(東京MXテレビ・毎週日曜18:30の円谷劇場にて『ウルトラマンネオス』放映「全話評」連動連載!)
『ウルトラマンネオス』#1「ネオス誕生」
『ウルトラマンネオス』#2「謎のダークマター」
『ウルトラマンネオス』#4「赤い巨人! セブン21」
『ウルトラマンネオス』1995年版 〜Wヒーローならテーマへの多角的アプローチが可! 防衛隊も巨大ロボを持て!
『ウルトラマンネオス』全話評 〜全記事見出し一覧
#5「見えない絆」
怪獣(昆虫怪獣)シルドバン (寄生怪獣)バッカクーン登場
(脚本・星野卓也 監督&特撮監督・満留浩昌)
(視聴率:関東・未放映 中部・未放映 関西2.3%)
(文・内山和正)
(02年7月執筆・11月改稿)
平成ウルトラ三部作(1996〜99)の特撮助監督出身で、『ウルトラマンダイナ』(1997・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971201/p1)・『ウルトラマンガイア』(1998・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19981206/p1)で特撮監督に昇進し、『平成ウルトラセブン』1999年版5話「模造された男」における宇宙ロボット・キングジョーII戦での見事な特撮バトル演出の印象も強い満留浩昌氏が、本編ドラマ部分の監督にも初挑戦した作品。
角度にこだわったり夕陽の美しさを魅せようとしたり、執拗に映像に凝る姿勢は本作『ウルトラマンネオス』(2000・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20120226/p2)全話中随一のもの。
怪事件のない暇な時間における防衛組織HEART(ハート)隊員たちの司令室での今時の若者らしい軽さや遊技・会話を、あのお堅いアユミ隊員にも将棋に負けて子供みたいにムキになって悔しがるかわいさを出させて描いた序盤から一転。
緊張感みなぎる対怪獣チームとしての対策――1体目の怪獣への攻撃(厳密にはこれが本話の冒頭)・その死体処理・2体目の巨大キノコ処理にあたっての団地住民の避難指示――へと移っていく。
これまでの『ネオス』とは違う感があるものの、「こんな怪獣ものとして正統派・王道の展開の『ウルトラ』も確かにあったよな」と思い出させる。
今回は短髪の天然パーマに濃い顔つきで、ワイルドな印象があるヒノ隊員(森田猛虎)が主役。
怪獣攻撃・殲滅(せんめつ)作戦で相手の特性に合わせてさまざまな合理的なアイディアを出して、一度は昆虫怪獣を戦闘機ハートウィナーの「07(ゼロナナ)式貫通弾」で打倒して得意がるヒノ隊員。
だが、巨大キノコの焼却作戦では団地に子供が残っていたことを見逃してしまったことによる自分のミスで、その子供を救おうとしたウエマツ隊員(影丸茂樹)を巨大キノコの黄色い鱗粉(りんぷん)で負傷させてしまう。
ヒノ隊員独自の方法で責任を取ろうとするものの、ミナト隊長に認められずに司令室での待機と分析を命じられ、納得できずに隊を出るという挫折もの。
荷物をサンドバック状のリュックで担いでGジャンの私服姿で街や河川敷を彷徨(ほうこう)し、食堂を営んでいる実家前まで戻ってしまい、暖簾(のれん)をめくってガラス扉越しに中を覗くと江戸っ子の父親が常連のお客に自慢の息子をホメられて照れていて、いたたまれず中に入れないというシーンもいい。
軍人としての厳しい態度と大甘(おおあま)なやさしさを併せ持つミナト隊長。
負傷し入院しているウエマツ隊員が、見舞いに来てくれたミナト隊長に対して、
「ヒノはあれでもナイーブなやつです。放っておいたらアイツ……」
とかばったり、失態を犯したヒノ隊員を他の隊員たちが気遣ったり、待機を命じられて納得できずに司令室を飛び出したヒノを意外にも普段はクールなアユミ隊員が呼び止めに行ったり、厳しい態度を取るミナト隊長にも、
「それで辞めるような人間なら、残念だがHEARTには必要ない」
「もちろん……、ただのひとりでも欠けたら、それはもうHEARTであることはできない」
との多面的なセリフを吐かせて、HEARTメンバーの魅力を描いていく。
商店街の電器屋の店頭のテレビで、怪獣出現を知り表情が変わるヒノ隊員……。
たしかに定番的=ありきたりな話ではあるのだが、観ているあいだはそんな不満は思ってもみなかった。
それまでの2〜4話では何かが足りないと思ったものだが、この回には充足感がある。
そしてこの回を境に『ネオス』は面白くなっていく。
冒頭の造成地での昆虫怪獣や、特に団地に出現した巨大キノコのシーンは団地のミニチュア群に挟まれて見上げるようなアングルでのオープン撮影も試みていて、特撮演出も気合いが入っている。
その巨大キノコが柄の部分から折れ曲がって倒れるように爆発するシーンも迫力がある。
キノコの傘をかぶって柄の部分から凶悪そうな顔面や逞しい手足や太い尻尾が突き出た怪獣に変化するのも驚きがあった。
余談だが、怪獣の突き出た獰猛そうな顔面は、往年の一峰大二(かずみね・だいじ)の漫画版・初代『ウルトラマン』に登場した戦艦大和(やまと)が怪獣化した「怪獣ヤマトン」の艦首の部分に相当する顔面に酷似している印象があるのだが、いかがだろう?
やや不満があるとすれば怪獣の特性がわかりにくいことか?
巨大キノコが変形した寄生怪獣バッカクーンは、冬に昆虫に寄生して夏にはキノコと化してしまう冬虫夏草(とうちゅうかそう)という菌類バッカクキンのようなものであり、昆虫怪獣シルドバンのエネルギーを吸収して生きていると分析される。
が、シルドバンがバッカクーンの登場より先の本話冒頭で死んでいて、その身体に直接は寄生していないことで理解しにくくなっている。
死骸からエネルギーを摂(と)ることはあるだろうが、ただ単に養分を取られるだけでなく、一度死んだはずの昆虫怪獣シルドバンは寄生怪獣バッカクーンの背中から延びる菌糸と連結されることで復活して、逆に養分を与えられたかのごとく(笑)元気一杯に暴れてもいる。
この状態のシルドバンは、バッカクーンにあやつられたゾンビ的なものらしい(バッカクーンが吸血鬼的というべきか)。
本シリーズにおける不条理現象の源である暗黒物質ダークマターの影響下ではそれもアリなのだろうが、本話のような特殊な状況を理解させるのには、やはり何らかのセリフによるていねいな説明がもうひとつ必要なように思う。
セミの幼虫のような昆虫怪獣シルドバンの着ぐるみ(特に横から見た姿)自体はマニア誌で見たときからすばらしいと思っているのだけれど。
なおシルドバンは劇中では第6号昆虫型怪獣、バッカクーンは第7号菌糸成長型怪獣と呼称されているのも、『ネオス』1話以降に登場した怪獣・宇宙人の種別数に合致していて、幼児向けというよりマニア向けの趣向だが、本エピソードに怪獣出現・対策シミュレーションものとしてのリアリティを増させている。
このエピソードあたりからナナ隊員に、初期編とは異なり「やさしい女性」的なイメージが出てくる。
ネオスヘの変身時の掛け声は各話の監督に任されているようで、
1・2話では「ウルトラマンネオース!」、
3・4話では「ネオース!」、
そしてこの5・6話では無言となっている。
7話以後は「ネオース!」が定型化した――8話・11話を除く――が、11話は3・4話と同じ高野敏幸監督でありながらも「ウルトラマンネオース!」。
(8話については当該回の評で記述)
画面に背中を向けて、造成地の土砂を手前のカメラ側に蹴り飛ばして、怪獣に突進していくネオスの戦闘開始描写が印象的。
ロング(遠景)の映像で、両横を2大怪獣に挟まれて両方を気にしつつ構えるネオスも定番だが恰好いい
(背景の青空セットであるホリゾントの天井が東宝ビルトのセットにしては高いが、このへんは平成ウルトラ三部作で近年進歩が著しいデジタル合成で、青空を天井側へ描き増ししたものだと思われる)。
怪獣出現を、仲間たちの危機を、職務を放棄することができずにHEARTに復帰し、やはり無断でヒノ隊員は戦闘機で出撃し、とっさの判断で超高空に急上昇、垂直急降下による急加速も利用した銃撃を連発する!
この際のコクピットの計器類が急回転していく映像演出も効果的。
2大怪獣を連結する菌糸をついに分断!
ウルトラマンネオスに勝機を与えることで、ヒノにも華(はな)を持たせる作劇を貫いた。
これも結局は中盤における命令無視と同様であり、劇中でもそのことに言及されるが、ラストで隊員たちはヒノをかばい、ミナト隊長も
「だれが処分すると言った。ヒノ隊員、よくやった」
と粋(いき)な計らいで気持ちよくクロージングとなる。
これに言及するのは野暮(やぼ)でもあるが、言うまでもなく本話のサブタイトルも一応、2大怪獣の菌糸による連結と、本話のHEART隊員たちの絆を意味したダブルミーニングでもあるのだろう。
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http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19971115/p1