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わたしの幸せな結婚・大正オトメ御伽話 ~政治的に正しくない女性。それは先天的か? 後天的か? 先天的に弱く生まれついたとして、いかに生くべきか!?

(2025年6月18日(水)UP)
『スキップとローファー』『私の百合はお仕事です!』『事情を知らない転校生がグイグイくる。』 ~地味でも世に出る女子! 地味ゆえに内向してしまう女子! 3大快作に見る、ちょっとした本人の資質&周囲の人間の品位で生じる大差!
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 深夜アニメ『わたしの幸せな結婚』(23年)の第2期が、2025年1月~3月期に放映記念! と今さらながらにカコつけて……。深夜アニメ『わたしの幸せな結婚』1期(23年)・『大正オトメ御伽話(おとぎばなし)』(21年)評をアップ!


『わたしの幸せな結婚』『大正オトメ御伽話』 ~政治的に正しくない女性。それは先天的か? 後天的か? 先天的に弱く生まれついたとして、いかに生くべきか!?

(文・T.SATO)

『わたしの幸せな結婚』

(2023年夏アニメ)
(2023年8月6日脱稿)


 廊下や畳で正座をしてうやうやしく振る舞うような儚げな女性を描いた、なんとも美麗な作品。そして、明治・大正期を舞台としたのであろう作品世界。


 ……などと記すと、「日本スゴい!」という作品なのだと勘違いする御仁もいそうではある(笑)。しかし実際には、古き悪しき封建制度・イエ制度・丁稚奉公制度の桎梏に満ち満ちた息苦しい世界を延々と批判的に、しかし静かに描くことで、そこからの脱出をも描いていく作品なのであった。


 とはいえ、嫁VS姑なり姉VS妹との対立関係も、個人VS個人のパーソナリティーの要素が強いのであって、絵に描いたような図式なことなどは云えない。
 有名なところでは坂本龍馬の姉で気も強かった乙女姉さんは、(彼女から見て)頼りない旦那さんとは気が合わなくて、実家に帰ってきてしまったという実に有名な逸話もあったりする(笑)。


 しかし、逆説的なことに、西欧中世ファンタジー風異世界モノなども同様なのだけど、ナンでもアリは最小限にとどめて、適度に「制限ルール」があった方が、政治的には正しくなくても、そこでの奮闘や工夫を描いていくことで、「物語」としては実に劇的で面白くもなっていくのだ。


 本作の#1では、日本の地方とおぼしき旧家(きゅうか)を舞台に、良家の両親&娘が、主人公の女子を小間使い・下働きとして邪険に扱って、炊事・家事・洗濯・掃除などに延々とコキ使っている光景が描かれていく。今風に云うとパワハラ・モラハラの数々なのである(汗)。
 しかし、そもそもの性格からして押しが強くなかったのであろう彼女は、反発することもなく何をされても堪え忍んではいる。


 そんな彼女にも妙齢であるからには、心の中に良きヒトとして想う男性がいた。ところが! その男性がこの良家の娘と結婚して婿養子となることが決まってしまうのであった!(爆)


 彼女の気持ちを知っていた娘は見せびらかすようにして、そのことを勝ち誇るような嗜虐的な態度すら取ってもいる。なんという意地悪で実に残酷な展開であることか! しかし、作家たる者はこうでなければイケナイのだ(汗)。


 そして、彼女は厄介払いのごとく、冷酷とウワサされている名家の御曹司の婚約者として追い払われてしまう。汽車を乗り継いでたどり着いた先の田園の旧家は意外にも質素な家屋。そこに住まっていた冷徹でも美貌の青年は……といったところで、やはりルッキズムな女子向けファンタジーなのでもあった(爆)。


 ……などといった批判をする資格は、男性オタクにかぎらず、一般男性の側にもない(笑)。この点では、男の側も女の側もイーブンではあって、つまりは「ルッキズム」を根源・原理の次元で根絶することなどできはしないのだ。緩和がせいぜいといったところであろう。



 とはいえ、意外にも冷酷な婚約者からの厚遇を得てしまった彼女。そして、もともとの異性や世間に対する要求水準も低いので、彼女は小さなことにも喜びや感謝をしていくのだ。


 いわゆる人間力・コミュ力には乏しければ、マジメさを認めてもらうくらいしかない。転じて、庇護してもらうしかない。悪く云えば「奴隷根性」なのだけれども、弱者のそういった「生存戦略」を完全否定してしまってもイイものなのか?


 能力的にも性格的にもそのようにしか生きられないのであれば、それを「罪」だとするのも要求基準が高すぎる。仮に「罪」でも、一流の生き方ではなかったとしても、タテマエとしては「近代的で平等な一個人」として、「蔑視」ではなく最低限の「敬意」を持って遇するべきではあるだろう。


 とはいえ、テイストとしてはもっとはるかに漫画チックではあったものの、同じく大正時代を舞台として、不具となってしまった息子の身の回りの世話をさせるために、カネで買われた嫁としてイタイケで健気な少女が送りこまれてくる『大正オトメ御伽話』(21年)などにも通じているものがある。


 これらの作品を観て、「男性にひたすらに貞淑に尽くしてみせる女性を称揚する、男尊女卑の作品だ!」といった批判があってもイイだろう(笑)。


 しかし、実際にはその実態は、すでに滅びてしまった因習の時代を、遠巻きに眺めて奇獣珍獣を安全圏から玩物のように他人事のように観察しているようなガラス越しの距離感でしかない。それだけ明治・大正も遠くなって、もはやシェイクスピアのような時代劇・史劇の世界になってしまったといったところだろう。



 ……エッ!? このあと、「異能バトルもの」になるの!?(笑)


 ググってみると、本作もまた小説投稿サイト出自の作品なのであった。
わたしの幸せな結婚
わたしの幸せな結婚 BD シーズン1~2 TV全話+実写映画【未開封】

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.86(23年8月12日発行))


『大正オトメ御伽話(おとぎばなし)』

(2021年秋アニメ)
(2022年4月30日脱稿)


 富裕層で大邸宅も構える御曹司(次男)のお坊ちゃんではあるものの、増長はしておらずに、むしろ控えめにして厭世的といった青年クンが主人公であった。


 交通事故により「実母」と「利き腕の自由」を失ったことで、父親からはもう役に立たない者として、都心から千葉の田舎の別荘へと追いやられてしまう。


 そこに父親が彼の身の回りの世話をさせるために、カネで買われた嫁としてイタイケで健気な少女を送りこんできた……といった作品である。


 このフェミニズム全盛のご時世で、舞台が大正時代だとはいえ、男性にひたすらに貞淑に尽くしてみせる女性をヒロインに据えてみせた蛮勇には驚く――エッ!? そんな文脈は微塵たりとも気にせずに作った作品だってか!?(笑)――


 とはいえ、本作の貞淑なヒロインは別に時代に洗脳されてしまっていたワケでもなく、性格的にも技能的にもそのようにしか生きられないといったところだろう――むろん、イジワルに見てしまえば、そこには弱者少女なりの無意識的な生存戦略もあっただろう――。


 ただし、このヒロインを相対化するためにか、主人公青年の「妹」も家出の宿泊先として主人公宅に闖入させることで、作品世界やそこに登場する人間像の幅も拡げてはいる。人間一般の「プチ悪意」をも体現したかのような、性格に少しのキツさもある「妹」が登場してきて、悪態も尽きまくることで、ドラマに起伏ももたらしてはいるのだ。


 しかし、ワリとアッサリとこの性格も良いメインヒロインのことを認めてしまったどころか、軍門に降ってしまって、崇拝(笑)までするようになってしまうあたりについてはいかがか? とは思ったものの、コレもコレでアリではあろう。


 明治時代の前半のガムシャラな「登り坂」の時代も一段落がついて、社会のかたちがある程度までは定まって「安定」してしまうと、「イス取りゲーム」的に「パイ」の取り分が「ゼロサム」(ゼロ合計)で限定されてくるので、後続世代が社会の中核に割り込んで上昇していく「隙」も減ってしまうものである。


 そのことで、明治後期の若者たちには不全感・不如意感・アノミー(無秩序感)が生じており、それがまた夏目漱石が描いたような、在野で文学趣味などに傾倒したり、ニートとしてブラブラとする高等遊民などにも帰結していくワケである。


 そして、大正を超えて昭和初頭になるや「ぼんやりした不安」で、芥川龍之介のように自殺する輩まで現れてしまうのでもあった(爆)。


 本作の主人公青年も云ってしまえば、広義ではこの高等遊民にカテゴライズができるだろう。そして、往時は富裕層だけに生じていた現象ではあったものの、戦後の高度大衆消費社会化による小(プチ)・ブルジョワ化によって、そういった現象が一般庶民レベルでも生じてきたのが、我々のようにサブカルチャーな趣味ごときにアイデンティティーを強く持ってしまったオタクたちであったともいえよう。


 後出しジャンケンで思うに、我々は消費文化の徒花(あだばな)でしかなかったし、奇形的に自我を肥大させて人格形成してきた異形(いぎょう)の者たちの正統後継者でもあったのだ!?(笑)
大正オトメ御伽話
大正オトメ御伽話

(了)
(初出・オールジャンル同人誌『SHOUT!』VOL.82(22年5月8日発行))


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