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モブサイコ100(実写版) ~「いいヤツ」とは何か!? 「ワンパンマン」のONE原作漫画を、坂本浩一×吉田玲子×濱田龍臣トリオで実写ドラマ化!

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『モブサイコ100』(実写版) ~「いいヤツ」とは何か!? 「ワンパンマン」のONE原作漫画を、坂本浩一×吉田玲子×濱田龍臣トリオで実写ドラマ化!

(文・久保達也)
(2018年11月11日脱稿)


 第2期の深夜アニメの放映が2019年春期に予定されている傑作コミック『ワンパンマン』(初出・09年。漫画連載12年。アニメ1期・15年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190303/p1)で知られる漫画家・ONE(ワン)。


 彼が手がけた原作コミック『モブサイコ100(ひゃく)』(漫画・12年。アニメ1期・16年。2期・19年。3期・22年)は、小学館の漫画配信サイト『裏サンデー』、のちにスマホ用漫画アプリ『マンガワン』で連載されて、本稿で語る同作の実写深夜ドラマ版の放映直前である2017年末に全16巻で完結した。


 すでに2016年夏期にTOKYO-MXやBSフジでは深夜アニメ版が放映され、来たる2019年1月からはその第2期の放映が予定されているほどに、『モブサイコ100』はそれなりに人気・評判が高い作品なのだ。



 主人公・影山茂夫(かげやま・しげお)は勉強も運動も人づきあいも苦手である。「坊(ぼっ)ちゃん刈り」のヘアスタイルで終始無表情で感情にもとぼしくてルックスにも恵まれていない。おまけに、その場の空気を読むこともできない、ということで人格的にも少々の難がある。
 その愛称が「モブ」であるほどに、主人公なのにモブキャラみたいな中学2年生なのであった!――ちなみに、「モブ」の語句に「漢字」を強引に当てはめて、訓読み(くんよみ)にしたのが「茂夫」のネーミングの由来だろう(笑)――


 しかし、そんな彼は実は超能力者でもあった! その力を発動した際の彼は、髪の毛が逆立(さかだ)ってその表情と口調もまさに「変身」をとげるのだ!



 そんな作品の実写化である深夜ドラマ『モブサイコ100』(18年)が、2018年1月からテレビ東京にて『木(もく)ドラ25』なる深夜枠にて全12話で放映された。


 その内容は、


●モブが怪しい宗教団体に勧誘されたのを発端に波乱が起きる「(笑)(カッコ・わらい)編」
●モブが学園どうしの対立抗争に巻きこまれる「番長編」
●モブの弟である律(りつ)が超能力に覚醒する「律編」
●モブが超能力で世界を支配しようとたくらむ悪の組織と対決する「爪(つめ) 第7支部編」


と、原作コミックの初期作品が順を追って映像化されていたそうだ。


 主演と監督の布陣は、同作放映の直前である2017年末に放映を終了した『ウルトラマンジード』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20170819/p1)の主人公・朝倉リク=ウルトラマンジードを演じた濱田龍臣(はまだ・たつおみ)とメイン監督・坂本浩一で、彼らが再びコンビを組んでいる。


 そして、2010年代以降の「ウルトラマン」・「仮面ライダー」・「スーパー戦隊」の監督でもおなじみ、本作の映像化を手掛けた坂本監督ならではの派手なアクション演出や、さわやかにエッチでフェティッシュなアングル(笑)を主体にしながらも、吉田脚本の細かな心情描写が絶妙に効いた、娯楽性とドラマ性を両立させた仕上がりとなっていた!


 ただし、製作は「ウルトラマン」の円谷プロではなく東映本社でもなく東映ビデオであった(汗)。そして、過去の坂本監督作品の参加者にかぎらず、近年の仮面ライダースーパー戦隊の出身俳優も大挙して出演していることも、特撮マニア的には見どころだ。


 主なところでは、


●脳感電波部・部長である暗田トメ(くらた・トメ)が、山谷花純(やまや・かすみ)
(『手裏剣(しゅりけん)戦隊ニンニンジャー』(15年)の百地霞(ももち・かすみ)=モモニンジャー)


●超能力覚醒ラボ所長・密裏賢治(みつうら・けんじ)が、久保田悠来(くぼた・ゆうき)
(『仮面ライダー鎧武(ガイム)』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20140303/p1)の呉島貴虎(くれしま・たかとら)=仮面ライダー斬月(ざんげつ)、『宇宙戦隊キュウレンジャー』(17年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20180310/p1)の敵幹部・スコルピオ)


●超能力者・白鳥大地(しらとり・だいち)が、塩野瑛久(しおの・あきひさ))
(『獣電戦隊キョウリュウジャー』(13年)の立風館ソウジ(りっぷうかん・そうじ)=キョウリュウグリーン)


●生徒会長・神室真司(かむろ・しんじ)が、國島直希(くにしま・なおき)
(『動物戦隊ジュウオウジャー』(16年)の門藤操(もんどう・みさお)=ジュウオウザワールド)


●他校の番長・枝野剛(えだの・つよし)が、根岸拓哉(ねぎし・たくや)
(『ウルトラマンギンガ』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200819/p1)&『ウルトラマンギンガS(エス)』(14年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200404/p1)の礼堂ヒカル(らいどう・ひかる)=ウルトラマンギンガ)


●テロ組織の幹部・桜威(さくらい)が、出合正幸(であい・まさゆき)
(『轟轟(ごうごう)戦隊ボウケンジャー』(06年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070108/p1)の高丘映士(たかおか・えいじ)=ボウケンシルバー、『獣電戦隊キョウリュウジャー』の鉄砕(てっさい)=キョウリュウグレー)


●テロ組織の幹部・誇山(こやま)が、岩永洋昭(いわなが・ひろあき)
(『トミカヒーロー レスキューフォース』(08年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090404/p1)の石黒鋭二隊長=R5(アール・ファイブ)、『仮面ライダーOOO(オーズ)』(10年)の伊達明(だて・あきら)=仮面ライダーバース、映画『宇宙刑事ギャバン THE MOVIE(ザ・ムービー)』(12年・東映)および、その続編オリジナルビデオ『宇宙刑事 NEXT GENERATION』シリーズ(14年)での烏丸舟(からすま・しゅう)=2代目・宇宙刑事シャイダー


といったところであり、特撮ファンにはおなじみの役者たちであふれていたのだ。


 また、本作のアニメ版(16年)でも悪霊であるマスコットキャラ・エクボの声を演じて、『宇宙戦隊キュウレンジャー』では着ぐるみの宇宙人キャラであるチャンプ=オウシブラックの声を演じたベテラン声優・大塚明夫が、今回の実写版でもエクボの声をコミカルに演じていた。


 なお、メインライターはアイドルグループ・でんぱ組inc.(インク)を主演に据えていたネット配信の実写ドラマ『白魔女学園(しろまじょ・がくえん)』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220227/p1)シリーズでもすでに坂本監督作品ともタッグを組んでいる、『けいおん!』(09年)・『ガールズ&パンツァー』(12年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190622/p1)・『弱虫ペダル』(13年)・『たまこまーけっと』(13年)・『チア男子!!』(16年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190603/p1)などの数々の人気アニメを手がけた吉田玲子(よしだ・れいこ)であった。



 ところで、主人公少年・モブが通っているのは「塩(しお)中学校」という名前である(笑)。


 同校との対立抗争が描かれる、


黒酢くろず)中学校
●醤油(しょうゆ)中学校
●味噌(みそ)中学校


など、市内の中学はすべて調味料の名前から取られている。なにせ所在地も「調味市」なのだ(笑)――



 そんないかにも漫画な架空の場所を舞台に対立している、


黒酢中学の不良生徒たち
●超能力覚醒ラボの超能力者たち
●テロ組織・爪の構成員たち


などの多数のキャラの思惑(おもわく)が複雑に交錯する群像劇としての趣(おもむき)が強いのが本作である。


 しかし、その主軸となっているのが、主人公・モブと弟・律との関係性であった。


 先述したように、モブ役の濱田が『ジード』で演じていた主人公・朝倉リクというキャラクターは、早朝の子供向け特撮変身ヒーロー作品にふさわしく、漫画・アニメ的でひたすらに明るくてさわやかで悪意のない天然キャラであった。イヤミのない無邪気な性格でダブルヒロインとの三角関係にもなっていったほどだ(笑)。


 彼とは対称的に、氏が本作で演じているモブは、クラスでは徹底的にバカにされている(爆)。幼いころから秘かに想いを寄せていた同級生の美少女・つぼみにも、まともに相手にされていない。


 そんなヘタレだからか、筋力増強のトレーニングを行なう筋肉バカ(笑)の部員ばかりの「肉体改造部」などにも入部する――虚弱体質だった作家の三島由紀夫古代ギリシャの健全なる肉体&精神を目指してボディービルディングで肉体改造に成功した話からの引用だろうか?(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200809/p1)――。しかし、三島由紀夫とは異なり、彼はそこでは足手まといとなってしまうのだ!(笑)


 怪しい宗教団体こと「(笑)」(カッコ・わらい)の勧誘にもあまり疑わずにノコノコと付いていく。しかし、そのために危機にも陥(おちい)ってしまうのだ!


 ニセのラブレターにもダマされて公園におびき寄せられてしまう。そして、不良生徒どもに人質にされてしまう!


 モブはさんざんな目に遭(あ)いつづけているのだ。そして、そのすべての行動の動機は「モテたい」の一心なのだった!(笑)



 体育の授業中には、バレーボールが彼の頭を直撃してしまう!


 その瞬間をつぼみに笑われてしまったのを、


「笑った…… ボクを見て、笑った……」


などと、自身に対する「好意」だとしてカン違いをしたモブは、つぼみにドモり口調で、


「笑顔を、ありがとう」


などと述べて感謝するほどに、人情の機微や女子による強い男子を求めるような心情には疎(うと)いのであった(笑)。


 思春期のころに、いや、現在でも真っ只中で「非モテ」で苦しんでいる立場からすれば、大なり小なりそんなふうに思いこんでしまう心情を充分に視聴者に理解させられるほどに、先のリク青年とは完全に相反しているモブなるキャラを演じている濱田の器用な演じ分けは実に絶品でもあった!


 対するに弟の律は、そのような兄のモブとは正反対に、成績優秀・スポーツ万能なイケメンで、生徒会の役員まで務めている。そして、いつもつぼみと親しく話をしており、モブは律をうらやましがってもいる。


 しかし、一方の律もまた、


「ボクにないもの、兄さんは持ってるだろ」


などと、自分には超能力がないことがコンプレックスとなっているのだ。


 ヘコみがちなモブに常に暖かく接している律は、一見は「兄想いの良き弟」として映ってはいる。しかし、「超能力」を使えるモブのことを単にうらやましがっているのではない。そこには「嫉妬(しっと)」や「恐怖」の感情も入り混じっているのだ。兄であるモブにどことなく遠慮がちに、陰のある表情で恐る恐る話しかけるような律を演じているお若い役者さんである望月歩もまた、モブを演じる濱田に決して負けてはいないのだ。


 モブと律の兄弟は、小学生のころに不良高校生どもに「お年玉」をカツアゲされた過去がある。その際に「超能力」を暴走させてしまったモブは高校生のみならず、律にも重傷を負わせてしまっていたのだ! そのことが兄弟双方のトラウマとなっていることが、本作のタテ糸や彼らの行動原理としても重要な位置を占めてくるのだ。


 この過去場面が回想シーンとしてたびたび挿入(そうにゅう)されていることが、彼らのフラッシュバック的な心理描写・トラウマ(心的外傷)描写としても実に効果的なのだ。


 この事件を契機にモブは「超能力」を決して人には向けないと決意しており、何度となくおとずれる危機の中で「超能力」を使おうか使うまいか、モブが葛藤するスリリングな展開となる以前に、彼自身も生来から消極的な性格だったのだろうが、そもそも「超能力」の暴走を避けるためにも、モブは常日頃から自身の感情を極力おさえているのだ……という、念押し的なキャラクター設定がなされていたのであった。
――もちろん、抑えに抑えていた感情が次第に高まって爆発してしまうこともあるワケで、この状態を「100%」だと表現することで、本作のタイトルの由来ともしている――


 一方の律も、モブが再びその「超能力」を暴走させることを恐れている。「超能力」を持っているモブを尊敬する……というよりかは、むしろ恐怖の念から、モブの気分を害することのないように(汗)、常に暖かい態度で接しているという、実に複雑で多面的な人物像を造形することにも成功しているのだ。


「モブな兄貴」と「主役な弟」との関係性! それでも「いいヤツ」であれ! という主張!


 このモブと律との互いに対する「嫉妬」が根底にある兄弟関係は、本作実写ドラマ版のシリーズ中盤ではいったん危機を迎えることとなった。


 生徒会長が強行した「大掃除実行計画」。それは不良生徒たちが女子の下着・上履き・リコーダーなどを盗んだように偽装することであった! その「計画」に加担してしまって、いくらワルとはいえ無実の生徒たちがクラスで非難されて、居場所を失っていくのを目のあたりにした律。
 彼は自身の行為も含めて「最悪だ」と心を痛めてしまうのだ。そして、その罪悪感から彼にも「超能力」が覚醒するのだ! しかも、他校の不良生徒たちとの乱闘騒ぎを起こすまでに至るのだ!


 騒ぎの場に駆けつけてきたモブ。彼に対して律は、


「ずっとあこがれと劣等感をいだいていた」


と告白をはじめる。そして、


「仲良し兄弟は今日で終わり」(!)


と絶交してみせる!


 しかしモブは、律が「超能力」を悪用して徹底的に痛めつけたワルどもに、


「ボクの弟が…… スイマセン……」


などと云って土下座をしたうえで、律に対して、


「ボクを引き離すことはできないよ。兄弟なんだから」


と、実にカッコよくも云い放ってみせるのだ!



 最終展開でもモブと間違えられてしまった律は、「超能力」を持った少年少女を革命戦士に仕立てようとたくらむ秘密組織「爪(ツメ)」によって、覚醒ラボの超能力者たちとともに拉致(らち)されてしまっていた。
 しかし、モブたちの活躍でこの組織が壊滅した最終回のラストで、律は「これからはモブみたいな『いいヤツ』になる」と語ってみせたのであった……


 モブに対してあこがれていたのは、決してその特異な「超能力」だけではなく、モブが「いいヤツ」だったからだと、律はようやく気づいたのだ。
 もしくは、愚直なまでの「いいヤツ」ぶりの愚かさや人情の機微への疎さに対して気恥ずかしかったりイラ立ってはいたものの(笑)、その欠点はそのままで直っていなかったとしても(爆)、一周まわってモブのそんな「欠点」とも表裏一体の「長所」をも、彼の度量が大きく成長をとげたことで、受けとめてみせて包容までできるほどに、律の人格も大きくなったといったところなのであろう!



 原作漫画ありきの作品なので、本作を手がけた吉田玲子脚本作品の過去作との類似を指摘するのは的ハズレなのだろうが、


●『ガールズ&パンツァー』で、「戦車道」をめぐって対立していた主人公・西住みほ(にしずみ・みほ)と姉のまほが、最終回で直接対決の末に妹のみほが勝利して和解
●アニメ映画『映画 聲(こえ)の形』(16年・松竹・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190901/p1)で、耳が不自由な少女・西宮硝子(にしみや・しょうこ)を小学生のころにいじめていた主人公・石田将也(いしだ・しょうや)が、高校生になって再会した硝子にいだいた恋愛に近い感情


など、登場キャラのハートウォーミングな関係性の変化を彷彿(ほうふつ)とさせるものもあった……



 ところで、「仮面ライダー」・「スーパー戦隊」・「ウルトラマン」などの「子供番組」では決して描かれないような「流血」もひんぱんに見られるほどの徹底した「バイオレンス描写」を、坂本監督はほぼ各話で遠慮することなく本作では演出してみせていた! 超能力者たちのサイキックバトルや学園抗争の場面で特にそれは顕著であった。


 生徒会が権力を行使して不良生徒を排除する描写も含めて、「アクション場面」では「超能力」のみならず「力」そのものを、物理的な「実力」行使そのものを「悪」として描いていた印象が強いのだ。


 特に第5話では、周辺キャラたちの「日常描写」が点描される以外に、全編にわたってモブが黒酢中のウラ番長でもあり「超能力者」の花沢輝気(はなざわ・てるき)に徹底的に痛めつけられていく姿が描かれていた。
 しかし、幼少時の律に重傷を負わせてしまった自身の「超能力の暴走」を回想していたモブが花沢に対して、


「超能力を人に向けてはダメだ!」


と説得をつづけつつ、


「ボクは変わるんだ。いいヤツになる!」


などと、決意を新たにするストーリー展開となっていたのだった。


 時折り不快とさえ思えるほどのヒドすぎる「暴力」描写は、まさにこの作品テーマを主張するために、確信犯的に爽快感ではなく不快感をもたらすための演出だったと解釈すべきものである。


 そして、たとえ「筋肉バカ」ではあろうとも、その強靱な肉体を物理的な「暴力」の行使である「ケンカ」に使うことには断固拒否してみせるストイック(禁欲的)な肉体改造部員たちの描写! それは、花沢・不良生徒たち・爪の幹部連中らとの絶妙な対比としても機能していたのだ。


 生徒会にハメられて居場所を失ってしまった番長・鬼瓦(おにがわら)。彼に対しても、そのくやしさを「肉体改造」にブツけろ! と入部をすすめて、


「こんなオレでも受け入れてくれるのか?」


と、鬼瓦を感動させた肉体改造部員たち…… そんな彼らの描写も、単なる物理的な「力」の卓越性ではなく、その人格面でのそれまで敵対してきた他人をも受け入れるだけの器量の大きさ、つまりは「いいヤツ」であることが強調されていたのだ。
――まぁ、「肉体改造」自体も「軍備増強」のミニマム版みたいなモノだともいえるし、「いいヤツ」であること自体が「人格力」という広義での「力」ではあったり(笑)、その「力」を延長していくと「カリスマ力」、要は他人を自身に従わせる「影響力」といったモノにもなっていくのだけど……。話が煩雑になるので、今回はこのへんの話はオミットさせてください(汗)――



 超能力者の「サイキックバトル」を描いてきた本作は、視聴者に「いいヤツ」になれ! というメッセージを発信して完結することになった。


 それにはモブが「師匠」として崇(あが)めている主要キャラ・霊幻新隆(れいげん・あらたか(笑))の存在が大きいのであった。


 深夜アニメ版では人気絶頂の中年アイドル声優(笑)こと櫻井孝宏(さくらい・たかひろ)が霊幻の声を演じていた。しかし、実写ドラマ版では特撮変身ヒーロー作品『幻星神(げんせいしん)ジャスティライザー』(04年・東宝 テレビ東京http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20041109/p1)に登場した悪の変身ヒーロー・神野司郎(じんの・しろう)=デモンナイトや、深夜特撮『ライオン丸G(ジー)』(06年・「G」製作委員会 テレビ東京http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20061229/p1)の主人公・獅子丸(ししまる)=ライオン丸、さらに『仮面ライダー鎧武』のシド=仮面ライダーシグルドなどを演じた波岡一喜(なみおか・かずき)が、その正体は詐欺師(さぎし)ながらも(!)、実に人情味にあふれる霊幻をコミカルに好演していたのだ。


 霊幻は「霊とか相談所」(笑)という心霊現象相談所を経営している。ストーカー被害を相談に来た巨乳の女性に対しては、悪霊が憑(つ)いていると偽って胸をマッサージしてカネを取るなど、なんでも霊にカコつけて悩みを相談に来た客をテキトーにまるめこむ商売をしているのだ(爆)――さすがの坂本監督も実写作品だからか、女性の胸のマッサージは映像化はしなかったが(笑)――。


 モブはこの相談所では除霊のアルバイトをしている。先述したように、弟の律にも重傷を負わせたほど「超能力」を制御できなかった小学生当時のモブが、ここに相談に訪れたことがその契機となったのだ。


 この際、霊幻は「超能力」も「ひとつの個性」だとしたものの、その能力を自己顕示(じこ・けんじ)的には他人に対してヒケらかしたり、他人に対して発動したりはせずに、「いいヤツ」になれ、とモブに対して云い聞かせていたのだ。


 そして、これは霊幻自身の体験にもウラ打ちされたものだったのだ。以前に勤務していた会社で、霊幻はプロジェクトが失敗した責任を上司にすべてなすりつけられて、退職に追いこまれてしまった過去があったからなのだ。


 実写ドラマ版シリーズの最終回では、爪の幹部たちに対して霊幻が会社員時代に


「弱い者を踏みつけて、ノシ上がったヤツらをさんざん見てきた」


などと語っていたが、それはシリーズ途中でも語られてきた、まさにこのことだったのであった。霊幻は「力」を悪用して社会的カーストの上位に立とうとした過去の「上司」と「爪」の連中を、その品性下劣さにおいては同一の存在だと見なしていたのだ。


 しかし、霊幻を退職に追いやった当の上司もまた良心がなかったワケでもない。そのような学術用語で云うところの「悪魔化」された単純で一面的なキャラ造形はされてはいないのだ。これは実写ドラマ版のオリジナル描写であったようだが、シリーズ終盤ではこの上司は過去に部下を退職に追いやったことが原因で不眠症で苦しんでいた真相が明かされる!


 そんな彼もまた「霊とか相談所」を訪れたものの、霊幻が所長であることに最後まで気づかない、あるいは部下を退職に追いやったことは後悔・疼(うず)きとともに覚えてはいても、その部下の顔と名前――つまりは彼個人の人格や人となり――は覚えていないという、是々非々な描写がまた絶妙な「リアル」さをも醸(かも)し出してくるのだ(汗)。


 会社員時代のマジメな黒髪短髪とは打って変わって金髪となり、たまたま花粉症のために風邪マスクをしていたとはいえ、目の前の霊幻がかつての自分の部下であることにも気づかない元・上司。「力」をヒケらかすヤツにとっての「弱者」とは、その程度の存在にすぎないところもあるのだろう。
 そして、元上司が「ずっと後悔してた」と云うワリには、自分が追いつめてしまった霊幻のことを「目の細~いアイツ」と繰り返して表現する言動には、明らかに蔑視(べっし)の感情も込められていたのだ。


 しかし、こんなカーストの上位にいる他人や弱者に対する共感性には乏しい「強者」はこのまま死ぬまで不眠症で苦しめばいい! その苦悩に対しては手を差し伸べてはやらない! 死ねばイイのに! ……などと思ってしまう「弱者」の想念がまた「悪」にもなってしまうのだ……
 たとえ時系列的には「強者」の側に先に原因があったのだとしても、「弱者」の方が過剰防衛としての「力」や「実力」や「暴力」を行使してしまうことで、かえってもともとの「強者」よりもはるかに大きな「悪」として逆転してしまったりもする現象も発生してしまうという逆説・パラドックスも世にはあるものなのだ(爆)。
 社会に対する恨みで無差別殺人を犯すような輩もまた、この類いなのである。もちろん、一片の同情の余地はあっても、同じような環境にあっても犯罪を犯さない人間の方が圧倒的な大多数であることを考えてみれば、それらの無差別犯罪はやはり唾棄(だき)すべき「悪」となってしまうものなのだ。読者諸兄も心して気を付けられたし――もちろん、自戒も込めてではある――。


 霊幻はベッドに寝かせた元上司に対して、当初は明らかに私怨(しえん)が込もった乱暴なマッサージをしていく(笑)。しかし、上司が霊幻を退職に追いこんだ過去を話しはじめて、それを後悔していると語るや、上司に向けていた霊幻の矛先(ほこさき)は次第にまるくなっていく。


 「ありがとう」と丁重(ていちょう)に礼を云った上司が立ち去るや、霊幻は「メチャクチャいいヤツだな」とつぶやく。「いいヤツ」が元上司のことで、彼の悪事のすべて許してしまった意味の言葉であったとしたら、ここの挿話(そうわ)はあまりにキレイごとの単なる茶番劇にしか見えなかったことだろう。
 だが、霊幻は「メチャクチャいいヤツだな」というセリフにつづいて、ひと呼吸を置いてから「オレ」とつぶやくのだ。そう、「メチャクチャいいヤツ」なのは、上司ではなくオレこと霊幻、つまり自分のことを指していたのだ。つまり、霊幻は悪人ではないかもしれないが、最上級の善人でもなかった(笑)。しかし、過去に遺恨(いこん)のあった人間とも付かず離れずを実践できる人間ではあったのだ。


 もしも、心の狭い筆者(汗)が霊幻の立場だったとして、この上司がたずねてきたならば「帰れ!」と怒鳴って追いはらっていたことだろう(爆)。
 そう。個人レベルでも他人と和解できないのだから、学校のクラスの全員と…… ヤンキーDQN(ドキュン=不良)と…… ファッション&スイーツな輩と…… 世代の異なる人間と…… あるいは、世界中のさまざまな国々の人々とも仲良くすることなどは、残念ながらも絶対に不可能だ! 世界中から争いや戦争を根絶することも原理的に不可能なことなのだ! とまでは云わないけど、やはり非常に困難で不可能に近いことではあるのだろう……


 キライな人といわず苦手な人や初対面の人、言語も習慣も価値観も異なる外国人とも、同一空間で長時間いっしょにいることには、人見知りで内向的な人間であればあるほど、悪気はなくてもこれほどまでにツラいことはないだろう。異なる性格の持ち主との同席や、異文化コミュニケーションとは、ことほどさようにムズカしいことなので、それが出来もしない我々のような内向的な人間が、口先だけで歯の浮くような「みんなと仲良くしましょう」などと幼稚園や小学校の先生レベルのキレイごとを平気で主張することには矛盾を感じないのであろうか?(汗)
――だからといって、殺し合ったり、外国とは戦争をするしかないのだ! などと云っているワケではないので、くれぐれも念のため(汗)。しかし、他人や外国ともベタベタせずに争いもせずに付かず離れず、適度な距離感で……といったところが現実的な処方箋(しょほうせん)にはなるであろう。2500年も前に孔子も『論語』で「君子の交わりは水のごとし」と云っていることでもあるのだし!――


 とはいえ、霊幻だって決して上司のすべてを許したワケではないのだろう。しかし、そんな相手に対しても彼が自身の行為を後悔していると知れば、態度を軟化させて冷静な態度でオトナの対応を示すことができた霊幻は、やはりそのかぎりでは最上級ではなくても「いいヤツ」なのであった!


 心の一部には「恨み」を残しながらも、そのまた一部では悪人のことをも「許し」てもみせている。もちろんギャグにまぶされてはいるのだけど、キリストが「七度の七十度、許せ」(無限に許せ)、仏陀も「慈悲忍辱(じひ・にんにく)」(慈悲心をもって悪人からの辱めにも堪えよ!)と説いていたように、何気に「高邁(こうまい)なる精神とは何ぞや!?」といったことを、ここでは語ってもいるのであった!(……ホントかヨ!?・笑)


 そんな霊幻の「いいヤツ」ぶりは、最終回でも全開となっていた。律や仲間たちの危機に対して、「爪」の幹部連中を相手に「超能力」を使うか使わまいか、葛藤していたモブの前に現れた霊幻。彼はモブを過去の自身と同一視したかのように、


「そこまで追いつめられていたのか。ツラかったな」


と暖かく声をかけて、「爪」の幹部たちに


「弟子によけいなストレスをためさせるな!」


と絶叫してみせる!


 「爪」からの攻撃が激しくなり、何度も「超能力」を使おうとしたモブに反撃しないように説得をつづけた末に、霊幻はモブに対して、


「イヤなときは、逃げたっていいんだ!」


と叫ぶのだ!


 20世紀までの「逃げちゃダメだ!」ではなく、「イヤなときには逃げたっていい」といった言説は、21世紀以降の今の日本ではけっこう普及している……といった意味では、今となっては特に新鮮ではなくは陳腐(ちんぷ)ですらあるのかもしれない。
 とはいえ、たしかに常に「逃げてばかりいてもダメ」なことも事実だし、そういった逃げグセ・負け犬根性が身に付いている人間に対しては害毒がある言説なのかもしれない(笑)。
 しかし、いつも頑張りすぎていたり、自身の不得手な分野で勝てようもない負け戦さをしている人間に対しては「イヤなときには逃げたっていい」という言説は実に有効ではあるようには思えるのだ。


 意外と云っては失礼だが、霊幻を演じていた波岡は幼いころに保育園でいじめられ、小学校に進学するまで登園拒否をつづけていた過去(!)について、自身のブログで語っている。そんな氏が演じる霊幻が「逃げたっていい」と語ったことには、同じような悩みをかかえる視聴者には、実に説得力をもって響いていた!
 ……といったような、作品の外側にあるプライベートな情報を検知して、その作品の感動をも倍増させるようなエスパー・超能力者じみた視聴者などは実在しない以上は、あるいはそういった完成フィルム以外の要素を持ってきて、その作品を持ち上げてみせる論法自体が邪道でもある以上は、そのような陳腐凡庸でクサいロジックなどは筆者も採用しないことにしよう(笑)。



 モブを説得する霊幻が、「爪」の幹部のひとりが武器とする妖刀によって背後から斬られて倒れてしまうことで、視聴者にも衝撃を与える!


 しかし、すでにモブから「師匠にまかせる」と云って「超能力」を預けられていた霊幻が、インチキにもすぐに復活して立ち上がって、「爪」の幹部にドロップキックをカマすなどして大乱闘をはじめてしまうことは、この手の超人ヒーロー・怪人・超常現象などを扱った一連の作品のお約束ではある(笑)。


 けれど、実力的にも敵(かな)うハズがないであろう超能力者たちを相手に、


「ここはオトナのオレがなんとかする!」


などと、モブに頼もしくも語っていた霊幻が有言実行を実践することとなる、ドラマ的には実にカタルシスにあふれるストーリー展開にはなっていたのだ。



 それにしてもシリーズ終盤で、行きつけのバーから最終決戦場へと向かう霊幻自身が、まるで「爪」のボスであるかのように視聴者に思わせてしまうミスリード演出は、特撮ジャンル作品を長年追いかけてきている者であれば、『仮面ライダージオウ』(18年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190126/p1)で坂本監督が担当した第5話~第6話で、「キーワードは流れ星」として年長マニア諸氏に対しては『仮面ライダーフォーゼ』(11年)の2号ライダー・朔田流星(さくた・りゅうせい)=仮面ライダーメテオのサプライズ登場があるのかも!? とにおわせて、そうはならなかったことを想起させるものがあった(笑)。こうした詐欺演出、いや、実に巧(たく)みなトリッキー演出でも、視聴者の興味を引いていく坂本監督の手腕もさすがといったところだ。


 「爪」のボスの正体は、霊幻がいつもモブにお使いに行かせていたタコ焼き屋台の初老の店主であった! 「ひさしぶりにいいタコが入りそうだ!」と狂喜する描写や、シリーズ終盤で霊幻が通りかかった際に屋台が不在だったりと、一応それなりに伏線が張られていたとはいえ、常にモブに温かい励ましの言葉をかけてくれていたキャラであっただけに、この意外性もまた絶妙であった。



 最終決戦の直後、


「自分が主役だとカン違いして力をヒケらかすヤツは、どこの世界でも消え去る」


などと、それは事実というよりも弱者の願望(汗)のような、因果応報な道徳説話的なことを述べた霊幻は、ラストのナレーションでも、


「世のため人のために、ヒケらかすことなく、こっそりと力を使う超能力者のことを、『目立たないけど、いいヤツ』だ」と定義してみせていた。


 イエス・キリストも「人に隠れて善行せよ」と云っている。これは「人に見せびらかすように善行をする輩は、そこに虚栄心が宿っているからだ。あるいは、虚栄心が宿ってしまうから、それは避けるべきなのだ」といった意味であろう。
 しかし、キリスト教的な慎ましい道徳が普及していた西欧社会でも、「近代」以降は「謙譲(けんじょう)」や「謙遜(けんそん)」よりも「自己主張」が望ましいことだとされて、「事故」を起こしても「謝ったら負けだ」とばかりに謝罪などもあまりしない殺伐とした社会へと化していった(汗)。
 特にアメリカではそういった傾向が強くて、「人に隠れて善行する」ような『あしながおじさん』のような逸話は欧州とは異なりキラわれているらしい。つまり、アメリカ人はコレ見よがしにチャリティーや寄付をしたがっているのだ(爆)。これは仏教でいうところの増長・増長慢にもつながっていく行為ではあるだろう。


 戦後の日本社会も基本的には「謙遜」よりも「自己主張」を絶対視するような方向へと進んでいって、就職の面接でも恥じらいもなく自己アピールできる品性下劣な人間ごときが高く評価されるようになってしまった(汗)――まぁでも、現状がそうなっている以上は、働いて喰っていくためにも、就職面接の場では不器用な人間であればあるほど、「必要悪」として多少ウソでも調子のいいことを云っておいた方が世渡り的にはよいとは思うゾ(笑)――
 もちろん、だからといって戦前の日本社会の方が良かったとも云えない。しかし、戦前と戦後のそんな二元論だけでは、「近代」の宿痾(しゅくあ)を超えた、新しい次代の理念、あるいは時代を超えた普遍的な理念を提示することなどはできないのではなかろうか?


 どんな行為が、どんな人格が、いわゆる「いいヤツ」を指し示しているのか? 真の意味での「善」や「正義」や「モラル」とは何なのか?
 そういったことを深く考える行為こそが、「近代」の理念である「自由」や「平等」を念仏のように唱えることよりも、よりマシな社会や世界を招来できるようにも思うのだ。
 「自由」だけではミーイズムでエゴイズムで過当競争な「新自由主義」となってしまう。「平等」だけでも旧・ソ連のような共産党独裁による「共産主義社会」となってしまう。「新自由主義」や「共産党独裁」にも陥らせないための方策。それこそが「いいヤツ」や「善」や「正義」や「モラル」といったものでもあるのだ。逆にそれらがあってこそ「自由」や「平等」もその極端化を避けるためのブレーキがあって正常に機能することもできるのだ。
 つまりは、「自由」や「平等」に先立って、「いいヤツ」や「善」や「正義」や「モラル」といったモノが存在していなければならないのである!



 本作と同じくONEが原作の『ワンパンマン』もまた、かなり暴力描写が目立つ作品ではあった。
 そして、頭がツルっぱげでアメリカのスーパーヒーローの元祖・スーパーマンのようなマントをひるがえした、一見サエない感じの主人公・サイタマ青年ことワンパンマン(笑)が、パンチの一撃だけでどんな敵でも簡単に倒してしまうがために、地球上に自分の相手がいなくなったと嘆く描写があった。
 これもまた、広義では「力」の否定ではある。しかし、単なる偽善的で平和主義的な「力」の否定などではなかった。おもいっきりのアクション、つまりは暴力(笑)のカタルシスを我々観客にも味あわせてもいた作品でもあったからだ。つまり、人間とは親の教育や社会の風潮とも無関係に「暴力」「アクション」といったものを不謹慎にも楽しんでしまうような肉食動物的な本能が組み込まれた存在でもあったのだ。


 よって、「力」を否定してみせても、「力」自体がなくなることはない。そうである以上は、「力」の悪用ではなく「力」の善用こそが目指されるべきなのではなかろうか!?


 しかし、「いいヤツ」や「善」や「正義」や「モラル」とは何なのか? その定義もまた不可能とは云わずとも、厳密には困難を極めることではあるだろう。あるいは、一時は「正義」であったとしても、それもまた堕落して暴走するという危険性はないのか? といった堂々めぐりになってしまう可能性はあるのだろう。


 けれど…… 本作のモブにしろ、『ワンパンマン』のサイタマ青年にしろ、ある一定の幅で「いいヤツ」や「人格者」、少なくともチャランポランのようでも一線を踏み外すことは決してない! といった最低限の善良なる人格といったモノは実在するに違いない! といったことが、これらの作品では提示されていたのではなかったか!?


 その意味では、特定の宗教・イデオロギー・特定の国家・民族といったものともまた別に、それらとは独立して「善悪」や「正邪」といったモノは存在してはおり、平時における殺人や強盗などは基本的にはやはり「悪」ではあって、その意味では「善悪」が完全に「相対的」なモノであるとはとても思えないのだ。
 国家間での戦争や宗教・民族同士の戦争ともまた別に、もしも「善悪」が完全に相対的なモノだというのならば、政治家や犯罪者などの悪を否定したり罰したりする行為や、弱者への人助けなどの善行もまた無意味になってしまうのだ。そして、我々が愛する正義の味方のヒーロー作品をも捨て去って、それらを幼少時からおおいに楽しんできた我々自身の過去のすべても完全否定をしてみせた方がスジも通るというものだ(爆)。


 しかし、筆者には「善悪」がそこまで相対的なモノだともとても思えない。やはりどこかに「正義」は漠然とではあっても実在すると思ってしまうのだ。そして、そうでなければ、正義の味方のヒーロー作品を肯定・論評する資格もまたないのだ! とも思うのではあった……

2018.11.11.


(了)
(初出・特撮同人誌『仮面特攻隊2019年号』(18年12月29日発行)所収『モブサイコ100』評より抜粋)


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