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【推しの子】(2期) ~「2.5次元舞台編」の秀逸さに思う『セクシー田中さん』問題。原作・他媒体でのアレンジ・ファン・外野の反響。どうあるべきであったのか!?

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 TVアニメ『【推しの子】』3期が製作決定記念! 『【推しの子】』実写ドラマ版が2024年11月28日からアマゾンプライムにて配信開始記念! 実写映画版も同年12月20日から公開記念! 舞台版も12月13日から公演開始記念! とカコつけて……。TVアニメ『【推しの子】』2期(24年)評をアップ!


『【推しの子】』(2期) ~「2.5次元舞台編」の秀逸さに思う『セクシー田中さん』問題。原作・他媒体でのアレンジ・ファン・外野の反響。どうあるべきであったのか!?

(文・T.SATO)
(2024年11月2日脱稿)


 「週刊ヤングジャンプ」連載マンガのTVアニメ化にして、昨2023年春季の覇権アニメ『【推しの子】』の待望の続編・2期である。タイトルに「推(お)し」という語句が入っていることからもわかるとおりで、「アイドル(歌手)を推す」といった、20世紀のむかしにはともかく21世紀以降に多用されるようになった「用法」からも察せられるだろうが、キービジュアルとして前面に押し出されている黒髪ロングの美少女からして、基本は一応は「アイドルアニメ」なのでもあった。


 しかし! 一部ネタバレさせてもらうけど、スキャンダラスにも隠れて妊娠・出産してしまって、あげくの果てに劇中からは退場してしまうのだ(爆)。出産された双子の男女。このふたりは前世の記憶を持って生まれ変わってきた存在でもある。しかも、ともに実に不幸な最期(さいご)を迎えてしまった御仁たちにして、このアイドル美少女を推してきた熱烈なファンたちでもあったのだ。「推し」=「アイドル美少女」の「子供」として、第二の人生を歩みはじめたふたり。前世の記憶を持っていることは隠したままで、赤ちゃん・幼児としても振るまいながら……。


 けれど! 別離の日が突然におとずれてしまう。絶望に叩き込まれてしまったふたり。果たして、彼らふたりの父親とは誰なのか? アイドル美少女を○○したのは誰なのか? そのナゾを探るためにも、このふたりは子役として、長じてからは一応の役者の端くれとして……つまりはアイドルではなかったりもするのだけど(汗)……、芸能界の片スミにて生き延びていくのだ……。


 とはいえ、そんな彼らも糊口を凌いでいくため、食べて生きていくためには、四六時中ルサンチンマン(怨念)にまみれているワケにもいかない。実業ではなく虚業の世界、衣食住などの生活必需品などではまるでない、良く云えば「文化的」な、悪く云えば「虚栄的」な、むかしの左翼風にいうと「プチ・ブルジョワ」的な世界、「資本主義的退廃」の世界(笑)で生きていくしかない。
 我々オタクも含めた庶民・大衆が、多少なりとも豊かになって1日中、井戸で水汲み運びや農作業などもしなくても済むようになったことで余暇もでき、科学技術の進歩とともに映画・TV・レンタルビデオ・ネット配信などといった媒体で大勢にも一斉観賞が可能になった時代ゆえに、そこにも少々の金銭を支払してみせることで、これらの芸能ごともまた企業・ビジネスとして成り立つことが可能になっていることも事実ではあるのだ。


 そして、我々のようなオタクもこういった大状況を笑えない。我々もまた戦後の消費文化の徒花(あだばな)そのものであって、奇形的な趣味的嗜好・人格形成をしてきた御仁たちでしかないからだ(汗)。加えて、日本のなかでは相対的にはビンボー人ではあっても、アフリカなどの最貧国に比すればまだまだブルジョワでしかないからだ。彼らに云わせれば、「恵まれている」「オマエらこそが(為替レートで)我々から搾取してきたブルジョワだ」「イイ気なモンだよな」と毒づいていることでもあろうから……。
 高度経済成長期の日本の左翼連中は相対的に豊かになっていく自分たちに、罪悪感・後ろめたさ・申し訳なさを感じてもいた。そして、抑圧・貧困にさらされているパレスチナの民などに連帯感を示して、イスラエルのテルアビブ空港でマシンガンを乱射して民間人多数を射殺してしまったりもしていた……(汗)。
 それが今では、休日の家族旅行・スポーツ体験・習い事の有無といった「相対的貧困ガー」「体験格差ガー」などといったところで、実に不毛で些末な階級闘争を繰り広げるしかなくなってもいるのだ(爆)。家族旅行よりも読書やゲームやインドア趣味などに邁進したい子供。スポーツが苦手でそれをしたくない子供。少数派なのやもしれないけど、そういった子供もいるだろうに、そこは眼中にはナイらしい。その逆に、受験戦争を批判しておいたソバから、習い事・塾通いの欠如を問題視もしてしまうといったダブルスダンダードまでをも! 日本の左翼も堕落したものである(汗)。日本の左翼が真に戦うべきなのは、そういったミクロなことではなく、実に粗雑なくくりに満足するのでもなくって……(以下略・笑)。



 本作1期の後半においては、今は亡き母親の遺伝子をメンタル面ではまったく受け継がずともルックス面では受け継いで美男美女となってしまった「推しの子」たちが、早くも高校生年齢に達してしまってもいた。そして、幼少期に共演した実に自信過剰であった有名子役少女が、今ではマイナーなVシネマや低予算ネット配信作品にて、周囲の演技レベルが低いモデルやアイドル歌手上がりのそれに合わせて気配り・心配りのヒトになっていたことも、同時に鬱々とした不全感を抱えていることも知る。そして、シナリオが秀逸ではあっても映像化の際の演出&演技にてダメになってしまうというパターン、その逆にシナリオがイマイチでも演出・演技にて局所的に観客を惹きつけて盛り上がりも作れてヒトの心を動かすこともマレにはあることをも知っていく……。


 本作の2期では、ここ20年ほども隆盛を極めているマンガやアニメなどをナマ身のイケメン役者たちに演じさせる、いわゆる「2.5次元」演劇が主要素材ともなっていた。実にマジメな役者もいれば、遊び人で役作りなどはしてはいないのに本能的な直感だけで器用に演じてみせてしまう役者、先の低予算ネット配信作品ではブザマな演技を披露したモデル上がりのダメンズの悔しさ・後悔から来る自身の過去へのリベンジとしての精進劇、集団恋愛リアリティーショー番組出演にて悪女役を演じて誹謗中傷にもあって発作的に自死を選びそうになってしまった新進の10代の役者女子、周囲の演技力の高さに影響されて遂にリミッターを解き放ってみせた先の有名子役少女崩れ、そしてそこに役者でありながらも俯瞰的に状況を観ながら関わってもいく「推しの子」たち……。



 さらにそこに、この2.5次元舞台の男性「脚本家」と、原作マンガの女子「原作者」との角逐もカラめて多層的・重層的にも作品はつむがれていくのでもあった……。こう記してしまうと、本稿執筆時点の今年早々の出来事でもあった2024年1月末に勃発した、マンガ『セクシー田中さん』(17年)を昨秋に深夜ドラマ化した際の同様の角逐劇などを誰もが想起してしまったことではあろう。
 しかし、斯界(しかい)でも云われているとおりで、あの事件が起きる前にこの原作マンガ『【推しの子】』の「2.5次元舞台編」はすでに発表されていたのだ。まったくの無関係の偶然でもあったのだ。けれども、それゆえに実にタイムリーな題材になってしまったこともまた事実ではあるのだ。
 そういえば、アマチュア同人ノベル(小説)ゲーム作りに邁進する高校生オタクサークルを描いたライトノベル原作のラブコメ深夜アニメ『冴えない彼女(ヒロイン)の育てかた』(15年)の2期(17年)においても、業界の大手女性作家は自作がアニメ化された際の不本意によって、今後に自作のアニメ化事業なども完全に自身のコントロール下に置くためにも、イイ意味での自身のブランド化や権威化を目指して発奮している姿が描かれてもいたものだ。その意味でも「業界あるある」ネタではあったのではあろう。


 原作者の立場に立てば、基本的にはそのとおりではある。しかし、個人的には複雑な矛盾した想いも残るのだ。原作者にはキラわれてしまっても観客には愛されている作品もまたあるハズだからだ。原作者の意向を至上のものとされてしまうと、筆者のようなオッサン世代がどちらかというとひんぱんに繰り返されていた再放送で愛好していた、本来は日曜夜の「世界名作劇場」ワクにて本放映がなされていた1969年版と1972年版のTVアニメ『ムーミン』(69年)などは永遠に解禁ができない。原作小説とは人物の性格設定からして異なる名作TV時代劇『必殺仕掛人』(72年)なども原作小説家の池波正太郎(いけなみ・しょうたろう)センセイからは憎まれてもいたのだ(汗)。それらと比すれば、アレンジにも寛容であることを公言しているマンガ家・永井豪センセイなどは、イイ歳こいていまだに子供のようにあどけないけど(笑)、そういった一点においては心が広くてオトナではある。


 社会・実業の世界に出て働いたことはなく、自身の意見を発声・発話することにすら慣れてもいない、マンガ(の形式にて作品世界&人物&物語)を描くことしかできなくて、自分でも社会不適合者・コミュ力弱者であることを大いに自覚して劣等感どころか大きな不安をさえ抱いてすらいる、大人気マンガ家ではある若手チビ女子が、この2.5次元舞台の「原作者」としても登場していた。
 彼女は2.5次元舞台のシナリオの細部に修正指示を入れつづける。しかしそれは、出版社のサブ担当編集者 → 担当編集者 → ライツ(版権窓口事業部) → 製作(プロデューサー) → 脚本家のマネージャー → 脚本家……といった経路をたどってもいく。そして、各人の一応の善意によって、カドが立つようであればその表現はマイルド化されて、あるいは役者陣の練習期間を確保するためのスケジュール確保の意向で、もしくは単なる伝言ゲーム的にもズレていくのであった(汗)。そして、原作者センセイたるチビ女子の怒りが大爆発! 舞台の稽古も中断となってしまうのだ……。


 この作品においては、深夜ドラマ『セクシー田中さん』をめぐってのネット論壇における、「『原作者』こそが至上の『絶対正義』であって、『脚本家』やTVドラマ側のスタッフの方は『絶対悪』である!」なぞといった「赤勝て、白勝て」レベルの幼稚な勧善懲悪の2元論にはおちいってはないのだ。とはいえ、ヒフティー・ヒフティーでもない。6対4や7対3といった偏差はある。けれども、それにしたってどちらにも相応の「理」はあるのだ。しかし、それであっても「齟齬」が生じてしまう姿を描いたうえでなお、片方を階級闘争・武力革命的に攻撃・撃滅・抹殺して悦に入るのではなく、和解や暫定的な妥協を、そしてあわよくば「正」「反」を経過したうえでの「合」に到達しようとする姿までもが描かれてもいくのであった……。


 とはいえ、死者にムチ打つのは大変に申し訳ないのだけれども、『セクシー田中さん』の原作者センセイが自死を図ってしまったのは、やはりよろしくはなかったのでは? とも筆者個人は考えてもいる。世評では陰謀論的にTV局側からの圧力で……なぞと語られてもいるが、筆者個人もまた特に証拠もなくエスパーでもないのに勝手な憶測を述べさせてもらうのだけれども、原作者センセイは悪い意味で気持ちが優しすぎるヒトではあったとも思うのだ。
 つまり、TVドラマ版に対しての自身の不満の表明によって、一挙にネット世論が反転・沸騰してしまって、特にTVドラマ版の脚本家に対するバッシングが猖獗(しょうけつ)を極めてしまったことに対してすら、「それでは意味合いが逆転してしまう! 自身の方が強者・権力者になってしまって、TVドラマ側の脚本家側の方が悪役・弱者になってしまう!」とばかりに恐れおののき、なおかつこれでは結果的に自身の方が強権を振るってもいる、いわば「権力悪」にもなってしまったことを恥じたのではなかったか? ……筆者もとい、我々のようなウス汚れた凡俗であれば、内心では自身が優勢になってしまったことに対して、ひそかに悦に浸ってしまったところでもあったのだが(爆)……。


 そしてここからが、ある意味では良くも悪くも古風で「武士道」的なのだけれども……といっても、戦国時代の殺人技術としての「武士道」ではなく、西欧の「騎士道」とも同様に、鉄製の刀も抜いたことがなくって中身は竹光(笑)を差していた江戸時代後期の単なる「気の持ちよう」としての精神論・道徳論と化してしまった「武士道」の方である(汗)……、そういった政敵こそが苦境におちいってしまった状況に対して、今度は大いに責任を感じて心も痛めてしまって、あるいは自身もTVドラマ側のスタッフともまた別種の「罪」を犯してしまったとも感じてしまったのではなかろうか?
 そして、そのような事態に対する責任の取り方として、ハラキリ・切腹的に自死を選んでしまったのではなかろうか?……まぁ、死をもって罪をつぐなうのは別に日本特有のことではなく、実はどこの世界にでもあって、自殺が宗教的な悪だとされている社会であってさえも、古今東西あることなのだけど……


 その意味では、時系列上の発端としての原因はともかく、直近にて背中を押してしまった事象はTVドラマ版の脚本家を「絶対悪」視してしまったネット民にある! ともいえなくはないのだ(汗)。……とはいえ、それではネット民が「悪」であったのかといえば……、そんなに単純なこともまたいえないのだ。彼らの行為は殺人・強盗・粗暴犯としてのそれではまったくない。一定の正義感には基づいた言動ではあったからだ。よって、これらを単純に抑圧・禁止にすればイイともいえない。こういった意見の表明がゼロといわずとも、あまりに極少になってしまってもイケナイとは思うからなのだ。


 しかし、論理的にはたとえ同種の主張ではあっても、それらが数千・数万人ものボリュームともなると、多数派による過度なヤリ過ぎの「圧力」「権力」「暴力」にも見えてきてしまうといった逆説・パラドックスもあるのだ。


 けれども、これもまた結果論に過ぎない(汗)。いちいち、SNSやYAHOOニュースコメントや世界各国のオリンピック選手に直接に意見具申をする奇特な人間なぞは、どこの国であっても数万人にひとりであるといった推測もなされているからなのだ。しかして、単純計算では「分母が1億人」ともなるので、たとえ数万人にひとりの0.01%程度の比率の存在ではあっても、数千・数万ものコメントには昇っていくのでもあった。


 ……とはいえ、人間ひとりが死んでしまったことを軽視する気は決して毛頭ないものの、ウクライナガザ地区で起きている事象と比すれば、やはり些事には過ぎなくって(汗)、こんなことが論争の議題になるだなんて、日本や先進各国にも社会問題はもちろんあっても、まだまだ平和だな、といった相対化も可能ではあるのだけれども。



 加えて、原作者センセイが自死を選んだこともまた、たとえそのつもりは毛頭なかったのだとしても、ネット民たちの所業以上に、TVドラマ側の脚本家に対しては生涯、癒えない大きなスティグマ・キズを背負わせてしまった行為ですらあるのだ。当人にとっては生命を賭しての相手に対して迷惑をかけたことに対しての責任を取ったつもりではあったのだとしても(?)、それもまた相手にとってはあまりにも大きすぎる負担にもなってしまうからなのだ……。そこまで先読みして事態を思い至れなかったものなのであろうか? それもまた積極的な「罪」ではなくても、広義での消極的な「罪」にはなってしまうのではなかろうか?(汗)


 よって、やはりそこはこらえて、正邪だけでも割り切れない猥雑な世界で、汚濁にまみれながら地ベタを這いずりまわって、自身もまた原罪を抱えた存在だとして、キリストが売春婦であるマグダラのマリアを許してみせたように、他人の少々の悪事や自己の失態に対しても寛容に対処して生きていってほしかったとは思うのだけれども……。



 もちろん、過程においては「苦難」に見舞われても、最終的には(安直ではない)広義での「ハッピーエンド」に持っていくのが、エンタメ・フィクションの基本ではある。アンハッピーエンドにしたことで「社会派」ぶってみせるような、中二病的なマニア作劇やマニア評論などもあるのであろうが、それこそがまさに作劇的な技巧などもさして要らない、最も安直な手法ですらあったりもするのだ。


 本作においては、そこにて実に多彩でていねいなイイ意味での段取りを重ねていって、作品を構築してもいく。
 たしかにドラマツルギーの根本そのものは普遍的なものではある。しかし、静止画の羅列としての「マンガ媒体」と、イイ意味でのマンガ・アニメ・記号的な扮装に身を包んではいたのだとしてもその「舞台媒体」とでは、細部においては適切なる表現方法もじゃっかん異なってはくるものなのだ。


 そして、ピアノ線での吊りの多用や、背景の銀幕へのハイセンスな映像投影、舞台&広大なる観客席それ全体が円形に回転することによっても背景舞台装置を多数用意することが可能ともなっている、もはや「学芸会」や旧来の「演劇」レベルとも隔絶した高次元にて存在している「超近代的な演劇」とも化している「2.5次元舞台」の特性!


 加えて、若手とはいえプロの役者陣による熱演は、たたずまい・目配せ・舞台上での立ち位置・ちょっとした挙動・口調・表情変化などによって、原作マンガにはあった説明セリフなぞには頼らずとも、時には無言であってさえも、身体や精神の強さ・気高さ・悪どさ、外ヅラとは異なる本心や迷い……といった多重的な意味合いをも含意ができることをも知っていく。それをも知ったことで、原作者センセイも原作マンガにはあったセリフをガシガシと削ってもいき、若手役者たちの全身演技によるそれらの表出をも企図したシナリオを、脚本家センセイとのコラボによって構築してもいくのだ!


 はたまた、幾度もの舞台公演での小さなアクシデント! イイ意味での説明セリフが効果音とカブって聞きにくくなったと判断すれば、機転を利かせたアドリブで後続の別のセリフのなかにそれらをダメ押しの「大事なことだから二度云いました」的に混入させることによっても、観客の作品世界への理解を助けて腰の据わりをよくしてもみせる! 時に小さなアドリブも入れてみせることで局所的には演者同士が演技合戦を、しかして作品世界を壊さずに、どころかより深くもしていく方向性にて混入してみせもするのだ!



 もちろん、演劇や映像作品においては「原作」が、あるいはオリジナル作品の場合には「脚本」が、それらの基本中の基本ではある。そこに間違いはない。そこはおろそかにしてはイケナイ。キッチリと構築しておくべきものではある。
 しかし、それだけでも決定されない。シナリオが優れていても、演出や演者の不首尾によって駄作に見えている場合もあるからだ。あるいは、後付けの演出や演技によっても多重的な意味を持たされて、脚本の意図をも超えて作品テーマが深くなったり多重的になったり盛り上がっていたりもする場合があるからだ。


 むろん、外野からはその切り分けの判断はムズカしい。しかし、憶測ではあっても、ここでは脚本が、ここでは演出が、ここでは演技者の演技が、作品を持ち上げているのだと感じれられる場合もあるからなのだ。


 もちろん、そんなことを小ムズカしく考えながら作品鑑賞をする義理も道理もない。そういったことを考えもせずに無心で楽しんでいるトーシロさんや子供たちに押しつけてもイケナイとは思うのだ。


 しかし、それらも重々承知のうえでなお、そういったことが気になってしまったり気付いてもしまうような御仁たちが集った、批評・感想オタクたちの世界では、そうしたことをも言語化して同好の士たちと共感し合ったり反発し合ったりもして、世界の大局から観ればムダで無意味で資本主義的ブルジョワ的な退廃ではあったとしても、たとえ世界同時革命エコロジー運動には参加しない保守反動・反革命の輩だとして粛清(死刑)のターゲットにはされようとも、この世界の片スミにて今後とも(同人誌即売会のときにだけ・笑)、戯(たわむ)れていきたい所存なのでもあった……。


(了)
(初出・オールジャンル同人誌『DEATH-VOLT』VOL.95(24年11月16日発行予定))


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