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ウルトラマン80 39話「ボクは怪獣だ~い」 ~1981年版カネゴンには終わらず!

(「ボクは怪獣だーい」という表記は間違い。「ー」ではなく「~」が正解です・笑)
ファミリー劇場ウルトラマンエイティ』放映記念「全話評」連動連載!)
『ウルトラマン80』 再評価・全話評! ~序文
『ウルトラマン80』#37「怖れていたバルタン星人の動物園作戦」 〜UGM&子役らの石堂節のセリフ漫才が炸裂!
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『ウルトラマン80』全話評 〜全記事見出し一覧


第39話『ボクは怪獣だ~い』 〜1981年版カネゴンには終わらず!

怪獣少年テツオン 宇宙植物登場

(作・平野靖司 監督・湯浅憲明 特撮監督・高野宏一 放映日・81年1月7日)
(視聴率:関東9.8% 中部10.8% 関西12.0%)
(文・久保達也)
(2010年11月執筆)


 学校の勉強も少年野球のプレーもイマイチな小学生・田畑テツ男がある日、野球の試合中に偶然ボールが当たって墜落した銀色のミニミニUFOの中から現れたマダラ模様の「UFOの卵」(正体は宇宙植物の種子)を皆で奪い合ううちに、偶然にもそれを飲みこんでしまう。


 テツ男は『ウルトラQ』(66年)第16話『カネゴンの繭』に登場した人間大サイズの怪獣・コイン怪獣カネゴンに似た形状の頭部に(緑色の一対の触角は回転ギミックがある)、『快獣ブースカ』(66年・円谷プロ 日本テレビ)に登場した人間大サイズの主役怪獣もとい快獣・ブースカにそっくりのふっくらとした体型をした少年怪獣テツオンへと変貌を遂げてしまう。全身黄色で塗装されているのもブースカを彷彿とさせるが、ところどころにモールドされている穴模様や背中のトゲ状のヒレが緑色なのは、宇宙植物の影響による産物であることの象徴だろうか?


 以後、テツオンは野球では打てば必ずホームランなどのファインプレーを連発。友人が困っていた学校の宿題を肩代わりするどころか、近所の浪人生の学習指導までも引き受けるほどの優秀な頭脳を持ち(笑)、近所のガンコおやじの敷地に入ってしまったボールを念力で取り戻したり、テレポーテーション(瞬間移動)といった超能力をも発揮できるようになる。ちなみに浪人生への学習指導の代償はケーキ30個だが、これはブースカのラーメン30杯に対するオマージュだろう。


 防衛組織・UGMに対してテツオンを元のテツ男に戻してくれるよう懇願する両親をよそに、テツ男はこのまま怪獣でいた方がいいと主張する(笑)。そこで主人公・矢的猛(やまと・たけし)隊員は優秀な怪獣として生きるかダメ人間に戻るのかテツ男に人生上の究極の選択を迫る……



「これはまったくのカネゴンになっちゃいましたね(笑)。最初はそのつもりじゃなかったんですけど、できてみたら「なんだ、これカネゴンじゃん」って(笑)」


「自分としては、カネゴンというよりも、もっと恐い怪獣にしたかったんです。突然変異の恐ろしさみたいなことですね。修正しているうちに、妙に可愛らしい怪獣になっちゃったんですね。『80』の後半は、突然の路線変更で子供向けにするというので、僕自身ちょっと萎(な)えちゃったんですよ(笑)。それもあって、後半は凄く苦労して書いたのを覚えていますね。昔の怪獣を出そうという話にも抵抗がありましたね」


タツミムック『検証・ウルトラシリーズ 君はウルトラマン80を愛しているか』(辰巳出版 06年2月5日発行・05年12月22日実売・ISBN:4777802124)脚本/平野靖士インタビュー)



 平野氏はそう発言しているが、『カネゴンの繭』が金に異常に執着する小学生・加根田金男(かねだ・かねお)がカネゴンへと変貌し、それを仲間たちがなんとかして元の人人間の姿に戻そうとする珍騒動を描いていたのに対し、今回は逆にテツ男自身がラスト近くまで元の人間の姿に戻りたいという願望を持たず、周囲も彼の才能・能力をありがたがるという展開であることから、まったくのリメイクには終わっていないと思える。


 金男が同作冒頭で描写されているように完全なガキ大将タイプであったのに対し、テツ男がまったくのダメ人間として設定されたことにより、同様の題材を扱いながらも正反対の物語を描き出すことには成功している。姿は怪獣であるもののウルトラマンと同様、子供の変身願望を満たす展開にはなっているとも思うのだ。それこそ筆者みたいなダメ人間にはおおいに共感できる物語である(笑)。


 ただ、先の平野氏の発言にあったように、氏の当時の気分が作用してしまったのか、全体的には可もなく不可もなくといった印象であり、特筆すべき点があまりにも少ないのである。



 UFOが墜落した際、少年野球チームのひとり(『ウルトラマン80(エイティ)』(80年)初期12話分である「学校編」に登場したハカセ=上野博士みたいな小柄で眼鏡をかけた少年である・笑)が


「第1種接近遭遇ですよ、これは」


 と語ったのは、70年代末期に日本に海外SFブーム(第3次怪獣ブームはここから派生した流れでもある)を巻き起こしたスティーブン・スピルバーグ監督の映画『未知との遭遇』(コロムビア映画・77年・日本公開78年2月25日)からの引用。


 テツオンを町の仮装大会に出場させたことで子供たちがもらえた賞品がビデオカメラのセットであったり(当時はまだビデオデッキすらも一般家庭にはそれほど普及していなかったことから、それこそ「高嶺の花(たかねのはな)」としての印象を強くさせている)、それを使ってテツオンと出来の悪いコスチュームのウルトラマンエイティを戦わせて怪獣映画を撮影するというのも(特撮班の特撮美術の余りものであろうミニチュアセットが妙にリアル・笑)、1960年前後生まれの青年期に達したオタク第1世代の特撮マニアたちによる自主映画の製作が華やかだった80年前後の時代の反映にも思える。


 さらには、テツオンを見て驚いたラーメン屋の出前持ちが自転車ごとひっくり返る描写は、70年代の実写ドラマでは定番として描かれた様式美的なコミカル描写であり、ユルユルほのぼのとした世界観の中で次々に出てくる時代の象徴の数々は、中年男をニンマリとさせるものがある。


 だが、今一歩突き抜けた面白さには欠けているようにも思う。それこそ石堂淑朗(いしどう・としろう)先生の脚本回である第34話『ヘンテコリンな魚を釣ったぞ!』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20101218/p1)や第36話『がんばれ! クワガタ越冬隊』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110101/p1)の方が、同じ子供たちがギャアギャアと騒ぎまくるような話でもよほど笑える描写が多かったりするようにも感じられるのだ。監督は昭和の『ガメラ』シリーズ(65〜80年・大映)で有名な故・湯浅憲明(ゆあさ・のりあき)であり、氏は第34話も手がけているのだが、やはりあのギャグ描写は監督の演出よりも石堂先生のコミカル会話劇による部分が大きいのではなかろうか?(笑)


 UGMのメンバーも通常の回以上にまじめに演じている印象がある。そもそも作戦室でUGMに湿っぽく訴える両親の描写などもそうだ。これらも『カネゴンの繭』の金男の両親みたいに金男以上にハチャメチャな姿を描いた方がよかったのではないのか? これまた石堂先生の脚本回である第37話『怖(おそ)れていたバルタン星人の動物園作戦』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110108/p1)のUGM隊員たちのコミカル会話劇のように、もっと周囲のキャラクターも含めてこの回限定で徹底的にオーバーアクションの喜劇として演出した方がよかった題材ではないのかとも思える。
 時代の空気の違いや漫画的なギャグ演出がテレビドラマ一般でも定着した昨今、全編ギャグ演出の話が続出した『ウルトラマンマックス』(05年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060311/p1)や『ウルトラマンメビウス』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070506/p1)などを経過したあとの現在の観点では、どうしてもそんな欲求が出てきてしまうのである。



子供たち「や〜い、オバケ、オバケ〜」
カネゴン「オバケなんかじゃないよ!」


 都会の雑踏で見知らぬ子供たちにはやしたてられ、ひとりたたずむカネゴンの姿が『カネゴンの繭』では印象的に描かれていた。今回のテツオンもその能力の高さゆえに、逆に友達が次第に離れていき、カネゴン同様の孤独を味わうことになる。美しい夕焼けの中でひとりたたずむテツオンの描写は、それを強く印象づける名場面となっている。


 野球や勉強を努力なしでできても、それが原因で友達を失ってもいいのか? と矢的に諭(さと)され、交番の前でテツオンに迷惑をかけられた人々に謝る両親の姿を見て、テツ男は遂に


「元の姿に戻りたいよう〜!」


 と叫ぶ。


 矢的はテツ男を怪獣化させた宇宙植物を倒すため、エイティへと変身、ミクロ化してテツオンの体内へと突入する!


 だが、これも尺があまりにも短く、この宇宙植物もウルトラ怪獣然とはしておらず名前も設定されていなくて、画面ではディテールが判然としづらいのも難点である。両腕に長い触手を持ち背中に甲羅があるゴキブリのような昆虫型の生物のようには見えるのだが。


 怪獣の体内はともかく人体への潜入は、『ウルトラセブン』(67年)第31話『悪魔の住む花』で宇宙細菌ダリーに吸血鬼にされた女子大生・香織(かおり)の体内にウルトラセブンがミクロ化して進入して以来のことなのだから、それなりに長くていねいに描いてバトルも充実させてほしかった。
 (説明不要だろうが、この女子大生は近年ではNHKの連続テレビ小説ゲゲゲの女房』(10年)に貸本屋の店主役で出演していた松坂慶子が演じていた。ちなみにこのダリーとのバトルの尺は『セブン』の中では比較的には長い方である)


 テツオンの体内の特撮美術セットの出来も『セブン』のころと比較すると進歩を遂げているような印象があるので、なおさらもったいないのであるが…… 特撮演出の方でも元に戻ったテツオの姿と、夜空に立つエイティの勇姿の合成カットが最も印象的というのもなぁ。



 今回は新年(1981年)1発目の放映となった。しかし、歴代ウルトラシリーズの新年1発目は、


・初代『ウルトラマン』(66年)では(67年元旦の放映!)、どくろ怪獣レッドキング・彗星怪獣ドラコ・冷凍怪獣ギガスが日本アルプスで激突する第25話『怪彗星ツイフォン』
・『ウルトラセブン』(67年)では、現在でも根強い人気を誇る宇宙ロボット・キングジョーが登場する第14話『ウルトラ警備隊西へ(前編)』
・『ウルトラマンタロウ』(73年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071202/p1)では、ウルトラ6兄弟と暴君怪獣タイラントの戦いを描きつつ、「35大怪獣・宇宙人登場」として過去の格闘名場面集までをも織りこんだ第40話『ウルトラ兄弟を超えてゆけ!』
・『ウルトラマンレオ』(74年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090405/p1)では、ウルトラ兄弟の登場とレオ&アストラ兄弟が暗黒星人ババルウ星人と対決する第39話『レオ兄弟 ウルトラ兄弟 勝利の時』


 といった、新年というよりもクールの変わり目だったからだろうが、強敵怪獣や複数怪獣に歴代先輩ヒーローが登場する、実に正統な「怪獣もの」らしい豪華なイベント編であったのだ。


 やはり、新年1発目はそれくらいに派手なイベント編で幕を開けた方がよかったのではなかろうか? 『80』の場合、80年12月31日の放映は毎年大晦日に放映していた第22回の『輝く! 日本レコード大賞』(1959年~)の放送で1週休みとなったため(視聴率は34.3%!)、視聴習慣のことを考えればなおさらだったのではないのか?


 この回から81年1月度の『80』は比較的ユル目の作品が連続する。そのことが2月初っぱなに放映されたせっかくのイベント編である第43話『ウルトラの星から飛んできた女戦士』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110219/p1)の視聴率が、関東地区での『80』全話中ワースト2位(6.9%)を記録したことと無関係であるとは筆者にはどうしても思えないのである。せめて第44話『激ファイト! 80VS(たい)ウルトラセブン』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110226/p1)や第46話『恐れていたレッドキングの復活宣言』のようなイベント編や娯楽活劇編と交互に放映していれば、そのような事態は防げたのではなかろうか?


 今回の騒動の発端となったUFOで地球に送られた宇宙植物の種子は、『セブン』第2話『緑の恐怖』で人間を植物化させた宇宙金属・チルソナイト808(はちまるはち)のような侵略の手段ではなく、地球への友好のしるしとしての贈りものといった解釈が矢的隊員と城野エミ(じょうの・えみ)隊員の会話でなされている。あくまでも「事故」といったところだが、それに比べれば加根田金男がおカネに執着するマイナスの精神が彼をカネゴンに変貌させたというシチュエーションの方がよほど『80』的だったと思えたりもするのだが。ところでここまで書いてきて気づいた。マイナスエネルギー怪獣の元祖とは実はカネゴンではなかろうか!?(笑)


 それにしても、少年野球の試合を見ながら会話をする私服姿の矢的とエミのツーショットはかなりの久しぶり。矢的は白のTシャツに黒のジャケット・ジーンズ姿で、エミは赤いツーピース姿である。第43話でエミ隊員が退場することの伏線として、こうしたふたりが同伴している描写がこの時期にもっとあってもよかったようには思うが、この時代の特撮ジャンル作品にシリーズ構成や縦糸を求めるのは難しかったのだろう(汗)。


 本話の各話評もふだんより特撮の尺を短くして(笑)、今回の脚本を担当した平野靖士(ひらの・やすし)が考えるウルトラマン像を紹介して幕とさせていただきたい。



ウルトラマンは普通に戦うわけじゃなくて、アクションの中にドラマがあるわけですけど、僕はヒーローが暗くなってはいけないと思うんです。ウルトラマンは、基本的には深く悩んだりしたらいけないと思う。そのためにどのように話を構築するかと言えば、いかに悪の論理をハッキリさせるかだと思うんです。ヘンに悪党に正当性があると、正義の味方が悩んじゃう。でも、わかりあえる相手じゃないんだったら、やっつけるか、よそへ行ってもらうしかないわけです。そういう善悪の割り切りがはっきりある中での痛快な戦いというのが、最もウルトラマンらしい戦いだと思いますね」

タツミムック『検証・ウルトラシリーズ 君はウルトラマン80を愛しているか』(辰巳出版 06年2月5日発行・05年12月22日実売)脚本/平野靖士インタビュー)


 今回の少年怪獣テツオンと平野のポリシーとは必ずしも合致はしていない(笑)。いわば不本意でも変化球を投げてみせて、なおかつ相応に仕上げてもみせたといったところが総括となるのだろう。



<こだわりコーナー>


*「『80』の後半は、突然の路線変更で子供向けにするというので、僕自身ちょっと萎えちゃったんですよ(笑)。」

タツミムック『検証・ウルトラシリーズ 君はウルトラマン80を愛しているか』(辰巳出版 06年2月5日発行・05年12月22日実売)脚本/平野靖士インタビュー)


 円谷プロの満田かずほプロデューサーは、「『80』では路線変更したつもりはない(大意)」と各誌で発言しているが、どう見ても路線変更は幾度もしていただろう(笑)。平野の発言はそれを傍証するものでもある。


*テツオンを演じた山村哲夫は、『快獣ブースカ』でブースカの弟怪獣・チャメゴンを演じたほか、『ファイヤーマン』(73年・円谷プロ 日本テレビ)の登場怪獣、円谷プロ創立10周年記念映画『怪獣大奮戦 ダイゴロウ対ゴリアス』(72年・東宝)の怪獣ダイゴロウなどでスーツアクターを務めている。『ウルトラQ』第10話『地底超特急西へ』(前半のコメディタッチが一転してスリリングな展開となるのがたまらない、個人的には『Q』の最高傑作!)で靴磨きの少年・イタチ、『ウルトラマン』第9話『電光石火作戦』でボーイスカウト・敏男も演じた、子役出身のスーツアクターという変わり種である。『80』の当時は着ぐるみの仕事はかなり久しぶりだったと思われるが、やはり同様の路線のチャメゴンやダイゴロウを演じた経験から抜擢されたのだろう。


*予告編では本編未使用の場面が使われる場合が少なくないが、テツオンはどうやら八百屋(やおや)でも騒ぎを起こしていたようである(マニア向け書籍で明かされたシナリオに基づく出演者名には八百屋の役名と俳優名も表記されている)。


*テツオンが子供のひとりが持っていた江崎グリコのお菓子「ポッキー」を取り上げて食べてしまう場面がある。これはスポンサーに関連会社のグリコ協同乳業があったためのタイアップであるだろう。だがラストでエミが少年野球の試合を見ながら食べているのは、メーカーも商品名も特定できない袋入りのおセンベイのようなお菓子だったりする。これはラストのナレーションで


「テレビを観ているキミも、ヘンなものを口に入れると怪獣になっちゃうかもしれないぞ」


などと語られるため、ここでスポンサーの商品を使用して「ヘンなもの」に見えてはマズいという配慮からだろうか? ハッピーエンドでそのお菓子を食べても怪獣になることはないのだから気の回し過ぎであり、堂々とグリコのなにかのお菓子を食べていた方が宣伝効果もあったと思うぞ(笑)。


ブースカに酷似した体型のテツオンとテツ男少年の声を兼任したのは、『快獣ブースカ』でもブースカの声を演じていた声優の高橋和枝(たかはし・かずえ)である。1929(昭和4)年3月20日生まれで99年3月23日没。余談だが、彼女の亡くなった1999年とは『ブースカ』のリメイク『ブースカ! ブースカ!!』(円谷プロ テレビ東京)が放映された年でもある。
 高橋は終戦直後の1949(昭和24)年にNHK東京放送劇団養成所の第3期生となる。同期には『ウルトラマンタロウ』で防衛組織・ZAT(ザット)の朝日奈勇太郎隊長を演じた故・名古屋章(なごや・あきら)や、テレビアニメ第1号『鉄腕(てつわん)アトム』(63年)とそのリメイク版(80年)でレギュラーキャラ・お茶の水博士の声を演じた声優の勝田久(かつた・ひさし)らがいた。NHKラジオドラマ『都会の幸福』(49年)でデビュー。52年に退団後はラジオ東京(現・TBS)の所属となり56年には一旦フリーとなるが、その後は河の会やテアトル・エコーにも在籍している。
 円谷作品とは非常に縁の深い声優であり、『快獣ブースカ』以外にも、『チビラくん』(70年・日本テレビ)に登場した着ぐるみキャラクター・ガキンコ(2代目。初代の声を演じたのは現在でも活動するマルチタレントの水森亜土(みずもり・あど))、『恐竜探検隊ボーンフリー』(76年・NET→現テレビ朝日)の正木博士の孫・正男、『スターウルフ』(77年・日本テレビ)のコンピューターロボットRM8号、『恐竜大戦争アイゼンボーグ』(77年・東京12チャンネル→現テレビ東京)の魔女ゾビーナなどのレギュラーキャラのほか、『ウルトラマンレオ』第23話『ベッドから落ちたいたずら星人』でも快人コロ星人の声を演じている。


 また、映画『ウルトラマン物語(ストーリー)』(84年・松竹)の併映作品だった円谷プロ製作の映画『アニメちゃん』にカネゴンや友好珍獣ピグモンとともに登場したブースカの声も再演した。ちなみに『アニメちゃん』はアニメではなく実写映画である(笑)。脚本は本話の平野靖司で改名後の平野靖士名義で担当。ビデオテープの映像ソフトの時代も含めて2010年現在に至るまで一切映像ソフト化されていない「幻の作品」である。
 東映不思議コメディシリーズ『有言実行三姉妹(シスターズ)シュシュトリアン』(93年・東映 フジテレビ)第40話『ウルトラマンに逢いたい』に登場したブースカの声もきちんと再々演していた。ちなみに『シュシュトリアン』へのブースカのゲスト出演は、名場面再編集&新撮オリジナルビデオ作品『ウルトラマンVS仮面ライダー』(93年・バンダイビジュアル)の打ち上げの席で、当時の円谷一夫(つぶらや・かずお)営業部長が東映の日笠淳プロデューサーに提案して実現したコラボレーションである。円谷プロの旧社屋をロケ地に、宇宙忍者バルタン星人・隕石怪獣ガラモン・宇宙怪獣エレキング・三面怪人ダダ・古代怪獣ゴモラなどが登場したほか、初代『ウルトラマン』で主人公のハヤタ隊員を演じた黒部進(くろべ・すすむ)が怪獣の着ぐるみのメンテナンス係役で出演してウルトラマンへの変身まで披露した!


 他にも『超力(ちょうりき)戦隊オーレンジャー』(95年・東映 テレビ朝日http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110926/p1)第30話『地球がグースカ』(笑)ではゲスト怪人・マシン獣バラグースカの声を演じたが、もう特撮変身ヒーローもので育った世代が製作スタッフ側にまわりはじめていた時代なので、やはり名前がブースカと似ていたことからのシャレのキャスティングだろうか? それともこの回は『快獣ブースカ』にも参加していたベテラン脚本家・上原正三の筆によるエピソードだったから氏直々のご指名だったのだろうか?
 テレビアニメでは『鉄人28号』(63〜67年・エイケン フジテレビ)の主人公・金田正太郎少年、赤塚不二夫漫画原作の『おそ松くん』(66年・スタジオゼロ 毎日放送)のライバル・チビ太、永井豪原作の合体ロボアニメ『鋼鉄ジーグ』(75年・東映動画→現東映アニメーション NET)の敵首領・女王ヒミカが特に有名だろう。レアなところでは『ドラえもん』(79年〜・シンエイ動画 テレビ朝日)の再アニメ化の大ヒットを受けて1980年正月三箇日の3日連続で夜のゴールデンタイムに放映された正月スペシャルの1月2日放映分『ドラえもんのびっくり全百科』内の「ドラえもんVSドラえもん」に登場した両耳が生えている黄色いドラえもんの声なども演じている。


 だが、なんといっても最も有名なのは、『サザエさん』(69年〜・エイケン フジテレビ)の1クールで降板した大山のぶ代(おおやま・のぶよ。もちろん79年版のドラえもんの声で有名)に代わって98年に倒れるまでの29年間も務めつづけた小学生男子・磯野カツオの声だろう。彼女が降板した当時、磯野家の隣宅に住まう伊佐坂浮江(いささか・うきえ)役だった冨永みーなが代役としてカツオを演じることとなったのだが、2010年で早くも12年が過ぎ、3代目カツオの声もすっかりお茶の間に定着していることから、若い世代では高橋が演じた2代目カツオの声が記憶にない人も多いのではなかろうか?
 なお、現在ではよく知られていることであるが、魔法少女アニメ『魔法の妖精ペルシャ』(84年)やロボットアニメ『機動警察パトレイバー』シリーズ(88年~)の主演声優としても有名な冨永は、子役時代に冨永美子(とみなが・よしこ)の芸名で『ウルトラマンレオ』に少女・梅田カオル役でレギュラー出演しており、『レオ』第23話ですでに高橋と共演していたことになる。その高橋の代表作であるカツオ役を冨永が引き継ぐとはなんとも不思議な因縁を感じてならない。ちなみに1955~65年にニッポン放送で制作されたラジオドラマの『サザエさん』でも高橋はカツオを演じたというWikipedia情報があるが、そのラジオドラマの項目のWikipediaを参照するとカツオ役は別人となっている(笑)。よって真相は不明である。1977~87年にも文化放送制作でアニメ同様に東芝の提供で『サザエさん』のラジオドラマが放送されていたそうで、これは登場人物をすべてアニメと同じ声優が担当していたとのことだ。
 『サザエさん』の挿入歌『カツオくん〜星を見上げて』、『快獣ブースカ』の主題歌『快獣ブースカ』に挿入歌『陽気なブースカ』・『ブースカソング』・『ブースカ音頭』、『チビラくん』の挿入歌『ガキンコガキ大将』なども高橋は自ら歌唱している。現在でこそ声優がイメージソングを歌唱することは当然のことになっているが、当時はここまで歌っていた声優は珍しい。刑事ドラマ『太陽にほえろ!』(72〜86年・東宝 日本テレビ)第369話『その一言』(79年)にキオスクの店員役、第424話『拳銃を追え!』(80年)に容疑者の母親役で出演するなど顔出しの役者としても活躍していた。他界して11年を経た本年2010年、第4回声優アワード特別功労賞を受賞。彼女が残した功績はあまりにも大きい。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2011年号』(2010年12月30日発行)所収『ウルトラマン80』後半再評価・各話評より分載抜粋)



ボクは怪獣だ~い

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「ボクは怪獣だ~い」が配信中とカコつけて
#ウルトラマン80 #ウルトラマンエイティ
「ボクは怪獣だ~い」評! CSファミリー劇場で放映記念とカコつけて!
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「ボクは怪獣だ~い」評! 〜1981年版カネゴンには終わらず!
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