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機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ ~環境テロと金髪ビッチヒロイン。地味シブ作品なのに流通してしまう!

『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』(15年) ~ニュータイプやレビル将軍も相対化! 安彦良和の枯淡の境地!
『機動戦士ガンダムNT』(18年) ~時が見え、死者と交流、隕石落下を防ぎ、保守的家族像を賞揚の果てに消失したニュータイプ論を改めて辻褄合わせ!
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 2023年1月15日(日)から映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』(21年)がテレビで30分ワク全4話に再編集されて放映記念! とカコつけて……。『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』評をアップ!


機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』 ~環境テロと金髪ビッチヒロイン。地味シブ作品なのに流通してしまう!

(文・T.SATO)
(2021年12月10日脱稿)


 人類がその増えすぎた人口を地球の衛星軌道上に浮かべた数キロ規模の巨大円筒状・宇宙コロニーに植民させるようになった近未来。人類が宇宙に植民を開始した時点を宇宙世紀元年とする宇宙世紀0079(ダブルオー・セブンティナイン)年を舞台に、地球連邦政府と宇宙植民国家との間での戦争を描いたリアルロボットアニメの金字塔、40年以上の歴史を誇る『機動戦士ガンダム』(79年)シリーズの新作映画。


 ご存じの通り、『ガンダム』シリーズは初作の数年後や数十年後、はたまた5千年だか1万年後を描いてきた通称「宇宙世紀」シリーズと、それらとは無関係であり世界観を刷新したシリーズの2種に分かたれている。


 本作は前者であり、シリーズの隙間を埋める宇宙世紀0105年を舞台とした作品である。そして、本作のややサメており諦観や達観をも感じさせる主人公ハサウェイ・ノア青年は、初作で主人公少年が所属していた宇宙母艦のブライト・ノア艦長の息子でもある。
 彼は宇宙世紀0093年を舞台とした映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(88年)などでもミドルティーンの少年として登場し、同シリーズの巨大人型ロボット兵器ことモビルスーツにも無断搭乗(汗)するかたちにて活躍。好ましく想っていた少女が彼女の操縦していた巨大ロボットもろともに戦場にて戦死してしまう光景を目撃して深甚なるショックを受けてしまう、当時でも『ガンダム』シリーズにおいてはすでにややテンプレ・陳腐化(汗)もしていた、お約束シチュエーションによる悲劇的な役回りを与えられることとなっていたキャラクターでもあった。



 本作『閃光のハサウェイ』は、前述した『逆襲のシャア』公開の翌1989(平成元)年に『ガンダム』初作&「宇宙世紀」シリーズの生みの親である富野由悠季(とみの・よしゆき)カントク自身によって執筆された小説を原作とする、しかしてこの劇場アニメ版のカントク職には富野以外の人材を当てている3部作映画の第1部でもある――信者の方々には申し訳ないけど、『ガンダム Gのレコンギスタ』(14年)の出来も見るにつけ、富野御大が手掛けなくてホントによかったとも思う(汗)――。


 ただし、この1988~89年の軽佻浮薄な風潮も極まっていたバブル期には、初作の総集編映画の第1作目が劇場公開された81年早春、新宿東口のアルタ前に1~2万人のファンが集まって「アニメ新世紀宣言」がなされたようなオタにとっての高揚感あふれる時代はとうに過ぎ去ってもいた。


 早くも1982~83年にかけては、「ネクラ」や「オタク」といったネガティブ・ワードが誕生。「アニメファンはクラい」という実に正鵠を射ていた言説(爆)が若者間でも流通。若者vs大人ではなく若者世代内部でも細分化の果てに後年で云うイケてる系/イケてない系といったカーストも急拡大。


 コレらの事態をオタキングこと岡田斗司夫(おかだ・としお)などは「80年安保の挫折」と呼称した……。オジサンの筆者なども中学生までは級友たちともフツーにアニメの話ができていたのに、高校に上がるや今で云う「アニメ? 何それ喰えるの?」的にアンタッチャブルなモノへと変貌していったことを疼きとともに思い出す(汗)。


 今に至るオタク趣味やアニメ趣味はダサいといった風潮がすでに定着しきっていたバブル経済期の89年当時には、かつては『ガンダム』初作に夢中になったご同輩たちでも、『閃光のハサウェイ』原作小説自体の存在や主人公がブライト艦長の息子であることなどは表紙カバーのアラスジ紹介などでは知ってはいても、実際にも購入して読んでみたという御仁は少なかったとは思うのだ――富野信者やガンダム信者の方々にあられては、ご不興な話でしたならば申し訳がない――



 小説『閃光のハサウェイ』の映像化作品たる本映画の内容は以下の通りだ。


 ファーストクラスの豪華な客室に地球政府の高官たちやその家族を主に乗せていたスペースシャトル型の宇宙船が地球へと帰還してくる。
 そこには植物監査官候補でもあるハサウェイ青年、中央通路を挟んだその隣席には金髪ロングでアンニュイかつプッツン(死語?)といった感じの美少女ギギも搭乗していた。


 ところが、大気圏突入時に幅寄せしてきたナゾの宇宙船からの闖入者によってハイジャックをされてしまう! ハイジャック犯たちはかつての「シャアの反乱」同様に、グリーンピースならぬ地球環境保全のためにテロ活動を実践している組織・マフティーのメンバーを名乗った。
 しかし、隙を見てハサウェイ青年&地球連邦軍の青壮年大佐の機敏なる連携プレイによってハイジャック犯たちを見事に鎮圧!


 事が事だけに事情聴取目的で高官たちと同じ高級ホテルに留め置かれたハサウェイと金髪美少女はしばしの交流を温める。天衣無縫な彼女は自身の美貌や魅力に自信があるのか、ハサウェイにその顔面を近づけたり自分の部屋に泊まれとオトコを誘うような言動も見せる。かと思いきや、先の連邦軍の青壮年大佐と鉢合わせになったり会食をともにすれば、彼にもイロ目を使い出す。
 環境テロ組織が地球政府高官の殺害をねらって深夜にモビルスーツでホテルや街を襲撃してきて、ハサウェイと金髪美少女も逃げ惑った末に青壮年大佐に再会できれば、大佐に抱きついたり持たれかかったり。
 しかして、再びハサウェイ青年とふたりきりになれば彼にしなだれ、自分が口をつけたマグカップを彼に差し出したりもする――もちろん彼女と『逆シャア』での若き日のハサウェイを翻弄していた少女との類似の想起も点描されている――。



 彼女は美少女だから下品には見えないけど、要はいわゆる周囲のオトコどもに少々の媚びを売って、連中が自身にナビいたりナビかなかったりなどの値踏みや駆け引きをして悦に入っているビッチなのである(笑)。
 善くも悪くも本作の原作者でもある富野御大は、我々オタク一般とは異なりこーいう女性がスキなのであろう。初作ではともかく、その直続編『機動戦士Z(ゼータ)ガンダム』(85年)以降に富野カントクがこだわってきた、このテの女性キャラクターに対するイロ気もある仕草演出。ただし、それは正直に云ってウマくいってはいなかったし、物語としても馴染んではいたとは云いがたかったけど(爆)。


 加えて、やはり初作が大ヒットしていた時代とは異なり、その後に残ったガンダムオタクたちは「メカ」&「戦闘シーン」だけに関心があるのであって、そのテの女性キャラの演出などにはまるで感度がない(汗)。
 よって、決してウマくはいっていない女性キャラ演出と、そこに対するセンサーがそもそもないガンオタの野合といった構図が、富野ガンダム作品の受容のされ方の基本型にもなっている。


 ソレらと比すれば本作の場合は、被写体や背景がそこにあって実際のレンズで切り取ったかのようなリアルな映像で、高精細に作画されたメインヒロインが織り成すアニメくさくはないナチュラルなお芝居自体はウマくはいっており、しかしてやはりソコには感度がなかったガンオタたち……(汗)といった、富野ガンダムの受容のされ方と比すれば多少はマシでも、同じような問題点がハラまれた消費のされ方にはなっているようには思うのだ。


 強いて云うならば、宇宙世紀0096年を舞台とした『機動戦士ガンダムUCユニコーン)』(10~14年)と翌97年を舞台とした『機動戦士ガンダムNT(ナラティブ)』(18年)。飛んで、0123年を舞台としていた映画『機動戦士ガンダムF91(フォーミュラ・ナインティワン)』(91年)。
 この両者の隙間の時代を埋めることになる宇宙世紀0105年という時代を映像化した作品を、「観賞」ではなく「確認」をすることで、「物語」を味わうというよりも「歴史年表」的な興味関心を満たしているだけである……といったところが、失礼ながらも筆者が見立てているガンオタの在り方と作品受容のされ方なのでもあった。
――むろんサンライズバンダイ側でも、カネ払いがよいロートル観客たちをねらって『ガンダム』でしばらくは食べていこうという企画意図は当然にあるのだろう――



 そーいった意味では、本作が興行収入20億を突破したことについても手放しでは喜ぶ気になれない。とはいえ、本映画自体がダメダメだったと思っているワケでもない。


 放映当時は


「コレは『ガンダム』ではない」
「(複数名の美少年キャラ押しにより)『ガンダム』であることを捨てた作品だ!」


などと月刊アニメ雑誌の誌面を使ってまでクマさんことアニメライター・小黒祐一郎なども酷評していたTVアニメ『新機動戦記ガンダムW(ウイング)』(95年)――筆者個人は傑作だと思う――などのキャラデザ・原画マン上がりで、近年では深夜アニメ『GANGSTA(ギャングスタ)』(15年)やアニメ映画『虐殺器官』(17年)などの良作の監督も手掛けてきた村瀬修功カントク。


 そして、『ガンダムUC』全話を手掛けたむとうやすゆき脚本による「漫画アニメ的なナンちゃって感」は皆無な、「コレ見よがし」のリアリズムではなくナチュラリズムをねらったとおぼしき本作には特に拙(つたな)いところは散見されない。


――とはいえ逆に云うと、キョーレツなツカミには欠けているようにも思うけど。もちろん富野御大の演出も漫画アニメ的ではないのだけど、ナチュラルというモノでもなく、そのセリフ廻しも含めてやや「新劇」(明治以降の舞台での現代劇)的なモノではあったので――



 事情聴取を無事に凌いだハサウェイ青年は郊外~海辺~小舟を乗り継いでいく。それまでにも地球環境保全&反地球政府を訴えるマフティーを勝手に名乗っている同名組織が複数は存在することが語られている。
 街々の庶民と交わる中でも彼らのテロ行為に喝采を送る者、しょせんは政府ともまた異なる意識高い系のエリート連中による生活軽視で思想重視の活動に過ぎなくて、庶民にも被害が及んでいるテロ活動によって最後は人々にも反発されて自滅するだろうと冷笑する者、双方に理があるリアクションも点描していき、ハサウェイ青年もつい考えこんでしまうといった姿が描かれる。


 そして、向かった先の島嶼の隠し工場のようなアジトで彼の真の正体も判明する。彼こそが地球環境保全のための反地球連邦組織のリーダー・マフティーであったのだ! ……といったところで、人間ドラマ的には幕となる。


 その後はメカロボアクション! 隠していた多段式ロケットを打ち上げて、成層圏上に待機させていた巨大カプセルに乗り移ったハサウェイ青年は地表へと自由落下。内部に隠していた無骨な新型ガンダムクスィーガンダム)を操縦して、先にも面通しをしていた青壮年大佐の部下である若造パイロットとも一戦を交えることとなる……。


 富野ガンダムとも同様に、物語の序盤で主要人物同士を面通しさせて「因縁」を作っておいて、そんな彼らを敵味方として戦場で激突もさせるといったあたりは、実は確率論的にはちっともリアルではなくご都合主義でもあるのだけど(汗)。しかし、善くも悪くも「物語」というものは、そーいった作り方をしなければ成立しにくいモノだろう。だからそこには過剰にケチはつけない。


 初作にはなかったものの続編『Zガンダム』以降は、敵味方が通信で会話をしまくれる……といったあたりも、初作の世代人としては引っかかりはあるのだけど、今のガンオタたちがそのへんを歌舞伎的様式美だとして割り切れていることを考慮すれば、バトル中でも人間ドラマを継続可能とさせる手法としては認めてもイイのかもしれない。



 環境ネタについては、0093年を舞台としていた『逆襲のシャア』で初作の金髪美青年ライバルであったシャアが地球環境保全をお題目として戦争を引き起こしたことの継承でもある。
 しかし、環境問題について富野ガンダムに先見の明があったということでもない。当時も世間で環境ネタは騒がれていたし、70年代前半に公害が隆盛を極めていた時代にも環境問題が叫ばれていたモノである。


 それよりも古いマニアとしては、『Zガンダム』では地球環境のことについての言及などはまるでなくて、その次作『機動戦士ガンダムZZ(ダブルゼータ)』(86年)終盤に至っては妹のセイラ女史をして


「兄は宇宙との調和のようなモノを目指している」


うんぬんなどとオカルト・精神世界方面への傾斜が示唆されていたシャアなのに、シリーズとしての「伏線」は一切ナシで唐突に巨大隕石を地球に落下させて「核の冬」――東西2大国の核戦争によって舞い上がった粉塵で太陽光が遮られることでの氷河期襲来といった80年代に流通していた学説――を引き起こして、地上の人類は滅ぼしてでも地球環境を保全せんとした超展開についての、30数年前に抱いた違和感もかすかによみがえってくるのであった(汗)。


 もちろんそれは、初作の主人公アムロと宿敵シャアを再び戦わせるため、映画としての大掛かりな映像的背景舞台装置も必要だったから……といった作品の外側にあった事情については承知をしてはいるものの。



 本作に対するマニア間での世評はやや高すぎるとは思うし、ホントウにガンオタたちが本作の内容についても理解をしているのかについては疑問符もつく(汗)。とはいえ、傑作だったとは思わないまでも、まぁまぁの良作だったとは私見するのだ。


(了)
(初出・オールジャンル同人誌『DEATH-VOLT』VOL.88(22年1月16日発行))


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