『慎重勇者~この勇者が俺TUEEEくせに慎重すぎる~』『超人高校生たちは異世界でも余裕で生き抜くようです!』『本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません』『私、能力は平均値でって言ったよね!』『旗揚!けものみち』 ~2019秋アニメ・異世界転移モノの奇抜作が大漁!
『王様ランキング』『現実主義勇者の王国再建記』『天才王子の赤字国家再生術』『八男って、それはないでしょう!』 ~封建制の範疇での王さま・王子さま・貴族による、理想の統治や国家・地方運営を描いたアニメ評!
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深夜アニメ『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』1期(21年)が再放送中で、2期が7月から放送開始記念! とカコつけて……。「ニートが異世界でチートで最強!」な西欧中世風・異世界ファンタジーの深夜アニメ『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』1期(21年)・『異世界おじさん』(22年)・『異世界(ファンタジー)美少女 受肉おじさんと』(22年)・『デスマーチからはじまる異世界狂想曲』(18年)・『神達に拾われた男』1期(20年)・『転生したらスライムだった件』1期(18年)評をアップ!
『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』『異世界おじさん』『異世界美少女 受肉おじさんと』『デスマーチからはじまる異世界狂想曲』『神達に拾われた男』『転生したらスライムだった件』 ~無職・引きこもり・ニート・社畜・性倒錯なオタの鬱屈・実存にも迫った異世界転生アニメ6作!
(文・T.SATO)
『無職転生 ~異世界行ったら本気だす~』1期
(2021年冬アニメ)
(2021年4月27日脱稿)
実にすばらしい作品タイトルである(笑)。
西欧中世ファンタジー風の異世界に勇者として転生して、平凡で冴えない日常を脱して大活躍! といった「ココではないドコか」に行きたいという願望それ自体は、ある程度までは万人にもある普遍的なモノである。
しかし、そーいったモノに特別に執着してしまうのは、やはり身体能力やコミュ力には恵まれておらず、クラスでもカースト底辺層にいた我々オタである(爆)。……といったような、作品のメインターゲットであるオタ=自分自身をも自嘲した言説がネット上のアニメ論壇で散見されるや、今の時代にソレらがウスめられて普及していくスピードは実に早い!
「ニートがチート(能力)で異世界で最強!」といった端的にして本質をも突いた流行語が、早々にオタ間の人口にも膾炙(かいしゃ)する。さらに、その言説の上に乗っかって、観る側&作る側も共犯的な確信犯で、ベタではなくネタとして作劇&消費もしだすのだ。
ただ、だから安易で自堕落だともいえない。そこに鋭い批評性が宿ることもある。本作などはその極北であり、ネタアニメではなく本格アニメですらあるのだ。
そして、身分制度が撤廃されてもなお残る、親の資産や教育にもよらない人間個体間での身体能力・ルックス・品性などの格差! それらについても実に示唆的である。
そう。生まれつきのスペック、持ち合わせのカードの多寡、あるいは級友にたまたまタチの悪い邪悪なイジメっ子がいるだけでも、個人のその後の人生は大変残念ながらも大幅に変わってしまうことも事実なのであった(汗)。
デブでも腕力があれば優位に立てるけど、仮に腕力があっても気持ちがやさしすぎて相手を殴れないような子であれば、醜く劣ったイジメてもよい者として標的にされてしまうものであろう。
屈辱・懊悩・人間不信・自己嫌悪・対人恐怖! それらが尾を引いて、進学はもちろん面接が必要な就職もできすに、雨戸を閉めた汚部屋の自室でオナニー三昧(汗)。家族も心配しながら持てあましてもしまう……。
親の葬式にも出てこれないことに怒った親族が金属バットを持って彼の自室に乱入! とっさに逃げ出した彼は偶然に見掛けた他人を救うために暴走トラックにハネられて死んでしまう!
お気の毒な人生だけど、最近でも家庭内暴力をふるっている息子さんを殺害した父親の事件などもつい想起してしまうであろう(汗)。
「老親」や「障害者」や「引きこもり」の介護や世話に、実地に使える方策すら示さずに、歯の浮くようなキレイごとしか云えない御仁は害悪ですらあると思う。
しかし、「社会が悪いからだ!」と赤の他人の第三者に対してニートが復讐殺人をしてしまう「罪」よりも、自身も刑務所覚悟で加害傾向があったニートの身内を殺害する「罪」の方が、情状酌量の余地ははるかにあるだろう。
そう。高スペックの少年に転生したあとの彼は、親族に放逐されたこと自体は恨んではいなかった。そして、的ハズれにも無差別に社会全般や一般ピープル、安倍ちゃん・トランプを憎んでいるワケでもない(笑)。
彼のトラウマは異世界に転生したあとでも敷地の外に出ようとするや、想起されてくる前世での真の加害者であった級友男女たちである。校内で全裸にされて、彼らが自宅門前に押しかけ罵声まで浴びせてきた屈辱&恐怖なのだった!
スクールカーストの拡大がまだきであった旧型オタ(オタク第1世代)間では一般的ではないやもしれないようだけど、
「『ニート』や『無職』や『引きこもり』と(オタクである)『自分』は近しい! あるいは、今まさに自分もそういった状況にある! 他人事ではなく感情移入もしてしまう!」
といったブッチャケた明け透けな発言が、巨大掲示板でOKとなってからでも早20年。
筆者も彼らに近しい「コミュ力弱者」である人間として、あるいは生まれる時代があと10年・20年遅くって、もっとカーストが拡大した時期に酷薄な学校生活を送っていたならば、さらに「ダメ意識」や「挫折感」を味あわされて、確実に「無職」か「引きこもり」になっていたであろう人間として、この主人公青年には感情移入をせずにはいられない(涙)。
前世の記憶を持ちながらも、赤ちゃんからヤリ直すことになった彼は、新たな母親の巨乳に興奮してメイドにイロ目も使っている(笑)。とはいえ、彼の奇行はその程度であって、男であれば誰にでも本能的に存在する程度のモノである。
特に邪悪でも利かん気でもなく元はスナオな善人であって、今度は中肉中背のやや美少年寄りのルックスに生まれついた主人公クンは、他人に疎(うと)まれたり蔑(さげす)まれるなどの悪意にさらされることもなくスクスクと育っていく。このあたり、良くも悪くも身もフタもないけれども、彼の本性や心根(こころね)は前世と同じであるのに、コレほどまでに大差が出ることには、個人的には絶大なるリアリティーを感じてならない。
幸福な家庭で育って、幼少(成人?)のみぎりで書物でも勉強して魔法の才能も開花する。ゆえに、美少女の家庭教師も付けてもらって能力増進! そして逆に、高貴な子女である赤髪ツンデレなロリ美少女の家庭教師として就任する一連のストーリー展開も実にていねいなので好感大なのだ。
なのだけど、勇気を持って自宅の敷地の外に出られて以降は、前世でのトラウマがあまり尾を引いていないあたりが、同季の深夜アニメ『蜘蛛ですが、なにか?』(21年)同様に少々残念でもあった。原作が仮にそうであってもそこは微改変・アレンジできないものかなぁ。
『異世界おじさん』
(2022年夏アニメ)
(2022年8月7日脱稿)
西暦2000年の17歳のときにトラックにハネられて昏睡状態。2017年の34歳のときにすっかり老けて真ん中分けのロン毛で眼鏡をかけてアゴに無精ヒゲが残ったムサいオジサンとなっていた彼は病室で突如として復活した!
お見舞いに出掛けていた甥である、やはり眼鏡の青年クンは、当のオジサンが「17年間も異世界にいて、いま帰ってきた」と発言したことで黙殺的な沈黙の対応をする(笑)。
が、しかし! オジサンはその証拠として指先から魔法を披露する!
本作は異世界転移ではなく異世界帰還モノ(?)で浦島太郎モノでもあったのだ!
ムチャクチャに面白い。
まず、オジサンは西暦2000年前後のオタである。対するに副主人公の甥っ子は2017年現在での20歳前後のオタである。同じオタではあっても、ほぼ20歳差ものジェネレーションギャップ!
もちろん、ブログやツイッターやYouTubeは知らない。スマホは今は亡きNECのワープロ・文豪ミニの進化版だとのたまう(笑)。
ゲーム機ではメーカー・SEGA(セガ)の大ファンだったというけど、2001年にSEGAがゲーム機から撤退したことを知って激甚なショックを受けている(爆)。
もちろん、オタク以外の一般人、あるいはオタクであってもゲームオタクではないオタク、そして今の若いオタクに自身が生まれたころや物心がつく前、あるいは彼らが幼いころであった西暦2000年前後のオタク文化や文物が実感としてわかっているワケもない。
しかし、そこは現今の文物を過去の文物だと間違って推測発言してみせたり、その間違いに実にオオゲサ・オーバーアクションで驚いてみせることで、設定説明とともにコテコテのギャグ演出としても絶妙にダブルで機能しているのだ。
そして始まるふたりの共同生活。ふたりはおじさんの魔法を「見せモノ」とすることで、YouTuber(ユーチューバー)となって生計を立てていこうとするのだ(笑)。
異世界で無双するのではなくって異世界からの帰還。現世ではまたダメダメな人生を再開して、ソコで視聴者の笑いを取っていく……。そのテがあったか!?
そして、聞かされる西欧中世ファンタジー風異世界での苦労談。その彼のややブサイクな容貌(汗)からオーク種族――異世界での人型の悪役戦闘員キャラなどに相当――と混同されて疎まれて襲撃されたりといった、実に悲惨な体験談の数々(汗)。
とはいえ、すでにそれ以前に本作がコメディーとしての世界観であることも確立しているので、それらのシャレにはならないような体験談も、ブラックユーモアとして笑えてくる位置付けとなっているのだ。
『異世界(ファンタジー)美少女 受肉おじさんと』
(2022年冬アニメ)
(2022年4月30日脱稿)
冴えない会社員の青年が異世界へと転生したら、金髪の美少女になっていた! いっしょに転生したイケメン青年くんの方は、その中身が友人だと知りつつも、見た目が美少女であることで恋情を抱きかねない自分を自覚(笑)。そして、その恋情(肉欲?)を抑制もしている……といった作品であった。
「受肉」という語句が漢字の組合せ的にもやや淫靡な響きがあるけど、天上世界の神々などが人間の肉体を持って顕現したり転生してくることを指している。しかし本作では、男性が美少女キャラとして異世界へと転生したことで、改めて俗化された方での淫靡な意味での響きも木霊(こだま)しだしている(笑)。
ブ男ゆえに他人や異性からも侮(あなど)られているので、美少女にでもなって、何もしないで受け身でもチヤホヤとされて自己愛も満たしてウットリとしてみたい。そうしたら他人とのコミュニケーションにも難なく踏み込めていけるだろうに……。
分析的には正しいけど、易(やす)きに流れた怠惰な気持ち。正直に云って、よくわかるのだ(爆)。
近年でも美少女ではないものの、喪男(もおとこ=モテない男)が美少年キャラに異世界転生して活躍する『無職転生 ~異世界行ったら本気だす』(21年)や『ナイツ&マジック』(17年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20200202/p1)などの前例もあった。
そーいった意味では、そのへんを敷衍(ふえん)したり掘り下げていけば面白い作品になりそうには思うのだ。しかし、そこは作者自身の半生における人間観・人生観などの深掘りの有無なのかなぁ。
そのあたりのモテ/非モテ的な機微がギャグでも会話の端々に「あるある」的な自己省察としても織り込まれていれば、ストーリーを超えた細部でもっと笑えてくるのだろうけど、個人的にはワンアイデアだけの出オチ作品だとしか思えない。
むろん、ノンテーマでもコテコテの性格設定を与えられた登場人物&状況シチュエーションを与えて、そこでお約束のリアクションギャグを連発させていくといった性格劇の手法もある。しかし、そっち方面での面白みが出せている感じではないようにも思うのだ――私見です(汗)――。
『デスマーチからはじまる異世界狂想曲』
(2018年冬アニメ)
(2018年4月27日脱稿)
ゲーム会社のアラサーの青年プログラマーが、土日の感覚もなくなって連日、中古ビルに陣取る会社へと出勤。ムクつけき同僚たちとパソコンのキーボードにバチバチとプログラムを打ち続けて、同時にメールや社内SNSなども確認。並行してバグ(プログラム・ミス)つぶしや顧客からのクレーム対策などの指示も出していく。
経験者が描いたのであろう、未経験者であっても「さもありなん」的なディテールに満ち満ちたリアルさ、地に足が着いたその業界特有の「あるある」だと思わせてくれる描写がキョーレツなツカミにもなっている。
頭身の低い萌え美少女社員ばかりが出てくるゲーム会社を描いていた深夜アニメ『NEW GAME!』(16年)とはエラい違いである(笑)。
とはいえ、「デスマーチ」と称されているけど「悲壮感」はナイのだ。それはパワハラやモラハラなどの「人格悪」が登場しないからでもあるだろう。
「長時間労働による過労死自殺」とは表層的な見方で、その実態は「他人に対する共感性」に乏しくて、生来から嗜虐的にふるまえてしまえるパワハラ上司や同僚に原因は尽きるワケである。
ここに昨今の「セクハラ騒ぎ」や「不倫騒動」なみに、経営陣というよりも直接的な「パワハラ上司」個人に対する法の裁き――業務上過失致死!――や、制度設計の次元にて「低劣な人格」に対する「道徳的な評価」などが手当てされないかぎりは、解決や再発防止にすらならないことであろう(以下略)。
#1のAパートで、視聴者をグッと引き込んだところで、主人公青年が寝落ちしてしまって目覚めると、高校生くらいの顔面&肉体に若返りしている! 各種のゲーム用の小窓画面なども順次、宙に浮かんできて、しかして肉体的痛みをも感じさせる全天球型・仮想現実ゲーム風(?)の異世界へと転生していたのだった!?
そして、「コレは夢だろう。夢でもネタになるからしっかり味わおう……」などと考えつつ、異世界を冒険していく展開ともなっていく。
よって、異世界召喚モノというより、もう15年以上も前の名作深夜アニメ『.hack(ドット・ハック)』(02年)シリーズに始まって、『ソードアート・オンライン』(12年)や『オーバーロード』(15年)などの仮想ゲーム世界を舞台にした作品にカテゴライズされる感もあるのだ。
ていねいな助走台を経て感情移入をさせた上で、ファンタジー風異世界へと引き込むので、序盤に対しては筆者も高く評価している。
荒野にはじまって、中世風都市に行き着いて、そこで遭遇する記号的な獣人美少女キャラたちにも、中世的な身分差別を重くならない程度に投影してアクセントも付けている。大きな破綻やナンちゃって感もなくて、実にていねいに作られてもいるのだ。と同時に、ケレン味には欠けており少々地味かもしれないけれども。
オッサンオタクとしては、ゲーム世界に閉じ込められる前の社畜生活のその後の方も気になってしまって(笑)、そのことが数話を経ても語られないあたりは引っかかってはしまう。ドーせならば、社畜生活と異世界を交互に描けばよかったとも思ってしまうのだけど……。
『神達に拾われた男』1期
(2020年秋アニメ)
(2021年1月21日脱稿)
アラフォーでオタクで一人暮らしのムサい中年プログラマーが頓死してしまったらば、西欧中世風異世界でオボコい美少年クンに転生して、しかもスペックも高かったという、2010年代以降のジャンル作品であれば既視感あふれるストーリーである。
とはいえ、前例があるからダメなのではない。それよりも語り口なのである。……と云いたいところだけど、その語り口を良しとするか否かがまた個人の好みなので、堂々巡りとなるのだけど。
で、スイマセン。序盤を観るかぎりでは、この毒がなさすぎる優しい世界が、筆者には合わないかもしれない(汗)。この作品の「AがBだから、Cである」といったようなロジカルな解題で、筆者を同意はさせないまでもナットクをさせてくれるような論考を読みたいなぁ(汗)。
『転生したらスライムだった件』1期
(2018年秋アニメ)
(2018年12月13日脱稿)
小説投稿サイト出自の深夜アニメである。
30代後半の独身男性が事故で死亡したら、異世界で英雄ならぬヌルヌルしたアメーバみたいな単細胞生物である可愛いスライムに輪廻転生してしまったという、手塚治虫大センセイの名作漫画『火の鳥 鳳凰篇』(69年)のような仏教哲理に満ち満ちた作品であった――ウソです。云い過ぎです(笑)――。
スライムに転生したものの、意識はあっても触覚以外の五感はナイ! という設定だったけど、目や口にあたるようなシワの動きで視聴者向けには喜怒哀楽を表現されている。
のちに、このスライムから小柄な美少女のような快活な美少年に進化していくようだ――設定的には中性・無性だそうだけど――。
はるけきむかしの30数年前(汗)の異世界転生ファンタジー作品であれば、「オタク」や「オジサン」ではない「フツーの青年」や「フツーの少年」が事故で死亡したら、異世界や遠宇宙に転生して英雄になるというのがパターンであった。
しかし、このテのフィクションを特別に好んで読んでしまう人種は、「フツー」ではなく現実世界でうまく生きられない「フツー以下」の人種であることを読み手自身も悟っている(爆)。
20世紀のうちには「自分はオタじゃない!」あるいは「オタもフツーの人間だ!」なぞとムダな抵抗を示してみせていたものだ(笑)。
しかし、2000年代初頭の巨大掲示板・2ちゃんねるにおいては、ごく初期における「互いにさわれば、激高して闘争してしまう時期」が過ぎてしまえば、「お前モナー」といったお互いの「相対化」や「非モテ論議」や「自虐芸」が隆盛してくる。
さらには、「『不器用さ』をカミングアウトして、しかもそれを『自虐ネタ』として笑いを取りに行ってもイイんだ!」といった風潮に変わってくるや、線路の転轍機(てんてつき)も切り替わっていった。
西暦2000年前後のラノベ原作の深夜アニメ『ブギーポップは笑わない』(00年)や『キノの旅』(03年)などの主人公少年たちは、意地悪でシニカル(冷笑的)に見てしまえば「コミュ力不足を隠すために寡黙無表情のポーカーフェースでクールに振る舞っている」といったツッコミも可能なのだ。
それが2ちゃんねる勃興以前の、「自虐芸」があまり普及はしていなかった、当時のオタクなりのかろうじての「理想」でもあり、目指すべきロールモデル(役回りモデル)・処世術であったのやもしれないのだ――個人的にはそれらの作品については「ビミョーにお高くとまりやがって……」と感じられて、少々鼻についてもいたけれど(笑)――。
しかし、00年代前中盤あたりから、自身のことを「『ニート』や『引きこもり』や『対人恐怖症』に『コミュ力弱者』や『ウツ病患者』である!」、あるいは「彼らとイコールそのものではなくても、自分は彼らとは近しいポジションにあって、ホームレスなども明日は我が身で、彼らにも親近感をいだいている!」といったことまで包み隠さすに認めるようにもなっていく。それすらも頭をポリポリと掻きながら「ピエロ」「道化」として饒舌にそういった内面トークをしつつも、メタ的な笑いへと持っていくようなラノベ主人公&我々キモオタ側の言動パターンが新たに隆盛するようにもなっていくのだ。
その一点においてのみ、オタクも確実に進歩しているとは思うし、90年代中盤のオタキング・岡田斗司夫(おかだ・としお)的な「オタク・エリート説」ではなくって、「自虐芸」こそがデフォルトになっている今のオタク連中の方が筆者個人はスキだけど……といった文脈の延長線上でも本作のことを捉えられればよかったのだけれども……。
ウ~ム。そーいった「自虐ネタ」はあまりなくって――ゼロではないけれども――、TVゲーム風の異世界で巨大ドラゴンだの大蛇だのガマガエルだのの異世界生物たちを体内に取り込むことで、その能力が使えるようになったり、ドンドンとスペックや能力をパワーアップもさせていく。
……ドーなんでしょうか? 展開があまりにストレートに行き過ぎてやしませんかネェ? いや、大スジではそーいう展開であってもイイけれども、細部においてはもう少しだけヒネってみせたり、試練や苦難があったりした果てに、それまでの展開との「段差」「落差」を作って、「達成」や「逆転」の「爽快感」をいや増していくということが、アリガチでも物語の普遍的な定石ではないのだろうか?
なにかあまりに苦労もせずに次々にパワーアップしていくあたりで、筆者個人の「物語美学」には合わないと思ってしまうのであった――本作を評価する方々には申し訳ございませんけれど――。
とはいえ、深夜アニメ放映開始効果もあろうけど、朝の情報番組での書籍ランキングで、本作原作ラノベの最新刊が第1位を獲得しているのを見たりすると……。こーいった「努力」を省いた「勝利」だけの作品が隆盛を極めていることもよぉくわかるのだ。
それとも、原作ラノベの方では、文体や語り口の魅力などでそのへんの欠点をカバーできていたりセルフ・ツッコミまでしている作品なのであろうか?――スイマセン、ガチの研究者ではナイので、そのあたりを改めて確認する気もナイのですけれど(汗)――
後日編註:
『神達に拾われた男』も同『2』(23年)が放映。『転スラ』はその後、2期(21年)が分割2クール形式で製作。劇場映画も公開(22年)。3期も来年2024年に放映予定だそうだ。自らの不明を恥じるばかりです(汗)。
『現実主義勇者の王国再建記』『八男って、それはないでしょう!』『天才王子の赤字国家再生術』『王様ランキング』 ~封建制の範疇での王さま・王子さま・貴族による、理想の統治や国家・地方運営を描いたアニメ評!
『超人高校生たちは異世界でも余裕で生き抜くようです!』『本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません』『私、能力は平均値でって言ったよね!』『旗揚!けものみち』『慎重勇者~この勇者が俺TUEEEくせに慎重すぎる~』 ~2019秋アニメ・異世界転移モノの奇抜作が大漁!
『くまクマ熊ベアー』『スライム倒して300年、知らないうちにレベルMAXになってました』『メルヘン・メドヘン』『金装のヴェルメイユ~崖っぷち魔術師は最強の厄災と魔法世界を突き進む~』『賢者の孫』『たとえばラストダンジョン前の村の少年が序盤の街で暮らすような物語』 ~オボコいライト・コミカル・マイルドな異世界ファンタジーにも相応の良さはある!?
『異世界かるてっと』 ~原典『幼女戦記』・『映画 この素晴らしい世界に祝福を!-紅伝説-』・『Re:ゼロから始める異世界生活 氷結の絆』・『盾の勇者の成り上がり』・『劇場版 幼女戦記』評 ~グローバリズムよりもインターナショナリズムであるべきだ!
https://katoku99.hatenablog.com/entry/20210912/p1