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轟轟戦隊ボウケンジャー後半合評 ~30作記念に相応しいか!? 6人目ボウケンシルバー&大剣人ズバーン!

(明日日付で、アカレッドが初登場したビデオ作品『轟轟戦隊ボウケンジャーVSスーパー戦隊』評を発掘UP予定!)
『轟轟戦隊ボウケンジャー THE MOVIE 最強のプレシャス』 〜賛否合評
『轟轟戦隊ボウケンジャーVSスーパー戦隊』 〜合評・アカレッド参上!
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スーパー戦隊シリーズ 〜全記事見出し一覧


 『海賊戦隊ゴーカイジャー』(11年)#21「冒険者の心」に、先の映画『ゴーカイジャー ゴセイジャー スーパー戦隊199ヒーロー大決戦』に続いて、『轟轟戦隊ボウケンジャー』(06年)の主人公、ボウケンレッドのチーフ明石暁(あかし・さとる)こと高橋光臣(たかはし・みつおみ)が登場記念!
 なんと、ついでに『ボウケン』の3大敵軍団のひとつ、ジャリュウ一族の長(おさ)・創造王リュウオーンがオリジナルと同様、ベテラン俳優・森田順平氏のボイスともどもに復活記念!


  ……とカコつけて、『轟轟戦隊ボウケンジャー』後半合評を発掘UP!


轟轟戦隊ボウケンジャー』後半合評 ~30作記念に相応しいか!? 6人目ボウケンシルバー&大剣人ズバーン!


轟轟戦隊ボウケンジャー』後半合評1 ~30作目の?

(文・内山和正)


 スーパー戦隊シリーズ30作記念となった『轟轟(ごうごう)戦隊ボウケンジャー』(2006)。「第30作」だと高らかに謳(うた)いあげているものの、メモリアルイヤーらしいパフォーマンスには欠けるように思う。


・10周年記念として、知名度の高かった嶋大輔氏(レッドファルコン)や一般のドラマで活躍していた森恵(もり・めぐみ)さん(ブルードルフィン)を起用した『超獣戦隊ライブマン』(1988・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110919/p1)――この時点では、現在シリーズ第3作ということになっている1979年の『バトルフィーバーJ』からを「スーパー戦隊シリーズ」と呼び、石ノ森章太郎原作の初期2作『秘密戦隊ゴレンジャー』(1975)・『ジャッカー電撃隊』(1977)は別勘定とされていた――。
・10周年達成を祝し、それまでの10戦隊が姿をあらわす番外編を実質的な第1話の前に配した『高速戦隊ターボレンジャー』(1989・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191014/p1)。
・20周年記念――現在のように1975年の『秘密戦隊ゴレンジャー』からカウントされるようになったが、戦隊シリーズとしては第19作目――として、当時のメインライター故・杉村升(すぎむら・のぼる・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090802/p1)氏をメイン続投させながらも、歴代戦隊の全メインライター(上原正三高久進(たかく・すすむ)・曽田博久・井上敏樹)が参加した『超力(ちょうりき)戦隊オーレンジャー』(1995・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110926/p1)。
 (シリーズ20作目の次作『激走戦隊カーレンジャー』(1996・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110521/p1)は特に記念作扱いはされていない)


・タイムスリップがあつかわれた戦隊であることをいかし、実質的な最終回のあとに25年間の24戦隊の歴史と自分たちの次の戦隊ガオレンジャーを目撃するという番外編を放送した『未来戦隊タイムレンジャー』(2000・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20001102/p1)。
・25作記念作として歴代の戦隊ヒーローからの選抜メンバーが登場するオリジナルビデオ『百獣戦隊ガオレンジャーVS(たい)スーパー戦隊』(2001・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20011102/p1)が製作された『百獣戦隊ガオレンジャー』(2001・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20011113/p1)。


 そしてその記念年の終了後も、『忍風(にんぷう)戦隊ハリケンジャー』(2002・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20021113/p1)では歴代戦隊俳優たちが6人目の戦士シュリケンジャーの変装した人物として登場。
 さらに『爆竜戦隊アバレンジャー』(2003・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20031111/p1)では毎回、爆竜ブラキオサウルスが歴代戦隊の主題歌の歌詞を引用して口にした。
 近年では『特捜戦隊デカレンジャー』(2004・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041114/p1)の石野真子(いしの・まこ)さん、『魔法戦隊マジレンジャー』(2005・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060313/p1)の渡辺梓(わたなべ・あずさ)さんと昼ドラで主演をはるようなベテラン女優が重要な脇役として配された。


 それらに比して本作は特別感が薄いのだ。
 たしかに『五星(ごせい)戦隊ダイレンジャー』(1993・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20111010/p1)の土屋圭輔氏(キリンレンジャー)などの歴代シリーズ出演者が33話「Task.33 レムリアの太陽」〜34話「Task.34 遼かなる記憶」でボウケンイエロー菜月の父母役などでゲスト出演したが、7話「Task.7 火竜(サラマンダー)のウロコ」に登場した戦隊シリーズ超新星フラッシュマン』(1986)でも敵幹部リー・ケフレンを演じておられたベテラン俳優・清水紘治(しみず・こうじ)氏以外は、出演してくれることが驚きではない無難なメンバーで人数も多いとは言えなかった――15話「水の都」〜16話「水のクリスタル」に出演した柴木丈瑠(しばき・たける)氏(ガオブルー)や、ボウケンイエローの母親役で1997年の『電磁戦隊メガレンジャー』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20111121/p1)のたなかえり(旧・田中恵理)さん(メガイエロー)、ボウケンシルバーの母親ケイ役で東山麻美さん(メガピンク)が出演して、両者ともいまも女優を続けておられることは嬉しかったものの――。


 来春に『轟轟戦隊ボウケンジャーVS(たい)スーパー戦隊』(2007・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110718/p1)のビデオ発売が発表されたものの、ここ5年間のメンバーからの選抜で、正規5人メンバーではない「もうひとりの戦士」的な人が多いのは趣向としてはおもしろいものの、30周年の意義には欠ける。個人的には前番組の『マジレンジャー』が好きだっただけに、オリジナルビデオ『轟轟戦隊ボウケンジャーVSマジレンジャー』が発売されないさびしさのほうが大きい。


 テレビ本編に話を戻すと、ベテラン俳優の男性悪役はひさしぶりであるし、ヒーロー側の後見人にもベテラン男優が配されているのは、近年の戦隊としては人件費を使ったといえるだろう。さらにヒーローメンバーにも芸歴の長い有名子役上がりの末永遥さん(ボウケンピンク)が起用されている。


 けれども、なにかサプライズ(驚き)とか豪華さとかは感じられない。


 たとえば、


誠直也(まこと・なおや)氏に初代スーパー戦隊『ゴレンジャー』のリーダーであった海城剛(かいじょう・つよし)=アカレンジャーを再び演じてもらい、本作のリーダー明石暁(あかし・さとる)ボウケンレッドと共闘させる
・いまや著名になってしまっために「大人の事情」で出演できそうもない、さとう珠緒さん(オーピンク)・玉山鉄二氏(ガオシルバー)・金子昇氏(ガオレッド)・永井大(ながい・まさる)氏(タイムレッド)ら有名人たちをなんとかひとりでも登場させる
・通常年の戦隊では許されないことだが、過去の戦隊のキャラクターたちがゲスト出演し、その後の人生が語られる


 とかのイベント的な要素がほしかったところだ。たなかさんや東山さんのゲスト出演も、女子高生だった千里(ちさと)=メガイエローや、みく=メガピンクの現在こそ見たかった。


 まだ番組が終わったわけではないので、これから何か用意されているのかも知れないし、30作目もシリーズにとっては通過点に過ぎないのでお祭り気分を求めすぎるのも誤りかもしれないのだが。



 さて、作品自体の感想に移ろう。


 本作のモチーフは「冒険」と「車」で、後者は2年前の『特捜戦隊デカレンジャー』のモチーフのひとつと共通するものの「車モノの決定版としたい」とのことなので、25作記念の『百獣戦隊ガオレンジャー』がやはりモチーフにされる頻度の高い「動物モノ」の決定版をめざしたことと考えあわせれば、妥当な選択ともいえるだろう。


 「冒険」の方は扱いの難しい題材を選んだものだと思った。製作費的に毎回派手に冒険を描くことは不可能だからだ。その結果、ひさしぶりにストーリー性より画面的インパクト・ゴージャスさが優先された古き日の80〜90年代前半の「戦隊」第1話が復活した感じだった――もちろん第1話に製作費がかけられるのは今も変わらないが、CGなどの普及により他の通常回が極端に見劣りすることは少なくなったし、以前ほど製作スタッフの世代交代などによりストーリー性の薄い第1話もあまり見当たらなくなった――。


 1話「Task.1 魔神の心臓」ほどの派手さはないものの、アウトドア的要素の強い2話「Task.2 竜の略奪者」のあと、3話「Task.3 覇者の剣」からは「冒険」は心の問題となった。


・伝説的なトレジャーハンターであり、部下に命令口調で話すボウケンレッド明石暁(あかし・さとる)
・明石をライバル視し、当初はボウケンジャーの力を自分の利のために利用しようとしたひさしぶりのダークなブラック=ボウケンブラック伊能真墨(いのう・ますみ)
・元スパイで女好きのボウケンブルー最上蒼太(もがみ・そうた)
・実務的で冷めた感じのする副リーダー・ボウケンピンク西堀さくら(にしほり・さくら)
・不思議少女系タレントとして一世を風靡した小倉優子さんをイメージしたと思われる、記憶喪失の謎の少女ボウケンイエロー間宮菜月(まみや・なつき)


 ……からなるボウケンジャーははじめて見たとき、個人的には感じが悪かった。


 奇妙な不思議ちゃん系の少女・菜月がメンバーのなかではホッとさせる癒し系の役どころなのだが、その菜月が早くも第2話で敵とつながりがあるのではないかなどとメンバーに疑いをかけられてしまう。最近の戦隊のフレンドリーさに慣れた目からすれば違和感があった。メモリアルイヤーをなぜこんな暗い気分で過ごさねばならぬのかと思ったものだった。


 いや、あえてそれを追求した戦隊である可能性もあった。しかし、トレジャーハンターだの、スパイだのと重い過去を持たせるにはメンバーが皆若者すぎて説得力に欠ける。
 そういう職種に若い人がいないはずはないものの、不敵なつらがまえの明石はともかく、真墨も蒼太もどちらかと言えばかわいい系の顔立ちであるのが中途半端な印象を与える(まぁ、真墨はかろうじて暗さ・冷たさを感じさせるが)。


 『タイムレンジャー』の商業面での不振以来、幼年層に完全にこばまれる「戦隊」作品を作ることは避けているだろうから、このハード路線を徹底することはないだろうとは思った。実際、当初抱かせたとっつきにくいイメージをさっさと崩しにかかり、蒼太に


 「自分だけのドキドキは、人を守るためにがんばることに較べれば大した喜びでない」


 と口にさせたり、さくらの態度はあまりにも対人関係に無器用であるためであると示したり、明石の頼りになるリーダー性を打ち出したりなどした。


 それらにより口当たりは良くなっていったものの、今度は逆にぎこちなさも感じさせ、完成度はいまひとつの印象だった。


 しかし、さまざまなライター陣の参加によりコミカルさも取り入れられていって、番組の硬さや真面目さやぎこちなさそれ自体も相対化、ネタにされて逆に笑い倒された感がある。明石の表情もスタート時にくらべると随分穏和になり、更には笑いの対象にもなり…… 


 もちろんお笑いだけではなく作風も幅ひろくもなり、「こんなの『ボウケンジャー』じゃないよ」と思うときも結構あるものの、最初は不満タラタラだったこのチームがいまでは割りと好きになってきた。


 個人的に好きなエピソードは、「バカなままだったほうが幸せだった」という『ボウケンジャー』版「アルジャーノンに花束を」(1959・アメリカの名作SF小説 ――テレビ特撮『スペクトルマン』(1971)48話「ボビーよ怪獣になるな!!」〜49話「悲しき天才怪獣ノーマン」の前後編の元ネタでもある――)ともいうべきTask.25「禁断の果実」と、グリム童話『シンデレラ』譚(たん)の真実ともいうべきTask.26「ガラスの靴」。



 本作は東映メタルヒーローシリーズの『特捜ロボ ジャンパーソン』(1993)や合体ロボットアニメ『勇者特急マイトガイン』(1993)を思わせる複数の敵組織が存在するという舞台設定だ。


 意図してか偶然か、当初の3大組織が特撮ヒーローものと共通する出演者が多いジャンル「昼ドラ」「(3年)B組シリーズ」「NHK語学番組」からの参加となっている。いまや、昼ドラに出た人は変身ものに出やすい、変身ものに出た人は昼ドラに出やすいというほど近接してしまったジャンルである「昼ドラ」。
 ゴードム文明の大神官ガジャを演じる大高洋夫氏は、東映メタルヒーロー(?)のホームコメディ路線『テツワン探偵ロボタック』(1998)のレギュラー、探偵事務所社長の杉薫(すぎ・かおる)も演じていたが、昼ドラ『新 天までとどけ』5部作(2000〜2004)にもレギュラー出演していた。ジャリュウ一族の竜王リュウオーンの声および人間だったころの姿を演じる森田順平氏は、『3年B組金八先生』(1979より断続的に継続 〜編註:2011年に完結)や『3年B組貫八先生』(1982)で桜中学の数学教師(『貫八』では当初、人員不足で理科も兼任)・乾友彦(いぬい・ともひこ)を演じつづけている。


加藤夏希さん(『燃えろ!! ロボコン』(1999)のロビンちゃん)
長澤奈央さん(『ハリケンジャー』のハリケンブルー)
いとうあいこさん(『アバレンジャー』のアバレイエロー)
ジャスミン=アレンさん(NHKの子供番組『天才てれびくん』)


 ……らヒーローものからの出演が多いNHK語学番組の出身でもある山崎真実さんは、忍者組織ダークシャドーの“風のシズカ”を演じている。


 彼ら敵組織はネガティブシンジケートと総称される。名称のみ聞くとクールな犯罪組織のようで格好いいものの、古代人や竜の化け物をこう呼ぶのにはなにか違和感がある。


 Task.17「アシュの鏡」から登場した第4の敵組織であるアシュ(人類の亜種)は妖的な力を持ってボウケンジャーを圧倒する。それだけに、アシュを監視する特殊な家柄・高丘家の生き残りである高丘映士(たかおか・えいじ)(6人目の戦士・ボウケンシルバー)の存在する価値がある。
 だが、Task.19「眩(まばゆ)き冒険者」にて、ゴードム文明の大神官ガジャによりアシュが「クエスター」として登場早々にサイボーグ化(?)されてしまった展開は、あいかわらず妖的な力は残されているとはいえ格下の存在になってしまい、高岡の立場もなくなってしまうようで興ざめする。


 (ちなみに高丘が人間とアシュの混血のために自身専用の杖を奪われてしまっては暴走してしまうという登場初期の設定は、本作のメインライター會川昇(あいかわ・しょう)氏がシリーズ後半のメインライターをつとめた2004年度特撮作品『仮面ライダー剣ブレイド)』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041113/p1)で仮面ライダーブレイド仮面ライダーカリスが劇中での最凶の存在「ジョーカー」と化する暴走を思わせた)


 謎とされてきた菜月の正体が、Task.33「レムリアの太陽」〜Task.34「遼かなる記憶」前後編にて、失われた超古代のレムリア文明の王女だとようやく判明。その正体は過不足ないのだが、判明するまでに変転を重ねて盛り上げるとか、正体が判明したことによる以降のドラマへの波及とか、もう少しなにかアイディアがなかったものか? これではここまで引っ張ってきた意味がないのではないか。


 さらにメインライターの會川昇氏がこの前後編エピソードの前編を執筆後、番組を離れてしまったため流れが変わってしまったような……。
 會川氏が原作・脚本をつとめる10月から放映が開始された土6アニメ『天保異聞 妖奇士(てんぽういぶん あやかしあやし)』(2006・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070317/p1)が忙しくなってしまったゆえの離脱であろうが、子供番組ゆえに描写を徹底できない本作『ボウケンジャー』よりも、主人公が過去に実は殺人を犯していたり遊郭あり男色ありと子供視聴者への配慮は必要ないかのような、あの江戸時代を舞台にした作品の方が氏には嬉しいのだろうが(?)、マニア視聴者としては前後編の前編だけの執筆では投げ出されてしまったようで個人的にはいやだった。


 たしかに本作は氏のベストワークとはいえないだろうし、氏がいなければ成り立たないような作家性の強い作品でもないだろうが、せっかくのメインライターとして最後には戻って来られることを望みたい。


 (後日編註:最終2編「恐怖なる大神官」〜「果て無き冒険魂」のみ、會川昇氏が執筆された)



補記:


 番組開始時、硬い作風のなかでボウケンジャー


 「(レディ、ボウケンジャー!) スタートアップ!!」


 と叫んで変身するシーンは、携帯電話型の変身アイテム・アクセルラーの下部の円盤(車輪?)をいろいろなものにこすりつけて、回転音とともに高速回転させて変身するのがヒーロー番組的要素として稚気満々で楽しいと思った。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2007年号』(06年12月30日発行)『轟轟戦隊ボウケンジャー』劇場版&後半合評5より抜粋)


轟轟戦隊ボウケンジャー』後半合評2 ~『轟轟戦隊ボウケンジャー』中盤所感

(文・鷹矢凪弥寿士)


 さて、まもなく3クールを過ぎようとしている『轟轟戦隊ボウケンジャー』(以下『ボウケン』)。毎回のエピソードはそつなく進んでいるものの、やはり『ボウケン』前半評(近日中にUP予定)でも書いた通り、物語的な“冒険”は何か足りない……という印象は、未だ拭〈ぬぐ〉い切れません。


 それでも、相応に眼を惹く部分も最近は増えてきておりますが。


 例えば、Task.29「黄金の剣」より登場した“大剣人ズバーン”〔声:堀 秀行〕。


 『忍者戦隊カクレンジャー』(以下『カクレン』)[94・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120109/p1]の“ニンジャマン”〔声:矢尾“やってやるぜ”一樹〕に端を発し、『超力戦隊オーレンジャー』[95]の“ガンマジン”、『激走戦隊カーレンジャー』[96]の“シグナルマン”、『救急戦隊ゴーゴーファイブ』[99・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19991103/p1]の“ライナーボーイ”など、「人間でない追加メンバー」――『電子戦隊デンジマン』[80・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120205/p1]の“デンジ犬アイシー”〔声:京田尚子〕のような後見役的存在は別として――という点や、変形して戦う点などでは、長らく戦隊シリーズを視聴しているマニアにとってはさほど斬新ではないかもしれません。
 が、人語は解るものの話すことはできず、「ズバーン」という語句のバリエーション的な言語でしかボウケンジャーとコミュニケーションが取れない辺り、工夫が伺えます。


 Task.33「レムリアの太陽」・Task.34「遼〈はる〉かなる記憶」では、超古代文明レムリアの出自である本来の使命に準じたとはいえ、ボウケンジャーの敵に回ったりしたのも、珍しい行動でしょう。
 擬音をもじったネーミングは、往年の東映変身もの『超神〈ちょうじん〉ビビューン』[76]の三超神=ビビューン・バシャーン・ズシーンを踏襲しているようですが、私たちの世代には懐かしく、今の子供たちにはストレートに響き、浸透しやすいかも知れません。ズバーンは、願わくば今後たとえ片言でも下手に人語を会得したりせず、今のままでいて欲しいものです。


 なお、Task.29ではシリーズも中盤に至ったことからか、功名心や虚栄心、裏切りといった“冒険”のダークサイドが浮き彫りにされ、「(如何〈いか〉に正義のヒーローが活躍する番組とはいえ)キレイゴトばかり見せていても視聴者(特に子供)のためにならない」という姿勢がさりげなく打ち出されたとも言えましょう。同期の『仮面ライダーカブト』[06・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070107/p1]のように、人間のダークサイドを描き過ぎても却〈かえ〉って「及ばざるが如〈ごと〉し」かもしれませんが(笑)。


 トピックスといえば、先のTask.33〜Task.34にて、ボウケンイエロー=間宮菜月〔演:中村知世〈ちせ〉〕の素性が遂に判明しました。先述のズバーンの出自も踏まえて“レムリア文明の末裔〈まつえい〉”であり本名は“リリーナ”という設定は、如何〈いか〉にも『ボウケン』の世界観らしい……という気がしました(悪い意味でなく)。


 ただ、“記憶喪失”というその背景と合わせて「人類を滅ぼしレムリア文明を再興する」という目的――結果的には違っていましたが――に、往年の大人気漫画『ドラゴンボール』[84]の主人公・孫悟空〔声:野沢雅子〕が、実は地球人ではなく惑星ベジータサイヤ人、本名“カカロット”であり、地球へ送り込まれた本来の目的=地球征服を想起したのは私だけでしょうか?(笑) ジャンル作品によくある普遍的な展開だとも言えるので、多分偶然でしょうけど。


 それはともかく、Task.34ラストにて両親が託した真の願いを知り“間宮菜月”として生きていくことを決意した「彼女」の姿は、予想の範囲内とはいえ、実に爽やかでした。


 あと、皆様書かれるでしょうが、ボウケンシルバー=高丘映士〔演:出合正幸〕の両親の配役が、


・『宇宙刑事シャリバン』[83]や同じく東映メタルヒーロー時空戦士スピルバン』[86]の主人公を演じた渡洋史〈わたり・ひろし〉
・『電磁戦隊メガレンジャー』[97]のメガピンク=今村みく〔演:東山麻美


 だったのと同じく『戦隊』30作記念ゆえのサービス性が強いとはいえ、菜月のレムリア文明時代の両親の配役が、


・『五星戦隊ダイレンジャー』[93](以下『ダイレン』)のキリンレンジャー=知〈カズ〉〔演:土屋圭輔
・『電磁戦隊メガレンジャー』[97]のメガイエロー=城ヶ崎千里〔演:田中恵理(現=たなかえり)〕


 であったことは、素直に喜ばしいことでした。


 いずれもシンボルカラーが菜月と同じくイエロー=黄であったことも、彼女の父母であると同時に、配役的には大先輩である、という暗喩なのでしょう〈注〉。



 で、ストーリーですが、メインストリームよりも或〈あ〉る意味閑話〈かんわ〉的なエピソードの方が展開・演出など凝った作りで、面白く感じられます。


・ボウケンブルー=最上蒼太〔演:三上真史〕がスパイを辞し、ボウケンジャーとして戦うに至ったポリシーが語られるTask. 23「あぶない相棒」
・名もなき青年とボウケンジャーの交流から「“冒険”は学ぶものではなく自分で見つけるもの」と再考させてくれたTask.32「ボウケン学校の秘密」
・二転三転するプレシャス争奪戦の駆け引きや蒼太の意外な一面、そして後見役の牧野森男センセイ〔演:斉木しげる〕の珍しい活動が愉〈たの〉しいTask.35「神の頭〈かしら〉」


 ……などが、その典型です。本来はそういう痛快さこそ、メインストリームに反映されるべきなのですが。



 いよいよ終盤を迎える『ボウケン』は、どういう展開を見せるのでしょうか。大神官ガジャに“クエスター”に改造されたガイ&レイの元“アシュ”――シンボルカラーはどうやら黒のようです――を加え4大組織となったネガティブ・シンジケートとの最終決戦……


 従来のシリーズならソレが主軸となるところですが、恐らくもっと大きな課題=最強最大のプレシャス争奪戦が本流となるでしょう(?)。


・Task.29で垣間見えたジャリュウ一族の長〈おさ〉 = リュウオーン〔声:森田順平〕の、意外にも実は元は人間であったらしい素性
・どこか憎めない忍者集団ダークシャドウの一員 = 風のシズカ〔演:山崎真実〕の去就
・ボウケンブラック=伊能真墨〔演:斎藤ヤスカ〕 VS 彼を“闇”に落とそうと狙う、同じくダークシャドウの重鎮=闇のヤイバ〔声:黒田崇矢〕 との確執
・梟〈ふくろう〉の姿をしたダークシャドウの首魁〈しゅかい〉 = 幻のゲッコウ〔声:銀河万丈 〜余談ながらこの配役は、銀河氏が長年ナレーションを務められているテレビ番組『開運!なんでも鑑定団』[94〜]からの連想、即ち“お宝”繋がりであることは確実です・笑〕
・映士 VS クエスター 因縁の決着


 ……etc. 様々な伏線が鏤〈ちりば〉められていますが、それをどう収束させ、最後の“大冒険”を果たし、最高のプレシャスを如何に「見せる」かが、本作の成否の鍵となるでしょう。ジックリ見守っていきたいものです。



〈注〉
 土屋圭輔氏のヒーロー番組出演作は、他に『カクレン』後半の双子の忍者戦士=太郎、『重甲ビーファイター』[95]後半の悪のヒーロー・ブラックビート人間体=シャドー(敵軍団が作った主人公のクローン)がある(本格出演は第43話より)。また、圭輔氏の双子の兄=土屋大輔氏も、『ダイレン』第25話の“ニセ知”(一部場面及び声は圭輔氏)、『カクレン』の忍者戦士=次郎を経て、『重甲ビーファイター』の主役・甲斐拓也=ブルービートに抜擢されたのは、御存知の方も多かろう。圭輔氏はその後一時「平東〈たいら・あずま〉」の名で活動された。なお、現在は大輔氏・圭輔氏とも俳優業の一線を退かれ、それぞれ映像製作と俳優養成に携わっておられるとのことである。(参考『東映ヒーローMAX〈マックス〉』VOL.18「TOEI HERO OB INTERVIEW 土屋大輔×土屋圭輔」[06.8・辰巳出版ISBN:4777802906])



《お詫びと訂正》
 『假面特攻隊2007年準備号』(2006年8月12日発行)に於ける『ボウケン』前半評「『轟轟戦隊ボウケンジャー』所感」中、ボウケンシルバー・高丘映士の父〔演:渡洋史〕の名を誤って書いてしまいました。ここに訂正し、お詫び申し上げます。
・60ページ左段・下から11行目
 「高丘護人」(誤)
 「高丘漢人〈たかおか・からと〉」(正)


【平成18年11月9日】


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2007年号』(06年12月30日発行)『轟轟戦隊ボウケンジャー』劇場版&後半合評3より抜粋)



『假面特攻隊2007年号』「轟轟戦隊ボウケンジャー」関係記事の縮小コピー収録一覧
おはスタ 1999年7月19日(月)7時12分 おはガール会員番号21番・末永遥と16番・平井理央(現フジテレビアナウンサー)奇跡の2ショット?!
※:ボウケンピンク/西堀さくら役の末永遥は98年度初代おはジェンヌ&99年度月曜担当おはガール。フジテレビのスーパールーキー・平井理央アナウンサーは98年度金曜担当おはガール。(伏屋千晶)
朝日新聞 2001年6月28日(木) 芸能欄「注目!」女優 末永遥 明るく元気に“陽子”役 〜『氷点2001』ヒロイン陽子・インタビュー


轟轟戦隊ボウケンジャー』平均視聴率:関東6.7%・中部8.2%・関西7.2%
 1クール目:関東7.3%・中部8.7%・関西7.8%
 2クール目:関東6.9%・中部8.3%・関西7.7%
 3クール目:関東6.5%・中部8.6%・関西7.5%
 4クール目:関東6.0%・中部7.1%・関西5.4%
 最高視聴率:関東9.7%(#11)・中部10.6%(#28)・関西10.1%(#30)
 最低視聴率:関東4.5%(#38)・中部6.0%(#26)・関西4.2%(#44)
 (10%越え:関東0回・中部1回・関西1回)
 (平均視聴率EXCEL表計算:森川由浩)
テレビ東京の『ポケモン☆サンデー』(04年)が06年10月より日曜朝8:00〜30から7:30〜8:30に枠拡大、アイドルで戦隊オタクの中川翔子をパーソナリティに迎え、裏の「スーパーヒーロータイム」(戦隊&ライダー)に真正面からの勝負を挑んだ。勝利の軍配はどちらに? ちなみに特撮ヒーローもの『魔弾戦記リュウケンドー』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061225/p1)は『ポケモン☆サンデー』の前座番組(7:00〜30)である。(森川由浩)


[関連記事] 〜『轟轟戦隊ボウケンジャー

轟轟戦隊ボウケンジャー』前半合評

  (近日中にUP予定)

轟轟戦隊ボウケンジャー THE MOVIE 最強のプレシャス』 〜賛否合評

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060814/p1

轟轟戦隊ボウケンジャー』後半合評 ~30作記念に相応しいか!? 6人目ボウケンシルバー&大剣人スバーン!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070108/p1(当該記事)

[関連記事] 〜『ボウケンジャー』メインライター會川昇・脚本作品

轟轟戦隊ボウケンジャー THE MOVIE 最強のプレシャス』 〜賛否合評

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060814/p1

炎神戦隊ゴーオンジャーBUNBUN!BANBAN!劇場BANG!!(ブンブン!バンバン!劇場バン!!)』

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080831/p1

仮面ライダー剣ブレイド)』最終回 〜終了評 會川ヒーローは痛みと深みを増して

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仮面ライダーディケイド』#7「超トリックの真犯人」 〜タイムパラドックス解析!

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