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ジャッカー電撃隊 総論 ~徹底詳解! 作品・路線変更・怪人・殺陣・玩具・視聴率・書籍・時代・名作の最終回・恋愛描写の衝撃

『秘密戦隊ゴレンジャー』(75年)総論 ~徹底詳解! 作品・変遷・怪人・殺陣・玩具・視聴率・書籍・時代・影響・再評価・50年!
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 スーパー戦隊シリーズ50周年記念! とカコつけて……。『ジャッカー電撃隊』総論をアップ!


『ジャッカー電撃隊』総論 ~徹底詳解! 作品・路線変更・怪人・殺陣・玩具・視聴率・書籍・時代・名作の最終回・恋愛描写の衝撃

(文・森川由浩)
(2011年12月・脱稿)


 『秘密戦隊ゴレンジャー』(75~77年)は大ヒットし、日本の特撮テレビ史上に名を残す一大ブランドとしてのネームバリューを確立した。しかし、1977年(昭和52年)3月、その2年間のロングランに幕を閉じた。


 だが、その大ヒットを受けて、第2弾的な存在の後継者を誕生させた。それが本項の本題となる『ジャッカー電撃隊』(77年)であった。


 本作誕生の背景には、これまで『ゴレンジャー』を放映してきた「NETテレビ」が、1977年(昭和52年)4月1日をもって、「テレビ朝日」に改名することになった動きが存在している。


 2011年現在では東映の専務を務めている鈴木武幸(すずき たけゆき)プロデューサーはこう語っている。



「NETがテレビ朝日になるというので、いろいろな番組が終わらされ、そして衣更えしていったんです。たとえば『特別機動捜査隊』(61~77年)なんかも『特捜最前線』(77~86年)というふうに」(*1)
(『宇宙船』(朝日ソノラマ刊)Vol.82『宇宙船談話室』 1996年)



 ちょうどこの1977年3月31日より2年前である1975年3月31日に、テレビ局の系列ネットワークの変更によって、大阪の「朝日放送」が東京の「TBS」系列から「NET」系列に切り替わった。大阪府民にもこの事態がようやく馴染んできたこの時期、このテレビ局名の改称はさらなる大きなセンセーションを巻き起こしていた。


 これには、1973年11月1日に放送免許条件が変更されて、本来「教育放送局」(*2)としてスタートを切った「NET」が実質的に「総合番組局」となったあとにも、「日本教育テレビ」名義の「NET」のままであったことが、すでに実態にそぐわなくなって久しかった名称であったために、局名を改称することになったいきさつがあった。


 1976年12月10日の臨時取締役会にて、「全国朝日放送株式会社」こと略称は「テレビ朝日」への改称のための定款(ていかん)の一部変更を行い、1977年1月14日の臨時株主総会にて、正式に新社名を承認されている。
 よって、「日本教育テレビ」こと略称「NETテレビ」は、1977年4月1日より「全国朝日放送株式会社」こと略称「テレビ朝日」に社名変更する運びになったのだ。


●『秘密戦隊ゴレンジャー』は、「テレビ局の放映ネットワークの腸捻転による改変」
●『ジャッカー電撃隊』は、「テレビ局の名称変更」


 この初期2大戦隊は、テレビ放送局の大きな歴史の節目で放映が開始されることになった。『ゴレンジャー』や『ジャッカー』のような、こうしたエポックメイキングな特撮変身ヒーローものもまた、時に社会の大きな変化や企業の意向によって偶然に誕生することもある、といった因縁を感じさせるものでもあるのだ。
 言い換えれば、作品内容だけでなく、特撮ジャンルや日本のテレビ放送の「歴史の節目」としても大きな意味合いを持った作品であったことの証(あかし)でもあったのだ。


 本項では、この『ジャッカー電撃隊』の作品の流れと展開とその結果を追って、「スーパー戦隊シリーズ」としての第二歩目を踏み出した、偉大なる名作の内実を解き明かしてみたい。


*1977年に放映された石森原作『ロボット110番』『大鉄人17』『快傑ズバット』『氷河戦士ガイスラッファー』の諸相!


 「非・改造人間」として「強化服」ヒーローのコンセプトを打ち出して、新時代のヒーローのフォーマットに昇格させたのが、前作『秘密戦隊ゴレンジャー』であった。
 しかし、その次作『ジャッカー電撃隊』は、『ゴレンジャー』同様にメンバー各自で異なる原色の姿をしているカラフルなビジュアルイメージは残しつつも、主人公の境遇に『仮面ライダー』シリーズ(71~75年)や『サイボーグ009(ゼロゼロナイン)』(64年~)などではおなじみであった「改造人間」=「サイボーグ」のコンセプトを再び置くことになった。


 『ゴレンジャー』との差別化ではあったろう。しかし、これによって、前作『ゴレンジャー』よりもハードで、たとえ子ども向けではあっても、比較的に年長の視聴者層を意識したシリアスな作品世界を打ち出せることにはなるのだ。
 しかし、2011年の現在に至るまで、「改造人間」のメンバーで構成された戦隊シリーズは、この『ジャッカー電撃隊』のみにはなってしまっている。



 本作『ジャッカー電撃隊』スタートと同時期の1977年2~4月にテレビ放映か開始された、「石森章太郎」の「原作」名義であった諸作品の諸要素を、比較のために検証してみよう(「石ノ森章太郎」へと改名したのは、これより10年ほどあとの1986年のことだ)。


 まずは、コミカルなギャグロボットものの新境地を開拓し、男女を問わず高い人気を獲得していた、ロボット学校ものであり、ロボットの寄宿先の家族とのホームドラマ・人間ドラマでもあった石森原作の『がんばれ!! ロボコン』(74~77年)も、やはり「テレビ朝日」への改称に伴って終了していた。
 その後番組として、「ロボットコメディ」に、黒字・赤字といった損得や商売としての「経済観念」「ビジネス色」なども、ソフトな子ども向けのギャグとして導入してみせた、テレビ朝日系放映の特撮コメディー『ロボット110番(ひゃくとおばん)』(77年)が登場している。


 やはり石森原作の、人間サイズでスマートな赤と青の2人の兄弟ロボットヒーローでもあった『宇宙鉄人キョーダイン』(76年)の後番組には、大阪の「毎日放送」(東京では「TBS」)にて放映された『大鉄人17(ワンセブン)』(77年)なる、重厚な「巨大ロボット」をメインに据えたテレビ特撮作品が登場した。


 東映制作の特撮戦隊ヒーロー『忍者キャプター』(76年 非・石森原作作品)の後番組としては、東京12チャンネル(現・テレビ東京)にて放映が開始された、石森原作の『快傑ズバット』(77年)もまた、「改造人間」ではなく『ゴレンジャー』から引き継がれた「強化服」の戦士であった。


 しかし、『サイボーグ009』のリメイクでもあった、連続テレビアニメの『氷河戦士ガイスラッガー』(77年)では、超古代文明出自の「サイバノイド」といった「造語」によって(サイバーとヒューマノイドとの合成語であろう)、新鮮なイメージで描かれ直された「改造人間」が登場していた。


 そして、本作『ジャッカー電撃隊』も、先にもふれたとおりで、主題歌の歌詞にも謳いこまれているように「サイボーグ」(改造人間)の「戦隊」になっていたのだ。


*『仮面ライダー』と『サイボーグ009』のハイブリッドでありつつも、「改造人間」テーマに原点回帰!


 「改造人間」のコンセプトは知ってのとおりで、『サイボーグ009』と『仮面ライダー』シリーズといった大先輩が存在している。


 「サイボーグ」なるカタカナ用語が、メカを内蔵した「改造人間」であることは、当時の子どもたちにも知られていた。それはモノクロアニメ版(68年)の再放送はもうなかったものの、カラーのアニメ映画版2作品(66・67年)の方は定期的に再放送がなされており、原作漫画(64年~)の単行本も秋田書店の「サンデーコミックス」レーベル(66年~)で、70年代後半当時でも増刷されていたからだ。
 玩具会社・タカラから発売された「変身サイボーグ1号」という30センチサイズで、ボディーが透明パーツかつ内部に銀メッキのメカが透けて見えている、8頭身のリアルな体形の人形の素体に、商品ごとにウルトラマンや仮面ライダーに当時の特撮ヒーローやアニメのロボットヒーローなどのナイロン製のスーツやマスクを着せるといった、男児向けの着せ替え人形も、そのテレビCMとともに72~74年にかけて大ヒットしていたこともあった。


 「集団ヒーロー」としての『サイボーグ009』と、「実写特撮」での「変身」するヒーローvs敵怪人ものとしての『仮面ライダー』。
 それら双方のハイブリッドでありながら、「非・改造人間」かつ「強化服」のヒーローとしてのコンセプトも打ち出していたのが、『秘密戦隊ゴレンジャー』ではあった。


 本作『ジャッカー電撃隊』では、『ゴレンジャー』のイメージを残しつつも、先にもふれたとおりで、主人公の境遇に「改造人間」のコンセプトを置くことによって、前作以上にハードで、やや年長の視聴者層を意識したストーリーを軸にしていた。
 言うならば、『仮面ライダー』と『サイボーグ009』のハイブリッドでありつつも、『ゴレンジャー』よりも元祖「石森サイボーグヒーロー」への「原点回帰」も目指した作品であったとの見解も下せるのだ。


*1977年に放映された石森作品のなかでも『ジャッカー電撃隊』が一番シリアス! その背景とは!?


 『ゴレンジャー』の放映2年目はコミカルなギャグ怪人が輩出していた。しかし、同作のシリーズ終盤のエピソード群では、実にハード路線な物語が輩出していく。
 長じて特撮マニアになって振り返ってみれば、スタッフ間では『ゴレンジャー』終盤での作業と並行して後番組『ジャッカー電撃隊』への移行の準備も並行していたことがわかるだろう。同作への企画準備・サンプルストーリー・シナリオの準備稿の執筆作業などによって、『ゴレンジャー』終盤は無意識のうちに、『ジャッカー』初期編の作風の影響を受けてしまっていた可能性もあるのだ。


 本作の2年前にも同様の事例があった。『キイハンター』(68~73年)の系譜を継いだ東映制作のアクションテレビドラマ『バーディー大作戦』(74年)がそれだ。当初はコミカル仕立ての明るいエピソードが多かった同作は、番組も終盤になってくると、ハード志向の物語へとじょじょにマイナーチェンジしていった。
 その最終回「バーディー真昼に死す」(脚本・小山内美江子 監督・佐藤肇)では、メンバーの伊吹裕二(演・谷隼人)と井口マリ(演・松岡きっこ)が、「子どもを救うために我が身を賭して、地雷の犠牲となってしまう」といった結末で、あまりにも衝撃的なフィナーレを迎えていたほどだ。
 これなども、後番組のシリアスな名作刑事ドラマ『Gメン‘75』(75~82年)への各スタッフの移行の準備期間が並行していたことも、一因ではなかったか? といった推察もできるのだ。



 実際にも、本作『ジャッカー電撃隊』はシリーズ前半に限定して言及すれば、児童向けヒーロー作品としては、ハード志向の作品に仕上がっている。


 同作の東映側のプロデューサー・吉川進はこう語る。



「続く『ジャッカー電撃隊』は、『ゴレンジャー』を抜こうとして考えられた企画で、前作とはがらっと内容を180度転回させてみました。スパイアクションの部分をぐんと強くして、さらに社会背景を物語世界に強く設定してみたんです。」
(『超世紀全戦隊大全集』(講談社刊)1993年)



〈ANIMEX 1200シリーズ〉 (38) ジャッカー電撃隊 MUSIC COLLECTION (限定盤)
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*「ジャッカー電撃隊」のビジュアル・デザインコンセプト! &SF設定コンセプト!


 「ジャッカー電撃隊」の4人の変身ヒーローのビジュアルは、「ゴレンジャー」とも同様に「色」で区分けする要素が大きい。
 しかし今度は、モチーフに「トランプ」も起用していた。「スペードエース」「ダイヤジャック」「クローバーキング」「ハートクイン(クイーン)」といった、「トランプ」の「カード」の「図柄」と「数字」を意味するネーミングを据えていたのだ。


 この4人それぞれのエネルギー源も、自然界での超ミクロ・極微の世界ではたらいている「4つの力」から着想されたものだ。


●「重力」
●「電磁気力」
●「強い力」(核力)――「原子(核)」(元素)の構成要素である「陽子」や「中性子」を結合させる力。および、それらのさらなる構成要素である「クォーク」なる、物質の本当の最小単位でもあった「素粒子」同士を結合させている力。この「強い力」の派生形が「原子力」である――
●「弱い力」――「原子」の構成要素である、電荷的には中立の「中性子」から、「電子」(=マイナスの電荷を持っている。別名:ベータ線)を放出させて、この「中性子」をプラスの電荷を持った「陽子」へと変化させてしまい、「原子」(元素)の種類(=原子番号=陽子の数)までも変えてしまう力。いわゆる「ベータ崩壊」を起こす力――


 1970年代中盤に、日本でも一般に紹介されはじめたばかりの、当時の最先端の物理学の研究成果から来ていたのだ(おそらく、科学好きでもあった石森のアイデアだろう)。


 しかし、子ども向け番組ゆえに、わかりやすくアレンジされて、以下のとおりになっていた。


●「核(原子力)エネルギー」(「強い力」に該当)
●「電気エネルギー」(「電磁気力」の「電気」に該当)
●「磁力エネルギー」(「電磁気力」の「磁力」に該当)
●「重力エネルギー」


 いわゆる「弱い力」こと「ベータ崩壊」はオミットされていたが、「電気」や「磁力」と違って、我々の日常生活にはまったく関与してこない「力」なので、これもまた大衆向け娯楽作品としては実に妥当なアレンジだろう。


 これら「4つの力」も交えて、「ジャッカー電撃隊」のコンセプトは強調されているのだ。


 そして、先人である『ゴレンジャー』に見られたカラーリングでのシンプルでわかりやすいネーミングを廃して、前述した意味合いで、より年長児童向けのムードを強調したコンセプトを感じさせてもいるのだ。


 この「トランプ」のモチーフは、石森漫画が原作であり、はるか以前に『フラワーアクション 009ノ1(オーオーナインワン)』(69年)名義で1時間枠での実写テレビドラマ化もなされていた『009ノ1(ゼロゼロナイン・ワン)』(67年)(*3)にも共通するコンセプトであった。


 なお、余談ではあるが、『ジャッカー電撃隊』の関東地区での土曜夜7時30分枠と同時ネットワーク放映の地域では、前座の土曜夜7時枠にテレビアニメ『超合体魔術ロボ ギンガイザー』(77年)(制作・朝日放送、日本アニメーション・葦プロダクション)が放映されていた。
 同作もまた、正義側の3体のヒト型巨大ロボットと大型戦闘機が「トランプ」をモチーフにしていたのだ。さらに、主題歌の歌唱が「ささきいさお」といった共通点も存在している。奇(く)しくも、「トランプ」がモチーフのヒーロー番組が毎週土曜の夜7時台に2本連続で放送されるかたちとなっていたのだ。


 しかし、「ゴレンジャー」同様に、ひとりでは敵の怪人を倒すことができないために、「メンバー全員がそろうことで、初めて敵を倒せる」といったコンセプトは踏襲されていた。


 そして、「ジャッカー電撃隊」の必殺技は、サッカーやフットボールといったスポーツの要素をアクションや必殺技に組みこんだ「ゴレンジャー」とは違っていた。今度は4人が「円陣」を組んで敵を取り囲み、その敵におのおのの4種のエネルギーを同時にぶつけて、その衝撃で相手を倒すことができるという「ジャッカー・コバック」なる技であったのだ。


*「J・A・K・Q」の4文字で「ジャッカー」と読ませて、サブタイトルにも凝ったセンスの絶妙さ!


 番組のタイトルにも言及しておこう。「J・A・K・Q」のアルファベット4文字で、「ジャッカー」と読ませるセンスのことだ。


 実際に「ジャッカー」を英語で記すと「JACKER」になるので、「Q」の「文字」は存在しないことになる。


 しかし、「Q」の文字を使用した単語である「quatet」(カルテット=四重奏)」や「quintet」(クインテット=五重奏)の発音は、「カキクケコ」などの「カ」行になるのだ。古代においては「Q」の文字の発音は「ク」や「クー」であったという。その意味では、「K」と「Q」の発音でもある「ケー」や「ク」を転じさせて、「K」と「Q」の2文字で「ジャッカー」の「カー」だと読ませるあたりは、多少のムリはあっても、まったく根拠がないわけでもないのだ。


 その他に、本作の第1クール(初期12話分に相当)での各話のサブタイトルは、「カタカナ表記」ではあったが、「英単語」も用いていた。
 番組のメインタイトルとストーリーコンセプトとも相まって、同じく石森原作の東映特撮ヒーロー『人造人間キカイダー』(72年)の「機械」や、『イナズマン』(73年)の「稲妻」などに、原作漫画版『秘密戦隊ゴレンジャー』の防衛組織「イーグル」を「EGL」と表記させてカッコよさを演出していたのともまた違った、新たな地平のセンスの開花も見せていたのだ。石森作品特有のネーミングセンスは、やはりここでも際立っていたのだ。


 だが、「ジャッカー」の語句の直後には「電撃隊」なる語句が付いていた。「電撃戦隊」ではなかったことに、「パターン」のなかにあっても、「パターン化」の徹底については避けてもいる、「独自性」への模索も感じさせるところがあるのだ。


 実は本来、本作は企画の時点では、『電撃戦隊クロスボンガー』と命名されていたことが、本作『ジャッカー』についても扱っていた初のマニア向け書籍であった、往年の『秘密戦隊ゴレンジャー大全集』(88年)でも明らかにされている。このタイトルが実現していたなら、もっとあからさまに、良くも悪くも『ゴレンジャー』の呪縛にとらわれてしまったことだろう。しかし、実際にはこの『ジャッカー電撃隊』というメインタイトルへと落ち着いているのだった。
 ただし、もしもこの時点で、『電撃戦隊』と題されていれば、「戦隊シリーズ第2弾」的な扱いのキャッチコピーが、本作の時点ですでに出来あがっていたのかもしれないが。


 ちなみに、実際に“戦隊シリーズ”といった単語による概念で、『ゴレンジャー』以降のシリーズをひとくくりにするようになったのは、『電子戦隊デンジマン』(80年)あたりからであった。


 もちろん、“シリーズ”といった扱いになれば、過去作との類似点はあまり問題視はされないだろう。どころか、必要な要素だとして歓迎されたかもしれない。
 しかし、まだ“シリーズ”といった括りを潔(いさぎよ)しとはしない、一応の独立独歩の作品として立ち上げたかったのであれば、「『ゴレンジャー』の二番煎じ」的なイメージを払拭(ふっしょく)するためもに、あえて“戦隊”の語句を本作のメインタイトルには使用しなかったことも、想像には難くないのだ。


*4人のサイボーグであるレギュラー登場人物! 「心」に「悲哀」もやどした「改造人間戦士」!


*スペードエース・桜井五郎=丹波義隆


 ジャッカー電撃隊のリーダーヒーロー「スペードエース」こと桜井五郎役には、有名俳優・丹波哲郎(たんば てつろう)の実子である丹波義隆(たんば よしたか)が扮した。


 彼は前年度の『ゴレンジャー』でも、主人公・アカレンジャー役の候補であったそうだ。しかし、当人の意志で辞退をしていたそうだ。その後の2年間のうちに、彼はNHKテレビ小説(朝ドラ)『水色の時代』(75年)やテレビ時代劇『鬼平犯科帳(おにへい はんかちょう)』(75年・丹波哲郎主演版)での活躍で実力を付けてから、こうしてようやく主役の座を獲得することとなったのだ。
 しかし当初、丹波本人は本作への出演を「バイクの免許証」や「変身ポーズをとることが恥ずかしい」ことを理由にして、OKしなかったそうである。
 けれども、自身の役が搭乗する乗りものが「オートバイ」ではなく「自動車」であったこと、変身は基地のカプセルに入ってするもので変身ポーズがなかったこと、さらに、「視聴者年齢層を高校生まで広げたい」「基本的には“人間の物語”にしたいんだ」といったスタッフの意向もあってか、出演をOKしたとのことである。(Webサイト『HERO BOX』より)


 そのむかし、円谷プロの円谷一(つぶらや はじめ)監督が、『ウルトラセブン』(67年)のキリヤマ隊長役の中山昭二(なかやま しょうじ)に対して、番組開始前に「『(初代)ウルトラマン』のような作品を企画しているのだが、対象とする視聴者層を中高生にあげたいということで、なにかよい方法はないか」と相談を持ち込んだ逸話(いつわ)があった(『ウルトラマン大全集』(講談社刊・87年3月1日発行))。


 もちろん、ジャリ(子ども)向け番組として蔑(さげす)まれていたテレビ特撮作品への出演を口説くための「口八丁(くち はっちょう)」でもあっただろう。しかし、それと同時に、子ども向け番組でもヒットを出せれば、欲が出てきて、さらに少しでも上の世代の層にもアピールできるものを作って、自らが作っている作品もレベルアップをとげていきたいといった向上心が、やはり成人ではあるスタッフたちの脳裏には浮上してきてしまうものなのだろう。



 主人公ヒーロー「スペードエース」の戦闘時における決め口上(きめこうじょう)は、こうであった。


 第1話~第22話では、「ジャンプ一閃(いっせん)、赤い風! 唸って踊る、核の鞭(むち)!!」
 第23話~第35話では、「真っ赤に燃える正義の血潮(ちしお)! 悪を切り裂くアトム撃ち!!」


 他のヒーローメンバーも、決め口上のあとに、各自が使う武器の名前を叫ぶのが、定番となっていた。


*ダイヤジャック・東竜=伊東平山


 「ダイヤジャック」こと東竜(ひがし りゅう)役には、伊東平山(いとう へいざん)が扮する。


 伊東は本作以前に、東映の特撮変身ヒーロー『超神(ちょうじん)ビビューン』(76年)第23話にゲスト出演。『宇宙鉄人キョーダイン』(76年)の主役オーディションも受けていた過去があったそうだ。最近では、故郷・秋田の「街興(まちおこ)しヒーロー」である『山刀霊神(ながされいじん)アニアイザー』の企画・プロデュースを手がけていた。


 長髪が主流であった1970年代の若者男性にしては珍しく、メンバーの男性陣では唯一の短髪でもあった。前番組『ゴレンジャー』の主役・アカレンジャーこと海城剛(かいじょう つよし)役の誠直也(まこと なおや)が、シリーズの途中から髪を伸ばしだしたのとは対照的に終始、短髪のままのヘアスタイルであったことも印象的である。


 「ダイヤジャック」の決め口上は、


 第1話~第23話では、「スピード一番、青い星! ギラりギラギラ、電気剣!!」
 第24話~第35話「怒りのエレキで鍔(つば)鳴りさせて、守ってみせるぜ青い地球!!」


 であった。(ダイヤジャックのみ、第23話からではなく第24話から後期版の名乗りとなっていた)


*ハートクイン・カレン水木=ミッチー・ラブ


 唯一の変身ヒロイン「ハートクイン」ことカレン水木役は、ハーフのミッチー・ラブが扮した。


 彼女はJAC(ジャパン・アクション・クラブ 現ジャパン・アクション・エンタープライズ)に所属していた。先に、東映のアクションテレビドラマ『ザ・ボディガード』(74年)や『ザ・ゴリラ7(セブン)』(75年)へのゲスト出演や、“宣弘社版『プレイガール』”といった趣(おもむ)きを有していたテレビドラマ『コードナンバー108(いちまるはち) 7人(しちにん)のリブ』(76年)でもレギュラーで活躍し、東映の志穂美悦子(しほみ・えつこ)主演のアクション映画『女必殺拳』シリーズ(74~76年)にも出演していた若手アクション女優だった。


 当時、JAC内でも“第二の志穂美悦子”といった存在感を示し、メキメキその名を上げていた彼女だけに、まさにエース級の人材の投入でもあった。


 ファッションも、先輩のモモレンジャーことペギー松山同様に、赤い「ホットパンツ」と「ロングブーツ」に「素肌の太モモ」でその「脚線美」を強調。しかも、小顔の童顔的な愛くるしい顔立ちながらも、ハーフゆえに日本人よりも肉感的かつグラマラスな下半身のイメージが強調されていることが特徴であった。


 「ハートクイン」の決め口上は、


 第1話~第22話では、「ひらり一転、桃の花! 咲かせて散らす、磁力盾!!」
 第23話~第35話では、「娘18、涙を捨てて! 戦場(いくさば)に立つ、桃の花。可愛いわよ(ハートマーク)」


 であった。


*クローバーキング・大地文太=風戸祐介


 「クローバーキング」こと大地文太(だいち ぶんた)役には、ピープロダクション制作による『電人(でんじん)ザボーガー』(74年)のシリーズ後半から登場したライバル青年・秋月玄(あきづき げん)役が代表作であった風戸祐介(かざと ゆうすけ)(旧名・風戸拳(かざと けん))が抜擢された。


 ちなみに、風戸にはそのむかし、『仮面ライダーV3(ブイスリー)』(73年)主役の最終オーディションに宮内洋(みやうち ひろし)とともに残っていたというトリビアが存在している。その時は敗れたが、4年後に奇しくも宮内とは、この『ジャッカー電撃隊』のシリーズ後半で共演することになったのだ。


 なお、先の『ザボーガー』の主人公・大門豊(だいもん ゆたか)役は、その『V3』のシリーズ終盤にレギュラー出演していた仮面ライダー4号「ライダーマン」こと結城譲二(ゆうき じょうじ)役も務めていた故・山口暁(やまぐち あきら)であった。風戸祐介は『V3』の重要出演者たちとも縁があったのだ。こうした巡り合わせの奇遇にも、不思議な因縁を感じてしまうのだった。


 また、『ジャッカー』では唯一、「自動車」ではなく「オートバイ」を操縦するメンバーでもある。風戸は前述した『電人ザボーガー』の秋月玄役でも「マシーンホーク」というバイクを駆っていた。宿敵・大門豊とのバイク戦も見せていただけあって、「二輪車」の扱いも手馴れていた印象があった。


 『ジャッカー』のシリーズ当初は、大地文太が「一度は死んだ身」であったことと、「亡き妹への想い」といった暗い過去設定も手伝ってか、「やや活気のない印象」が「重力」も操る力持ちの「パワーファイター」らしくない印象を与えていた。
 しかし、シリーズ中盤からは若者らしい「明るさ」を前面に押し出している。ケンダマで遊んで、生花(いけばな)の心得まである意外性(第13話)や、後述するシリーズ後半の新メンバー・姫玉三郎(ひめ たまざぶろう)との掛け合いで、「ギャグメーカー」的な色合いを打ち出し、シリーズ前半と後半とでのイメージチェンジも顕著なキャラクターになっていたのだ。


 また、シリーズの初期編では「ベレー帽」を着用している。これは本作に入る前に、東映の時代劇映画『大奥 浮世風呂』(77年)で若い僧の役のために頭をまるめたあとだったので、「かつら」と「帽子」を着用していたとのことだそうだ。そのせいか、髪が伸びてきてからは「帽子」と「かつら」を使わなくなり、第8話より「自毛」で出演するようになったそうだ。



 「クローバーキング」の決め口上は、


 第1話~第22話「パンチ一撃、緑の火! 目から火の出る、重力パンチ!!」
 第23話~第35話「凄いパンチが唸(うな)りをあげりゃ! 緑の風が渦を巻く!!」


 であった。


*ジョーカー・鯨井大助=田中浩


 「ジャッカー電撃隊」を指揮する長官「ジョーカー」こと鯨井大助(くじらい だいすけ)役には、「わんぱくでもいい。たくましく育ってほしい」のセリフが有名な、1970年代にはひんぱんに放映されていた「丸大(まるだい)ハム」のテレビCMへの出演で高名だったベテラン俳優・田中浩(たなか ひろし)が配役された。
 田中は三船プロ出身。あの大俳優・三船敏郎(みふね としろう)の薫陶(くんとう)を受けて育った俳優である。それだけに、ハードなドラマをより重くまとめる重厚な存在感を示していた。


 とはいえ、やはり子ども向けヒーロー番組なので、原色の「黄色」い制服を着用していた鯨井長官であった。しかし、『ジャッカー』には「黄色」の戦士がいない。なので、前番組での『ゴレンジャー』の5色中の「黄色」のカラーリングが、この「ジョーカー」なる長官には配されていたのだろう。


 「ジョーカー」を演じる田中自身が一番気に入っているエピソードは、コミカルな色合いが強まってきた時期の第22話「赤い大逆転!! 自爆軍団を攻撃せよ」なのだそうだ。「ジョーカー」自身が敵の戦闘員・クライマーに変装して敵地に潜入するシチュエーションが、これまで演じたことのない役だけあって、印象に残っているのだそうだ。


 桜井五郎役の丹波義隆も、番組終了後も撮影所で田中に再会すると、田中のことを「隊長」と呼んでいたそうだ。役を超えた、そのような付き合いが続いていたこともまた、我々のような特撮マニアの心を打つのだった。



 また、「ジョーカー」が愛玩する小動物・ハムスターも、実は「サイボーグ」であったとされた。「路線変更」もあってか、第15話にてその素性が「ジョーカー」よって明かされ、以降は人間の言葉を話すようになる。


*我らは「科学特捜隊」! 「ジャッカー電撃隊」の組織構図!


 「ゴレンジャー」は国連が設立した国際秘密防衛機構「イーグル」(Earth Guard Leagueの略称)なる組織のメンバーによる選抜部隊だった。それに対して、「ジャッカー」の場合は、帰属する組織名がその名もズバリ「国際科学特捜隊」というのには、幼児層にはともかく、当時もう小学校の高学年になっていた筆者には驚かされた。


 知ってのとおりで、初代『ウルトラマン』(66年)のレギュラー防衛組織の名前である「科学特捜隊」の名前と同じなのだ。しかし、その語句の前に「国際」の語句が入ったことで、世界的な組織であることも明確にしていたのだ。



 この「科学特捜隊」なる名称の「復活」「再現」には、本作でも活躍したメインライター・上原正三(うえはら しょうぞう)のなかで、『ウルトラマン』という作品の存在の大きさはもちろん、その『ウルトラマン』の作品世界の確立に脚本面から貢献して、『ジャッカー』放映前年の1976年に事故死してしまった盟友であり、親友の脚本家・金城哲夫(きんじょう てつお)へのレクイエム(鎮魂)も感じてしまうのだ。


 この「国際科学特捜隊」の配下にある「ジャッカー電撃隊」は、「警察」の捜査にも顔を出せるのだ。しかも、一般の警察組織よりも上の階級であることを物語ってもいる描写が存在している。
 本作のメインライターの上原正三が過去に手がけた、劇画原作(69~79年)のアクションテレビドラマ『ワイルド7(セブン)』(72年)で、その白バイ警察集団のメンバーたちが一般の警察官たちより上の階級を有しており、その階級が「警視」でもあった作品を手がけていたことも手伝ってか、本作でもそうした職能を持たせた組織にしたのではなかろうか?


 そして、「ジャッカー」のメンバーは自身が「サイボーグ」であることを絶対の秘密にはしていないようなのだ。「ジャッカー」のメンバーが捜査中に、自らの肉体から捜査用の機械ツールを出すシーンがあったからだ。
 第5話では、組織内の科学班による、桜井の身体のメカニック・メンテナンスのシーンもあった。第9話では、後年の大俳優でJACの真田広之(さなだ ひろゆき)が演じた、兄を敵組織・クライムに殺されたゲストの勝也青年が、仇を取るためにカレン水木に自らのサイボーグ化を懇願する描写まであったほどだ。ということは、「ジャッカー」の存在も彼らが「サイボーグ」であることも知られているのだ。
 その意味では、同じ「改造人間」を題材にはしていても、『サイボーグ009』や『仮面ライダー』とも異なる、独自性あるドラマを展開できてもいたのだ。


 『仮面ライダー』シリーズでは、主人公が「改造人間」であることを民間人で知っていたのは、“おやっさん”こと立花藤兵衛(たちばな とうべぇ)(演・小林昭二)くらいであった。時代の変遷とともに「変身ヒーロー」や「改造人間」であることを秘匿(ひとく)してみせる必然性も少々薄れてきつつあった過渡期であったのだとも、後付けで捉えることもできるのかもしれない。
 事実、スーパー戦隊シリーズとしては、『ジャッカー』の次の作品となるシリーズ第3作『バトルフィーバーJ』(79年)では、ヒーローたちがその正体を子どもたちに明かしてしまう回なども登場してくるのだ。もちろん、本作『ジャッカー』の世界観においては、彼らは職業的には「警察官」にも準じた「公務員」でもあった。それゆえに、彼らが改造人間・サイボーグ戦士であることが半ば公認された世界観でもあったのだろうが。



 そして、『ゴレンジャー』では007(ゼロゼロセブン)・008・009といった女性隊員たちが登場していた。『ジャッカー』でも第15話より「ジョーカー」の秘書的な活動を行い、「ジャッカー」のメンバーたちをサポートもする、「国際科学警備隊」の女性隊員たち7号・8号・9号・10号といった存在も忘れてはならない。


 シリーズ後半にて行動隊長・番場壮吉(ばんば そうきち)こと「ビッグワン」が登場したあとにも、彼の「秘書」的なポストを確立している。しかし、お色気描写も何気に表現されていることも特徴になっていた。第24話「悪魔か? 天使か?! 不思議な笛吹き男」でのバニーガール姿、第31話「赤い衝撃! スパイは小学四年生」での神輿(みこし)ギャル姿、第32話「どっちが本もの?! 危うしビッグワン」でのレオタード姿などでそれらの要素が具体的に見られるのだ。


*4スーパーマシン + スカイ&ランドメカ・2 = 「スーパーカー」ブームの申し子たち!


 本作には、知ってのとおりで、主人公たちが乗用する「マシン」が、前番組の『ゴレンジャー』の「オートバイ」とは違って、四輪の「自動車」がメインとなることがポイントであった。


●イタリアのフィアット社のフィアット・X1/9(エックス・ワン・ナイン)を改造した「スペードマシーン」
●F2のレースカーをベースとした「マッハダイヤ」
●バギー車をベースとした「ハートバギー」
●カワサキのKH400を改造した、ジャッカー唯一のバイクである「オートクローバー」


 以上が、「ジャッカー電撃隊」のマシンだ。


 「自動車」をメインメカニックとして用いた理由には、当時の男児たちを席巻しつつあった「スーパーカー」の大ブーム(*4)の流行が大きく影響している。


 1977年当時の玩具界や子ども間での流行は、「スーパーカー」は変身ヒーローもの・合体ロボットもの以上に急速に脚光を浴びつつあったのだ。そのために、各社はいわゆる「ミニカー」のラインナップに力を入れている。しかし、そのなかでも特に最高速度が300キロだというイタリアのランボルギーニ社の「ランボルギーニ・カウンタック」の人気は、空気抵抗を極力減らした、車高も低くて扁平かつ直線的で未来的なフォルムであり、前面の左右の2つのヘッドライトは車体内からせり上がって、左右のドアも上方に向けて開扉するかたちになっている未来的なデザインともあいまって、トップ人気を獲得していた。


 この美的な感覚にあふれるスタイリングは、「自動車」というよりかは未来からやってきた「宇宙船」のようなフォルムであって、「自動車」というものの概念には収まらない、新鮮なビジュアルテイストを有するものであった。


 当時の日本車では、昭和40年代(1960年代後半~~1970年代前半)を代表する名車「トヨタ2000GT(にせん ジーティー)」くらいしか用いられていなかった「リトラクタブル(格納式)ヘッドライト」。車のドアは横に開くもので、決して上には開かないといった既成概念が強かったなかで、鳥の翼のようなフォルムの開き方の「ガルウィングドア」のシステム。
 それらは、それこそ合体ロボットの変形ギミックにも通ずる持ち味を醸し出し、いつしか子どもたちにも大人気を集める要素のひとつになっていたのだ。この70年代の欧米車の未来感にあふれたフォルムは、当時の日本車にはマネができないハイセンスなムードにあふれていただけに。


 特に「スペードマシーン」のベースとなった「フィアット・X1/9」は、当時のスーパーカーの特色であった「リトラクタブル・ヘッドライト」はもちろん、国産車では「トヨタ・S800(スポーツ・はっぴゃく)」くらいでしか見かけなかった「タルガ・トップ」――屋根の中央部の取り外しが自由で、天井がセミオープンになることが特色――といった、国産車には見られなかった個性を色濃く持った、ハイセンスさにあふれた「ライトウェイト・スポーツカー」(小型軽量スポーツカー)であった。小排気量(1600cc)(*5)ということも手伝って、「ポルシェ」や「フェラーリ」に比べて、リーズナブルな「スーパーカー」として人気を集めた車種でもあった。


 「ハードなドラマ」と、それを彩(いろど)る「スーパーカー」に見られる「自動車」の要素。映画の世界でも、スパイアクション映画『007』シリーズで、イギリスのスパイである主人公のジェームス・ボンドが搭乗していた、いわゆる「ボンドカー」などが、そのスタイリングだけでなく、ボンドの諜報活動を援護するメカニカルな「特殊能力」でもアピールしていたのだ。本作でもそうした色合いを強調しており、前作『ゴレンジャー』との違いを明確に打ち出していたのだ。


 そんなブームを反映している「スーパーカー」を使用していた本作ゆえに、時代を物語る「スーパーカー」エピソードが、『ジャッカー電撃隊』にも2本、存在している。第7話「8(エイト)スーパーカー!! 時速300キロ」(脚本・上原正三 監督・奥中惇夫)と第14話「オールスーパーカー!! 猛烈!! 大激走!!」(脚本&監督・平山公夫)がそれだ。


 特に第7話は、同年夏の「東映まんがまつり」でも35ミリフィルムにブローアップされて劇場公開されていたほどだ。ちょうどこの興行が終了後の77年8月に公開された、「スーパーカー」ブームの立役者でもある『週刊少年ジャンプ』連載の大人気漫画(75~79年)を実写化した東映制作の映画『サーキットの狼』(77年)の「予告編」的な印象も、当時の観客たちに与えることとなっていたのだ。


 それだけでなく、この2本のエピソードには、当時の「スーパーカー」ブーム時代の「スター」のように脚光を浴びていた、外国車の販売店の社長・切替徹(きりかえ とおる)と雅子夫人による、本人役としての出演も大きなトピックになっていた。


 この「スーパーカー」編では吉川進が、



「日本中のスーパーカー三十台を集めて決定版を作る。ブームの真っ最中なので視聴率アップにうってつけ」
(『週刊TVガイド』1977年5月27日号(東京ニュース通信社刊))



 とコメントしているのが、時代を物語っているのと、下降気味の視聴率を上げねば……といった焦燥感をも感じさせてくれる。


 ちなみに、劇中で登場した車種を列記すると、前者は、


●フェラーリ365GT4BB
●ランボルギーニ・ミウラ
●ランボルギーニ・ウラッコ
●マセラッティ・メラク
●ポルシェ930ターボ
●ロータス・ヨーロッパ


 後者では、


●フェラーリ365GT4BB
●ランボルギーニ・ミウラ
●ポルシェ930ターボ
●ポルシェ911カレラ
●ポルシェ911S
●マセラッティ・ボラ
●マセラッティ・メラク
●マセラッティ・カムシン
●BMW2002ターボ
●フィアット・X1/9


 以上が活躍していた。一部資料では、本話に登場した「フェラーリBB」を、「フェラーリ365」ならぬ「フェラーリ512BB」と記載している書籍もあった。しかし、ビデオで映像を見直したかぎりでは、テールランプの数や(「512」は左右計4灯、「365」は左右計6灯)、後輪前の通風孔がないことで(「512」は通風孔がある)、ここでは「フェラーリ365GT4BB」だったと判断して記載した。



 前作『ゴレンジャー』の「バリブルーン」に見られる飛行メカを継承した「スカイエース」と、「バリタンク」の後継車「ジャックタンク」の存在についても言及しよう。
 なによりも、主人公たちが変身するためのシステムマシンであった「強化カプセル」を輸送する機能を有しており、「ジャッカー電撃隊」というヒーローへの変身のための重要な基盤としての存在感は誇っていた。


 「ジャッカー」は一般的なヒーローたちのように、一定の「変身ポーズ」をとったり、「変身ベルト」や「変身ブレスレット」などのアイテムを使えばその場で変身できるシステムとは違って、この「強化カプセル」がないと変身ができないのだ。


 その基本設定ゆえに、独自の「リアリティ」を、そして、その「不自由さ」が生み出す「サスペンス」性も、この作品の持ち味にはなっており、シリーズの持つハードな色合いを強めていたのだ。


 「ジャックタンク」はその名が示すとおりで、「マッハダイヤ」同様に、「ダイヤジャック」のもう1台の愛車といった存在であった。しかし、見てのとおりで、デザイン的にも前番組『ゴレンジャー』の「バリタンク」をもろに継承した戦車でもあった。とはいえ、最終回では鯨井長官の誘拐された家族を救出する際に、敵地に乗り込むような大活躍も見せていた。


 また、「スカイエース」ではなく「ジャックタンク」が「強化カプセル」を輸送する手段として使われることも時折り見られた。さらに、「ロングハンド」なるメカを使って、「ハンドクライミング」と称する荒業(あらわざ)で、地上から一気にビルの屋上に登ることができるさまも、ミニチュア特撮で表現されていたのだ(第2話・第22話)。


*『ジャッカー電撃隊』の敵組織! 犯罪シンジケート「クライム」の暗躍!


 本作の敵組織である国際犯罪シンジケート(共同組織)である「クライム」も、前番組『ゴレンジャー』の「黒十字軍」とは違って、子ども向けのヒーロー特撮としては相応のリアリティを有する存在であった。
 人間社会に潜入してくる各話ゲストの「ボス」なる存在は、「改造人間」や「ロボット」ではなくふつうの「人間」なのだ。その「人間」が「デビルロボット」なる各話のゲスト敵怪人を刺客(しかく・しきゃく)として送り出してくるのだ。


 このシチュエーションは、本作のメインライター・上原正三が、東映特撮に初めて参加した『ロボット刑事』(73年)の犯罪組織「バドー」の敵怪人こと「バドーロボット」に通ずるイメージを感じさせる。
 「バドー」のロボットは、「バドー」から犯罪者にレンタルされて、そのレンタル料を組織の利益にするといった目的のために存在していた。そしてその設定が、「刑事ドラマ」としてのドラマ性を根底に持っていた、同作の作品世界のリアリティをも高めていたのだ。


 それゆえに、「リアルな犯罪捜査ドラマ」をコンセプトに打ち出していた本作でも、「クライム」は「バドー」的な組織として描かれてもいた。敵組織「クライム」の目的は、「兵器の開発」と世界に「騒擾(そうじょう)」を引き起こして、「新型兵器を売ること」にあったのだ。
 これはいわゆる「死の商人」としての行動でもあるのだ。こうした題材や社会問題意識においては先輩格であった、石森章太郎原作の大人気漫画『サイボーグ009』の色合いも、『ジャッカー』では顕著であったのだ。古参のマニア諸氏であればご存じだろう。『009』の敵組織「黒い幽霊団(ブラックゴースト)」なる存在も、「死の武器商人」であったからだ。



 シリーズの初期編では、


●デビルドリル
●デビルマイト
●デビルガン


といった、機械・武器・工具をモチーフにした、「機械怪物」こと「デビルロボット」なるロボット怪人と、


●デビルフラワー
●デビルスパイダー


などの動物型のロボット怪人が登場していた。


 それらのボディのカラーは金属の「銀色」が主体だ。そのために、「非情な戦闘機械」といったコンセプトも強く押し出されていた。本編ドラマ部分のハードさとも相まって、やはり上原がメインライターを務めていた往年の東映特撮ヒーロー『イナズマンF(フラッシュ)』(74年)の敵怪人である「デスパーロボット」や、同作のハードボイルドな作風にも通ずるムードを、視聴者にも色濃く提示していたのだ。


 しかし、シリーズの途中から、『ゴレンジャー』のゲスト怪人であった「野球仮面」の兄弟分的な「デビルボール」や「デビルバッター」といったユーモラスな要素を加味した「機械怪物」たちが登場してくる。
 『ゴレンジャー』の各話の敵怪人たちこといわゆる「仮面怪人」たちの、放映2年目におけるコンセプトを有するキャラクターたちへと回帰していくのだ。「デビルバッター」の声は、「野球仮面」に声を当てていた名声優・永井一郎が演じているあたり、そうした意図が配役も含めて濃厚にあったことがうかがえて、実に興味深いのだ。


 さらに、最終クールに登場した新たなヒーロー「ビッグワン」の登場以降は、これら「機械怪物」たちには、「アリンガム将軍」「クロコダクル総統」「テンタクルズ入道」「カマキリ大酋長」「コブラ大神官」といった「階級」や「称号」まで付くようになった。
 それらはまるで、『仮面ライダーストロンガー』(75年)の最終クールに登場した敵組織「デルザー軍団」に集った幹部級の強敵怪人たちこと、「参謀」「師団長」「少佐」「男爵」といった称号を持っていた「改造魔人」たちを彷彿(ほうふつ)とさせるのだ。
 こうした「語感」による処置などによって、敵の組織がピラミッド型にスケール感がアップされたことも手伝ってか、敵怪人たちも「ランクの高さ」を押し出して、ゴージャスな存在感を抱かせるようにもなっていく。


*敵組織クライムの幹部・アイアンクロー!


 「クライム」の幹部である「鉄の爪」こと「アイアンクロー」の存在についても、話を進めたい。演じる石橋雅史(いしばし まさし)は、俳優のみならず、空手の「極真会館」の「師範」の肩書きを有していた。JACにも空手の指導に来ていたほどの講師でもあった。特撮作品での客演はすでにあったものの、しかしレギュラー出演は本作が初めてではあった。
 後年の戦隊シリーズでも、『バトルフィーバーJ』のヘッダー指揮官や、『科学戦隊ダイナマン』(83年)のカー将軍、『高速戦隊ターボレンジャー』(89年)の暴魔博士レーダの役で、レギュラー出演している。


 石橋はこう回想する。



「私はこの種の番組では、『ジャッカー電撃隊』のアイアンクローを演じたのが一番最初だったと思います。」
(『スーパー戦隊大全集』(講談社刊)1988年)


「指令を出す立場なんだから、気位の高い人物として格調高く朗々と舞台調に振る舞うことで、別世界をつくってみようと」
(『キャラクター魂』Vol.5(辰巳出版刊) 2000年)



 前作の『ゴレンジャー』の「黒十字総統」は、演者の交代でシリーズの前半と後半とではそのキャラクター像に違いが生じていた。加えて、この石橋が演じた「アイアンクロー」のような「気高さ」は感じられなかったものだ。


 さらに「アイアンクロー」は、「鉄の爪」や「ステッキ」などの小道具を巧みに使っている。観る者を圧倒する大袈裟なほどの芝居がかったセリフ回しで、部下に命令を与えてもいる。そして、作戦に失敗した者を冷酷無比に処刑する。それらは「悪のトップ」にふさわしい重厚感と威圧感を持った演技であって、「クライム」の犯罪行動にそれなりのリアリティと重みも与えていたのだ。


 石橋はこうも語る。



「やはり、悪には悪の論理というか、彼らなりの美学をもっていなければ、子供だって興味をもって観てくれませんからね。ですから、私の演じた敵の幹部も、最期はみんな誇りをもって散っていきました。」
(『スーパー戦隊大全集』(講談社刊)1988年)


*敵組織クライムの首領・シャインの存在&設定の是非!


 そして、第23話より登場する「クライム」の真の支配者が「シャイン」であった。それまで組織内には登場していなかった敵の首領として、作品内に位置することとなった。
 それまでは、あくまでも「人間の犯罪者による組織」であるといった色合いであった「クライム」も、幼児層や小学校の低学年の子どもたちにはその独特の良さはやはり伝わってはおらず、超常的なパワーを持った「世界征服」や「地球侵略」ではない、要は「犯罪」を目的とした集団であっては、卑近な存在に思えていたのだろう。
 「宇宙からの侵略者」によって「地球人の犯罪者を取りまとめていた犯罪組織」であったといった図式に変更されていくのだ。


 宇宙的・SF的な視野での「設定」で、作品のスケールアップを図ったのだろう。たしかに当時の合体ロボットアニメも、その敵を「地球人」の悪人ではなく「宇宙人」にすることで、子どもたちにもスケール感を感じさせていた。しかし本作では、予算の都合もあったのだろう。映像的には「シャイン」の着ぐるみなどは造られずに「影絵」が登場するだけなので、その目論見がすべて成功していたとは言い難かった。


 地に足の付いた現実世界での「犯罪者」と、それを追う「国際科学特捜隊」といった、基本設定のドラマで始まった本作には、宇宙的なまでのスケールの拡大には不整合感があったと受け止める、小学校の高学年に達していた視聴者もいたことだろう。
 こうした「現実社会の悪」に近しい設定で始まった作品における、敵側のスケールアップについては、違和感を抱いてしまったというファンの思いを代弁するような記述を、のちに『ジャッカー』以外の作品評で筆者は見ている。



「『仮面ライダーストロンガー』のシリーズ後半になって、首領の正体が宇宙人だといわれてつまらなく感じたのは、私一人だけなのだろうか。」
(『ウルトラマン対仮面ライダー』(文藝春秋刊)1993年「暗黒より来たショッカー首領」より 文・池田憲章)



 これを『ジャッカー』に当てはめみせても、個人的には同意なのだ。



 最後に、「クライム」が破壊工作を行うときに乗車していた「黒い車」についての言及を行っておきたい。あれは何を隠そう、前番組『秘密戦隊ゴレンジャー』の「バリタンク」の屋根とマジックハンドを外して、車体を黒く塗っただけの代物であったのだ。
 黒塗りにして、悪役の自動車に流用するケースは、『ウルトラマンタロウ』(73年)の防衛組織・ZAT(ザット)のパトロール車両・ウルフ777(スリーセブン)を、同じく円谷プロ制作の特撮ヒーロー番組『プロレスの星 アステカイザー』(76年)の悪の組織ブラック・ミスト団の専用車にしていたケースとも同様であったといった、薀蓄(うんちく)を語りたくなる世代人の特撮マニア諸氏もいることだろう。


*監督陣! 『ジャッカー電撃隊』の演出をつかさどり、コンセプトを実体化させたるマエストロ!


 本作『ジャッカー電撃隊』では、第1話と第2話のいわゆる「パイロット編」の監督を、『仮面ライダー』第1作目(71年)や『ゴレンジャー』の第1話などでもおなじみだった竹本弘一(たけもと こういち)が担当した。


 第1話では「トランプ」をキーアイテムに、「ジョーカー」の席上で4枚のトランプをクルクルと回転させて、敵のロボット怪人「デビルキラー」の胸に一枚一枚のトランプが張り付く描写で、華麗なるカードアクションを披露。ややアダルティーなムードを強調したアクションドラマとしての洒落たムードを強く押し出すことで、作品世界を雰囲気や映像の面でも構築することに成功していた。


 また、後述する『ジャッカー』の最終第3クールから登場する新たな変身ヒーロー「ビッグワン」こと番場壮吉の初登場回も、竹本が担当していた。
 宮内洋の弁では、ひとりひとりにバラの花を投げるのは彼のアイデアで、オープニングも竹本のコンテによるものだったとのことである。(『TV BROS』2011年6月11日号(東京ニュース通信社刊))


 竹本は前作『ゴレンジャー』よりシフト(連投)して、本作『ジャッカー』のメイン監督としての存在を確固たるものとする。



 しかし、第3話と第4話を担当したる奥中惇夫(おくなか あつお)監督の登板で、『ジャッカー電撃隊』はさらなる飛躍を見せている。
 奥中は特撮作品だけでなく、『柔道一直線』(69年)・『刑事くん』(71年 1作目のみ)・『若い! 先生』(74年)などの青春ドラマにも多くの名作を残していた。予算オーバーもなんのその。入念な作りを身上とし、なによりも『仮面ライダーV3』で地上50メートルの煙突の上にヒーローを立たせた逸話は、特撮史において語り草となるほどのいわくつきの監督であった。
 戦隊シリーズには本作が初登板であり、以後は『太陽戦隊サンバルカン』(81年)でも活躍している。


 ところで、特に戦隊シリーズのマニア向けムックが初刊行となった1980年代後半から今(2011年)に至るまで、年長の初期戦隊マニア間では支持が強かった、『ジャッカー』第1クールのハード路線については、この竹本弘一と奥中惇夫のふたりだけで監督のローテーションを組まれていた。このふたりの志向性もあって、このようなハード路線の演出的な内実が支えられていたこともまた痛感させられてしまうのだ。


 その奥中は、シリーズ前半の時期の第2クールの頭までの登板であった。ハード路線の時期の『ジャッカー』を彩った名匠として、戦隊シリーズの歴史にその名を残したのだ。



 第11話「13(サーティーン)ジャックポット!! 燃えよ! 友情の炎」の回想シーンでの桜井五郎とゲストの旧友・若宮青年とのトレーニングや、このふたりでギターを弾いて、かの名歌曲『若者たち』(66年)――本来は同名のテレビドラマの主題歌――を歌う場面や、ラストシーンでの夕日をバックに明日への希望に燃える若宮とジャッカーの4人などについては、奥中にとっては手馴れた青春ドラマ的な演出の良さが際立ってもいた。
――ちなみに、この若宮を演じたのは、のちに『バトルフィーバーJ』(79年)で主人公・バトルジャパンこと伝正夫(でん まさお)を演じることになる谷岡弘規(たにおか こうき)であった――


 その奥中が抜けたあとのシリーズ中盤以降、特に「ビッグワン」の登場後は、『仮面ライダー』シリーズの監督で知られる山田稔や田口勝彦が途中参加してきて、彼らの活躍が増えていく。
 山田監督は『ジャッカー』の当時は、『大鉄人17』の方で活躍していた。しかし、『17』が1977年11月11日で終了して、『ジャッカー』の方にシフト。最終回を含むラスト3回分で、同作の物語世界を演出の方面から実に手堅く締めくくっていた。


 最終回の要塞島ロケ地に登場した、神奈川県は横須賀市沖の無人島・猿島(さるしま)は、昭和の特撮作品のロケ地としてはおなじみだ。この話を演出した山田は、『仮面ライダー』第9話と第80話などを筆頭に、前番組の『ゴレンジャー』などでも、この地を舞台にして何度も作品を撮っている。



 「助監督」についても言及しよう。


 『柔道一直線』(69年)や『仮面ライダー』第1作目以来、長らく「助監督」を務めてきた平山公夫は、『イナズマン』(73年)や『イナズマンF』(74年)に『仮面ライダーアマゾン』(74年)などでは、ペンネームも含めて「脚本」にもチャレンジしてきた。前年の『超神ビビューン』でついに「監督」デビューを果たした平山は、本作のシリーズ前半でも「助監督」を務めていた。しかし彼は、奥中惇夫が抜けたあとに「監督」としても活躍するようになる。


 他には、本作では東映ヒーロー作品には珍しく、ピープロ作品などで活躍してきた村石宏美(現・村石宏實 むらいし ひろちか)が参加していることも目に付く。
 村石は1980年代以降に頭角を現して、『電脳警察サイバーコップ』(88年)・『七星闘神(しちせいとうしん)ガイファード』(96年)・『超星神(ちょうせいしん)グランセイザー』(03年)などの東宝制作のテレビ特撮のメイン監督や、『ウルトラマンティガ』(96年)以降の円谷プロ制作の平成ウルトラマンシリーズなど、平成テレビ特撮の旗手となった人材である。
 村石は実は円谷プロの光学撮影スタッフ出身だった。同社を退社後に、大映テレビ制作のテレビドラマ『どんといこうぜ!』(69年)で「助監督」としての出発を飾っていた。以後は、自主映画『OH(オウ)! カオ』(73年)や、ピープロの『電人ザボーガー』で「監督」としての活躍を飾るようになった。
 この時期は再度、「助監督」として円谷プロの分派である日本現代企画制作の昼メロドラマ『赤とんぼ』(76年)などで活躍していたころである。風戸祐介とは『電人ザボーガー』以来の再会であったと思われる。


*ストーリーメイカー! 変幻自在の物語! 脚本家の布陣!


 本作のシナリオ陣は、前作『ゴレンジャー』より引き続いて上原正三・高久進(たかく すすむ)・新井光(あらい ひかる)・曽田博久(そだ ひろひさ)が続投。そこに、吉川進プロデュース作品ではおなじみの押川國秋(おしかわ くにあき)が参入している。


 前作以上にメインライター・上原の比重が高くなっている。実質の最終第3クールの10月第1週の1話目となる第23話「白い鳥人(ちょうじん)! ビッグワン」以降は、最終回までほぼひとりで独走の体制になっていた(第32話と第33話は除く)。


 曽田博久は第10話「11(イレブン)コレクション!! 幸福への招待」のみの参加である。高久進は新井光との合作で、先に挙げた第11話「13ジャックポット!! 燃えよ! 友情の炎」のみの参加であった。新井光も単独執筆は、第22話「赤い大逆転!! 自爆軍団を攻撃せよ」だけだ。
 ちなみに、監督の平山公夫も、自分が演出を担当した「スーパーカー」編でもある第14話でのみ、脚本家として登板している。


 こうしたハード路線の「刑事もの」であるならば、マニア的には必然的に名刑事ドラマ「Gメン75」などのメインライターも務めていた高久進の出番だったと考えてしまう。しかし上原正三は、『ロボット刑事』などはともかくとしても、いわゆる「刑事ドラマ」をまだ手掛けたことがなかったこともあってか、未開拓のジャンルに意欲を燃やすかのごとく、シリーズ前半ではひたすら「ハードな捜査路線」に徹した、実質的にはまさにいわゆる「刑事ドラマ」を描いていたことが、本作の脚本面での特徴でもあった。



 本作はシリーズ前半と後半で大きな「路線変更」があったことでもマニア間では有名である。しかし、古くは『快獣ブースカ』(66年)に始まり、この時代の上原が誇っていたもうひとつの代表作『がんばれ!! ロボコン』(74年)のコメディ路線でも名を馳せた上原だからこそ、まったく正反対の志向にイメージチェンジをしても、物語を巧みに構成できていたのだ。結果として、作品世界の「幅」を広げることに成功したとも言えるだろう。


 また、本作の特異なトピックとして、第32話「どっちが本もの?! 危うしビッグワン」のみ、同時期の『快傑ズバット』のメインライターを務めていた、後年の有名脚本家・長坂秀佳(ながさか しゅうけい)が執筆している。しかも、敵怪人・カメレアン大隊長がニセ番場壮吉に変装するといった、『ズバット』でも存在していた主人公とニセものとの対決シチュエーションをここでも描いていることが興味深い。


 なお、歴代の戦隊シリーズのなかでも、長坂が唯一手がけた戦隊シリーズがこの『ジャッカー』であった。


*4(フォー)アクション!! 切り札はJAC(ジャック)! 殺陣師とスーツアクター!


 「JAKQ」で「ジャッカー」と読ませる「ジャッカー電撃隊」。「JAC」で「ジャック」と読ませる「ジャパン・アクション・クラブ」。


 『ジャッカー電撃隊』のアクションは、『ゴレンジャー』のシリーズ終盤から担当を始めたJAC(現JAE ジャパン・アクション・エンタープライズ)が引き続いての登板となった。


 ヒーローのスーツアクター人選に目を向けると、主役ヒーローの「スペードエース」は、JACの春田三三夫(はるた みさお 現・春田純一)がシリーズの前半を担当。シリーズの後半ではJACの岡本美登(おかもと よしのり)が担当していた。
 「ダイヤジャック」は鈴木弘道。鈴木は『超神ビビューン』では超神バシャーンのスーツアクターを務めていた。
 「ハートクイン」は横山稔。横山も『ゴレンジャー』終盤でアクションがJACに変更された際には、変身ヒロイン「モモレンジャー」を担当していた。80年代には石森原作の東映特撮『星雲仮面マシンマン』(84年)や『兄弟拳バイクロッサー』(85年)のアクション監督も務めている。
 「クローバーキング」は古賀弘文の配役であった。古賀については後述するとしよう。


 春田三三夫は『ジャッカー』の直前には、『超神ビビューン』で主役ヒーロー・ビビューンのスーツアクターを演じていた。『ビビューン』が1977年3月で放映終了後、後番組がアニメ『氷河戦士ガイスラッガー』になったこともあってか、本作にシフトされたのだ。
 春田は、『超神ビビューン』のOP(オープニング)主題歌映像では、新宿の高層ビルを背景に華麗なる高層ダイブを披露! 本作でもその経験を活かしてか、優美なダイブを披露していた。


 春田の回想では、以下のとおりであった。



「ジャッカーでは、スペードエースを担当しました。でもちょっとけがをして、後半は岡本さんに代わってもらいました。治ってからは、岡本さんとエースをやったりビッグワンをやったりといった感じでした」
(『秘密戦隊ゴレンジャー大全集』(講談社刊)1988年)



 つまり、「ビッグワン」と「スペードエース」は、春田と岡本美登が交互に演じていたのだ。なお、岡本の方も、2011年に公開された映画『ゴーカイジャー ゴセイジャー スーパー戦隊199(ひゃくきゅうじゅうきゅう)ヒーロー大決戦』(11年)にて、34年ぶりに「ビッグワン」を演じていた。



 今でいう「アクション監督」のことである「殺陣師(たてし)」は、『ゴレンジャー』終盤に引き続いて、JACの山岡淳二(やまおか じゅんじ)が担当。大ヒットした『ゴレンジャー』のあとだけに、力の入れ具合は大きかったことだろう。


 『ジャッカー』の場合は、「クライム」の「デビルロボット」や「戦闘員」と戦いながら、「決めゼリフ」も発することが特色であった。その「決めゼリフ」と「アクション」とのシンクロ度合いが絶妙で、「見せ方」にも工夫がなされており、実に飽きさせなかった。
 さらに、名乗りポーズでの“止め”と対する“動き”のコントラストが強調され、メリハリのあるアクションの印象を強めた。


 必殺技の「ジャッカー・コバック」では、4人が円陣を組んで敵を取り囲み、実に細かいカット割りで、相手に各々のエネルギーを同時にぶつけて、やはり敵に四方から同時キックを浴びせるといったものだった。
 全員の息がピタリと合わないと撮影もNGになってしまうだろう、難易度の高いアクションであり、観る側にも強いインパクトを与えていた。
 しかし、実にカッコいいのだが、子どもたちのごっこ遊びに取り入れられるものではない。テンポやカット割りも当時としては細かすぎて、児童には浸透しにくくかったかもしれない。


 山岡は、『電子戦隊デンジマン』(80年)から『光(ひかり)戦隊マスクマン』(87年)の第5話までの「アクション監督」も務めている。80年代の戦隊シリーズのアクション演出の構築に多大なる貢献をしているのだ。
 その後は、東映メタルヒーローシリーズの『機動刑事ジバン』(89年)から『ブルースワット』(94年)までの「アクション監督」も担当。
 『超力(ちょうりき)戦隊オーレンジャー』(95年)から『激走戦隊カーレンジャー』(96年)の第25話までの「アクション監督」も務めて、アクション演出面で東映特撮に多大なる功績を残している。


*JACメンバーも実は顔出しで出演! 『ジャッカー』でのJAC人命艦!


 JACメンバーの顔出し出演も要チェックである。


 第1話での「ダイヤジャック」こと東竜(ひがし りゅう)を護送する刑事や、第21話で敵怪人・デビルバッターを監視する科特隊の隊員は、石森原作の東映特撮『アクマイザー3(スリー)』の主役ヒーロー・ザビタンや、後年の『仮面ライダーBLACK』(97年)の敵幹部・バラオムに、『仮面ライダーBLACK RX』(88年)の敵幹部・ジャーク将軍や、『重甲ビーファイター』(95年)の敵幹部・ギガロなどのスーツアクターを務めた高橋利道(たかはし としみち)が演じていた。
 『RX』の敵ロボット幹部・ガテゾーンや、先の『ビーファイター』の敵幹部・ギガロの声も、高橋は本職の声優も顔負けなくらいのウマさで、シブさと同時にスマートさをも感じさせるカッコいいボイスで演じている。


 第1話では、他にも春田三三夫と、後年の東映特撮『宇宙刑事シャリバン』(83年)の敵幹部・ガイラー将軍を顔出しで演じていた栗原敏(くりはら さとし)らが冒頭で襲撃される科学特捜隊の隊員役を演じていた。


 第9話での銀行ギャング役には、益田哲夫(ますだ てつお)が(OPには記載なし)、麻薬Gメン・西崎の役では先の栗原敏などが確認できる。
 益田は、東映特撮『人造人間キカイダー』(72年)のライバルヒーロー・ハカイダーのスーツアクターや、同じく東映特撮『正義のシンボル コンドールマン』(75年)の主役ヒーロー・コンドールマンのスーツアクターなども務めた。後楽園遊園地(現・東京ドームシティー)で開催されていた「戦隊ショー」でもヒーロー役の声優としておなじみだった。


 特に益田は、第29話でも攻撃された警備員役で登場。マニア的にはあの独特の声で明らかに本人だとわかるのだ。益田が声を担当してきた後楽園遊園地の「戦隊ショー」も観てきたような戦隊マニアの方ならば。


 なお、この『ジャッカー』でのJACメンバーは、翌年の東映版『スパイダーマン』(78年)でも活躍。


 特に「クローバーキング」を演じた古賀弘文は、あの独特のアクションを披露するスパイダーマン役に抜擢され、OP主題歌映像でのテロップでも「スパイダーマンアクション 古賀弘文」と役名入りで記載。破格の扱いに成長したことを物語っている。その翌年の『バトルフィーバーJ』でも戦隊ヒーロー・バトルコサックのスーツアクターを務めていた。


 なお、『スパイダーマン』のメインの「殺陣師」は、本作におけるJACの山岡淳二ではなく、東映特撮『ロボット刑事』(73年)の主役ヒーロー・ロボット刑事K(ケー)のスーツアクターで、『コンドールマン』以降は技斗(=殺陣師=アクション監督)も務めてきた金田治(かねだ おさむ)であった。
 金田は戦隊シリーズでは『バトルフィーバーJ』(79年)や、『宇宙刑事ギャバン』(82年)から『時空戦士スピルバン』(86年)までのメタルヒーローシリーズに、『仮面ライダーBLACK』(87年)と同『RX』(88年)、飛んで『仮面ライダークウガ』(00年)でもアクション監督を務めている。1996年には、JACの社長にまで登り詰めている。


*渡辺宙明の『ジャッカーサウンド』! アダルティックに! ディスコチックに!


 音楽も、『ゴレンジャー』に引き続いて、渡辺宙明(わたなべ ちゅうめい)が担当。前作以上に音楽の作風もドラマ同様に対象年齢を上げているのが特徴であった。特に女声スキャットや合いの手を効果的に活かしたBGMの存在は、イージーリスニング――音楽のジャンル名。クラシックとポップスの中間のような音楽――としても高い完成度を示し、何度リピート(再生)しても聴き続けたくなるような、快感あふれる仕上がりになっている。


 渡辺は、



「こちらには挿入歌、BGMとも前作よりも大人っぽいイメージをもってきてみたんですけど、いかがでしょうか。もらった主題歌、挿入歌の歌詞も大人っぽくなっていましたので、曲のイメージも楽に出ました」
(『秘密戦隊ゴレンジャー大全集』(講談社刊))



 などと回想。作品コンセプトが歌詞にも如実に反映されており、それを活かした楽曲作りが意識されていたことも、このインタビューで明白である。


 この1977年とは、若者間では「ディスコ・サウンド」の全盛期でもあった。若者が集って(アナログ)レコードに合わせて自由に踊る空間として、1960年代後半の「ゴーゴーハウス」の新時代版的なスポットとして「ディスコ」が脚光を浴びていたのだ。
 「ビージーズ」や「ヴィレッジ・ピープル」に「ドナ・サマー」らによるナンバー(楽曲)が、ヒットチャートにランクインしていた。こうした若者間での世界的な大流行下で、あの洋画『サタデー・ナイト・フィーバー』(77年 日本公開78年)が登場し、そのブームは頂点に達していく。


 渡辺も、



「「ディスコ調でいきたいな」と考えてました。だから“チクチクチクチクチク……”と、16ビートですよね。『ゴレンジャー』までは8ビート全盛だったので、今度は16ビートを中心にしていきたいと。」



 などと回想している。


 そして、ささきいさおは元来、1960年代にはロカビリー歌手であったために、こうしたサウンドが非常に合っていたのだろう。その主題歌についてこう語っている。



「その時の(OP曲の)演奏を聴いても、カラオケでなくても歌入りで聴いても、ギターのリズムなんか素晴らしい! ギターもベースもドラムもね、素晴らしい演奏してますね。戦隊シリーズの中では最高じゃないかと思う。ピアノを弾いてるのが松岡直也っていう人で、CDのブックレットには演奏者名が書かれてないですが。今は、こちらから頼んでもちょっと先方も遠慮してね、無理に頼めばやってくれるかもしれませんけど。いつだったか、その彼がスタジオを辞めた時に電話したら、「いやぁちょっと……。じゃぁ、僕の代わりなら誰々がいいだろう」ということまで言われたことありますけどね。」



 上記の発言は、レコーディングに参加していた「スタジオ・ミュージシャン」の顔ぶれも実力者であったことを物語っている。
 この時代の特撮作品のアルバムは、まだ児童向けの装丁で、「曲名」と「歌詞」に「ヒーローのスチル写真」がライナーを占める構成であった。参加ミュージシャンの名前まで記載されるのは、第3次怪獣ブームやアニメブームとの連動で年長マニア向けにアニメ・特撮のBGM集が発売され始めた1978年で、日本コロムビアより発売されたBGM集『エキセントリック・サウンド・オブ・スパイダーマン』(78年)からであった。



「(OP曲)の『ジャッカー電撃隊』はねぇ、まぁこれも中々上手くいった方だと思いますけどね。これもその当時の思い出話っていうのは、記憶にないんですが……。『ジャッカー~』の頃はディスコ全盛時代でね、まぁこの時、歌詞の指定は日本コロムビアさんの方で配分して、「歌手は佐々木功でやってくれ」という点も、もちろん「異議なし!」ということになりました。で、OPの“ヘイヘイヘヘイ♪”って、これもやっぱりロック的な16ビートのディスコ調ですよね。「つっこめ つっこめ つっこめ つっこめ」と4つもやったのは、この元の作詞にはないですよ。「つっこめ つっこめ つっこめ つっこめ、ヘイ!」と、これは調子がイイだろうと思ってやったんですよ。やっぱり即興性がないとダメですよね。」


「そうそう、付けて調子をつけるというか……。「そういう微妙なものが重要だな」と、今でも考えてますけどね。今段々そういう事がなくなっちゃって、今の戦隊物にしても、一連のヒーロー物にしても、そういう面白さを皆やらなくなったから、私には「もうちょっと前に戻した方がいい」という考えはあります。」



 ED(エンディング)主題歌曲『いつか、花は咲くだろう』については、以下のような感慨を語っている。 



「これは、特に印象がなく、まったく覚えてません。石ノ森先生はいい詞を書きますね。私は「新しく前向きに、今の音感に合ったものをやっておかないといけない。例え子供番組の歌でも、ヤングや大人も聴くんだから、今聴いても鑑賞に堪えうるような、後々までずっと聴いてもらえるような歌にしたい」という気持ちを持ってた。要するに「子供の歌でも子供っぽくしたくない」というのが、私の念願ですね。」
(Webサイト『HERO BOX』渡辺宙明インタビュー 2003年)



 本作の主題歌・挿入歌の大半が、前作『ゴレンジャー』同様に、ささきいさおの歌唱によるものだ。力強いヴォーカルは当然だが、ささきが俳優でもあるがゆえの演技がかった歌唱も見られ、アダルティックなドラマを色濃く彩る歌が多い。
 アニメ・特撮のシンガーとして歌手に返り咲いたささきが主題歌を担当すること自体が、77年当時のこの種の作品のセールスポイントにまで成長していた印象が強い。ささきが主題歌を歌唱した『宇宙戦艦ヤマト』(74年)と『秘密戦隊ゴレンジャー』(75年)のヒットがもたらした影響の大きさを顕著に物語るのだ。


 ささき以外の歌手についても言及しよう。


 「ハートクイン」のイメージソング『それが始まりだった』は、テレビアニメ『キューティーハニー』(73年)や同じくテレビアニメ『魔女っ子メグちゃん』(74年)で知られる前川陽子が歌唱。


 『クライムのテーマ』の歌は、「台詞(セリフ)」は「アイアンクロー」で、「コーラス」は「ザ・チャープス」と記載されている。しかし、楽曲を聴くかぎりでは、アイアンクロー役の石橋雅史ではないように思える。この『クライムのテーマ』は、作詞者がCDのライナーなどに記載されていないことも目に付く。渡辺宙明の弁では、



「これの作詞は、こおろぎ‘73の、もうやめた方が英語で付けられたのです」とある。
(『秘密戦隊ゴレンジャー大全集』(講談社刊)


 なお、作詞者の個人名は、この大著の記事でも明かされてはいなかった。


 「子どもの歌でも子どもっぽくしたくない」といった姿勢が、音楽にも滲み出している。重量感のあるメロディで、登場人物の「心情」や「心の痛み」を表現している楽曲が印象的である。『ジャッカー』のドラマのコンセプトを明確にしていたことが、その音楽世界もさらに確固たるものとしたと断言してもよいだろう。


 第23話「白い鳥人! ビッグワン」より登場したギャグメーカー・姫玉三郎のテーマ曲も印象的だ。しかし、あの曲は本来この作品のために制作された曲ではなかった。過去に渡辺宙明が手がけた東映のテレビドラマ『どっこい大作』(73年)の楽曲の流用であったのだ。ほんわかしたイメージで、ズッコケた玉三郎のキャラクターを色濃く描き出していた。


 『ジャッカー』音楽集のCDを聞いていて、「あの曲が入っていない!」と思われた向きもあるかと存じるが、こうした裏話が存在していたのだ。『ジャッカー』の音楽世界を完璧にしたいのなら、VAP(バップ)社発売の『どっこい大作』サントラCD(01年4月21日発売)をゲットすることをお勧めしたい。
 特に第21話「バラ色の野球時代!! クライムの強打者」と第31話「赤い衝撃! スパイは小学四年生」では、全編にわたって『大作』の楽曲の流用が目立つ。本来、ハード路線でスタートしたこの作品には、コミカルタッチの曲がなかった。だから、ヒーローものではなく青春の息吹やアットホームなイメージを表現している『大作』の楽曲が流用されたのだろう。


*『ジャッカー』の多彩なゲストスターの紳士録!


 前作『秘密戦隊ゴレンジャー』の敵組織「黒十字軍」は、「仮面怪人」の軍団としてのテイストを有していた。そのために、「総統」「怪人」「戦闘員」に至るまで、基本的には「仮面」の怪人集団といった印象が強かった。
 しかし、『ジャッカー』では、国際犯罪シンジケート「クライム」における各支部の「ボス」は、基本的にふつうの人間であることをポイントにしていた。よって、前作以上に多彩なゲスト俳優が顔をそろえていたのだ。


 その豪華さには目を見張るものがある。それも本作が意図していた大人のドラマを意識し、ベテラン俳優による重厚な悪役の演技が求められたゆえであろう。


 そのボス役には、

●増田順司(ますだ じゅんじ)(第1話・第2話)
●杉義一(すぎ ぎいち)(第3話・第4話)
●潮健児(うしお けんじ)(第5話)
●大村文武(おおむら ふみたけ)(第8話)
●高野真二(たかの しんじ)(第9話)
●三重街恒二(みえまち つねじ)(第10話)
●黒部進(くろべ すすむ)(第12話)
●きくち英一(きくち えいいち)(第14話)
●進千賀子(しん ちかこ)(第15話)
●八名信夫(やな のぶお)(第16話)
●河村弘二(かわむら こうじ)(第17話)
●中井啓輔(なかい けいすけ)(第19話)
●大前均(おおまえ ひとし)(第20話)


 といった面々が扮し、特に唯一の「女ボス」であった進千賀子の好演は印象的である。


 だが、路線変更もあり、20話を最後に個性的なボスの登場はなくなり、犯罪シンジケートとしてのドラマが薄れていくのであった。


 また、初期の2名を除き、担当地区の「地名」などはなく、OPでの表記もみな「クライムボス」で記載されている。


 「クライムボス」の面々のみならず、人間ドラマを強調することをコンセプトに謳ったこのシリーズは、ヒーローの友人・知人や、事件で出会ったゲストの人々の活躍も忘れられない。そのすべての紹介は誌面のスペースの都合もあって不可能だが、主要ゲスト的な扱いでそのキャラクターを演じた俳優諸氏を列記してみたい。


●オスマン・ユセフ 第1話(ロバート長官)

 国際科学特捜隊・ニューヨーク本部長官役である。特撮番組では『愛の戦士レインボーマン』(72年)や『太陽戦隊サンバルカン』(81年)などでおなじみの外人俳優。『大鉄人17』のハスラー教授こと、大月ウルフから直に伺った話だが、彼は通訳でもあったらしい。

●志穂美悦子 第3話(小野夏子)

 カレンの先輩・小野夏子役。今回はクライムにより弟を亡き者とされ、自責の念に駆られるが、復讐に燃える女拳士を好演。志穂美はすでに映画『女必殺拳』シリーズでアクション女優の代表選手として名を上げていた。しかし、ご存じのとおり、彼女は『キカイダー01』のシリーズ後半に登場した変身ヒロインであるビジンダー・マリが本格的なデビュー作なのである。さしずめ古巣のヒーロー番組への凱旋帰国とでも呼ぶべき活躍を見せていた。

●高橋健二(現・大葉健二) 第3話(小野隼人)

 前番組『ゴレンジャー』では、アクションがJACに交代した終盤の「アカレンジャー」のスーツアクターとしても活躍していた。今回は志穂美演じる小野夏子の弟・隼人(はやと)役で、空手選手権優勝のためにクライムに身売りし、現金輸送車を襲撃するが、クライムに埋め込まれた爆弾で爆死する役柄であった。

●夏樹陽子 第5話(小山純子)

 本作を代表する最大の知名度を誇る有名女優のゲスト。父を人質に取られ、テニスのコーチまで務めてくれた恩人・桜井五郎のカルテを奪い出し、非情の掟を愛する父のために破る悲劇のヒロイン。

●夏樹レナ 第6話(杏子(きょうこ)=デビルアマゾンの人間態)

 テレビドラマ『プレイガール』(69~76年)で知られる女優。モデルとしての活躍もあり、本作でもそのスレンダーなプロポーションを水着姿で披露している。2011年現在も舞台を中心に女優として活躍中。

●切替徹(きりかえ とおる) 第7話(切替徹)

 本人役で、雅子夫人とともにゲスト出演。当時は「スーパーカー」ブームのスター的な存在として知られていた。実際は俳優やタレントではなく、本業は外車ディーラーのオーナーといった人物であった(*6)。
 当時は歌手として『真っ赤なフェラーリ』なるレコードもリリースしていたため、芸能人として認識しているファンもいるかと思われる。

●真田宏之(さなだ ひろゆき)(現・真田広之) 第9話(中山勝也)

 子役出身で中学生時代にJACに入団。以後、地道に修行を積むなか、翌78年の東映のSF大作映画『宇宙からのメッセージ』に出演。その続編的テレビシリーズ『宇宙からのメッセージ 銀河大戦』(78年)で初主演を飾った。以後も数多くの映画で主演。1980年代のJACを支える。20代も後半に入って「脱アクション」とばかりに映画やテレビドラマで演技派へのイメージチェンジを図る。それが成功を収めて、海外進出も実現した。

●江見俊太郎(えみ しゅんたろう) 第10話(ヘンリー太田)

 終戦直後からの長い芸能生活を誇る大ベテラン。特撮作品のレギュラーこそないものの客演は多く、彼も変身ブーム時期を代表する名バイブレーヤー(脇役)であったことは間違いない。

●谷岡弘規(たにおか こうき) 第11話(若宮)

 主人公・桜井五郎の旧友で、青年科学者の若宮を好演。のちに『バトルフィーバーJ』(79年)にて、バトルジャパン・伝正夫(でん まさお)役で初主演を飾ることもあり、この回でのツーショットは戦隊シリーズ主役のバトンタッチシーンの意味合いも感じとることができる。
 元来、東宝出身の俳優で、大人気テレビドラマ『飛び出せ! 青春』(72年)のサッカー部・ゴールキーパーの谷岡二郎役や、舞台『屋根の上のバイオリン弾き』(76~82年 森繁久彌主演時期)で高名だ。

●望月賢一(香山浩介→藤堂新二) 第13話(岩崎竜一)

 師であるデザイナーの策略にはまって殺される若手デザイナー役を演じる。翌78年の『スパイダーマン』の主人公・山城拓也でヒーロー役に抜擢。以後、『電子戦隊デンジマン』(80年)や『超人機メタルダー』(87年)では一転して、悪のレギュラー幹部役でヒーローとは正反対の冷徹さを見せつけた。

●藤山律子 第14話(女性レーサー・マヤ)

 70年代の変身ブーム時期の悪役女優として世代人を中心に高い人気を誇る。本作ではフィアットやポルシェといったスーパーカーにも乗車。彼女得意のカードライビングテクニックを披露する。

●安藤聖一 第16話(リトルリーグのキャッチャー)、第31話(山本信太)

 『ジャッカー』の後番組『透明ドリちゃん』(78年)の主人公の弟・虎男や、『電子戦隊デンジマン』の大石源一で活躍の子役である。第16話「黒いベースボール!! 襲撃する魔球」はメインゲストではないが、第31話「赤い衝撃! スパイは小学四年生」では怪人とのからみも多いメインを張り、長丁場(ながちょうば)をこなす。

●安藤一人(あんどう かずひと) 第28話(西川イサム)

 当時、『小さなスーパーマン ガンバロン』(77年)でもヒーローに変身する子役の主役として好演。勇気あふれる正義の少年とは打って変わったいじめられっ子にトライ。杉義一が社長を務める東京放映に所属する俳優で、『ジャッカー』の後番組『透明ドリちゃん』、その後番組『宇宙からのメッセージ 銀河大戦』に立て続けに出演。2011年現在も地道に俳優業を続けるかたわら、川崎市で「安藤屋」という居酒屋を経営する。

●柿崎澄子(かきざき すみこ) 第30話(浜戸雪枝)

 戦時中の旧日本軍・浜戸特殊部隊隊長であった浜戸院長の孫娘役。後番組『透明ドリちゃん』で主演するが、以後も東映の吉川進プロデュースの東映ヒーロー番組の常連ゲストとして活躍。その一方で、大林宣彦(おおばやし のぶひこ)監督の映画などにも出演していた。


*『ジャッカー』のブック・パブリシティ! 出版展開をめぐって!


 前作『ゴレンジャー』同様、小学館と徳間書店が雑誌連載を行っていた。


 小学館では、前年1976年に創刊されたばかりの月刊児童誌『てれびくん』。同社の学年誌では、『めばえ』『よいこ』『幼稚園』『小学一年生』『小学二年生』のみでの掲載にとどまった。
 作品としては対象年齢を上げつつも、実際の学年誌での掲載は低学年のみの掲載で終わっているあたり、番組の企画意図が編集者側には伝わっていなかったのかもしれない。小学館の『少年サンデー』や「学年誌」を読むような、70年代前半の変身ブームを原体験に持った小学校の高学年以上の児童間では、こうした変身ヒーローものからそろそろ卒業、もしくはヒーローものに対する執着心が減っていたりで、この時期に残念ながら特撮ヒーローに対する高学年の児童間でのニーズが低下していたこともうかがえる。


 徳間書店では、月刊児童誌『テレビランド』(73~97年)での掲載だ。大ヒットした『ゴレンジャー』の後番組といった位置付けもあり、同時期の『大鉄人17』『快傑ズバット』に比べても、巻頭カラーグラビアなどで大きな扱いを受けていた。
 同社刊行の書籍『テレビランドワンパック』では、『ジャッカー電撃隊』が第18巻として発売されている。現物を見ていないのでなんとも言えないが、表紙を見るかぎりでは「ビッグワン」の掲載はなさそうで、シリーズ前半の4人編成時期の内容で終わっているようだ。


 他には「エルム」と「ひかりのくに出版」などの「絵本」の存在を確認している。
 エルムでは、『プレイブック』シリーズで、本作の「絵本」を刊行していた。しかし、ちょうどこの作品の放送時期に倒産してしまっている(『ジャッカー』の「絵本」は、本当に同社の末期であったようだ)。
 ひかりのくに出版刊行の「絵本」は、『忍者キャプター』のキャラクターデザインも担当した・漫画家・聖悠紀(ひじり ゆうき)がイラストを担当していた。彼の隠れたワークスを確認できる1冊となっている。


 なお、『ゴレンジャー』とは違って、石森章太郎の筆による「原作漫画」は存在していない。上記雑誌での漫画は石森プロの漫画家たちが担当していた。
 この時代は、天下の石森章太郎原作だとはいえ、テレビ作品の漫画連載は「児童誌」に集中。『ゴレンジャー』のように「週刊少年漫画誌」に掲載されることはなくなりつつあった。
 その分、「児童誌」での比率が高くなるのだが、この時期には特撮ヒーロー作品のなかには児童間でのブームを牽引するほどのヒット作がなく、「ロボットアニメ」や「スーパーカー」ブームの扱いの方で活性化させていた動きが誌面に顕著に見られる。


*トイコレクション! 玩具の『ジャッカー』ワールド!


 前番組『ゴレンジャー』同様に、玩具会社・ポピーより「ポピニカ」や「超合金」ブランドを中心に合金製のメカや人形などの各種玩具を、玩具会社・バンダイはプラモデルを発売していた。


 ミニサイズのソフビ(ソフトビニール)人形は、「ジャッカー」の4人が商品化されていた。しかし、指揮官の「ジョーカー」(サングラス着用時の顔立ちで商品化)、さらに「スペードマシーン」「マッハダイヤ」「ダイヤタンク」「スカイエース」の乗りもの類までソフビ化といった、前番組以上の展開が試みられていた。
 だが、最終第3クールの3ヶ月のみの活躍であった「ビッグワン」は商品化されることはなかった。


 しかし、乗りもの類は『ゴレンジャー』のメカ玩具同様に、プラスチック製の「車輪」が付属。「コロ走行」(手押しでの車輪走行)が可能といったギミックを有していた。翌78年、リバイバルブームで発売されたウルトラマンシリーズにも、戦闘機「ウルトラホーク1号」や車両「ポインター」などのソフビアイテムが発売されることとなり、人形型でないソフビアイテムの新境地を開拓している。


 なお、ブリスター入りのセット商品(透明プラスチックで製品を覆って、台紙に貼り付けた商品)で、「スペードエース」「スカイエース」「スペードマシーン」「マッハダイヤ」「ジャックタンク」のマシン類のソフビを中心にまとめた、『ジャッカー電撃隊 大出撃セット』なるアイテムも存在している。


 「超合金」では『DX(デラックス)スペードエース』を発売。「強化カプセル」に発光ギミックを内蔵。カプセルのフタには桜井五郎がモールド。フタを閉じると桜井の姿が映り、チャージアップ後にそれを開けると、カプセルに収納した「スペードエース」に変身! といった遊びが楽しめるアイテムであった。しかし、「ジャッカー」のメンバーの「超合金」化は「スペードエース」のみで、『ゴレンジャー』のように全戦士が発売されることはなかった。
 「ポピニカ」では、「スペードマシーン」「マッハダイヤ」「ハートバギー」「オートクローバー」「ジャックタンク」「スカイエース」の乗りもの類が発売されている。


 そして、『ジャッカー』の玩具アイテムで、最も特筆すべき存在のシリーズは、『ビクトラー』と銘打たれた「ヒーローのフィギュア」と「乗りもの」のスケールを統一して、「車」や「オートバイ」に実際に搭乗させて遊ぶことのできるプレイバリューを誇ったシリーズである。


 ヒーローの4人は、「強化カプセル」風の透明カプセルに収納されて「単品」で発売。前述の「自動車」や「バイク」のみならず、「ジャックタンク」や「スカイエース」にもフィギュアを搭乗させて遊べることが、セールスポイントとして打ち出されていたのだ。
 この『ビクトラー』。現物を見たことがある方ならおわかりのとおり、当時のタカラ(現・タカラトミー)から発売されていたミニ玩具『ミクロマン』シリーズ(74~80年)に範を得て、そのサイズ(約10センチ)から、両肩・両肘・両脚・両膝などの自由自在な関節可動ギミックまで、ほぼ同様の仕様で製作。テレビの特撮ヒーローであるのに、『ミクロマン』風のプレイワールドを実現させたシリーズでもあった。
 このシリーズは他には、翌年の東映のテレビアニメ『SF西遊記 スタージンガー』(78年)の『ビクトラー』を発売したのみで、このブランドは終了となってしまった。しかし、世代人には忘れられない名商品であった。


 『ジャッカー電撃隊 指令本部』なるアイテムも存在する。これは『ビクトラー』よりも一回り小振りな「ジャッカー」4人の「フィギュア」(各部関節も可動)と「強化カプセル」を、女児向け人形の「リカちゃんハウス」風の2階建てのオリジナルデザインでの「指令本部」名義の「秘密基地」をベースにセットした玩具であった。『ビクトラー』のシリーズではない。だが、レア度は『ビクトラー』以上に高く、今では入手困難なアイテムである。


 桜井五郎たちが変身前に着用する「ヘルメット」も、『ジャッカー電撃隊 隊員ヘルメット』と称して、『ゴレンジャー』同様に発売されて、子どもたちのごっこ遊びを彩った。なお、女性キャラクターであるハートクイン・カレン水木用も発売されていた。


 プラモデルは、バンダイよりゼンマイ走行の「スペードマシーン」「マッハダイヤ」の2点のみが発売された。つまり、『ゴレンジャー』時期に比べて非常に商品数が少ない。
 この時代はすでに「スーパーカー」ブームの絶頂期。バンダイも他メーカーに負けじとスーパーカーのプラモデルの方を商品化していた。映画会社・大映の怪獣映画『ガメラ』シリーズの商品化で有名な日東科学教材が、その火付け役であった『サーキットの狼』シリーズと銘打って(パッケージアートは、原作漫画家・池沢さとしの描き下ろし)、劇中に登場する「スーパーカー」多数を商品化して大ヒット。その影響もあってか、本作『ジャッカー』ではプラモ・アイテムが極端に少なかったのでは? と推測している。


 ちなみに、この1977年の男児間では、駄菓子屋などに置かれていたガチャガチャ(現・ガシャポン)にて購入できる、3センチサイズの「スーパーカー消しゴム」も大ヒット。学校の校庭や廊下などで、ひとさし指で弾いたり、当時は小学生の間でも普及しはじめていた安価なノック式の三菱鉛筆の黒いシャープペンシル・BOXY(ボクシイ)の側面のフックボタンを押すると、バネで後端のノックが元の位置に戻る威力を利用したレースなども大流行していたものだ。



 『ゴレンジャー』の時期には発売されていたミニサイズのヒーローフィギュアなどは、2011年現在、筆者は未確認である(実際にも発売されなかったのかもしれない)。



 この時期のポピーのヒーロー玩具の展開結果については、『トイジャーナル』(東京玩具人形問屋協同組合刊)1978年2月号に掲載された、ポピーの中西朗の発言に興味深いものがあるので、それを記載しよう。



「キャンディ・キャンディが予想以上に売れたお蔭で、当社としては前年より10%程度売上げが伸びました。しかし男児キャラクターだけに限れば3割程度は落ちてます。ただ主人公そのもの、超合金そのものは少しも落ちていません。個数的にも、ボルテスVは一昨年のコンバトラーVとほとんど同じです。では何がダメだったのかと言うと、ポピニカ関係が非常に伸び悩んだわけです」



 男児キャラクターもの、あるいは男児キャラクターものの「ヒーロー」ではなく、「スーパーメカ」の類が「スーパーカー」ブームには勝てなかったということの裏打ちになる証言でもあった。ヒト型の巨大ロボットやヒーローの合金製フィギュアのラインナップの『超合金』とは違って、『ポピニカ』ブランドはヒーローが搭乗する「車」や「オートバイ」や「飛行メカ」といった乗りものを軸にしたシリーズであった。それらについては、「スーパーカー」ブームの煽りを受けて、売上が伸びなかったのだ。


*ハードボイルド・サイボーグブルース! 『ジャッカー電撃隊』第1部・解説!


 ここからは、本作のドラマの展開それ自体についての言及に入りたい。


 先に説明しておく。こうしたテレビ作品の放映はふつう1クール=13話分(3ヶ月間。毎週放映)でひとつの単位となっている。


 しかし、本項では、物語の路線変更の兼ね合いの整理もあって、第1話~12話を「第1部」。第13話~22話を「第2部」。第23話~35話までを「第3部」としての「括(くく)り」で語らせていただこう。


 「第1部」の時期は、サブタイトルの付け方にもセンスの良さが光る。「数字」を「英語読み」させ、「カタカナ表記」の「外来語」を組み合わせることにより、一見して子ども番組とは思えないハイセンスなムードを目印として、さらに高い年齢層に訴求させようとする意図が見受けられるのだ。


 第1話「4(フォー)カード!! 切り札はJAKQ(ジャッカー)」(脚本・上原正三 監督・竹本弘一)では、主人公たちの過去に熾烈(しれつ)なものがあり、それを乗り越えて、また一度は死んだ命を蘇らせるための改造手術を用いる手段が明確で、ひとりひとりが違った境遇で「改造人間」の道に踏み出すプロセスを丹念に描いている。


 特に主人公・桜井五郎は、科学特捜隊・鯨井大助長官の要請を一度は断っていることに、


「親からもらった肉体を大事にしたいんです」


 との言葉に見られる、「改造人間」にはなりたくないといった心情が顕著であった。ゆえに、仕方なく一度は桜井の起用を諦める鯨井であった。


 東竜(ひがし りゅう)は元ボクサー。八百長(やおちょう)試合を強制されて国外へと逃亡。ラスベガスでハスラーをしていたところを、殺人騒動に巻き込まれて日本に逃げてきたところで逮捕。しかし、無実なのだ。「クライム」を相手にするのは無謀だと断るも、「見込み違いをしていたようだ」と言って挑発してきた鯨井長官の元にすぐに参上してサイボーグ化を承認し、鯨井とともに笑い声を上げあうのであった。


 父娘水いらずで夕食の外食を楽しんだあと、麻薬組織を一網打尽にされた「クライム」の復讐によって、帰宅途中のタクシーにトラックが突っ込んできたことで、父は殺され、自分も両腕を失った女刑事・カレン水木。鯨井に父の仇とばかりに自身の改造手術を懇願する。


 海洋学者を志すが、海底を探索中に酸欠状態となって死亡して、死体で帰ってきた大地文太。彼を甦らせるために、鯨井は改造手術に踏み切るのだった。


 こうして3人のサイボーグ戦士が誕生した。だが、最後のひとりが決まらない。そこへ桜井五郎が、鯨井の前にやってきた。彼は偶然にもカレンを救出したことがきっかけで考え直して、鯨井の依頼に応えることを決意したのだった。



 これらが第1話のAパートをフルに使って描かれていくのだ。桜井は鯨井の依頼を一度は断ったにもかかわらず、オリンピック選手としての「夢」を、「正義」のためにはかなぐり捨てて「改造人間」の道に踏み込むのだ。


 人間の利他的な「自己犠牲」の精神から来る「正義感」、「滅私奉公」精神を色濃く打ち出していることが、本作の特徴でもあった。『帰ってきたウルトラマン』(71年)第1話「怪獣総進撃」(脚本・上原正三 監督・本多猪四郎)で、少年と子犬をかばって一度は死んだ主人公青年・郷秀樹(ごう ひでき)にも通ずる、我が身を犠牲にまでしてみせる「正義感」が、ここでは少々違ったかたちで描かれてもいたのだ。


 また、父娘ともに「正義感」に燃える「刑事」でもあったカレン水木の境遇には、脚本家の上原正三の家庭環境が、父親と姉が双方ともに「警察官」であった実体険が反映されているとも看て取れるのだ。このキャラクターシフトは、彼がのちに手がけた『宇宙刑事ギャバン』(82年)のコム長官(演・西沢利明)とその娘のミミー(演・叶和貴子)でも生かされているようにも思えることが興味深い。



 以後、第2話「2(ツー)テンジャック!! 秘密工場を電撃せよ」(脚本・上原正三 監督・竹本弘一)では、ボクサー時代のトレーナー・山内の仇を取るために、勢いあまって敵の罠にはまってしまう東竜(ひがし りゅう)を描いた。


 第3話「5(ファイブ)フラッシュ!! ほえろパンサー」(脚本・上原正三 監督・奥中惇夫)では、カレンの先輩・小野夏子(演・志穂美悦子)が弟を「クライム」に殺され、復讐に燃えて一度は封印したヌンチャクを持って、敵地へと乗り込む展開を見せる。


 第4話「1(ワン)ジョーカー!! 完全犯罪の死角」(脚本・上原正三 監督・奥中惇夫)では、たまたま出会った少女に亡き妹の面影を見出すが、「クライム」の新兵器・レーザー砲の犠牲となって、怒りを燃やす大地文太の執念が物語の軸となった。


 第5話「3(スリー)スナップ!! 裏切りのバラード」(脚本・上原正三 監督・竹本弘一)では、父を人質に取られ、恋心を抱いていた桜井のカルテを盗み出す科特隊員の小山純子の悲しみを描く。


 第6話「9(ナイン)ポーカー!! 美女の罠」(脚本・押川國秋 監督・竹本弘一)では、東竜がギャンブラーとして「クライム」の女スパイに近づくため、トランプのポーカーでの賭けに挑み、アダルト色を強めた大人のドラマを確立する。


 第8話「6(シックス)ターゲット!! 爆発する花」(脚本・押川國秋 監督・奥中惇夫)では、カレンの友人とブティックの店長が殺害され、自責の念に駆られるカレンの苦悩を描いた。


 第9話「7(セブン)ストレート!! 地獄の必殺拳」(脚本・上原正三 監督・竹本弘一)では、カレンの知人で麻薬Gメンであった兄の仇を打つために、麻薬密売組織に潜入するゲストの真田広之演じる勝也青年の行動が軸になる。


 第10話「11(イレブン)コレクション!! 幸福への招待」(脚本・曽田博久 監督・竹本弘一)では、いつしか800億円の美術品の相続人となり、それゆえ「クライム」に付け狙われるゲストの太田美紀の境遇から、「真の幸せは、高額の金品ではない」ことを訴える。


 第11話「13(サーティーン)ジャックポット!! 燃えよ! 友情の炎」(脚本・上原正三 監督・奥中惇夫)では、欲に目の眩んだ上司の手により自分の研究をクライムに渡されたことがショックで、研究所を辞めた桜井の友人・若宮の苦悩と、それを励ます桜井の友情を見せていく。


 第12話「10(テン)ピラミッド!! 黄金仮面の迷路」(脚本・上原正三 監督・奥中惇夫)では、クライムの集中拷問を受けて記憶喪失になってしまった桜井の記憶を取り戻すために、カレンがサイボーグ化されるきっかけになった事件を再現することを提案し、児童向けヒーロー番組としては異質な、大人向けの「刑事ドラマ」的なシリアスな作劇が展開。ハードボイルドな仕上がりを見せていた。



 このハードな世界観に「一輪の華」を添える淡い純愛的な描写も見逃せない。第5話での桜井五郎と小山純子のテニスのレッスンシーン。第8話での東竜と太田美紀の空港での別れのやり取り。そして、第12話での記憶喪失になった桜井を案じ、何もできない自分を切なく思うカレンの気持ち……。戦いの中に芽生えた小さな愛めいた描写も、アダルト志向の物語をさらに強化していたのだ。


 そして、このシリーズでは、桜井五郎とカレン水木のロマンスが意識され、それが物語の中に存在している。このふたりの出会いこそが、「ジャッカー」というサイボーグ秘密部隊の設立の一因でもあったからだ。
 その後も何気に桜井とカレンがコンビで潜入捜査を行うことが多いのだ。これらが、いつしかふたりの愛の描写へと発展するイントロダクションであったことも、この項では言及しておきたい。この愛の描写は、後述する最終回手前の第34話で完成の域に達する。


 前述のようにハード志向で、特にジャッカーの知人やその家族が被害に遭ったり、殺人・麻薬密造・武器密売にからむといった「刑事ドラマ」的な内容の展開が多い。
 また、「ジャッカー」は地道な捜査を行い、そのプロセスの丹念さが人間描写につながってもいる。しかし、それらが結局、児童層には難解で、退屈なものとして受け取られてしまったうえに、企画で意図していた児童層より上の年齢層への波及もうまくいかなかったのだ。


 そんななかで、当時の「スーパーカー」ブームを意識した第7話「8(エイト)スーパーカー!! 超速300キロ」(脚本・上原正三 監督・奥中惇夫)については、本作のシリーズ前半においては珍しいゲスト子役の存在もあってか、逆に異色作に見えてしまう。
 なお、このエピソードのサブタイトルに見られる「時速300キロ」の語句は、「スーパーカー」ブームの主役であった「ランボルギーニ・カウンタック」の最高時速が300キロであり、「スーパーカー」のひとつの基準としてこの数値が世間にも認識されていたからかと思われる。


*『ジャッカー』の大きな「路線変更」! その「理由」と「背景」を検証する!


 こうしてスタートした『ジャッカー電撃隊』。


 『ジャッカー』は番組開始当初こそ、2桁の視聴率を獲得していた。しかし、そのアダルト志向のドラマが児童には難解であったのか、視聴率が下降してしまう。


 その理由の一因として、裏番組のTBS『クイズダービー』(76~92年)の躍進も作用していることは間違いない。小学校も中高学年にも上がると、本作『ジャッカー』にかぎらず、合体ロボットアニメなどから卒業してしまった御仁も出てくる。世代人でも『ジャッカー』中盤の時期になると、なんとはなしに『クイズダービー』の方を観始めていたと記憶する御仁も多いのだ。
 放送開始より1年以上が経過。すでに30%台(!)の高視聴率を獲得するまでに成長した超人気番組の裏という状況も、ネックになっていたと思われるのだ。


 さらに、他の裏番組に目を向けると、フジテレビがお笑い番組『欽ちゃんのドンとやってみよう!』(75~77年)を1977年3月でいったん休止するため、その名のとおり“代打”的なリリーフとして放映したバラエティ『がんばれ! ピンチヒッターショー』(77年)、日本テレビは『オールスター 親子で勝負!』(76年)を送り込んできていた。


 一方で、放映時間帯が土曜夜7時30分枠ではなく、夕方6時枠で『ジャッカー』が放映されていた関西地区ではどうであったろうか? それなりの高視聴率を期待するが、予想に反し東西での差はなかったのだ。


 土曜夕方6時枠で放映の関西地区では、毎日放送が料理番組『料理天国』(75~92年)、読売テレビは『爆笑三段跳び!』(76~78年)(関西ローカルのお笑いバラエティ)が放映されていた。関西テレビでは、フジテレビ・大映テレビ制作の『怪人二十面相』(77年)も土曜夕方6時枠で放映されていたのだ。
 奇しくも、1年半前の『ゴレンジャー』の裏番組には、日本テレビ・日本現代企画が制作した『少年探偵団(BD7)』(75年)が読売テレビに配されていたのと同様に、「戦隊」の裏番組には再度、江戸川乱歩原作の『少年探偵団』路線が激突するといった状況に陥(おちい)っていたのだ(*7)。


 小学生でも中高学年以上にでもなれば、どちらを採るかといえば、関西地区では『ジャッカー』でなく『二十面相』を取ったケースも多々あったかと思われる。この時代の小学校の図書室や学級文庫にも、江戸川乱歩の『少年探偵団』こと『怪人二十面相』シリーズ(1936~62年)は、まだまだ定番で人気もあった。世代人であれば、これらの作品のテレビドラマ化ともシンクロして、読みふけった記憶があるだろう。


*1977年の石森テレビ特撮の「路線変更」! 『大鉄人17』も! その功罪!


 この「路線変更」は、同時期の東映特撮作品でも見られる。当初は視聴者の対象年齢を高めに設定したのだが、視聴率面では及第点に達しなかったことから、内容を年少者向けに下げることの実行に踏み切るケースは他にもあったのだ。


 その代表作は『大鉄人17』だ。リアルロボットアニメの先駆け的な「ミリタリー色」と「巨大ロボットSF」との融合。そのなかでのヒーロー側の組織・レッドマフラー隊vs宿敵ブレイン党に見られる、欧米の戦争映画なみの密度を誇った「駆け引きドラマ」の面白さは、子ども向け番組とは思えぬ質の高さを提示していた。


 とはいえ、メインターゲットの子どもたちにとっては難解だったり地味であったりして、視聴率は低迷。第15話「ゴメス! 戦場に散る」を最後に、アダルト志向のミリタリードラマ路線は幕を閉じる。以後は翌週より登場した黒い学ラン姿の浪人生であるギャグメーカー・岩山鉄五郎(*8)の存在による、漫画チックな笑いの要素が目立つようになっていくのだ。


 さらに、本来の主役ロボット・17(ワンセブン)も、目の点滅だけで主人公との会話をしていたのが、子どもにもわかりやすくといった配慮も手伝い、人間の言葉を話せるようになる。
 それに、ホットパンツ姿の悪役女性キャラ・ピンクジャガーとブルージャガーによるお色気も交えていく。良く言えば、バラエティ性を強めた娯楽色豊かなイメージにモデルチェンジ。悪く言えば、本来のコンセプトを払拭してしまうような「梃(てこ)入れ」を選択して、シリーズ初期のドラマに心酔していた視聴者を突き放すような「路線変更」を実行してしまう結果を見せていたのだ。


 ただ、『17』の場合には、それ以上に裏番組で東映制作のテレビアニメ『キャンディ・キャンディ』(76~79年)がすでに女児層のなかでトップクラスの超大人気を獲得するほどの成長を見せていただけに、これには巡り合わせの不運の方が大きかっただろう。1977年3月にスタートした『17』は全35話、放映8ヶ月の77年11月に完結している。


 だが、本放送終了直後に、スポンサーのポピーの尽力で、年末年始商戦を乗り切るために、『17』は制作局の毎日放送を中心として各地で再放送(*9)を開始した。面白いことに、制作局であり主幹局の毎日放送でのオンエアは、本放送を超える視聴率(平均11.7% 最高15.9%)を獲得していたことには驚かされるのだ。


 その逆に、『快傑ズバット』は、これといった「路線変更」もなく、ひたすら“復讐劇”に徹することができていた。視聴率は当時の東京12チャンネル(現・テレビ東京)でもトップクラスの高い数字を獲得。視聴者も幼児よりは上の層、中高大学生にまで広がった。この時代には地方に系列局を持たなかった東京12チャンネルの規模の小ささといったハンディをものともしなかったのだ。しかし、視聴率はともかく、玩具が売れなかったといったことが災いし、半年と少々の放映期間である全32話で幕を閉じる結果となっていた(*10)。



 『ジャッカー』初期のハード路線終了により、番組の結果としての好成績を収められなかったことから、プロデューサーの吉川進は後年、



「変に対象年齢を上げて欲張った考え方はしない方が良いのです」



 石森プロのマネージャー(当時)・加藤昇も、



「二作目の企画で陥りやすい問題点、シリアスになりすぎたことを反省しています」


 メインライターの上原正三も、



「こちら側にも、計算外の暗さが、中盤までついてまわりましたね」



 とコメントしている。ハード路線の作風を支持する我々マニア連中とは裏腹に、これはこれでもっと大人の視線で、物事を大所高所から達観してみせていたのだ。
(いずれも、『秘密戦隊ゴレンジャー大全集』より)



 今思えば、実は『ゴレンジャー』も当初は、ある意味では『ジャッカー』初期編にも通じるようなハード路線ではあったのだ。だが、いつしかキレンジャーを中心としたコメディリリーフの活躍。ギャグ怪人の個性。必殺技・ゴレンジャーストームの意表をついた決め技など、予想もしない方向へと進んでいったのだ。
 それが結果的に視聴率を上げることにもなったのだ。「時代の主役」にも押し上げていった「路線変更」があったのだ。


 『ジャッカー』は、『ゴレンジャー』のシリーズ後半とは「差別化」させる意味合いもあって、ハード路線で放映を開始した。しかし、『ゴレンジャー』がそのシリーズ初期編でもまだ有していた“陽”“笑”の要素には大幅に欠けていた。それが決定的な違いであった。そして、それが当時の子どもの視聴者を遠ざける結果になった一因ではあったとやはり整理はできるのだ。


 吉川もこう回想している。



「しかし、『ゴレンジャー』の不思議なパンチ力に比べると地味な印象は否めませんで、視聴率的には苦しかったですね。」
(『超世紀全戦隊大全集』(講談社刊)1993年)


*よいこの友達 改造人間万才!! 変節する『ジャッカー電撃隊』第2部・解説!


 「路線変更」に乗り出した『ジャッカー電撃隊』の世界を検証してみよう。


 第13話より、「英語」(カタカナ表記)と「数字」を目印に構成されたサブタイトルは廃止された。『ゴレンジャー』に倣(なら)ったのか、「色名」をサブタイルに導入する(第14話のみ例外)。より児童層にはアピールするものとなり、物語の内容も年少者向けにストレートな「活劇」へと作風が変わった。


 サブタイトルへの「英語」の使用例は、その後の東映のメタルヒーローシリーズ『ブルースワット』(94年)で、初期のエピソードでの「サブタイトル」に「英語」を用いていたことを思い出す――しかも、画面では「カタカナ」表記だが、実はシナリオでは「英字」表記なのだ――。
 しかし結局、低年齢層向けへの路線変更によって、ふつうに日本語を使用した「サブタイル」へと変貌を遂げている。ここでも、当時の東映特撮マニアたちは「歴史は繰り返す」といった印象を受けていた。
――しかし、もう驚いたり、憤(いきどお)ってみせたり、といった激越な青クサい反応を見せるような東映特撮マニアはほぼいなかったと思われる。この時期になると、70年代東映ヒーロー世代も社会人になりだしたころなので、「そんなものだろう」と冷静に受けとめていたものだ――


 こういった児童向けヒーロー番組も、周期的に対象年齢を上げようとするアクションが行われてきた。しかし、なかなか思うようには行かないことの方が多かったのだ。



 「第2部」の開幕編ともいえる、第13話と第14話は、まだシリーズ初期のイメージでの「犯罪ドラマ」で物語が構築されている。


 しかし、第13話「青いキークイズ!! 密室殺人の謎・なぞ」(脚本・上原正三 監督・平山公夫)での「ファッション・ショー」のエピソードにおける、大地文太のヒッピー風の変装や、そのラストシーンにおける「ジャッカー」のメンバーがモデルに扮しての不慣れなファッションショーでのリアクションに見られるコミカルな描写などは、本作における事実上のマイナーチェンジの第一歩を感じさせている。


 第14話「オールスーパーカー!! 猛烈!! 大激走!!」(脚本・監督 平山公夫)では、「要人暗殺」と「秘宝捜索」を軸とした物語で、この回は「スーパーカー」編の2回目にも相当する。この「スーパーカー」を活かすためにも、必然的にスパイアクション的な要素が強くなったのだと思われる。
 なお、前回の「スーパーカー」編の第7話とは違って、児童ゲストがいないために、シリーズ初期編のイメージでの大人の人間ドラマ作劇には仕上がっていた。


 「児童ドラマ編」的な印象が強まるのが、第15話「真赤なオカルト!! 怪談・吸血鬼」(脚本・上原正三 監督・奥中惇夫)からであろう。


 『ジャッカー』の第1クールは「大人の世界」といった感が強い。「子ども」が物語に関わる話が少なかったからだ。それが、メインターゲットの児童層への親近感を意識してか、子役ゲストの回が増えていく。「ジャッカー」が「子どもたちのお兄さん」的なイメージに変化していくような印象を与えていくのだ。


 ちなみに、『ゴレンジャー』では児童層への接点的な存在として、少年キャラクターの加藤太郎(演・小沼宏之)が存在していた。しかし、『ジャッカー』では「レギュラーの子役キャラクター」がいない。そのために、より「大人の世界」といった感を強調していた。『仮面ライダー』でいう「旧1号編」(第1話~13話)のようなものだろう。


 だが、『ジャッカー』では「路線変更」後も子役のレギュラーを加えることはしなかった。ひたすら「大人のゲストキャラクター」を軸にしての「児童向けのドラマ」を描いていった。


 しかし、夏季放送分となる第2クールでは、いわゆる「夏の怪談シリーズ」も交えたことで、犯罪者のドラマを色濃く描いていた第1クールとの差が付いてきていた。


 この第2クールには、「野球」のエピソードが2本もあることも特徴だ。この1977年当時も、まだ子ども間でも「野球」の人気は高かった。2005年あたりまでと同様に、この時期は東京讀賣巨人軍の全試合がテレビで生中継されており、高視聴率を獲得するのが当たり前のことだったのだ。
 1977年当時は、巨人軍の選手であった王貞治(おう さだはる 現・福岡ソフトバンクホークス球団取締役会長)が、756本目のホームランで世界記録を更新した年でもあった。
 「野球どアホウ」の異名を持つ漫画家・水島新司(みずしま しんじ)による『ドカベン』(72年)・『一球さん』(75年)・『球道くん』(76年)といった野球漫画も各少年漫画誌で連載されていた。リトルリーグを舞台にしたアメリカ映画『がんばれ! ベアーズ』シリーズ(76~78年)のヒットにも見られる、「野球」関連のトピックが充実していたことも影響していたのだろう。
 2011年現在では、ワールドカップでの「なでしこジャパン」の優勝や、児童向けテレビアニメ『イナズマイレブンGO(ゴー)』(11年)などの影響で、サッカーが男児のなかで人気のスポーツである。しかし、1977年当時の男児層の間での「野球」人気は絶大であったのだ。


 その「野球編」である第16話「黒いベースボール!! 襲撃する魔球」(脚本・上原正三 監督・奥中惇夫)での特筆事項は、「鉄球」に変化した敵怪人「デビルボール」へのトドメとして、いつもの「ジャッカー・コバック」でなく、全員がバットを持って「鉄球」を叩いて、最後は「ジャッカーコバック・ホームラン」という荒業(あらわざ)を用いたことであった。子どもにもわかりやすく、そして思わず笑ってしまうような必殺技への回帰が、ここでは見られたのだ。


 第21話「バラ色の野球時代!! クライムの強打者」(脚本・上原正三 監督・竹本弘一)に登場した敵怪人「デビルバッター」は、野球に熱中しすぎて「クライム」を追放されて、ジャッカーに取り入る。しかし、しかしそれはウソであり、科学特捜隊本部の原子炉破壊の任務を執行するための作戦であったことが印象的であった。
 敵をあざむくための芝居の「コミカルな描写」から「悪事を行う描写」に至るまで、「デビルバッター」の声で常時出ずっぱり的な印象を与えており、『ゴレンジャー』にて敵怪人の「野球仮面」も演じた名声優“永井一郎オンステージ”的なストーリーでもあった。


 この時期のそれ以外の特徴では、30分枠の前半こと「Aパート」の冒頭から、変身した姿での「ジャッカー」の出演が増え、怪人との対決シーンも早い時刻で登場。児童層を引きつけるような作劇が試みられている。
 シリーズ当初での「人間パート」を極力増やし、「変身」は最後の3分程度にとどめるようなスタイルが、いつしか大幅な変化を遂げていたのであった。


 そんな『ジャッカー』の「第2部」的なこの時期も、第22話「赤い大逆転! 自爆軍団を攻撃せよ」(脚本・新井光 監督・竹本弘一)で一区切りとなった。
 このエピソードでは、敵の「クライムスクラップ軍団」の猛攻と、バリヤーに遮られて「スカイエース」や「ジャックタンク」が突破できない苦境に陥って、変身できない桜井たちの窮地を救うために、「ジョーカー」が戦闘員・クライマーの炊事兵に変装。トラックに積んだ野菜でカモフラージュ。敵のアジト内に「強化カプセル」を持ち込む大活躍を見せるのだ。


 そこで手荒な応対を受けた「ジョーカー」がクライマーに、


「ジャッカーに言いつけてやるから!」


 と、シリーズ屈指の名(迷)セリフ(?)を発して、観る者を大爆笑させるのであった。


*『ジャッカー電撃隊』第3部! 参上! 「白い超人」&「行動隊員・見習い」!?


 「第1部」と「第2部」とで色合いを変えてしまった『ジャッカー』に、さらに新メンバーが加入するといった「テコ入れ」が第23話より実行された。


 あとから参入するから、「後輩の新人戦士」や「アウトロー的な番外戦士」なのかと思いきや、そういった先入感には当てはまらない、斬新なコンセプトとキャラクターシフトを持ったキャラクターが登場するのだ。


 結果的に、本作『ジャッカー』の顔にまで躍進した新ヒーローになった、ジャッカー行動隊長・番場壮吉こと「ビッグワン」である。演じるのはご存じ、宮内洋(みやうち ひろし)であった。


 すでにヒーローたちを指揮する「隊長」として、「ジョーカー」こと鯨井大輔長官の存在があった。しかし、「ジョーカー」はニューヨーク本部の科学技術庁長官となったために日本支部を離れる設定で一時降板。その代役としてのシフトも兼ねていた。史上最強の「行動隊長」の存在は、大きなセールスポイントとなって、子どもたちの大注目を集めた。
 前述したように、『快傑ズバット』は視聴率が好調にもかかわらず、玩具の売り上げが振るわないために放映が「打ち切り」となって、その主演役者を『ジャッカー』に移動するかたちにてキャスティングしていたことが、後年になってからのマニア目線ではわかるのだ。


 実際、演じる宮内洋の回想でも、



「『快傑ズバット』が終わる。宮内洋のスケジュールが空く。だからテコ入れのために『ジャッカー電撃隊』に宮内を使う」(宮内としては使っていただく)
(『ヒーロー真髄』宮内洋著(風塵社刊)1998年)


 ともあったのだ。



 『ジャッカー電撃隊』の本来の主役は丹波義隆。宮内の師匠である丹波哲郎のご子息である。


 宮内自身は、



「「ギルくんの手助けができるのなら」ということでお受けしました。」
(『TV BROS』2011年6月11日号(東京ニュース通信社刊))



 と発言している。なお、この「ギルくん」というのは、宮内の話では、義隆の“よしたか”を“ぎりゅう”と読んで、略して“ギル”くんと呼んでいたことからくる愛称だ。


 「行動隊長」でもあるから、ジャッカーの4人よりは階級も上。さらに、「ビッグワン」の戦闘能力も同様に上といった、既成概念を覆す存在のニューヒーローでもあった。



 その「行動力」もズバ抜けている。あらゆる「戦法」、特に「変装術」に長けているのだ。往年の探偵映画『多羅尾伴内(たらお ばんない)』シリーズ(1946~60年)(*11)における、変装を得意とした主人公を想起させる活躍なのだ。
 すでに『多羅尾伴内』の「変装」からインスパイアされた、テレビ草創期の変身ヒーローテレビドラマ『七色仮面』(59年)や、テレビアニメ『キューティーハニー』(73年)などもあった。
 70年代の関東地区では、日曜夕方のお笑い番組『笑点』(66年)の前座の映画放映枠にて、この『多羅尾伴内』シリーズはよく放送されていたので、同作の同時代人ではなくても、70年代の世代人であればご記憶の方もいるだろう。


 そして、この当時の石森章太郎も、時代劇劇画『子連れ狼』(70~76年)などで有名な劇画の原作者・小池一夫の脚色で、『週刊少年マガジン』(講談社刊)1977年42号から新作漫画『七つの顔を持つ男 多羅尾伴内』の連載を開始していた。番場壮吉が「七変化」を得意とする設定には、そうした影響もあったことだろう。


 また、当時の大人気アイドルであるピンク・レディーのヒット曲『ウォンテッド』(77年9月5日リリース)にも、『多羅尾伴内』を意識したような「七変化」が、作詞家・阿久悠(あく ゆう)による歌詞で描かれていたのだ。我々のような当時の子どもたちには預かり知らぬことではあったが、長じてマニア化してくると、こういった昭和20~30年代(1945~1964年)のネタが、飛んで昭和50年代(1975年~)当時の大人たちにとっての「懐かし作品」にもなっており、そのリバイバルが求められていた「時代背景」も何気にわかってしまうのだ。


 そういえば、『快傑ズバット』も、小林旭(こばやし あきら)主演の日活制作の人気映画『渡り鳥』シリーズ(59~62年)から着想を得た作品でもあった。



 この番場壮吉こと「ビッグワン」の活躍は、『ジャッカー電撃隊』といった番組を、「4人のヒーロー」の番組ではなく、「1人のヒーローと4人の部下」の図式へと変化させてしまった。1人のヒーローが「ビッグワン」で、4人の部下が「ジャッカー」なのである。
 その大活躍もあって、「ビッグワン」は戦隊シリーズのなかでも、文字どおりの「至高」かつ「究極」のヒーローとして存在してしまう。


 後年、スーパー戦隊25作記念作のビデオ販売作品『百獣戦隊ガオレンジャーVS(たい)スーパー戦隊』(01年)でも、ドリーム戦隊(戦隊OBで編成)のリーダーとして「ビッグワン」は登場。その至高ぶりを発揮し、年長ファンにはもちろん、当時の“イケメンヒーローブーム”の若いマニア世代に対しても、演じる宮内洋の存在を刻印していたのだった。


 さらに、2011年の映画『スーパー戦隊199 ヒーロー大決戦』冒頭での「レジェンド大戦」のシーンでは、「アカレンジャー」と「ビッグワン」のふたりが、全戦隊の「2大隊長」的な存在として大活躍! 世代人や戦隊マニアにとっては納得の配置でもあった。石森原作の初期2戦隊の存在の大きさを、あらためて今の観客と若年マニアたちに知らしめたのだった。



 1992年の『恐竜戦隊ジュウレンジャー』以降のスーパー戦隊シリーズでは、シリーズ中盤から参入する新戦士の存在が、今では当然のようにデフォルト化。「戦隊」作品のシステム自体にインプットされているほどだが、今になって思えば、その記念すべき第1号でもあり、その演者が日本一のヒーロー俳優・宮内洋であったことこそが、「ビッグワン」の存在価値をよりいっそう大きく世に知らしめていたとも考えるのだ。


 白いコスチュームにマント姿のスタイルには、マニア目線ではデザイン原画版の『快傑ズバット』にも通ずるテイストを見出すことができる(*12)。こういったあたりも偶然ではあるが、映画の神さまの神意を感じさせなくもないビジュアルだったのかもしれない。
 白いカラーの戦隊ヒーローは、「色」の基本と言わんばかりに、他の「色」を圧倒する存在感を有していたことも何気に立証している。
 この時点では戦隊シリーズの2作目でしかなかったとはいえ、「戦隊」に「白」のカラーを用いた最初のヒーローであったことも野心的であった。結果的に、後年の戦隊シリーズが新たなデザインの試みをする場合に参照される典拠にもなっていたのだ。


 なお、彼の“壮吉”というネーミングと、「白ずくめの上下スーツ」に「帽子」のビジュアル、そして独特のダンディズムあふれる身のこなし方は、近年の『仮面ライダーW(ダブル)』(09年)の「前日談映画」などにゲストで登場していた「仮面ライダースカル」こと「鳴海壮吉」(なるみ そうきち 演・吉川晃司)にも、その面影と影響を見出すことができる。


 そして、この1977年9月3日には、巨人軍の王貞治が756本目のホームランといった世界記録も樹立していた。その偉業と背番号にちなんで「BIG1(ビッグワン)」と呼ばれていたことも忘れられない。
 『ジャッカー』の「ビッグワン」も、先に宮内が『快傑ズバット』で見せていた「日本一」の決め口上が、戦隊シリーズでさらにバージョンアップされて、派生したキャラクターでもあったことともシンクロしてくるのだ。


 『快傑ズバット』では、主人公・早川健(はやかわ けん)の無敵さ・不敵さがこの作品を見事に彩っており、そして演者・宮内洋の個性をいかんなく発揮させてもいた。その放映終了の直後に本作に登場した番場壮吉は、早川健をよりバージョンアップさせていたともいえ、戦隊シリーズの持っていた「器」の大きさと「世界観」の広がりとで、作品をいっそうスケールアップさせたともいえるだろう。


 なお、演じる宮内洋は、



「笑えるけどかっこいいというキャラクターにしてみたんです」



 と回想している。そう、1980年代中盤から90年代前半にかけては、こうした1970年代の特撮変身ヒーローものの映像や作劇的にチャチなところなどを、チャカして嘲笑的に笑うといった、テレビのバラエティー番組などが隆盛を極めていたことがあった。
 我々特撮マニアたちはそれに対して内心では「これらの作品にも、ドラマやテーマもある!」といった仕方で憤慨していたものだ。しかし、当の宮内自身が「カッコいい」だけでなく、当時から「笑える」ところもある、二面性を持った役作りであったことを明かしてもいるのだ。その意味でも、番場壮吉や「ビッグワン」は、どこかしらユーモアのセンスも兼ね備えていた宮内ヒーローの究極像でもあったのだ。



 「ビッグワン」といえば、初登場時のトリビアとして、福岡地区でのこんな秘話を披露したい。


 福岡で『ジャッカー電撃隊』は、関東と同時ネットの土曜夜7時半に九州朝日放送にて放映。『快傑ズバット』はフジテレビ系のテレビ西日本にて、土曜夕方6時で放送されていた。なお、当時の福岡にも東京12チャンネル系の放送局はなく、他系列のいずれかの放送局が同局のテレビ番組を放映といった状況であった。
 福岡地区での『ズバット』最終回の放映日は、1977年10月1日。そう、『ズバット』の最終回のあとにわずか1時間のブランクを空けただけで、宮内洋が今度は新ヒーロー「ビッグワン」に変身して登場するといった、類いまれなるミラクルが実現していたのだ!
 もちろん、単なるローカル放送ゆえの偶然ではある。しかし、いざこうしたケースがあると、作品にまつわる周辺情報や、本放映当時の地方在住の子どもたち共通の奇遇感にあふれた原体験の思い出にも密着した、楽しいトリビアへと変身するのだった。


 ただ、この「ビッグワン」は、最後の「第3部」こと最終第3クール目だけに登場したこともあってか、本放送当時は玩具化がなされていない(強(し)いて言えば、縁日(えんにち)などで売られるセルロイド製の「お面」くらいだ)。また、劇中でも「専用車」が登場しなかった。
 結果として、当時はもう当たり前になりつつあった玩具化とはシンクロしなかった特異なヒーローにもなっていた。もちろん、商品の準備と番組終了のサイクルもあって、玩具化の予定がなされたとしても、実際には間に合わないと判断されて、お流れになった可能性は高いことだろう。


*「ジャッカー」の炊事係・姫玉三郎を演じた落語家・林家源平!


 そして、番場壮吉のみならず、この『ジャッカー』第3部には、もうひとりの追加キャラクターが登場する。『ゴレンジャー』における「キレンジャー」的なギャグメーカーで、「ジャッカー」の炊事係・姫玉三郎(ひめ たまさぶろう)である。
 明らかに歌舞伎界を代表する、当時も有名であった女形(おんながた)の俳優であった五代目・坂東玉三郎(ばんどう たまさぶろう)を意識してのネーミングだったと思われる。この役を「昭和の爆笑王」の異名を持った有名落語家・林家三平(*13)の愛弟子・林家源平(はやしや げんぺい)が演じるのだ。ちなみに、彼の抜擢は、師匠の林家三平の推薦であるとのことらしい。


 玉三郎は変身こそしないが、「ジャッカー」における、『ゴレンジャー』の「キレンジャー」こと大岩大太(おおいわ だいた)的な存在であった。特に「クローバーキング」こと大地文太との掛け合いでそのキャラクターを発揮。「絣(かすり)の着物」と「下駄」のいでたちは、そのむかしに芸人・東京ぼん太が演じていたステレオタイプな「いなかっぺ」にも通じるムードで茶の間を沸かせた。


 本作での奮闘が認められてか、林家はのちに『電子戦隊デンジマン』(80年)・『宇宙刑事シャイダー』(84年)・『機動刑事ジバン』(89年)にゲスト出演。そして、『超人機メタルダー』(87年)ではメタルダーの相棒ロボット犬・スプリンガーの声をレギュラーで担当し、吉川進プロデュース作品を代表する名バイブレーヤーとして活躍することとなる。


*3(ラスト)クール! 炸裂ビッグ・ボンバー! 『ジャッカー電撃隊』第3部・解説!


 ここで言及した「ラストクール」とは、1977年10月から12月にかけての放映分であった、第23話から最終回である第35話までを意味する括りである。


 行動隊長・番場壮吉の登場後は、番場が『ジャッカー』の主役の座に収まった印象を視聴者に与えていた。変装の名人であるがゆえ、いつしか敵との変装合戦や、番場が「ジャッカー」を差し置いて、正面に出てくる活躍が増えてきたために、主役交代とのアナウンスなどなかったものの、事実上の主役交代の印象を与えてしまったのだ。


 その番場壮吉の活躍ぶりは、初登場の際にすでに顕著であった。ジャッカー本部の「ジョーカー」の椅子にふんぞり返って座っているのだ。何やらただものでない雰囲気が濃厚な登場の仕方でもあった。そして、これまでの宮内ヒーローにはあまり見られなかった、“陽”と“笑”の要素が随所に見られるのだ。


 番場壮吉といえば華麗な「七変化」が売り物だ。その描写を列記してみたい。


●第24話 奇術師
●第26話 クライマー(敵の戦闘員)
●第27話 明らかにナチス・ドイツのヒットラーを意識した総統への変装
●第28話 白髪の老科学者
●第30話 アラビア風の蛇使い(?)
●第31話 法被(はっぴ)姿の祭り人
●第32話 老婆・クライマー・カメレアン大隊長・巡査
●第33話 姫玉三郎(しかし、演じるのは林家源平ではなく、宮内洋があの着物と下駄を履いて演じている!)・謎のカウボーイ(見た目はほとんど早川健の夏服。ズボンの色が違うくらい)
●第35話 シャイン(声のみ?)


 そして、なによりも番場壮吉のパーソナリティを最大限に活かしたエピソードが、第29話「行くぞ七変化! 鉄の爪対ビッグワン」(脚本・長坂秀佳 監督・山田稔)であろう。
 番場がホテルのボーイ・片目のタクシー運転手・虚無僧(こむそう)・紙芝居屋・掃除夫に扮するのに対し、アイアンクローが蛇取り・美女・山伏・墓参りする老婆・保母(現・保育士)に扮するのだ。ただし、美女・老婆・保母については、さすがに演者の石橋雅史自身の扮装ではなかったが。前述した『多羅尾伴内』テイストが濃厚なエピソードでもあった。


 さらに、第32話「どっちが本もの?! 危うしビッグワン」(脚本・長坂秀佳 監督・竹本弘一)では、「カメレアン大隊長」が番場壮吉に変装。本家本元の番場壮吉との変装合戦を展開。敵がジャッカー本部にまで侵入してくる大攻防戦を展開する。


 また、劇中で披露されているギャグが、子どもの間でも話題になっていたテレビ・映画・ヒット曲などの流行をたくみに取り入れていたのも特徴だ。
 第28話「ぼくの秘密! ポケットの中の宇宙怪物」の「ハートクイン」と「クライマー」とのバトルシーンでは、77年10月に公開されて大ヒットしていた横溝正史(よこみぞ せいし)原作の名探偵・金田一耕助(きんだいち こうすけ)を描いた大作映画『八つ墓村(やつはかむら)』(77年)のキャッチコピーで、テレビのCMでも流されていた、


「祟りじゃ、祟りじゃ」


 といったパロディーのセリフを叫びながら、逃げまどう戦闘員の描写が存在している。


 第29話「行くぞ七変化! 鉄の爪対ビッグワン」では、銅像に変装していた「アイアンクロー」に、掃除夫姿の番場壮吉が水をかけるといった、明らかに『新春 スターかくし芸大会』(64~10年)での故・ハナ肇(はな はじめ)の名人芸へのオマージュが見られる。


 さらに、第30話「死を呼ぶ暗号! 猛毒コブラツイスト」では、


「電線に、コブラが3匹止まってた。それを猟師が鉄砲で撃ってさ」


 と当時の大人気のバラエティ番組『みごろ! たべごろ! 笑いごろ!』(76~78年)で放たれたヒット曲『電線音頭』の「スズメ」を「コブラ」にした替え歌を歌いながら踊り出す「コブラ大神官」。


 第31話「赤い衝撃! スパイは小学四年生」でも、当時の大人気アイドルで、2011年現在も再結成して活躍中のピンク・レディーの物マネをする「ハートクイン」(歌曲には『ウォンテッド』が流れる。ただしボディアクションは、77年6月リリースの『渚のシンドバッド』での「セクシー~♪ あなたはセクシー~♪」の歌詞の部分での振り付けであった、スカートより太ももを覗かせるマネが見られた)。


 この第31話のサブタイトルにも使われた“赤い衝撃”なる語句も、TBS・大映テレビ制作で、当時の大人気アイドル・山口百恵(やまぐち ももえ)主演の大人気テレビドラマ『赤い衝撃』(76年)が出典であろう。


 これらの描写には、見事なほどに“1977年”といった「時代」が濃厚に感じられるのだ。『ゴレンジャー』以上に「時代」を反映したギャグで挽回を試みたのだろう。
 当時を知らない人が見たら理解に苦しむだろうが、1977年当時に小学生以上であった人が今、これらのシーンを再見すると、タイムスリップしたような気分にさせられること請け合い(うけあい)である。


*『ジャッカー』の「路線変更」による、関東&関西での「視聴率」の大きな相違!


 「テコ入れ」を行なった上での「視聴率」についても言及する。


 実際には「ビッグワン」登場をもってしても、関東地区では期待したほど数字が上昇しなかったのだ。しかし、関西地区では放送時間帯が夕方6時台であったことが幸いしたのか、「ビッグワン」登場を境に急上昇を見せている。第24話以降は16%以下の回がない。遂には20%の大台に突入。シリーズ前半の倍以上の数字を獲得していたのだ!


 これで、“宮内洋が出れば、視聴率が上がる”といったジンクスを実現・立証することにもなったのだ。児童の間でも、無敵の白い超人「ビッグワン」は、演じる宮内洋の存在もあって、高い人気を獲得していた。


 しかし、この「ビッグワン」の登場で、見事にシリーズ前半のハードな犯罪ドラマは雲散霧消してしまうのだ。


 当時はさぞや特撮マニア間では不興を買っただろうと若い特撮マニア諸氏は推測されるかもしれない。しかし、この当時はそういったマニア的な言辞を弄するような、東映特撮作品も観ている年長の特撮マニアはまだほとんどいなかったのだ。
 1960年前後生まれのいわゆるオタク第1世代の原・オタクたちは、この時期には高校生から大学生の年齢に達してはいた。しかし、ごくごく一部を除いて、『ジャッカー電撃隊』も含めた東映特撮などを観ていなかったと思われる。
 中高生になっても東映特撮や戦隊シリーズを卒業せずに観続けるような、あるいは一度は卒業しても戻ってきたような特撮マニアが大挙として出現したのは、まさに1970年代前半の変身ブームで産湯をつかった世代が中高生に上がった1980年代に入ってからのことであったのだ。


 しかし、『ジャッカー電撃隊』を小学生時代にリアルタイムで視聴していた世代人の特撮マニアたちではあっても、同作の「ラストクール」の評価は概して低くはないのだ。やはり、この世代には原体験的にも熱烈な宮内洋ファンが多いためである。矛盾であるのかもしれないが、シリーズの第1クールともまた別のものだとして、この「ラストクール」の作風をそれはそれで支持する者が多かったりもするのだ。


*新たな「ジャッカー必殺武器・ビッグボンバー」!


 そして、「ビッグワン」の登場とともに、各話の敵怪人こと「侵略ロボット」打倒の必殺技ジャッカー・コバックが使われなくなった。「ジャッカー・コバック」ではやや「爽快感」や「力強さ」には欠けていたのか、「ビッグワン」にも必殺技に関わらせる必要もあってか、「大砲」型の武器を使う戦法が用いられることとなったのだ。その名は「ジャッカー必殺武器・ビッグボンバー」だ。


 「ビッグワン」の登場とともに、メンバーが各パーツを合体させ、完成した「大砲」に「ビッグワン」が「砲弾」を装填(そうてん)する。そして、彼の掛け声で敵怪人に対して「砲弾」が発射されるシステムとなったのだ。


 この「大砲」での攻撃といったシステムは、以後の戦隊シリーズではしばらく見られなくなった。しかし、時を隔(へだ)てて、玩具との連動での『電撃戦隊チェンジマン』(85年)の必殺武器「パワーバズーカ」で復活する。以後はこうした、パーツをメンバー各々が持ち寄って合体させて「大砲」型兵器が誕生させるパターンの先駆けにも位置するのだ。


 「ビッグボンバー」も最初のころは「砲弾」の爆撃だけによる攻撃であった。しかし、第29話「行くぞ七変化! 鉄の爪対ビッグワン」より、「砲弾」がそれぞれの敵怪人に合わせた形状に変化する。その変化した「砲弾」に対する「機械怪物」たちのリアクションが見せ場となって、前作『ゴレンジャー』の必殺技「ゴレンジャーハリケーン」への回帰もますます強く印象づけていた。


 そのバリエーションは下記に記す通りである。


●第29話 ビッグボンバー・蜘蛛の巣(くものす)攻め
●第30話 ビッグボンバー・アフリカ象
●第31話 ビッグボンバー・トウモロコシ
●第32話 ビッグボンバー・嘘つき退治(ヤットコで舌を引っこ抜く)
●第33話 ビッグボンバー・ビッグアロー
●第35話 ビッグボンバー・どぶねずみ


 本来ならば、各話の怪人の断末魔のセリフとシークエンスを再録したかったのだが、紙幅の都合で断念。


 ベストセレクトで記載するなら、第30話「死を呼ぶ暗号! 猛毒コブラツイスト」での「ビッグボンバー・アフリカ象」が一番印象的である。これは遊園地などのアトラクションで使用される「象の着ぐるみ」が落下してきて「コブラ大神官」に抱きついて、「コブラ大神官」が、


「アフリカ象、キラい~~!!」


 と絶叫しながら大爆発を起こして、断末魔を迎えるシークエンスなのだ。これは当時の『週刊少年チャンピオン』(秋田書店刊)連載の大人気漫画『がきデカ』(74~80年)でのお約束のギャグ「アフリカ像が好き!!」を意識したものであったのだ。このことは、絶大なる人気を誇るも下品かつ過激な描写でテレビアニメ化はできなかった、当時の『がきデカ』のムーブメントの大きさを物語ってもいるのだ(*14)。


 なお、最終回の1話前である第34話のみ、「ビッグボンバー」が使用されなかった。その理由は最終回についての解説で言及するので、ここでの紹介は避けよう。


*姫玉三郎の存在と活躍も、作品の「色」であり「味」!


 また、コミカルな色合いを強調する、姫玉三郎の存在と活躍も作品の「色」であり「味」にまで成長している。しかし、ジャッカーの新メンバーを目指しつつも、結局は「足手まとい」のキャラクターにとどまってしまった印象は否めない。だが、姫玉三郎の“お約束”と言わんばかりに、「ジャッカー」の活躍を邪魔(?)する描写も、いつしか本作のテンプレート(定型)に収まっていくのだ。


●第29話「行くぞ七変化! 鉄の爪対ビッグワン」では、ラーメンを自転車で戦闘現場に出前する。


●第30話「死を呼ぶ暗号! 猛毒コブラツイスト」では、玉三郎がジャングルの王者・ターザンのマネをして「ふんどし一丁」で登場するが、見事に敵をだまして、その隙に人質救出に成功する!


●第31話「赤い衝撃! スパイは小学四年生」では「釣り」を楽しんでいると、クライムのスパイ機械怪物「シャチラ汗(かん)」を釣り上げて、典型的ギャグメーカーを行くリアクションで、観る者を爆笑の世界に誘っている。


 しかし、これらのキャラ描写も、恐らく『人造人間キカイダー』での名ギャグメーカー・ハンペンこと服部半平(演・植田駿(うえだ しゅん))を意識していたのだろう。しかし、それを超えるキャラクターを想像しようとした製作者の意欲もしのばれるのだ。そのために、「落語家」といったお笑い界の人材を配役。新たなる血を特撮作品に投入する大英断に踏み切ったのだと思われる。


 今では当然になった、お笑いタレントや喜劇人のテレビ特撮への出演。しかも、レギュラーといった前例はこれまでにはなかったことだ。林家源平演じる姫玉三郎の歴史的な存在意義は非常に大きいのだ。



 さて、「ラストクール」といいつつ、「最終回」を含むラスト2本についての言及がないとの指摘もありそうだ。しかし、「最終回」については「章」を区切って、このあとにじっくり取り上げてみたい。


*最終回! さらばジャッカー! 「史上初」ずくめの名作となった完結編!


 本作で特に重要視されるべきエピソードは、やはり名作である「最終回」に尽きるだろう。


 前番組『秘密戦隊ゴレンジャー』では、2年間ものロングランだったとはいえ、その「最終回」は意外にも「1話完結」で終了したので、ボリューム不足に感じた子どもたちもいただろう。特に連続テレビシリーズの場合、「最終回」は物語の総決算とばかりに、すでに「前後編」で描かれることも多かったからだ。


 この『ジャッカー電撃隊』も、「最終回」は「前後編」形式で物語にピリオドを打つことになった。しかも、この時点でも、当時は平日夕方などにひんぱんにあった再放送などで、多くのテレビ特撮の「最終回」を観てきた子どもたちやマニア予備軍の子どもたちの度肝を抜くような「完結編」に仕上がっていたからだ。
 そして、今なお、年季の入った戦隊マニアや東映特撮ファンを中心に、多くのファンたちが同作の「最終回」に魅了させれられているのだ。


 シリーズ中盤よりの「路線変更」で物語のムードは大幅に変わっていた。しかし、物語の「締め」は『ジャッカー』第1クールのハード路線の作風へと回帰するのだ。しかも、戦隊シリーズのみならず、他のヒーロー作品でも見られなかったような大胆な試みが随所に見られるのだ。


 『ジャッカー電撃隊』のドラマ世界を高い水準で、また視聴者の期待を心地よく裏切って、見事に完結させようと尽力していたことが、中高生以上になってからの再鑑賞であれば再確認できるだろう。


 前編に相当する第34話「潜入! クライム要塞島」(脚本・上原正三 監督・山田稔)では、「クライム」の計画を阻止するべく、「スペードエース」の桜井五郎と「ハートクイン」のカレン水木が要塞島に潜入する。しかし、カレンが戦闘員・クライマーの銃撃で負傷をしてしまうのだ。
 単身、本拠地に乗り込もうとする桜井も、「囚(とら)われの身」となってしまう。「ビッグワン」はカレン救出のために島に現れるが、「アイアンクロー」の攻撃を受けてしまい、一時退却を余儀なくされる。
 その後、カレンは傷付きながらも桜井を助け出す。しかし、「クライマー」の追撃から逃げるなかで遂に意識を失ってしまう。桜井がカレンを目覚めさせようと絶叫するが、それを聞きつけて敵に発見され、最大のピンチを迎えるのだ。


*『ジャッカー』最終展開で描かれた、桜井とカレンの恋愛描写! その衝撃! 女子層までときめき!


 桜井とカレンのロマンスも、本作品の特徴であった。その最終展開での恋愛描写は当時としては衝撃的でもあった。この時期にすでに中高生に達していた女子特撮ファンからも、『ジャッカー』最終展開での桜井とカレンの描写にときめいていたといった話などを、後年の同人誌などで散見したものだ。はるか後年、『鳥人戦隊ジェットマン』(91年)でメンバー間の恋愛が描写されて話題となったが、その先駆けは実は『ジャッカー』でもあったのだ。実際に前作『ゴレンジャー』では、不思議とメンバー間のロマンスはまったく描かれなかっただけに、意外な感もあったほどだ。


 だが、『ジャッカー』が本来有していた、ややアダルトなドラマ性を彩る要素として、メンバー間での男女の愛を描くことは、避けては通れない道だったのかもしれない。これまでは断片的に描かれた、桜井とカレンの「ラブロマンス」がここでようやく明確に描かれて、それこそ、あの『ウルトラセブン』(67年)最終回もかくや? といった期待を抱かせてくれたのだ。


 思えば、『ウルトラセブン』でも、ウルトラセブンであるモロボシ・ダン隊員と友里アンヌ隊員がペアで活躍するシーンは多かったものだ。その愛のプロセスがいつしかシリーズ構成の中にシフトされ、些細な描写が最終回で大きな愛のドラマへと結実していったのだ。
 今になれば、『ジャッカー』の桜井五郎とカレン水木のカップルには、ダンとアンヌといった大先輩が存在していたことに気づかされる。上原正三も、「国際科学特捜隊」といった初代『ウルトラマン』の「科学特捜隊」を意識したような組織のネーミングを行いつつも、ヒーローとヒロインには『ウルトラセブン』のダンとアンヌを投影していたのかもしれない。


 また、桜井とカレンを見守るような、東竜と大地文太による冷やかすようなリアクションも、ふたりのロマンスを強調しているのだ。
 そういえば、『サイボーグ009』でも、009・島村ジョーと003・フランソワーズとの「ラブロマンス」が描かれていた。それだけに石森サイボーグ戦士ものの「王道」といった展開で、物語を締めくくろうとしていた可能性もある。



 本話では、窮地に陥る状況下で、お互いを励まし合うために、ギリシャのエーゲ海に思いを馳せて、ふたりが愛を確かめ合うシーンが、子ども向けの変身ものとは思えない「ラブロマンス」の「王道」を見せている。こういった描写こそが、本来あるべき『ジャッカー電撃隊』であったといった、スタッフの意志表示でもあったのかもしれない。
 また、こうした極限状況下での愛の確認としては、1979年版のテレビアニメ『サイボーグ009』(79年)の第37話「大森林からの脱出」(脚本・酒井あきよし 演出・鈴木行)での009と003を思い起こす世代人のジャンルファンもいることだろう。


 また、本話の特色は、桜井・カレン・東・大地の4人は変身せず、変身したのは番場壮吉こと「ビッグワン」のみであったことである。
 そう、本来のヒーローである「ジャッカー」の4人が変身することなく、ドラマが進行していく異色の展開となっていたのだ。当然5人そろって使用する必殺技「ビッグボンバー」はこの回では未使用となっていた。


 のちに、『仮面ライダー(スカイライダー)』(79年)の第34話「危うしスカイライダー! やって来たぞ風見志郎!!」で、本来の主人公である筑波洋(つくば ひろし 演・村上弘明)が劇中でスカイライダーに一度も変身せずに、ゲストの風見志郎(演・宮内洋)だけが仮面ライダーV3に変身したイレギュラーなケースもあった。
 しかし、実はこの『ジャッカー』第34話といった先達が存在していたのだ。しかも、宮内洋といった視聴率を取れる大人気俳優が共通のキーパーソンであった点に、こうした「掟破り」が実現したのだとの推測もできるだろう。


 それだけでなく、玩具を売る展開上、コスチューム姿の変身ヒーローの登場は最低限のお約束であったはずだ。しかし、この70年代後半当時は後年の80年代ほどには、番組に対するスポンサーの締め付けがなかったのか、または最終回前なので、「最後の最後」とばかりに前例のない作劇にも挑戦できたのかもしれない。


 敵側にも目を向けると、クライム幹部の「アイアンクロー」が、いつもの黒く大きな帽子を脱いで、スキンヘッドの頭部も露(あらわ)に、「戦士 鉄の爪」としての戦闘スタイルに変身するのも特徴であった。
 あの銀色の鱗(うろこ)状の模様のコスチュームは、東映の特撮時代劇『変身忍者 嵐』(72年)の主役ヒーロー・嵐の衣装の流用ではないかとの声もあるが、詳細は定かではない。


*『ジャッカー電撃隊』第35話(最終回)「大勝利! さらばジャッカー」!


 後編である第35話「大勝利! さらばジャッカー」(脚本・上原正三 監督・山田稔)はもちろん前話からの続きで、敵怪人「イカルス大王」と戦闘員「クライマー」の追跡隊に囲まれる桜井とカレンが描かれる。そこに、敵首領「シャイン」の声が轟(とどろ)いた。


 敵はその命令に従って本部に戻ろうとするが、それを制する声が聞こえてきた。その声の主もまた「シャイン」であった。実は最初の「シャイン」の声は、番場壮吉「ビッグワン」の敵をあざむく芝居であったのだ。
 その隙にジャッカー基地に戻った桜井とカレンだったが、カレンは「虫の息」で、死の一歩手前にあった。


 この事態に急遽、「ジョーカー」こと鯨井大助長官がニューヨークから日本に帰国してきた。しかし、「アイアンクロー」は卑劣な手段で鯨井の家族を人質に捕って、カレンの手術を妨害する。
 番場は最後の方法とばかりに、「ジャックタンク」で敵地に乗り込み、冷凍作戦で人質を凍結。その隙に救出する手段に踏み切った。
 救出してきた人質たちは解凍。鯨井はカレンの手術に乗り出した。手術は成功。ジャッカーの4人は要塞島に乗り込み、最後の決戦に挑んだ。


 一方、冷凍されていた「アイアンクロー」も甦ってしまうが、番場壮吉が「ビッグワン」に変身。そこへ要塞島を壊滅した「ジャッカー」も加勢。「ビッグボンバー・どぶねずみ」にてアイアンクローを倒すのだった。


 長く苦しい戦いはようやく終わろうとしていた。終わろうと……。
(完)



 シリーズ後半より登場したクライムの首領「シャイン」がこれまで「光」と「声」だけの表現であったことからか、その正体(?)が「最終回」で描かれる。しかし、それは透明のフードに覆われた「通信機」でしかなかった。この機械を通じて命令を行なっていたのだ。しかし、その本体は明かされないままで物語は終了している。
 物語のナゾを完全に明かしたうえでの終了を望む視聴者からすれば、この本来の首領の存在と結末が不明確な終わり方は、フラストレーション(欲求不満)がたまってしまうオチであったかもしれない。


 しかしその分、「アイアンクロー」の描写には時間が割かれている。自分に代わって「クライム」の指揮官に着任した怪人「イカルス大王」への憎悪や対抗心。そして、敵に背中を向けて退却した「イカルス大王」を処刑後、「シャイン」からは「太陽系のエンペラー」だと任命されたことで、「アイアンクロー」はあらためて「ジャッカー」打倒に燃えるのだ。


 だが、「シャイン」の正体が単なる「通信器」に過ぎなかったことと、「ビッグワン」から「お前は操り人形だったのさ!」との真実を、あろうことか宿敵から指摘されてしまうのだ。
 屈辱と怒りに苛まれたなかで、すべてをかなぐり捨てるように「ジャッカー」と戦う姿には、すべてを失って信じる者にも裏切られた男が、最後に自分自身の「誇り」だけで戦っているようにも見えるのだ。


 石橋本人の


「私の演じた敵の幹部も、最期はみんな誇りをもって散っていきました。」


 との発言が、「たしかにそのとおりであった」と痛感できる「アイアンクロー」の最期(さいご)であった。
 


 また、瀕死の重傷を負ったカレンの手術を、鯨井が敵に捕らえられてしまったためにできなくなるサスペンス描写まであって、桜井と番場が科学者でもある大地にそれを懇願するシーンも印象的であった。
 しかし、手術の失敗を恐れて、カレンを死なせたくないとばかりに手術に着手できなかった大地の描写は、サイボーグの「体」を持ちながらも、「心」は人間であるがゆえの弱さも描かれていたのだ。万能に見える「改造人間」ではあっても、仲間の命を失ってしまうことを恐れてしまう「人情」を持った「人間」でもあったといった、本作の根本のコンセプトをここで念押ししているのだ。


 前編の第34話では表現されていた「ラブロマンス」の描写が、後編である最終回の第35話では弱かったあたりは、前話を観ていたマニア視聴者や女子視聴者にとっては残念であったかもしれない。そういう意味では、第34話こそがシリーズを代表するエピソードでもある。最終回たる本話は、物語を完結させるうえでの設定回収編といった印象も少々抱いてしまうのだ。



 だが、まさかこの作品が有終の最終回を迎えてみせた本放送の時点では、思わぬかたちでの「さらなる展開」が待ち受けているとは、当時の子ども視聴者の側からは思いもしなかったことではあった……。


*『ジャッカー』終了! 今日の別れは、明日の飛躍への始まり! 1977年と1978年! 特撮・アニメの青年マニア文化の勃興!


 1977年(昭和52年)4月の放映開始から半年。時代の変化もあってか、すでに「アニメ > 実写特撮」といった図式が、視聴率などの数字でも立証されてきていた。1977年度の秋こと9~10月の新番組は、『アローエンブレム グランプリの鷹」・『超スーパーカー ガッタイガー』・『とびだせ! マシーン飛竜』・『激走 ルーベンカイザー』など、「スーパーカー」ブーム便乗したテレビアニメが4本も登場していた。実写ヒーローものの存在がさらに希薄になってきた時代でもあった。


 先に放映が開始されていた『快傑ズバット』と『大鉄人17』は終了。1977年度組に放映開始の作品のなかでは最後まで残っていた『ジャッカー』と『ロボット110番』も同年内で終了となってしまった。


 そんななかで、「ジャッカー」の異色のゲスト出演作が存在する。それは東映制作の児童向け特撮テレビドラマ『5年3組魔法組』(76年)第22話「遊園地は魔法でいっぱい!」(脚本・辻真先 監督・折田至)である。
 劇中、実在する「としまえん遊園地」の大魔術ショーに乱入した魔女ベルバラ(演・曽我町子)が、トランプのカードを「ジャッカー電撃隊」に変身させるイリュージョンを披露していることが、トピックとして挙げられるのだ。
 これは当時、同じテレビ朝日系の作品で、なおかつ知名度がそれなりにあった実写キャラクターは、「ジャッカー」であったゆえの登場であった。当時の視聴者たちを驚かせるサプライズとしての効果を上げたと思われる。



 本作の番組終了時期のキャラクター番組の流れも俯瞰(ふかん)してみたい。
 まず、巨大ロボットアニメでは、日本サンライズ(現・サンライズ)の躍進があった。元請けの東映の下請けとして制作された、玩具会社「ポピー」提供の『超電磁ロボ コン・バトラーV(ブイ)』(76年)の後番組として、『超電磁マシーン ボルテスV(ファイブ)』(77年)のヒットがあった。
 それに加えて、テレビ朝日系の名古屋テレビが制作し、スポンサーは玩具会社「ツクダオリジナル」の営業部長であった小松志千郎(こまつ せんしろう)が独立して1973年に興(おこ)した「クローバー」が収まり、あの富野喜幸(現・富野由悠季(とみの よしゆき))が「総監督」として執(と)り仕切った巨大ロボットアニメ『無敵超人ザンボット3(スリー)』が、1977年10月より登場。「クローバー」から「ポピー」=東映ラインへの挑戦が開始されたのだ。
 また、前年度の巨大ロボットアニメ『鋼鉄ジーグ』(75年)のヒットに引き続き、「磁石」と「球体関節」による斬新な合体ギミックを導入した、玩具会社「タカラ」と東映動画による「マグネモ」シリーズは、『マグネロボ ガ・キーン』(76年)と合体ロボットアニメ『超人戦隊バラタック』(77年)へと続いていった。しかし、ポップな絵柄とメタフィクション的なコミカルギャグなどで、年長の原・オタクの一部や原・女子オタクたちからは秘かに高い人気を誇ってもいた『バラタック』を最後に、この「マグネモ」シリーズのロボットアニメは終了となっている。



 その他、1977年度の展開で忘れてはならないことは、再放送と8月の映画公開で、アニメの対象年齢の上昇に拍車を掛けた『宇宙戦艦ヤマト』(74年)の「総集編映画」の大ヒットであった。


 この『ヤマト』の中高生から青年層にかけての大ヒットの影響で、別項の『秘密戦隊ゴレンジャー総論』(https://katoku99.hatenablog.com/entry/20250414/p1)でも言及したことの繰り返しになるが、月刊児童誌『テレビランド』の「別冊」名義での『別冊テレビランド』の扱いで、1977年には本邦初の青少年向けのアニメムックの歴史を築いて、子ども向けから若者向け、そして大人向けのアニメ本の端緒(たんしょ)を築いたマニア向けムックの新レーベル『ロマンアルバム』も誕生している(1986年までは精力的に70冊近くも発行し続けた)。
 それは当時の新旧のテレビアニメ作品を映画専門誌なみのバリューで扱い、ストーリーガイド・スタッフ人名録・関係者インタビューを掲載するといった構成にて編集。現在までに至るアニメ・特撮専門書籍の曙(あけぼの)として位置する、当時の青少年やマニア気質の子どもたちにも衝撃を与えた画期的なムックであった。
 この『ロマンアルバム』を母体にして、翌1978年には早くも中高生以上を読者対象として設定した、初のアニメ専門月刊誌『アニメージュ』が誕生することも、歴史上の重要なトピックなのである。


 そのかたわらで海外に目を向ければ、翌年の日本における「SFブーム」の火付け役となった『スター・ウォーズ』(77年)の本国・米国でのフィーバー振りで(日本では翌78年の夏に公開)、ジャンル作品の次なる時代へのイントロダクションがこの時期に萌芽(ほうが)を始めてはいたのだ。



 しかし、そんな国内での実写特撮ヒーロー低調期の77年10月に、玩具会社「トミー」と円谷プロが、今度は前年度の『恐竜探検隊ボーンフリー』(76年)に続いて、放送局を東京12チャンネルに変更して、「恐竜シリーズ第2弾」として、『恐竜大戦争アイゼンボーグ』(77年)を送り出している。


 さらに、この時期には、「第2次怪獣ブーム」の火付け役となり、「第2期ウルトラシリーズ」の玩具化でその名を轟かせた玩具会社「ブルマアク」の倒産といった大きな話題も存在する。
 ウルトラマンシリーズが『ウルトラマンレオ』でいったん終了後、社の中核となるヒット作には恵まれず、「スーパーカー」ブームにも乗り切れずに、提供作であった実写特撮『小さなスーパーマン ガンバロン』(77年)やテレビアニメ『合身戦隊メカンダーロボ』(77年)の放映途中で遂に倒産してしまったのだ。前者は再放送を挟みつつ放映打ち切りになった。後者も過去のフィルムを編集した形式で何とか放送をつないでいたが、観る側にも“刀尽き矢折れ”といった印象は免れなかった。


 こうして、当時のジャンル作品全体を俯瞰すると、『ゴレンジャー』以上に「時代の流行」を貪欲に取り入れていたことと、各作品ごとの「路線変更」ともあいまって、バラエティ豊かな作風を呈していた。しかし、後番組として同系列のシリーズ作品が継続しなかったことから、「期待した水準の結果に達せず」と判定されたと見なされて、それゆえにマニア間でも成功作として扱われてはいない作品群になっている。けれども、その試行錯誤のプロセスは翌年に見事に開花するのだ。



 新メンバー投入による「テコ入れ」を行い、多少なりとも視聴率を上げることにはなったとはいえ、裏番組の急成長ぶりなどには太刀打ちができなかった。
 また、東映以外の他社でも実写特撮ヒーロー番組の数は大幅に減少していき、『ジャッカー』終了直後の1978年1月からは円谷プロの『恐竜大戦争アイゼンボーグ』だけが残ることとなった(しかも、この作品も厳密には、恐竜(怪獣)とのバトルだけが「実写特撮」で、人間キャラクターのドラマ場面は「アニメ」であった)。
 つまり、純粋な実写特撮ヒーロー番組は『ジャッカー電撃隊』の終了で、ひとまず「消滅」となってしまったのだ。


 『ジャッカー』の後番組には、『コメットさん』(67年)・『それ行け! カッチン』(75年)などの児童向けジュブナイル・ヒロイン路線の継承者でもある、東映制作のテレビドラマ『透明ドリちゃん』(78年)がスタートしている。
 一方、『ロボコン』の後継者『ロボット110番』の次は、この時期にヒットしていたアメリカの子ども向け野球映画『がんばれ! ベアーズ』(76年)の日本版ともいうべき、東映制作の『がんばれ! レッドビッキーズ』(78年)が放映を開始。前年度の実写特撮キャラクター番組群の奮闘がウソであったかのように、東映実写児童向け番組の大幅な路線変更を決定づけるような変貌を遂げてしまっていた。


 特に男児層にとっては、正統派の特撮変身ヒーロー路線が消滅してしまって、「つまらないなぁ」といった印象をかかえていた時期でもあったと記憶される。


 このような状況下で、完結を迎えた『ジャッカー電撃隊』だったが、最終回において敵組織の壊滅・崩壊が明確には描かれなかったことが、単なる偶然であったかはさておき、思わぬ方向へと幸いするのだ。


*映画で描く「最終回」!? 史上初の「スーパー戦隊VSシリーズ」であった映画『ジャッカー電撃隊VSゴレンジャー』!


 それは、事実上の『ジャッカー電撃隊』の最終回としての位置づけもできる、78年3月に公開された異色の劇場映画『ジャッカー電撃隊VS(たい)ゴレンジャー』(78年)の登場であった。


 こう書き出すと、近作『仮面ライダーディケイド』(09年)が、「最終回」後の「映画」で「完結編」を製作したケース(*15)と同様かと解釈する若い特撮マニアもいるかもしれない。しかし、実際にはそのようなケースではなかった。当初は「映画で完結編を描く」といったアナウンスはされておらず、結果的に不意打ちのような映画化で、子どもたちの度肝を抜いていたのだ。
 だが、今となっては、事実上の「最終回」に位置する作品でもあったことは間違いではないから、本項ではこうした表現を用いてみた。


 この作品は、1978年の春休みの映画『東映まんがまつり』枠にて公開された劇場映画である。番組終了から3ヶ月弱のブランクを経ての登場ではあった。この時期に東映制作による実写ヒーロー番組が存在しなかったことも手伝っての登板であろう。
 さらに、1978年春季に放送中であった実写作品『透明ドリちゃん』や『がんばれ! レッドビッキーズ』の『まんがまつり』枠での劇場映画版は制作されなかったために、この78年春休みの『まんがまつり』興行のメインの「看板作品」としての存在を誇示することとなっていたのだ。


 実際、テレビシリーズ放映中には新作劇場映画が制作されなかった(*16)『ジャッカー電撃隊』における、事実上の初の映画化でもあり、『秘密戦隊ゴレンジャー』の劇場新作映画第2弾でもあった本作の存在は、大きなサプライズとして子どもたちに迎えられたのだった。


 なお、このときの興行は、『まんがまつり』史上初の“全作オリジナル新作”を実現した歴史的プログラムとなっている。以後はいつしかテレビシリーズのフィルムをブローアップした再放送のような上映は消滅。全作が新作である興行が基本となっていく。


*映画『ジャッカー電撃隊VSゴレンジャー』の概要&内実!


 『ジャッカー電撃隊VSゴレンジャー』の概要についても語ろう。


 「ジャッカー」の前に、死んだと思われていたクライムの「アイアンクロー」が登場! 世界各国で大暴れする「四天王軍団」と手を組んでリベンジを企てる。
 そこに突如として現れた謎の美女。彼女は「モモレンジャー」ことペギー松山だったのだ!
 「ジャッカー」に「ゴレンジャー」が加勢し、最後の強敵との対決が始まる。「四天王」は合体して「四天王ロボ」に変身。必殺技「ゴレンジャーハリケーン」と「ジャッカー・コバック」をはねのける! しかし、「ビッグワン」の登場によって、合体技「ゴレンジャーハリケーン・ビッグボンバー」で爆破される。
 一方、「アイアンクロー」は怪人「UFO船長」のUFOで逃走する。しかし、「ビッグワン」の策略で「鉄の爪」が偽物にすり変わっていて、リモコン操作でUFO内のスイッチを誤動作。UFOもろとも「アイアンクロー」は最期を迎えた。「ジャッカー」と「ゴレンジャー」の共同戦線が悪を倒したのであった。



 本作の目印となった「ジャッカー」と「ゴレンジャー」との共演についても言及しよう。「ジャッカー」は全メンバーが顔をそろえている。しかし、「ゴレンジャー」側に目を向ければ、実際に素顔を劇中で披露するのは「モモレンジャー」ことペギー松山のみであった。他のキャラクターは変身したヒーローへのアフレコと、ライブラリー音声の使用での共演であった。


 「アカレンジャー」こと海城剛を演じていた誠直也の声は、「5人そろって! ゴレンジャー!!」の名乗りや「レッドビュート!」などの特徴的なシーンでの掛け声のみ、ライブラリー音声であった。その他の声はJACのスーツアクター・高橋利道が新規に声を当てていた。そのために当然、違和感が生じてしまうのだが、これは致し方(いたしかた)がないことだろう。


 「アオレンジャー」こと新命明(しんめい あきら)役の宮内洋は、本作では『ジャッカー』側の番場壮吉としての登場であった。「アオレンジャー」役としてはアフレコのみの出演であったのが、少しもったいなく思う。できれば、番場壮吉と新命明の顔出しでの共演が見たかったのが、多くのファンの本音ではなかったろうか。
 実際にも、『ジャッカー』第32話での番場壮吉vsニセ番場壮吉戦や、『快傑ズバット』第17話でのニセ早川健vs本物の早川健の対決が「合成」で描かれていた前例もあった。往年の東映の特撮時代劇『仮面の忍者 赤影』(67年)などでも、忍法で変装した人物と本物を、別撮りしたフィルムを左右の真ん中に分けて簡易に「合成」させるような手法などもとっくに実現してはいた。つまり、技術的に当時の水準でも不可能ではなかったからだ(手間も予算も少々かかっただろうが)。
――こういったところでの当時の子供たちの無念が、後年の『百獣戦隊ガオレンジャーVSスーパー戦隊』にて、宮内が演じる後年の番場壮吉のみならず、共演でこそなかったもののバンクフィルムの再利用で、同じく宮内が演じるアオレンジャーに変身する前の新命明や、『超力戦隊オーレンジャー』の三浦参謀長まで、顔出しで登場させてしまう、マニア上がりのスタッフによる快挙にもつながっていくのだろう――


 その宮内が演じる番場壮吉が「釣り人」に変装して登場するのは、原作者・石森章太郎が自ら監督を務めた『仮面ライダー』の第84話「危うしライダー! イソギンジャガーの地獄罠」(脚本・石森章太郎 島田真之 監督・石森章太郎)にて、「釣り人」役で石森が俳優として活躍したことへのオマージュだったのかもしれない。


 また、姫玉三郎も出番は少ないが出演。『ジャッカー電撃隊』最終回としては、申し分ない幕引きになっていた。


*ジャッカー電撃隊・ゴレンジャーのみならず、仮面ライダー・キカイダーまで同一世界で共存している、ワールド・ワイドな世界観!


 だが、この映画がもっとも大きな特徴として有するコンセプトは、世界観それ自体が異なる存在でもあったはずの、他の石森原作の実写特撮ヒーローたちの活躍が、冒頭で語られるくだりである。


 「ジャッカー」本部の作戦室で、「ジョーカー」が部下たちに、「ゴレンジャー」がサハラ砂漠でサハラ軍団と! 「仮面ライダーV3」がヨーロッパで鉄面軍団と! 「人造人間キカイダー」がモンゴルで拳闘士軍団と! 「仮面ライダーアマゾン」が南米アマゾンで「十面鬼」と戦っている! といった、劇中内での世界規模での事実を、写真と地図上で明言しているのだ!


 今年2011年の春休みに公開された映画『オーズ 電王 オールライダー レッツゴー仮面ライダー』(11年)にて、人造人間キカイダー・キカイダー01(ゼロワン)・イナズマン・快傑ズバットが登場してきて、実際には『仮面ライダー』シリーズの映画であったのに、他作品のヒーローまでもが登場してくるサプライズは、世代人や年長のマニアたちはに大きな拍手で迎えられていた。あのような手法の「先駆け」が何を隠そう、この映画であったのだ。


 アメリカンコミックスのマーベルコミック社のヒーロー映画に見られるクロスオーバー・ワールドの東映版と言ってしまえばそれまでである。しかし、写真だけとはいえ、この映画の世界では「仮面ライダー」や「キカイダー」も実在しており、しかも悪の軍団と戦っているといった「世界観の広がり」を、見る者にも伝えるあたり、実に勇ましくて興奮させられる趣向であったのだ。各ヒーローの写真にシンクロして、各作の楽曲が流れるあたりも心憎い音楽演出であった。


 1973年の夏に、当時は好評放映中であった巨大ロボットアニメ『マジンガーZ』(72~74年)と、春に放映が終了したばかりの巨大ヒーローアニメ『デビルマン』(72年)の、永井豪原作の2大ヒーローが競演する映画『マジンガーZ対デビルマン』が制作されて、『東映まんがまつり』枠で公開されて、別世界観の作品のヒーロー同士のジョイントが話題となっていた。
 そして以後は、『グレートマジンガー対ゲッターロボ』(75年)・『グレートマジンガー対ゲッターロボG 空中大激突!!』(75年)・『UFOロボ グレンダイザー対グレートマジンガー』(76年)・『グレンダイザー ゲッターロボG グレートマジンガー 決戦!大海獣』(76年)などの「マジンガーシリーズ」の劇場新作を『東映まんがまつり』のメインプログラムに据えて、テレビでは不可能な他作品とのセッションものが定番となっていった。そのノウハウをようやく実写特撮でも生かそうとばかりに、ここで2大戦隊の共演映画が登場したのだった。
 そう。この映画こそが、現在に至るスーパー戦隊シリーズの名物年中行事となった『スーパー戦隊VS(バーサス)シリーズ』(*17)の始祖となるべき作品だったのだ。


*映画『ジャッカー電撃隊VSゴレンジャー』の悪役・列伝!


 この映画のゲスト悪役である「四天王軍団」は、「サハラ将軍」を天本英世(あまもと えいせい)、「鉄面男爵」に潮建志(うしお けんじ この時期は左記の漢字表記)、「UFO船長」は安藤三男(あんどう みつお)といった、東映特撮を代表していた「敵幹部」俳優の重鎮が一同に介している。
 前者のふたりについては、言うまでもなく『仮面ライダー』の「死神博士」と「地獄大使」の共演(*18)でもあったのだ。そこに、『キカイダー』の敵首領こと「プロフェッサー・ギル」・『イナズマンF』の敵首領こと「ガイゼル総統」・『ゴレンジャー』の敵首領こと「黒十字総統」で高名な安藤を加えた。さらに、「地獄拳士」役には今のJAE代表取締役社長の金田治も交えての豪華な顔ぶれで構成されていたのだ。


 その彼らが合体して誕生する「四天王ロボ」は、まるで『キカイダー01』(73年)の序盤に登場した、ハカイダー四人衆が合体して誕生した怪人・ガッタイダー的な存在の「究極怪人」であった。真の『ジャッカー』最終回を彩るにはふさわしい敵役でもあったのだ。


 なお、「四天王ロボ」の声は、飯塚昭三(いいづか しょうぞう)が担当していた。声の面でも、これまた変身ブーム時代の東映特撮悪役のオールスターキャストを実現していたのが、なんとも素晴らしいのだ。


 なお、殺陣師としての活躍がメインであった金田治の配役は意外な気がしなくもない。しかし、彼の回想では、以下のような事情があったらしい。



「あれは確か代役か、それとも演(や)る人がいなかったかで、殺陣師の僕に回されてきた役なんですよ」
(『ザ・スーツアクター』(ソニーマガジンズ社刊)1999年)



 実際、本作の殺陣師は、山岡淳二と金田治の連名で表記されている。本作では、金田が怪人として登場するシーンが、山岡の担当パートだったのでは? などと推測しているのだが。



 なお、当初は東映側の劇場用作品の一案として、『ジャッカー電撃隊 対 大鉄人17』といった企画もあったらしい(『秘密戦隊ゴレンジャー大全集』)。もしもこの企画が実現していたなら、等身大ヒーローと巨大ロボットとのジョイントが、翌年の『スパイダーマン』よりも先に描かれることになったのでは? と思わされる。


 本映画の東映側のプロデューサーには、吉川進と七条敬三のふたりの名がある。七条の登板は当初に予定されていた『大鉄人17』とのジョイントに由来していたのでは? などといった推測も可能だろう。彼は『17』側の担当プロデューサーでもあったからだ。


 また、この映画のOP(オープニング)のテーマ曲は、『ゴレンジャー』の後期ED(エンディング)主題歌『見よ! ゴレンジャー』で始まっており、途中から『ジャッカー』の挿入歌『J.A.K.Q 進めジャッカー』が続けて流れる構成となっていた。そして、新規の楽曲を使用することはなかった。だが、独自のインパクトは与えており、シリーズ正規の主題歌をオーソドックスに使うよりも、2大戦隊それぞれの個性を対比できるものに仕上がってもいた。


 他に特色といえば、劇中で夜空に「UFO」が発光しながら出現するシーンは、まさに日本では本作公開の1ヵ月前に公開されたばかりのSF洋画『未知との遭遇』(77年 日本公開78年)へのオマージュも感じさせるのだ。さらに、「スカイエース」と「UFO」の夜空での追跡シーンが、同年のGW(ゴールデンウィーク)に公開を控えていた東映の特撮SF映画『宇宙からのメッセージ』(78年)での宇宙船の飛行シーンも想起させる。それこそ、この1978年度を象徴する「宇宙SFブーム」の到来直前を意識したアクションが顕著なのだ。


 また、劇中でペギー松山の運転していた車が「ポルシェ911」であったことには、前年の「スーパーカー」ブームの名残も感じさせる。「モモレンジャー」と「ハートクイン」が「ツインマスクドヒロイン」とばかりに。アイドルデュオことピンク・レディーの大ヒット曲『UFO』(77年12月5日リリース)ネタを披露したりと、本作では今度は早くも1978年といった時代を色濃く匂わせる描写が作品を彩っている。時代の流行にも敏感な子どもたちにも何気にアピールすることが特徴になっていたのだ。


 なお、本作は、『ゴレンジャー』『ジャッカー』両作品で活躍した田口勝彦が監督している。『ジャッカー』の顔でもあった竹本弘一は『透明ドリちゃん』、奥中惇夫は『がんばれ! レッドビッキーズ』で活躍していたためか、1978年5月スタートの『スパイダーマン』に登板前の田口が抜擢されたのだと推測している。


*エピローグ! 「歴史の終わり」と「次なる始まり」! 1978年~80年にかけてのSFブーム&リバイバルブームの到来!


 実際、この映画の公開終了直後、1978年5月より東京12チャンネルで東映特撮版の『スパイダーマン』が、同年GWに公開された映画『宇宙からのメッセージ』の姉妹編であるテレビシリーズ『宇宙からのメッセージ 銀河大戦』(78年)が同年7月より放映を開始。再び東映特撮ヒーローが席巻する時代の到来を予感させていた。


 1978年は、特撮ヒーロー不在の空隙(くうげき)と、夏には『スター・ウォーズ』の日本公開が巻き起こしたSF大ブームが、そして児童誌『てれびくん』での大プッシュや各地での再放送の開始に付随して発生した『ウルトラマン』シリーズのリバイバルブームが、それにやや遅れるかたちで児童誌での雑誌展開とやはり再放送が火付け役となった『仮面ライダー』再燃ブームも勃発している。
 特撮ヒーローは1978年1月にはいったんは消滅したかのように見えていた。しかし、次なる復活のチャンスを逃しはしなかったのだ。


 だが、当時の児童誌での扱いは、本来は最も積極的にプロモーションされるべきリアルタイムのヒーローよりも、あろうことか「ウルトラマン」や「仮面ライダー」といったリバイバルのヒーローの扱いの方が大きかったことや、人気が高くなっていたことも、この時代を語るうえでは無視できない。なお、この年に吉川進は東映テレビ部企画営業第二部部長に就任している。


――ちなみに、特撮変身ヒーローものや特撮ジャンルそれ自体のホープといった文脈では当時は捉えられてはいなかったものの、民放の日本テレビが開局20周年記念と銘打って、1978年10月から日曜夜8時枠にて、新東宝の流れを汲んだ国際放送の制作で、特撮を円谷プロダクションに下請けに出すかたちで、1時間枠のテレビドラマ『西遊記』が大々的な宣伝とともに制作されて、一般層や子ども間でも大ヒットを達成している。翌秋には『西遊記Ⅱ』(79年)も放映されることになった。
 この1978年4月には、やはり来たる初夏公開の『スター・ウォーズ』を見越して、円谷プロは日本テレビの日曜夜7時の30分枠にて宇宙SFのテレビドラマ『スターウルフ』を放映。前年1977年12月にも、東宝が特撮SF映画『惑星大戦争』を公開している――


 さらに、その翌年の1979年には、中高生以上の女子マニア層を中心とした熱烈なファンからのコールと、スポンサーである「タカトク」の起死回生を目指して、そしてやはりリバイバルヒーローものの一環として、石森SF漫画の雄『サイボーグ009』も約10年ぶりのテレビアニメ化もなされている。
 当時はまだ「戦隊シリーズ」とは銘打たていなかったが、事実上の「戦隊シリーズ」再開の様相を呈していた『バトルフィーバーJ』も登場。テレビアニメではあったが、新作のウルトラシリーズ『ザ☆ウルトラマン』と、期待の新作『仮面ライダー』(スカイライダー)など、ブランドヒーローがこぞって復活してみせる盛況を見せてきた。
――ヒーローものではないが、テレビアニメ『ルパン三世』(71年)の再放送での人気の高まりに伴い『ルバン三世(PART2)』(77年)が、同じく女子高生のテニスを描いたテレビアニメ『エースをねらえ!』(73年)をリメイクした『新・エースをねらえ!』(79年)なども登場している。さらに、翌年の1980年には本邦初の国産テレビアニメ『鉄腕アトム』と『鉄人28号』(共に63年)のリメイクも登場している。これらも、そういった当時のリバイバル・ブームの一環なのであった――


 しかし、知ってのとおりで、『ウルトラマン』と『仮面ライダー』は再び眠りについてしまった。しかし、『バトルフィーバーJ』以降の「戦隊シリーズ」は、切れ目なく今日に至るまで放映されることとなった。来年2012年度も新たなる歴史を築く新作が登場することを期待したい。


*『ジャッカー電撃隊』の「特撮史」や「戦隊史」における、歴史的な存在意義&価値!


 この石森章太郎原作の戦隊2作品は、ウルトラシリーズに置き換えれば、それこそ『ウルトラQ』『ウルトラマン』『ウルトラセブン』といった、「第1期ウルトラシリーズ」に相当する位置付けの大きさを持った作品群であったと断言できるだろう。つまり、歴史の第一歩目でもあり、以後に続くシリーズの基盤・インフラストラクチャーとなった大きな存在なのである。
 それらの原点作品の幅の広さ・試みの数々が、『ウルトラマン』や『仮面ライダー』、そしてその他の特撮ヒーローにはない魅力を描き出し、当時は「単語」としての定形化はされてはいなかったものの、のちに“戦隊”ものといった概念で括られるヒーロー作品のテンプレートを構築したのだから。


 ただし、『ジャッカー電撃隊』それ自体は、あとに続く同路線作品への橋渡しを行うことができなかった。だが、1年強のブランクを超えて登場した『バトルフィーバーJ』が、今日に至るまでのシリーズ継続の第一歩を踏み出した。『ジャッカー』のシリーズ前半と後半とでの硬軟のさまざまな要素が、後年の「戦隊シリーズ」にも散りばめられたことによって、『ジャッカー』もまた単なる失敗作ではなかったことが立証されてもいる。つまり、その存在や試行錯誤もまた、非常に意義があるものであったのだといったことも、特撮マニア諸氏の周知のとおりでもあるのだ。


 そして何よりも、シリーズ前期のハード路線、シリーズ中期の児童ドラマ編、シリーズ後期のビッグワン編。正反対の作風にも見えるそれらが、個々に独自のファンを有し、放映期間としては3クール分と短命ではあったものの、カルト的な信者を有する作品としての地位をも獲得しているのだ。


 ここで筆者がつづった駄文を読むよりも、実際にDVDなどの映像ソフトや再放送などで――2011年現在では今ではほとんどCS放送に限定されるが――、もしも本作に触れることがあったのならば、今の自分個人の感性はもとより、1977年当時の世間のさまざまなブームやムーブメントにも関心を抱いて、特撮ジャンル作品といった観点だけでなく、テレビ番組・放送界・映画界・玩具界などといった観点からも俯瞰すれば――もちろん、単に“特撮”といった見方で鑑賞するだけでもよいのだが――、そこに映し出されてくる情報量は多くなる。より面白くなってきて、さまざまな要素について興味深く感じ取れるであろうことは間違いないとも思うのだ。


 1970年代末期の日本の特撮・アニメのマニア社会の勃興期から特撮作品を評価するうえで至上とされてきた「人間ドラマや脚本がすべて」といった風潮だけでは(それらも重要ではあるのだが)、テレビ番組やジャンル作品を語るうえでの視野を狭くしてしまう悪影響を感じずにはいられない。


 もしも機会があれば、かつてはオタク第1世代などからは蔑視されてきた「戦隊シリーズ」を通じて、これまでにはなかった視点や観点から、日本の特撮史を逆照射するかたちで、ジャンル作品を今後とも語っていければ幸いである。


脚注


*1
 なお、『特別機動捜査隊』の終了は、視聴率の下降も大きな理由であろう。番組開始当初の1961年当時は30%台、1970年代前半でも20%台を記録していたが、前年の1976年頃よりとうとう1桁に落ち込むことも多々見られ、16年の歴史に幕を閉じる結果となったのだ。


*2
 意外なように思えるかもしれないが、実は関西(大阪)の読売テレビ(日本テレビ系)も、開局当初は教育局であった。


*3
 石森章太郎の漫画『009ノ1』の実写化テレビドラマ『フラワーアクション009ノ1』(69年)は、原作漫画とは違って、メンバーがトランプのカードの種類で識別されている。
 もちろん、原作漫画のような改造人間ではない。当時、東映製作でヒットしていた『プレイガール』(69~76年)の二番煎じ的な印象を与えるようなお色気アクションイメージの番組に仕上がっている。のちに『仮面ライダー』を手がける竹本弘一・山田稔・田口勝彦といった演出陣が初めて手掛けた、石森漫画の映像化であったことは興味深い。
 実際にもこの布陣が、翌年に東京12チャンネルで放映されたテレビドラマ『江戸川乱歩シリーズ 明智小五郎』(70年)にシフト。そういったプロセスを経て、『仮面ライダー』が誕生していたこともまた、歴史的な検証の観点から見ると味わい深いのだ。


*4
 池沢さとし(現・池沢早人師(いけざわ さとし))が、『週刊少年ジャンプ』(集英社刊)に連載した漫画『サーキットの狼』に端を発する外国製高級スポーツカーのブーム現象。それまで日本で知名度の低かったランボルギーニ・フェラーリ・ポルシェなどの欧州系メーカーの自動車が劇中で活躍。運転免許すら取れない年齢層の子どもにまで人気が波及した一大ブームであった。
 それに呼応するかたちで、「スーパーカー」の「プラモデル」や「ミニカー」のリリースが活発になったのはもとより、子ども相手の「スーパーカー」の撮影会が開催されて、ヒーロー不在の児童誌では巻頭グラビアや付録にまで扱っていたほどだ。
 さらに、東京12チャンネルでは、「スーパーカー」に材を求めた児童参加のクイズ番組『対決! スーパーカークイズ』(77年)(司会は山田隆夫・吉川桂子夫妻(のちに離婚)まで放映される現象を巻き起こした(後番組は同趣向の『対決! チャレンジクイズ』(78年))。
 トリビアとしては、吉川が産休に入って、その後任に『バトルフィーバーJ』のシリーズ後半にて変身ヒロイン・2代目ミスアメリカを演じる萩奈緒美(はぎ なおみ)が2代目アシスタントに抜擢。『マジンガーZ』の永井豪デザインによるオリジナルヒーロー・カウンタックマンなども同番組には登場していた。
 なお、このブームに便乗して、『アローエンブレム グランプリの鷹』(77年)・『激走! ルーベンカイザー』(77年)・『飛び出せ! マシーン飛竜』(77年)などの架空の自動車メーカーを舞台に、空想のレーシングカーを主役にしたカーレースアニメも放映されている。
 だが、当時の子どもたちが最も望んでいたのは、『サーキットの狼』のアニメ化であった。しかし、1977年8月公開の東映制作の実写映画(監督・山口和彦)と、1978年の正月休み企画のNHK・FMでのラジオドラマ版(タイトルは『ステレオ劇画シリーズ サーキットの狼』。脚本は佐々木守、主演はなんと風間杜夫!)だけに終わってしまって、やがて「スーパーカー」ブームも翌年の「ウルトラマン」と「仮面ライダー」のリバイバルブームに押しやられるようにして衰退していくのだった。


*5
 「スーパーカー」と称される車の排気量の大多数は、2000CC以上の3ナンバー車であっただけに、1600CCはどちらかといえば日本車の大衆車クラスのサイズといった印象があった。


*6
 切替徹は自動車メーカー・マツダ(旧・東洋工業)を退社後、1973年にカーショップディノを開店。現在はレーシングサービス・ディノ社長であり、フェラーリ・クラブ・ジャパン会長として、日本のモータリゼーション界に大きく貢献している人物だ。


*7
 日本テレビ・日本現代企画製作の『少年探偵団』(75年)は、関西でも東京と同様に土曜夜6時枠で放映。結果的に『ゴレンジャー』の裏番組に収まった。しかし、これは畠山麦(はたけやま ばく)の出演番組が重なることでもあった。畠山は「キレンジャー」役だが、『少年探偵団』のナレーターでもあったのだから。


*8
 『大鉄人17』の岩山鉄五郎は、水島新司原作でテレビアニメ化(77年)もされた野球漫画『野球狂の詩(うた)』(72~77年)の女性主人公投手・水原勇気(みずはら ゆうき)が所属していた架空のプロ野球チーム・東京メッツの老いぼれ投手・岩田鉄五郎の名前をもじったものだろう。ちなみに、77年に日活で制作された実写映画版の『野球狂の詩』での岩田鉄五郎は、翌78年には『宇宙からのメッセージ 銀河大戦』のナレーションも担当していた名優・小池朝雄が演じていた。
 『17』の岩山鉄五郎を演じた高品政広は、同じく水島新司原作の大人気野球漫画を東映で実写映画化した『ドカベン』(77年)(監督・鈴木則文)でも、口に葉っぱをくわえた大男・岩鬼正美(いわき まさみ)役を演じていた。それもあって、岩鬼そのままの学生服と高ゲタの出で立ちには、この70年代後半に全盛を極めていた水島新司の野球漫画の影響の大きさを如実に物語ってもいる。
 そういった野球漫画の実写映画化が、『ロボット110番』の後番組として翌1978年1月にスタートした東映制作の『がんばれ! レッドビッキーズ』の誕生にもリンクしてくるのが、今となっては興味深い。


*9
 『大鉄人17』は視聴率は振るわなかったが、玩具は、特に「超合金」の玩具は高い売り上げを記録している。とはいえ、「スーパーカー」ブームの時期にキャラクターヒーローものでは大健闘したものの、番組は年末年始(クリスマスと正月)の玩具商戦を前に打ち切りとなってしまう。
 しかし、ポピーがスポンサードして再放送を行い、それで商戦を乗り切る手段に踏み切り、翌年の3月末まで再放送が行われた。もちろん、制作の毎日放送を中心として、TBS系の各民放で最終回の翌週より再放送がスタートを切ったが、関東地方ではTBSでなく、東京12チャンネルにて毎週金曜17時からの再放送になっていた。
 なお、主要地域での放映時間帯を列記すると、毎日放送(大阪)では土曜17時(さすがに制作局だけあって、最終回の翌日の11月12日より再放映を開始)。中部日本放送(中部)では金曜17時25分(年内で終了)。山陽放送(岡山)では金曜17時。RKB毎日放送(福岡)では日曜6時30分といったあたりを筆者は確認している。


*10
 『快傑ズバット』のスポンサーはバンダイでなく、タカトクであった。後番組『飛び出せ! マシーン飛竜』も同様にタカトクであったが、同社は当時、『ヤッターマン』が大ヒット。そのノウハウを生かしての展開を目指すが、こちらはあいにくとヒットに至らなかった。


*11
 終戦直後、日本を占領中の連合国軍最高司令官総司令部(GHQ ゼネラル・ヘッド・クォーター)により、「時代劇」は「軍国主義」を煽り立てる危険があるので禁止するとの通達が出たことから、時代劇のチャンバラを拳銃による銃撃戦に置き換えることによる、“時代劇の現代劇への翻案”的なコンセプトで、時代劇の大スター・片岡千恵蔵(かたおか ちえぞう)を主役に配した探偵ものが誕生した。そのシリーズの主人公が多羅尾伴内(たらお ばんんない)といい、このシリーズは昭和20年代から30年代までの人気作品として好評を博した。


*12
 当時の『テレビマガジン』『テレビランド』などに『快傑ズバット』のファースト・プレビューがイラストで掲載されたとき、このヒーローは白いコスチュームに、黒いマントのビジュアルで構成されており、実際の映像で描かれたものとかなり違ったイメージになっていた。なお、色が「赤」になったのは、スポンサーサイドの要望だとか。(『テレビマガジンヒーロー大全集』(講談社刊)1986年)


*13
 現在の林家三平(旧名・林家いっ平)と林家正蔵(旧名・林家こぶ平)の父親でもある有名落語家。


*14
 山上たつひこ作『がきデカ』は、昭和50年代前半にロッテの菓子『ピタンキー』や、松下電器のラジカセ(ラジオとカセットテープレコーダーの一体機)『ナショナルマック』でCMキャラクターとしては使われていたが(実写のこまわりくんを演じたのは、『ザ・カゲスター』に出演した星純夫)、主人公が自分の性器をひんぱんに露出する過激な描写が災いしたのか、当時はテレビ化されなかった。
 それから約15年を経て、1989年(平成元年)にフジテレビ系・スタジオぎゃろっぷ制作でアニメ化されたが、さすがに時代から取り残されたのか話題にもならずに、半年ほどで終了。以後はソフト化にも恵まれずに忘れ去られようとしている。


*15
 『仮面ライダーディケイド』の最終回で、物語の結末が明確に明かされないかたちで幕を閉じ、その「結末は映画で披露」といった告知が、本編終了後にアナウンスされて、映画『仮面ライダー×仮面ライダー W&ディケイド MOVIE大戦2010』(09年)が制作・公開されたことを指す。


*16
 『ジャッカー電撃隊』は、テレビシリーズの第7話がブローアップ公開されたのみで、放送中に新作劇場映画は制作されていない。


*17
 東映の「Vシネマ」ブランドことビデオ販売作品『超力戦隊オーレンジャー オーレVS(たい)カクレンジャー』(95年)で口火を切った、東映戦隊シリーズの年中行事的な作品として、戦隊シリーズの年度ごとのバトンタッチ的な意味合いも含めた放映中の戦隊と前年度の戦隊との共演ムービーシリーズである。以後は2011年現在にに至るまで制作され続けている。2009年度作品『劇場版 炎神戦隊ゴーオンジャーVS(たい)ゲキレンジャー』(09年)より、『スーパー戦隊まつり』の副題を冠して、先に劇場で公開。2ヶ月後にDVD発売といったスケジュールに変更となった。


*18
 のちに『星雲仮面マシンマン』でも、第8話「野球少年の秘密」にて、天本英世(プロフェッサーK)と潮健児(バット男人間態)の共演が実現している。


(文中敬称略)


*:視聴率は、すべてビデオリサーチ社調査分で記載。
*:作品タイトル直後の放映・公開年度は、原則として下2桁で記載。



(了)
(初出・当該ブログ記事)



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