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仮面ライダー龍騎 〜後半評 『仮面ライダー龍騎』は教育番組である!


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仮面ライダー龍騎』は教育番組である!

(文・久保達也)
 02年9月15日にHMV名古屋生活創庫において『仮面ライダーV3』(73年)のDVD(ASIN:B00006LF04)発売を記念し、主演の宮内洋トークショーが催された。
 彼なりのヒーロー美学が熱く語られたあと、
 「最近のヒーロー番組は教育番組になると思いますか?」
 と質問した人がいたが、宮内氏はそれに対して
 「なりませんっ!」
 と答え、大きな歓声と拍手が巻き起こった。


 「それは違うっ!」と叫ぼうものなら袋叩きにされかねない雰囲気であったし、天下の宮内洋、いや風見志郎(仮面ライダーV3)を敵に回す訳にもいかなかったので(笑)、本来ならその場で主張したかったことを今回は書いてみたいと思う。



 02年9月19日に放映された『仮面ライダー龍騎スペシャル 13RIDERS(サーティーンライダース)』(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20021105/p1)はTVシリーズとはかなり異なる展開を描いたもう一つの『龍騎』の物語であったが、TVシリーズの基本的な世界観は端的に表現されており、初見の人々にも
 「ああ、これが今ハヤリのヤツなのか」
 と理解できる仕上がりになっていた。


 かなり年下の某女性タレントと最近噂のある黒田アーサーが演じる高見沢=カメレオンライダー・仮面ライダーベルデ(二重人格に透明能力や変身能力等、スペシャル限定なんて勿体無いくらいの美味し過ぎるキャラ……)が語っていたように、ミラーワールドにおけるライダーたちのバトルフィールドは自分の目的のためには平気で他人を犠牲にする輩がひしめく現代社会の縮図である。


 そんな弱肉強食の世界にこれから入っていこうとする現代の子供たちは、運動会で順位をつけてもらえないばかりか遂には成績表まで絶対評価にされてしまった過度の平等教育(それがひいては子供たちに独自の基準で序列を作らせることになり、いじめ等につながっているように思うのだが……)に毒されており、果たして厳しい生存競争に耐えられるのかどうか不安になってしまうのだ。
 だから就学前の幼児に対して早くから社会で生き抜くことの厳しさを教える『龍騎』は十分に教育的効果を満たしているかと思うのだが。



 また「みんな一緒」をスローガンに掲げる義務教育では絶対に教えてくれない大事なこと。
 すなわちこの世の中には色々な考え方・価値観を持つ人々がいて、そのために衝突も絶えないけど皆それぞれに何かを抱えていて決して善悪の問題で片付けることができるものばかりではなく、認められる部分はお互いに認めてあげましょうという主張が子供たちには伝わっているかと思う。


 それは特撮ヒーロー『ダイヤモンド・アイ』(73年)のエンドテーマ『ライコウマーチ』みたく
 ♪ ペンが、オレの、刀だぁ〜 (オレ好きだわこの歌・笑)
 と叫ぶ連中が蠢く同人ワールドに生きる我々「ライター」たちこそが受け止めるべき性質のものであるのかもしれないが(T.SATO隊長はさしずめ神崎士郎か・爆)。



 まあ「大勢のためには小さな犠牲を気にしないのが英雄」とばかりにテロリスト壊滅のためにアフガニスタン空爆して民間人に犠牲者を出したり、チェチェン侵攻に反対して劇場にたてこもった武装勢力を一掃するために正体不明のガスを使用して人質を死なせたりなんて「大国の正義」を見せつけられ、「テロとの戦い」に共感できなくなっている人々は結構多いかと思う。


 そんな御時世で云わば「テロとの戦い」を描いていた過去の『ライダー』シリーズのような作品は一般層には受け入れにくくなっていると思う訳で、
 神崎士郎が造った(?)ミラーワールドはじめ人間を捕食するミラーモンスター(敵怪人)やライダー同士のバトルシステム自体を阻止せんとする、擬似仮面ライダーオルタナティブこと香川英行教授がその大義のために怪人に襲われているのに見捨てた(!)香川自身の妻子を、「助けたいから助けた」城戸真司(きど・しんじ=仮面ライダー龍騎)を「真の英雄」だと受け取る人もいるだろうし、
 秋山蓮(あきやま・れん=仮面ライダーナイト)のように自分が守る者(植物人間状態の恋人)のためには世界を敵に回しても構わないと考える人もいる。
 そうかと思えば浅倉威(あさくら・たけし=仮面ライダー王蛇)のように目的も無しに己の快楽だけをひたすら追い求める者もいれば、
 金のためならどちらにも転びかねない警備員のアンちゃん・佐野満(仮面ライダーインペラー)みたいな者もいる。


 要するにあれだけ様々な考えのライダーたちがいれば誰か一人くらい共感したくなるキャラが(全面的にではなく部分的にでも)、それぞれの視聴者に存在する訳だ。


 つまり個々の価値観が多様化・細分化した御時世では「一致団結」よりは皆が勝手なことをしている『龍騎』のような作品が望まれるのであり(じゃあ『忍風戦隊ハリケンジャー』(02年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20021112/p1)はどうなのかって? い、いやあ、だから『ハリケンジャー』はホントによく頑張っているよねえ・笑)、親愛なるミーハー主婦層(笑)も決してイイ男目当てだけで見ている訳ではないと思うのだ。


 考えてもご覧なさい。「オレの正体を見たな」と民間人を殺した怪人に戦いを挑んだライダーが一旦敗れ、おやっさんと特訓して新必殺技を生み出して勝利をおさめる……なんてのをイケメン主役でやったとしても子供たちはともかく30歳前後の主婦層にはウケる訳ないっちゅーの(笑)。



 イイ男路線と云えば『仮面ライダーBLACK』(87年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20001015/p2)の主役・南光太郎(みなみ・こうたろう)を演じた倉田てつをも当時主流の「しょうゆ顔」(醤油みたいにサッパリとした顔……って訳わかんねえよ・笑)ってことでちっとは騒がれたものだけど、平成『ライダー』役者の人気には到底及ばなかった。
 ライダーのスタイル(マフラーしてないだとか)や敵組織の設定(戦闘員がいないだとか)など当時としては斬新な試みが色々とあったのだけど、基本的には昔ながらの「勧善懲悪」な作品だったために子供やマニアにはともかく主婦層にまでは届かなかったのである。
 ロボライダー・バイオライダーへの三段変身やレーザーブレードが武器なんて掟破りが続出した『仮面ライダーBLACK RX』(88年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20001016/p1)もまた然り。
 そもそも二年連続倉田てつをってのが無理があった。あれだけキャラ(性格)が変わるのなら別の役者にすれば良かったのに。NHK朝ドラ『君の名は』(91年)も不発に終わり、倉田てつをは今ごろどうしているのやら……


 また個人的に『ライダー』役者の中では最もイイ男だと思う『(新)仮面ライダー』(79年)の主役・筑波洋を演じた村上弘明なんかは放映当時全然騒がれることがなかった。
 歴代ライダー総出演のイベントやお笑い系怪人のハチャメチャなノリは個人的に大好きなのだけれど、当時の主婦層にはやはり嘲笑の対象だったのだろうし(笑)、村上に夢中になるどころか「こんなの見ちゃいけません!」と子供を叱る主婦が多かったんじゃないか。
 村上がブレイクしたのは何年もあとのTV時代劇『必殺仕事人Ⅴ(ファイブ)』(85年)出演のころだ。



 イイ男さえ出ていれば女は観るという説を決定的に覆す事態が02年の秋に起こった。
 この秋の番組改編でゴールデンタイムからいわゆるトレンディ系の作品(こちらの方がよほど「まずキャスティングありき」でドラマなんか二の次であった)がほとんど姿を消してしまったのである。
 バブル景気絶頂期の90年前後に出現し、長らく視聴率の王座に君臨してきたこの手のドラマも止むことのない不景気のどん底に苦しむ庶民にとっては都会で派手に遊び狂う若者たちの姿が現実と著しく乖離していると受け取られ、全く共感を呼ばないものになってしまったのだ。
 どうせ虚構の世界なら、ってことでこのへんの視聴者が『龍騎』に流れてきてることもあるかもしれん。どうぞいらっしゃい。こっちの方がもっと面白いから(笑)。



 私事で恐縮だが、ウチの親父は女優の若村麻由美が司会になったという理由(ちなみに若村は私もファン。なんだかんだ云って親子だな・笑)だけで02年の春からNHK教育の『N響アワー』(80年〜)を見始め、しまいにクラシックのCDまで買うようになってしまったが、その理由も「クラシックは演歌の半額で買える」からだそうで(笑)。
 NHK教育と云えば近年語学講座の司会にグラビアアイドルを多数起用しているのだが、例えオネエチャン目当てでもそれで語学力が身につくのであれば良いことだ。何かにハマるキッカケって案外そんな些細なことが多いものだ。


 そもそも我々が特撮マニアをやっているのも「ライダーかっこいい」「ウルトラマンかっこいい」がキッカケだったハズ。「須賀クンかっこいい」「太陽クンかわいい」とどこが違うのよ(笑)。
 良識のある一般層が「近ころの若い主婦は」と嘆くのであればともかく、『ウルトラセブン』(67年)のアンヌ隊員や戦隊ヒロイン、『美少女戦士セーラームーン』(92年)に至るまで、ジャンル作品に登場する様々なヒロインにうつつをヌカしてきた我々にはミーハー主婦を批判できる資格なんかある訳がないのである(笑)。



 それが証拠にこれをお読みの貴方だって『龍騎』第30話(新聞タイトル『ゾルダの恋人』)からレギュラー出演している森下千里が元レースクイーン(原稿に同封の図版参照、って載るのかよ・笑)だけあって美尻や脚線美を惜し気もなく披露するのを見て「ウオ〜ッ!」と喜んだハズだ(オレだけか?・笑)。
 『龍騎』は女性キャラが男性陣に比べて少々弱いだけに、彼女の登場は心底嬉しかったのだけれど。



 表題から論旨が少々ズレてきたが、『龍騎』は「ヒット作品をつくる秘訣」を教えてくれているような感があるし、企業のエライさんたちも大衆の支持を得られるにはどうすれば良いのか『龍騎』から学べる点が多々あるのではないか?
  「最終回」を謳(うた)った劇場版(http://d.hatena.ne.jp/katoku99/20021104/p1)然り、視聴者に結末を決めさせる「テレゴング」形式のスペシャル版然り、本当に商売上手だと思うぞ。


 02年の夏は劇場作品や各種イベント等ワイドショーで連日のようにヒーロー作品が話題になり、78〜79年の第三次怪獣ブームを思わせる熱い夏になったが、その中核を成したのはやはり『龍騎』だった。
 本当なら『ウルトラマンティガ』(96年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19961201/p1)がこのような現象を巻き起こしてほしかったところだが、やはりエコテーマと人類批判ばかりではねえ。主演のV6・長野博は『ティガ』じゃなくても歌番組で見られる訳だし(笑)。
 (90年代後半の児童文化の頂点に立ったのは、平成『ウルトラ』ではなく、ポケモン同士を戦わせる『ポケットモンスター』(97年)やカードから召還したモンスター同士が戦いあう『遊☆戯☆王』(98年)の方である)
 『ウルトラマンガイア』(98年・http://d.hatena.ne.jp/katoku99/19981206/p1)の一部の女性ファンが我夢(ガム=ガイア)や藤宮(ウルトラマンアグル)が変身するとビデオをサーチで飛ばしてしまうなんて話を聞いたことがあるが、『龍騎』ではそんな話も聞かないし。



 ただ一つだけクギを刺しておきたいことがある。
 バブル景気のころ、若い女性たちが競馬や相撲に熱狂したものであったが、どちらも最近はすっかり廃れてしまい、特に相撲に関しては横綱貴乃花(たかのはな)の連続欠場のために閑古鳥が鳴いている始末である。これは競馬なら武豊(たけ・ゆたか)、相撲なら貴乃花に続くスターが生み出せなかったためである。
 ようやくヒーロー作品にも市民権が得られた昨今ではあるが、『ライダー』に続く新ヒーローを生み出さないことには同様の道を辿るのではないかという危惧も感じさせる。好況に溺れることなく、そろそろ真剣に検討すべきときかとも思える。



 とは云うものの、レイヨウ型のモンスター・ギガゼール大軍団を率いる仮面ライダーインペラー(変身前のお調子者のアンちゃんとのギャップが笑える)の登場、ライダー同士の戦いに勝ち残って「真の英雄」になることを決意し、恩師の擬似ライダー・オルタナティブこと香川教授を抹殺した仮面ライダータイガ=東條悟(とうじょう・さとる)、そしてモンスターを操る能力を見せたヒロイン神崎優衣(かんざき・ゆい)の真の姿とは……


 これらのキャラクターが今後のドラマをどうひっかき回してくれるのか、益々目が離せなくなってきた。こんな世界、ホ〜ントあこがれちゃうな〜ぁ(笑)。

2002.11.24.



P.S.
 『仮面ライダー』(71年)のショッカーを初め、70年代の東映ヒーロー作品では悪の組織が人々を連行して強制労働させたり、毒ガス等の人体実験で死に至らしめる描写が執拗に描かれていましたが、思えばこれは旧日本軍がアジアの人々に対して本当にやっていたこと。
 高度成長下の繁栄に浮かれて平和ボケに陥った人々に毎週これを見せることによって、当時のスタッフは戦争責任をとろうとしないこの日本を弾劾し続けたのかもしれません。
 その70年代後半に拉致事件を起こした某国との緊張が高まる今、旧日本軍の蛮行を悪として描くのも意義深いのかなと。


 ただ90年代に入って毒ガス攻撃やら毒物混入やら本当にショッカーみたいな連中が出現してきたことから考えるとあまりに生々しくて近頃では描きにくいのでしょう。
 まして95年に地下鉄サリン事件を起こした宗教団体に対しては信者の人権を優先するあまり解散さえさせることができず、「テロとの戦い」に負けてしまったのだから……


仮面ライダー龍騎 ハイパーバトルビデオ 龍騎VS仮面ライダーアギト

 (小学館『てれびくん』02年9月号全員サービス)


 ミラーモンスターを大挙引き連れたニセ仮面ライダーアギト龍騎・ナイト・ゾルダ・王蛇の4大ライダーが大激突!

 王蛇が「俺達は仲間だ」とのたまうかと思えばゾルダもまた「正義と平和のために」などとヌカし、「俺たちは仮面ライダー!」との揃い踏みに至っては史上空前の悪い冗談である(笑)。


 案の定、夢オチだったが面白かった。
 劇場版もいっそこんなノリでやってくれれば子供たちにも大ウケしただろうに。
 ORE(オレ)ジャーナルの面々にも変身させてさあ(笑)。別に夢オチでも良いんじゃない。


 しかし今の子供は恵まれてるよなあ。オレらのころはせいぜいペラペラのソノシートくらいだったもんね(笑)。


(了)
(特撮同人誌『仮面特攻隊2003年号』(02年12月29日発行)『仮面ライダー龍騎』後半合評②より抜粋)



『假面特攻隊2003年号』「仮面ライダー龍騎」後半評・関係記事の縮小コピー収録一覧
仮面ライダージャッキー
 13.5人目(?)の不完全・女ライダー“ジャッキー”は、完全なライダーの肉体を手に入れる為に、王蛇と手を組むが……〔「仮面ライダーワールド02」のライブショー「最強ヒーロー伝説・変身!アドベントせよ!」(2002)に登場した〕


★「仮面ライダー龍騎 ハイパーバトルビデオ 龍騎VS仮面ライダーアギト」付属カード〜WキックAP7000
 小学館特製ビデオ『仮面ライダー龍騎 ハイパーバトルビデオ 龍騎VS仮面ライダーアギト』では、久々に「ダブルライダーキック」が見られます。現役+先輩ライダーのちゃんとしたWキックって、[スカイライダー + 2号ライダー × ドラゴンキング戦]以来じゃないでしょうか?

(共に伏屋千晶)
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