(2025年12月7日(日)UP)
『獣電戦隊キョウリュウジャー』中盤~後半評 ~8・9・10人目の戦士! イベント編の質の高さ! 熱血活劇度も上昇! ついに10人戦隊が実現!
『機界戦隊ゼンカイジャー』論 ~『ゼンカイジャー』を通じて「スーパー戦隊」45年史の変転も透かし見る!
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栄光の「スーパー戦隊シリーズ」が終了! との報にカコつけて……。『王様戦隊キングオージャー』(23年)評をアップ!
『王様戦隊キングオージャー』総論 ~スキなところは受け入れて、キライなところはそっとしておく、棲み分け的な共生! 人&国に対する現実的な解!
(文・久保達也)
(2024年3月30日・脱稿)
*「別世界」を見事に描き尽くした映像美!
X(エックス)=旧・Twitter(ツイッター)で何度も「トレンド1位」を獲得したほどに、これまでスーパー戦隊をあまり観たことがない層にも注目され、若い世代を中心に絶大な支持を集めたスーパー戦隊シリーズ第47作『王様戦隊キングオージャー』(23年)がこのほど放映を終了した。
今から2000年前、地帝国バグナラクとの戦いで人類を救った5人の英雄がいた。
その英雄たちが王様となる5つの国がその星に生まれ、長きにわたって平和がつづいた。
だが、バグナラクがよみがえったために現代の王様たちが長剣型の変身アイテム・オージャカリバーでキングオージャーへと変身し、国民を守るために戦うという世界観だった。
先述したように『キングオージャー』が大人気を獲得したのは、東映が2023年1月、まさに『キングオージャー』製作のために用意したかのように、東映東京撮影所のテレビレギュラー番組用No.11ステージに縦5メートル、横30メートルのLED(エルイーディー)ウォールを備える日本最大のLEDスタジオを設置したことで、そのファンタジーな世界観を圧倒的な説得力で視覚化することに成功したのが大きいだろう。
もちろん、従来のグリーンバック合成も使われてはいるが、被写体を3D(スリーディー)モデルなどでつくられた素材を背景にして合成なしでも撮影する技法が可能になったことで、舞台の地球ならぬ「チキュー」、つまり、別世界である5つの大国を実にリアルに、そしてファンタジックに描写したことが視聴者を驚愕(きょうがく)させたのだ。
新型コロナウィルスの影響でロケを極力減らすために絵本の世界を舞台にしたとされる『仮面ライダーセイバー』(20年)の時点でこの技法が実現していたら、その映像美だけでも評価はもっと高まったかもしれない(汗)。
*実は「リアル」だった誇張キャラたち
そのファンタジックな映像美を究極なまでに完成させたことが、そこに登場するキャラクターたちを現実世界とは異なる、かなり浮き世離れした人物として描くことを可能にしたといっても過言ではないだろう。
児童養護園で育った本来は心優しい性格なのにヒーローごっこで悪役を演じたことが多かったために「オレ様が世界を制覇する!」が口グセで、両腕を大きく広げて「ナァ~~ハッハッハッハ!」と高笑いするのが定番だった、はじまりの国・シュゴッダムの国王の弟、ギラ・ハスティー=クワガタオージャー。
スラム街で育った捨て子だったがパソコンの技術ひとつで国王にまでのしあがり、自国のみならず全世界的に技術革新をもたらしたテクノロジーの国・ンコソパ(笑)の王でありながらも、リーゼントスタイルのヤンキーで口も態度も悪いヤンマ・ガスト=トンボオージャー。
最先端の医療技術を誇り、城が巨大な花びらに包まれているほどに美しい花が咲き乱れた国・イシャバーナの女王で自らも優秀な医師だが、美しいものを手にするためには国民の生活をも踏みにじってしまうほどの超ワガママ娘のヒメノ・ラン=カマキリオージャー。
常に氷雪に包まれた、国民の大半が犯罪者(爆)の国・ゴッカンで世界の中立を守る国際裁判所の最高裁判長兼女王であり、常に右目に眼帯、口を黒いベールで覆ったクールビューティーでありながらも、実は白い雪男のモフモフとしたぬいぐるみを相手にひそかに会話しているオタク気質のボッチ女(笑)であるリタ・カニスカ=パピヨンオージャー。
田園豊かで農業が盛んな食料自給率100パーセントを誇る国・トウフで日本的な城をかまえた元農民であるも、国を守るためには常にキツネとタヌキの化かし合いをかますほどの二枚舌で口が達者な快男児のカグラギ・ディボウスキ=ハチオージャー。
「王様」としてリアルなキャラはひとりもいないが(笑)、先述したように映像的にファンタジックな世界観を達成できたからこそ、ここまでにブッ飛んだキャラたちをあまりにも誇張(こちょう)した演出で描き尽くすことが可能となったのだ。
また、自国の利益を最優先する国ばかりのために地球がひとつにまとまらない現実世界の風刺・揶揄(やゆ)として、チキューが自分勝手な王様ばかりなのは実にリアルでもあり、真に説得力をもって描写されていたといえよう。
21世紀以降のスーパー戦隊の序盤では5人ないし3人の初期メンバーがまとまらないのが常であったが、『キングオージャー』では「国境を越え、利害を排除し、敵を国同士が一丸となって倒すため」に5人の王様が完全にひとつになったのが実に第19話(!)『王様戦隊キングオージャー』だったのはその最大の象徴だ。
*史上「初」の昆虫モチーフ!
ところで、『キングオージャー』のヒーロー&ヒロインはクワガタ・トンボ・カマキリ・チョウ・ハチ・クモなど昆虫をモチーフにしていたが、意外や意外、これはスーパー戦隊史上「初」のことであった。
かつて『忍風戦隊ハリケンジャー』(02年)にカブトライジャーとクワガライジャー、『特命戦隊ゴーバスターズ』(12年)にビートバスターなど、カブトムシやクワガタムシをモチーフにしたヒーローが登場した例はあったが、これらはあくまで追加戦士の扱いだったのだ。
これまでスーパー戦隊で昆虫がメインモチーフとして扱われなかったのは、やはりイナゴをモチーフにしたヒーローが起源となった仮面ライダーとの差別化のために意図的に避けられていた事情が大きいのだろう。
各戦士にはそれぞれシュゴッド=守護神と呼ばれる昆虫型機械生命体の相棒が存在し、それらの合体パターンの違いで巨大合体ロボットのさまざまなバリエーションが描かれたことで従来の伝統はキッチリ守られた。
特に第23話『シュゴッダムの動く城』(笑)ではシュゴッダムにそびえるコーカサスカブト城が変型を果たし、漆黒(しっこく)の超巨大ロボ・キングコーカサスカブトが誕生した。
のちにはそれを含めた20体ものメカが全合体を果たして王者ロボ・ゴッドキングオージャーとなり、王や側近、民ら20人が操縦して戦うさまは実に圧巻だった。
なお、王様が物語を主導し、かつヒーローに昆虫のギミックをもたせる題材自体は『獣電戦隊キョウリュウジャー』(13年)以来、実に10年ぶりにスーパー戦隊を担当することになった東映のプロデューサー・大森敬仁(おおもり・たかひと)氏が元々温めていた題材だったようだ。
かなり久々にスーパー戦隊を担当することもあり、内容刷新の意味でもメインライターにはこれまであまりスーパー戦隊を観たことがないらしい若手の高野水登(たかの・みなと)氏を起用したらしい。
だが、氏が描いた縦軸のしっかりとしたドラマは、実に従来のスーパー戦隊らしいものであり、視聴者の心をとらえて離さなかったのだ。
*「縦軸」がしっかりとした「人間ドラマ」の伝統!
バグナラクの復活から世界を守るために5王国同盟を締結しようとした、いわばキングオージャー誕生の契機をつくったキャラでありながらも「民(たみ)は道具」とするシュゴッダムの冷酷な国王、ラクレス・ハスティー=オオクワガタオージャーが最終展開直前に至るまで「悪」として描かれ、ギラが彼に「反逆者」として死刑宣告されたのを発端(ほったん)に何度となく直接対決を繰り返したほどに因縁の兄弟対決が描かれたのは、縦軸として絶妙な盛りあがりを生みだすこととなった。
「王」をめぐって因縁対決を繰り返す兄弟といえば、古くからの戦隊ファンとしては『恐竜戦隊ジュウレンジャー』(92年)のゲキ=ティラノレンジャーとブライ=ドラゴンレンジャーの王族兄弟が連想されるだろう。
『ジュウレンジャー』もきわめてファンタジー色が強かった作品だったのであり、その意味では『キングオージャー』はそこで描かれた「王道」の物語を立派に継承したといっても過言ではない。
ブライ=ドラゴンレンジャーは「6人目の戦士」としての初のレギュラーキャラであったが、『キングオージャー』の「6人目の戦士」もブライ同様にきわめて特殊な立ち位置のキャラとして描かれた。
表情も語り口も常に穏やかであるも、「行間を読め」が口グセで(笑)その真意がなかなか読めないトリックスターだったジェラミー・ブラシエリ=スパイダークモノスは、2000年前に人類を救ったものの歴史の闇に葬られた6人目の英雄と、バグナラクのクモ型女性怪人との禁断の恋で生まれた子供だった。
彼が人類とバグナラクの双方に味方するのはそのためだとのちに明かされたが、子供向けのヒーロー作品で主人公側と敵側の戦いをやめさせようとする中立的立場が描かれること自体がきわめて異例であり、これは近年の現実世界で敵対する国同士の間に入って和平交渉に務める国をも彷彿(ほうふつ)とさせたものだ。
ジェラミー、そして、妹のスズメをラクレスと結婚させてまでその王座を失脚させたようとしたほどのカグラギによる、先述したがキツネとタヌキの化かし合いといったバグナラクやラクレスらとの腹の中のさぐり合いは、彼らの交渉・外交能力の高さ、その世渡り上手な長所を強烈に印象づけ、主人公のギラ以上にオイシイところをかっさらってしまっていた。
現実世界の外交ではそううまくはいかないだろうが、少なくとも処世術としては我々オタ気質の人間たちはこれらをおおいに参考にすべきだろう(笑)。
クワガタオージャー=ギラはカグラギがラクレスから奪った王冠・オージャクラウンでキングクワガタオージャーとなるが、クワガタオージャーがオージャクラウンを頭からかぶってパワーアップを果たすさまは、名実ともにギラが王様となり得たことが実にわかりやすく描写されていた。
「レッド」がパワーアップで「ゴールド」の戦士と化すのもまた然(しか)りだ。
*『キングオージャー』、最大の「弱点」!
さて、『キングオージャー』は第27話『宇蟲王(うちゅうおう)の到来』以降、「第二部」に突入することとなった。
これはメインライターの高野氏がスーパー戦隊の過去作品について知識があまりなく、同じ悪役と1年間戦いつづける展開に「飽きてしまいそうだから」との氏の提案から生まれたシリーズ構成だったようだ。
第26話『新王国の誕生』までの「第一部」のレギュラー悪・地帝国バグナラクが人類と戦っていたのは、2000年前に地球外生命体のダグデドが率いる宇蟲五道化(うちゅうごどうげ)がそれを引き起こしたのだとして、過去に数々の惑星を滅亡させてきた着ぐるみ怪人の組織があらたにレギュラー悪となり、従来のスーパー戦隊により近いフォーマットとなったのは確かだ。
2023年で放映10周年を迎えた『獣電戦隊キョウリュウジャー』とのメモリアルコラボがなされた第32話『遭遇! キョウリュウ!』&第33話『シューゴー! キングとキョウリュウ』では、桐生(きりゅう)ダイゴ=キョウリュウレッドと空蝉丸(うつせみまる)=キョウリュウゴールド以外の『キョウリュウジャー』のヒーロー&ヒロイン役者の出演が実現し、往年のファンをおおいに喜ばせた。
また、『キョウリュウジャー』のメインを務めた坂本浩一監督が担当したこの前後編は『キングオージャー』の通常回とは異なり、ほぼ全編でロケ撮影が行われたうえに大量の火薬を使用したことで、「チキュー」ではない「地球」が舞台なのだとして、別次元の世界を明確に視覚化することにも成功していた。
そして、キングオージャーが別次元の「地球」に飛ばされている半年(笑)の間に「チキュー」の五大国は宇蟲五道化によって完全に支配されてしまい、王様たちが自国を取り戻すための戦いが描かれていく。
さらに、第22話『シュゴッド大集合』でギラとの決闘裁判に敗れて谷底へと転落、生死不明となっていたラクレスが第34話『シュゴ仮面の逆襲』から再登場を果たす。
ダグデドと結託したラクレスは再度シュゴッダムの王に復帰するばかりか、「暴虐(ぼうぎゃく)のラクレス」として宇蟲五道化の一員となり、再びキングオージャーと敵対する!
こうした流れの中で王様たちや側近たちの出自、「神の怒り」の真相などが小出しに明らかにされていく、縦軸がしっかりとした連続活劇はまさに「大河ドラマ」であった。
ただ、その一方で、ある側面では「スーパー戦隊」として実は失速していたのではないか? とする声も意外に散見される。
特に「第二部」突入以降にそれが顕著(けんちょ)なため、その観点から「第二部」を検証してみたい。
先述したキョウリュウジャーがゲストの第33話で『キョウリュウジャー』の主役メカ・獣電竜ガブティラにキングオージャーのシュゴッドたちが合体して誕生したキングキョウリュウジン以降、あらたな合体ロボは最終回(第50話)『俺様たちが世界を支配する』で、超巨大化したダグデドに致命傷を与えて宇宙空間に散った超絶怒濤(どとう)究極完全体キングオージャーに至るまで登場することはなかった。
ちなみに、第33話の放映は2023年10月15日だったのだが、その2ヶ月後のクリスマスイブに至るまで、「スーパー戦隊」として最も肝要なハズの玩具の販促が『キングオージャー』では充分に行われなかったといっても過言ではないのだ。
第35話『泣くなスカポンタヌキ』から第39話『ンコソパ頂上決戦』に至るまで、王様たちが自国を取り戻すための戦いが描かれていくが、ンコソパが第35話で奪還に失敗し、第39話でようやく取り戻した以外、イシャバーナもトウフもゴッカンもたったの一話完結であっさりと取り戻してしまう(笑)。
しかも、それらの回は「国境を越え、利害を排除し、敵を国同士が一丸となって倒す」ためにキングオージャーが総力戦を演じるのではなく、あくまでそれぞれの国の王様を中心に描かれ、他国の王様たちはクライマックスバトルで不在だったりしたのだ。
さらにいえば、国を取り戻すための戦いよりも王様や側近たちのキャラを掘り下げるための過去話の方が主軸を占めていた。
ただでさえ、露出度の低い衣装に身を包み、右目と口元まで隠したボッチキャラのリタがフリフリドレス姿のアイドルと化した第38話『不動のアイドルデビュー』は若い世代のみならず中年オヤジの筆者ですらも大喜びしたが(笑)、果たしてこれらはメインターゲットの子供たちにどう映ったのであろうか?
これらにつづき、第40話『我は王で王子なり』、第41話『宇宙を救う時』、第42話『ラクレス王の秘密』と3週連続で、ラクレスがダグデドと結託した真意、それを明かすことによるラクレスの立ち位置シャッフル、関係性の激変による王族兄弟の共闘を描いた物語は、「第一部」以来ギラとラクレスの兄弟を見届けてきた大半の視聴者におおいなる感動を与えたのは必至であり、実にすばらしい「人間ドラマ」だった。
だが、第40話の冒頭で先述したキングキョウリュウジンが特に必然性もなしにギラを助けに登場した以外、これらの中で合体ロボによる巨大戦はゴッドキングオージャーの対戦が一度描かれたのみであり、第42話ではラクレスとギラ以外の王様は誰ひとりとして変身しなかった。
ちなみに第42話の放映は2023年12月24日、クリスマスイブの当日だった。ラクレスの真実をこれまでの「人間ドラマ」の映像を用いて語る「総集編」を放映するには、あまりにも間が悪かったのではなかったか?
従来のスーパー戦隊恒例の「総集編」みたく、ヒーローのカッコいい大活躍を中心に編集したのならまだしも。
*「ウルトラマン」に負けた「スーパー戦隊」……
先述した『獣電戦隊キョウリュウジャー』放映終了時点だったバンダイナムコグループの2014年3月度の決算数値を見ると、「国内トイホビー売り上げ」中の「戦隊シリーズ」は144億円で過去最高額を記録していた。
これをピークに「戦隊シリーズ」の売り上げは徐々に下降線をたどり、『快盗(かいとう)戦隊ルパンレンジャーVS(ブイエス)警察戦隊パトレンジャー』(18年)放映終了直後の2019年3月度の決算数値は60億円であり、過去最低値を記録してしまった。
あまり語られてはいない事実だが、この『ルパパト』放映開始の数ヶ月後にバンダイが行った2018年度の「お子さまが好きなキャラクターに関する意識調査」のランキング結果では、『宇宙戦隊キュウレンジャー』(17年)が放映された2017年度にかろうじて第10位にランクインしていた「スーパー戦隊シリーズ」がまさかの圏外(けんがい)となってしまった。
『ルパパト』も『キングオージャー』同様にネット上では話題にされることが多く、大人たちには大人気だったのだが。
以降、つづく『騎士竜戦隊リュウソウジャー』(19年)の売り上げを示すバンダイの2020年3月度の「戦隊シリーズ」は『ルパパト』と同じく60億円、『魔進(マシン)戦隊キラメイジャー』(20年)終了後の2021年3月度の数値は45億でさらにガタ落ちしてしまった。
ちなみに同時期に放映された『ウルトラマンZ(ゼット)』(20年)の売り上げを示す2021年3月度の「ウルトラマン」の国内トイホビーの数値は49億であり、玩具の売り上げでは「戦隊シリーズ」は半年しか放映されない「ウルトラマン」に逆転されてしまったのだ……
この低迷ぶりに、もはや子供相手の商売は限界だと判断したのか、近年のスーパー戦隊は『機界戦隊ゼンカイジャー』(21年)、『暴太郎(あばたろう)戦隊ドンブラザーズ』(22年)、そして『キングオージャー』と、立てつづけに「変化球」を連打している。
このところの物価高で子供に玩具を買い与える余裕のないファミリー層よりも、高額でも平気で玩具を買ってくれるのみならず、ネットで話題にしてくれて作品の注目度を高めてくれる若年層をターゲットにした方がはるかに確実だと、彼らにウケることを最優先した作品づくりは企業の目線からすれば当然の戦略だと充分に理解はできる。
だが、2014年に「過去最高」の玩具売り上げを記録した「戦隊シリーズ」が、そのわずか5年後の2019年にナゼ「過去最低」の売り上げを記録するに至り、「お子さまが好きなキャラクター」のランキングでも「圏外」となってしまったのか、その根本的な要因をバンダイも東映もまともに分析したのであろうか?
クリスマスイブを間近に控えた大事な時期に、合体ロボの巨大戦どころか戦隊ヒーロー&ヒロインのせいぞろいすら皆無(かいむ)の回さえあった『キングオージャー』とは異なり、「過去最高」の玩具売り上げを記録した『獣電戦隊キョウリュウジャー』の同時期の放映分では、ブレイブ39『せいぞろい! 10だいきょうりゅうパワー』で10人ものキョウリュウジャーが大集結、ブレイブ41『ヤナサンタ! デーボスせかいけっせん』&ブレイブ42『ワンダホー! せいぎのクリスマス』は世界各地に出現した巨大怪獣を相手にキョウリュウジャーたちが各種合体ロボットに分乗して戦う豪華絵巻だった。
もちろん、それらのみで売り上げが「過去最高」に至ったワケではなく、あくまでその作風や世界観を象徴する例としてあげたのだが、そもそも『キョウリュウジャー』につづく作品群がそうした「スーパー戦隊」本来の魅力を維持できなかったことこそが、近年の長期低迷を招く要因となったのではあるまいか?
「第1部」につづき、「第2部」でも描かれた『キングオージャー』の群像劇やキャラクタードラマに見ごたえがあったのは確かだ。
ただ、それらは等身大変身ヒーローのアクションや巨大合体ロボットのバトル演出の中に点描する程度でも立派に両立できることは『キョウリュウジャー』がすでに証明していたのだ。
なので、第40話から第42話の三部作はゴッドキングオージャーやキングキョウリュウジンの活躍をオマケ程度にとどめるのではなく、それらを強調する中で王族兄弟の因縁物語を点描する作劇の方が妥当(だとう)だったかと思える。
あと、強(し)いてあげればたいした必然性もなしに第40話に桐生ダイゴの継承者・桐生ダイゴロウを登場させるくらいなら、第42話でラクレスとギラが和解したあとに登場させ、「チキュー」にはない「地球」のクリスマスを伝授することでラストに王様たちがラクレスの味方化を兼ねて祝うなんて絵にした方がよかったのではないのか?
まぁ、『キングオージャー』に夢中になるような大人たちには「クリスマス」なんて無縁なのだろうけど(汗)。
やはり「第1部」の終盤で年間の折り返し地点だった第25話『王と民の戦い』で、20体ものメカが全合体したゴッドキングオージャーに各国の王や側近、民ら20人が搭乗して出撃するという、特撮の見せ場としては最大のクライマックスをやってしまったのは、いささか配分を誤ったのではないかと思える。
これを上回るインパクトを後半の「第2部」で描くのは到底困難だったろうし、先述したように第3クールは半ばくらいまでは王様と側近たちの関係性の変化を中心に描いていたのだから、その総決算として20人出撃をやった方がドラマとバトルを融合させる意味でもふさわしかったのではなかろうか?
メインライターの高野氏の問題ではなく、そうしたシリーズ構成は大森プロデューサーやバンダイの担当者がキチンと伝達すべきだったろう。
あと、細かな点をいうなら、5人の王が国際会議で集結するのにそれぞれの専用マシンを飛ばして会議の場に向かうような描写がなかったために、まるで王様たちがご近所からテクテク歩いて集会場に来たかのような印象が強く感じられたものだ(爆)。
この点も販促の弱さを象徴しているが、「チキュー」ってどんだけ小さい星やねん? と思えたほどに、全世界が舞台の割には実はそのスケール感は乏(とぼ)しかったのではなかろうか?
*「民意」が望んだ「戦い」
第49話『王はここにいる』で、「チキュー」を捨てて宇宙に避難するように王様たちから呼びかけられていた全世界の民衆が、王様の言いつけを聞かずに反逆者となって宇蟲五道化にいっせいに蜂起(ほうき)するさまは圧巻であり、最終展開としては確かにおおいに盛りあがる描写で感動した視聴者は多かったことだろう。
ただ、個人的にはこの場面にまったく別の意味で感心した。
かの太平洋戦争が「昭和」天皇の責任や旧日本軍の暴走以上に一般大衆の「民意」こそが最大の「戦犯」だったのをはじめ、古今東西ほとんどの戦争が「民意」によって支えられるのを実にリアルに描いていると。
だからこそ、いつまで経ってもやめることができないのだ。
今の日本人にしろ、敵基地攻撃能力の保有やアメリカが所持する核兵器の共有に賛成する一般大衆が多数存在する。
近い将来に日本が他国と戦いはじめるとしたら、それは彼らの「民意」こそが原動力なのだ。
また、ここに至るまでに立ち位置の変化が繰り返されたギラとラクレスに対し、シュゴッダムの大衆がそのときの情勢によって彼らを崇拝(すうはい)してみたり罵倒(ばとう)してみたりといった無責任ぶりが描かれてきたのも、そのリアルさに拍車をかけた。
「国家総動員法」がなくとも勝手に団結してしまうような群衆心理こそが宇宙人の侵略以上の恐怖であり、その意味では個人的には民の蜂起場面は子供にはあまり見せたくないと感じるのだが。
*「スーパー戦隊の最高傑作」?
リアルな特撮や大河ドラマ的な作風・世界観を指して『キングオージャー』を「スーパー戦隊の最高傑作」と賞賛する声が各所で散見される。
ただ、「戦隊初」とされる二部構成に関しては2024年で放映30周年を迎えた『忍者戦隊カクレンジャー』(94年)が、比較的コミカルな作風だった第24話『あァ 一巻の終り』までを「第一部」、次第にシリアスな展開へとシフトしていった第25話『新たなる出発(たびだち)!!』以降を「第二部 青春激闘編」として構築することですでに実現していたのだ。
また、一度は敵組織によって世界が支配されてしまう展開にしても、『超力戦隊オーレンジャー』(95年)の最終展開ではオーレンジャーが灼熱(しゃくねつ)地獄の魔空間に閉じこめられ、脱出するまでに経過した半年の間に地球が敵組織のマシン帝国バラノイアによって完全に制圧されるさまがすでに描かれていた。
なお、この当時のミニチュア特撮は現在の観点からすればややチープな印象だったが、序盤でバラノイアの超巨大戦闘母艦・バラクティカが世界各国の都市を攻撃する場面や、小型戦闘艇(てい)・タコンパスと国際空軍の戦闘機による大空中戦などは実に迫力あふれる特撮だったことは特筆しておきたい。
さらにあげれば、明確なリーダーが設定されていないとか、各キャラごとに因縁の深いキャラを配置し、彼らの関係性を中心に描くことでメンバー全員が変身しない回が存在したり、巨大ロボ戦が描かれない回があったりと、『キングオージャー』でパターン破りとして描かれたいくつかの要素も、『五星戦隊ダイレンジャー』(93年)ですでに実現されていた。
『キングオージャー』のメインライター・高野氏がこの『ダイレンジャー』が放映された1993年生まれだが、現在の特撮マニアの過半を占める若い世代にとっては先述した作品群は生まれる前に放映されたか、あるいは生まれていても幼すぎて視聴していなかったり記憶に残ってはいないのだろう。
だが、実はすでに30年前の時点でスーパー戦隊ではさまざまな意欲的な取り組みが行われていたのだ。
『キングオージャー』を「最高傑作」として断じるのは、せめてそれらの片鱗(へんりん)のみを知ってからでも決して遅くはないのではなかろうか?
再放送や映像ソフト化がなければ過去作品の視聴が困難だった我々が若かった時代とは異なり、今は各種サブスクで比較的に容易に視聴するのが可能なのだから。
*「ひとつ」を否定した『キングオージャー』
「無理にひとつになる必要はない。姿形、心、ひとつとして同じものはない。交わらないからおもしろい。好きなところは受け入れて、嫌いなところはそっとしておく。違う者同士、ともに生きればいい。手をつなぎ、力をあわせるのはいざというときだけでいい」
これは最終回のラストで語られたジェラミーによるナレーションだ。
まさにメインライターの高野氏の世代、つまり、現代の若者たちの対人関係での距離のとり方、ひいては各地域や各国家、国際関係のあり方までをも最大に象徴するものだろう。
長年にわたって「みんないっしょでなければならない」としてきたもっと上の世代なら、これに異を唱(とな)える者も多いに違いない。
だが、『キングオージャー』が若い特撮マニアたちの絶大な支持を集めたのは、このメッセージから逆算して構築されたキャラクターや世界観に共感するところが多々あったからこそではないのだろうか?
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『海賊戦隊ゴーカイジャー』(11年)1話「宇宙海賊現る」
『宇宙戦隊キュウレンジャー』(17年) ~総括・最後は全宇宙の不運な人々の盾になると誓ってみせた幸運戦隊!
『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』(18年)前半合評 ~パトレン1号・圭一郎ブレイク!
『4週連続スペシャル スーパー戦隊最強バトル!!』(19年)評 ~『恐竜戦隊ジュウレンジャー』後日談を観たくなったけど、コレでイイのだろう!?
『騎士竜戦隊リュウソウジャー』(19年)中盤評 ~私的にはスッキリしない理由を腑分けして解析。後半戦に期待!
『魔進戦隊キラメイジャー』(20年)最終回・総括・後半評 ~「仲間」を賞揚しつつも「孤高」「変わらないこと」をも肯定!
『機界戦隊ゼンカイジャー』論 ~『ゼンカイジャー』を通じて「スーパー戦隊」45年史の変転も透かし見る!
https://katoku99.hatenablog.com/entry/20230521/p1
洋画『パワーレンジャー』(17年) ~戦隊5人に「スクールカースト」を色濃く反映! 「自閉症スペクトラム」青年も戦隊メンバー!
『パワーレンジャーFOREVER RED』(02年) ~坂本浩一監督作品・戦隊を逆照射!
『百獣戦隊ガオレンジャーVSスーパー戦隊』(01年) ~赤星政尚・竹本昇、出世作! 「戦隊」批評の特殊性!
https://katoku99.hatenablog.com/entry/20011102/p1
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『獣電戦隊キョウリュウジャー』後半評 ~8・9・10人目の戦士! イベント編の質の高さ! 熱血活劇度も上昇!
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『獣電戦隊キョウリュウジャー』中盤総論 ~8・9・10人目の戦士登場! イベント編の質の高さ! 熱血活劇度も上昇!
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