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ウルトラマンネオス3話「海からのSOS」

(東京MXテレビ・毎週日曜18:30の円谷劇場にて『ウルトラマンネオス』放映「全話評」連動連載!)
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#3「海からのSOS」

怪獣(群体怪獣)シーゴリアン登場

(脚本:右田昌万 監督&特撮監督:高野敏幸)
(視聴率:関東・未放映 中部・未放映 関西2.6%)


(文・内山和正)
(02年7月執筆・11月改稿)
・消えてしまった水族館や湖の魚たち、
・物理的にありえない不思議な出没の仕方をする怪獣、


 それらのナゾが今回の全編を貫いている。


 全くの新しい怪獣などなかなか生み出せるものではないと言われることも多い時代。
 原点に回帰し怪獣中心の物語を作ることを謳(うた)ったこの作品において、宇宙空間に浮遊する見えない暗黒物質ダークマターに太陽系が突入したために、その期間は不可思議な現象が発生する……
 と設定しえたことが、どれほど有益であったかを示すエピソードのひとつである。


 非合理・不条理な怪獣はウルトラシリーズの元祖『ウルトラQ』(66年)の時代から存在しているとはいえ、そのような怪獣を度々出しすぎても、作品は現実感は喪失してしまうだろう。
 70年代の第2期ウルトラシリーズを支持する筆者ではあるが、公平に見れば第2期ウルトラはその新たな楽しさ・魅力と引き換えに、初期の第1期ウルトラシリーズにおける「怪獣」のイメージを失ったものも多い。


 その点、ダークマターは「何でもあり」を可能にするSF設定だからありがたい。
 そして本話の怪獣の正体、出没の理由が判明するあたりも面白い。


 少々ネタバレになるが、港湾地帯のみならず、水族館の内部でも怪異現象が発生し、湖畔や水産試験場にも共通して怪獣が出現した理由は、海とつながっていたり海水を汲み上げて使用していることにあり、巨大怪獣がその巨体からして物理的にありえないような移動を可能にした理由も……


 怪獣は海から進行することが判明し、水産試験場を襲うことが予想され、その手前の河口に防衛組織HEART(ハート)の防衛線が張られて隊員たちが武装して備えるが、怪獣はその警戒網を予想だにしない方法で突破するサスペンスも楽しい。


 怪獣が出現する度に15メートル、30メートル、それ以上と巨大化しているとされているが、セリフのみで終わっており、特撮の映像演出的には差が見られないのは残念であるが。


 しかし前半の湖畔での巨大特撮セット――湖自体はもちろんセットは造られず、怪獣消失後にカメラ手前の池として描写されるのみだが雰囲気はよく出ている――、後半の水産試験場の水をたたえてコンクリで多数区切ったプールのような施設やコンビナート的なパイプ群、建物を列挙した巨大特撮セットを2種も用意したのは、低予算のビデオ作品としては実に豪華だ。


 後者のセットでのウルトラマンVS怪獣のバトルも、1〜2話同様、長尺でボリュームたっぷりの充実感がある。
 怪獣にウルトラマンが吹っ飛ばされて、建物1棟の上に墜落して破壊してしまうあたりも豪気だ。
 怪獣バトルの後半、反撃に転じたウルトラマンが突進しながら横飛び的に背中から全身体当たりをかまして怪獣を横倒しにしたり、すかさず前転背中体当たりをかますプロレス的な戦いも格好いい。


 怪獣シーゴリアンのデザインは、直立二足歩行で顔も獰猛なので体色や模様などからも個人的には爬虫類を想起させるのだが、何度も映像作品を観返していると背ビレがついていたりして魚をモチーフにしていることがわかる。


 ただ、個人的にはお話の全体は心の底から面白かったとはけして言いがたいとも思う。


 冒頭、深夜に港湾地帯の倉庫に出現して鋭い爪痕を残して消えた怪獣。
 その翌日、HEARTの特殊車両での探索途中、怪獣出現騒動で立ち入り禁止となった寂れた海岸(波消しブロック群)で主人公カグラ隊員が遭遇した、海のことを語る頭頂部が禿げた初老のクタビれた、実は近辺の水族館の館長でもあった江藤漢氏演じるゲストが味を出している。
 でも思わせぶりなだけの描写だとも言えなくもない。


 夕方の海岸でのラスト、本話のテーマらしきものを水族館の館長のセリフの受け売りで語るカグラ隊員。


 「カグラのは、どうせだれかのウケウリだろ」


 と見抜くHEARTの科学分析担当アユミ隊員。


 監督が1〜2話までとは違うせいもあるだろうが、キツいくらいにシッカリとした有能な女性としてセリフの発音ができあがっている。
 今回のセリフからすれば、女の子らしい媚びたセリフをしゃべらず年長者に対してもタメ口をきく理由は、彼女が未熟で世間知らず・常識知らずだからなのではなく、有能で確立された強い自我を持っているから、あのミナト隊長にも臆(おく)さずに話せるということか?


 隊員たちはお腹が減ったから隊長に寿司(すし)をおごってくれとせがむ、ヒューマンな楽しいオチになるのも悪くない。
 エンディング主題歌冒頭にも彼ら隊員たちのたわむれながらの帰還シーンが描かれるが、テレビ放映ではカットされてしまうであろうから(?)、ブツ切り感が半端なくなりそうなのが心配だが……



 この回より『ネオス』用の冬木透氏による新曲BGMだけでなく、『ネオス』と同じくVAP(バップ)製作だった『平成ウルトラセブン』シリーズと同様に、冬木透氏が担当してきた『ザ・ウルトラマン』(1979・ http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20100430/p1)・『ウルトラマン80(エイティ)』(1980・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971121/p1)や『ウルトラマンA(エース)』(1972・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070430/p1)のBGMが流用されている。
 これについては個人の好みの次元の問題だろうが、賛否両論あるだろう。
 本作では「選曲」担当の、各種の編集ビデオでも構成を担当されてきた秋廣泰生氏が往年のウルトラBGMも使いたいという意向から来ているのだろうが、個人的には違和感がなく映像にマッチしているように思えるし、どころか長年のマニアとしてはちょっとだけうれしい。


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2003年準備号』(02年8月11日発行)〜『仮面特攻隊2003年号』(02年12月29日発行)所収『ウルトラマンネオス』前半合評2より抜粋)


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