンシルバーは頭部の突起物の形状や体型などから、第21話『永遠に輝け!! 宇宙Gメン85』に登場した残酷怪獣ガモスの全身に銀色の鎧を張りつけて改造したのだと勝手に思いこんでいるのだが…… その名の通り全身金属状の表皮に被われた銀色のボディはまさに「兵器怪獣」を体現しており、個人的に『80』の怪獣の中では好きな部類に属する。ただ「兵器怪獣」の割にメカニカルな武器や攻撃ではなく、口からの粘液くらいしか武器がないってぇのは…… このあたりは当時のつくり手たちの世代的に仕方がなかったのだろうが、昭和10年代生まれの戦中派世代である特撮監督・佐川和夫たちの怪獣描写・怪獣演出に対するSF設定的な整合性への無頓着であり、『80』怪獣の人気がイマイチ出ない一因ではないのかと。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2009年秋号』(2009年9月27日発行)〜『仮面特攻隊2011年号』(2010年12月30日発行)所収『ウルトラマン80』後半再評価・各話評より分載抜粋)


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