(2025年6月28日(土)UP)
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マンガ原作の深夜アニメ『見える子ちゃん』が実写映画化で2025年6月6日(金)から公開中記念! とカコつけて……。怪奇系の3大深夜アニメ『見える子ちゃん』1期(21年)・『さんかく窓の外側は夜』(21年)・『怪異と乙女と神隠し』(24年)評をアップ!
『見える子ちゃん』『さんかく窓の外側は夜』『怪異と乙女と神隠し』 ~意匠は怪奇系アニメで括れても、各々の内実はギャグ・BL・作家の挫折などの方が本質か!?
(文・T.SATO)
『見える子ちゃん』
(2021年秋アニメ)
(2021年12月25日脱稿)
黒髪ロングのややアンニュイな美少女・女子高生が主人公。
美少女だけど、眼の下にややクマがあるようでも寸止めでクマではないあたりも絶妙デザイン。そして、多彩な声を出せる中堅アイドル声優・雨宮天(あまみや・そら)ちゃんによるキャピキャピはしていない常識人としての演技プランが見事にハマっている。
いわゆる波瀾万丈の奇怪な事件やストーリーが各話にあるワケではない。
物陰や路地や押し入れや布団の中(爆)、時には街中でも歩いている化け物じみた悪霊というか不成仏霊が見えるようになってしまった彼女だが、ビックリしてもキーキーキャーキャーとは騒がない。
それは彼女の理知的な性格もさることながら、見えていると悪霊たちに認識されてしまえば、自分に付きまとってくると直観しているからだ。
かくして、彼女には悪霊が見えているけど、内心ではガクブルでも心を鬼にして見えていないフリをするために、ワザとらしい独り言を吐いたり、別の用事があるフリをしたり、親友の天真爛漫巨乳女子高生ともガールズトークにいそしむのだが、この悪霊との丁々発止(?)がギャグとして成立しているのだ(笑)。
毎回がそーいう話なのだが、まったく飽きさせない。それはセンスゆえだと云ってしまえば、それまでなのだけど。

TVアニメ「見える子ちゃん」メインテーマCD
『さんかく窓の外側は夜』
(2021年秋アニメ)
(2021年12月25日脱稿)
2021年秋季には「悪霊が見えてしまう」という題材でのアニメが2本も登場。
『見える子ちゃん』は美少女を愛でつつも「ギャグアニメ」であったという整理ができるけど、本作はBL(ボーイズ・ラブ)アニメだとの整理もできる。
こうして比較すると、「悪霊が見える」というお題は作品の本質ではなく、「ギャグ」だの「BL」だのの方が作品の本質であることにも気付かされる。
幼いころから霊が見えてしまうことで悩んでいる、長身痩身メガネで少々弱気・受け身・神経質そうでもある書店員の青年クン。
それを見抜いて現れた、やや不敵な金髪のイケメン青年が彼を強引にスカウト。除霊師でもある彼は書店員クンを助手としてしまう。
事故物件(死亡事件があった土地や住居)の鑑定人でもあり、内々に警察からも依頼がある彼と書店員クンとのコンビで、彼らはあまたの除霊業務に従事して、未解決事件を解決したり不成仏霊を浄化したりしていく……。
といったあたりが外形的なストーリーで、そこも充分に面白いのだが、美男ふたりが顔や体を近づけたり、攻め×受けの関係になったり、ドライな関係のようでも他の男との会話を目撃するや、嫉妬心&独占欲が湧いてきてしまうような心情や、それに伴なう言動。
女性キャラによるリア充な「異性愛」だと疎外感を味わってしまうけど、男性同士の「同性愛」だと適度な距離感&ファンタジーにもなって、安心して自身の性的欲望を仮託ができて非モテな腐女子のハートも掴むのであろう(!?)。
といったような整理をしたかったのだけれども、現実世界でも異性をゲットできてしまえる両刀使いの腐女子も多いという話もあるので、そう単純に整理してもイケナイのだ(汗)。
「BLテイスト」しかないような作品と比すれば、本作における各話はバディ(相棒)モノの事件解決話でもあるので、野郎オタクでも観られる、一般層でも鑑賞にも耐えうる作品ではあるのだが、そうは云っても野郎オタクが本作を視聴対象にすることもないのであろうけど(汗)。

「さんかく窓の外側は夜」ドラマCD4
『怪異と乙女と神隠し』
(2024年春アニメ)
(2024年8月5日脱稿)
商店街の閑散とした書店。そこでは姉御っぽいデカ女と小柄でもサバけた少年クンがバイト店員を務めている。あまりにヒマなので、両者は静かにカラカい・言葉遊び的なムダ話もしてしまう。この導入部からして引き込まれる。
けれど、初老の店長さんいわく、この少年クンはデカ女バイト店員以外の同僚とは会話をしていないのだともいう。
長年のキモオタとしては既視感も覚えてしまうシーンでもある。引きこもりの中学生少年が、生きている少女人形同士のバトルロイヤルに巻き込まれていく深夜アニメ『ローゼンメイデン』(04年)……そのものではなく(笑)、バトルロイヤルに巻き込まれなかった分岐並行宇宙を舞台とした『ローゼンメイデン(新)』(13年)の方だ。
引きこもりからは脱して「大検」で大学生にはなったものの、やはり周囲とはなじめずに鬱々として、商店街の書店でバイトにいそしむ主人公青年の姿である。奇しくも両作とも、マニア上がりで80年代の魔法少女ものアニメ以来の大ベテラン・望月智充(もちづき・ともみ)が関わっていた。
本作『怪異と乙女と神隠し』のビジュアル的な看板は姉御っぽいデカ女の方で、バストもヒップもLLサイズのグラマーで、80年代までの戦闘美少女の時代ならばともかく、それ以降の文学的で美少女ノベルゲーム的な繊細・萌え志向なオタク諸氏の大勢にはウケる気がしないキャラデザではある。しかし、筆者個人は見ている分には大好物なキャラではあった(爆)。
とはいえ、#1においては彼女の内面もまた延々と描かれていくのだ。
・子供の時分から30歳の大台も見えてきた今に至っても、ハコ庭的な世界を創造していく小説・創作活動につい邁進してしまうこと。
・実際にも15歳の時点で新人賞がもらえて書籍化もされたこと。それからの出版編集部とのやりとり。
・若いうちは若さそれ自体も武器となって、アイデアや文章の各所をホメられたこと。
・次第に年齢を重ねていくと、年齢相応の要求水準となっていくことで、編集者の指摘・ダメ出しの当たりも実にキビしく、陳腐凡庸扱いにされてしまったこと。
……ウウッ。自身の非才に常に悩まされて劣等感にかられている筆者も身につまされる。
それでも小説を書きたい! 才能がないやもしれない、不十分であるやもしれないけど書きたい! と涙ながらの激情で吐露させて、視聴者に思いっきりの感情移入をさせたところで、怪異現象が起きてしまう。彼女は名探偵コナンのように子供の姿に戻ってしまうのであった(笑)。
といったあたりで、#1については神懸った出来であったものの……。
#2以降はデカ女がワケありの書店少年クンやそのロリな妹とコンビを組んで、中高生の姿に若返って学校に潜入して学園ミステリなどの様相も呈していく。連続殺人事件なぞではなく、小さな事件やちょっとした怪異・怪奇現象を解決していくといった体になっていく。それもそれでイイ。
しかし、#1であれだけ創作衝動に苦しんでいたデカ女ヒロインの姿が描かれてしまうと、それと対になる係り結びの描写が各話でもっとほしくもなるのだ。
「不謹慎ではあっても、これは小説のネタにはなる!」とか、「ネタにするにはやはり不謹慎に過ぎるのやもしれない」とか、「筆が進んでいる」とか「スランプになっている」といった姿が強調されていかないと、個人的には腰の据わりが悪いのだ。
その後は悪い意味で、漫画アニメ的な記号キャラに徹しており、その内面描写もウスくなってしまったようにも見えることで、個人的にはイマいちノレないのであった。
このように、作品の冒頭にてリアルな重たい描写で挫折感・不全感・イジメ・引きこもり・対人恐怖から来る孤立感などのトラウマが大々的に描かれることになった作品については、各話でも係り結びとなるようにそのトラウマをもっと引きずって、折にふれてもその古キズをエグったり、何らかの救済なり昇華を与えてほしいと思っているのだが。

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見える子ちゃん・さんかく窓の外側は夜・怪異と乙女と神隠し ~意匠は怪奇系アニメで括れても、各々の内実はギャグ・BL・作家の挫折などの方が本質か!?
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