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波よ聞いてくれ・イエスタデイをうたって・ハコヅメ~交番女子の逆襲~・ぐらんぶる・この音とまれ!・殺し愛・グレイプニル ~純オタ向けとは異なる、漫画原作アニメの良作の数々!

(2023年5月14日(日)UP)
『Dr.STONE』『手品先輩』『彼方のアストラ』『かつて神だった獣たちへ』『炎炎ノ消防隊』『荒ぶる季節の乙女どもよ。』 ~2019年夏の漫画原作アニメ6本から世相を透かし見る!
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[アニメ] ~全記事見出し一覧


 マンガ原作の深夜ドラマ版『波よ聞いてくれ』(23年)が小芝風花主演で放送中記念! とカコつけて……。マンガ原作の深夜アニメ版『波よ聞いてくれ』(20年)・『イエスタデイをうたって』(20年)・『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』(22年)・『ぐらんぶる』(18年)・『この音とまれ!』(19年)・『殺し愛』(22年)・『グレイプニル』(20年)評をアップ!


波よ聞いてくれ』『イエスタデイをうたって』『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』『ぐらんぶる』『この音とまれ!』『殺し愛』『グレイプニル』 ~純オタ向けとは異なる、漫画原作アニメの良作の数々!

(文・T.SATO)

波よ聞いてくれ

(2020年春アニメ)
(20年8月11日脱稿)


 #1の冒頭、厳寒の山林で巨大なクマと対峙して怯えながら、ラジオ番組のMCとしてもリスナーの「相談ハガキ(メール?)」を読み上げている、防寒コートに身を包んで頭髪も金色に染めた性格もややキツそうで媚びたところのないイライラ気味の若い女性の姿が描かれる。


 「相談ハガキ」の「質問」に対して「回答」にはなっているようで、なっていないようでもある「回答」を続けつつ、巨大クマが襲ってきたことで迫真の演技でその場を逃げ出したり、巨大クマとの大格闘まで始めたり!


 「優しいだけの夫 & 身体の相性がイイ不倫相手」の間で悩んでいる「相談」に対しては、「誠実であれ!」とアドバイスして――明言はしないものの「不倫」の賞揚?――、同時に巨大クマもやっつける!(笑)


 「不条理」な映像描写なのに妙に真に迫った、この一連のシーンの「大迫力」でまずは惹きこまれてしまうのだ。


 コレらは要はスタジオでのラジオ番組の「収録風景」で、彼女の真に迫ったアドリブ能力を表現するためにアニメ的な「イメージ映像」として具現化された映像演出なのだけど。彼女の「憑依型女優」のような天才的に熱演がかった「即興アドリブ」の数々がキモでもある作品なのだ。


 とはいうものの、その「即興アドリブ力」を劇中では一応は賞揚しつつも、過度に美化もされてはいない。単に彼女の挙動が尋常ではナイからずっと彼女を眺めていよう! その場が埋まればナンでもイイから彼女の言動を観ていよう! といったような無責任なノリでもある(笑)。


 作り手の意図自体はそこにはナイのであろうけど、こーいう作品&キャラクターを見せつけられると、「身分制度」が消失してもなお残る、「身分制度」や安倍ちゃん・トランプのせいにはもうできない(笑)、人間個々人の生まれつきの「スペックの相違」も、個人的には気になって気になって仕方がなくなってしまうのだ(汗)。


 個人の「努力」や「修練」を超えている、単に「生まれつき」に「多弁」で「マシンガントーク」で次から次へと、あることナイことを畳み掛けるように喋りつづけられる天賦の才! 繊細ナイーブさのカケラもない生来からの胆力・フテブテしさがあって、「ダメんず」なカレとの色恋や別れ話などの人生経験の豊富さ! サブカル・雑学方面の知識もムダにあって、定型句的な言葉遊び力やボキャブラリーも豊かであることから来る、途切れることのない彼女のトーク力!


 さぞやコミュ力弱者の我々オタとは違って、この世を生きやすいであろう……とは思うものの、劇中ではそうも描かれてはいないのだ(汗)。カレー屋の店員としても不安定な人生を送っており、カレ氏ができても「ダメんず」で修羅場をくぐり、酒癖も悪くてドーやって帰宅をしたかが思い出せずに、常に不全感やイライラを抱えていて、時に絶叫もしている!(笑)


 弱者男子にとっての都合がいい女性像を描く美少女アニメとは対極的な女性像ではある。とはいえ、だからといってフェミニズム的にも本作が優れているなどと強弁する気は毛頭ナイけれど。正直、恋人やカミさんにしたいとは思わない(汗)。筆者の乏しい見聞範囲でもキツいカミさんをもらった会社の同僚やオタク友達はだいたい離婚して、慰謝料を払い続けていたり、カミさんの好悪の情も激しいのか子供にも会わせてもらえないといったお話も多々聞くので、「政治的に正しい女性」像のように見えても油断禁物! 現実の女性は実に厄介なのである(爆)。


 とはいえ、筆者は美少女アニメやそのキャラたちにそこまで操(みさお)を立てているワケでもナイので(?)、傍から無責任に眺めている分には、本作の女性主人公キャラのスットンキョウな言動は実に面白い。
 彼女の成り上がり・サクセスストーリーのようでいて、単に深夜や早朝のノンスポンサー枠の短尺番組を任せられただけの「足踏み」の「停滞」でしかなかったりする(笑)。すわ、カレー店員を卒業か!? と思いきや、雀の涙の給料なのでカレー店での店長や同僚との人間模様も続いていき、ダラシのない実父やゲスト青年たち、小鳥がさえずっているようなボイスの娘ムスメした性質善良な娘であるがゆえに対局的な主人公女性に憧れている女子力が高いラジオ局員を対比として配置どころか同棲までさせたりもして、珍妙な群像劇も展開されていく……。


 まぁ、美少女キャラ志向のアニメファンたちがチェックすることはナイであろう(笑)。青年マンガ誌『月刊アフタヌーン』連載マンガが原作の作品であった。ググってみると、ジャニーズのキムタク(木村拓哉)主演で実写映画化(17年)もされて、同季2020年春からは深夜アニメ2期(リメイク?)も放映されている長寿時代劇マンガ『無限の住人』(93年)とも原作者は同じ御仁。……エェ~、全然作風が違うじゃん! 原作者センセイのナンという引き出しの多さと広さよ!
Pride(期間生産限定盤)

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.77(20年8月15日発行))


イエスタデイをうたって

(2020年春アニメ)
(20年8月11日脱稿)


 末広がりの黒髪ショートカットに黒ずくめの服を着てカラスも連れて歩く(!)といった、マンガ・アニメ的な記号的キャラ付けが施された不思議ちゃん系でコケティッシュな低身長少女が登場。大卒なのに就職できずにコンビニバイトのアパート暮らしで人畜無害系の青年クンに、そんな彼女がまわりつくといった作品である。


 広い意味では今流行りの「高木さん系」、『からかい上手の高木さん』(18年)や『宇崎ちゃんは遊びたい!』(20年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200802/p1)やアニメ化も発表された『イジらないで、長瀞(ながとろ)さん』(21年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210516/p1)の系譜に位置付けもできる。


 しかし、ググってみると、1998年開始で月2回刊行だった青年マンガ誌『ビジネスジャンプ』~『グランドジャンプ』連載マンガが原作作品だったとのこと。


 なのだけど、マンガ・アニメ的な描写であったのは、序盤でのヒロインに対するツカミ演出だけである。始まってみれば、ナチュラルでナマっぽい人物群像劇が繰り広げられていく。


●コンビニでのリアルなバイト風景


●少々チャラそうなロン毛の同僚――でも常識人でイイ奴――


●青年クンが一度は告白するもフラれてしまった大学時代の同級生で、今は高校教師をしている女友達(声・花澤香菜


 先の不思議ちゃん少女はこの女教師が勤める高校の中退少女でもあったことから、疑似三角関係にもなっていく。しかして、女教師自身はすでに死した故郷の病弱であった恋人のことが忘れられずにいる。加えて、死した恋人の弟青年クンはこの女教師に懸想しており、上京してきて予備校生稼業の傍ら、彼女にモーションをかけてくる。さらには、不思議ちゃん少女を高校時代に懸想していた別の青年クンまでもが登場し……。


 とまぁ、筆者個人は別に人間ドラマ至上主義者ではナイけれど、こーいうアヤトリのヒモをいくつも対角線的に結んでいって複数の人間関係を作って駆動させていくのが、世間一般で云うところのフツーのドラマの作り方ではないのかなぁ……とは思うのだ。ただまぁ、あくまでも嗜好品なので、本作が合わない御仁や本作に対する否定評もあってイイと思うし、それを論破するだけのロジックもナイけれど(笑)。
恋人たちの予感

イエスタデイをうたって
(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.77(20年8月15日発行))


『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』

(2022年冬アニメ)
(2022年4月30日脱稿)


 田舎の女性警察官ふたりを主人公とした深夜アニメ。本作もまた意表外にも実に面白い!


 善人だろうけど意識が高いワケではなく、デモシカで警官になってしまった黒髪ショート女子――警官にデモなろうか……警官シカない!――。多忙でヤリ甲斐もないので退職しようかと内心で思っていたところに、美人系なるも勝ち気でタフなので「ゴリラ」(爆)と称される先輩女性警察官が赴任。そこで始まった珍バディー(相棒)の新たなるご町内での「道中記」といった作品である。



 キモとしては以下の3点。


1.警官ではない一般人に近しい目線で事態を眺めている黒髪ショート女子を視点人物として、そこをフック・引っかかり・導入部とする。
2.とはいえ、本作の原作が連載された週刊青年マンガ誌「モーニング」における『課長 島耕作』(83年~)や『ナニワ金融道』(90~96年)に『カバチタレ!』(99~05年)や『重役秘書リナ』(95年)といった「お仕事モノ」の伝統で、達人の世界を垣間見させるにあたって、プロの仕事を体現なり解説する役回りとして仕事デキる系のキャラも配置する。
3.そして、それらを部外者にも理解が可能なかたちで、「体験者自身の実感」なり「綿密な取材」で再現された臨場感とともにドラマチックに描き出す。



●小学校での交通安全教室。連続空き巣事件の犯人とおぼしき相手に練習も兼ねて事情聴取を任せる


●女性警察官よりも男性経験が豊富な家出少女(爆)。そんな彼女に父親からの性的強要が発覚


●老人の万引き常習犯


●自宅で逝去した寝たきり老人の検視で、肌荒れや床ずれがないことに先輩美人系警官がねぎらいの言葉をかけるや、介護してきた母親が泣き崩れた姿を見て、ヤンチャだった不良中学生の息子も心を入れ替える――泣ける!――


 ググってみると、原作マンガ家さんは自身が元・女性警察官だったとのことだそうだ。……ナンだって!? 「自営デザイン業」(『ナニワ金融道』)だの「行政書士」(『カバチタレ!』)だのと同じで、庶民のあまたのトラブルを直接に見聞してきたという体験。コレは強い!


 ある意味では先進国の小ブルジョワ青年のゼイタクな悩みにすぎなかったのだともいえる文学青年的な「精神的」「実存的」な「悩み」などではなく(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220213/p1)、低劣に見えても「物理的」「肉体的」「金銭的」にも差し迫った「貧困」や「暴力」などからも来る「苦悩」……。


 良質左翼である『21世紀の資本』も著したピケティ教授は、現今の左翼を「バラモン左翼」だと批判した――インドのカースト最上位のインテリ祭司に例えて、下々の庶民の悩みがわかっておらず味方をする気もなく見下してすらいて、それこそが右傾化の真因だとしたのだ。日本維新の会を支持した者は低学歴だとバカにした菅直人(かん・なおと)元首相などもその典型だろう――。
 その意味で、些事に思えてもソコにそーいう「生活」や「雑事」があることを知って、世界&知見を拡げることには意義もあるのだ――自戒も込めて云うけれど――。殺人や銃撃事件は起きないあたりで欧米とは異なれども。その意味では「ヤンキー不良マンガ」などにも良し悪しの価値判断は別に、汲(く)んでおくべき「庶民感覚」があるハズなのだ。


 メインのふたりの交番女子はお目々パッチリでマツ毛多めのキャラデザで華もあり、そこで看板的なツカミも作っている。ソコをルッキズムだと批判されてしまうと返す言葉がないけど、そもそも「主役」や「脇役」といった「カースト」を必然的にハラんでしまう「物語」という制度・装置自体に「原罪」があって……(以下略・笑)。
ハコヅメ~交番女子の逆襲~

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.82(22年5月8日発行))


ぐらんぶる

(2018年夏アニメ)
(2018年8月2日脱稿)


 「グランブルー」を云い換えしただけのメインタイトルだけど、かのリュック・ベッソン監督のスキューバ・ダイビングを扱った洋画『グランブルー』(88年)とはテイストがまったく異なる(笑)。


 伊豆大学(いず・だいがく)なる海洋に面した三流大学に入学した青年が寄宿した先は、妙齢に達した親戚の娘たちも住まう、カウンターがあるので筆者には「喫茶店」か「軽食屋」にも見えたのだけど、ググってみると「ダイビングショップ」。
 そこではムクつけき「ダイビングサークル」の体育会系の野郎どもが、連日の飲み会で痛飲して、酔うと全裸になってバカ騒ぎを繰り広げているのであった! ……といった作品である。


 まぁ、我々オタには縁遠い世界だけど、筆者の周辺や親戚などでも結婚式の二次会で元サッカー部の仲間たちが痛飲の末に皆が全裸で踊ったとか、女性マラソンのQちゃんがボディーペインティングして腹踊りして笑いを取っていたとか、そーいう未開の原始人的なバカ騒ぎで笑いを取ったり取られたりするような世界もあるワケなのだ。というか、オモテには出ないだけで、むしろそーいったモノこそ面白い! と思うようなヤンキーな感性の方が圧倒的な多数派なのだろう。


 日本人学生が中国で「裸踊り」を披露したら、激怒されて学生デモが留学生宿舎まで乱入して暴行! なんて事件もあったので、「空騒ぎ」はともかく「裸踊り」は世界共通ではないやもしれないけど……(汗)――その中国も中国で、古来からビジネスや付き合いの場でも「イッキ飲み」をしないと「仲間」だとは認めない悪習の発祥地でもあった(爆)――。


 ただまぁこーいう世界は、いっしょに大声を出してバカ騒ぎができないオトナしいシャイな人種にとっては地獄そのものだし(汗)、彼らも我々オタや内向的な性格類型のことをノリが悪くて気ムズかしい理解不能なヤツらだと見て排斥・イジメの対象とすることは必定であろう(爆)。『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』(15年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191105/p1)の主人公たち少年ギャング集団「鉄火団」の世界に、我々軟弱・文弱の輩は受け入れてはもらえないのだ(笑)。


 とはいえ、傍から無責任に見ている分には面白い。「物語」というフィルターを通して観ることで、こーいう人種もいて原始的で下品な笑いを楽しむ世界もあるのだナと、知的には理解できて、それで許せることもある。あるいは、世渡り的にオトナの態度で表層だけでも一時的には合わせておこうとも思える――魂までは売らないけれども(汗)――。いやまぁ、そんなことをオッサンの歳になって、今さらこの作品から学んだりはしていないし、思春期・青年期の時期にとっくに過ぎた道ではあるけれど。


 てなワケで、オタ向けではなく一般の健全(?)な青年向けの作品なのだが、劇中では「残念キャラ」扱いされている、自室は萌えグッズであふれている金髪イケメン君が出てきたことで(笑)、我々オタとも接点は持たせている……のかもしれない!?


 本アニメの監督は、今では「週刊少年ジャンプ」連載の大人気マンガのアニメ化『銀魂(ぎんたま)』(06年~)のバカ演出で名を馳せている高松信司。我々ロートルオタク的には、四半世紀前の『勇者特急マイトガイン』(93年)・『勇者警察ジェイデッカー』(94年)・『機動新世紀ガンダムX』(96年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19990808/p1)の名監督であって、個人的にも好印象が残っているのだけど(遠い目)。
ぐらんぶる BD BOX [Blu-ray]

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.72(18年8月11日発行))


この音とまれ!

(2019年春アニメ)
(2019年4月27日脱稿)


 ナンと! 高校の筝曲(そうきょく)部! つまり琴(こと)が主題。こう書くと、萌えオタ向けの文化系部活モノやら、音楽バンドを材とした『けいおん!』(09年)に『バンドリ!』(17年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190915/p1)などの和風版を想起するやもしれない、


 しかし、本作は純正オタ向け媒体ではなく、月刊『ジャンプSQ(スクエア)』連載なので、ポワポワと癒やされたいオタ向け作品とは異なり、血湧き肉も躍る激情パッションも盛大にハラまれ、暴力衝動の擬似的発散もあり、つまりは抑揚もある作品なのであった。


 主人公少年は黒縁メガネのオタッキーな少年。弱いけど、弱いだけでひとりでコジらせているだけだと純然たるオタ向け作品となってしまうので、作品の神さまである作者さまがいくつかの試練を与える(笑)。



 まずは、筝曲部の部員は今では彼ひとりだけであり、彼の代を最後に廃部となってしまう可能性!――アイドル部の『ラブライブ!』(13年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20150615/p1)や、戦車部の『ガルーズ&パンツァー』(12年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190622/p1)に、合唱部の『TARI TARI(タリ・タリ)』(12年)や、吹奏楽の『ハルチカ』実写映画版(17年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201011/p1)のように、「タイムリミットの切迫感 & 私的な勝利 だけではない、他者のためにも戦う公益性もある強い動機付け」!――


 次には、廃部寸前の部室を勝手に占拠して溜まり場として荒らして、主人公少年を威嚇・恫喝してくるヤンキーDQN(ドキュン)の品性下劣な不良学生ども! といった憎々しげで、エピソードの後半では殺ってもイイ悪党(爆)、もとい「因果応報で懲罰されてもイイ悪党」も設定!


 ここに一見、先のヤンキーとも同類に見えた副主人公少年を登場させて、筝曲部への入部を希望させるも、不信にかられた主人公少年はカラかわれていると思って肯(がえ)んじない! といったところで、物語的には入部するのに決まっているにしても(笑)、「すぐにそこには到達させない紆余曲折のドラマ」も作っていく!


 その次には、やさぐれた副主人公の「過去話」。琴職人でもある頑固な祖父との複雑な家庭事情に、中学時代の警察沙汰。祖父にも乱暴したヤベェ奴かと思わせて、それは敵対していたヤンキーどもの卑劣な仕返しであったとし、「入院することになった祖父は間もなく身罷(みまか)ってしまった」ともするのだ!


 で、悪知恵だけは働くヤンキーどもの奸計(かんけい)で、部室での背後からの主人公への襲撃(!)が副主人公のせいにされてしまってドーなる!? といったところで、保健室で目覚めた主人公はすでに副主人公の無実を確信しており、校長室で糾弾されていた副主人公の弁護へと駆けつける!
 そして明かされる、温厚な校長先生&副主人公の祖父との交流。「その話はまたあとで……」と校長に語らせることで、祖父もポッと出のキャラで終わらせずに、のちのち「琴」に執着する動機を副主人公に再確認させたり増幅させたりさせる「装置」ともするのであろうと予感させている「伏線」もバッチリなのだ。


 てなワケで、「ツカミ」も「ヒキ」も「ヒロイズム」も強くて、感情移入や没入もさせてくれて、よくできた少年マンガの模範といった感を受けた。しかし、この「琴」の部活動を「相撲」に変えて、主人公と副主人公の性格を逆にしてしまえば、「不良どもに占拠された部室とその奪還」という序盤が、昨2018年秋に深夜アニメ化された「週刊少年ジャンプ」連載の『火ノ丸相撲』とも酷似しているのであった(笑)。
この音とまれ!

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.74(19年5月4日発行))


『殺し愛』

(2022年冬アニメ)
(2022年4月30日脱稿)


 殺し屋の男女同士の愛(?)を描いた深夜アニメのように見えるタイトル。しかし、実際にはクールなようなニヤけたような虚無的な青年殺し屋の方が女の方にご執心なだけで、クールな女殺し屋の方はメーワクがっているといった内容の作品である。このふたりの奇妙な交流を、乾いたクライム・サスペンス劇のようでもあり、フザけた痴話喧嘩のようにも描いていく、実に奇妙でも面白い逸品であった。


 もちろん、基本設定だけで傑作ができるワケがないので、導入部でのツカミも重要だ。地下駐車場とおぼしき場所で暗殺業にいそしんでいた冷たい目をした金髪ポニーテールの女殺し屋が、ニヤけてはいるもののコレまた時に実に冷酷な目付きをしてくるケーハクそうな青年殺し屋に遭遇して、銃撃戦の殺し合いの末に彼に組み伏せられてしまう!


 そして、彼いわく「お付き合いしてくれ」「デートしてくれ」とのたまう(笑)。


 そこで、女性側が安直に照れたりホダされてしまったならば、我々が愛好する美少女ラブコメアニメと同じになってしまう(汗)。しかし、このふたりのアリエない関係性はドーなってしまうのだ!? といったところで、視聴者の興味関心を喚起することには成功している。


 以降は、女殺し屋の周辺や仕事回りにまで出現してしまうストーカーまがいの行動と、女殺し屋側でも自身が所属する「殺し屋商会」側のヒトの善さ(笑)が滲み出た上司に事の真相を明かせずに、『ロミオとジュリエット』的な要素も織り交ぜながら、群像劇としても物語を紡いでいくのだ。


 もちろんリアルに考えたらば、ヒトの善い人間が上司を務めている「殺し屋商会」などもアリエない。一時的に恋情が成立したとしても、トータルでは壊れた人間たち同士の関係がハッピーで終わるワケもない。内心でも微量にソコにツッコミを入れつつも、絶妙なところで寸止めにされて、少なくとも劇中では両者の奇妙な「交流」――心情面での「交情」はウスいと思うけど(汗)――はギリギリで成立しており、劇中内での説得力が醸されることで、シラケたり飽きることなく観賞していられる。


 ……と云いたいけど、潔癖な方々が本作をそのインモラルさゆえに生理的にも受け付けられない! とした場合に、反論なり説得する言葉も持ち合わせていないけど(笑)。
殺し愛

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.82(22年5月8日発行))


『グレイプニル

(2020年春アニメ)
(20年8月11日脱稿)


 メガネの気弱そうな高校生男子クンが異形の化け物に変身して大活躍!


 30年前に竹熊健太郎センセイがマンガ『サルでも描けるまんが教室』(89年)で唱えた「イヤボーンの法則」。つまりは、敵によって窮地に追い込まれた少年少女が「イヤァ~~!」と叫ぶや、潜在意識の解放なり超常の力が関与して強化された身体能力や超能力が「ボ~~~ン!!」と発動されて、正当防衛の暴力(笑)をふるって相手をヤッつける! というパターンである。


 思春期の青年――特に弱者男子――にウケそうで、題材的には古典ともいえる……ハズだけど、昨今の心優しい日本男児たちにはウケないのやもしれない(汗)。


 などと既存のカテゴリーに当てはめたかったのだけれども、本作は変化球。メガネ男子くん自身がコミカルな犬の着ぐるみ状の化け物には変身するものの、バトルの主導権を握っているのは不敵でしなやかな長身を持った金髪セミロングの女子高生なのだ!


 少年の変身後である犬の着ぐるみの背中にはファスナーがあって(爆)、そこを開けて筋肉や内臓に囲まれた空隙に下着姿の少女が侵入! 粘液まみれ(汗)となって身体能力バツグンの少女が犬の着ぐるみを操縦して、敵が変身した化け物どもと戦ってみせる!


 ウ~ム、そう来たか。メンタルは繊細な弱者男子のままでも、特定の契約下で魅惑的で半裸な少女と同一空間にいることができるという少年心を突く設定。枯れてしまった筆者の中二マインドをも刺激する(笑)。


 そんなフェティシズムをツカミに、100枚を集めると強大な力を獲得できる「コイン」集めで、13人の仮面ライダーが殺し合う『仮面ライダー龍騎(りゅうき)』(02年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20021109/p1)や、7人の魔術師(マスター)なる地方都市の市民たちが古今東西の英雄豪傑を召喚して殺し合う『Fate/stay night(フェイト/ステイ・ナイト)』(06年)的なバトロワ要素も投入!
 山間に近くて緑も多い地方の町を舞台に、それまで不全感や不遇感を抱えてきた人物たちが「メダル」の力で異形の化け物と化して、時にいくつかのチームも結成しつつも「闘争」を、ドーしようもない性格異常者のようでも同情すべき「過去」や悪人にも「五分の魂」、「仲間想い」や「人望」がある場合なども点描しつつ、「バトルが即ドラマ」! といったノリで物語を展開していく。


 相対的には善人かつ弱者たちが集ったチームに属した主人公少年&ヒロイン少女。しかし、「弱者が即善人」だともかぎらない。往年の邦画『バトル・ロワイアル』(00年)同様に、自分からは積極的に攻撃せずとも、他人との争いを避けたい「弱さ」や「臆病」から来る「過度な警戒」が巡り合せ次第で、「人間不信」や「騒乱」や「悲劇」を惹起する逆説・皮肉までもが描かれて……。


 もちろん、動物や器物を模した異形の姿へと変身した化けもの同士のバトルを見ているだけでも面白い。しかし、不敵そうなヒロイン少女の親族にしては、実に控えめで気弱そうにも見える黒髪の姉(声・花澤香菜)が化けもの化して、ヒロインの両親を殺害したらしきことの真相! 少年の持っている記憶が旧知の友人たちの記憶とは異なっている不可思議! そういった要素もナゾ解きのタテ糸としていく……。


 てなワケで、実に面白い。けれども、原作未完だとはいえ「最終回」が大バトル! ではなくて、実に静かに「俺たちの戦いはコレからだ! ~つづく」的に終わるのはいかがなものなのか? 予算もありそうなアニメなのだから、たとえ「つづく」で終わっても、暫定オリジナルバトルなどで盛り上げて終わってくれないものなのか?(笑)


 ただし、トータルでの個人的な印象は良だ。『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』(13年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20150403/p1)のサブヒロイン・由比ヶ浜結衣(ゆいがはま・ゆい)チャンほか、妹系の快活キャラの印象が強くて、今では中堅の東山奈央(とうやま・なお)が、少年クンを試したりカラかったり誘ってもくるような、精神的にも上位な不敵な少女キャラを見事に演じているあたりも隔世の感であった。
グレイプニル

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.77(20年8月15日発行))


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  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20230312/p1

2020年夏アニメ評! 『宇崎ちゃんは遊びたい!』 ~オタクvsフェミニズム論争史を炎上作品のアニメ化から俯瞰する!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200802/p1

2020年冬アニメ評! 『映像研には手を出すな!』 ~イマイチ! 生産型オタサークルを描くも不発に思える私的理由

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200325/p1

2020~19年アニメ評! 『ダンベル何キロ持てる?』『推しが武道館いってくれたら死ぬ』 ~ファイルーズあい主演のアニメ2本評!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210418/p1

2020~19年アニメ評! 『私に天使が舞い降りた!』『うちのメイドがウザすぎる!』『となりの吸血鬼さん』 ~幼女萌えを百合だと云い募って偽装(笑)する3大美少女アニメ評!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20220710/p1

2019年春夏アニメ評! 『ノブナガ先生の幼な妻』『胡蝶綺 ~若き信長~』『織田シナモン信長』 ~信長の正妻・濃姫が登場するアニメ2本他! 『超可動ガール1/6』『女子かう生』

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210404/p1

2019年冬アニメ評! 『五等分の花嫁』『ドメスティックな彼女』 ~陰陽対極の恋愛劇! 少年マガジン連載漫画の同季アニメ化!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201018/p1

2019年冬アニメ評! 『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』 ~往時は人間味に欠ける脇役だった学級委員や優等生キャラの地位向上!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190912/p1

2018~19年アニメ評! 『女子高生の無駄づかい』『ちおちゃんの通学路』 ~カースト「中の下」の非・美少女が主役となれる時代!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200301/p1

2018年3大百合アニメ評! 『あさがおと加瀬さん。』『やがて君になる』『citrus(シトラス)』 ~細分化する百合とは何ぞや!?

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191208/p1

2018年春アニメ評! 『ヲタクに恋は難しい』 ~こんなのオタじゃない!? リア充オタの出現。オタの変質と解体(笑)

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200216/p1

2017年夏秋アニメ評! 『はじめてのギャル』『僕の彼女がマジメ過ぎるしょびっちな件』 ~オタの敵・ギャルやビッチのオタ向け作品での料理方法!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20201220/p1

2017年冬アニメ評! 『幼女戦記』 ~異世界近代での旧独vs連合国! 新自由主義者魔法少女vs信仰を強制する造物主!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20190304/p1

2015年秋アニメ評! 『ワンパンマン』 ~ヒーロー大集合世界における最強ヒーローの倦怠・無欲・メタ正義・人格力!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20190303/p1

2013年夏アニメ評! 『げんしけん二代目』 ~非モテの虚構への耽溺! 非コミュのオタはいかに生くべきか!?

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20160623/p1

2013年春アニメ評! 『惡の華』前日談「惡の蕾」ドラマCD ~深夜アニメ版の声優が演じるも、原作者が手掛けた前日談の逸品!

  https://katoku99.hatenablog.com/entry/20191006/p1

2008年秋アニメ評! 『鉄(くろがね)のラインバレル』 ~正義が大好きキャラ総登場ロボアニメ・最終回!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20090322/p1

2008年冬アニメ評! 『墓場鬼太郎

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080615/p1

2007年秋アニメ評! 『GR ジャイアントロボ』 ~現代風リメイク深夜アニメだが、オタク第1世代の東映特撮版への郷愁も喚起!

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20080323/p1

2007年春アニメ評! 『ゲゲゲの鬼太郎』2007年版

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20070715/p1

2005年春アニメ評! 『英国戀(こい)物語エマ』

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20051022/p1

2004年春アニメ評! 『鉄人28号』『花右京メイド隊』『美鳥の日々(みどりのひび)』『恋風(こいかぜ)』『天上天下

  http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20040407/p1



アニメ版『波よ聞いてくれ』評! ~純オタ向けとは異なる、漫画原作アニメの良作の数々!
#波よ聞いてくれ #イエスタデイをうたって #ハコヅメ #ぐらんぶる #この音とまれ #殺し愛 #グレイプニル



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