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ウルトラマン80 34話「ヘンテコリンな魚を釣ったぞ!」 〜石堂脚本再評価!

ファミリー劇場ウルトラマンエイティ』放映記念「全話評」連動連載!)


『ウルトラマン80』全話評 〜全記事見出し一覧

第34話『ヘンテコリンな魚を釣ったぞ!』

巨大怪魚アンゴーラス(親子)登場

(作・石堂淑朗 監督・湯浅憲明 特撮監督・佐川和夫 放映日・80年11月19日)
(視聴率:関東9.0% 中部8.9% 関西11.7%)


(文・久保達也)
(2009年11月執筆)


魚売り「ハイハイ、貝でもタコでもなんでもあるだよ。干物もあるけんど干物を釣ったと言うワケにはいかんねえ。ハイハイ、とーちゃんの腕の証明! さあ〜買った買った〜」


 神奈川県三浦半島のある漁港にて、まったく釣れなかった釣り客に向け、威勢のいい声で魚を売る中年女性を堤防から遠巻きに見て、釣りを趣味にする中年男・山田がつぶやく。


山田「せっかく釣りに来たのに、買って帰ったんじゃしょうがねえな」


 導入部の何気ないこの場面、旅情豊かな風情(ふぜい)を感じさせるばかりでなく、これから巻き起こる大事件の伏線ともなり得ている秀逸な演出である。


 ぶっちゃけ云えば、今回は釣りを趣味にする少年・飯田治が結果がサッパリだったため、地元の漁師夫婦の網にかかったという奇妙な魚をもらったところ、その稚魚が実は巨大怪魚アンゴーラスの子供であり、子供を取り戻そうと大暴れするが、治が子供を返したところ、おとなしくなって帰っていくという話である。


 「南海の楽園」の名物にするために、南太平洋キャサリン諸島のオベリスク島から日本に連れてこられた子供を追い、夫婦怪獣が静岡県熱海(あたみ)市の温泉街に上陸、富士五湖周辺や京浜工業地帯で大暴れするが、羽田空港で子供を返されるや、親子でおとなしく故郷へと帰っていく不朽(ふきゅう)の名作『大巨獣ガッパ』(67年・日活)、
 悪徳興業師がオロン島から持ち帰った卵を取り戻すため、大亀怪獣キングトータスとクイントータスの夫婦が復讐にやってくる『ウルトラマンタロウ』(73年)第4話『大海亀怪獣東京を襲う!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071223/p1)&第5話『親星子星一番星』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071230/p1)、
 日本の花火大会を宇宙に咲く花だと思って接近したがために地球に落下した子供を思い、体が乾燥しないようにと母親の鳥怪獣フライングライドロンが稲妻を起こし、地上に雨を降らせ続ける『タロウ』第20話『びっくり! 怪獣が降ってきた』、
 神奈川県江の島を走る「江の電」の警笛を母親の声と勘違いして出現した虹色怪獣タラバンの子供を、ウルトラマンティガが拝借した電車で宇宙へと誘導し、母親と再会させる感動の名作『ウルトラマンティガ』(96年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961201/p1)第46話『いざ鎌倉!』など、親子怪獣の絆・情愛を描いた定番の路線ではある。
 それを「邪道だ!」とする声も一部にあるが、反論はひとまず置いておく。



 「僕はこれに限らず、ウルトラはほとんど中盤以降の参加でね。最初の方はたいてい若手がガッチリやるから、僕にはお呼びがかからない。それが、だんだん間尺が合わなくなってくると俺のところにね(笑)」


 「僕はいわゆる〈文部省特選〉みたいな話にまとめるのは嫌いだけど、自然児が遊び回っているような作品は好きだからね。子供がギャアギャア騒ぐようなドラマをウルトラ以外でもよく書いてるけど、「石堂は子供のセリフがうまい」とよく褒(ほ)められます。僕自身、いまだにガキ大将みたいなところがあるから(笑)。いまだに小さな子供を描くのが一番好きですね。中世の歌集(梁塵秘抄)に「遊びをせんとや生まれけむ」ってある、まさにあの感じですね」


 (脚本・石堂淑朗インタビュー・『君はウルトラマン80を愛しているか』(辰巳出版・06年2月5日発行・05年12月22日実売・ISBN:4777802124))



 ここはひとつ、子供がギャアギャアと騒ぐような、遊び心にあふれた作品を素直に楽しんでみようじゃないか(笑)。そんな石堂氏の作風は子供たちと大怪獣ガメラの絆を描いた昭和の『ガメラ』シリーズ(65〜80年・大映)の監督で知られる湯浅憲明とは相性がピッタリなのだ!


 治が黒い長靴を釣りあげ、「チェッ」とガッカリする描写は定番のネタではあるものの、それを見た山田が放つ、


山田「せっかく釣ったんだ。浜のゴミ箱まで持ってったら?」


 なる、なんとも洒落(しゃれ)た大人のセリフ、決して並の人間には書けるものではないぞ!

 
 そして遠方で鳴るバスの警笛を聞き、


治「今何時ですか?」
山田「(午後)4時だよ」


 なんて会話がなされるのも、いつもと時間の流れ方が違って感じる旅情感にもあふれているし、リアルでもあるし、センスの良さも感じられる!
 こうした点がきっちり描かれていれば、いくらその後の展開がハチャメチャになろうが、アンゴーラスの子供の造形物が現在の視点ではいかにもな「つくりもの」であろうが(ただラジコン操作ではあろうが、動きはなかなかリアルではある)、地元の漁師の網にかかったアンゴーラスの子供を触ろうとした治に対し、


漁師の妻「ああ、ダメダメ! ひれに毒があるかもしれないからね! 子供はさわっちゃダメ!」


 漁師の妻が放つこんなセリフも俄然説得力をもって伝わるというものだ!


 アンゴーラスの子供を持ち帰った治の自宅に、友人の五味太郎斉藤明夫・光子の兄妹が訪ねてくる。釣り仲間の五味がイシダイを釣って獲得した「トップ賞」を治が奪うことになったのだが、五味が腰に付けた「トップ賞」のバックルが紙製であるのがなんともリアル(笑)。


五味「あ〜あ、惜しいなあ〜、これやるの」


 となんとも残念そうにやむなく治にバックルを渡す五味役の松本芳晃の演技が絶品だが、バックルを外した途端、ズボンが脱げてパンツが丸出し状態に! 光子が


光子「まあ、失礼ねぇ〜」


 と顔をそむけるといった実にほのぼのとした演出がたまらないが、現在ではこういうのさえ放送コードに触れるのであろうか?(笑)
 
 
 水槽で泳ぐアンゴーラスの子供を見て、本当に関東近海にこんな魚がいるのか、深海魚みたいだなどといぶかる五味と斉藤だが、


光子「でも確かに大きいわぁ。五味くんもくやしかったらこんなの釣ってみたら?」


 と光子がキツいセリフを吐くのもいちいちリアル(笑)。それに発奮した五味や斉藤、光子がどこで釣ったのかを問いつめるが、自身で釣ったのではないことから治が言えずにいると、


光子「言いなさいよ〜。男らしくないわよ!」


 と、これまた女子なら絶対に言いそうな、リアルでキツいとどめの一言! 「ガ〜ン!」となってしまった治は、


治「あ〜あ、眠れないよ〜。自分で釣ってないのに釣ったなんてウソをつくからだ。ウソがばれる。ウソをついたら仲間外れになってしまう」


 と思い悩み、眠れなくなってしまうが、そこに水槽から何か大きな音が響いてくる!
 恐る恐る暗い階段を降り、治が水槽の様子を伺うと、なんとアンゴーラスの子供がひと回り大きくなっていた!

 
 驚く治だが、そこに治のパパが入ってくる。


治「もう少し大きな水槽を買ってよ〜」


パパ「算数が5になったら」


 とかく大人はそういうテキトーなことを言ってその場をやり過ごすものである(笑)。
 
 
 時計が午後10時を告げ、今度はママが入ってくる。


ママ「治、もう10時よ。早く寝なさい」


 就学前の幼児ですら深夜まで起きているそうである昨今では、これなんかはリアルに見えないのかもしれないが(?)、当時の小学生はその時間帯には親から寝かされたものなのだ。筆者なんかは小学校卒業まで夜9時には寝かされたのだぞ!
 
 
 ママは今度はパパに標的を定める。


ママ「パパ、また何か買ってあげるって言ったでしょ? ダメよ隠しても。もうなんでもすぐに買ってあげるって言わないで下さい。あなたの年代のパパはみんなそうなんですってよ。自分の子供のころには何もなかったからって、すぐに子供を甘やかすんですってよ」


 こうしてさりげなく当時の世相を入れ、チクリと世の親(石堂先生と同世代)を批判(自己批判?)しているのは実に巧妙なやり口だが、1932(昭和7)年生まれの石堂先生としてはどうしてもやりたかったんだろうなあ(笑)。


 治よりも大物を釣りあげ、「トップ賞」の奪還を目指す五味が斉藤と光子を連れ、三浦海岸にやってきた。
 やはり来ていた山田が子供たちを暖かく見守るが、五味の釣り竿(ざお)にあまりにも大きな獲物がかかった様子に、山田は仰天して子供たちのもとに駆け寄る!


山田「おい離せ! 竿を離すんだ!」
五味「1万円もしたんだ!」
山田「おまえの命は1万円か! 離せ〜っ!」


 これはゴジラ映画『三大怪獣地球最大の決戦』(64年・東宝)の阿蘇山での空の大怪獣ラドン登場場面において、新婚旅行らしき夫婦の妻が火口に帽子を落としてしまい、取ってきてあげようと手数料をふっかけるが、散々値切られた末、
 

男「じゃあ200円、200円でどうです!」


 と交渉が成立して取りに行ったものの、ラドンの餌食になったと思われる哀れな男を思い出させたなあ。彼の命ってたった200円やったんやなあ(笑)。
 ちなみに男を演じたのは、この『80』後半各話評でも先述した『ウルトラセブン』(67年)第2話『緑の恐怖』でワイアール星人に襲われる酔っぱらいや、『ウルトラマンA』(72年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070430/p1)第40話『パンダを返して!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070204/p1)に登場した、宇宙超人スチール星人の人間体である黒マントの男など、ウルトラシリーズにもよくゲスト出演していた大村千吉(おおむら・せんきち)であった。


 山田と3人の子供たち、そしてこっそりと来て物陰から様子をうかがっていた治の前に、アンゴーラスの親怪獣が巨大な姿を現した!
 デザイン的にはホントに深海魚のチョウチンアンコウをそのまんまデカくしただけという趣(おもむき)だが、よく見ると頭部の触角の周囲にテグス(釣り糸)が多数からみついているのだ!
 導入部で三浦海岸から発せられるシグマ電波を調査しに来た矢的が、
 

矢的「なにか変わったことはありませんでしたか?」


 と山田に尋ねた際、山田は


山田「そうですねえ。磯がだいぶ釣り客に荒らされましてねえ。魚も減りましたよ」


 と答えていたが、まさにそれを集約させた実に秀逸な装飾なのである!
 まあ、今大流行の「エコ・テーマ」――筆者的にはこんな胡散(うさん)臭いものはないと考える。人類滅亡こそが究極のエコだ! って、あちこちでやってましたなコレ(爆)――の先駆けであるのだが、それを説教臭く連呼することなく、こうしたさりげないかたちで表現する分にはOKだ!
 
 
 一見マヌケにも見える造形ながら、大きな水しぶきをあげて海面から跳び上がり、画面手前に迫ってくる描写はスゲェ大迫力だぞ! クリクリとした大きな目玉はなんとも可愛らしいが、それをアップでギョロつかせる描写が何度も挿入されると結構コワく見えて実に効果的!


 矢的が搭乗する戦闘機スカイハイヤー、イトウとフジモリが搭乗する戦闘機シルバーガルが攻撃に出動! アンゴーラスの造形物がかなり大きいため、ロングショットが多用されているが、手前に配置された精密な漁港のミニチュアの上を、二機が画面奥のアンゴーラスに向かって飛行していくさまはなんとも臨場感にあふれている!
 アンゴーラスは一旦海底に身を潜めるが、まさにそのアンゴーラスの目線でとらえたかのような、海面越しに飛行するスカイハイヤーとシルバーガルをあおりで撮らえたカットがなんとも素敵! コレほかでは見たことないぞ!
 矢的が乗るスカイハイヤーが海面に急降下するや、突然アンゴーラスが海面から高々とジャンプ!!
 コレ用に尺の小さい造形物が用意されたと思うが、メインで使用する造形物をジャンプさせてたとしたら、ちょっとスゴすぎ!


 そのころ、イケダ隊員は横浜から発せられるシグマ電波の発信源を追い、治の自宅にたどりついていた! イケダの姿を見て、血相変えて玄関から飛び出してくるママ。


ママ「子供が、子供が三浦半島に行ってるんです!」


イケダ「お宅から三浦半島の怪獣が出すのと同じ電波が、電波ですよ〜! こっから出ているんですよ! なにかありませんでしたか?」


ママ「そんなことはどーでもいいんです! 治を助けて!」


 コミカルに演出されてはいるが、治を心配するあまり、イケダの言うことにまったく耳を貸そうとしない非理性的・感情的なママの慌てふためきぶりはなんともリアルであり、二人の名演が光っている!


オオヤマ「なんとかならんのか!」


 三浦半島一帯に避難警報を発令したというエミの報告にも「遅い遅い!」とボヤくなど、珍しく今回はナゼかイラついているオオヤマキャップ(隊長)。ついにアタマにきたか、イトウとフジモリになんとも珍妙な命令を下した!


オオヤマ「よし、怪獣を釣りあげるんだ!」


イトウ&フジモリ「エッ!?」(唖然!)


オオヤマ「釣りあげるんだっ!!」


 頭に血がのぼっているため、それ以上は何も言わないオオヤマキャップ(笑)。
 おそらくは人気(ひとけ)のない場所にアンゴーラスを空輸しろと指示したかったんだろうが、言うの面倒臭くなったか? これもかえってリアルだ(笑)。

 
 そしてシルバーガルの底部が開き、吊されたテグスの先端には巨大な釣り針に刺された巨大なミミズのような生物が!
 全長12メートルのシルバーガルとほぼ同じ大きさのあのエサは、いったいなにものやねんっ!(笑) つーか、最初から用意しとるやないかっ!(爆)
 『タロウ』に登場する防衛組織ZAT(ザット)の対怪獣作戦の中にも珍妙なものがあったけど、今回何の前フリもないからビックリするわ!(笑)
 しかしアンゴーラスのデカい上唇の中央にテグスが食いこんでいる演出も、なんとも味があるよなあ(笑)。


フジモリ「フィッシュ・オン!」


 アンゴーラスを釣りあげた際、フジモリが発した英語……なんやそれは(笑)。相当ヘンなことをやってるのに、この一連の場面でイトウとフジモリが大真面目に演技している姿はかえって爆笑を誘う(笑)。いいセンスだ!

 
 だがアンゴーラスにエサを取られて「釣りあげ作戦」は失敗!
 アンゴーラスはスカイハイヤーに口から猛烈な水流を吐きかけ、スカイハイヤーは海面に着水! この際にあげる水しぶきもなんともいい感じだ!


 UGMの攻撃をものともせず、アンゴーラスが子供たちと山田にめがけ、海岸に接近! アンゴーラスが迫る特撮カットの手前を彼らが逃げる合成映像は緊迫感抜群だ!


光子「飯田くん、あたしたちと一緒に逃げないで!」


治「どうして?」


五味「だって怪獣はおまえを狙ってるみたいじゃないか!」


治「そんなことない!」


五味「そんなことある!」(笑)


山田「君たち! ここまで来たら、みんな一緒だ!」


光子「だってあたし、死ぬのイヤよ〜」


治「わかったよ。わかりましたよ。どーせ僕がひとりで死ねばいいんだろっ!」


 山田が制止するのも聞かず、アンゴーラスに向かって駆けだしていく治……
 友達だと思っていたはずの人間から放たれた、なんとも残酷で薄情な言葉……子供たちが内面に抱えた負の一面を白日(はくじつ)のもとにさらけ出した石堂先生は偉大だ!

 
 筆者が別項で語った第31話『怪獣の種(たね)飛んだ』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101127/p1)にほしかったのは、まさにこんな要素なのである!

 
 『A』第3話『燃えろ! 超獣地獄』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060521/p1)で異次元人ヤプールも語っていたではないか!


ヤプール「子供が純真だと思っているのは人間だけだ!」


光子「五味くん、ちょっと、言いすぎじゃない?」
五味「おまえが先に言ったんだろっ!」


 互いに責任をなすりつけ合う二人の姿もまたリアル! 五味が手をバタバタさせ、体を跳び上がらせながらセリフを放つ姿がまた最高! こいつええ役者やのう(笑)。


 スカイハイヤーから脱出し、海岸に泳ぎついた矢的はオオヤマキャップに無事を報告。シグマ電波の発信源であるアンゴーラスの子供を発見したイケダと連絡をとるが……


イケダ「目玉は白目の方が多く、目玉の吸いものにするとウマそうな目ん玉」


 って、そんな料理あるかい!(笑) シリアスとコミカルを行ったり来たり。この起伏の激しさに富んだメリハリの強さこそ、石堂先生の真骨頂なのである!

 
 イケダが呑気(のんき)に子供の特徴を実況する中、アンゴーラスの親怪獣がヒレで巻き起こす大津波三浦半島を襲う!
 マリーナに停泊した多数のヨット、湾岸道路に乗り捨てられた車の列に大量の放水がかぶるさまは圧巻だが、なんと湾岸道路の下には多数のテトラポットまでもが配置されている! 実にぜいたくなミニチュアワーク!


 ついに矢的はエイティに変身!
 海中から跳び上がり、宙で華麗に二回転を決め、しぶきを上げてアンゴーラスに向かって駆けだしていくエイティ!
 大きな尾ヒレをバタつかせ、その巨体でエイティにのしかかるアンゴーラス!

 
 ここで筆者は重要なことを忘れていたことに気づく! アンゴーラスは先述したようにアンコウをそのままデカくしたようなデザインであり、手足はないのだけれど、造形物の中に人間が入っている! つまりスーツアクターが中に入る着ぐるみとして製作されているのだ!
 実は筆者が『80』を通して観るのは17年ぶりのことであり、アンゴーラスは第32話『暗黒の海のモンスターシップ』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101204/p1)に登場したスクラップ幽霊船バラックシップのように、人間が中に入らない造形物だと思いこんでいたのである。今回の再見でエイティとのバトルを観るまでは(汗)。
 このデザインでは到底派手なアクションは期待できるハズもないのだが、エイティの二(ふた)回りはあろうかと思えるほど巨大なアンゴーラス、大プールの中でそれにのしかかられるエイティ、まさにスーツアクターも命がけである!


オオヤマ「子供はここにいるぞ!」


 治の家からアンゴーラスの子供をUGM専用車・スカウターS7(エスセブン)で輸送してきたオオヤマキャップがアンゴーラスに呼びかける!
 手前に漁港のミニチュアを配し、奥にエイティにのしかかるアンゴーラスを配したロングショットの特撮カットの中で、アンゴーラスがオオヤマの呼びかけに応えるように、こちらにチラリと視線を向ける芸コマな演技がなんとも素敵!
 
 
 同乗してきたエミと治のママ、そして子供たちが見守る中、治が水槽からアンゴーラスの子供を海に解き放つ。


 重厚(じゅうこう)な名曲『怪獣レクイエム』のインストが荘厳に鳴り響く中、親子が感動的な再会!
 親怪獣が喜びを表現するように大きな目玉をギョロつかせ、大きな口をグリグリと振るわせ、大きな尾ヒレをバタつかせてエイティに水しぶきをかける描写がなんとも芸コマだが、それを優しく見守る一同の表情をアップで挿入しているのがなんとも泣けてくるじゃん!


 「『80』でもそうでしたが、ウルトラマンシリーズには本来のいわゆる正統怪獣のラインとファンタジックなラインの2つがあるわけです。特に最初のシリーズで実相寺昭雄監督が描いた怪獣の側−差別される側からの視点や演出というのは実に優れていると思います。これは実相寺さんの築いた素晴らしい設定です。体質と言いますか体制と言いますか、そういったものをある程度意識して私も一本撮ったことがあります。『(新)コメットさん』でウルトラマンタロウがゲストの話で、東光太郎が地球では治すことのできない病気を抱えた宇宙人の少年を救うために、地球でのコメットさんとの平和な生活を捨てる、というものでした」
 (「監督・湯浅憲明が語った『ウルトラマン80』」・『君はウルトラマン80を愛しているか』(辰巳出版・06年2月5日発行・05年12月22日実売・ISBN:4777802124))


 『(新)コメットさん』(78年)第43話『初恋の人ウルトラマン』のことである。
 怪獣の親子や夫婦や弱い怪獣にコミカルな怪獣やシミったれた話なんて邪道だ!
 とリアル&ハード&SF志向のマニアは考えるのだろうが、『ウルトラマン』(66年)第23話『故郷は地球』に登場する棲星怪獣ジャミラ、第35話『怪獣墓場』に登場する亡霊怪獣シーボーズなど、親子や夫婦という俗っぽいものではないけれど(後者はかなり擬人化されているが)、多少コミカルに描写されようとも弱者や被差別者でもある怪獣の側からの視点や演出というのは、実は彼らのような者が最も信仰する故・実相寺昭雄(じっそうじ・あきお)監督&故・佐々木守脚本に通じるものであったことを忘れてはならないのだ。
 てなわけで、反論はキッチリと返しましたぜ(笑)。



<こだわりコーナー>


*釣り人・山田高夫を演じた坂本新兵(さかもと・しんぺい)は、筆者のような60年代最末期から70年代にかけて幼年期・少年時代を過ごした世代にとっては、幼児向け遊戯番組『ママとあそぼう! ピンポンパン』(66〜82年・フジテレビ。氏は出演者の中で唯一16年の「皆勤賞」だった)の「しんぺいちゃん」としての姿、あるいは児童ドラマ『ケンちゃん』シリーズ(69〜82年・国際放映 TBS)の「おまわりさん」役の出演などで強く記憶に残っている人物である。
 『帰ってきたウルトラマン』(71年)第29話『次郎くん怪獣に乗る』(72年3月12日公開『東宝チャンピオンまつり』で劇場上映もされている)にも、レギュラーの坂田次郎少年の友人・よし子の父親役でゲスト出演している。
 「しんぺいちゃん」という愛称で親しまれたほど、常にニコニコとした笑顔が印象的な氏であったが、実は「私生児」として生まれた過去を持ち、青年期はかなり荒れた生活を送っていたようであり、その経験から後年は俳優活動と並行し、保護司として罪を犯した少年を導いていた。
 なお、声優としても『鉄腕アトム』(63〜66年・虫プロ フジテレビ)の中村警部、『ひょっこりひょうたん島』(64〜69年・NHK)第50話までの「ライオン王国シリーズ」のコック長など、テレビ草創期のアニメや人形劇で活躍していたが、実写版『鉄腕アトム』(59年・三笠映画 毎日放送)では悪役を演じていたという、筆者映像未確認の情報がある。
 96年6月30日に心不全のため、61歳の若さで他界している。


*治のママを演じた松木路子(まつき・みちこ)は、同じ円谷作品では『怪奇大作戦』(68年)第26話『ゆきおんな』で秋子と雪女の二役で出演している。また、映画『ひき逃げ』(66年・東宝)ではなんとオオヤマキャップを演じる中山仁(なかやま・じん)とすでに共演を果たしていた!
 本作出演後、結婚を機に芸名を永野路子に改名。時代劇や刑事ドラマ、2時間ドラマに多数ゲスト出演しているほか、資生堂・ライオン・カゴメなどCM出演も数多い。


*『80』と同じく80年4月に矢口高雄原作・講談社少年マガジン』連載漫画(73〜83年)のアニメ化『釣りキチ三平』(80〜82年・日本アニメーション フジテレビ)がスタートしたこともあり、当時の小中学生の間では釣りがちょっとしたブームでもあった。私事で恐縮だが、筆者でさえ日曜になると父や弟とよく近くの海岸に足を運んだくらいである。
 80年は任天堂からゲーム&ウォッチツクダオリジナルからルービック・キューブ、タカラからチョロQなど、新種の玩具が続々発売されたが、それらを楽しみつつ、当時の小中学生は釣りのような古典的な遊びもまた享受していたのである。今回のような話が生み出されたのには、こうした背景も多分に影響していると思われるのだが。実際マナーの悪い釣り客が捨てたテグスによる海の汚染は当時すでに問題化していたのである。
 

*治がかぶっている帽子には、なんと79年にSONY(ソニー)から発売された携帯型カセットプレイヤー「WALKMAN(ウォークマン)」のロゴが! インターネットによる音楽配信なんて考えられなかった当時は、これが最先端のスタイルだったんですぜ(笑)。


*治と3人の子供たちが釣りに来ている際、皆ダウンジャケットを着用しているが、光子が赤、五味が黄色、斉藤が青、治が白と、キッチリと色分けが。なんか戦隊みたいだなあ(笑)。


*これが放映された翌週の80年11月26日は年末恒例の『輝く日本レコード大賞』各部門賞ノミネートの模様が特番で放送されたため、『80』の放映は「お休み」となった。もっとも当時中学生であった筆者は実を云うとすでにこのころは『80』をほとんど視聴していなかったのだが(汗)、最優秀新人賞の候補となった松田聖子(まつだ・せいこ)をお目当てに、この日はしっかりとTBSにチャンネルを合わせていたのであった(笑)。


2009.11.23.


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2010年春号』(2010年4月11日発行)〜『仮面特攻隊2011年号』(2010年12月30日発行)所収『ウルトラマン80』後半再評価・各話評より分載抜粋)



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