(東京MXテレビ・毎週日曜18:30の円谷劇場にて『ウルトラマンネオス』放映「全話評」連動連載!)
『ウルトラマンネオス』#1「ネオス誕生」
『ウルトラマンネオス』#2「謎のダークマター」
『ウルトラマンネオス』1995年版 〜Wヒーローならテーマへの多角的アプローチが可! 防衛隊も巨大ロボを持て!
『ウルトラマンネオス』全話評 〜全記事見出し一覧
#4「赤い巨人! セブン21」
怪獣(北極怪獣)ノゼラ・(南極怪獣)サゾラ登場
(脚本:右田昌万 監督&特撮監督:高野敏幸)
(視聴率:関東・未放映 中部・未放映 関西1.9%)
(文・内山和正)
(02年7月執筆・11月改稿)
本作の目玉である2人ウルトラマン体制。
2人目のウルトラマンであるウルトラセブン21(ツーワン)の本格的な活躍をそろそろ描くため、本話では逆算して2体の怪獣を登場させる作劇となったのであろう。
今回は北極から出現した怪獣と南極から出現した怪獣が、東京湾岸の埋め立て地の再開発地区・晴海(はるみ)や汐留(しおどめ)をモチーフにした汐舐(しおなめ)地区に襲来。
前者は地底を潜行し、後者は空中から……と差別化させている。リアルに考えれば海底下の地底を高速で潜行するのは困難だが、このテの作品でそこを指摘するのは野暮(やぼ)というものだろう。
(言うまでもなく怪獣のネーミングも、北を意味するN:ノース、南のS:サウスの英語から取られたものだろう)
近代的なビルの中空に球を浮遊させたフジテレビの新社屋の簡略版のようなミニチュアの建物も新造して、特撮演出においてはシンボリックに強調し、ビル風(かぜ)の音をそこにかぶせ続けたのも効果的だ。
恋人でもあるテレビ局のプロデューサー上司の別件の商店街取材の指示にさからい、勝手に怪獣のスクープ取材を始めた結果、湾岸の倉庫に閉じ込められてしまうテレビの現場リポーターのエリカ。
彼女と防衛組織HEART(ハート)双方がナゾに思う、ノゼラがビル風を聞くとおとなしくなる理由とは……
このナゾの存在により、本シリーズの「怪獣を描く」という条件をクリアしつつも、今回のナゾの答えは親切には説明されないので、注意してセリフを聞き取ることが必要だ。
(南極怪獣サゾラの鳴き声に伴って発生する残響がビル風に酷似していたことが、北極怪獣ノゼラの生態に影響していた……)
ドラマの中心は、そのナゾよりも『平成ウルトラセブン』シリーズの98年版と99年版のレギュラー、防衛組織・ウルトラ警備隊の隊員たちの役であった鵜川薫(うかわ・かおる)さんと正岡邦夫氏――『超力戦隊オーレンジャー』(1995・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20110926/p1)のオーグリーン・四日市昌平(よっかいち・しょうへい)役でも特撮ファンにはおなじみ――演じるゲストキャラクター、リポーターのエリカと剣持(けんもち)プロデューサーのやりとり、彼らの反発と愛なのだろう。
しかし演者たちによる演技力での人物像への魅力の追求・掘り下げにくらべ、物語としての充足感には欠ける。
ウルトラセブン21は今回、2話「謎のダークマター」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120304/p1)とは別の人物の姿であらわれて、倉庫に閉じこめられたエリカとカメラマンを救出する。
『ネオス』の初期企画、1995年版『ネオス』が発表された際に、特撮雑誌『宇宙船』で『ウルトラマンネオス』への要望やアイデアを読者が投稿するコーナーがあったが、編集部の方が提案した「色々な人に変身する」が採用されたということか?
(編:初期の企画書から21が毎回異なる地球人に変身するという案は存在したとの説もアリ)
その人間体での登場シーン、およびセブン21への変身シーンなどはオリジナルのウルトラセブンのように変身アイテム・ウルトラアイこそ着眼しないもののそれへのオマージュも見られ、格好良く撮られている。
今回のカップル怪獣は、映像をHEARTの年代測定器にかけたところ、300万年前に誕生した生物であると判明する。
およそ300万年に一度、我が太陽系が暗黒物質ダークマター漂う宇宙空間に突入し、不可思議な現象や怪獣が出現するという基本設定に、逆算するかたちで接点を持たせて、その可能性に言及しているのはよい。
カップル怪獣自体はマニア誌の小さな写真で初見したとき、不自然な出自でありながらも外見は生物らしいものが多い本作の怪獣の中では、人工的で格好悪いと個人的には思ったものだ。
が、鳥をモチーフとしながらも不自然な処理がなされたデザインが「なんでもあり」の本作にマッチし、幅をひろげ、特に北極怪獣ノゼラは愛嬌もあってかわいく好きになってしまった。
終盤で高度な知能があるかのごとく、謝罪のポーズを取るのもかわいいが、それは狡猾(こうかつ)さの現れでもあったというあたりは、ハード志向のマニアの反発を呼ぶだろうけれども、基本は幼児向け・子供向け作品であるウルトラ怪獣の適度なB級さで個人的には好ましい。
往年の初代ウルトラマンが植物怪人ケロニアを倒した際の右腕を突き出して放つウルトラアタック光線を模した光線技が北極怪獣ノゼラの背中の硬い甲羅にはじかれて、胸中央のカラータイマーも点滅しエネルギー残量が乏しくなったネオスのピンチに、ついに出現・巨大化したウルトラセブン21が加勢!
ここに2vs2のタッグマッチが開始される!
本格的な初活躍であるだけに、セブン21はそのイメージソング「ウルトラセブン21」1995年版のイメージソングの新アレンジ版(TYPE-2001)をバックに大活躍、強くて頼もしいところを見せつける。
近年の格闘技で流行のかかと落としも披露。
特撮監督の指示というよりスーツアクターや殺陣師(たてし・いわゆるアクション監督)側のアイデアの採用ではないかと思うが、2人のウルトラマンがはじめてバトルした往年の『ウルトラマンA(エース)』(1972・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070430/p1)5話「大蟻(おおあり)超獣対ウルトラ兄弟」(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20060604/p1)でのウルトラ兄弟の長兄ゾフィー&エース VS 大蟻超獣アリブンタ&ギロン人とのタッグマッチのラストで、ウルトラ兄弟が2大怪獣の頭を羽交い締めにしたまま双方向から走り込んで頭突きさせあって昏倒させるシーンのオマージュまで見られた!
(編:このシーンへのオマージュは、後年の映画『ウルトラマンメビウス&ウルトラ兄弟』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070128/p1)での初代ウルトラマン&ウルトラセブン VS ガッツ星人の分身体2体戦にも見られる)
ネオスが両腕を十字に組んで放つネオマグニウム光線と、21が両腕をL字型に組んで放つ光線技レジアショットで、2大怪獣は打倒された。
「21世紀を担うヒーローだからウルトラセブン21」
という本作ラスト、今回の事件の晩におけるHEART基地でのショートケーキによる会食の直前、隊員たちを前にカグラ隊員が赤い巨人にネーミングをする光景。
「21」はともかく「セブン」の方は、オリジナルのウルトラセブンが来訪していない本作の地球においては説明になっていないのではないか?(笑)
[関連記事] 〜ウルトラ兄弟ダッグマッチ活躍編!
『ウルトラマンネオス』1995年版 〜Wヒーローならテーマへの多角的アプローチが可! 防衛隊も巨大ロボを持て!
http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971115/p1
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