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『海賊戦隊ゴーカイジャー』(11年)#35「次元ノムコウ」――サブタイトルのカタカナ表記はもちろん原典作品のサブタイトルへのオマージュ――に、『炎神(エンジン)戦隊ゴーオンジャー』(08年)のゴーオンレッド・江角走輔(えすみ・そうすけ)こと古原靖久(ふるはら・やすひさ)クンが登場記念! 古原靖久クンは、この10月15日(土)公開の70年代特撮ヒーローのリメイク映画『電人ザボーガー』(11年)の主人公・大門豊の青年期も演じたばかりじゃん! 彼の当たり年、もとい当たり月だね!(笑)
原典『ゴーオンジャー』では基本的には若造・青二才の体当たりな熱血バカ演技の印象しかない古原靖久クンだが(批判じゃないよ・笑)、3年後の今回は芸風が拡がりちょっとヌケた演技なども披露してたあたりが、個人的には好印象。古原クンもとい元ゴーオンレッド・走輔がひとり熱くなって変身アイテム・レンジャーキーの返還も求めずに、空のかなたの次元の裂け目にチャチなトランポリンや高跳び棒でジャンプして越境しようというそーとーなムチャ(笑)を試みる。その姿に感化されたか、ゴーカイジャーたちがゴーオンジャーの旧敵・ガイアークの生き残りらによるガンマンワールドへの侵略を阻止せんとヨソの次元世界へ行こうとする走輔の行為に、最初は
「オレたちには無関係だ(大意)」
とサメていたのに、
「気が変わった」
と空飛ぶ赤い海賊船・ゴーカイガレオンで走輔を連れていこうと云い出したときの、自分のムチャな行為の尊さに気づいてない、キツネにつままれたような首をかしげる天然ボケの喜劇的な古原クンの演技が、弊ブログ主宰者としてはとても気に入った!(笑)
西部劇の世界のガンマンワールドで、往年のガイアークの戦闘員たちと一度はナマ身で戦うも、さらに多勢が押し寄せてくるや街の住民のみなさんに「みんな逃げろ!」と号令してコミカルな走りで逃げてしまう演技のあたりは、必ずしも往年の走輔らしくはない。だが、なんでもムチャをすればイイというものでもなくムチャが通るワケでもないのだし、個人的にはギャグチックな演技でまぶされていて自然にプッと笑えてしまう。
そこにゴーカイジャーの6人が助けに駆けつけてきてスレちがう直前、急に背スジのばして胸張って、ゴーカイジャーの後ろの陰に隠れるや(笑)振り返って腕組みして余裕をカマしてみせているあたりが、輪をかけて笑える。さらには、ガンマンワールドには走輔を連れてきただけだ! とウソぶいていたのに、敵戦闘員と戦おうとするゴーカイレッド=キャプテン・マーベラスの
「気に入らねえモンはブッつぶす!」
とのセリフに、ニコッと
「カッコいい〜」
との走輔の一言。気張らずに後輩を自然に立ててみせている元ゴーオンレッド・走輔のさりげない成長描写とイイ笑顔! このへんは脚本に書いてあったとゆーより、撮影現場での走輔こと古原クンの演技によって膨らませたところが大なんじゃないかと分析するけれど……。
特撮班の担当によるガンマンワールドの夕景の許でのガイアークの生き残り、巨大化したゲスト怪人・保蛮官チラカシズキー VS “動物”プラス“車”型の巨大化した生体メカ・3大炎神(エンジン)、スピードル・バスオン・ベアールVとの戦闘。
等身大アクション部分でも、ゴーカイジャー5人がゴーカイチェンジした懐かし戦隊・バトルフィーバーJ(1979)とそのアクション。そして5人のバトンを空中に投げるや車輪のスポークスのように連結、回転しながら敵に向かっていく必殺ワザ・ペンタフォースが、5人の眼前まで降下して一瞬タメてから低空を高速滑空していく21世紀的なスピード感!(バトルフィーバー隊の紅一点・ミスアメリカの太ももムチムチが再現されてないことは、フェチな同士たちよアキラめろ・笑)
同じくゴーカイチェンジで電撃戦隊チェンジマン(1985)に変身し、モチーフである伝説獣のイメージイラストを高画質で合成して5人を空中に吊って放つ個々人の得意ワザ、ドラゴンアタック・ペガサスアタック・マーメイドアタック・グリフォンアタック・フェニックスアタックの連発! 往年の荒いビデオ合成とは異なる(笑)美麗な映像! 映像面・アクション面でもサプライズな工夫とサービスある見どころはシッカリあったと思う。
つづくゴーオンジャー・レジェンドゲスト回、後編である来週の#36「相棒カイゾク」も楽しみだ!
個人的には長寿シリーズのTV時代劇『水戸黄門』(69年)まで終了してしまって、危機に立つ東映京都太秦(うずまさ)の撮影所を少しでもうるおすために、サムライワールドを舞台にしてほしかったとTV時代劇マニアのひとりとしては思う。けど、サムライワールドを舞台にしてしまうと、そこにはすでに正義の炎神たち3体が住んでいるハズで、彼らを登場させないのも不自然ではある。サムライワールドの炎神たち3体を演じた豪華ゲストを再度集めるのは予算的にもスケジュール的にも困難だろうし、仮にそれを実現できても、そーなると新メカ初登場編としては焦点がボケてしまうので、サムライワールド以外の世界を舞台にするしかないのもよくわかる(笑)。
とカコつけて、ガンマンワールドならぬサムライワールドを舞台にした映画『炎神戦隊ゴーオンジャー BUNBUN!BANBAN!劇場BANG!!(ブンブンバンバン劇場バン)』評を再UP!
『炎神戦隊ゴーオンジャー BUNBUN!BANBAN!劇場BANG!!』
BUNBUN BANBAN 熱いぜ 劇場BANG!!
(文・J.SATAKE)
夏休み真っ盛りの映画館は親子連れやカップルで盛況だ。そんな中、東映特撮映画夏の恒例行事、平成ライダー&スーパー戦隊が今年も公開! 筆者も地元のシネコンにて鑑賞した。
ガイアーク三幹部が次元の壁を破り、ヒューマンワールドに危機が迫る!
そこへ夜のハイウェイを激走して生体メカ・炎神(エンジン)スピードルたち九体が登場!
TV版ではほぼミニチュアワークのみの炎神をCGで描くなど劇場版ならではのスペシャルが巻頭から展開される!
ガイアークのポリシーに反した(笑)リサイクル蛮機獣軍団を戦隊巨大合体ロボ・エンジンオーG9(ジーナイン)で颯爽と蹴散らすゴーオンジャー五人&ゴーオンウイングス二人。
だが、次元の裂け目から現れた炎衆(ほのおしゅう)を名乗る三人組に炎神スピードル・バスオン・ベアールVを奪われてしまう。
炎衆の配役は、美少年剣士風の烈鷹(れつたか)に『仮面ライダー555(ファイズ)』(03・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20031102/p1)主人公・乾 巧(いぬい たくみ)役の半田健人(はんだ けんと)氏。最近は昭和歌謡曲マニア・高層ビルマニアとしてバラエティ番組の出演が多かったが、五年ぶりに東映ヒーロー作品に帰ってきた!
野武士風の獅子之進(ししのしん)には『大戦隊ゴーグルV(ファイブ)』(82)『科学戦隊ダイナマン』(83)で変身前を演じ変身後(ゴーグルブラック&ダイナブラック)もスーツアクターとしてアクションを自ら務めたJAC(ジャック=ジャパンアクションクラブ)出身の春田純一氏! 現在では、つかこうへいの劇団やTVドラマで見かける春田氏は、当時はどちらもこなせる俳優として話題・人気となっていた御仁だ。
真紅のくの一風の月之輪(つきのわ)に『特捜戦隊デカレンジャー』(04・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041111/p1)デカピンク・胡堂 小梅(こどう こうめ)役の菊地美香嬢。元気溌剌としたウメコとはまた別の女戦士の顔を見せてくれた。
三者三様の東映特撮ゆかりの方々の出演に、マニアならずともお父さんお母さんもニヤリ……。
彼らを追って次元を越えた七人――炎神キャリゲーター&ジャンボエールは裂け目を押さえてくれているので身動きができない!――は、強さが全てを支配する見た目はまるで江戸時代のようなサムライワールドへ降り立つ。果たしてゴーオンジャーは大切な相棒を取り戻し、ヒューマンワールドへ戻ることができるのだろうか……。
今作はここ数年のスーパー戦隊劇場版での主流の展開、レッドとゲストヒロインの淡い恋愛模様や、そのヒロインの裏切りであるとかを排して、『正義の味方』の熱い闘いを直球勝負で描いた!
サムライワールドに来る早々、刀を持った住人たちに襲われるゴーオンレッド=走輔(そうすけ)とブルー=連に対して、ちゃっかり町娘の着物で現れるイエロー=早輝(さき)。衣装はどこから?(笑) やはり女の子は順応性が高い? それとも竹本 昇監督の粋な計らいもしくはお好みで?
一方、グリーン=範人(はんと)とブラック=軍平は闘いばかりのこの世界に疑問を持った町人三人に助けられていた。
この三人が実はガイアーク三幹部を演じる面々。巻頭だけの出演ではなく、レギュラー陣へのフォローもしっかりと。
・ケガレシア=及川奈央(おいかわ なお)嬢、
・キタネイダス=真殿光昭(まどの みつあき)氏、
・ヨゴシュタイン=梁田清之(やなだ きよゆき)氏、
男性御二人の方は声優として活躍されていて、顔出しは珍しいのでは?
先頭をきって走輔と立ち回りを演じたのは、福本清三(ふくもと せいぞう)氏。人相の悪い東映時代劇斬られ役専門の方で、『暴れん坊将軍』(78〜03)やハリウッド映画『ラストサムライ』(03)、サントリーの缶コーヒーのCMなどで名前は知らなくても顔は見たことがあるのでは?
ジャンル作品では、『宇宙からのメッセージ 銀河大戦』(78)第4話の宇宙忍者ヒビト、『超忍者隊イナズマ!』(06)、昨年の『獣拳戦隊ゲキレンジャー』(07・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080817/p1)第33話の京都ロケ編では「忠臣蔵」の悪役・吉良上野介(きら こうずけのすけ)側の剣客・清水一学(しみず いちがく)を演じた!
映画のプログラムによると、東映京都・太秦(うずまさ)の撮影所では一般の観光客に公開しながら撮影をしているそうで、江戸の町並みの中ハデハデな洋服でアクションしている様子を見られた人はどんな感想だったのか……。
己を強くするため炎神スピードルと同化しようとするが失敗する烈鷹たち。彼らの正体は体を奪われた炎神の精神部分である炎神ソウルであり、それが人間の姿を取っていたのだ。
そして炎神は走輔の目の前で、魔姫(まき)の配下・獄丸(ごくまる)と雷剱(らいけん)の二人の怪人に奪われてしまう。
風神雷神をモチーフにしたこの二体、声の担当は『電磁戦隊メガレンジャー』(97)メガブルーの松風雅也(まつかぜ まさや)氏と『電子戦隊デンジマン』(80)デンジグリーンの内田直哉(うちだ なおや)氏。当時は変身前の姿を演じた御二人、現在も声優としてアニメやドラマの吹き替えに数多く出演されているベテランだ。
普通の観客は気付かないだろうが、彼らの登場は我々のようなスレたマニアには嬉しいかぎり。こうしたOBの方々に支えられて積み重なるスーパー戦隊シリーズは本当に稀有(けう)な存在だと思う。
出自はスピードルなどと同じ炎神ながら、ただ強くなることを求めたためにサムライワールドの支配者・魔姫――徹頭徹尾冷徹な悪の女王として描かれたキャラをソニン嬢が演じた! 悪役の出演依頼には驚いたそうだが、なかなかどうして堂に入ったもの!――の思惑(おもわく)に乗せられ体を奪われた炎衆。
たとえ心と体は分かれても友情で結ばれた相棒、仲間がいれば闘うことができることを走輔から教えられ、連の特製オムレツを食べることで何故強くなりたかったのか、誰かのために立ち上がる力=『正義の味方』の心――脚本の會川 昇氏が他の作品などでも描いている等身大の正義がここでも感じられる――を思い出す烈鷹、獅子之進、月之輪。
さすが主役を張った方々、短いシーンながらも互いの思いを交わして、奮起しようとする姿をじっくり見せてくれる!
相棒を取り戻すため魔姫の居城――炎の意匠を取り入れた妖しい和風の城。美術さん、ナイス造形!――へ向かうゴーオンジャー五人。
そこに立ち塞がるのは、なんとゴーオンウイングスの二人!! 本当に魔姫に寝返ってしまったのか?
改めて炎神への友情と闘いの決意を確かめたゴーオンゴールド=大翔(ひろと)とシルバー=美羽(みう)は大切な相棒を走輔たちに返して、獄丸と雷剱に斬り掛かる!
……まあ彼らの裏切りを誰も(?)本気にはしていないのだが、TV版の途中参加キャラは映画では美味(おい)しいとこ取り、というパターンは守られたわけだ。
獄丸・雷剱に対してゴーオンブルーとシルバーが協力して攻撃するなどTVでは見られないパターンでバトルを展開!
そしてレッドは本丸の天守閣に突入する!
姿を見せず、羽衣(はごろも)を自在に操りレッドを追い詰める魔姫。
恐れや不安を抱く心があるから強くなれないと言う魔姫に強く反論する走輔。
人の喜怒哀楽を感じて闘うからこそ強くなれる、心の弱さに正面から向き合うことができない者が弱いのだ!! それを証明するために走輔は闘う!
TVシリーズ中盤(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080824/p1)でも謳(うた)われた『庶民ヒーロー』から一歩進んで、炎神やメンバーとの友情のために熱く闘うヒーロー像を打ち出す作風と、しかしそこで終わらず哀愁で終わらす今作は、やはり會川氏の持ち味が活かされた結果だろう。
遂に立ち上がった炎衆の加勢で形勢逆転するゴーオンレッド。主題歌に乗って展開するバトルはやはり燃える!
それでも倒れない魔姫は八つ首のムカデに四つ足の巨大モンスター=魔忌(まき)に変化した! 着ぐるみでは困難なデザインもCGを使い、ウネウネと動く八つ首を見事に表現!
ゴーオンジャーも対抗するため炎神合体!
合体した巨大ロボ・エンジンオーを目の当たりにして驚く烈鷹。これが人間と炎神が協力した力だ!
魔姫の呪縛から解かれた住人たちの声援も受けて闘うエンジンオーだが、魔忌の力に押されていくゴーオンジャー……。
ロボの合体も解かれ、マスクのヘルメットを壊されながらもくじけずに個人武器・マンタンガンロッド一本で立ち向かい、なんとか烈鷹たちの真の体・炎神キャストを取り返すことができた走輔!!
決死の覚悟で魔忌の細長いうねった鎌首を走り抜ける姿、ここが今作一番のアクションの見所だ!!
走輔の行動に応え、炎衆が“動物”プラス“車”型の真の姿、炎神レツタカ・炎神シシノシン・炎神ツキノワへと戻る。
そして走輔と烈鷹の友情から誕生する巨大合体ロボ・炎神大将軍!
炎神レツタカはスピードル(スピードカー+コンドル・モチーフ)、炎神シシノシンはバスオン(バス+ライオン・モチーフ)、炎神ツキノワはベアールV(熊+RV車モチーフ)と同型のもの。
その三体合体である炎神大将軍はエンジンオーの色替えなのだが、全体を黒と朱でまとめた配色と、鎧武者風の金色の装飾パーツを加えることで大きく印象が変わるという好例だ。
三人だけが乗り込み、残りのメンバーが待機するのは、『大戦隊ゴーグルV』のゴーグルロボへのオマージュ……ではないだろうな、やっぱり(笑)。
走輔が乗り込むことで更に力を増した炎神大将軍が迎え撃つのは、魔姫の最終形態・魔鬼(まき)! 最後の最強形態の姿がCGではなく人型の着ぐるみであるのは今時の特撮ヒーロー映画では珍しい。
炎を全身に纏(まと)った武神のようなその姿で魔姫の居城の巨大なミニチュアをバッグに炎神大将軍と斬り結び、大立ち回りを演じる!
激しい攻防の末に炎神大将軍が繰り出した留(とど)めの攻撃は自身の長剣とエンジンオーソードの二刀流斬撃だ!!
……そして迫り来る別れの時。
この世界ではもう会えなくても、ヒューマンワールドで似たような奴がきっと闘っているだろう、という烈鷹。
子供たちにはストレートに友情の印として心に響き、マニアたちにはこれまで三人が出演してきた東映ヒーローの姿が浮かんで来て思わずウルウル……。ニクい台詞(セリフ)だ。
そして走輔役・古原靖久君の目が涙で赤くなっているのを捉えたカットが心に響いた! 色々な思いが込み上げた瞬間なのだろうと想像できて思わず竹本監督・古原君、ナイスです! と心で拍手!!
涙を振り切り走り出すゴーオンジャー。エンディングにもあるように前しか見えない炎神戦隊はこれからも走り続けるのだ!
後半の等身大バトル(獄丸・雷剱VSゴーオンジャー&ゴーオンウイングスのシーン)など編集で切られたアクションシーンも結構な分量になっていそう(劇場版・平成仮面ライダーシリーズだけでなくこちらも全長版を一度見てみたいものです)。だが、あのギュッと詰まった感じやテンポがスーパー戦隊らしさでもあるので良しとしましょうか。
竹本監督は『魔法戦隊マジレンジャーTHE MOVIE インフェルシアの花嫁』(05・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060313/p1)に次ぐ二本目の映画作品となったわけだが、ファンタジー系の前作とバリバリの熱血友情系の今作、毛色の異なる作品でもきっちりまとめ上げてくれる、映像面でも今乗りに乗っている監督だと思う。
ロボットアニメではほぼ絶滅してしまった勧善懲悪のドラマを継承できる存在がスーパー戦隊シリーズだと筆者は感じているので(更に劇場版はそのシリーズの魅力を凝縮した作品として欲しい!)、これからもTV以外の発表の場である劇場版を創り続けて頂きたい!
そのためにも劇場版はビデオ化を待たずに旬のうちに映画館で楽しもう!
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