『エロマンガ先生』『妹さえいればいい』『俺が好きなのは妹だけど妹じゃない』『干物妹!うまるちゃん』『最近、妹のようすがちょっとおかしいんだが』『ささみさん@がんばらない』『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』 ~2010年代7大・妹アニメ評!
『東京リベンジャーズ』『ぼくたちのリメイク』『Vivy』 ~2021年3大タイムリープアニメでも、各作の主眼が知的快感・身体的快楽・人生の滋味とするかで相違!
拙ブログ・トップページ(最新10記事)
拙ブログ・全記事見出し一覧
深夜アニメ『ヤマノススメ』(13年)4期こと『ヤマノススメ Next Summit』(22年)がBS日テレにて再放送中記念! とカコつけて……。『ヤマノススメ Next Summit』(22年)・『ゆるキャン△』(18年)・『Do It Yourself!!』(22年)・『スーパーカブ』(21年)評をアップ!
『ヤマノススメ Next Summit』『ゆるキャン△』『Do It Yourself!!』『スーパーカブ』 ~オタには縁遠いハズのアウトドアやDIYを扱った美少女アニメのあれこれ!
(文・T.SATO)
『ヤマノススメ Next Summit』
(2022年秋アニメ)
(2022年12月25日脱稿)
筆者には小学校高学年にしか見えない女子高生たちが山登りに挑む美少女アニメ。
2013年に5分アニメとして放映されてからでも、まる10年! 見覚えのある高校進学から開幕したので、完全リメイクなのか!? と思いきや、#1~4までが1~3期のリメイクである、実質の第4期なのであった。そういった意味では、一見(いちげん)さんにも優しい開かれた作りなのであり、個人的には好感が持てる作り方なのである。
導入部は(ひとり)ボッチ作品でもあり、それ以降は広義での百合(ゆり)モノ要素もあるのだけど、キャラデザ的にはオボコいので、個人的にはいわゆる百合臭をあまり感じない。
10年経っても彼女たちはまだ高校1年生なのかぁ。リアルに考えてもしょうがないけど、現実世界の時間を当てハメてしまえば、もう26才の社会人になっているやないけー! などとベタなことをお約束でも思いつつ。
オリジナルに比べてやや駆け足であったり、大胆にも大幅なカットを確認しつつ、そしてソコに文句を付けようというのではなしに、30分ワクの4話分の中での1~3期のアレンジの妙と、それでもひとつの作品なりエピソードとして成立できたか否かといったことを、筆者などは楽しんでもいるのだ――そして、それは成功したとも私見――。
もちろん、往時の美少女アニメファンに受けるために……といった処置ではあったのだろうけど、5分アニメであった1期は美少女たちに対してやや耽美的・陶酔的にすぎるといった気配が、オタクの客寄せ的には悪かったとも云わないけど、ライト層や周辺層だとヒイてしまいそうな感もあった。その意味ではフツーにナチュラルな感じに仕上がっている1期のリメイク部分も個人的には楽しめた。
『ゆるキャン△』
(2018年冬アニメ)
(2018年4月27日脱稿)
「ゆるいキャンプ」の略称に、テントを「△」マークに見立てて発音しない作品タイトル。ホンワカまったり系の美少女キャラたちがキャンプを楽しむといった作品だ。
同工異曲の山ガール初心者の女子高生たちを描いた登山アニメ『ヤマノススメ』(13年)が、山岳や登山装備やキャンプ装備などのウンチクも描いてウケたゆえの二番煎じだと容易に推測できる安易な作品でもある。
とはいえ、二番煎じであろうが、面白ければオール・オッケー!
しかし、リアルに考えたらば、たとえ同好の趣味の士が泊まりこんでいる、半ばは企業形態の安全なキャンプ場だとはいえ、未成年の女のコがひとりでテントに寝泊まりするだなんて、どんな育児放棄な親御サンなんだヨ! あわよくば、ナンパして強引に付きまとってHに持ち込んじゃう悪い野郎なんてワンサカといるとも思うけど――もちろんこの作品では、そういったイヤ~ンな現実は描かないし、描く必要もない(笑)――。
こーいった作品はストーリー展開の妙ではなくて、ディテールの「あるある感」、もしくは「アリそう感」。あるいは、その道だけの「リアル」に根差したテクニカルな「有用感」……といったモノがキモである。
しかも「リアル」とはいっても、それは「アウトドア趣味」の部分だけに特化した話でもある。「世知辛い現実」や「社会問題」に「スクールカースト」(爆)などの「リアル」は持ち込み不要! アウトドア趣味のウンチク以外はファンタジーであって、非リアルなまったり美少女たちの優しいポワポワとしたやりとりだけがあればイイ(笑)。
――シビアな現実をエグったり糾弾してみせるような作品の存在を否定しているワケではない。しかし、そういったことはまた別のしかるべきジャンルで描けばよいのだ――
先の『ヤマノススメ』は、こまっしゃくれたイタズラっ子気質の黒髪ミニツインテ嬢に強引に巻き込まれるかたちで、インドア派で内気そうな銀髪ショートの影がウスそうなオボコい女子高生主人公が、チョロそうな低山から登山に挑戦。
初心者目線で登山ウンチクを知りつつ、富士登頂には高山病で途中でリアイアさせることで――『ヤマノススメ セカンドシーズン』(14年)中盤――、オタク男子の庇護欲を離脱するほどに成長させてしまうことは回避させつつ(?)、とはいえ結局は登山そのものよりも、丸っこくて筋肉も感じさせない頭身も低い小学生みたいな女子高生キャラたち(笑)のまったりとした可愛いやりとりが主眼ではあった。
――基本的にはそれでOKなのだけど、5分アニメや15分アニメだったとはいえ、だったらば1話まるまるを登山装備のウンチク・トークに回してみせるような番外編もあった方がイイようには思ったけど――
本作では、もう少々はキャンプ装備のウンチクに重点を置きつつも、しかしてイイ意味で記号的な美少女キャラたちの入念な描写にも抜かりがない。
富士五湖の湖畔で「ひとりキャンプ」していたオトナしげなボソボソとしゃべる黒髪ショート女子――『ヤマノススメ』2期(14年)でも似たようなカメラ女子が出てきたよナ……と思いきや、声優も同じ東山奈央(とうやま・なお)嬢!――に、考えナシで富士山を観に来て昼寝して帰宅できない時刻に目覚めた花守ゆみり嬢が演じるピンク髪の元気女子が図々しくまとわりつく導入部で、リアルであるかはともかく漫画アニメ的には双方のキャラクター&関係性も立ってくることでのツカミもOK!
#2以降はこのテの作品常套のご都合主義で、ふたりは同じ高校の生徒となって再会を果たして(笑)、仲間も増やしていき、試しに校舎の裏でテントを仮組みしてみせるなどといった内容ともなっていく。
ここでオッサンオタクもウンチクを披露させてもらうと、今は昔の1980年代中盤にはもう、ここでお披露目されているカルくてウスくて畳むと非常に小さくもなる化学繊維&プラスチック棒によるテントは登場していました(笑)。
この作品は個人的には30分ワクだと少々間延びして見えるかも……とは私見する。
円盤売上も同季冬アニメの最大の話題作『ポプテピピック』の倍以上に達する1万3千枚の大ヒットを記録している。しかし、若年オタらの言動を見るにつけ、バズったワードで配信サイトをポチッとしてしまうかたちの視聴が定着したことでの一極集中が発生。
かつ、「長いモノには巻かれろ」的な奴隷根性が発動しているようでもある。一強多弱。オタクシーンは多様な作品を輩出しつつも、多様ではないようにも思えてしまって……。
『Do It Yourself!!-どぅー・いっと・ゆあせるふ-』
(2022年秋アニメ)
(2022年12月25日脱稿)
タイトル通りの「DIY」、「日曜大工」というのか「日曜木工」というのかが題材となっている深夜ワクの美少女アニメである。
絵柄的にもさまざまなネタを題材としてきた萌え4コマ漫画作品あたりが原作なのかと思いきや……。完全オリジナル作品であるようだ。マンガ連載の方も深夜アニメ放映と同時に始まっているので、そちらの方は原作マンガではなくメディアミックスといったことになるのだろう。
新潟県を舞台に女子高に通う女子高生たちが集った「DIY部」を舞台に、彼女たちの「キャッキャウフフ」を見せていく作品でもある。
往年の「軽音部」を舞台とした大人気深夜アニメ『けいおん!』(09年)などとは異なり、キチンと練習もとい「木工」をしているあたりは好感が持てる(笑)。
天然ボケでもオットリとはしていない、鼻梁に絆創膏(笑)を常に貼っているトロボケ主人公少女。彼女の隣宅に住んでいて彼女とはいっしょに同じ高校に通いたかったらしいサブヒロイン。ボーイッシュ部員。引っ込み思案の新入部員。天才外人美少女。……といった、イイ意味での記号的なキャラも取り揃えてはいる。
しかし、ドーなのであろうか? たしかに萌え4コマ的なシンプルなキャラデザだとはいえるけど、あえてなのだろうが、サッパリとして媚び媚びとはしていないキャラデザ。
それが絵柄的にも本作独自の個性たりえてもいるとは思うものの、そういったフェティッシュな萌えの次元で微量に登場人物に対して執着させることでも、作品世界に対して視聴者を吸引していくことの一助にはなっているとも思うので、その点においてはツカミには弱いような(汗)。
少なくとも筆者に関しては、萌え感情がイマイチ喚起されないので、視聴意欲が……(以下略)。
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.84(22年12月30日発行))
『スーパーカブ』
(2021年春アニメ)
(2021年8月9日脱稿)
新聞・郵便・出前の配達に用いられるバイクのスーパーカブ。それに搭乗して登校するようになる黒髪おかっぱのやや小柄で可憐でも地味な女子高生の物語だ。
本作の#1序盤も、
●田舎の中央線
●山あい
●学校
●周囲に田園しかない自動車道路の交差点
などを映していく「夜明け」の描写の映像に、誰でも聞いたことがあるクラシック音楽であるドビュッシー作曲『月の光』がカブっていくことで、視聴者を没入させていく……。
その後もメリハリ・抑揚のあるストーリーがない。主役少女による、
●朝の食卓準備
●自転車での長距離坂道登校
●授業
●教室でのひとり昼食(汗)
といった光景を淡々と描くだけなのに、まったくアキさせずに魅せていくあたりも、「演出」の力といったモノなのであろう。
長い坂道で登校に苦慮する彼女は、学友がバイク通学をする姿を見て、寂れたバイク屋に立ち寄った。
本作にふさわしい枯れた初老のオジサン店長は、高額の買い物ができない彼女に奥から事故の前科があるカブを格安で提示する。
しかし、様子見に来ただけの彼女はまだ免許を持っていない(笑)。そして、改めて免許を取ることが目指される。
こーいった遅々とした描写の果てに、ようやく彼女はカブを駆ることになるのだ。
リアルに考えたらば、いかに浮世離れした個性の持ち主でも人目を気にしがちな、しかも目立たない大人しい女子高生が旧式バイクを購入すること、しかも周囲がそれをネタにからかい、悪ガキ男子高校生どもがこのバイクの損壊行為に及ばない! などといったことはアリエナイ(汗)。
しかし、山本寛(やまもと・ゆたか)監督のアニメ映画『薄暮(はくぼ)』(19年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210104/p1)などもそうだったけど、舞台が「田園風景」、高校生たちも都市消費文化の「私的快楽至上主義」&「虚栄心」に感化された「ファッション&スイーツ」、「小さなイジメもオッケー」といった感じがしてこない実にノドカな感じが、この世界ではそういったことがナイことにも暗黙の説得力を与えてくれている。
まぁ、主役少女の他にもこのスーパーカブに搭乗している同級生(!)の少女が登場してきて、カブを接点に彼女と行動を共にするようになって、活動範囲や交友関係も広めていくあたりは、天文学的確率でしか起こりえない僥倖だともいえる。
しかし、それを云いだしたらばフィクション・物語といったモノは成立しない(笑)。身近さや感情移入を惹起するための「リアル風味」は物語の「助走台」だけでよくって、そこさえ踏まえて感情移入・ツカミを作っておけば、あとはフィクションワールドへと飛躍していってもイイのだ。
主役少女個人は(ひとり)ボッチで控えめでボソボソ口調でしゃべっても、過度な劣等感や発話恐怖・対人恐怖などは感じられない。だから、バイクを買いにも行けるし仲間も増えていく。
むろん、「弱者男子にとっての都合がイイ弱者女子像だ」というツッコミも論理的には可能である。しかし、本作の主役少女がアバズレ少女や元気少女であったならば、本作の枯淡の境地(笑)も醸せなかったことであろう。