(2019年3月3日(日)UP)
『ワンパンマン』 ~ヒーロー大集合世界における最強ヒーローの倦怠・無欲・メタ正義・人格力!
『コンクリート・レボルティオ~超人幻想~』 ~往年の国産ヒーローのアレンジ存在たちが番組を越境して共闘するメタ・ヒーロー作品だけれども…
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2019年4月からの深夜アニメ『ワンパンマン』第2期・放映開始に備えて、『ワンパンマン』第1期(15年)が再放送中記念! とカコつけて……。
『サムライフラメンコ』(13年)・『コンクリート・レボルティオ~超人幻想~』(15年)・『ワンパンマン』第1期の、3大「メタ・ヒーローアニメ」評をアップ!
合評1 ~ご町内ヒーロー ⇒ 単独ヒーロー ⇒ 戦隊ヒーロー ⇒ 新旧ヒーロー大集合へとインフレ! ヒーロー&正義とは何か? を問うメタ・ヒーロー作品!
(文・T.SATO)
(14年12月24日脱稿。19年3月3日加筆)
昨年2013秋~今年2014冬にかけて2クールで放映された、特撮変身ヒーローもののパロディアニメだ。いや、特撮変身ヒーローものへのガチンコの愛・オマージュ・メタ的な批評性にあふれた深夜アニメでもあった!?
当初は特撮変身ヒーローものを笑いのめしたり、今では陳腐凡庸な「正義とは相対的なモノだ!」とか「過剰な正義の危険性!」などを訴えるだけのモノであれば、鼻で笑ってやろうと待ち構えていたのだが……。
フジテレビ深夜の一応のオサレ(オシャレ)枠「ノイタミナ」にふさわしく、萌えオタではなく一般……もといサブカル女子にも受けそうな、オシャレでクールな8等身の美形のキャラデザ。
主人公は特撮変身ヒーローオタクではあるものの19歳のイケメン若造で、ファッションモデルもやっているあたりは、我々キモオタの敵でもある(笑)。
しかし彼は、ちょいワル・不良性感度を気取って、電車の7人掛けの座席で席を詰めずに両股を開いて両脇にヒトを座らせにくくすることで、他人よりも自分が上位に立てたつもりで悦に入っている、「公共」心や分かち合いのカケラもナイよーな虚栄心にまみれた連中や、ゴミのポイ捨てや赤信号を無視して突進する歩行者に心を都度痛めているような繊細・敏感なメンタルの持主で、時にそんなヤツらに注意もしてみせる(!)、心は禁欲・ストイックな特撮ヒーローにあこがれを抱いていた幼児・少年のころのままで止まっている、我々のような変身ヒーローオタクの同類だったのだ!?
彼はお手製の赤い変身ヒーロースーツを身にまとい、夜な夜な禁止地域での喫煙や、夜のうちに家庭ゴミを出すオバサンや、深夜にコンビニの前でたむろする中学生たちを注意する。客観的にはイタイタしい光景だが、主観的には喝采を叫ばずにはいられない!(笑)
当初はご町内を守るヒーローにすぎなかった彼は第1クールの中盤で、昭和の『仮面ライダー』(71年)シリーズに登場した悪の結社・ショッカーのごとき組織が繰り出した、人間の力を超える改造人間でもあるギロチンや釜や車輪&各種の動物とが融合した、ガチの敵怪人たちとも遭遇!(エッ!?)
以降は警察や、相棒ともなった交番のダンディーなイケメン警官とも連携して、ショッカーもどきとの激闘を展開。第1クール終盤においてようやくコレを打倒する。
しかして、すかさず新たな大スケールの超科学力を持つ敵組織が出現!
コレを予知していた(エッ!?)政府や関係機関は、巨大ヒミツ基地を要する5人組の5色の強化スーツをまとわせた「サムライ戦隊フラメンジャー」(!)を本格投入。リーダーのレッドにはチームメンバーの反対を押し切って紆余曲折の末に、主人公のイケメン青年がムリやりに収まる(笑)。
そして、新たな敵組織の敵怪人たちは今度は等身大戦の果てに巨大化! 対するに80年代前半の戦隊シリーズみたいな青系主体の3原色のカラーリングのマシンが合体して巨大ロボが出現! ビル街にて巨大怪人に立ち向かう!
第2クール中盤では、富士山での最終決戦でピンチに陥ったサムライ戦隊フラメンジャーの前に、劇中内でのここ数十年の歴代の特撮変身ヒーローたち数百名が助っ人参戦!
ナンと! 彼らはフィクションの中だけの存在ではなく、劇中内でも実在しており、悪の組織と戦っていた超人ヒーローたちでもあったと明かされる!(エッ!?)
ナンちゃってご町内ヒーロー ⇒ 単独ヒーロー ⇒ 戦隊ヒーロー を経て、ことココに至っては、『アベンジャーズ』(12年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20180619/p1)で『ジャスティス・リーグ』(17年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20171125/p1)で『プリキュア オールスターズ』(09年)で『スーパーヒーロー大戦』(12年)な、「ヒーロー大集合作品」のオマージュへと昇華!!
そして、その次なる敵は、日本政府&日本国民(笑)。歴代のヒーローたちは次々と逮捕され、市民たちの裏切りの通報にあっていく中で、主人公青年はレジスタンスのヒーローとして今度は戦う。
アメリカの超人ヒーローの力も借りて、ようやく日本政府の悪の首魁を倒した主人公青年ではあったが、アメリカの超人ヒーローがココで正体を現わす!
彼は悪の宇宙人(!)であり、彼こそがラスボスであり、日本政府の首魁自身の方はラスボスや絶対悪ではなく、日本国民と世界を守るために、プラス・ちょっとした自身の自己顕示欲(笑)で、心ならずもヒーローたちを弾圧する役回りの選択をしていたのだと……。首魁は主人公青年にそのヒミツを明かして、宇宙人との最後の戦いを主人公青年に託す。
そして始まる宇宙人vsサムライフラメンコとの戦い。
しかし、この宇宙人もまた侵略者的な単純悪ではなく、クラークの古典SF『幼年期の終り』(1953年)のように、人類がその幼年期を終えて、次なる別存在・超存在へと進化することを促すために出現した高次の意味での善意の宇宙人であったことが判明する(オイ)。
強制的で不自然で人工的な進化なぞは不要! 愚かしい遅々とした歩みではあっても、人類は自身の歩みの速度で進みつづけるべきだ! とコレを突っぱねて(大意)、悪の宇宙人(?)を打倒した主人公青年は、次には「宇宙意志」なるおそらく「神」・「造物主」でもあろう存在とも邂逅する……。
……ドコまでエスカレートするんだよ!?(笑)
劇中でも語られていた通り、大方の男のコは思春期になると、公共心にあふれる誠実なキマジメ変身ヒーローよりも、私的快楽・虚栄心を満足させるようなヤンキー不良・ロック音楽なぞがカッコいいと思うようになるものだ――筆者個人はまったくそーではなかったけど(汗)――。
「公共心」よりも「私的快楽」。そんな世界の理不尽・不条理(必然?)に立ち向かうために、改めて「正義」や「公共心」の大切さを! なぞと主張しようものなら、そこに立ちはだかってくるのは「正義の相対性や危険性」なぞという、実に小賢しいテーゼでもある。
もちろん、それらのテーゼにも一理や二理はある。
殺人・強盗なぞは明らかに悪ではあっても、国家vs国家、社会vs社会、あるいはパン屋さんvsお米屋さん(笑)、ドチラが正しいのかは一概にはたしかに云えない。
百年前、20世紀前半の警察国家・国権主義の時代であれば、過剰な「正義」が、過度な国権の伸長・市民の自由の抑圧にもつながる危険性があることを肯けなくもナイ。
だから80年代以降のジャンル作品は、特撮ジャンルもオタク第1世代が送り手にまわった90年代後半以降は、大文字の「正義」は敬遠されて、むしろそれは一歩間違えれば「正義」の名のもとに遂行される独裁的・独善的なモノにも通じるのだと警戒されてきた。
その代わりにヒーロー活動の言い訳として、大きなスローガンは掲げずに、等身大の「正義」や、せめてもの身近な人間たちだけは守る、身の丈の手に届く範囲で出来ることをすることで、大文字の「正義」のスローガンが醸す専制や思想統制の匂いを脱臭して、免罪符を得ようとせせこましく汲々としてきた。
しかし、等身大の「正義」や、自分の手が届く範囲だけはせめて守るというテーゼは、謙虚さの表明であると同時に、自分たちの仲間以外や、手の届かないトコロは放っておいてもイイのかよ!? というような反証的な疑問も生じてくるワケであり(生じるよネ!?)、そこへの目配せがナイ点で、少々お知恵が足りないのでは? との違和感も覚えていたものだ。
自己の「私」的欲望は抑えて「公」に尽くす昭和のヒーローと、「私」的欲望は否定せずに、場合によっては「私」的欲望をこそ優先する80年代以降のヒーロー。
この変化の原因を、80年代以降の高度大衆消費社会化した現代日本の享楽的な風潮や、あるいは初期平成ライダーの脚本家・井上敏樹の責に帰するのは浅知恵に思える(笑)。
「公」よりも「私」優先。「公」を主張した瞬間に、それは即座に日本の戦前の軍国主義・全体主義にも通じるモノでもあるとゆー、「公」と「私」の間の中間にある無限のグラデーションや、是々非々の論議をヌキにした、アタマの悪い極端な二元論を戦後の70年間、敗戦国・日本では左翼陣営を中心に連綿と唱えつづけてきたことの、それは必然的な帰結でもあったのだから……。
もちろん21世紀に作られた本作も、脇役やヒロインの方に過剰な「正義」の問題点を投影しはする。しかしだからといって、「正義」なぞはナイ! 「正義」とは相対的なモノだ! とゆー安直論には陥らない。漠としたものではあっても「正義」はあると来る!
その大前提の上で「正義」の実現の困難や相対性に真の正義とは何か? という問題にも踏み込む。
街の悪・悪の結社・侵略者・国家権力悪・アメリカ悪(!)・善意の宇宙人の悪。
はたまた、反権力の悪・内面悪・人格障害悪(!~汗)に至るまで。
物理的に全人類を救えないのならば、要人や身内だけを救うのか? 宇宙人がもたらす「黄金の果実」による人類の生物種としての強制進化の是非は? 奇しくも『仮面ライダー鎧武/ガイム』(13年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20140303/p1)のシリーズ後半を、半年だけ先取りしたシンクロニシティ(共時性)! まぁご都合主義の「超展開」が連続する作品であったともいえるけど(笑)。
等身大の「正義」や、「公」よりも「私」を優先する風潮に、一理を認めつつも違和もある御仁。それは「公」を常にいかなるときでも絶対視することではさらさらない。ケース・バイ・ケースで「私」より「公」を優先すべきケースも時にはあるだろうと腑分けして理性的に考えることができるような御仁には、そのていねいなケースごとでの「公」優先や「私」優先を都度都度勘案して、いずれかを採択しつづける本作をぜひとも鑑賞してほしい。
本作の最終盤では、ミーイズムやエゴイズムや虚栄心などの低次な「私」とは異なる、個人のこだわりや生きがいに心的外傷といった、実に抹消もできそうにはない、そして抹消すべきでもないとも思える実存主義チックな「私」も議題となっていく。
「公共」・「分配」・「博愛」といった理念や心理も、「私」的な義憤や(ニヒリズムの哲学者・ニーチェが云うような)弱者のルサンチマン(怨恨)に由来するものではないのか? しかして、義憤が行き過ぎれば、それは幼稚な「私的快楽」とは異なるモノでも過剰な「暴力」行使へと帰結するのではないのか? という可能性も改めて示唆はする。
しかして、義憤(正義感)の感情がなさすぎても、「私的放縦」に陥って「公共」へと通じる道が閉ざされてしまうというジレンマの別れ道。
このような明晰な均衡点が存在しえない、ヨコ幅のあるグレーゾーンへと放り込むことで、「公」と「私」とは直線の両極端でありつつも、現実世界は非・ユークリッド空間でもあるから直線を伸ばした先端が真逆の真後ろ方向から周回してきてドッキングもする、「公」と「私」のリンク構造をも示唆して、本作はクロージングを迎える。
実に多面的な逸品・傑作であったと私見。……人気面でも円盤の売上面でも、爆死アニメではあったけど(汗)。
合評2 ~『サムライフラメンコ』序論
(文・久保達也)
(15年3月2日脱稿)
2クールの深夜アニメ『サムライフラメンコ』(13年・PROJECTサムメンコ フジテレビ)だが、特撮変身ヒーローマニアであれば、ぜひとも観ておくべき作品であったように思えてならないものがある。
近年の特撮ヒーロー作品では忘れられてしまったような要素が多々含まれているということもあるのだが、その内容や問題提起は実に多岐に渡るため、今回は第8話までを語ってみたい。
現在19歳の超イケメンさわやか男・羽佐間正義(はざま・まさよし)は、街でスカウトされてファッションモデルとなった今も、子供の頃から描いていた「ヒーローになりたい」という夢を、捨てきれずにいた。
正義は夜になると自作のサムライフラメンコなるヒーローマスクとコスチュームを身につけ、信号無視や路上喫煙をしたサラリーマンや、ゴミ出しの日の前夜にゴミを捨てようとしたオバチャンらに、こう名乗りを決める!
「レールは走るためにある! ルールは守るためにある! 人呼んで、サムライ、フラメンコ!」
絶対あり得ねえよコレ!(笑)
案の定、サラリーマンから暴行を受け、コスチュームを脱がされて全裸でいたところを、正義は警官の後藤に発見され、「変質者」呼ばわりされる。
この出会いの場面とか、後藤が「羽佐間くん」と呼ぶや、正義が「正義って呼んで下さい」と返したりとかは、いきなり「やおい」大喜び! という感じである(笑)。
だが、イケメンモデルとイケメン警官を主軸にした「ヒーローごっこ」の物語は、意外にも、かなり大真面目に描かれているのである。
部屋中が変身ヒーローのフィギュアで埋め尽くされた、超豪華マンションの一室で、正義は後藤にサムライフラメンコに変身する理由を語る。
改造手術を受けたり、超能力が覚醒する可能性もない今の自分には、敵も小さな悪でいい。
そうした社会の迷惑を追放することでステップアップを重ねていき、巨大な悪の出現に備えているのだと。
警官であるハズの後藤でさえも、中学生が夜中に遊んでいたり、コンビニのレジで列に割り込む客を見ても、そういうのはなくならない、無視しておけばいい、といっさい注意しようともしない。
だが、第1話『サムライフラメンコ、デビュー!』のラストで、正義はサムライフラメンコの姿で、夜中に騒ぐ中学生たちにハッキリと、「君たちは迷惑だ!」と叫ぶ! 袋だたきにされながらも、正義はその理由を、自分はほかの大人たちとは違い、君たちがどうなってもいいとは思わない人間だからだ、と語るのだ!
また、第2話『傘がない』では、小学生のころ、学校から帰ろうとしたら自分の傘がなく、やむなく他の傘を拝借したところ、その持ち主が翌日風邪で学校を欠席したことがトラウマとなり、以後雨天の日でも自分は傘をささないのだ、と正義は後藤に過去の「罪」を告白している。
「たかが傘」という考え方が「罪」の連鎖を生むのであり、そうした「悪」の芽は摘んでおかねばならないのだと。
正義が「僕、友達ひとりもいませんから」なのは、ある意味当然であるだろう(爆)。
だが、一見「常識人」の代表であるかに見える後藤が、「なつかれるのは迷惑」などとボヤきながらも、当初は「要注意人物」としてマークしていたにすぎなかった正義に次第に共感するようになり、正義の「正義」の行動を否定するどころか、「目立たなくやれ」と黙認し、やがては切っても切れない名コンビへと発展していくドラマは、「(ひとり)ボッチアニメ」の変化球にはとどまらないほどの、「熱さ」を感じさせてくれる展開である!
第2話のクライマックス、雨の晩に居酒屋で閉店まで飲んでいたふたりが帰ろうとするや、後藤の傘がない!
彼女が後藤の自宅に置き忘れたという、可愛いストラップがついた傘――なんでそんなもんをさしてきたのか疑問だが(笑)――を手に、駅へ向かう男を目撃した後藤は、「あの野郎!」と激高する!
後藤「すげえわかった! おまえの言ってたこと!」
他人の傘を拝借するなんぞ、社会のシステムに取りこまれていると語っていたハズの後藤が、いざ当事者となったことで、半ば馬鹿にしていた正義の言葉を、説得力をもって受け入れるさまは実にリアルである!
サムライフラメンコに変身し、信号が赤になるたびに停止しながらも(笑)、「傘! 傘! 傘!」と、傘泥棒が乗った電車をひたすら自転車で追跡する正義の姿は、まさしく「ヒーロー」以外の何者でもない!
さらに、サムライフラメンコは捕らえた傘泥棒に、「さぁ、君の傘を盗んだ奴を捕まえに行こう!」と声をかけるのである!(爆)
ゴミのポイ捨てであふれかえる街、赤信号を無視して横断する老若男女、「携帯禁止」のネットカフェで大声で通話するサラリーマン、スーパーのレジで割り込む老人……
日々嘆かわしいと思いながらも、後藤のように、そういうのはなくならない、無視しておけばいい、と決めこんでいた筆者であった。
もちろん正義のように、現実世界でサムライフラメンコのような行動に出れば、「変質者」どころか、今のご時勢では、ヘタすりゃ「悪」とされるかもしれない。
だが、現在の社会では、相手を「敵」か「味方」かにわけ、「敵」と認定すれば、何の議論も対話も成立しないような、罵詈雑言を浴びせて徹底的に攻撃することで相手の言論を封じこめ、自分たちを優位に立たせるといった風潮が、ますます強まりを見せているようだ。
そうした「罪」の連鎖は、やはり正義が言うところの、先述したような「悪」の芽が成長した結果ではないのか、と個人的には思えてならないのである。
これは『仮面ライダー鎧武』(13年)の最終展開でも描かれていた、たとえ過ちを繰り返そうが、「少しづつ」でも世の中を良いように変えていこう、というメッセージに通じるものがあるのだ。本作序盤のサムライフラメンコこそ、まさに混迷を極める現在の日本にとっての、待望のヒーローではないのだろうか!
深夜アニメならではの、放映期間が短期であることも理由なのであろうが、以降、本作では毎回のように新展開が繰り出されていくことになる!
第2話ラストの活躍が市民に動画で撮影されたことにより、世間ではサムライフラメンコに対する関心が一気に高まり、正体を明かした者には百万円の賞金がかけられるまでになる!
それを企画した、ニュースサイト運営会社の今野は、特撮マニア的には『ウルトラマンメビウス』(06年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20070506/p1)後半にセミレギュラーで登場したトップ屋・ヒルカワを彷彿とさせるキャラである。
当初からサムライフラメンコの正体を正義ではないか? と疑っていた今野が、オモテの仕事のモデル業のマネージャーで怒るとコワい美人・石原に、やたらとその件で揺さぶりをかけるのみならず、食事に誘おうと電話するさまが、イヤ~ンなキャラを徹底していて実によい(笑)。
また第3話『フラメンコVSニセフラメンコ』では、バラエティ番組『驚嘆動 DE ショー』――このタイトルにしてもそうだが、エンディングでスタッフのクレジットが画面を高速で流れるさまはリアルにすぎる!――の中で、劇中でのかつてのヒーロー番組『武装超人レッドアックス』で主役を演じた要丈治(かなめ・じょうじ)が、自身がフラメンコであると名乗り出る!
ルックスや髪型、鍛えあげた体型にしてもそうだが、子供たちに「武士道」精神をたたきこむとか、ハリウッドからオファーがあるとか、アフリカにボランティアに行くとか、どう考えても『仮面ライダー』(71年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20140407/p1)の主人公・本郷猛を演じた藤岡弘がモデルだろ!――ルックスは『宇宙刑事ギャバン』(82年)の主人公・一条寺烈を演じた大葉健二だが(笑)――
そのわりには結構天然ボケなところがあり、正義と要が「師匠!」「弟子!」と連呼するのを見て、後藤は「この人、正義の名前覚えてないんじゃ?」と見透かしている(爆)。レッドアックスとサムライフラメンコ、両者の名誉を救うためにも、要を「『ニセもの』だと言い続ける!」と叫んだ正義を、「好きだ!」と抱きしめた要のことも、後藤は「絶対ウソだろ!」とつっこむが、「常識人」から見れば到底理解困難な正義や要の言動に対する後藤のツッコミは、毎回最高にスパイスが効いている(笑)。
だが、第3話のラストで、正義の正体がバレないよう、サムライフラメンコのナマ中継中に正義が石原の前に現れる芝居のために、身代わりとなってフラメンコに変身した後藤は、ビルの屋上で、
「やべえこれ、すげぇ気持ちいい」
と、すっかり正義と要に感化されている始末(爆)。
だが、そうしたことで快感をおぼえる者は、正義や後藤だけではなかった!
第4話『アイドル蹂躙』以降、アイドルユニットのミネラル・ミラクル・ミューズ(通称・ミネミラ)でセンターを務めるまりが、フラメンコガールに変身して登場!
賞金百万円を目当てにしたチンピラたちに捕らえられたサムライフラメンコのもとに、4WD車で突撃して登場するフラメンコガール!
「バトンは愛の注入棒! 人呼んで、フラメンコガール!」
特注のバトンで電撃を加えるだけではあきたらず、フラメンコガールはチンピラたちの急所を執拗に踏みつけるという、あまりに残酷な必殺技を繰り出す!(笑)
まりもまた、部屋中に魔法少女や変身ヒロインのアイテムを飾りまくっているヒロインおたくであり、ずっと以前から正義の味方になる準備をしていたにもかかわらず、タッチの差で正義に先を越されたのである。って、やっぱあり得ねえよコレ(笑)。
まりはチームを組んで正義を「下僕」とするのみならず、ミネミラのメンバー・瑞希と萌にも「ヒロインごっこ」を強要し、セーラームーンやプリキュアもどき(笑)のフラメンコガールズを結成する!
「おっはようございま~す!」「お願いしっま~す!」とやたらとハイテンションなまりに、関西娘なのにめちゃくちゃテンションが低く(笑)低血圧っぽい瑞希と、まりに憧れる年下娘の名前そのままキャラの萌(笑)が巻きこまれるばかりではなく、ナゼか「ポリスフェチ」(笑)のまりは、曲づくりの参考にしたいからと非番の後藤を自室に呼んでポリスコスプレをさせる。ってこいつマジでイカれてる!(爆)
『新世紀エヴァンゲリオン』(95年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20110827/p1)の惣流・アスカ・ラングレーをさらに凶暴にしたかのような(笑)まりの声を演じるのは、同時期に『獣電戦隊キョウリュウジャー』(13年)で敵組織・デーボス軍の幹部・喜びの戦騎キャンデリラの声を並行して務めていた戸松遙である。
個人的に『キョウリュウジャー』の大ファンだから言うわけではないのだが、戸松嬢はルックスばかりではなく、マジでいい仕事をしていると思えてならないものがある。
それはそうと、第5話『正義とは』の劇中の特撮ヒーロー番組に登場した怪人コクバンギギギーは、同じ黒板がモチーフのデーボモンスター・キビシイデスのパクリではないのか?(笑)
だが残念ながら、第6話『サムメンコを捕まえろ!』で、後藤はまりに、「心に決めた人」「最高の女」がいることを明かす。
まり「それって羽佐間?」
後藤「なんでだよ!」(爆)
本作では後藤が彼女と携帯でメールを交わす描写が頻繁にあるが、その彼女はいまだ姿を現すことがない。いったいどれほどの「最高の女」であるのか、これまた興味が尽きないところではある。
この第6話では、二流の文房具メーカーの開発担当者・原塚が、正義に文房具をパワーアップした、合法的な武器(笑)を提供する!
だがこれがまた、ホッチキスをパワーアップしたサムライステープラーをヌンチャクのように振り回したり、サムライメジャーで宙を渡ったりなど、その演出がバッチリと決まっているため、元が文房具であることを意識させないほどの「必殺技」に見えるのである!
早い段階で仲間が次々に増えたり、新たな「必殺技」が描かれるなど、これはまさに『キョウリュウジャー』を彷彿とさせる21世紀(昭和ではない・汗)の特撮ヒーローの「王道」的展開なのである!
だが、それだけにはとどまらなかった!
第7話『チェンジ・ザ・ワールド』では、そのタイトル通りに世界は一変してしまう!
サムライフラメンコが一日署長を務めた警察署が行ったガサ入れの現場で、薬物を服用した男が本物の怪人・ギロチンゴリラと化し、数人の警官がその犠牲となる!
そして第8話『猛攻! 悪の軍団』では、夕焼け空に巨大なスクリーンが現れ、本物の「悪」の首領であるキング・トーチャーが映しだされ、日本に全面降伏を迫る!
キング・トーチャーは本邦初のTV特撮ヒーロー『月光仮面』(58年)に登場した「サタンの爪」のような、白塗りマスクのアジアン・テイストにあふれたデザインであるのがまた、妙に狙った感があって実にいい!(笑)
その一方、ギロチンゴリラを含め、トンビ・サイ・ケンタウルス・大蛇をモチーフにした怪人たちは、『仮面ライダーV3(ブイスリー)』(73年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20140901/p1)のデストロン怪人のような、動物とメカの合成怪人であり、ケイブンシャの『全怪獣怪人大百科』が現在でも継続していたならば、深夜アニメとはいえ掲載されたのでは?(笑) と思えるほど、デザイン的にもかっこいい奴ばかりなのである!
それでもただ凶悪な奴ばかりではなく、近年のスーパー戦隊に登場する怪人のような、ギャグ系の奴もいれば紳士的な奴もいるというのがまた、実に心憎い!
ただその作戦は、バスジャック、浄水場への毒物混入、はたまた果物買い占めなど、かつての「昭和」の東映変身ヒーロー作品では定番で描かれたネタだったりするのだが(笑)。
さらに戦闘員たちがあげる奇声はモロに「昭和」ライダー、怪人たちが断末魔に「ビバ・トーチャー!」と叫ぶのも、声優たちのノリノリの演技もあって、古い世代にはたまらないものがある!
サムライフラメンコ、ダイヤ・ルビー・サファイヤのフラメンコガールズ、そして後藤が次々に現れるトーチャー怪人軍団を粉砕していくさまはカタルシス満点!
「ダブル・フラメンキック!」に、まりがもちこんだステージ用の火薬で爆発に華を添えているのもまた格別!
だが「悪」を粉砕しながらも、当初正義は怪人たちも、キング・トーチャーに洗脳されただけではないのか? という想いを後藤に打ち明ける。
これはまさに、『ウルトラマンレオ』(74年・https://katoku99.hatenablog.com/entry/20090405/p1)第42話『恐怖の円盤生物シリーズ! レオが危い! 暗殺者は円盤生物』のゲスト主役の少年・英行の姿を彷彿とさせる。
可愛がっていた動物たちを、円盤生物アブソーバにすべて焼き殺された英行は、おおとりゲン=ウルトラマンレオにアブソーバを倒すよう懇願する。
だが、レオがアブソーバを倒しても、英行の心は晴れなかった。それどころか、すべての命を大事に想う英行は、円盤生物アブソーバをも「殺したのはぼくだ」と、自己責任にさいなまれながら、ゲンのもとを去るのである。
後藤曰く、まさに「おまえらしい悩みだな」である。
実は第7話では、正義が祖父が残した遺言書の中から、彼の両親が海外で強盗に殺害されたことを報じる古い新聞記事を発見して衝撃を受けるものの、祖父からは病死と聞かされていたことから、両親のことを知らずに育ち、いまさら怒りも復讐心もわかない自分は、ヒーローどころか冷徹な人間なのか? と正義は後藤に悩みを打ち明ける。近辺で見聞きしたことには義憤を覚えても、自身のテリトリーの外で起きたことには他人事(ひとごと)として遠くに感じてしまうという、だれにでもある人間心理の描写が実にリアルだ。
しかし、後藤は正義のことを「ヒーロー」ではなく単なる「変態」だとしか思っていなかった(笑)。
ただ、正義のおかげで俺も街も変わったのだから、「いい変態」、「役に立つ変態」だ。少なくとも「ヒーロー」よりも、俺は「変態」の方が信じられる。人間なんだから悩んでもいい、と後藤は正義に言い聞かせるのである!
「変態」である筆者(爆)としては、これには感涙せずにはいられないものがある。
これほどまでの理解者を得ようと思えば、たとえ「変態」ではあっても、正義のように「いい変態」、「役に立つ変態」となる努力をしなければならない、といったところなのであろう。
だが、本物の「悪」を倒していくうちに、
「こういうのを充実って言うんですよね」
などと、「今は本当に楽しい」と言い切るようになるほどに、変貌を遂げていく正義の姿に、後藤はとまどいの色を隠せないようになる。
今後ふたりの関係に波乱が生じる予兆を感じさせるものがあるが、「すべては計画どおり」と高笑いするキング・トーチャーの姿で、第8話は幕となる。
「ヒーローごっこ」が「本気」のヒーロー作品へと転じるさまは、かの深夜特撮『非公認戦隊アキバレンジャー』(12年)を彷彿とさせるものがあるが、果たして今後どこまで「本気」度がエスカレートしていくのか、目を離さずにはいられないものがある。
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