(ファミリー劇場『ウルトラマンエイティ』放映記念「全話評」連動連載!)
『ウルトラマン80』 再評価・全話評! ~序文
『ウルトラマン80』#29「怪獣帝王の怒り」 〜往年の喜劇人大挙出演!
『ウルトラマン80』#30「砂漠に消えた友人」 〜UGM編終了
『ウルトラマン80』#31「怪獣の種飛んだ」 〜児童編開始
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第32話『暗黒の海のモンスターシップ』 〜合評1
スクラップ幽霊船バラックシップ登場
(作・平野靖司 監督・外山徹 特撮監督・高野宏一 放映日・80年11月5日)
(視聴率:関東9.8% 中部12.3% 関西11.2%)
(文・内山和正)
(1999年執筆)
31話「怪獣の種(たね)飛んだ」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101127/p1)〜42話「さすが! 観音さまは強かった!」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110212/p1)までのマイルドな「少年編」「児童編」の枠内の1本とはいっても、割りとシブめの作品である。
主人公である防錆組織UGM隊員・矢的猛(やまと・たけし)が親しい少年・明の父を救うと言って救えず、その戦闘で首を痛めたうえ、孤児となった明に責められるという重い展開が一時的にせよあり(のちに父親は生きていたことがわかるが)、本話のゲスト怪獣にあたるバラックシップもコンピューターがすべてを制御する客船だったものが氷山に激突して沈み、それによりコンピューターが狂って目的を果たすために自らの強化をはじめたという“機械の業(ごう)”ともいえる悲しさを宿している。
フジモリ隊員は矢的よりも先輩との設定で、1〜2クール目に活躍していた前任のハラダやタジマ両隊員が先輩とはいっても仲間的な感覚であったのに対し、あくまで先輩として存在している。
矢的が先輩と後輩を持ったというのが隊員変更の意義だったと思うが、そのコミカルキャラクターぶりがこのあとの路線変更にもフィットして魅力を発揮したイケダ隊員に比べ、フジモリは個性を出せずに終わってしまい、あくまで先輩であるとの当初のこだわりさえも消えてしまう。単に先輩だというだけでなくゴリ押し気味の個性が強く出せたのは、この回が最初で最後だった。
明少年役は成人後、『超力(ちょうりき)戦隊オーレンジャー』(95年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110926/p1)のリーダー・オーレッドこと星野吾郎や『ウルトラマンダイナ』(97年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971215/p1)15話「優しい標的」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971203/p1)の悪役・スパイ宇宙人シオンを演じることになる宍戸勝(ししど・まさる)氏。大抵の子役出身の俳優は男女ともども子供時代のほうが魅力的であるが、氏に関してはキツい顔立ちの子供であるため、存在感を示した成長後のキャラクターのほうが印象的だと思う。
第32話『暗黒の海のモンスターシップ』 〜合評2
(文・久保達也)
(2009年10月執筆)
太平洋上で船舶が突然消息を絶つ事件が連続して発生。その謎の現象はアメリカ大陸沖から次第に日本近海に移動していく。
川でラジコンのボートを操縦して遊ぶのが好きな明の父・山本三郎は、貨物船・ニッセイ丸の船長だった。故障した玩具の船を直してあげたのがキッカケで、本作の主人公である防衛組織・UGMの矢的猛(やまと・たけし)隊員と知り合いになった明は、父の船も事件に巻きこまれるのではないかと心配する。
明「もしも危なくなったら、UGMが守ってくれる?」
矢的「まかせとけ!」
事態を心配したのは明ばかりではなく、多数の船会社からUGM広報班に苦情の電話が寄せられる。消失事故を恐れてタンカーや貨物船を就航させられないというのだ。このままでは石油をはじめとする資源が日本に入ってこなくなる……
オオヤマ「我々が船舶の安全を保証するしかないな。みんないいか。これからは24時間体制で警戒にあたる!」
UGMの戦闘機・スカイハイヤーで太平洋上を監視する矢的隊員だったが、突然見えない壁にぶつかったかのごとく、コントロール不能に陥る。パラシュートで脱出した矢的の眼前に浮かぶ1隻の船……それは明の父・三郎が船長を務めるニッセイ丸であった。
山本船長「俺にとっては最後の航海だ」
今回の乗船で船長を引退すると航海士に語る山本にとって、ニッセイ丸を無事就航させることが彼の最後の仕事であった。
だがそのとき船体が大きく揺れ、前方にスクラップ幽霊船バラックシップが奇怪な姿を見せる!
船員たちは総員脱出したが、ニッセイ丸は山本船長を残したまま、まるで磁石に吸い寄せられてしまうようにバラックシップと一体化してしまう! 悲惨な光景を目の前にしながらも海中で気絶してしまう矢的は、ニッセイ丸の乗組員たちに救助される。
帰還した矢的はUGMの作戦室で隊員たちに「ニッセイ丸が強力な磁石の固まりに吸いつけられたようだった」と証言するが、そこに明が面会に訪れる。
矢的「(笑顔で)明くん!」
明「うそつきっ!」
矢的「(ギョッとして)……」
明「矢的のバカヤローっ! おまえなんか、大っキライだ!」
明は矢的の右肩にボールをぶつけ、作戦室を飛び出していく。そして明は大好きだったラジコンボートを川に浮かべ、石をぶつけて沈めようとする。心配して駆けつける矢的だったが……
明「父さんは死んじゃったんだ! これからはずっと僕と一緒にいるって約束してくれたんだ! なのに……なのに……」
思わず矢的に抱きついて涙する明だったが、そこにオオヤマキャップ(隊長)から通信が入った。
オオヤマ「お父さんは生きている! いや、生きている可能性があるんだ!」
矢的が明を連れて作戦室に戻ると、山本船長と思われる人物から救出を求める通信が途切れがちに入っていた!
明「父さんだ! 父さんの声だ!」
表情を一変させて喜ぶ明だったが、やがて山本船長は悲鳴をあげ、通信は途絶えてしまう。いたたまれなくなって再度作戦室を飛び出していく明……
そんなわけで、今回はマニアには極めて評判の悪い『ウルトラマンA(エース)』(72年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070430/p1)第29話『ウルトラ6番目の弟』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061120/p1)以降のダン少年編とか、今となっては悪名高き(?)『ファンタスティックコレクションNo.10 ウルトラマンPARTII 空想特撮映像のすばらしき世界』(朝日ソノラマ・78年12月1日発行・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20031217/p1)で、「ほとんどの話が怪獣に肉親を殺された子供の仇討ちか、過去の作品の完全な焼き直しに終わっていたのである」などと「間違った解説――実際には怪獣に肉親を殺された子供の仇討ちは数本程度である――」をされてきた『ウルトラマンタロウ』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1)のような、その「間違った解説」による『タロウ』の典型的イメージが濃厚に漂う一編であり、「児童ドラマなんか大っキライだっ!」(爆)とお嘆きの特撮マニアの方々には鼻つまみものの作品になっている(笑)。
筆者としては、『タロウ』のレギュラーである少年・白鳥健一(しらとり・けんいち)クンの父・白鳥潔(きよし)も、明の父と同じく外国航路のタンカー・日々丸(にちにちまる)の船長であり、健一と明が父と離れ離れの生活を送っているという「共通項」と、心に少々の隙間(すきま)を持ちながらもステレオタイプにイジケることなく、
「でも、親はなくても子は育つって云うよ!」
と明るく振る舞うだけの人間力があった明朗な健一クンという「相違点」を同時に見いだすことができ、大変興味深かったりするのだが。
もっとも今回、明を演じている宍戸勝(ししど・まさる)は、ダン少年を演じた梅津昭典のようにやたらとヒネくれた表情をしているわけでもなく(いや、ダン少年役には最適な人選だったと思います!・笑)、目鼻立ちがパッチリとした美少年であるせいか、どれだけ悪態をついていても不思議と悪い印象は感じない。やっぱりイケメンは得だよなぁ(笑)。演技もかなり慣れている感があり、同時期の実写作品にも探せば結構出演しているかも?
今回の目玉はやはりバラックシップの実にユニークな設定であろう。
同類の怪獣(?)としては、『ウルトラセブン』第21話『海底基地を追え』に登場する、ミミー星人が沈没した戦艦を元に改造した軍艦ロボット・アイアンロックスが存在するが、本話のバラックシップは15年前にマゼラン海峡で氷山と激突して沈没した無人の大型貨物船クイーンズ号が、搭載された最新鋭のコンピューターの力で自力で復元を遂げ、積み荷だった強力な磁力合金・MK合金で自身を強化した成れの果ての姿なのである!
――ミミー星人は声のみで姿は劇中に登場しない。ちなみに声を演じたのは『仮面ライダー』(71年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20140407/p1)第31話『死闘! ありくい魔人アリガバリ』に登場するショッカー怪人・アリガバリや、『超人バロム・1(ワン)』(72年)の2クール以降のバロムワンの声、同じ円谷作品では『ファイヤーマン』(73年)のナレーションを担当したほか、かつては『サザエさん』(69年〜放映中!)の波野ノリスケの声も演じていた村越伊知郎――
オオヤマ「おそらく二度と氷山なんかに負けない体をつくろうとしたんだろう」
そしてバラックシップは15年前にプログラミングされた通りに東京湾へと航海を続けるのだ。途中で出合った船舶を次々と一体化して強化改造を遂げながら。遂には軍艦をも虜にして戦闘能力まで身につけたのだ!
そんな奴が東京湾にたどり着いたら…… 派手さはないものの、次第に迫りつつある「静かなる恐怖」がサスペンスタッチで描かれているのは緊迫感に溢れ、実に味わい深いものがある。
矢的とフジモリ隊員が山本船長を救助に防錆組織・UGMの戦闘機・シルバーガルで出動! ちゃっかり乗りこんでしまった明を連れてバラックシップの体内(というかニッセイ丸の船内)へと突入する!
その途端、バラックシップを操るコンピューターは大量の配線ケーブルをまるで触手のように動かし、矢的とフジモリを縛りあげてしまう!
フジモリ「おいコンピューター! 俺たちを離せ! おまえはなぁ、人間のためにつくられたんだろ! それを忘れたのか!?」
矢的「フジモリ隊員、奴はコンピューターです! 奴にとっては人間の言葉より、プログラムの方が大事なんです!」
この短い会話はバラックシップのコンピューターが宇宙からの侵略者以上に話し合いが通じる相手ではないことが端的に表現されており、実に秀逸ではなかろうか!?
矢的とフジモリどちらかが落としたUGMの専用拳銃・ライザーガンを明が拾いあげてケーブルを射撃! 矢的は自身のライフジャケットを山本船長に手渡し、明・フジモリとともに脱出させる。
そこにイトウチーフ(副隊長)・イケダ隊員が搭乗する大型宇宙母艦・スペースマミーがやって来た! 全長150メートルのスペースマミー対身長120メートルのバラックシップとの巨大メカ戦! なんか空飛ぶ戦艦・マイティ号がメインのヒーローメカとして活躍する円谷特撮『マイティジャック』(68年・円谷プロ)を観ているみたいだなぁ(笑)。
スペースマミーに砲撃を続けるバラックシップだが、他の船と違い、決してスペースマミーを磁力で吸い寄せようとはしなかった。その理由とは……
オオヤマ「多分奴は太りすぎたんだ。奴の上にスペースマミーが乗ると二度と浮かび上がれない。それを奴は知っているんだ」
図体がデカいばかりではなく、知力にも長(た)けたバラックシップにさしものスペースマミーも敗退。
遂に矢的が変身アイテム・ブライトスティックを高々と掲げる!
矢的「エイティっ!」
なんと主題歌『ウルトラマン80(エイティ)』(ASIN:B00005ENKA)が今回劇中で初めて使用される! 空中からオレンジ色のハンドビームでバラックシップに奇襲攻撃をかけるエイティに華を添えるのだ!
惜しむらくはせっかくのこの演出も、主題歌が1コーラスの使用で済んでしまうくらいにバトルシーンの尺がやや短いことである。沈没船の残骸を寄せ集めた黒鉄色の特異な姿であるバラックシップは、スーツアクターが中に入る着ぐるみではなく造形物で表現されており、格闘に不向きなのはやむを得ないとして、単に砲撃を繰り返すばかりでエイティをピンチに陥(おとしい)れることもなく、わりとあっさりとエイティの必殺技・サクシウム光線で最期(さいご)を迎えてしまうのは少々物足りないと思う人もいるかもしれない。
せめてアイアンロックスがウルトラセブンに鎖付きの輪っかで手かせ足かせをしたような攻撃とか、あるいはせっかく磁力を武器にしているのだから初代『ウルトラマン』(66年)第7話『バラージの青い石』に登場した磁力怪獣アントラーのように「七色」の磁力光線を吐いてエイティを吸い寄せてしまうくらいのアクション演出はしてほしかったように思う─―まぁ体重4万4千トンのエイティが吸い寄せられて乗っかったらバラックシップは完全に沈没してしまうから寸止めにして動きを封じるとか(笑)─―。
大ベテランの高野宏一特撮監督が難しい「水モノ」特撮をこなしているのだが、もうひと工夫足りないような感もある。
「さっき話した『ザ★ウルトラマン』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971117/p1)第12話(『怪獣とピグだけの不思議な会話』・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090719/p1)でタンカー同士がぶつかる場面があったんだけど、そのとき満田(かずほ)さん(執筆者註:円谷プロ側のプロデューサー)から「こんなのアニメだからできるんだぞ」とか「昔はプールを使ってやれたけれど、今は水モノはすごくお金がかかるんだから」と言われたんですよ。でも、実写の『80』でもちゃんとセットにプール組んで水絡みのシーンをやっているんですよね(笑)。「なんだ、できるじゃん!」って(笑)。でもあの前後は水を使った話が続いたでしょう。きっとまとめて撮ったんでしょうね。『80』では予算が苦しいと言っていた割には、頑張っていろんなモノを撮っていましたね」
この第32話から第34話『ヘンテコリンな魚を釣ったぞ!』まで、『80』では手間も予算もかかると敬遠されがちな「水モノ」に、海を舞台にした話で3週連続で挑戦しているのだ(もちろんその都度、撮影スタジオ内にプールを作って水を入れたり抜いたりしていては膨大な水道料金と時間がかかるから、予算節約のためのまとめ撮りなのであろうが)。それを考えれば贅沢(ぜいたく)な不満は言ってはいけないのかもしれない。
明「僕もUGMの隊員になれるかなぁ?」
無事に救出され、今後は遊覧船の船長をやると語る父とずっと一緒に過ごせることを喜んだ明は、今回の事件を機に将来の希望を持つことができたのだ。
イケダ「親子の絆かぁ。いいもんだなぁ」
イケダ「それにしても、今回の事件でコンピューターのことが信じられなくなりましたよ」
イケダ隊員のラストのセリフに今回の二大テーマ(親子の絆・機械文明への警鐘)が象徴されているが、前者はともかく、後者に関しては声高に叫ぶことなく、あくまでバラックシップの恐怖に集約され、説教クサさを感じさせないようにしているのは「児童ドラマ」として正解であろう。
本編・特撮ともに手堅くまとめられた秀作である。
<こだわりコーナー>
*山本船長を演じたガッツ石松は、何を聞かれても「OK牧場!」と答えるような「天然ボケ」のキャラがバラエティ番組で重宝され、現在でも広くお茶の間で親しまれているが、元々はヨネクラジム所属のボクサーであり、『ウルトラQ』や初代『ウルトラマン』が放映された第1次怪獣ブーム時期の66年のデビュー戦から第3次怪獣ブーム期の78年の現役引退までの戦績は31勝(内KO勝ちが17勝)14敗6引き分け。74年4月11日に東京・日大講堂で行われたWBC世界ライト級王座決定戦でメキシコのロドルフォ・ゴンザレスに8回でKO勝ちし、チャンピオンとなった。
が、その翌日に放送された和田アキコやせんだみつおやザ・デストロイヤー(全日本プロレスの外人プロレスラー)が司会やコントを演じていた金曜22時台の当時の大人気バラエティ番組『金曜10時! うわさのチャンネル』(73〜79年・日本テレビ)にゲスト出演した氏は、「僕さぁ、ボクサーなの」というギャグをひたすら繰り返したとか(笑)。
当初のリングネームは鈴木石松(本名は鈴木有二)であったが、少しでも形勢が不利になると試合を放棄する行動を繰り返したため、「ガッツのあるボクサーになるように」との願いをこめて変更されたらしい。ちなみに石松の名は「死んでも治らないほどのおっちょこちょい」である幕末の任侠(にんきょう=正義のヤクザ)・清水次郎長(しみずのじろちょう)一家の「森の石松」からの引用であり、三度笠の潮来(いたこ)スタイルでリングに上がる姿は場内をおおいに盛り上げたらしい。試合に勝利すると拳(こぶし)を握った両腕を高々と上げバンザイのようなポーズをとったが、スポーツの「ガッツポーズ」なる俗称はこれに由来するという説がある。
幼いころは大変な悪ガキであり、小学校のホームルームで氏の被害者たちが告発・証言する「鈴木有二君を裁く会」が開かれたことがあるとか(爆)。ボクサーを志した理由は「有名になって(俳優の高倉)健さんと共演したかった」から(笑)。実際現役時代に映画『神戸国際ギャング』(75年・東映)で高倉健と共演したばかりでなく、リドリー・スコット監督のパラマウント映画『ブラックレイン』(89年)では故・松田優作が演じた佐藤浩史の子分役で高倉健ばかりかマイケル・ダグラスやアンディ・ガルシアといったハリウッド俳優と共演している! またスティーブン・スピルバーグ監督のワーナー・ブラザース映画『太陽の帝国』(87年・日本公開88年)では日本兵の上官を演じていたが、オーディションでスピルバーグ監督に「なぜ受けたんだ?」と尋ねられた際、「事務所が行けと言ったから」と答えたとか(爆)。
元々ボクサー修行時代から俳優も志していたらしく、当時東映の撮影所に入れてくれと頼みこんだらしいのだが、守衛に丁重に断られたそうな(笑)。だがテレビドラマ史上最高の視聴率62.9%を達成した連続テレビ小説『おしん』(83年・NHK)の中沢健(なかざわ・けん)役や、倉本聰(くらもと・そう)脚本の名作テレビドラマ『北の国から』(81〜02年・フジテレビ)の成田新吉役など、氏の演技は決して俳優転向後に付焼刃(つけやきば)で身につけたものではない確かなものが感じられたものだ。
円谷作品でも『80』と並行して製作されていた『ぼくら野球探偵団』(80年・東京12チャンネル→現テレビ東京)でレギュラー出演し、『ウルトラマンティガ』(96年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961201/p1)第46話『いざ鎌倉!』(脚本・右田昌万(みぎた・まさかず))では虹色怪獣タラバンを目撃した証言を防衛組織・GUTS(ガッツ)に信じてもらえず、「な〜にがガッツだ!」(もちろん視聴者向けの駄洒落でもある・笑)と意地になってタラバンを捜索するカメラマンのホシノ役でゲスト出演していた。
――『いざ鎌倉!』は当時の『ティガ』ファンの大半を占めるリアル&ハード路線の支持者には、特撮ライター・中島紳介をはじめ「なんで今ごろ『タロウ』みたいな話を見せられなきゃならないの?」「これは第2期ウルトラへの逆行だ!」(共に大意)などと特撮雑誌『宇宙船』などでは批判する向きも多かったが、筆者にとっては文句なしに『ティガ』の最高傑作である! なお意外にも『ティガ』でリアル&ハード路線の作品を多数執筆、後半では実質的なメインライターに昇格していた脚本家の小中千昭(こなか・ちあき)は、放映直後の円谷プロファンクラブ会報に掲載された脚本家たちの座談会にて『いざ鎌倉!』を『ティガ』で一番好きな話に挙げていた――
*息子の明少年を演じた宍戸勝は、のちに『超力戦隊オーレンジャー』(95年)で主役・星野吾郎ことオーレッドを演じた宍戸勝の子役時代! 当時『それゆけ! レッドビッキーズ』(80年・東映 テレビ朝日)第4話にも高橋ツトム少年役でゲスト出演しているようだ。ウルトラシリーズでは『ウルトラマンダイナ』(97年)第15話『優しい標的』に悪役だが謀報宇宙人クレア星雲人シオン役でもゲスト出演した。
*イケダ隊員が口にしたバミューダトライアングルとは、フロリダ半島の先端と、大西洋にあるプエルトリコ、そしてバミューダ諸島を結んだ三角形の海域のことである。100年以上も前からこの海域で、100を超える船や飛行機、1000人以上の乗組員や乗客が忽然(こつぜん)と姿を消すという怪奇現象が多発しているという伝説がある。だが実際はこの海域がハリケーンや霧の多発地帯であることから、悪天候時の操縦ミスや計器の確認ミスによる「単なる遭難事故」が多いだけなのに、事実を誇張・歪曲してそれらが「怪事件」として伝えられ、しまいには大西洋上の別の海域の遭難事故すらもこの海域で起きたかのように語りつがれてきたものであるらしい。
ただフィクション作品のネタにするには最適であり、テレビアニメ『ヤッターマン』(77〜79年・タツノコプロ フジテレビ・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080623/p1)第11話『ナゾの三角領域だコロン』、同じくテレビアニメ『ルパン三世』(第2シリーズ・77〜80年・東京ムービー新社→現トムス・エンタテインメント 日本テレビ)第95話『幽霊船より愛をこめて』、アニメ映画『ドラえもん のび太の海底鬼岩城』(83年・東宝)などで元ネタとして引用されているほか、『ウルトラマンダイナ』第16話『激闘! 怪獣島(じま)』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971202/p1)にはバミューダ海域よりも危険であるという「ザリーナ地帯」が登場している。
*矢的は最初のバラックシップの攻撃で首を痛め、ムチウチのような症状をかかえるが、イトウチーフに「大丈夫か?」と心配され、「大丈夫です!」と首を左右に振って強がるものの、「グキッ!」という鈍い音とともに照れ笑いをする……なんともカワイイんだこれが(笑)。
*明にボールを右肩にぶつけられた際、首の痛みに悪影響を及ぼして大袈裟(おおげさ)に苦しんだ矢的だったが、山本船長からの通信が途絶えた途端、
「ケガならなんともありません! お願いです! 行かしてください!」
と力強く主張。オオヤマキャップも
「わかった。おまえのことだ。止めても聞かんだろう」
とあっさりと承認してしまう(笑)。
特撮ヒーロー作品にかぎらず一般のテレビドラマなどでも散々に目にしてきた、主人公の真剣度合いを現わすためのご都合主義的な描写だが、桜ヶ岡中学校の教師時代に「一所懸命」が信条だった矢的、そしてウルトラシリーズの防衛チーム随一のスマートな性格ではあっても同時に「体育会系」の隊長であるオオヤマキャップに演じられると、やはり大きな説得力があるというものだ(笑)。
*明が作戦室を飛び出していくのを見るや、オオヤマキャップは城野エミ(じょうの・えみ)隊員に目くばせをし、
「城野隊員」
とだけ告げる。そしてエミも即座に
「ハイ!」
と返事をして明を追いかけていく。
いやぁ、ホントにこの時期のUGMって「あうん」の呼吸で互いの気心も知れて統率がとれている。オオヤマキャップを演じる中山仁(なかやま・じん)、さすがスポ根ドラマ『サインはV』(69年・TBS)出身だけのことはある(笑)。
*そのエミから逃れた明はいつの間にかシルバーガルのコクピットに潜りこんでしまうが、UGMってどんだけ警備が手薄なんや? 侵略者が潜入したらホンマに大丈夫なんか? なんてマジなツッコミはいくらやってもムダやぞ(笑)。
#ウルトラマン80 #ウルトラマンエイティ #バラックシップ