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エロマンガ先生・妹さえいればいい・俺が好きなのは妹だけど妹じゃない・干物妹!うまるちゃん・最近、妹のようすがちょっとおかしいんだが・ささみさん@がんばらない・俺の妹がこんなに可愛いわけがない ~2010年代7大・妹アニメ評!

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 妹ものアニメ『エロマンガ先生』が再放送中記念! とカコつけて……。妹ものアニメ『エロマンガ先生』(17年)・『妹さえいればいい。』(17年)・『俺が好きなのは妹だけど妹じゃない』(18年)・『干物妹!うまるちゃん』(15年)・『最近、妹のようすがちょっとおかしいんだが。』(14年)・『ささみさん@がんばらない』(13年)・『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』(10年)評をアップ!


エロマンガ先生』『妹さえいればいい。』『俺が好きなのは妹だけど妹じゃない』『干物妹!うまるちゃん』『最近、妹のようすがちょっとおかしいんだが。』『ささみさん@がんばらない』『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』 ~2010年代7大・妹アニメ評!

(文・T.SATO)

エロマンガ先生

(2017年春アニメ)
(2017年4月27日脱稿)


 ヒドいタイトルの作品である。


 てっきりアパート住まいの売れない男性マンガ家のムサ苦しい日常生活を描く作品なのかと思いきや……。


 蚊の鳴くような小声でボソボソと伏し目がちにしゃべる銀髪ロングの儚げな中学1年の美少女イラストレーターのペンネームがエロマンガ先生なのだと!


 フザケるのも大概にしろ!(笑) いやしかし、良くも悪くもインパクトはあるタイトルではある。


 それでもって、この美少女キャラの完成度が非常に高い。


 冒頭は連れ子同士の再婚で血のつながらない兄妹となったふたりの初対面。


 いかにも気弱で人見知りでシャイであることを如実に示す、間が持てなくて母の背中に隠れてしまう幼いころ(1年前?)の妹キャラの描写が鮮烈。


 ン、でも兄妹間の近親相姦(汗)を描いた深夜アニメ『ヨスガノソラ』(10年)でも、まったく同じような構図・挙動・「銀髪」だの「儚げ」だのといった語彙を含んだ兄貴のモノローグがカブるカットを観たことがあるような。ねらってる?(爆)


 しかも、このキャラデザ&ラノベ原作者は、深夜アニメ『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』(10年)と同じコンビだよネ? まさかの第2期の最終展開(笑)では近親相姦エンドの悪夢ふたたび!?


 エッ? 『ヨスガノソラ』? アレは冒頭からして不健全で隠微な感じを醸して「伏線」を張っていたから問題ありません!? さかのぼれば手塚治虫先生の名作マンガ『奇子(あやこ)』(72年)などもあるのです!(笑)


●雨戸を閉じた暗い自室に閉じこもり、炊事・家事・洗濯をまったくヤラない妹ヒロイン
●床を無言でドンドン叩いて、階下の兄貴を呼びつけて自室のドアの前に食事を運ばせる妹ヒロイン
●兄貴に自分の下着を洗濯させる妹ヒロイン(汗)


 世間一般的にはダメすぎるけど、しょせんはアニメだし、しかも美少女キャラだから許せると思うのだ(オイ)。


 しかも、兄貴は高校生にしてライトノベル作家!(笑)


 そのラノベの挿絵を担当していたナゾのイラストレーターが覆面をして、タブレット&電子ペンで微エロイラストの執筆過程をニコニコ動画(?)で披露しつつ、一応は饒舌(?)にナマ中継する姿を自宅のPCで観ていた彼は、その背景のウス暗い部屋が妹の部屋であるらしいことに気付いた!


 そして、放送を終了したつもりでカメラを切り忘れていた彼女が鼻歌を唄いながら着替えを始めてしまい(!)、世間に彼女の正体バレか裸露出(笑)のピンチが迫る!


 逡巡の末に2階に駆け上がってドアを叩いて大声で危機を訴える兄貴!


 オズオズと1年ぶりにドアのスキ間から対面して、恥じらったり上目使いにソッと見たりすぐに逸らして涙目でヒステリーを起こしたり……。といった一連の表情芝居が、シンプルだけれども最高級の繊細ナイーブな萌え描線で表現されており素晴らしい。美少女アニメはかくあるべし!(笑)


 まぁ、兄貴がラノベ作家で、妹がその挿絵師で、しかもそれは偶然で、さらには彼らの周辺には10代のラノベ業界関係者がワンサカといるだなんて、漫画アニメ的な設定以外の何物でもナイ――悪気はないけどオタや引きこもりの人間たちの気持ちがわからない、快活でリア充な茶髪ポニーテールの学級委員の美少女キャラを「対比」として登場させて、今後のディスコミュニケーション・ドラマも予感させてるあたりなどは、とてもイイけれど――。


 とはいえ、そのご都合主義的キャラクターたちの配置や彼らによるストーリーがあまり鼻に付かない(?)のは、劇中でも「天文学的確率である」というセルフ・ツッコミも入っているけど、作品の「面白さ」や「クオリティ」といったモノの本質は、陳腐凡庸・アリがちなモノも含めた「基本設定」それ自体にあるのではなく、むしろ「文体」や「叙述」に「語り口」といったモノから来る「味わい」といったモノにあるからではなかろうか?


 本作の場合、それは主人公である兄貴キャラの適度に文学的かつセルフ・ツッコミもあるモノローグの語り口から来る「味わい」&「話運び」に依拠する部分が大のようにも思うのだ。


 ……まぁ、多分にイビツな筆者の主観&好みもあるので、本作を愚作だと断じる方々を説得する自信もナイけれど(汗)、序盤にかぎればイイ感じだとは思うのだ。
「妹とラノベ企画を創ろう」

エロマンガ先生
エロマンガ先生 6(完全生産限定版) [Blu-ray]
(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.69(17年5月4日発行))


(後日付記:その後のストーリー展開もイイ感じで進んでいきました!)


妹さえいればいい。

(2017年秋アニメ)
(2017年12月13日脱稿)


「お兄ちゃん、オッキッキ」


 朝に目が覚めると、日差しを模したナゾの透過光で局部や胸は隠されるも、金髪ツインテールで全裸(爆)の妹が、ベットで寝る兄貴の布団の上にまたがっている。


 もちろん、オッキッキとはアレとコレとの掛け言葉であろう(笑)。


 妹との唾液の糸を引く濃厚なディープキスを経て、妹の残り湯で洗顔し、妹のブラジャーで顔をふく。食卓には死んだハズの無表情な女性キャラもいて、朝食では妹のパンティを食べてしまう……。


 といったナンセンスな導入部で筆者はゲラゲラと笑っていたのだけど、畏友の同人ライター氏はこの導入部にドン引きしたそうで……。多分、筆者の方が毒されており、彼(か)のヒトのリアクションの方が正しい(汗)。


 この導入部は20歳ちょい過ぎのライトノベル作家の主人公青年が、自身のラノベのナンセンスな番外編(?)として考えた、妹を持つ兄貴のモノローグが主体の小説原稿にすぎなかったことが、担当編集者の激怒で明かされることで、兄妹愛を倫理的に肯定しているワケでもなかったことから、理性的で冷静なセルフツッコミもバッチリだ!(ホントか?)


 ラノベ作家が主人公で、同年代の同業ラノベ作家がお仲間やヒロインで、全裸にならないと執筆ができない女性作家や(笑)、その彼女が作家になった動機は、かつて引きこもり状態で失意の底にあったときに主人公青年が書いたラノベにカンドーしたからだとか、同年2017年春の『エロマンガ先生』ともネタがカブってるやないけー!――ググってみると原作ラノベも『エロマンガ先生』の方が先だった(汗)――


 社会人経験に乏しい若手ラノベ作家が、学園モノ以外のネタを探すとしたら、自分が所属するラノベ業界ですか? と揶揄したくなるところだが、多分そうではなくって、ラノベを愛好するような大むかしであれば文学青年や文学少女になったであろう人付き合いが苦手な読者たちにとっては、実社会に出るよりも机に向かってコツコツと執筆をしているような職業に憧れを持つのであろう。わかります(爆)。


 でも、スマホやネットでの暇つぶしツールが普及するばかりで書籍は売れなくなる一方の当今、『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』(13年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20150403/p1)の原作をものしたラノベ作家先生がマーベラスエンターテイメントの宣伝部の正社員であるのと同様に、潰しが効くように二足のワラジを履いていた方がイイとは思うゾ(笑)。


 とはいえ、メインヒロインたりうる肝心の劇中リアルの妹キャラは出てこないし(一応)、主人公青年は『エロマンガ先生』主人公の高校生作家クンとは異なり、かなりのクズだし(爆)、主人公青年に下ネタで誘惑ばかりする金元寿子(かねもと・ひさこ)嬢が演じる歳下の銀髪ロリのラノベ作家女子は、主人公青年との初対面では緊張のあまりゲロを吐いて彼の服を汚したというから、『エロマンガ先生』とはかなりテイストは異なっている(笑)。元より本作は私的には怪作だと見ているラノベ僕は友達が少ない』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201011/p1)のヒトの作品だから、似るハズもなかった?(汗)


 あくまでも私見だけど、この作家センセイは良くも悪くも情よりも理が少々勝っていて、物語執筆に没入するソバからすぐに冷めてシラケてしまって、それがニジみ出てきてドコかで投げやりな作風になっている気がする。ただし、それが作家としての致命的な弱点だというワケではなく、メタ的な流儀に慣れた現代とラノベ業界にはマッチした個性でもあるようなナイような……。
妹さえいればいい。 Blu-ray BOX 上巻

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.70(17年12月30日発行))


『俺が好きなのは妹だけど妹じゃない』

(2018年12月13日脱稿)


 また出た! 21世紀以降、星の数ほどある妹モノであり、そこに加えて近年ノシてきた、主人公少年や青年が若きライトノベル作家で、ご都合主義にも彼の周辺の親族や知己もラノベ業界の関係者でもあるという、ラノベ原作の深夜アニメ『エロマンガ先生』や『妹さえいればいい』(共に17年)に続く三番煎じ!


 バカバカしいと切って捨てるのはカンタンだけど、やはり思春期になっても異性のハンティングには乗り出す胆力もなく、そもそも頼れるオスとして見てもらえるルックスや運動神経(腕力)や話術(コミュ力)などの甲斐性にも欠けるような我々のような人種は、女性からは異性のお相手としては見てはもらえないので(爆)、自宅警備員としてシコシコとラノベ作家などのオトコらしくない文筆業に励めてそれで食べていけたら、どれだけラクができることか!?(わかります・笑) といった欲求をツカミとして当て込んだネタである。


 常に一定の比率で人類にはそーいう内向的な性格類型が誕生している必然を思えば、「ラノベ作家ネタのライトノベル」といったメタ・ネタ作品は、職業選択の自由の前で怖気づいてしまう若き青年オタらに訴える普遍的なジャンルとして、時代を超えて継続・定着していくのではあるまいか!?


 本作の場合は、主人公少年はラノベ作家を目指して大賞に応募するようなモノ書きオタだけど、兄貴に対して世話女房的に丁寧語でツンツンしてくるウス紫ロングヘアのメインヒロインである妹は弱そうでも張り詰めた学級委員タイプの健気な女のコ。


 その妹が非オタでありながらも試しに「お兄ちゃん、スキスキ大スキ」パターンの兄妹ものラノベ(笑)で応募してみたら、一発で大賞を受賞して(オイ!)、00年代末期に流行った妹が兄貴に「人生相談、あるんだけど」パターンで(『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』(10年))、大賞受賞を報告してくることで開幕する。


 で、妹の代わりに兄貴が作家のフリして受賞式に出席したらば、


●式典パーティーで黒スーツ姿のクールな眼鏡の担当女性編集者が「経験」と称して強引にオッパイをさわらせてきたり(笑)
●主人公が私淑するラノベ作家の正体がとてもオタには見えない快活そうな同級生(!)の赤髪ショート女子であったり
●担当の女性挿絵師のペンネームが先行の『エロマンガ先生』を意識しつつも、その斜め上を行く「アヘ顔W(ダブル)ピース先生」であったり(爆)


 毎度おなじみ作家&読者も共犯の「ココにツッコミを入れてください」的なご都合主義の連発で、作品世界が構築されている。とはいえ、そのことがダメだと思っているワケではなく、この漫画アニメ的なリアリズムが優先されない世界観のジャンル作品の歌舞伎的な様式美を楽しむには、むしろかえって充分な作りだとも私見をするのだ。



 #1だけ観て、あとでまとめて観ようと積ん録しておいたら……。イヤでも「OK、グーグル先生」が本作の作画崩壊ニュースを教えてくれる(笑)。


 で、#2以降も観てみた……。ウ~ム。絵コンテや演出単体は悪くないと思う。背景美術も崩れていない。しかし……。


 演出を体現すべきキャラ作画やその表情芝居が悪いと、ドラマ的・テーマ的にはまったくの同一であっても、こうも与える情緒やテンションは変わってしまうモノなのだナ、と改めてアニメにかぎらず映像作品全般における作画(キャラの表情に芝居)や、実写作品であればナマ身の役者さんの演技が、作品に魂を吹き込んでいることの重要性にも思い至った次第でもある――純・脚本面での作劇の巧拙やテーマの方にこだわることが無意味だと云っているワケではないので、誤解のないように!――。


 エンディング・テロップも見るに、作画は中国でも2流3流の下請けスタジオに丸投げのようだ。要するに低予算作品なのである(汗)。


 ググってみると、深夜アニメ『はじめてのギャル』(17年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201220/p1)を手掛けた2010年代設立のアニメスタジオ&脚本&監督トリオの布陣。あの作品も高作画作品ではなかったけど、汚ギャルたちがメインの下品な作品なので、作画がイマイチでも間は持っていた(笑)。


 しかし、あの作品よりも作画がヒドく(爆)、美麗な作画・表情・小芝居・仕草で、繊細デリケートな萌え感情や庇護欲感情を美少女キャラに惹起させようとすることがキモとなるこのジャンルにおいては……残念な事態になったのやもしれない。


 アニメ業界や声優業界のウラ側をコミカルに描いた深夜アニメ『ガーリッシュナンバー』(16年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220703/p1)では、悶着の果てに作画崩壊状態で放映された深夜アニメを観て、口下手のコミュ力弱者で友人も非常に少ない黒縁メガネの原作者のラノベ作家先生が、深夜に暗い自室でひとり泣き崩れているシーンがあった。
――業界あるあるネタなのであろう。同作では「アニメがクソだから原作も読まない!」「終ワコン!」連呼などのネット民の発言に、まだまだ青二才の青年ラノベ作家センセイが満身創痍になっていく描写などもあった(爆)。冷静で理知的な批判ならばイイけれども、オタのクセに中坊・ヤンキー的にイキがってワルぶった造反有理愛国無罪な下品でヒステリックなマニアの物云いの数々が、いかにヒトの世の「礼節」を毀損しているのかについても痛感してしまう――


 本作もまた、ウラ側ではリアルで同じような事態になっていたりして(汗)。


 2018年夏アニメの『はねバド!』同様に、製作スケジュールの破綻か、同じ話数を2週連続で放映する事態にまでなっているけど、2018年冬アニメ『メルヘン・メドヘン』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190908/p1)や『BEATLESS』につづいて、総集編特番や作画崩壊に陥った先の再放送の連発の果てに最終回まで完走できない事態を恐れる……。もとい、「ヤラかしやがった!」的な「祭り」の到来を楽しみにしている(笑)。
――まぁヒトが死ぬワケでなし、子供向けアニメでもないのだから、いたいけな少年少女の夢を壊すワケでもないので、我々のようなスレたオタクたちはアクシデントすら楽しもうではないか!?――
俺が好きなのは妹だけど妹じゃない

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『DEATH-VOLT』VOL.81(18年12月29日発行))


『干物妹(ひもうと)! うまるちゃん』(1期)

(2015年夏アニメ)
(2015年8月12日脱稿)


 イスラム教2代目カリフの名前みたいな「うまる」ちゃん。干物妹(ひもの・いもうと)と書いて、ムリやりに「ひもうと」と読ませている(笑)。


 そーいえば、中高生に大人気だったラノベ原作がTVアニメ化されて成人マニアの衆目にふれるや酷評の嵐に晒された『魔法科高校の劣等生』(14年)に出てきた天下の早見沙織ちゃん演じる妹キャラは、各種まとめサイトを見るに「キモうと」(汗)とアダナされていたけど、本作の原作漫画のタイトルからの転訛であったのか!?


 恋愛には草食で、オウチでは女子力低くてゴロゴロしている「干物女」(ひもの・おんな)のフレーズといえば、女性向けマンガ原作(04年)で綾瀬はるか主演で実写化もされたTVドラマ『ホタルノヒカリ』(07・10年)を想起する。本作はそれを「干物妹」と言い換えただけの安直なオタ向け版アニメ。いや、安直なオタ向け翻案企画だから、ダメだということもナイのだけれども。


 本作のようなノリの作品は、生粋のオタ系出版社出自なのだろうと思っていたところが……。「週刊ヤングジャンプ」連載マンガが原作だって!? まぁ「ヤンジャン」にかぎらず、最近はメジャーな少年・青年マンガ誌でも1~2本はオタ系マンガのワクがあるからネ。


 オソトでは文武両道・才色兼備、常にニコヤカで背スジを伸ばしたお上品な立ち居振る舞いで澄ましつつも、高飛車ではなく親しみやすそうで、「美人系」というよりも「かわいい系」の、ボリュームがある腰までかかる亜麻色ロング髪のお嬢さま。


 オウチに帰宅するや、突如脱力して、頭まであるフードつき動物キャラ風パジャマをまとった、ヨコ広がりの2等身のSD(エス・ディー=スーパー・デフォルメ)キャラへと変貌して、ダラシな~く大きなお口を開けてヨダレを垂らしながら「ぬへへへへ」と奇妙な笑い声をあげている!


 グダグダでゴロゴロで、炊事・家事・洗濯などは一切せずに(多分)、寝転がってTV・アニメ・ゲーム・カウチポテト(死語?)な廃人生活を送って、かわいい甘ったるい声で「お兄ちゃん(ハートマーク)」の呼び声とともにツンデレ的にワガママに甘えまくって、メガネの社会人の兄貴の方もまんざらでもナイ(?)といった風で、下僕として仕えている作品といったトコロである!?(エッ、ちがう?・汗)


 引きこもりの美少女が主人公で、顔を写さないで描かれる歳の離れたオジサン入っている兄貴が面倒を見ていた深夜アニメ『ささみさん@がんばらない』(13年)などとも似たような構図だともいえるのだ(構図だけだヨ!)。


 オタクの巷(ちまた)を見ていると、たまに女性声優さんが、「自身の趣味がゲームだのアニメだのとインドアで、自分は引きこもりで実は内向的なのダ!」などとダウナーな発言をしていることがあって、その発言に「誘蛾灯」に惹かれるようにコミュニケーション弱者である野郎オタどもが集まっていってバチバチと感電死(笑)、もとい「お前はオレか!?」的に妙に親近感をいだいたりしてコロッとイカレている図を、各種まとめサイトなどで見かけたりもするけれど。


 それと同じトコロを当て込んでいる自堕落な、もとい特定ターゲットを狙い打ちにせんとする、マーケティング的にも実に巧妙な商売(笑)をもくろんでいる作品であるのだとも思われるのだ!? ……まぁ、実は作り手たちは脳ミソが空っぽで、単に何も考えてなくって天然で、「動物化するポストモダン」をした果てに、この作品のシチュエーションに至っているだけのような気配を感じなくもナイけれど(汗)。


 しかし、ウラ方の作り手の方にまわって文や絵などの二次表現で勝負するのではなく、ガチンコ対面な一次表現である「全身」での演技や自分の「声」などで自己実現をしようとする、しかもわざわざオーディション面接に繰り出してまで「役」を勝ち取ってこようとする、役者サンや声優サンたちのような本質的には「目立とう精神」の人種たちが云う「インドア指向」などはたかが知れている! 我々のような文弱のオタが云う「インドア指向」とは次元が異なっているのだ!?


 我々のような真性のコミュニケーション弱者であるオタと比すれば、やはり何倍ものコミュニケーション強者・コミュニケーション巧者であろうとは思うのだ(汗)。


 だから、彼女らに期待をしてはイケナイ! 信じちゃイケナイ! 彼我の差を鑑みて絶望する前に、裏切られる前に、事前にバリアーを何重にも張っておけ!


 うまるちゃんみたいなオタク系の美少女がいても、彼女らにも男を選ぶ権利はある! キモオタはお相手に選ばれやしない!


 ……フン、ちっとも悔しくなんかナイんだからネ!! 筆者は心の底からそう思うのであった(笑)。
干物妹!うまるちゃん

うまるの日々
(了)
(初出・オールジャンル同人誌『DEATH-VOLT』VOL.71(15年8月14日発行))


最近、妹のようすがちょっとおかしいんだが。』(実写映画版)

(2014年5月17日(土)公開)
(2014年7月5日脱稿)


 まずはTVアニメ版(14年)の感想から。


 また「妹モノ」かヨ! 志が低いよナ! と思いつつも、「妹モノ」の作品群は「ネタ」化が著しくて、作品の「タイトル」自体も実に秀逸で(笑)、本作のそれもビミョーに隠微かつ「ネタ」っぽくてウケるから、妙に観たくなってしまうのだ――誓って筆者個人の特殊な性癖のせいではナイ!?――。


 でも、ドー云い繕おうとも、妹モノは弱者男子にとっての都合のいいファンタジーではある。


 ファースト『ガンダム』(79年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990801/p1)のヒロインたちを例えに云わせてもらえば、外の世界でオトナの女性っぽいセイラさんみたいな異性を引っかけてくるのではなく、フラウボゥみたいな幼なじみと引っつく方へと退行して――すでにファーストガンダムがオタの共通言語ではナイという話は置いといてください(汗)――、さらにはオタにとっては縁遠い「異性との出逢い」描写をハブくことができてもしまう、最初から異性と出逢っており同一空間で共同生活もしている「妹モノ」の勃興ヘ……。


 本作もそんなオタ向け作品の歴史的な退行文脈の一環であり、罵倒してやろう(笑)と手ぐすね引いて待っていたのだけれども!?


 ピンクのネグリジェの肩ヒモがズレ落ちてノーブラの胸の谷間も見せつける、ゆるふわ栗色ヘアにピンクの巨大リボン、背には小さな天使の羽を生やした美少女。彼女がイタズラっぽく微笑みながら、オボこい黒髪女子高生の両手を奪ってベッドに押し倒し、股の間に割って入ってイヤがる相手のホッペにチュッ♪
 黒髪女子高生の肉体に憑依するや、胸とアソコをまさぐって自慰にふけって悶えまくる! 分離しても同じ場所を攻め続け、首スジやホッペをナメるや唾液が糸を引き、耳を甘く噛み、女子高生は絶頂へ……。


 この作品は、「妹モノ」じゃなくて「百合モノ」だったのか!?――ってソコじゃなくて――


 基本設定がヒドすぎる(笑)。ネグリジェ少女が成仏するためには、生前にスキだった男子高生とイチャコラせねばならない。そのために男子高生の義妹に憑依して、ハート型の小さな計測器がついた黒色の脱げないTバック型の「TST」なる「貞操帯」(笑)を装着。しかも用を足す3分間だけ外れるけど以降1時間は外せない。トイレで尿意をガマンする羞恥プレイ、ついには保健室の花瓶に四つん這いでお小水を。それを義兄に見られてしまう義妹女子高生!


 後学のために(?)、実写映画版(14年)も観に行ってみた。前述の描写をあまさず映像化している!


 後学のために、原作漫画版(10年)も読んでみた(汗)。ン? 聖水プレイは現実の出来事ではあっても、寸止めで、その描写自体はなかったぞ。


 後学のために、BD版とTV放映版の比較検証サイトも見てみた。BD版では内股を伝う雫(しずく)が黄色く着色されている……。


 ……TVアニメ&映画版スタッフは頭がオカシい!(笑)


 本作を否定することは「表現の自由」への侵害になるのだろうか? 「表現の高度さ」というモノは「エロ」ではなくて「テーマ」とか「映像センス」のことだったのではなかろうか?


 かの「アニメ新世紀宣言」から30余年。ボクらが夢見たアニメの未来はコレだったのであろうか?(笑) そんな一歩も二歩も引いた視点もロートルとしては手放したくはないのだった。


 一方で、マンガ・アニメなんて低俗でイイじゃん? 浮き世離れして頭デッカチな高尚・ハイブロウな作品に走ってしまうよりも、地に足の着いた身の丈の手触り・肌触りを感じられるミクロな作品をこそ重視べきじゃネ? とも思ってしまうところがあることも事実なのだ。


 この両極端を架橋して、その両極端を同時に肯定してみせる「統一理論」がナイものかと思ってウン十年。いまだにそのようなご大層な理論を構築できる手立てなどはツカんでおらず、筆者個人も取っ散らかったままでジャンル作品を語りつづけておりますけど……。


 はてさて、この実写映画版。個人的には擁護してみせたい(……震え声)。


 3次元の媒体で2時間に再構築するならば、こーいうアレンジで妥当なのではなかろうか? そして、なんとTVアニメ版の全1クールの主要イベントをほぼ網羅もしていたのだ!


 ただ、異性が苦手で話しかけるのにも勇気を振り絞っている弱さを、「ツンツン」した態度&首アゴ前の大きな赤マフラーで鎧(よろ)っているような黒髪制服少女であった高校1年生の義妹の描写は少々軟化されており、共通の音楽趣味を持った同性の友達がクラスにできる姿なども点描されている。


 そんな彼女に憑依する、甘え上手な「デレデレ」担当のネグリジェ少女も、原作マンガやTVアニメ版よりも少し余裕がアリげな黒髪ストレート女子に変更されている。


 これらのキャラの微改変でアラスジは同じでも作品のテイストが少々変わってくるのも事実である。そこに抵抗を覚える原作至上主義者もいるのだろうけど、いかにもオタ向けな記号的キャラクターをジャンルファン以外に流通させるためにも、この微調整は適切なのではあるまいか!?


 原作マンガ版やTVアニメ版だと三角関係の一角になる隣家の高校3年生のお姉ちゃんは、温泉でナマ巨乳を披露するあたりは同じでも(笑)、この実写映画版では教育実習生に変更されて色恋にはノータッチであった。


 最大の改変は主人公少年である高校2年生の兄貴だったとも私見する。原作マンガでは、(ひとり)ボッチものでもあった少女漫画『君に届け』(05年・09年に深夜アニメ化)のサラサラ黒髪さわやかイケメン君みたいな見てくれで、義妹が義兄を好ましく思う展開もギリギリありかも!? と、ドラマ以前のルックス面でも補強してくるけど、同時に色事には鈍感過ぎでも「見た目がイイ男にすぎるだろ!」的なプチ反発も少々覚えてしまうのだ。


 こういったキャラクター設定に、アニメとして「色」や「声」や「動き」がついたり、実写ドラマだったならばもっとハナについてしまうかも!? ということを配慮してか、TVアニメ版ではちょいとモサッとした感じ、実写映画版でも短髪でポーカーフェースの剣道少年にして、透かし過ぎていないところでの異性に対するストイックな雰囲気も醸し出してくるのだ。


 2次元キャラだと喜怒哀楽を多少大仰に表現しないと観客にはやや通じにくくなるけど、3次元媒体でエロ事やいわゆるラッキースケベに遭遇した際の「動揺」を顔に出しすぎてしまったりすることは、たとえイケメン男子が演じていたとしても少々イヤラしくなってしまうことも傾向としてはあるので、コレらは適切なアレンジだったかとも私見をするのだ――2次元と3次元の媒体の優劣の話をしているワケではナイので、くれぐれも念のため――。


 本作はジャンル作品の実写化を蓄積し、10年単位で他業種とも協業して、旬の若手役者も起用してヒットさせれば高収益ともなる映画ビジネスへの角川書店(KADOKAWA)による実験的な布石なのかも? とも憶測している。オタ側もこういったことに慣れて、媒体ごとのアレンジの妙を楽しむ流儀が普及して、ジャンル作品の実写化に対して無闇に反発したことを反省する日が来ることを切に祈りたい。
最近、妹のようすがちょっとおかしいんだが。DVD

最近、妹のようすがちょっとおかしいんだが。ディレクターズ・カットBlu-ray
(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.62(14年8月15日発行))


ささみさん@がんばらない

(2013年冬アニメ)
(2013年5月29日脱稿)


 ドコかで視聴を打ち切ろうかと思いつつも、間違って全話を観てしまった深夜の美少女アニメ


 自宅に引きこもって、ネット・通販・ゲーム三昧。自室の棚には合体巨大ロボットのフィギュアが立ち並ぶ、「俺の妹がオタク系」の廃人美少女。彼女は生活力もゼロであり、炊事・洗濯・喰う・メシ・風呂・寝る、すべてを「妹ラブ」で画面に顔を見せずに戯画的に描かれる変態アニキが面倒を見る毎日。
 そんな彼女がじょじょに人間としてリハビリして、外の世界にも関わって、お友だちを作っていく……ような展開だったらイイのにな(笑)。


 野郎キャラだとその「苦悩」や「不器用さ」が生々しくなってしまったり、たとえ無意識でも「男なのに情けない」といった感慨が微量にでも脳裏に発生してしまうことで、シャレとして流しにくくなってしまって、やや深刻で重ためにもなってしまうところを、甘ったるい美化をも含んだかわいい女性キャラに「煩悶」を肩代わりさせることでオブラートに包んで、安心して野郎オタの視聴者にもその「孤独」や「苦悩」に対して、ソフトな共感や憐憫(れんびん)――実は自己憐憫(笑)――を喚起してみせる。


 ここ10年ほどで意図的にか無意識にか自然発生的に発達してきたジャンル作品における手法ではある。近年では「野郎の性的欲情」さえをも女性キャラに肩代わりさせてハァハァさせて、自身(野郎)の醜い「似姿」に直面化させないように用意周到に進化(笑)してきて、オタク視聴者の代わりに女性キャラが別の女性キャラに迫ってくる百合的な構図までもが出現。女性オタクによる「BL(ボーイズ・ラブ)消費」(=旧「やおい消費」)の性別逆転版のような現象まで生じてきている。


 状況ウォッチャーとしてはネタの宝庫なのだが、冷静に考えると袋小路な奇形的進化である可能性もあって、世も末なのかもしれない(笑)。


 などと上から目線で見下しつつも、カミさん子供も養わずにオタクライフを満喫し、こんなウォッチをして悦に入っている筆者こそが、徳義面でもダメじゃん! といった自己懐疑に答えを見出せないまま齢を重ねて、つい逆汚染で萌えの感性が訓練・開拓されてミイラ盗りがミイラになって、筆者もジャンルといっしょに共倒れで心中してしまいそうだけれども……。
 いや、心中以前に筆者自身が元から趣味活動を優先して生活が破綻している廃人だったよナ(汗)。


 そんな不全感に満ち満ちたヒッキー(引きこもり)な主人公を配置することで、オタク視聴者の親近感・感情移入を惹起する。
 それと同時に、矛盾したことではあるけど、実はそんな彼女こそが日本神道最高神こと女神でもある天照大神アマテラスオオミカミ)の力 = 世界秩序の維持 = 世界改変の力 = 目的願望達成能力(笑) といった全能感に満ち満ちた超能力を、代々引き継いでいる神社の家系の娘でもあったのだ!


 ……といった、「オレもいつの日かホンキ出せばこんなモンじゃねー!」的な思春期の中2病的な全能感をも刺激してみせるのだ――とはいえ、「世界改変」とはいっても、街がチョコレート化したり(!)、主人公少女の胸からもう1本の腕が生えてくる程度のモノだけど(汗)――。


 でも、そんな万能感ネタも、批評オタク的な読者や視聴者からツッコミされる前に、「わかってますョ!」「あえてやってます!」「すべてシャレです!」「ノリつつ、シラケてます!」みたいな多弁症的な「云いワケ」感があるのだ。


 少しでも「真っ当」で「道徳的」で「感動的」、しかして、いわゆる「ベタな展開」(汗)になりそうになってくると、「テレ隠しのナンちゃって楽屋オチ感」にも満ち満ちたストーリー展開へと変転していくのであった(笑)。


 シリーズ中盤における母子葛藤の一連や、シリーズ終盤における「九尾の狐」のライバル美少女との対立などもその典型。エグい悪辣な対立展開を先にやっておいてからであれば、安心して(?)そのキャラクターのヒューマンなドラマや人間的にイイ面、おふさげシーンも描けます! みたいな。


 「お外恐怖症」で自宅から一歩でも外出するとプレッシャーで押しつぶされそうになっていたシリーズ序盤から、じょじょに登校して、学友たちと旅行にも出掛けられるようになるシリーズ構成も、結局それ自体は本作のサブテーマとして昇華しているワケでもない。


 別に本作の作風が特別にシニカル(冷笑的)だというワケでもないのだけれども、「キバって何かを実行したからといって、常にウマくいくワケでもないのだから、マイペースでグダグダとやっていきますよ~」といったテーマとして決着させて、そこでテーマ的な首尾一貫性を出せたワケでもなく、ひたすらに何事も散文的な点描で終わってしまっているような……(笑)。


 美少女ハーレムアニメの常道にも則(のっと)って、


●チビチビの姉御ハダ女教師
●無口黒髪おかっぱ美少女
●天真爛漫ハクチ美少女


なども取りそろえて、彼女らのひとりには昨今流行りのプチ百合描写でハァハァ悶えさせもする。


 美少女ハーレムな彼女たちの正体も日本神話の神々だった! というワリには、古式ゆかしい神々には似つかわしくなく、腕が近代的な大型銃器に変型したり、空を飛んで高速バトルをしたりする!(笑)


 コレまた、ヤンキー漫画的な恫喝・威嚇がムキ出しのガチンコな殴り合いは痛そうだから苦手だったりするけれども、腕が武器や銃器に変型したり、巨大ロボに搭乗して戦うような、フィクション成分が高いバトルだと、生々しさがウスれて安心して疑似的に「暴力衝動」を発散することができるという、我々オタの心性にも即してはいるのだ。


 そんなワケで、筆者個人の趣味には合ってはいない……ハズだと思う。合っていないとイイな(笑)。


 でも、自分が10代前中盤のときに本作を鑑賞したならば、ベタな美少女アニメへのアンチとして、このテのやや頭デッカチかつ適度にクダけてもいる作品を持ち上げかねないとも思うのだ。
 身の程知らずな仮定だけれども、間違って筆者が作家にでもなっていた日には、こんな頭デッカチな作品を書いていそうな気もしてゾッとする(汗)。……などという物言いは、本作とそのファンに対してあまりにも失礼なのでアレですけど。


 でもまぁ、作品自体はトータルでなぜだかそれらしくまとまってはおり、最終回でも南洋の孤島での大バトル・大攻防劇で、30分の尺に収まるのかと思いきや見事に収まっていて、大声ではケナしにくい出来にも仕上がっていたのであった(笑)。
ささみさん@がんばらない 1(通常版) [DVD]

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.57(13年6月24日発行))


俺の妹がこんなに可愛いわけがない

(2010年秋アニメ)
(2010年12月執筆)


 高校生であるオレの妹が中学生で、思春期にありがちロクに口もきかずに、きいても拒絶の暴言しか吐かない「ツン」属性なのに――そこまでは実にリアルな妹描写だ!――、深夜に就寝中のベッドの上から人生相談をしてくる!――ここで「デレ」属性も獲得する!――


 「自分は妹萌えエロゲーオタだ!」とカミングアウトすることで、実に楽しい虚構物語へと跳躍していくのだ!


 「こんな妹や彼女がいたら……」と自堕落にもついつい妄想してしまうようなオタの中での「ベタ層」から、作品名からして「アリエナイとわかって観てますよ!」的なメタな言い訳を必要とする「批評オタ」をも総ざらえする小ズルい作品としても仕上がっている(笑)。


 自分の趣味を共有してくれるオタクな彼女がいてくれたらば……といった男オタクの願望。
 オタクである妹に頼られて年長目線でオタク趣味の理解者として公平・理想的にジャッジしてみせる非オタな兄貴のオレ。


 しかし、現代オタクの消費ライフの戯画(ぎが)に加えて、実に深刻なダークサイドも描かれているのだ。


●当然のことながら、自分のオタク趣味を恥じており、隠してもいるオタクな妹


●トドメには、ネット上でオタ友を見つけて、3次元世界でリアルにオフ会に参加するも、そこで自分を開放してホンネで自分のスキを公言できるのかと思いきや! ……気後れ・萎縮してしまって、しゃべれなくなってしまうオタクな妹


 たいていはコミュニケーション弱者でもあるハズの男オタクたちの「ベタ」や「メタ」な「感情移入」のフック・引っかかりを多数めぐらして、特にオタクでもある妹ヒロインにはダブルどころかトリプルなミーニング・意味付け・投影なども施(ほどこ)されているのだ。



 男オタクにとっての憧憬対象でもあるコケティッシュな美少女キャラでありながらも、シャイ・内気なコミュニケーション弱者である男オタクの自己投影・自己憐憫(笑)の対象としても描かれていたという!


 彼女が中学生なのに、高額な18禁の美少女エロゲ(ーム)を所有している理由付けとしては、容姿端麗な美少女でもあってモデル業の稼ぎもあるからだとしてみせる――モデル業を両親が許可した交換条件として、「学業成績・スポーツ万能属性」までをも獲得!(笑)――。


 そしてその、いわゆるイケてる系の人種たちが集っているモデル業界を舞台の一部としたことで、そこからオタクにとっての「外部視点」までをもキチンと導入! 彼女のオシャレ系のモデル友だちから見えている、たとえ偏見が混じっていようが、オタクの異質さ・キモさ(気持ち悪さ)も逃げずに描いて客観視までしてみせている!


 とはいえ、オタクたちも、そして本作のオタクでもある妹ヒロインも、決して無垢(むく)であったり無罪であったりする人種として、単なる被害者として自己を正当化・美化だけしているワケでもないのだ。
 イザとなれば、連れ立って楽しく歩いてきたオタク友だちとは同類視をされまい! として、条件反射的についつい他人のフリをしてしまう自己保身! そして、そんな行為を採ってしまった、自分に対しての良心の呵責なども描いてみせるのだ!


 やはりオタクを描いていた大むかしの『こみっくパーティー』(01年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20071021/p1)、近年の『乃木坂春香の秘密(のぎざか・はるかのひみつ)』(08年)など、本作のこのような描写こそを見習え! などと云うのは過大な要求なのであろうか?


 オタクの内実を虚構作品だとはいえ、過剰に美化して「楽園」としてのみ描くだけであるのならば――もちろん、そーいう作品もあってもイイのだけれども――、オタクたちに甘いだけの自堕落な作品だよナ、児ポ法児童ポルノ禁止法)推進者やアグネス・チャンの百倍も、君の職場にいる一般女性の同僚はオタクやアニメ絵・萌え絵をキラっている現実を思い知れよ! などと筆者のようなネジくれた人間は、同族嫌悪で叩きたくなってしまったところだったので(汗)。


 本作の作者がスゴいのか、頭のイイ編集者が作家センセイに対して入れ知恵をしていたのか、本作には筆者がツッコミを入れたくなるような、オタクに対するムダな美化といった要素が実に少ないのだ。それは感心するほどである(笑)。


 イイ歳こいて、『らき☆すた』(07年)・『けいおん!』(09年)・『涼宮ハルヒの憂鬱』(06年)の「祭」なんぞにベタに参加するかよ!? とマジで鉄壁のガードを固めている筆者なども、本作にはダマされてしまいそうだ。(←我ながら、正直に本作にはハマっていると云え!・笑)


 とはいえ、本作にはまったく隙がないワケでもない。適度に強気な性格で、ルックスにも恵まれている妹ヒロインが、自信なさげなコミュニケーション弱者であろうワケもなく、同世代のオタ同士のオフ会ではしゃべれなかった! ……などといったことは、真にリアルに考えてみればおおよそアリエなさそうにも思えることで、むしろ参加者の過半がオズオズとしており会話が弾んでいなかった場合には、逆に気を遣って皆に話題を振って会話を盛り上げようとしたり、お店でも声を上げて店員さんを呼んで皆の注文を差配してあげたり、鍋奉行などになっていたりしそうな気がするのだ(笑)。


 ただまぁ、そこまでサバけた完璧ヒロインであったのならば、妹ヒロインに発生する人間ドラマは起伏に乏しいモノにはなってしまっただろうし、そうなると彼女に対する憐憫の情や感情移入の度合いも下がってしまう。
 そして、コレは媒体の優劣の意味ではなく云うのだけど、実写作品ではなくアニメ(ラノベ)作品であるからか、リアル度は中和されることで、ふだんは快活な妹ヒロインがオフ会では気後れしてしゃべれなかったというあたりも、実は少々気にはなっても、本作の致命的な欠点だとは感じられないのだ。


 初参加のオフ会でも実に器用に立ち回っていたのならば、やはりオタク視聴者の憐憫対象にはなれずにドン引き、もしくは敬遠されていたかもしれないのだし(笑)。



 物語は途中から人気長寿マンガ『課長 島耕作』シリーズ(83年~)のような要素までをも導入! ギョーカイ成功物語のような一面も醸し出してくる!


 ペンネームで発表した妹オタの畸形的(きけいてき)な願望や自意識まる見せスッポンポンの稚拙(?)な小説が大ヒットを果たしてしまうのだ!――この一連のオリジナル展開が、本作の熱烈な原作ファンたちによって「原作の改竄だ!」と糾弾されていることは置いておいて――


 いくら何でも展開が飛躍しすぎで、非・リアルにすぎるだろ! と思いきや、この小説のアニメ化(!)にまつわる騒動まで描いて、そこにヒネりを入れてくることで、ストーリー展開の突飛さに手綱を引いてくれるのだ。


 原作のイビツな箇所を、万人向けに微調整せんとしようとするアニメ化のスタッフたち。しかしそれは、原作のキモをも改変する域に達していたのだ!


 ここで悪者として描かれてしまうメガネの痩身脚本家の発言。


 いわく「稚拙」「妹ばかり」「リアリティがない」「どこが面白いのかわからない」(大意……・爆)。


 妹ヒロインの小説の商業的な成功に対して、内心では嫉妬の炎を燃やしていたオタク友だちで、アマチュア同人作家でもあるゴスロリ少女こと「黒猫」もその発言に対して、心中では溜飲を下げている。……お前らはオレか!?(笑)


 あぁ、どうもスイマセン! それらの表現を発露したり好んだりする、ある種の人種の内的必然性を今まで軽視してきたワタクシが悪うございました!――ま、反省は5秒間ほどであって(笑)、今後もジャンル作品に対してのツッコミはしつづけるけど、チョットだけ自己相対視はしてみました(汗)――


 イジワルに見てしまえば、この妹ヒロインが男オタクたちが愛好する美少女たちが主人公であるエロゲマニアではなく、女オタクたち(の一部?)が愛好するBL(ボーイズ・ラブ)ファンであったのならば、この作品は妹ヒロインに対しての男オタクたちの自己投影度が下がって成立しなかっただろ!? とか、やや偽悪的に面倒クサげにしている兄貴キャラも、同季の深夜アニメ『えむえむっ!』(10年)の主役のオトコのコとも同様に、何だかんだとオトコ気があって頼りになりすぎるご都合主義も少々引っかかるところだけど(笑)、本作のメインタイトル自体が、そうしたツッコミに対する「云い訳」のバリアと化していて、正面から突破のツッコミがしにくいのだ。


 BL作品それ自体ではなく、BL作品を読んでハァハァと欲情している女オタクの姿に、我々男オタクがコーフンしているような構図もあるマンガ『となりの801(やおい)ちゃん』(06年)のような流通はオタクの中でも多数派ではないのだろう。


(↑:2012年10月・後日付記:そーでもなかったのかもしれない。美少女ハーレムアニメにBL好き美少女が混ざる割合が近年では急速に増えてきたのであった(汗)。
 ……10年後の2022年12月・後日付記:ハァハァとコーフンしているBL愛好美少女やロリ娘を愛好している美少女キャラの姿に対して、男性オタク視聴者の側が萌えているという、ネジくれた構図は今ではすっかり定着してしまいましたとサ!・爆)


 そういったことに対するセルフ・ツッコミなのでもあろう。原作未完ゆえにTVアニメ版のオリジナル点描なのかもしれないけど、本作(後日付記:2010年放映の1期)の最終展開では、これまたBL好きのオタクの妹を持っている端役の兄貴キャラなども、主人公兄妹の鏡像かつオルタナティブ版としてであろうか登場させてもいるのだ!


 妹ヒロインがネットでゲットできた同性のオタク友だちらも、


●オフ会主宰の瓶底メガネの背高の姉ちゃんの、いかにもな自身のキャラを作ってみせている、発言の末尾が「ござる」口調
●80~90年代だったならば、お姫さまロングドレス的なピンクハウス(ブランド名)の服を着ていたような性格の娘が、昨今ではそれだとバカにされてしまうので、チョイ悪(ワル)で鎧(よろ)って対人バリアにしているとおぼしき、ゴスロリ(ゴジックロリータ)黒服ファッションの黒猫美少女


といったキャラクターたちも、アニメ的なキャラ立てにとどまらずに昨今のオタクの反映・風刺図にもなりえてもいる!


 しかし、彼女ら女オタクたちもその言動や出で立ちは奇矯ではあっても(笑)、けっこう友だち思いでモラルもあって性格もイイ奴らでスキだよ! ……といった美談でオトして、この文章を終わらせるのも癪だよなぁ(汗)。


 若年オタ用語でいうところの「邪気眼」描写、和室の自室でゴスロリ少女が自作同人誌の擬古文調のセリフを自己陶酔しながら音読している奇人変人なサマを、彼女の幼い妹たちふたりが廊下からドン引きしながら、恐る恐る見詰めているシーンなどはサイコー!(笑)


 「ブラック・イズ・ビューティフル」や「オタク・イズ・ビューティフル」や「オタク・エリート説」などではなく、「オタクや女性や黒人の方でも改善すべきトコロがあるんじゃネ?」といった発言をすると、「一般大衆や男性や白人の方が悪い! 敵に利する発言をするヤツは獅子身中の虫である!」といったヒステリックな反発を返してきがちだった、大方の1960年前後生まれのオタク第1世代や70年前後生まれの第2世代的な価値観などとは異なり、オタクである自分自身に対する自己相対視・自己客演視・引いた視点が最初からナチュラルにあるあたりが、80年前後生まれのオタク第3世代のアドバンテージ・優位点だとも思うのだ。


 筆者のようなオタク第2世代のオッサンオタクからすると隔世の感ではあり、その一点においては実に成熟したイイ時代になったとも思うのであった。
俺の妹がこんなに可愛いわけがない 1 【通常版】 [DVD]

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.52(10年12月30日発行))


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