追悼、大林宣彦論 ~尾道。映像派から抒情派へ。風景も作品を規定する。ツーリズム。大林作品で旅に誘われた我が半生
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漫画家・松本零士(まつもと・れいじ)センセイがご逝去されたことにカコつけて……。『銀河鉄道999(スリーナイン)』にまつわる所感をアップ!
『銀河鉄道999』への郷愁。その旅情・ツーリズムこそが、当今の聖地探訪へとつながった!?
(文・しかせん)
(2018年10月3日脱稿)
秋の夜長は『銀河鉄道999』
2018年9月20日(木)。会社を早めに退け、そぼ降る雨のなかを、都心の目黒へ向かいました。
目黒にさんまを喰いに行ったわけでなく、9月15日(土)から1週間限定で上映されている『なつかし秋のアニメ祭り2018』というイベントにて、
●14時45分から始まる『銀河鉄道999(スリーナイン)』(1979年8月公開)
そのまま続けて、
●17時15分から始まる『さよなら銀河鉄道999 アンドロメダ終着駅』(1981年8月公開)
を観るために、はやる気持ちを抑えきれず、昼間からドキドキしながら、同作のお姉さまヒロイン・メーテル嬢に会いたさで、かの名画座「目黒シネマさま」へ急行しました。
これから約5時間。しかもデジタルではなく35mmフィルムでの上映です。「※旧作につき映像・音声に乱れがございます。予(あらかじ)めご了承ください」とのお断りもあります。
子供ではなく青年層が歴史上はじめてアニメの映画を観ても良いことになった、月刊アニメ雑誌なども続々と創刊されていた第1次アニメブームだった70年代末期。「オタク」という言葉もないから「オタク蔑視」などもなかったあのころ。
まだ小学生だった夏休みの時分に、「ワクワク」と「疲れ」がないまぜになりながらも、各回が「満員立ち見」の映画館に並んで、がんばって鑑賞したあの名作アニメ映画。
最後は親父が根負けして指定席を買ってくれて、座席に座って観られたものの、90年代以降のシネコンの座席の段差や半席ずつズレて配置しているような時代とは異なり、前の座席にいた大人のアタマでスクリーンが大きく隠れてしまって、画面自体は満足に観られなかった苦い思い出もよみがえります。
しかし、イベント名のとおりで、色んな意味で「なつかしさ」もひとしおです。
さて、夕方からの夜間鑑賞ではなく、こんな中途半端な午後早い時間に会社を抜け出さなくてはならなかった理由は、上映順序によるものでした。
『さよなら銀河鉄道999』の方は2回だけの上映で、第1作の3回目の上映がラスト上映となっていたためです。
先に第2作を観てから次に第1作目を観たくはない! 順番で観たい! どうしても、『さよなら銀河鉄道999』の主題歌『SAYONARA(サヨナラ)』(1981年 日本コロムビア 歌 メアリー・マクレガー)は、ラストに聞いてシメにしたい! そう思ったのです。
映画の内容は今ここで披露せずとも、皆さまご承知のとおりでしょう。鉄郎・トチロー・ハーロック・エメラルダスの生きざま・セリフを耳にすると、「自由な海に出られずに」サラリーマンとして生きている自分に涙が出てきます。あぁ、ひさびさに映画で泣きました。
やっぱり我々世代のあこがれの女性といえばメーテル。若いころは鉄郎のように、好きになってはしまったもののフラれて棄てられて、いつしか幻影のように過去の人となってしまった美女が何人かいたなぁ(笑)。とか、よけいな思い出までもが蘇ってくるわけで、そんな若いころにもまた涙……。
いまだに「大井川鐡道」や「上越線」を走っている「蒸気機関車」や「旧型の客車」に乗ると、気分は星野鉄郎(ほしの・てつろう)化してしまう自分がそこにいるわけです。
あれから40年近くも経って齢(よわい)を重ねてしまったオジサンは、もはや10歳(TVアニメ版)や15歳(劇場アニメ版)の星野鉄郎少年よりも、市川崑監督・石坂浩二主演による名探偵・金田一耕助シリーズの映画『悪魔の手鞠唄(てまりうた)』(1977年4月公開)に登場した磯川警部(演・若山富三郎)の年齢に近くなっています。
「あなた、リカさんのこと、愛してらっしゃったんですね」なぞと、倉敷市~鳥取県の大山(だいせん)の山陽山陰を結んでいる伯備線は岡山県の「総社(そうじゃ)」駅頭で、金田一さんに言われてみたい年頃なのです。
そもそも、青池リカ(演・岸恵子)みたいな「美魔女」は傍にはいないので、あきらめるよりほかにありませんが(笑)。
時間を旅する女・メーテルも今風に云うとある意味では「美魔女」です。冥王星の氷原の下に埋葬されている元々の人間だったころの姿も気になるところです。その冥王星の墓守・シャドウや、999の食堂車のガラスの体でできたウェイトレス・クレアさんも美しかった。男のロマンとしては、冥王星の氷原の下には絶世の美女たちが眠っているに違いない! と夢想してしまいます。
シャドウに迫られている鉄郎のことをうらやましく思うとともに、「据え膳喰わねば男の恥」的な意味で、そこに中年男の「あわよくば……」というイヤらしい下心がある不純な妄想も紛れこんでしまって、やはりこの名作は中学生くらいまでに見ておかなければならない映画だったのだと確信。
久々にスクリーンで『銀河鉄道999』を観たワタクシのような50近いオジサンが、エロい妄想を抱いてしまっても、それでもなおのこと、『999』は初見からのちのちの人生までにも影響していることは間違いありません。
社会生活でも「負けるとわかっている戦い」に、人間としてのスジを通す意味で、あるいは少々正しくないと思っても義理と人情で関わってしまい、わざわざ負けたりしながらも、「そろそろ人生、落ち着こうかな」などと、あきらめ半分が頭をもたげてきた昼下がり。うーん、ここは沈思黙考。
劇場を出ると日も暮れて、さっきより雨が激しくなっていました。あまたの銀河や星々を見上げることはできなかったけれど、もう一度、青春を甦らせ、40年後に劇場でしかも35mmフィルムで『銀河鉄道999』を見せてくれた「目黒シネマ」さまには感謝でいっぱいでございます。
(「目黒シネマ」展示物。撮影・しかせん)
マラソンるぽ『ここにもこんなものが! 美少女キャラ、旅立つ!』
最近、旅をすると、さまざまなところでアニメのキャラクターが観光案内をしていたり、ご当地イベントで活躍している姿を見掛けます。
しかしその分、ナマ身のアイドルさんやモデルさんを使ったポスターが少なくなっていることも事実です。
「放置自転車やめて!」や「列車の乗車マナー」などは、いつのまにか美少女アニメ調のキャラが台頭しています。これじゃモデルのプロダクションも、使ってもらえるタレントさんの枠が小さくなって大変なんじゃないかと考えたりしています。
「『まんがタイムきらら展』(芳文社・産経新聞社主催)が2018年11月17日(土)から25日(日)まで、東京都千代田区のアーツ千代田3331にて開催決定!」
などといった報道を見ると、今や深夜アニメでおなじみの美少女キャラたちが大人気であることが改めて偲ばれてきます。
4コマ漫画誌『まんがタイム』と聞けば、「植田まさし」さんの『おとぼけ課長』(1981~2017年)を思い出すような我々の世代からは、隔世の感もあったりするものの(笑)、2018年現在の今では『きらら』の「萌え系」が全盛なのでしょう。
我々オッサン世代が、「萌え萌え」ではなく「ムラムラ」していたころの
●徳弘正也先生の乱ちゃん(『シェイプアップ乱』・83年)
●北条司先生の3人姉妹の怪盗(『キャッツ・アイ』・81年)
といった、8頭身でセクシーな、「美少女」というよりも「お姉さん」といったキャラクター。
彼女たちでは、今やすでにオタク限定ではなく全年齢向けの存在として定着した、記号的にまるっこくデフォルメされて胸も小さくてウスい(笑)、可愛い系の美少女アニメ調のデザインがなされたキャラクターたちに太刀打ちできそうもありません。
我々オッサン世代のあこがれでもあったナイスバディーな女性キャラは、公序良俗面でも少々引っかかってしまうのか、鳴りを潜めてしまったようです。
とは言いつつも、筆者も時代の趨勢には逆らわずに、美少女アイドルアニメ『ラブライブ! サンシャイン!!』(16年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200628/p1)の舞台をお目当てに静岡県の「沼津」をうろついて、この「きらら展」にも行く気マンマンなのでした。よって、とりあえずこういった流れには大歓迎しています(笑)。
若い人々が「聖地巡り」で地方にお金を落とせば、「地方創生」にもなるんじゃないのかなぁ、などと真面目ヅラして納得してしまうのでありました。
<>(撮影・しかせん)
編註:
「目黒にさんまを喰いに行く」とは、名作古典落語「目黒のさんま」に由来する言葉遊びなので、念のため(笑)。
「目黒のさんま」の元となった事象は、徳川3代将軍である徳川家光(とくがわ・いえみつ)にまつわる逸話である。
TV時代劇マニアであればご承知の通りで、この逸話を拡張して、徳川15代の「大奥」の歴史を描いていた名作TV時代劇『大奥(おおおく)』1983年版においても、このエピソードが描かれている。
大奥支配の春日局(かすがのつぼね)が差配した毒薬で、公家からの影響力を弱めるために石女(うまずめ。子供が産めない体の女性!)にされてしまった京都から来た正妻への義理立ての念から、他の女性には手を出せなくなってしまった家光。彼に対して済まないと思いつつも、世継ぎを儲けてもらうためにも何とかせねばと、春日局は八百屋の娘であった健康的で快活な少女・玉を、目黒の鷹狩場の近辺の小屋に配置してサンマを焼かせて、その匂いで家光を誘わせる策謀に出るといったエピソードに昇華されているのだ……といったことは余談である(笑)。
――そして、この庶民上がりの玉が、犬将軍こと5代将軍・綱吉(つなよし)の母親として権勢をふるった、後年の桂昌院(けいしょういん)である。綱吉の時代も描いている『水戸黄門(みと・こうもん)』や『忠臣蔵(ちゅうしんぐら)』などの時代劇にも彼女がよく登場していることは、好事家の間ではご承知のとおりだ――
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